仮面ライダーオメガ&W -Memories of Double-
第3章
ファングジョーカーWに変身したフィリップ。右上腕からアームセイバーを発し、竜也に本格的な攻撃を仕掛けようとしていた。
獣のように攻めていくフィリップ。アームセイバーが竜也の体を切りつけていく。
「くっ!・・こんなことで、オレを止められると思うな!」
反撃に転じた竜也が右手でフィリップの右手を受け止める。そのまま竜也はフィリップを投げ飛ばす。
踏みとどまったフィリップに、竜也が連続で繰り出した両手の打撃が叩き込まれる。
“アイツ、速くて強いだけじゃなく、ホントにガムシャラだな・・!”
「まだ僕たちに打つ手はあるよ・・」
声を荒げる翔太郎と、冷静沈着のフィリップ。
“Shoulder Fang.”
再びタクティカルホーンを弾いたフィリップ。Wの右肩にも刃「ショルダーセイバー」が出現した。
怒りのままにフィリップに飛びかかる竜也。彼が振り下ろされた右手を、フィリップは右肩から引き抜いたショルダーセイバーで受け止める。
フィリップはすぐに反撃を仕掛け、ショルダーセイバーで竜也を切りつけていく。距離を取った竜也に対しても、フィリップはショルダーセイバーをブーメランの要領で投げ飛ばした。
刃を叩きつけられて竜也が倒される。戻ってきたショルダーセイバーを手にして、フィリップが竜也を見据える。
「悪いがこれで終わらせてもらうよ。君ほどの力があるなら、受けても死ぬまでにはいかないだろうから・・」
“Fang,Maximum drive!”
三度タクティカルホーンを弾くフィリップ。Wの右足からも刃「マキシマムセイバー」が出現する。
「ファングストライザー!」
フィリップが竜也に向けて、エネルギーを集めた右足による回し蹴りを繰り出す。
「負けてたまるか・・偽りの正義を滅ぼすまでは、オレは倒れない!」
そのとき、怒りを爆発させた竜也に変化が起きた。彼から発せられた衝撃波で、フィリップが押されていく。
竜也の姿が刺々しいものへと変化していく。怒りを膨らませるあまり、彼は暴走状態に陥った。
“アイツ、まだこんな力が・・・!”
「ヒカルさんの言った通りだ。まだまだ力を隠しているよ、彼は・・」
毒づく翔太郎にフィリップが淡々と答えていく。
“ずい分と余裕があるじゃないか、アイツ・・!”
「いや、余裕は全くと言っていいほどないよ。彼の力は怒りと復讐が源となっている。自分でもコントロールできていないだろう・・」
“まさに復讐の鬼・・それもそれでたちが悪いな・・”
フィリップの説明を聞いて、翔太郎が竜也に対して気まずくなるばかりになっていた。
「オレはお前を倒す・・この世界を朽ち果てさせてたまるか!」
竜也が怒りのままにフィリップに襲いかかってくる。迎え撃つフィリップだが、竜也のパワーは格段に上がっており、怒涛の猛攻に押され始める。
「相手のパワーが強くて、こっちの反撃が間に合わない・・ファングを超える怒りか・・・!」
“感心してる場合か!何とかして切り抜けないと!”
呟きかけるフィリップに翔太郎が声を荒げる。竜也の突き出した両手を叩き込まれて、Wの装甲から火花を散らしながらフィリップが突き飛ばされる。
「許してはおかない!偽物の正義は、オレが全て倒す!」
「そこまでだ!」
フィリップにとどめを刺そうと迫る竜也に向けて声がかかる。現れたのは竜だった。
「照井、竜・・・!」
起き上がったフィリップが竜に振り向く。
「ドーパントではないようだが、好き勝手に暴れさせるわけにはいかないぞ!」
竜が竜也に言い放ち、バイクのスロットルの形をしたベルトを身に付け、紅いガイアメモリを取り出した。
“Accel.”
「変・・身!」
音声を発したアクセルメモリを、竜が叫びながらベルト「アクセルドライバー」にセットする。
“Accel.”
アクセルドライバーのパワースロットルを回すと、竜の体を紅い装甲が包み込んだ。彼はガイアメモリの力を使う戦士「アクセル」に変身したのである。
「振り切るぜ!」
竜が言い放つと、バイクに収納されている剣「エンジンブレード」を手にする。
“Engine.”
