仮面ライダーオメガ&W -Memories of Double-
第5章
ダークメモリの力で恐怖に襲われていた太一は、弥生に連れられて勝の別荘に入っていた。その途中、ダークの効果から解放され、太一は落ち着きを取り戻した。
「僕は、いったい・・・?」
「太一くん・・元に戻ったのね・・・」
当惑を見せる太一に、弥生が安心の笑みを見せる。
「今はフィリップさんを助けるのが先です。でないと一矢さんと照井さんが危ないんです・・」
「それは大変だ!・・急いで助け出さないと・・・!」
弥生から状況を聞かされて、太一が緊張を覚える。2人はフィリップを探して、必死に研究室を探した。
「こういう危なっかしいことはしたくないんだけど・・やるしかないみたい・・・」
大広間に来たところで、太一が呟きかける。
「弥生ちゃん、この部屋から離れていて・・・」
「太一くん、何をするつもり・・・?」
声をかける太一に当惑する弥生。だが彼女は聞き入れて、大広間から出る。
「変身・・・!」
太一はクリスに変身すると、すぐにベルトから水晶を取り出し、手にした剣「クリスセイバー」の柄にセットする。
「クリススラッシャー!」
エネルギーを集めたクリスセイバーを、太一は床に振り下ろす。切り裂かれた床が崩れて、地下へ通じる穴をあけた。
「うまい具合に穴が開いた・・・」
安心する太一が、肩の力を抜く。揺れが治まってから、弥生が大広間に戻ってきた。
「太一くんも、大胆なことをするようになったね・・・」
「きっと光輝くんたちのせいだよ・・・」
微笑みかける弥生に、太一が落ち込み気味に返事をする。弥生は大広間に残り、太一だけが地下に下りた。
そこは幸運にも研究室の真ん中。フィリップが閉じ込められている部屋の近くだった。太一はすぐにフィリップを発見することができた。
「荒っぽい助け方をするね。翔太郎でもそうしただろうけど・・」
太一の登場に気付いたフィリップが声をかけてきた。
「少し離れていて・・扉を開けるから・・・」
太一が声をかけると、フィリップは扉から離れた。太一は扉に手をかけて、引っ張って破壊した。
「急いでここを出よう・・あの人、シャインとダークのメモリを手に入れて、カオスになったみたいだよ・・」
「カオスに・・僕も急いで翔太郎と合流する必要がある・・」
太一が話した事情を聞いて、フィリップが気を引き締める。太一はフィリップを抱えて、ジャンプして大広間に上がってきた。
「太一くん・・フィリップさん・・・」
太一とフィリップが戻ってきて、弥生が笑顔を見せる。
「急ごう・・みんなが危ない・・・!」
太一が声をかけると、フィリップ、弥生とともに別荘を出た。
すぐさま一矢と竜の助けに入ろうとしていた太一。だが竜はアクセルへの変身が解かれたまま倒れ、一矢も勝の右手に押さえつけられていた。
「オレが、力で押さえ込まれるなど・・・!」
「難しく考えることはない。カオスが絶対的な力というだけだから・・」
うめく一矢に勝が不敵に言いかける。
「まだカオスの力の全てを出し切っていないが、とどめを刺させてもらおう・・」
「そうはさせない!」
一矢にとどめを刺そうとした勝に言い放ち、太一がクリスセイバーを構える。
「クリスストラッシュ!」
太一が振りかざしたクリスセイバーから光の刃が放たれる。だが勝は白い左手から光を発して、光の刃を受け止めた。
「ダークの恐怖から脱したようだが、パワーで勝てるはずもない!」
勝が放った光が、太一の放った光の刃を押し返す。光の刃が爆発を起こし、太一が吹き飛ばされる。
「うっ!」
激しく横転した太一が、大きなダメージのためにすぐに起き上がれなくなっていた。
「さて、今度こそギガスにとどめを・・」
勝が改めて一矢を狙う。
そこへ理子が素早く飛び込み、勝が身につけているカオスドライバーを奪い取ろうとした。
「これさえ奪えば、今度こそお前のカオスは!」
「どこまでも浅はかな行動をしてくるな、お前は・・」
だが理子が伸ばした手がカオスドライバーをつかむことはなかった。カオスドライバーから閃光が放たれ、彼女が吹き飛ばされた。
「お前にはずい分と世話になったな。だがオレはもうお前に用はない。」
