仮面ライダーオメガ 第4話
突如光輝の前に現れた1台のバイク。バイクは光輝に向けて声をかけてきた。
「なかなか反応をキャッチできなかったから、探し出すのに苦労したよ。」
「ち、ちょっと待って!君はいったい何なんだ!?どうしてバイクなのにしゃべれるんだ!?」
悠長に声を出すバイクに、光輝が困惑しながら質問を投げかける。そこへリノガルヴォルスが突進を仕掛け、光輝は横転してかわし、バイクも走り出してかわした。
「話をするのは少し後になりそうだ。」
「ならせめて名前だけでも教えてくれ!」
「私はメガブレイバー。オメガの協力者さ。」
「よし。メガブレイバー、ここは退こう!今の僕には、あの怪人を倒す手段がない!」
光輝はバイク、メガブレイバーに呼びかけると、リノガルヴォルスの追撃をかわす。そしてメガブレイバーに乗り、一気に加速してこの場を離れた。
リノガルヴォルスの攻撃から辛くも逃れた光輝。水晶を外して装甲を外すと、彼は全身に痛みを感じてうずくまる。
「くっ・・ちょっときつかったな、あの怪人の攻撃は・・」
「大丈夫かい、オメガ?いくらオメガでも、無敵というわけではないからね。」
うめく光輝に、メガブレイバーが声をかけてくる。
「僕は何とか・・・それより君は何なんだ?この姿、バイクだろう?どうして話ができるんだ・・?」
「それは私に人工知能があるからだよ。」
「えっ!?人工頭脳!?そんなものが君にはあるのかい!?」
「やっぱり未来的だと思うかな、君も?」
驚きの声を上げる光輝に、メガブレイバーが悠然さを見せる。ところが光輝は驚いていたというよりは、喜びをあらわにしているのが正しかった。
「すごい!すごいよ!しゃべるバイクなんてすごい!」
「そ、そんなに興味を持たれるなんて・・」
光輝の様子にメガブレイバーが困惑する。
「そろそろ本題に入ろうか。ところで君の本名は?」
「僕?僕は吉川光輝。そして正義と平和のために戦うヒーロー、仮面ライダーオメガさ!」
メガブレイバーが訊ねると、光輝が高らかに自己紹介をする。一瞬言葉が詰まりそうになるのを、メガブレイバーは耐え抜いた。
「では光輝、私はオメガの協力者として開発されたんだ。」
「オメガの協力者・・それじゃ、君はオメガについて知っているんだね?」
「全部というわけではないよ。僕にインプットされている情報限定だったら大丈夫だけど・・」
「そうか・・・それじゃ、オメガっていったい何なんだ?あの怪人は何なんだ?」
「待った、待った。そんないっぺんに質問されても答えきれないよ。」
質問を投げかける光輝を、メガブレイバーがいさめる。
「あ、ゴメン・・つい興奮しちゃって、アハハハ・・・」
我に返った光輝が苦笑いを浮かべる。
「まず、ガルヴォルスについてお話したほうがいいね。」
「ガルヴォルス?あの怪人のことなのかな?」
「うん。でも怪人といって邪険にできるものじゃないよ。なぜなら、ガルヴォルスは人間の進化だからね。」
「えっ!?人間の進化!?あれが!?」
メガブレイバーが明かした事実に、光輝が驚きの声を上げる。
「驚くのもムリないかな。でも人間も元を辿れば動物とつながるんだ。ガルヴォルスのような怪人になってもさほど不思議ではないってことさ。」
「そうか・・それじゃ、僕が戦ったあのガルヴォルスも、人間に化けていたんじゃなくて、元は人間だったってこと・・・!?」
「イヤな気持ちになるかもしれないけど、事実なんだよ、これが・・」
次々と語られる真実に、光輝は喜びの色を消して、困惑していた。
「ガルヴォルスは人の心と獣の凶暴性を兼ね備えた存在といってもいい。人間を大きく超える力で、その凶暴性の赴くままに人を襲う。」
「そんな!・・いくらなんでも、人を襲うなんてひどい・・・!」
