仮面ライダーオメガ 第3話

 

 

 記憶喪失の少女、ヒカル。その記憶の手がかりがつかめず、光輝もくるみも悩んでいた。

「んんん・・やっぱり何の手がかりがないのは厳しいかなぁ・・」

「そうね。やっぱりヒントのひとつでもないと、答えにたどり着くのは相当時間がかかるものだから・・」

 事態の厳しさを痛感して、光輝とくるみがため息をつく。

「あの・・私のためにいろいろと考えてもらえるのは嬉しいのですけれど・・・」

 申し訳ない気持ちを覚えて、ヒカルが頭を下げる。するとくるみが不満げな面持ちを浮かべてきた。

「今までだってあなたは私たちにお世話になってるのよ。今さら申し訳ないと思われると、かえって気が滅入るのよ。」

「ですが・・・」

「ここまで来たら、思いっきり私たちに頼りなさい。今はまだ足踏み状態だけど、必ず手がかりをみつけてみせるんだから。」

 くるみがヒカルに向けて意気込みを見せる。光輝も正義感を膨らませて、やる気満々だった。

「ありがとうございます・・くるみさん・・光輝さん・・・」

「気にしなくていいよ、ヒカルちゃん。困ったときには手を差し伸べる。これがヒーローの務めなんだから。」

 感謝するヒカルに、光輝も意気込みを見せる。

「そのヒーローというところは気にしなくていいから。光輝はまだまだ子供だから。」

「そんな、くるみちゃん・・そんな言い方、ひどいよ〜・・」

 そこへくるみに口を挟まれて、光輝が気落ちする。そのやり取りを見て、ヒカルが笑みをこぼした。

「本当に面白いですね、光輝さんもくるみさんも・・」

「私は光輝のような子供じゃないわよ。そこだけはちゃんと覚えておいてね。」

「もう、くるみちゃんったら〜・・・」

 ヒカルの言葉に憮然とした態度を見せるくるみに、光輝が再び気落ちする。

「今度の日曜日、お出かけしてみましょう。散歩がてら、ヒカルの記憶探しをしてみるのよ。」

「くるみさん・・・」

 くるみが提案したことに、ヒカルが戸惑いを見せる。

「そんなに焦ることないわよ。こういうのはじっくりやっていったほうが効率がいいのよ。」

 くるみの言葉に励まされて、ヒカルが笑顔を見せる。元気を取り戻していく彼女を眼にして、光輝も喜びを感じていた。

 

 夜間の大通りに響き渡る爆音。バイクを走らせる暴走族が、通りを爆走していた。

 暴走族は周囲の迷惑などまるで気にせず、警察の追走をも振り切っていた。

「ハッハッハ!こんなものでオレらを捕まえられると思ってんのかよ!」

「オラオラ!捕まえられるもんなら捕まえてみせろ!」

 高らかと言い放つ暴走族たち。彼らは通りを抜けて、港沿いの埠頭に差し掛かった。

 その道の真ん中に、1人の男が立っていた。男は暴走族が走りこもうとしているにもかかわらず、退こうとしない。

「何だ、アイツは?ケンカ吹っかけようってか!?

「構わねぇ!このまま引いちまえ!」

 暴走族がスピードを緩めるどころか、さらに加速して突き進もうとする。すると男の頬に異様な紋様が浮かび上がる。

「お前たちのせいで、オレたちの家族は・・・!」

 鋭く言いかける男が異形の怪物へと変貌する。

「えっ!?

「バ、バケモンだ!」

 たまらず悲鳴を上げる暴走族たち。彼らはたまらず反転して、リノガルヴォルスから逃げ出そうとする。

 だがリノガルヴォルスは凄まじい速さと突進力を見せ付けてきた。

「ひっ!ギャアッ!」

 その突進を受けて、暴走族が絶叫を上げた。横転したバイクが爆発し、炎を上げていた。

 

 最近になって、夜間に暴走族が襲撃され死亡する事件が相次いでいた。そのニュースは光輝たちの耳にも入っていた。

「暴走族だけを襲ってる?」

「そう。現場検証から、事故じゃなくて、誰かに襲われて殺害されているというのが有力になっているって。暴走族を襲うなんて、それ以上の勢力のグループ犯行ってところなのかな。」