勝が黒い右手を伸ばして力を込める。理子の体からシーフのメモリが引き出され、彼女がドーパントから元に戻る。
「メモリブレイクも可能だが、ダークの引力を使えばドーパントからメモリを引き抜くこともできる・・」
理子からシーフメモリを奪い取った勝。ドーパントへの変身を強制解除されたことに、理子は驚愕していた。
「熊木・・あなたはどこまで私たちを!」
理子が怒りのままに勝からシーフメモリを奪い返そうとする。だが勝が放った衝撃波に吹き飛ばされて、彼女は倒れて気絶してしまう。
「そこまでオレを倒したいというなら、それなりの舞台を用意しておかないといけない・・」
勝は淡々と言いかけると、理子を捕まえようと手を伸ばす。だが彼は強い殺気を感じ取って手を止めた。
振り返った勝の見つめる先には、目つきを鋭くしている竜也がいた。
「お前、あのときのガルヴォルスか・・ものすごい怒りの力を出していたな・・」
勝が淡々と声をかけていくが、竜也は鋭い視線を向けるだけである。
「ヤツらでは物足りないと思っていたところだ。お前を相手に、このカオスの、絶対的な力を存分に出させてもらう。」
「絶対的?・・やはりお前も、自分が1番だと思い上がっているのか・・・!」
勝の言葉にさらに怒りを見せる竜也が、ドラゴンガルヴォルスに変身する。竜也は怒りの叫びを上げて、勝に飛びかかっていく。
だが勝が右手を伸ばした瞬間、竜也が強い重みに襲われる。強引に前に進もうとする竜也だが、重みはさらに増していく。
「ダークの能力は引力だけではない。引力を含めて、重力を自由自在に操ることができる・・」
勝が余裕を見せながら竜也に語る。勝は重力を使って、竜也を上から押していた。
「どこまでこの絶対的な力に耐えられるかな・・・?」
「お前のようなヤツを、オレは許すつもりはない!」
笑みをこぼす勝に対して、竜也が怒りを爆発させて紅い変貌を遂げる。一気に重力を跳ね除けた竜也の突進を、勝はジャンプしてかわした。
「逃げるな!」
竜也が振り返って再び勝に飛びかかる。彼に勝が放った前後左右上下6方向からの重力攻撃が襲いかかる。
「本当に強力だ、お前の力は・・だがどんなに力があっても獣と同じ。相手をするのは難しくない・・」
不敵に言い放つ勝が、カオスドライバーからシャインメモリを取り出し、腰のスロットに移す。
“Shine,Maximum drive!”
勝のまとう装甲からまばゆい光が放出する。光はカオスドライバーにある水晶「カオスクリスタル」に集まっていく。
「シャインフラッシャー!」
勝が竜也に向けて強力な光を放出する。重力攻撃に加えて閃光も浴びせられて、竜也の体から火花が散っていく。
「ぐっ!」
痛烈なダメージに襲われてうめく竜也。だが怒りを膨らませていく彼は、倒れずに勝に向かおうとしていた。
「これだけカオスの力を受けても倒れないとは、正直驚いたぞ・・」
勝は笑みをこぼすと、意識を失っている理子を捕まえて後退していく。
「次に戦うときに、お前たちを華々しく散らしてやるぞ!」
「逃がすか!すぐに叩き潰す!」
理子を連れて離れていく勝に、絶叫する竜也。彼は持てる力を爆発させて、重力と光を吹き飛ばした。
力を大きく消耗して、竜也は歩くのもままならなくなっていた。それでも彼は勝を追ってゆっくりと前進していった。
勝、理子、竜也がいなくなるのを、弥生はただ見守ることしかできなかった。彼らの姿が見えなくなってから、彼女は太一に駆け寄った。
「太一くん!しっかりして、太一くん!」
弥生が呼びかけると、太一が弱々しく声を発する。命に別状はなかったが、彼も竜も一矢も意識を失っていた。
そこへ理子を追って光輝と翔太郎が駆け付けてきた。
「フィリップは無事だったか・・・」
「うん・・でも一足遅かった・・熊木勝が、シャインとカオスのメモリを2つとも手に入れてしまった・・」
ハードボイルダーから降りた翔太郎に、フィリップが答える。その言葉を聞いて、翔太郎が緊迫を覚える。
「熊木の手に入れたカオスは、シャインとダークのメモリとクリスタルユニットを合わせた巨大な力だ。重力と光を自在に操り、強力な破壊をもたらしている・・」
