仮面ライダーオメガ&W -Memories of Double-
第6章
風都タワーの上層部に上ろうとした翔太郎だったが、理子の突撃を受けて地上に降ろされてしまった。1度リボルギャリーから降りた翔太郎が、着地した理子を見据える。
「やめるんだ、理子さん・・こんなことをしている場合じゃないだろ・・」
翔太郎が呼びかけるが、理子は怒りのままに彼を睨みつけてくるだけとなっていた。
ガイアメモリは特殊かつ巨大な力を備えている。メモリを使ってドーパントに変身する人間は、メモリの力に溺れてしまう危険が伴う。
理子は怒りと憎しみに反応したガイアメモリの力にのみ込まれてしまっていた。
“ダメだ、翔太郎。彼女は自分自身の復讐心に逆に操られてしまっている。僕たちの声で彼女が止まることはない・・”
「くっ!・・ここはメモリブレイクしかないか・・・!」
フィリップの声を聞いて、翔太郎が毒づく。怒りを膨らませていく理子が、素早く翔太郎に襲いかかってきた。
反撃に出ようとする翔太郎だが、理子の速さについていけないでいた。攻撃を当てることができず、理子からの攻撃をよけることもできないでいた。
「少し早いが、一気に決めないとまずい・・光輝のところにも行かないといけないからな・・・!」
意を決した翔太郎が、理子の素早い動きを何とかかいくぐって距離を取る。彼はWドライバーからジョーカーメモリを引き出し、腰のスロットに移す。
“Joker,Maximum drive!”
エネルギーを集中させる翔太郎から風が巻き起こる。この旋風で理子が攻め込むことができなくなる。
渦を巻く風の中から翔太郎が飛び出してきた。彼の体が縦2つに分割され、理子に向かう。
「ジョーカーエクストリーム!」
翔太郎が繰り出したキック。だが理子は素早い動きでこの攻撃もかわしてしまった。
「何っ!?」
キックをかわされて驚愕する翔太郎。着地した彼が、理子に横から突き飛ばされる。
「ぐっ!」
速さを重視したサイクロンの力を駆使した必殺技が通用せず、翔太郎は危機感を覚える。立ち上がる彼が、肩で息をしている理子を見据える。
“ドーパントの力に体がついていけなくなっている・・このままでは彼女の命が危なくなる・・!”
「早くメモリを取り出さなくちゃいけないことは分かっているが、動きが速すぎる・・・!」
フィリップが声を荒げるが、翔太郎は焦りを膨らませるばかりだった。だが2人とも理子のスピードに対する打開策を見つけ出していなかった。
竜也との激しい攻防を繰り広げていく竜。怒りによって攻撃力を高めていく竜也の猛攻に、竜は必死に耐えていた。
「オレはここで倒れるわけにはいかない・・オレが倒れれば、世界は朽ち果てることになる・・・!」
竜を倒すことを強く言い聞かせていく竜。
「オレはお前を許すわけにはいかない!」
怒りを爆発させて、竜也が刺々しい姿へと変貌していく。怒りと憎しみに駆り立てられて、彼は力のままに戦おうとしていた。
「オレも左やフィリップたちに会っていなかったら、分かち合っていなかったら、お前と同じ、復讐のためだけに生きていただろう・・・」
竜が竜也の姿を、家族を殺された怒りを抱えていた自分と重ねていた。
「だからこそ、お前の罪はオレが止めなければならない・・・!」
決意を言い放つ竜が、青いガイアメモリ「トライアルメモリ」を取り出した。
“Trial.”
トライアルメモリを押して、竜が竜也に呼びかける。
「長期戦はお互い分が悪い。一気に決着を付けるぞ・・・!」
言い放つ竜がアクセルドライバーからアクセルメモリを引き抜き、代わりにトライアルメモリを差し込んでスロットルをまわす。すると彼がまとっているアクセルの装甲が赤から黄色、青に変化して、外装が弾け飛んで軽量化される。
アクセルの高速形態「アクセルトライアル」。目にもとまらない超高速を可能にしたスピード重視の形態であるが、耐久力と一撃分の攻撃力が低下している。また装着者に大きな負担がかかり、この形態の必殺技も10秒以上持続できない。
「さぁ、振り切るぜ!」
竜が竜也に向かって飛びかかる。そのスピードは格段に上がっており、竜也との距離を一瞬で詰めてきた。
竜也の体に竜のパンチが立て続けに命中していく。蓄積されていく威力は、通常のアクセルの打撃1発を上回っていた。
「こんなものでオレは止まらない!」
怒りとともにエネルギーを爆発させる竜也。スピードを無意味にするエネルギーの放出に対し、竜は瞬間的に距離を取るしかなかった。
「これが、絶望という名のお前のゴールだ・・・!」
竜が1度トライアルメモリを外して、必殺技発動のための「マキシマムモード」に変形させる。スイッチを押したメモリを改めてアクセルドライバーにセットする。
“Trial,Maximum drive!”