 訊ねる光輝に、くるみがニュースの内容を説明する。

「こういうのは、もしかしたら怪人の仕業じゃ・・・」

「それはないって。特撮と現実とごっちゃにさせるんじゃないって。」

 光輝が思い立つと、くるみが呆れてため息をつく。

「でもやっぱり放っておけないよ。何とかしないと・・」

 光輝は言いかけると家を飛び出してしまった。

「ちょっと、光輝!・・もう・・どこまでいっても子供なんだから・・・」

 呼びかけるも光輝は止まらず、くるみは呆れてため息をついた。そこへヒカルが現れ、彼女に眼を向ける。

「あの・・どうかしたのですか・・・?」

「気にしなくていいわ・・またいつものことだから・・」

 訊ねるヒカルに、くるみが肩を落としながら答える。しかしヒカルの疑問符が消えることはなかった。

 

 暴走族を襲う犯人を追い求めて、光輝はバイクを走らせていた。しかし被害者が暴走族であること、いずれもとんでもないものに突進されたことしか判明されていなかった。

 その現場のひとつを訪れた光輝。そこではまだ警察の検証が続いていた。

(犯人は怪物並みの破壊力を見せ付けたとも言ってた・・もしかしたら、ヒカルちゃんを襲ってきた怪人の仲間の仕業なのかもしれない・・)

 憶測を巡らせて、光輝がさらに捜索を続けていく。しかし手がかりを見つけることができず、夜に差し掛かろうとしていた。

「もうこんな時間か・・早く帰らないと、くるみちゃんがうるさいからね・・」

 光輝がため息をつきながら、家に帰ろうとしたときだった。

「ぐわあっ!」

 突如遠くから響いてきた悲鳴を耳にした光輝。彼はバイクを再び反転させて、声のしたほうに向かう。

 たどり着いた通りには炎が広がっており、破損したバイクと横たわる暴走族がいた。

 光輝がバイクから降りて、暴走族に駆け寄った。だが光輝が手を伸ばしたとき、暴走族の体が砂が崩れるように崩壊を引き起こした。

「これは・・・!?

 崩壊する体を目の当たりにして、光輝が息を呑む。彼が顔を上げると、1人の男が立ち尽くしているのを目撃する。

「あなたは・・・!?

 光輝が訊ねようとするが、男は燃え盛る炎の中に消えてしまった。

(もしかして、あの人がみんなを・・・!?

 光輝は男が事件の犯人であると推測していた。彼は事件の真相に踏み込もうとしていた。

 

 光輝はその後帰宅した。しかしなかなか深刻さを拭えないでいた。

 思いつめている彼を眼にして、くるみはため息をつく。

「もう、こんな遅くに帰ってきたのに、何の事情説明もなく・・」

 不満を口にするくるみだが、光輝は考えを巡らせるばかりだった。そこへヒカルが近づいて、彼に声をかけてきた。

「あの・・大丈夫ですか・・・?」

 ヒカルに声をかけられて、光輝がようやく顔を上げた。

「少し休んでください、光輝さん・・不安になってきます・・・」

「ヒカルちゃん・・・ゴメン、ヒカルちゃん、くるみちゃん・・君たちにまで心配かけちゃって・・」

 ヒカルの言葉を受けて、光輝が笑顔を取り戻した。するとヒカルも喜んで頷いた。

「今日はもう寝るよ・・あんまり変に考え込むのはよくないよね。僕にもみんなにも・・」

 光輝はそう言いかけると、自分の部屋に行った。そんな彼を見て、くるみが不満の面持ちを浮かべる。

「もうっ!私の声には全然聞く耳持たなかったのに、どうしてヒカルが!?