銀色の「エンジンメモリ」をエンジンブレードに差し込み、エネルギーを集中させる竜。彼は竜也に向かって駆け出し、エンジンブレードを振り下ろす。
重みのあるエンジンブレードの一撃が竜也にのしかかる。だが竜也は怒りのままにその刀身を跳ね除ける。
「見た目通り、パワーのあるヤツだ・・だが!」
竜也の高まるパワーに毒づく竜だが、すぐにエンジンブレードを構える。
「オレは、パワーでもスピードでも負けるつもりはない!」
竜が竜也に向けて、再びエンジンブレードを振りかざす。この刀身を受けても、竜也は怯むことなく竜に反撃を仕掛けようとする。
“Steam.”
そのとき、エンジンブレードの刀身から蒸気が発せられる。視界をさえぎられるも右手を振りかざす竜也だが、この攻撃は竜から大きく外れていた。
“Accel,Maximum drive!”
竜が炎をまとった回し蹴り「アクセルグランツァー」を繰り出そうとした。
「お前もオレが倒すべき正義!」
だが竜也はエネルギーを放出し、竜のキックの威力を相殺した。怒りをさらに膨らませて、竜也が竜に迫る。
そのとき、竜と竜也の戦いを見ていたフィリップが突如攻撃を受け、Wの装甲から火花が散る。
「フィリップくん!?」
倒されたフィリップに、亜樹子が驚きの声を上げる。ダメージが大きく、フィリップがWへの変身を解除される。
意識の失って動かなくなるフィリップを、シーフドーパントが捕まえる。
「あれは、光輝からオメガのベルトを盗んだドーパント!」
くるみが声を上げると、続けてカオスガルヴォルスに変身した勝が現れた。
「コイツを押さえておけば、Wは力を発揮することができなくなるからな・・」
「待ちなさい!フィリップくんを放しなさいよ!」
喜びを口にする勝に、亜樹子が立ち向かおうとする。だが勝が放った衝撃波で地面から破裂が起こり、彼女がしりもちをつく。
「ただの人間にオレは止められない。この風都が混沌で満ちあふれるのを、指をくわえて見ているといい。」
勝は亜樹子たちに言い放つと、シーフドーパントからフィリップを受け取って飛び去っていった。
「フィリップ!・・おのれ、逃がすか!」
竜が勝を追おうとするが、怒りを暴走させる竜也に行く手をさえぎられる。
「どけ!今はお前の相手をしている場合ではない!」
「オレに命令するな!その思い上がり、今すぐ叩き潰す!」
怒鳴る竜に怒りを爆発させる竜也。怒りのままに振り下ろされた竜也の腕を、竜がエンジンブレードで受け止める。
「急がないと、フィリップさんが連れて行かれてしまいます!」
ヒカルが声をかけるが、竜は竜也の猛攻を防ぐのに精一杯になっていた。
「やめるんだ、竜也くん!」
そこへ声が飛び込み、竜也が竜への攻撃を止める。オメガのベルトを取り戻した光輝が、メガブレイバーに乗ってやってきた。
W・ファングジョーカーへの変身のために意識がフィリップに移ったため、翔太郎の体は倒れて光輝に支えられていた。突然のことに最初は慌てた光輝だが、すぐに一矢と太一と合流することができた。
「この街に来てまでふざけたことをしているな・・」
一矢が翔太郎を抱えている光輝を見て呆れる。
「これにはいろいろ事情があって・・・」
「事情・・・そうだ、光輝くん・・オメガのベルト、取り返したよ・・」
作り笑顔を見せる光輝に一瞬あぜんとなるも、太一がオメガのベルトを手渡してきた。
「ありがとう、太一くん・・これでオメガに変身できる・・僕も戦えるよ・・・!」
太一に感謝の言葉を返すと、光輝が受け取ったオメガのベルトを身に付ける。
「メガブレイバー!」
光輝の呼び声を受けて、1台のバイクが走り込んできた。オメガ専用マシン「メガブレイバー」である。
「メガブレイバー、久しぶり・・・」
メガブレイバーが来てくれたことに、光輝が安心する。メガブレイバーはオメガユニットの所有者に従う。オメガユニットを奪われたことでメガブレイバーが仲間でなくなってしまったと、光輝は不安になっていたのである。
「大変なことに巻き込まれたけど、これで改めて、君と戦うことができるよ、光輝・・」