光輝の中に憤りが芽生える。たとえ人間が進化した存在でも、誰かを傷つけたり何かを壊したりしていいわけがない。
「ガルヴォルスの猛威への打開策が練られて開発されたのが、この“クリスタルシステム”だよ。」
「クリスタルシステム?」
「水晶に込められた莫大なエネルギーを戦闘力として引き出し、装甲を形成する。水晶を基とした様々な戦闘能力を装着者にもたらすんだ。」
メガブレイバーの言葉を受けて、光輝が水晶を見つめる。
「この水晶とベルトに、そんなすごい力が隠されていたのか・・」
「でも大きな力には、大きなリスクが伴うもの。クリスタルシステムを扱うには、強い精神力が必要なんだ。」
「強い精神力?」
「クリスタルシステムは、装着者の精神力をエネルギーにして力を発揮する。精神力が弱いとシステムを使えないどころか、最悪、死んでしまうこともあるんだ。」
「死んでしまう・・そんなに危険なものを、僕は今まで使ってきたのか・・」
水晶の力の真意を知って、光輝は緊張の色を隠せなくなっていた。
「でも裏を返せば、これを扱えるということは、それだけ精神力が強いということだよ。オメガの力を使ってもさほど疲労を感じていないようだからなおさらだよ。」
「そうなのか・・僕、そんなにすごかったんだ・・」
光輝はさらに自分自身の潜在能力にも驚きを感じていた。
「それでメガブレイバー、君はどうしてここに・・・?」
「僕はオメガの協力者として開発されたんだ。僕自身もそのつもりでいる。たとえガルヴォルスと戦うことになっても、味方になったとしても。」
「それじゃ、君は僕と一緒に戦ってくれるというのかい・・?」
「もう君の信じるままに、だよ。」
光輝の言葉にメガブレイバーが答える。光輝は真剣な面持ちで、メガブレイバーに言いかけた。
「僕はみんなを守るために戦う。ガルヴォルスから世界を守るために、オメガの力を使う。メガブレイバー、君も力を貸してくれ。」
「それがオメガである君の望むことなら、私も喜んで手を貸すよ。」
光輝の呼びかけにメガブレイバーが答えた。その言葉に光輝は笑顔を見せた。
「ところで、オメガの力は他にもあるのかい?ちゃんと知っておいて、いつでも使えるようにしておかないと。」
「そうかい。それでは練習も兼ねて、いろいろと教えていくことにするよ。」
光輝の考えにメガブレイバーが同意する。だが光輝が思い出したように、突然声を上げた。
「いけない。いい加減に帰らないとくるみちゃんが怒る。ヒカルちゃんも心配してるし・・」
「どうする?私は別に今すぐというつもりはないけど・・」
「ゴメン、メガブレイバー。教えてもらうのはまた今度・・」
「そう。ならこの近くでまた会おう。」
メガブレイバーの言葉に光輝が頷く。彼は自分のバイクに乗って、この場を後にした。
そして翌日。光輝とリノガルヴォルスが戦った場所は、既に警察の検証が行われていた。
その傍らを通っていく光輝。その先にある廃屋に彼はやってきた。
「来てくれたんだね、光輝。待っていたよ。」
その廃屋で待っていたメガブレイバーが、光輝に声をかけてきた。
「昨日の続きを聞きに来たよ。オメガについてまだまだ聞きたいことがあるからね・・」
「分かった。でもその前に光輝、君は昨日まで戦って、オメガの能力をいくつか使っているね。どこまで把握している?」
「えっと確か・・ライダーキック・・水晶を足のへこみにはめ込んでキックするヤツぐらいだね・・」
「キック・・それはオメガスマッシャーだね水晶の力を足に集中させて、キックにして相手にぶつける技だよ。」
「オメガスマッシャーか・・・でもやっぱりライダーキックのほうがしっくりくるかな・・」