エネルギーを集中させて、竜がスピードを最大限に上げて竜也に向かう。一気に距離を詰めた竜が、竜也に連続キック「マシンガンスパイク」を叩き込む。その軌道はTの字を描くような形となっていた。
強引に跳ね除けようとする竜也だが、竜のキックの連続で蓄積されたダメージで思うように動けずにいた。
優位に立っている竜だが、その間にもトライアルメモリのタイマーは秒数を進めて、タイムリミットの10秒に近づいていた。
「これで終わりだ!」
「オレは、偽りの正義を許さない!」
竜がとどめの一撃を繰り出す瞬間、竜也も怒りとともに力を爆発させる。2人の巨大なエネルギーがぶつかり合い、激しい爆発となる。
「ぐあっ!」
絶叫を上げる竜と竜也が吹き飛ばされる。竜が激しく横転し、竜也も看板をぶち破って竜の前からいなくなった。
体に痛みを感じながら、竜は力を振り絞って立ち上がる。だがトライアルメモリのカウンターが10秒に到達し、その瞬間、彼のアクセルへの変身が解除された。
「くっ・・時間切れか・・・ヤツの絶望までのタイムは、まだ長いようだ・・・」
アクセルとして戦える力を使い果たし、また体の負担が大きくなってしまい、竜は竜也を追うことも光輝たちのところに向かうこともできなくなってしまった。
「左たちに全てを任せることになるとはな・・・」
光輝や翔太郎に全てを託し、竜は体を休めることとなった。
カオスに変身した勝に立ち向かう光輝と一矢。だが勝の放つダークの重力操作で、光輝も一矢も軽々と跳ね飛ばされていた。
「どうした?オメガとギガス、2人がかりでもこの程度か?」
「くっ!・・このままではやられてしまう・・せめてこの風都タワーから外に引きずり出さないと・・・!」
あざ笑ってくる勝を見据えて、光輝が声と力を振り絞る。彼はベルトの水晶を右手の甲部に移す。
「来い!」
光輝が右手にエネルギーを集めつつ走り出し、勝を外におびき出そうとする。
「どこでやっても同じことだが、誘いに乗るのもいい気分ではないのでな・・」
しかし勝は誘いに乗ってこない。
「ギガブレイカー!」
そこへ一矢が飛び込み、エネルギーを集めたパンチを繰り出してきた。ダメージは受けなかったものの、直撃を受けた勝が押される。
「一矢さん!」
飛び込んできた勝に向かって、光輝が進行を変える。
「メガスラッシャー!」
光輝が繰り出したチョップを受ける勝が、ついに風都タワーの外に飛び出した。さらに光輝が勝に飛びつき、そのまま地上に落下していった。
倉庫の屋根を突き破って中の段ボール置き場に転がり込んだ光輝と勝。立ち上がる光輝だが、勝が繰り出した右手を受けて突き飛ばされる。
「お前の思い通りにはなったな。だが言ったはずだ。どこでやっても同じことだと・・」
勝の白い左手から光が放たれ、巻き込まれた光輝のまとうオメガの装甲から火花が散る。体に押し寄せる痛みに耐えきれず、光輝がその場に膝をつく。
「カオスにここまで立ち向かってきたことは褒めておこう。だがここまでだ・・」
勝が光輝にとどめを刺そうと、シャインのメモリを腰のスロットルに移そうとした。苦痛に打ちひしがれて、光輝はすぐに立ち上がることができない。
そのとき、そこへ2人の男がバイクに乗ってやってきた。光輝の知らない2人だった。
1人は気さくな雰囲気の黒髪の青年。1人は悪ぶった雰囲気の金髪の青年で、右手は紅い怪物の手をしていた。
「アンク・・あれ、どう見てもグリードでもヤミーでもないよ・・」
黒髪の青年、火野映司が金髪の青年、アンクに声をかける。
「メダルに似た感じを出していたようだな・・紛らわしいことしてくれたせいで、ムダな体力を使うことになった・・」
自分の目的と違ったことに、アンクが不満を見せる。
「フン。水を差してくれた礼をしてもらうぞ・・」
不敵に笑う勝が、映司とアンクに攻撃を仕掛けようとする。
「危ない!2人とも逃げるんだ!」
「くそっ!手間を取らせるヤツだ・・映司!」
呼びかける光輝の前で、アンクが映司に3枚のメダルを渡す。
「えっ!?戦う必要なんて・・うわっ!」
声を荒げる映司の前で、勝の放った光による爆発が巻き起こる。
「死にたくなかったらさっさと変身しろ!ヤツはやる気だぞ!」
「しょうがないなぁ!」
命令してくるアンクに渋々従って、映司が身につけているベルト「オーズドライバー」に3枚のメダルをセットし、腰にある「オースキャナー」を手にする。
「変身!」
“タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバタ・ト・バ!”