「ヒカルちゃんたちが危ないんだ・・力を貸してくれ、メガブレイバー・・・」
言葉を告げるメガブレイバーに光輝が呼びかける。
「一矢さん、太一くん、僕は先に行くよ・・ヒカルちゃんたちが待ってるから・・・」
「フン。お前が先に行こうと、決着をつけるのはこのオレだ。」
声をかける光輝に、一矢が不敵な笑みを見せる。光輝はメガブレイバーに乗って、ヒカルたちのところに向かった。
そして光輝は、竜と交戦する竜也の前に現れたのである。
「吉川光輝・・この街に来ていたのか・・・!」
竜也が光輝を目にして、鋭く睨みつけてくる。メガブレイバーから降りた光輝も、竜也から目を離さない。
「光輝、大変なの!あの泥棒のドーパントと勝ってヤツが、フィリップくんを連れてっちゃったの!」
くるみが呼びかけてくるが、光輝は竜也と対立したままである。
「ここは僕が相手をします・・フィリップさんを連れ戻してもらえますか・・?」
光輝が竜にフィリップの救出を頼むが、
「オレに質問するな・・コイツの相手はオレの役目だ・・!」
「竜也くんは僕を強く憎んでいる・・僕が憎んでいる正義の象徴だから・・・」
聞き入れようとしない竜だが、光輝も竜也と戦うことを諦めない。
「変身!」
光輝が手にした水晶をベルトにセットする。彼の体を赤い装甲が包み込んでいく。W、アクセルとは違った形状の戦士の姿に。
「仮面ライダーオメガ!」
オメガに変身した光輝が高らかに名乗りを上げる。ライダーを名乗った彼に、竜が奇妙な感覚を覚える。
「ヤツも仮面ライダーだったのか・・だがアクセルやWとは違う・・・!」
「またオレの前に現れるのか、光輝・・・!」
光輝に怒りを向ける竜也が突進を仕掛ける。光輝は横に動いて、竜也の攻撃をかわす。
「君との決着はつけなくてはいけないことだが、今はフィリップくんを助けることが先だ・・!」
「オレには関係ない!偽りの正義を振りかざす敵を倒すだけだ!」
フィリップの救出を優先しようとしている光輝だが、竜也は怒りをぶつけてくるばかりだった。
「ここは1度離れたほうがよさそうだ・・ヒカルちゃんたちを連れて行って!」
光輝は竜に呼びかけると、竜也に注意を向けたまま意識を集中する。
「メガフラッシャー!」
オメガのベルトにセットされている水晶から光が放出される。光輝の精神エネルギーが光となって放たれていた。
光輝が何かしてくると判断した竜が、ヒカルたちに向かって駆けていく。彼はくるみと亜樹子を、光輝はヒカルを抱えてこの場から離れていった。
「おのれ!」
怒鳴る竜也がエネルギーを放出して、光輝が出した光を吹き飛ばした。だがそのときには光輝たちはいなくなっていた。
「どこまでもふざけたことを・・吉川光輝!」
怒りを膨らませるも、竜也は人間の姿に戻った。
「それにしても、この街にはおかしなものを使うヤツがいるようだ・・・」
竜也はガイアメモリについて思い出していた。同時に彼はある出来事も思い返していた。
偽物の正義を振りかざす世界の敵を、竜也は次々と手にかけていった。その最中、草原を歩いていた竜也の前に、1人の女性が現れた。
黒い服と黒いサングラスを身につけているだけでなく、さらに包帯で全身を覆っていた。正体は分からないが、服装から女性であると判断できた。
「あなたから、荒々しい怒りと憎しみを感じるわ。私や彼以上・・」
「何だ、お前は?・・オレに何の用だ・・・!?」
声をかけてくる女性に対し、竜也が目つきを鋭くする。
「その憎しみ、強さを引き出すために活用させてあげる・・・」
女性が緑色のガイアメモリ「ドラゴンメモリ」を手にして、竜也に渡そうとした。だが竜也は彼女を敵視するだけだった。
「そんなものでオレを陥れようとでもいうのか?・・その手には乗らないぞ・・・」
「憎しみのあまり、誰の言葉にも耳を貸さないのね・・私はシュラウド。気が変わったのなら、力を求めるなら、いつでも私を呼びなさい・・・」
竜也に誘いを断られたが、女性、シュラウドは淡々とした態度を変えていなかった。
「お前などに頼ることはない・・これ以上オレの前にいると容赦しないぞ・・・!」