メガブレイバーからの説明を受けながらも、光輝は自分のこだわりを貫くことにした。
「まぁ、君がそうしたいなら、僕も構わないかな・・」
メガブレイバーも光輝のこだわりを受け入れることにした。
「でもオメガの技はこれだけではないよ。オメガスマッシャーを扱えるなら、覚えるのも早いと思うけど。」
「そうか・・よし!とことんやってやるぞー!」
メガブレイバーの言葉を受けて、光輝がやる気を見せる。
「でもあまりムリはしないで。どんなに精神力が強くても、やりすぎると危険になるということは確かだから。」
「分かってるよ。ありがとう、心配してくれて・・」
メガブレイバーの呼びかけに、光輝が笑顔を見せた。
そのとき、街のほうから爆発音が轟いた。緊迫を覚えた光輝が振り返る。
「まさか、あの人が・・・行こう、メガブレイバー!」
「私に乗っていくといい!すぐに着く!」
声をかける光輝に、メガブレイバーが呼びかける。光輝はメガブレイバーに乗り、爆発のしたほうに向かった。
白昼堂々と公道を走る暴走族。その一団を狙って、リノガルヴォルスが攻撃に出た。
「何のマネだよ・・オレらが何をしたって言うんだよ・・・!?」
生き残った暴走族の1人が悲鳴を上げる。だがリノガルヴォルスは許すつもりはなかった。
「お前たちがいるから・・何もかもがムチャクチャになるのだ・・・だからお前たちが消えれば・・・!」
憤ったリノガルヴォルスが突っ込み、その暴走族の息の根を止めた。
そこへメガブレイバーに乗る光輝が走り込んできた。
「行くぞ、メガブレイバー!」
「了解!」
光輝の呼びかけにメガブレイバーが答える。
「変身!」
光輝が声を上げながら、ベルトに水晶をはめ込む。彼の体を鎧が包み込んでいく。
光輝はメガブレイバーを加速させて、リノガルヴォルスに向かって突っ込む。リノガルヴォルスはとっさに横に動き、その突進をかわす。
「またお前か・・たとえ暴走族でなくても、私の邪魔をするなら敵も同然だ!」
いきり立ったリノガルヴォルスが、光輝とメガブレイバーに向かって駆け出す。メガブレイバーも速度を上げて、リノガルヴォルスを迎え撃つ。
2人の激しい衝突。その威力は互角で、互いの突進が相殺される。
「私と互角のパワーを見せるなんて、すごいガルヴォルスだ・・」
「だったらうまく攻撃を当てるだけだ!行くぞ、メガブレイバー!」
ガルヴォルスの猛威に毒づくメガブレイバーに呼びかける光輝。再び走り出し、リノガルヴォルスに向かっていく。
加速と旋回を繰り返して、リノガルヴォルスの注意を散漫にして動きを鈍らせる。
その隙を狙い、光輝が一気に加速してリノガルヴォルスに向かう。虚を突かれたリノガルヴォルスが、メガブレイバーの突進を受ける。
突き飛ばされたリノガルヴォルスが横転する。停車したメガブレイバーから降りて、光輝がリノガルヴォルスを見据える。
「オメガ、メガナックルにクリスタルをセットするんだ。」
メガブレイバーの言葉を受けて、光輝が右手にパンチングユニット「メガナックル」を装着し、さらにベルトから外した水晶をはめ込む。水晶にエネルギーが集束され、パンチ力を向上させる。
リノガルヴォルスが咆哮を上げながら、光輝に向かって突っ込む。
「行くぞ!ライダーパンチ!」
光輝も飛び出し、向かってくるリノガルヴォルスに光の打撃を繰り出す。互いの攻撃が衝突し、2人が突き飛ばされる。
「くっ!・・ライダーパンチさえも効かないなんて・・・!」
攻撃が通じなかったことに光輝が毒づく。
「いや、効いたよ・・・」
「えっ・・・?」
そこへメガブレイバーが声をかけ、光輝が一瞬唖然となる。1度は立ち上がったリノガルヴォルスだが、すぐに倒れて肉体が崩壊した。
「やった・・やったのか・・・」