「その力で、一矢さんたちが・・・!」
フィリップからの説明を聞いて、光輝が息をのむ。オメガ、ジョーカーへの変身を解いた光輝と翔太郎が、一矢たちを運び出していった。
勝の発揮したカオスの力に太刀打ちできず、負傷した一矢、太一、竜。彼らを連れて、光輝たちは鳴海探偵事務所に戻った。
「ケガだけで済んだのが、不幸中の幸いってところかな・・」
「でもこれではすぐには戦えないですよ・・」
一矢たちの状態を見て、くるみとヒカルが呟く。太一と竜は包帯を巻いていたが、一矢は強気な態度を振る舞い、包帯を巻かれるのを拒んだ。
「熊木が何を仕掛けてくるかも気になるが、岡本理子も心配だ・・すぐに探し出さないと・・」
翔太郎が深刻な面持ちで呟くと、亜樹子がにやけ顔を見せてきた。
「翔太郎くん、もしかして惚れちゃったのかな〜?」
「そんなんじゃない・・彼女は風都の裏に潜んでいた闇に苦しめられて、今も泣いている・・」
亜樹子にからかわれて、翔太郎が憮然とした態度で言葉を返す。彼は徐々に真剣な面持ちを見せていく。
「風都で泣いてるヤツを放っておかない・・風都を泣かせるヤツの勝手にもさせない・・・オレが、オレたち仮面ライダーが解決してやる・・・」
「もう、かっこつけちゃって・・でも翔太郎くんらしくていいね・・」
決意を口にする翔太郎に呆れるも、亜樹子はすぐに喜びを見せた。
「その気持ちは僕も同じだよ。あの人の悪さを放っておくわけにはいかない・・」
そこへ光輝も真剣な面持ちで声をかけてきた。
「僕も仮面ライダーなんだ・・辛さや悲しさを抱えている人を助けるのも、ライダーのやるべきことなんだ・・・」
「光輝・・・」
「風都だけじゃない・・世界の平和と人々の自由を守りたい・・それが僕の気持ちだ・・・」
戸惑いを見せる翔太郎のそばで、光輝が自分の決意を口にしていく。彼はライダーの使命を自覚し、そのためにどうしていけばいいのかとしっかり考えていた。
「同じ仮面ライダー同士、力を合わせて戦っていきたいな・・」
「うん・・罪を憎んで人を憎まず・・悪そのものを、僕たちが打ち破る・・・」
翔太郎と光輝が笑みを見せて、手を取って握手を交わす。平和の風をかき乱す悪と罪を打ち破る。この共通の正義感が、2人に絆を生み出していた。
「では早速、熊木の居場所を探し出そう。岡本理子を助けるつもりならなおのことだ。」
フィリップが2人に向けて声をかけてきた。
「熊木勝はカオスという力を手に入れて喜んでいた。喜ぶくらいの力なら、もっともっと思う存分に試してみたくなると思う・・・」
「試す・・自分を苦しめてきた社会への恨みを持っている熊木が、カオスを試す方法・・・」
光輝が口にした言葉を聞いて、翔太郎が考えを巡らせる。そして翔太郎とフィリップが、最悪の答えを導き出した。
「風都タワー・・・!」
風都の象徴となっている風都タワー。その上層部に勝は理子を連れてきていた。
勝は風都タワーから風都の街並を見下ろしていた。
「この風都の中に、自分たちの思い通りになると思い込んでいる連中がいる・・ヤツらに、本当の絶対的な力というものを見せつけるときが来た・・」
自分自身の憎悪を口にする勝。
「ヤツらを見て見ぬふりをしてきた他のヤツらも同罪だ・・結果、この風都の全てを滅ぼすことが、オレが力を求めてきた理由となった・・・」
上層部からの理不尽に苦しめられてきた勝。その理不尽を跳ね除けるために、彼は力を求めてきた。そして見つけ出して手に入れたのが、シャインとダークのメモリ、クリスタルユニットを併せ持ったカオスの力だった。
理子が意識を取り戻したことに気付いて、勝が振り返る。
「気がついたか・・丁度いい。これから風都に向けてカオスの力を使おうというところだ・・」
「熊木・・私を・・私たちをどこまで苦しめば気が済むの・・・!?」
不敵な笑みを見せる勝に、理子が怒りをあらわにする。
「この街の闇がオレたちを地獄に叩き落とした。お前もその犠牲者ということだ・・」
「ふざけないで!私たちを地獄に落としたのはあなたじゃない!自分のしたことを他のせいにしないで!」
淡々と言いかける勝に、理子が立ち上がって叫ぶ。
“Thief.”