映司がオースキャラーをベルトにかざすと、ベルトから歌のような音声が発せられる。同時に彼の体を装甲が包み込んだ。
クリスタルユニットでもガイアメモリでもない、別の力による変身に、光輝は驚きと喜びを感じた。
「すごい・・新しい仮面ライダーだ!」
「ほう?まだこんなヤツがいたとはな・・だがカオスに勝るとは思えないがな・・」
喜びの声を上げる光輝と、勝気に振る舞う勝。変身した映司に、勝がゆっくりと近づいていく。
映司が変身したのは「オーズ」。「コアメダル」と呼ばれるメダルの力と組み合わせによって、様々な戦闘と能力を行える。人の欲望からヤミーを生み出すグリードから人々を助けるため、映司はメダルを巡る戦いに身を投じた。
「できれば穏便に済ませたいけど、そうはいかないみたいだ・・!」
迫ってきた勝を映司が迎え撃つ。果敢に挑む映司だが、勝は軽々と繰り出されるパンチを防いでいく。
「何者かは知らないが、やはりオレには程遠いか・・」
「何やってんだ、映司!?攻撃が当たってねぇぞ!」
余裕を見せる勝と、攻め切れない映司に怒鳴るアンク。
「そんなこと言ったって、この人、けっこう強いって!」
アンクに文句を言った映司が、勝が放った引力に捕まって引き寄せられる。距離を詰められた彼が、勝が繰り出した右のパンチを受けて突き飛ばされる。
すぐに起き上がる映司だが、勝が左手から光を放出する。
「危ない!」
光輝が助けようとするが、逆に光に行く手を阻まれる。よけようとする映司だが、光をかわしきれず、オーズの装甲から火花が飛び散った。
「くっ・・パワーだけじゃなく、スピードもある・・とてもよけきれないって・・・!」
「もたつきやがって・・映司、コイツで一気にかたをつけろ!」
焦りを見せる映司に苛立ち、アンクが2枚の紅いメダルを渡す。映司は受け取ったメダルを、黄色と緑のメダルと入れ替えた。
“タカ!クジャク!コンドル!”
オーズの装甲が紅く変わり、形状にも変化が起こる。その装甲から紅い炎のようなエネルギーが放出される。
オーズの鳥系コンボ「タジャドルコンボ」である。
「派手な姿になったな。だがカオスの前ではお遊びにしかならないな!」
言い放つ勝が左手を振りかざして光を放つ。だがスピードの上がった映司にかわされる。
「ほう?」
勝がさらに光を放つが、映司が発した炎に光がかき消された。背中から紅い翼を広げた映司が飛び上がり、エネルギー解放器「タジャスピナー」にメダルをセットしていく。
“スキャニングチャージ!”
湧き上がる炎をまとって、映司が勝に向かっていく。
「面白い。せめてオレにカオスの全力を出させてくれ・・」
“Dark,Maximum drive!”