「あ、あの、くるみさん・・私、何かいけないことをしたのでしょうか・・・?」

 怒鳴り声を上げるくるみに、ヒカルが沈痛の面持ちを見せてきた。気まずさを感じて、くるみが作り笑顔を見せた。

「べ、別にヒカルが悪いわけじゃないの!悪いのは光輝!光輝よ!優柔不断なところがあるからいけないのよ!うんっ!」

「そ、そうなのですか・・・?」

「そうなの!」

 聞き返すヒカルに、くるみが言いとがめる。彼女に言い寄られて、ヒカルは渋々納得した。

 

 警視庁を目指して、竜也は1人歩いていた。これまでも彼は、近づいてきた多くの刑事や警官を殺害してきた。

 最近は多発している暴走族への襲撃のため、警察の警備が強化されていた。それが竜也の心を逆撫でさせていた。

(そこまで偽善を図りたいというのか・・だがムダだ。オレを止めることなどできはしない。お前たちはその愚かさを、死でしか理解することはできない・・)

 警察への憎悪をたぎらせる竜也。彼が通り過ぎた後のパトカーが突如爆発を引き起こした。

 竜也のガルヴォルスとしての力だった。彼の放つ殺気がかまいたちとなり、周囲にあったパトカーを切り裂いたのである。

(もう少しでたどり着く・・そのときが、お前たちの愚かさに終止符が打たれることになる・・・)

 正義への敵意を膨らませていく竜也。彼は今、警視庁を目前にしようとしていた。

 

 暴走族襲撃事件の犯人を追って、光輝は再び調査に乗り出した。そして彼は、暴走族の一団を発見する。

「また他の連中が殺されたんだってよ。」

「物騒な話になったもんだな。」

「そのオレらも物騒だけどな、ハハハ。」

 暴走族たちが口々に事件のことを語る。

「ま、オレらには関係ねぇことだけどな。」

「仮に出てきたとしてもひき殺しちまえばいいだけのこったし。」

 事件に臆することなく哄笑を上げる暴走族。それにたまりかねて光輝が近づいてきた。

「その犯人、かなり危険です。あなたたちが思っている以上に。」

「んあ?何だ、テメェは?」

 暴走族たちが光輝を鋭く睨みつける。すると光輝が気まずさを覚える。

「別に何が来たって、オレらの敵じゃねぇんだよ。」

「エラソーなことぬかしてんじゃねぇよ、クソガキが!」

 暴走族の1人が光輝に殴りかかってきた。顔面を殴打されて、光輝が昏倒する。

「アタタタ・・・」

「オレらのこのパンチとバイクがありゃ、何が来ても敵わねぇ。テメェもよく覚えとけ・・・!」

 痛がる光輝に言い放つと、暴走族はバイクに乗って走り去っていった。

「まずい・・いずれあの人たちも、怪人に襲われてしまう・・・!」

 焦りを覚えた光輝が立ち上がり、自分のバイクに乗って暴走族を追いかけた。

 

 日は落ち切り、夜が訪れた。この夜も暴走族が行動を滑走していた。

「どうした!どうしたー!」

「サツもオレらを止めることはできねぇぜー!」

 声を張り上げて、暴走族たちはさらに走行する。だが彼らの前に、1人の男が立ちはだかった。

「何だ、アイツは?」

「構うこったねぇ!ひき殺しちまえ!」

 暴走族はスピードを落とすことなく、男に向かって走ってくる。その男の頬に紋様が浮かび上がる。

「お前たちがいるから・・お前たちが・・・!」

 男がリノガルヴォルスへと変貌を遂げる。

「えっ!?バケモノ!?