シーフメモリを体に挿入しようとした理子だが、体に痛みを覚えてうずくまる。
「意識が戻っても体力は戻っていないようだな・・どちらにしても、お前ではオレのカオスには敵わないがな・・」
「うるさい・・あなたがいなければ、私たちはいつまでも幸せでいられた・・・!」
「幸せは簡単に理不尽が壊してしまう・・そのことに気付けて、お前も利口になれただろう?」
声を振り絞る理子に言い放つ勝。
「風都を壊滅させれば、風都に潜む闇も消える・・お前もこれ以上、地獄を味わわなくて済むからいいだろう?」
「私が消したい闇はあなたよ・・あなたを倒すために、私はここまで力を求めてきた・・・!」
「フン。お前が手に入れた力など、カオスには程遠い。カオスの力を手に入れようとしても、お前には到底操れたものではない・・」
憎悪をむき出しにする理子を勝はあざ笑う。
「上位レベルのガルヴォルスとなったことで、オレはこのカオスを扱えるだけの体となった。そしてカオスは、オメガやWすらも凌駕する・・」
“Shine.”
“Dark.”
勝は理子に言い放つと、シャインとダークのメモリを取り出す。
「お前はそこで見ているがいい。オレがもたらすカオスが、この風都という偽物の平和を壊して塗り替えていく瞬間を・・・変身!」
“Shine,Dark.”
2つのメモリをカオスドライバーにセットして、勝がカオスに変身する。彼は意識を集中して、カオスクリスタルにエネルギーを注いでいく。
「風都が崩れる様を、オレが見届けてやるぞ・・・!」
カオスクリスタルから勝の精神エネルギーが放出される。稲妻のように放たれた光は風都の建物に襲いかかり、次々に爆発を巻き起こした。
「あなた・・私たちだけじゃなく、この街まで・・・!」
「風都には罪があふれている。その罪を、私のカオスでかき消してやる!」
憤る理子の前で、勝が風都の破壊を繰り返していく。彼の行動に理子がさらに怒りを膨らませていく。
「あなたはここで私が倒す・・絶対に許さないんだから!」
“Thief.”
怒りを爆発させた理子が力を振り絞って立ち上がり、シーフメモリを体に挿入した。シーフドーパントに変身した彼女が、勝に挑みかかろうとした。
だが彼女自身の怒りが、ドーパントの凶暴性を増長させることとなった。
翔太郎とフィリップが導き出した推理で、光輝も風都タワーに向かおうとしていた。だが竜は理子を助けることに納得していなかった。
「残念だが、オレは岡本理子を助ける気にはならない。彼女も理由はどうあれ、熊木勝に加担していたのだからな・・」
「照井、何を言っているんだ・・あのまま2人を放っておくわけには・・」
翔太郎が苦言を呈するが、竜は考えを変えない。
「彼女を助けるつもりはない。見つけたらガイアメモリを壊して、大人しくさせる。」
「理子さんは苦しんでいるだけだ・・自分自身の憎しみに・・・」
竜に言葉を返してきたのは光輝だった。理子の怒りと憎しみ、それらから生み出される悲しみを光輝も感じていた。
「悪いのは理子さんそのものじゃない・・理子さんを暴走させている罪と悪なんだ・・・罪と悪を憎み、人を助けるのが、正義として1番じゃないのかい・・・?」
「・・オレに質問するな・・・ガイアメモリとドーパントの犯罪を、オレは刑事として認めるわけにはいかない・・ガルヴォルスという存在が働く罪も同じだ・・」
切実に語る光輝に、竜が冷徹に言葉を返す。
「でもあなたはライダーでもある・・ライダーは世界と人々を守るために戦う・・・」