勝がダークメモリを腰のスロットルに移し、闇の力を右手に集中させる。
「ダークグラビティ!」
炎をまとった映司の突進「マグナブレイズ」と重力をまとった勝のパンチがぶつかり合う。炎と闇のぶつかり合いは一気に激しくなり、彼らのいた倉庫が爆発したように吹き飛んだ。
アンクも光輝も辛くも倉庫から脱出した。攻撃の反動を受けた映司がアンクの前に倒れ、オーズへの変身も解除された。
「ち・・ちょっと派手にやりすぎたかな・・・」
苦笑いを浮かべた途端、タジャドルコンボを使った負担で映司がふらつく。
「これだけのことをしたのに稼ぎはなしか・・ホントにムダ足だったな・・・」
アンクが憮然とした態度を取りながら、映司を連れてこの場を離れていった。
「すごい・・まだまだすごいライダーがいるんだ・・この世界には・・・」
去っていく映司とアンクを見送って、光輝が驚きと喜びを膨らませていく光輝。歴代の仮面ライダーとの出会いと共闘を経験していた彼だが、まだ見ぬライダーたちとの新しい出会いは彼に感動を与え、さらに奮い立たせていた。
さらにスピードを上げていく理子に、翔太郎は苦戦を強いられていた。
「フィリップ・・ここはもう、エクストリームしかないな・・」
“それ以外に方法はない。彼女を助ける方法は・・”
翔太郎の呼びかけにフィリップが答えたときだった。
翔太郎の前に機械的な鳥がやってきた。鳥型ガイアメモリ「エクストリームメモリ」である。
フィリップの肉体をデジタル化して取り込んでいるエクストリームメモリが、Wドライバーに挿入された。
“Extreme.”
翔太郎のまとうWの装甲から光の粒子があふれ出す。黒と緑の装甲の縦中央に、銀のラインが入った。
Wの最強形態「サイクロンジョーカーエクストリーム」。翔太郎とフィリップ、2人の心だけでなく体も一体化しており、あらゆる情報を検索、入手が可能となっている。これにより相手や状況に応じた戦いや手段を行うことができる。
エクストリームの力を発揮したWだが、怒りのままに攻め立てる理子は恐れずに飛びかかる。
「彼女のスピードはこのエクストリームに迫るものがある。でも怒りに振り回されていることで、動きは直線的だ・・」
翔太郎と一体化しているフィリップが、理子、シーフメモリ、シーフドーパントの情報を得た。
「スピードを上げても、攻撃のためにこっちに向かってくることになる。そこを迎え撃てばいい・・」
「だったらメモリブレイクで一気に決める・・長引かせるのは理子さんのためにならない・・」
フィリップの言葉に翔太郎が同意する。Wが光の盾と矛「プリズムビッカーを手にして、盾「ビッカーシールド」と剣「プリズムソード」を分割させる。
“Prism.”
プリズムソードの柄に光のガイアメモリ「プリズムメモリ」をセットする。これにより、Wは複数のメモリの力を集束させることができる。
“Cyclone,Maximum drive!”
“Heat,Maximum drive!”
“Luna,Maximum drive!”
“Joker,Maximum drive!”
翔太郎がビッカーシールドのスロットルにサイクロン、ヒート、ルナ、ジョーカー、4つのガイアメモリをセットした。4つのメモリのエネルギーがビッカーシールドに集まっていく。
「ビッカーファイナリュージョン!」
集束させたガイアメモリのエネルギーが、ビッカーシールドから放たれる。向かってきた理子がこの閃光の直撃を受ける。
「か・・体が・・動かない・・・力が・・抜けていく・・・!」
光に逆らうことができず、理子がゆっくりと倒れていく。弾けるように彼女の姿がドーパントから人間に戻り、飛び出したシーフメモリが破損して地面に落ちた。
「私・・まだ、アイツを・・・!」
壊れたシーフメモリに手を伸ばす理子。しかし力が入らず、彼女は思うように動くことができなくなっていた。
「もうやめるんだ、理子さん・・怒りや憎しみを膨らませてるあなたを、あなたの家族が望んでいると思っているのか・・・?」
翔太郎が理子に向けて声をかけてくる。
「たとえ熊木勝を復讐で倒しても、家族は誰も喜んだりしない・・少なくても、あなたは深い罪悪感に苦しむことになる・・そんなあなたを、家族が望んでいるのか・・・!?」
「それは・・・」