竜也は鋭く言いかけると、歩き出し、シュラウドの横を通り過ぎていった。彼を追うことなく、シュラウドも姿を消した。
このシュラウドこそ、園崎家に裏切られ、園崎家への復讐に駆られていた園咲文音。フィリップの母親だった。
光輝から遅れてヒカルたちのところに向かっていく一矢たち。Wの変身が解除されたことで、翔太郎も意識を取り戻していた。
「急がないと、亜樹子たちだけじゃない・・フィリップまで・・・!」
フィリップの危機に、翔太郎は不安を膨らませていた。彼らは焦る気持ちを抑えながら、W専用バイク「ハードボイルダー」を走らせた。
だが戦いの場に到着する前に、翔太郎たちの前に光輝たちが走り込んできた。
「光輝くん!?」
光輝と竜がヒカル、くるみ、亜樹子を連れて戻ってきたことに、太一が驚きの声を上げる。
「光輝、フィリップの意識が感じられなくなった・・何があったんだ!?フィリップは!?」
「僕が来たときには、もうフィリップくんは・・・」
問い詰めてくる翔太郎に、光輝が責任感を痛感しながら答える。最悪の事態が現実になったと思い、翔太郎が愕然となった。
「泥棒のドーパントと熊木勝、2人が手を組んでいて、フィリップを狙っていたことは間違いない・・」
「問題なのは、フィリップくんがどこに連れて行かれたのかってことだ・・・」
翔太郎と光輝がフィリップの行方を推理する。だがあまりにも手がかりが少なく、居場所を特定することができない。
「こうなったら、熊木勝について調べるしかないか・・」
「そうだね・・手がかりはアイツしかいないか・・・」
わずかな手がかり、勝の情報集めに望みを託す翔太郎と光輝。彼らはフィリップ救出のため、行動を開始するのだった。
勝とシーフドーパントに連れ去られたフィリップ。彼は何もない小さな部屋に閉じ込められていた。
意識を取り戻したフィリップが、起き上がって周りを見回す。
「不意を突かれて連れて行かれたようだ・・・」
「気がついたようだな、園崎来人。いや、今はフィリップと呼んだほうがいいか・・」
自分が置かれた状況を理解したフィリップの前に、勝が姿を見せた。
「ここはどこだ?翔太郎たちは・・?」
「お前の知り合いにはオレはほとんど直接手は出していない。だがあのガルヴォルスを相手にどうなったのかは知らないがな・・」
フィリップが投げかけた質問に、勝が淡々と答える。
「それにしても、仮面ライダーWに変身する2人のうちの1人が、あの園崎家の人間だったお前だったとはな・・」
「確かに僕は園崎家の人間だったが、今はフィリップとして生きている。翔太郎と同じ探偵であり、仮面ライダーだ。」
「お前が何であろうとオレには関係ない。もちろん園崎家そのものにもな・・オレが求めるのは力なのだから・・」
「力・・そのためにあのドーパントを利用して、オメガのベルトを奪ったのか・・」
勝が語ってくる話に、フィリップが推測を持ちかける。
「だがここまでの情報と戦いで、出せないでいた結論を確定させることができた・・絶対的な力を呼び出す手段の結論だ・・」
「絶対的な力・・・」
「光と影が交わるカオス。それこそが絶対的な力といえる・・」
勝がフィリップにさらに語りかけていく。
「クリスタルユニットとガイアメモリ。2つの融合にカオスが隠されている・・」
勝が口にしたこの言葉に、フィリップが息をのむ。勝は2種のライダーのシステムの融合を狙っていた。
勝の情報を手がかりにしたフィリップの救出を、翔太郎と光輝は狙っていた。その情報収集の最中、2人はウォッチャマンを訊ねた。
翔太郎はWドライバーを装着して、フィリップの無事を確かめようとした。Wドライバーを装着することで、変身していなくても翔太郎とフィリップは意識を共有することができる。
だが翔太郎はフィリップの意識を確かめることができなかった。フィリップが意識を失っているか、意識の共有を阻む場所に連れて来られている。その可能性が高かった。
「おや?君はこの前の・・探し物は見つかったの?」
「あ、はい。僕のほうは・・でもまたトラブルが起きちゃって・・」