光輝が真剣な面持ちを見せたまま、竜に歩み寄ってきた。
「あなたが何のためにドーパントと戦っているんですか!?」
「オレに質問するなと言っている!」
「何度でも言ってやる!あなたは何のためにライダーになったんだ!?」
互いに怒鳴りかかる光輝と竜。光輝の問いかけに一瞬戸惑いを覚えるも、竜はすぐに憮然とした態度を見せる。
「何度も言わせるな・・オレに質問するなと・・特に、答えがひとつしかない質問は・・・!」
竜は光輝の腕を払いのけると、頭を巻いていた包帯を外す。
「最初は家族を殺したヤツを倒すためにアクセルとなった・・だが今は、犯罪を止めるため、犯罪に苦しむ人を助けるために戦っている・・・」
「照井・・・」
語りかける竜に、翔太郎が戸惑いを見せる。
「オレは熊木勝と岡本理子、2人の犯罪を止める・・その考えはお前たちも同じはずだ・・」
自分の意思を示す竜に、光輝は微笑んで頷いた。
「行くつもりならすぐに行くぞ。何にしても、行く先は風都タワーだ・・」
「ヤツに誰が1番なのかを分からせておかないとな・・」
翔太郎が呼びかけると、一矢が不敵に言いかけてきた。
「僕も行く・・風都の人たちは明るい・・僕でも元気になれた気がしている・・その風都を壊そうとしている人を、放っておくなんてできない・・」
太一も風都に向かうことを告げてきた。
「行こう、みんなで・・風都タワーに・・」
勝の暴挙を止めるため、光輝たちは鳴海探偵事務所を飛び出していった。
「光輝さん・・・」
彼らの後ろ姿を見送って、ヒカルは戸惑いを感じていた。彼女は彼らが風都を守り抜くと信じていた。
各々のバイクに乗り、光輝、翔太郎、一矢、太一、竜は風都タワーに向かっていた。タワー周辺では立て続けに爆発が起こり、人々が逃げ惑っていた。
「熊木・・カオスの力で好き放題やりやがって・・・!」
破壊行動を取る勝に、翔太郎が憤る。彼らは風都タワーに向けて、さらにスピードを上げようとした。
「お前たちは先に行け!すぐに追いつく!」
竜が突然光輝たちに声をかけ、バイクを止めた。彼の行動を気に掛けながらも、光輝たちは先を急いだ。
4人の姿が見えなくなったところで、竜が呼びかけた。
「姿を見せろ・・隠れていても、激しい怒りを強く感じているぞ・・」
竜の声を受けて現れたのは竜也だった。竜也は竜に怒りの視線を向けてきていた。
「お前も偽りの正義を口にする・・お前を倒し、吉川光輝も倒す・・・!」
「・・お前のその姿・・かつてのオレに似ている・・復讐のためだけに戦っていた頃のオレに・・・」
目つきを鋭くする竜也を、竜は昔の自分を重ねていた。
「怒りや憎しみに囚われたために、無関係な人まで傷つけてしまった・・だが憎むこと、倒すことよりも守ることのほうがより強い力を出せ、体も心も成長させることができることをオレは知った・・・」
「偽善者は平和を壊す敵だ・・始末しなければヤツらは思い知らない・・ヤツらを守ろうとするヤツも同じだ・・・!」
今の自分の心境を告げる竜だが、竜也は聞き入れず、敵意をむき出しにするばかりだった。
「お前のような偽善者が、何もかもムチャクチャにするんだ!」
怒りを爆発させる竜也がドラゴンガルヴォルスに変身する。憎悪をむき出しにする彼を見据えて、竜がアクセルドライバーとアクセルメモリを取り出す。
「怒りだけで戦っても、絶望のゴールしか行けないことを、お前にも教えてやる・・・!」
“Accel.”
言い放つ竜がアクセルメモリを押す。
「変・・身!」
“Accel.”