「自分がしてきた罪を償って、子供たちと一緒に楽しい時間を過ごしてくれ・・熊木勝は、オレたちが必ず止めてやる・・・」
戸惑いを浮かべる理子に、翔太郎が決意を告げる。罪を憎んで人を憎まず。これも彼らの信条のひとつだった。
そこへ勝の光で落下した太一がやってきた。彼もクリスレイダーも無事だった。
「光輝くんが戦ってる・・僕たちも急がないと・・・」
「分かってる・・オレたちも行くぜ・・」
太一に呼びかけに翔太郎が答える。彼らが光輝たちに加勢しようとした。
風都タワーの近くにあった倉庫が爆発を起こしたのはこの直後だった。
新しい仮面ライダー、オーズに助けられた光輝。新しいライダーとの出会いに胸を躍らせながら、光輝は燃え上がる炎の中を見据えていた。
「すごい爆発だったが、あれだけのパワーを見せてきた勝が、簡単にやられたとは思えない・・・」
勝の姿を確認するため、光輝が炎の中に注意を向ける。その炎が突然かき消え、中から勝が現れた。
「あの男・・少しは楽しめたな・・・だがどうやら、あれで限界だったようだが・・」
勝が淡々と独り言をつぶやいていく。映司の攻撃と激しくぶつかり合ったにもかかわらず、勝は効いていなかったかのように平然としていた。
「時期にヤツも始末することになるが、まずはオメガ、お前から始末してやるぞ・・」
言い放つ勝に光輝が身構える。だが勝の右手から放たれた衝撃波で、光輝が大きく突き飛ばされた。
「そろそろ遊びは終わりにしようか。カオスの全力で、お前を華々しく散らせてやるぞ・・・!」
「何とかしなければ・・オレが倒れたら、この風都がムチャクチャになってしまう・・・!」
笑みをこぼす勝に対し、光輝は諦めずに立ち向かおうとする。
「オメガのベルトを探すために、翔太郎くんやフィリップくん、みんなが助けてくれた・・みんなが親切にしてくれた・・・そんなみんなのいるこの街を、お前のためにムチャクチャにさせてたまるか!」
決意と思い出を胸に秘める光輝。自分を助けてくれて、あたたかく親切にしてくれた風都の人々。風都を流れるあたたかい風を守り抜くという思いが、光輝の中で膨らんでいた。
「行くぞ、カオス!・・メガブレイバー!」
構えを取る光輝の呼び声を受けて、メガブレイバーが駆け付けてきた。光輝はメガブレイバーが背負っていた1本の剣を手にする。
ベルトの水晶を取り出して、剣の柄にセットする光輝。すると光輝のまとうオメガの装甲に変化が起こった。
手にした剣は精神エネルギーを増幅させるオメガ専用の武器「スピリットカリバー」。精神エネルギーとオメガクリスタルを駆使して、光の刃を放つこともできる。
オメガの赤い装甲の一部分に金のラインが入り、光輝の精神エネルギーを放出して輝く。
オメガの最強形態「スピリットフォーム」である。
「もうオレの力と魂の全てを賭けないと、お前の企みを止めることはできそうにない・・だからこれで、必ずお前を止めてみせる!」
「かなり力を上げたようだが、それでもオレを、カオスの力を止めることはできない!」
スピリットカリバーを構える光輝に、勝がゆっくりと迫っていく。1度スピリットカリバーを地面に刺して、光輝が勝にパンチを繰り出す。スピリットカリバーが手元から離れても、装着者の意思、もしくは精神エネルギーの消耗がなければスピリットフォームが解除されることはない。
スピリットフォームとなったオメガのパワーは格段に上がっており、カオスに変身している勝を攻め立てていた。
「面白くなってきたな。これでカオスの力の全てを知ることができる・・・!」
喜びを膨らませて、勝が光輝に反撃を仕掛ける。軽やかな動きで光輝を引き離すと、右手を伸ばして重力操作を行う。
「うっ!」
引力に捕まる光輝だが、全身に力を入れて踏みとどまる。彼は勝の力に抵抗することができていた。
「ダークのパワーを超えるか・・ならばシャインのスピードは超えられるかな!?」
勝が左手を振りかざして光を放つ。光に襲われてオメガの装甲から火花が散るが、光輝は怯むことはない。
「今のオメガはオレの魂が込められている・・オレの魂は、そう簡単に砕かれるわけにはいかないんだ!」
「シャインはスピードはあるがパワーはダークに劣る・・だが光と闇は、合わさることでカオスの真の力を発揮する・・・!」
“Shine,Maximum drive!”
“Dark,Maximum drive!”