力を使い果たした光輝が仰向けに倒れ込む。その直後、彼の体から鎧が消失する。
「光輝!」
メガブレイバーが光輝に駆け寄る。光輝がゆっくりと体を起こし、笑みをこぼす。
「大丈夫だよ・・ちょっと張り切りすぎただけだよ・・」
光輝が立ち上がろうとするが、なかなか体が言うことを聞かず、ふらついてしまう。
「少し休んでから動いたほうがいい。精神が疲れると、体が元気でも言うことを聞かなくなるものだから。」
「そうなの・・だったら安全なところで、ギリギリまで休もう・・あまり遅くなると、またくるみちゃんに大目玉を食らわされちゃうから・・」
メガブレイバーの言葉を受けて、光輝が苦笑いを浮かべる。彼らはひとまずこの場から離れ、少し離れた場所で休息を取ることにした。
(この調子で強くなって・・僕はみんなを守るんだ・・・)
自由と平和を守るために戦い続ける。光輝の決意は強まるばかりであった。
その日の夜、竜也はついに警視庁の前にたどり着いた。偽りの正義を振りかざす警察の象徴を叩くべく、彼は今まさに乗り込もうとしていた。
研ぎ澄ました達也の聴覚が、庁内で笑みを浮かべている刑事の声を捉えていた。自分を守ろうとしてくれた教師に濡れ衣を着せ、子供の罪をもみ消した敵の声を。
(待っていろ・・もうお前がのさばることはないのだから・・・)
強大な殺意を胸に秘めて、竜也は警視庁に向かって歩き出す。だがその門前で警官たちに止められる。
「君、こんな時間にいったい何のようだ?」
「ここからは関係者以外の無断立ち入りは禁止だぞ。」
だが竜也は立ち止まろうとせず、警官たちが止めに入る。すると竜也の姿がドラゴンガルヴォルスへと変貌を遂げる。
「なっ!?」
驚愕を覚える警官たちだったが、竜也の振りかざした爪で即死させられる。
「バケモノ!?バケモノが出た!?」
その騒ぎを聞きつけて駆けつけた他の警官たちも、竜也の異形の姿に驚愕する。
「か、構わん!撃て!すぐに射殺するんだ!」
警官たちが竜也に向けて発砲する。だがその弾は竜也には通用しなかった。
「オレの邪魔をする者は全て敵だ。オレが始末してやる・・・!」
憤りをあらわにした竜也が、警官たちに襲い掛かる。抵抗する警官たちだが、竜也の猛威によって次々と虐殺されていく。
警視庁に入り込んだ竜也は、その刑事のいる部屋に行きついた。
「か、怪物!?何の冗談だ、貴様!?」
刑事が恐怖と苛立ちを見せて言い放つ。すると竜也は人間の姿へと戻った。
「お、お前は!?」
鋭い視線を向ける竜也に、刑事がさらなる驚愕を見せる。彼は竜也のことを覚えていた。
「お前はこの世界にはびこる偽りの正義の根源。自分の子を優遇させるためにオレを権力で突き落とし、なおかつオレから恩師を奪った。これが許されていいはずがない・・!」
「それが許されるのだよ。なぜならその法律を取り仕切るのが我々なのだからな。その我らを裁くことが誰にできよう?」
悪びれた様子を見せない刑事。その態度が竜也の感情を逆撫でする。
「どこまでも思い上がったヤツだ、お前だ。だがそれも今日限りだ。オレがお前を裁く。お前の偽りの正義など、オレには通じない・・」
「だが貴様が私を殺しても、貴様は犯罪者のままだ。この国から、この世界から迫害される。」
「・・ならば世界そのものが偽りの正義の根源・・」
刑事に反発する竜也がドラゴンガルヴォルスに変身する。
「オレの敵ということになる・・・!」
竜也は殺気をむき出しにして飛びかかり、刑事がたまらず発砲する。だが弾丸が通用するはずもなく、刑事は首をひねられて事切れた。
「この世界に正義はない・・かつての正義は完全に朽ち果てた・・・」
倒れた刑事を見下ろして低く告げると、竜也は警視庁を後にした。