アクセルメモリをアクセルドライバーにセットして、竜がアクセルに変身する。
「絶望が、怒りに駆られたお前のゴールだ・・・!」
同時に飛び出す竜と竜也。混迷する風都の中で、2人の激しい戦いが始まった。
混迷する風都を失踪する光輝たち。風都タワーの前で止まり、彼らはその上層部を見上げる。
「あそこに熊木勝がいる!」
「カオスの力で風都を破壊している・・なんてヤツだ・・・!」
勝の暴挙に光輝と翔太郎が怒りを覚える。
「追いかけて止めるしかない・・・変身!」
光輝がベルトに水晶をセットして、オメガに変身する。彼は下から風都タワーを駆け上がろうとした。
だが入口手前で爆発が起こり、光輝が行く手をさえぎられる。勝の放つカオスの光が、光輝たちの前に降り注いだのである。
「気付いていないと思っていたか、オメガ!」
勝が高らかに光輝に言い放ってきた。勝は光輝たちの到着に気付いていた。
「お前たちであっても、このカオスを止めることはできない!もっとも、お前たちはオレの前に立つこともできないがな!」
「くっ!・・これじゃ上に上がれない・・・!」
勝に近づくことができず、光輝が焦りを覚える。
「そうだ・・僕だったら・・・変身・・・!」
そのとき、太一もベルトに水晶をセットして、クリスに変身する。彼はクリス専用バイク「クリスレイダー」に駆け寄る。
「クリスレイダー、上まで行こう・・」
「任せてくれ、太一どの!一気にヤツのところまで進むぞ!」
太一の呼びかけにクリスレイダーが答える。
「光輝くん、乗って!僕が上まで連れていくよ!」
「太一くん・・ありがとう!」
太一の助けを受けて、光輝も「フライヤーフォーム」となったクリスレイダーの胴体の上に立つ。スピード重視のクリスレイダーが、基本形態の「スピードフォーム」から飛行が可能となるフライヤーフォームに変形する。
太一と光輝を乗せて、クリスレイダーが風都タワー上層部を目指して上昇する。だが彼らは勝の放つカオスの閃光の真っ只中に飛び込むことになった。
「そんな形で攻めてくるとはな!だが結果的に格好の的だ!」
「光輝くん、行って!」
言い放つ勝の攻撃をかわしながら、太一が光輝に呼びかける。
「ありがとう、太一くん!」
光輝がクリスレイダーから風都タワーに向かってジャンプする。だがさらにカオスの閃光が彼に向かって襲いかかる。
「このままじゃ直撃する・・・メガフラッシャー!」
光輝がオメガのベルトから精神エネルギーの光を放出する。彼は精神エネルギーをバリアとして、カオスの閃光を防ぎながら風都タワーに飛び込んだ。
だが太一の乗るクリスレイダーはカオスの閃光を受けて、体勢を崩して落下していった。
「太一くん!」
落下する太一に声を上げる光輝。だが彼は太一の無事を信じて、勝に振り返る。
「光輝・・オレも行かないと・・・!」
“Joker!”
翔太郎も勝を止めようとして、ジョーカーメモリを取り出す。
“Cyclone.”
フィリップもサイクロンメモリを手にしていた。
「変身。」
“Cyclone,Joker!”
翔太郎がWに変身し、勝と光輝を見据える。
そこへ1台のマシンが走り込んできた。W専用の高速装甲車「リボルギャリー」である。
翔太郎が乗ったハードボイルダーがリボルギャリーに収納される。ハードボイルダーに「タービュラーユニット」が接続され、飛行形態「ハードタービュラー」となる。
リボルギャリーにはハードボイルダーのブースターユニットが収納されており、状況に応じて接続するのである。
「お前も乗れ。フィニッシュを決めるんだろ?」
「その通りだ。ここはお前の言葉を聞き入れてやろう・・」
呼びかけてくる翔太郎の乗るリボルギャリーの上に、一矢も乗り込む。
「変身。」
ベルトに水晶をセットして、一矢がギガスに変身する。翔太郎と一矢も勝を追って上昇しようとした。
そのとき、シーフドーパントに変身した理子が風都タワーから飛び出してきた。
「理子さん!?」
驚きを見せる翔太郎が、理子に突っ込まれて体勢を崩す。
「情けないことだな。だがここまで来れば・・」
一矢が呆れながら、リボルギャリーから風都タワーにジャンプする。彼が繰り出した飛び蹴りを、勝は後ろに下がってかわす。
「ギガスも来たか・・だが今のオレには、何人が相手だろうと同じ事だ。」
「フン。オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから・・」
互いに不敵に言い放つ勝と一矢。光輝も勝に挑もうと身構えていた。
「風都は幸せを運ぶ風が流れている・・その風をお前は、平和を壊す嵐に変えようとしている・・オレはお前の企みを、必ず止めてみせる!」
「言ってくれるではないか、オメガ・・そこまで言い張るなら見事止めてみるか?・・ムダな足掻きだと思い知らせてやるぞ!」
決意を口にする光輝を勝が迎え撃つ。風都を守るため、光輝が勝に立ち向かっていった。