勝がシャインメモリとダークメモリを、カオスドライバーの腰のスロットルに移す。するとカオスドライバーのカオスクリスタルに光が宿り、強まっていく。
白と黒の霧状のエネルギーが水晶の中で合わさり、水晶から放出される。水晶から飛び出してきたのは、白と黒のガイアメモリだった。
シャインとダーク、2つのメモリの力の融合から、新たに出現したガイアメモリ「カオスメモリ」である。
「これぞカオスの真髄!このカオスメモリを挿入することで、カオスは最大の力を発揮する!」
“Chaos.”
勝が手にしたカオスメモリをカオスドライバーの中央のスロットルにセットする。するとカオスの装甲から不気味なオーラが発せられる。
「本当のカオスは、あらゆるエネルギーと融合してひとつにしていく・・オメガ、お前のエネルギーも同じことだ!」
勝が言い放ち、オーラが強まっていく。すると光輝のまとうオメガの装甲からエネルギーが出ていき、勝に向かっていく。
「これは・・まさか・・・!?」
「すぐに気付いたか!お前のエネルギーもオレが吸い取ってくれる!」
声を荒げる光輝と、哄笑を上げる勝。光輝はエネルギーを吸い取られないように、力を振り絞って踏みとどまる。
「ここで負けてたまるか・・風都をお前の勝手にはさせない!」
光輝がスピリットカリバーを手にして、エネルギーを刀身に集中させる。
「スピリットスラッシャー!」
スピリットカリバーを振りかざし、光輝が光の刃を放つ。勝がとっさに動いて、光の刃を紙一重でかわした。
「くっ!・・スピリットスラッシャーのエネルギーが半分くらい吸い取られた・・威力を弱められてかわされた・・・!」
「どれほどの力を見せてこようと、カオスのエネルギーに取り込まれるだけ!強い力ほどカオスは、私は強くなる!」
毒づく光輝を勝があざ笑う。周囲のあらゆるエネルギーを吸い取って、勝のまとうカオスは巨大になっていた。
「フン。そこまで自分を大きく見せても意味はないぞ・・」
そこへ一矢が現れ、勝に向けてギガシューターを発砲する。だがその光の弾丸は、次々と勝の放つオーラに取り込まれてしまう。
「オレのパワーまで吸い取るとは・・ふざけたマネをしてくれる・・」
「最強とうぬぼれるお前の力も、カオスの前ではオレの引き立て役にしかならない!」
毒づく一矢に、勝が高らかに言い放つ。
「そろそろいいだろう・・巨大になったカオスを、お前たちに味わわせてやる!」
勝があふれているカオスを宿して、光輝と一矢に迫る。重みのある打撃を受けて、光輝が大きく突き飛ばされる。
「どのような手を使おうと、オレがお前を超えていることは確か・・」
強気な態度を崩さずに、一矢が右足脚部に水晶を移し替える。彼は大きくジャンプし、振り向いてきた勝に向かって降下していく。
「ギガスマッシャー!」
一矢がエネルギーを集めた両足を勝に向けて突き出す。だが勝が放つオーラにキックを防がれる。
「お前が超えているほどに、お前はオレに勝つことはできない!」
勝が全身からオーラを一気に放出して、一矢を吹き飛ばす。重みのある衝撃波に襲われて、一矢が激しく横転した後、ギガスへの変身が解除される。
「一矢さん!・・本当にパワーが上がっている・・・!」
立ち上がった光輝が、勝の発揮するカオスの力に脅威を感じていく。
「次はお前だ、オメガ・・お前の力も、オレのカオスとひとつにしてやるぞ・・・!」
勝が振り返り、不気味なオーラを発しながら光輝に向かって進んでいく。スピリットカリバーを構えて、光輝が勝を迎え撃つ。
「残念だが、これ以上風都をお前の勝手にはさせないぞ・・・」
そのとき、光輝と勝の前に翔太郎と太一が駆け付けてきた。
「翔太郎くん・・太一くん・・・」
戸惑いを覚える光輝だが、すぐに勝を見据える。
「Wか・・Wも真の力を出してきたか・・・」
翔太郎の登場にも、勝は余裕を崩していなかった。
「仮面ライダーオメガ!」
「さぁ、お前の罪を数えろ!」
光輝が名乗りを上げて、翔太郎とフィリップが勝を指差して言い放つ。オメガとWが今、全てを賭けてカオスに立ち向かおうとしていた。