気さくに声をかけてきたウォッチャマンに、光輝が笑みを見せる。
「聞きたいことがあるんだけど・・熊木勝ってヤツなんだけど・・」
「熊木勝?ちょっと前にけっこう話題になってたなぁ・・」
翔太郎が話を切り出すと、ウォッチャマンが頷いてみせた。
「石神コンツェルンを大企業まで押し上げた実力者で、かなりの努力家だったそうだよ。」
「石神コンツェルン・・オレも聞いたことがあるな・・その有名企業の社員だったのか、アイツ・・」
「ところが1年前にお客とトラブル起こしちゃって、全部の責任を取らされてクビ切られちゃったんだよ。」
「そうだったのか・・エリートの道から落とされて、すっかり落ちぶれちまったってところか・・」
ウォッチャマンの話を聞いて、翔太郎が頷く。
「その石神コンツェルンもその後も思いっきり非難されちゃって、企業そのものも落ちぶれちゃったんだけどねぇ・・」
大企業の末路を語るウォッチャマン。勝に関する情報を得たが、光輝がもうひとつ疑問を投げかけた。
「それで、そのトラブルをした客って誰か知りませんか・・?」
光輝と翔太郎が聞いた情報は、すぐに亜樹子や竜たちに伝えられた。その情報を元に、竜は勝と石神コンツェルンのさらなる情報を洗い直していた。
風都署を訪れた光輝と翔太郎の前に、情報を整理した竜が亜樹子、ヒカル、くるみとともに現れた。
「やはり、石神コンツェルンは裏でガイアメモリの流通に関わっていた・・」
「客とのトラブルのときも、最後までガイアメモリについては隠し通したみたいだが、それでも責任を追及されて、企業はお陀仏・・」
竜が告げた報告を聞いて、翔太郎が情報を整理していく。
「コンツェルンを退職した後も、熊木はガイアメモリの流通と研究を続けていた。その間に、ヤツはガルヴォルスという人間の進化に変身できるようにもなっていた・・」
「ガイアメモリ、ガルヴォルス・・厄介なことにとことん首を突っ込んできやがるな、アイツ・・・」
さらに説明していく竜に、翔太郎が毒づく。
「石神コンツェルンを去った熊木の居場所・・ガイアメモリの流通ポイントの他は、ヤツの研究所の1ヶ所だけだ。ヤツは研究のほうは独自に行っているとのことだ。」
「そこにフィリップくんがいる可能性が高いと・・」
竜の説明に光輝も言葉を返す。
「僕も戦うよ・・翔太郎くんやフィリップくんたちにはお世話になったから・・」
「あたしも十分役に立ってるでしょ?」
決意を口にする光輝に、亜樹子が歩み寄って問いかけてきた。
「やれやれ。ここでも仲良くやっているようだな。」
そこへ一矢が太一、弥生とともに現れ、光輝たちに声をかけてきた。
「ガイアメモリだろうとドーパントだろうと、頂点に立つのはオレだ。吉川光輝や海道竜也にも、その座は譲れないな。」
「確かギガスに変身する富士野一矢だったな。態度もずい分なことだな・・」
大きな態度を見せる一矢に、竜も憮然とした態度で返す。
「何だ、お前は?警察だろうとオレを言う通りにはできないぞ。」
「オレに質問するな。そんな理屈のほうが通用すると思うな。」
見下してくる一矢と、睨みつける竜。2人の対立にくるみが呆れていた。
「ケンカしている場合じゃないよ・・今やらなくちゃいけないことがあるはずだよ・・」
太一が困り顔で呼びかけ、一矢と竜が思いとどまる。
「勝の研究所へ急ごう。何を企んでいるのかはっきりしていないけど、悪いことを企んでいるのは間違いないんだから・・」
光輝の呼びかけに翔太郎が頷く。そこへヒカルが唐突に声をかけてきた。
「光輝さん、あの人、保育園の・・」
「えっ・・?」
ヒカルが指差したほうに光輝が振り向く。その先には失敗が目立っていた保育士がいた。仕事の時間ではなく、彼女は私服姿だった。
「う、うわっ!」
子供を相手にしているとき以外でも失敗が絶えず、彼女であることを簡単に証明していた。
「あぁ、いけない、いけない・・!」
落としてしまったものを慌てて拾う保育士。するとヒカルが歩み寄って、拾う手伝いをする。
「ヒカルちゃん・・・」
光輝も続いて拾う手伝いをする。2人の協力で保育士は事なきを得た。