 驚愕の声を上げる暴走族。リノガルヴォルスが彼らに向かって突進を仕掛ける。

「ギャアッ!」

 突き飛ばされた暴走族が絶叫を上げる。転倒したバイクが爆発を引き起こす。

「た、助けてくれ!勘弁してくれ!」

 生き残った1人の暴走族が、リノガルヴォルスに助けを請う。だがリノガルヴォルスは近づき、暴走族の首をつかんで持ち上げる。

「お前たちはそうやって命乞いした人を、あざ笑いながら傷つけたんだ・・・!」

 リノガルヴォルスは鋭く言い放つと、暴走族をダンボールの山に向けて投げつけた。

「やめろ!」

 そこへ光輝が駆けつけ、リノガルヴォルスに呼びかける。

「いくら暴走族が許せなくたって、人を殺すことはない!こんなことをすれば、あなたが憎んでいる暴走族と同じになってしまう!」

「私が暴走族と同じだと?・・ふざけたことをぬかすな!」

 光輝の言葉が侮辱に聞こえ、リノガルヴォルスが激昂する。光輝に向かってリノガルヴォルスが突進する。

「仕方がないか・・・!」

 光輝が毒づきながら、リノガルヴォルスの突進を寸でのところでかわす。だが突進の衝撃まではさけきれず、彼は煽られて横転する。

「くそっ!」

 光輝はすぐに立ち上がり、水晶を掲げる。彼の腰には既にベルトが着けられていた。

「変身!」

 光輝がポーズを取りながらベルトに水晶をはめ込む。彼の体を装甲が包み込んでいく。

「仮面ライダーオメガ!」

 光輝が名乗りのポーズを取る。続けて光輝はリノガルヴォルスに向かって駆け出していく。

 次々と繰り出される光輝の打撃。押され気味に見えたリノガルヴォルスだが、さほどダメージを受けてはいない。

 リノガルヴォルスが反撃に転ずる。光輝につかみかかり、そのまま振り上げて投げつける。

「くっ!」

 地面の叩きつけられた光輝がうめく。立ち上がった彼に向かって、リノガルヴォルスが突っ込んできた。

「ぐおっ!」

 強烈な突進力に耐えられず、再び突き飛ばされる光輝。装甲をまとっていたために傷を負うことはなかったが、痛みは並外れていた。

(ま、まずいぞ!このままだと本気でまずい・・・!)

 次第に焦りを募らせていく光輝。その彼に向けて、リノガルヴォルスが容赦なく突っ込んでくる。

(この突進に対抗するには、ライダーキックしかない・・・!)

 思い立った光輝は体勢を立て直し、リノガルヴォルスの突進をかわして距離を取る。ベルトにつけられている水晶を取り出し、脚部のくぼみにはめる。

「行くぞ!勝負だ!」

 光輝は高らかに叫ぶと、向かってくるリノガルヴォルスに向かって駆け出し、飛び上がる。

「ライダーキック!」

 エネルギーを集束させた右足を突き出す光輝。そこに向かって突進を仕掛けるリノガルヴォルス。

 2人の攻撃が衝突し、激しく火花が散る。2人とも押されまいとさらに力を込める。

 だがリノガルヴォルスの突進が、光輝のキックを跳ね除け、突き飛ばした。

「うわっ!」

 うめく光輝が激しく横転する。すぐに体を起こすが、リノガルヴォルスに脅威を覚える。

「ライダーキックが、効かない・・・!?

 驚愕を覚える光輝に向かって、リノガルヴォルスがさらに突っ込んでくる。とっさに受け止めようとする光輝だが、その突進力をおさえることができず、押されてその先の壁に叩きつけられる。

 装甲から火花が散る。全身に激痛を覚えて、光輝がその場に倒れる。

「本当にまずいぞ・・何とかしなければ・・・!」

 立ち上がろうとする光輝だが、体が思うように動かない。その彼の前に、リノガルヴォルスが立ちはだかる。

「お前は暴走族ではないが、私の邪魔者であるのも事実・・ここで始末させてもらう・・・!」

 リノガルヴォルスが鋭く言い放ち、突進のために距離を取る。光輝は完全に窮地に追い込まれていた。

 そのとき、リノガルヴォルスが横から突き飛ばされた。突然のことに光輝も驚きを覚える。

 その形状はバイクだった。だが誰も乗っておらず、バイク自体も機械的な体質なっており、バイクというよりもマシンと呼んだほうが正しく感じられた。

「見つけたよ、オメガ。」

「えっ・・・!?

 バイクが突然光輝に声をかけてきた。あまりにも異質なバイクに、光輝は唖然となっていた。

 その彼とバイクに、立ち上がったリノガルヴォルスが再び立ちはだかろうとしていた。

 

 

第4話へ

 

小説

 

TOP

inserted by FC2 system