「す、すみません・・私、いつでもどこでもドジ踏んでばかりで・・」
「気にしなくても大丈夫ですよ。僕もよく失敗しますから・・」
謝る保育士に光輝が照れ笑いを見せる。
「私は岡本理子っていいます。」
「僕は吉川光輝。よろしく。」
「私はヒカルといいます・・」
互いに自己紹介する保育士、理子と光輝、ヒカル。
「保育園の仕事、大変ですね。理子さんを見ているとそうだと思い知らされます・・」
「そんなことないです・・といいたいところなんですけど、いつもいつも失敗ばかりで、私のほうが子供っぽくて・・・」
ヒカルが褒め言葉をかけると、理子は苦笑いを見せる。落としてしまったものを拾い終えて、光輝たちが安心する。
「それでも、子供たちにいつまでも笑顔を持っていてほしいから、私は一生懸命になれるんです・・」
「その気持ち、僕も分かります。世界に平和を、みんなに自由と幸せをもたらしたい・・そのために一生懸命になっている・・そう思うから・・」
理子の考えに光輝が頷く。
「最初は夢や憧れでした・・でも今はそれだけじゃなく、ホントに自分でみんなを守りたいって思っています・・」
「すごいですね、光輝さん・・まるでヒーロー・・仮面ライダーみたいです・・」
自分の決意を口にする光輝に、理子が笑顔を見せる。本当に仮面ライダーだということを、光輝はあえて打ち明けなかった。
ヒーローは正体を隠して悪と戦うもの。無闇に正体を打ち明けるものではない。光輝の正義がそう告げていた。
「それでは私、そろそろ行きますね・・本当にありがとうございました・・」
「いえ・・理子さん、気を付けてください・・」
頭を下げる理子に、ヒカルも優しく声をかけた。荷物を持って歩き出す理子だが、すぐまたつまずきそうになる。
「本当に無事に帰れるのかな・・・?」
慌てたままの理子に、太一は不安を口にしていた。
「いつまでもこんなところで油売っている場合ではないだろう・・」
そこへ竜が不満を込めた言葉を口にしてきた。
「オレのほうが上であると、ヤツに理解させておかないとな・・」
一矢が勝に対する敵意を膨らませていた。
「でも大丈夫、翔太郎くん?・・フィリップくんがいなかったら、Wには・・」
光輝が唐突に翔太郎に不安を口にする。しかし翔太郎はWに関する不安はさほど感じていなかった。
「確かにフィリップがいないと、Wの力は半減する。けど変身ができないわけじゃない・・」
翔太郎は勝やシーフドーパントに対して、戦う手段を失ってはいなかった。
勝とシーフドーパントによって連れ去られ、閉じ込められたフィリップ。彼が閉じ込められている部屋は、外との通信が全くできないだけでなく、Wへの変身をも妨害していた。
「地球の本棚へのアクセスは厄介だからな。念のために隔離させてもらった・・」
勝が部屋の中にいるフィリップに不敵な笑みを見せる。
「それよりも、クリスタルユニットとガイアメモリの融合・・何を企んでいるというんだ・・!?」
フィリップが勝に向けて質問を投げかける。勝は不敵な笑みを崩さずに言葉を返す。
「自慢の興味と知識で、融合について調べてみることだな。オレから言えるのは、融合から生まれるカオスという絶対的な力を手に入れ、風都で天狗になっている無能で無力な連中を排除してやるのさ・・」
「あなたも少なからず、復讐の念を持っているようだね・・」
勝が口にした野心に、フィリップが興味を示す。
「でも復讐は虚しいだけだ。僕の知り合いも、復讐にとりつかれていた時期があったから・・」
「虚しいかどうかは他人に決められるものではない。それにオレが力を求めるのは、復讐のためだけではない。風都を正しく塗り替えるためでもある。」
「それこそ自分1人で決められるものじゃないよ。何が正しいかはみんなが決める・・」
野心を口にする勝に、フィリップは冷静に言葉を返していく。
「風都の風が決めてくれる・・翔太郎ならそんなことを言いそうだけど・・」
翔太郎への信頼を、フィリップは捨てていなかった。彼も自分が置かれた危機的状況の打開を諦めてはいなかった。