仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第12章

 

 

 光輝を助け、シャドームーンに戦いを挑む弦太朗。シャドームーンが振りかざすシャドーセイバーを、弦太朗は慌ただしくもかわしていく。

 弦太朗がシャドームーンにパンチを叩き込む。だがシャドームーンの強化皮膚「シルバーガード」の硬さで、弦太朗はパンチを当てた手に痛みを覚える。

「いってー!なんてかてぇ体してんだよー!」

 痛めた手に悲鳴を上げる弦太朗。そんな彼にシャドームーンがシャドーセイバーを振りかざしてきた。

Rocket.”

 弦太朗がとっさにスイッチソケットにスイッチ「アストロスイッチ」の1つ「ロケット」をセットした。彼の右手にロケットが装備され、そのジェットで飛び上がってシャドーセイバーをかわした。

「いやぁ、危なかったぜ・・見た目以上につえぇじゃねぇかよ・・・!」

 着地した弦太朗がシャドームーンを見据える。彼の隣に光輝が並び立った。

「シャドームーンは僕たち仮面ライダーの動きを全て見切っている・・スピリットフォームでも攻撃を当てられない・・」

「そいつはかなりヤバいじゃねぇかよ・・だったらガムシャラにやってみるしかねぇな!」

 光輝と弦太朗が言葉を交わして、シャドームーンを見据える。

「シャドームーンは光太郎さん、仮面ライダーBLACKの親友・・世紀王に改造されて、改造される前の人格を失っているんだ・・」

「親友・・仮面ライダーのダチなら、オレのダチだ!人の心を失ってるってんなら、オレがダチの熱い拳で目を覚まさせてやるぜ!」

 光輝の話を聞いて、弦太朗がやる気を見せる。

Launcher.”

 彼はアストロスイッチ「ランチャー」をセットして、右足にミサイルランチャーを装備する。光輝がジャンプすると同時に、弦太朗がミサイルを発射する。

 シャドームーンは横に動いてランチャーをかわす。だがそこを狙って光輝が飛び込んできた。

「スピリットライダーパンチ!」

 光輝が精神エネルギーを右手に込めて、パンチ「スピリットブレイカー」を繰り出した。その動きもマイティアイで記憶していたはずのシャドームーンだが、ミサイルを回避した一瞬に体勢を崩していたために、この一打をかすめた。

「おのれ!」

 シャドームーンがシャドーセイバーを振りかざし、光輝を切り付けた。光輝は即座にシャドームーンから離れて、追撃を逃れた。

「剣の勝負ならコイツで行くぜ!」

Electricity.”

 弦太朗がエレキスイッチをセットする。すると彼がまとうフォーゼの装甲が金色になり、電気を放出するようになった。

 フォーゼの電気属性形態「エレキステイツ」である。

「それにそんな鉄みたいな体してんなら、電気通しやすそうだしな!」

 弦太朗がエレキステイツの専用武器「ビリーザロッド」を手にしてシャドームーンに立ち向かう。彼が剣のように振りかざすビリーザロッドが、シャドーセイバーとぶつかり合って火花を散らす。

 やがて2人の攻撃が互いのボディに当たって火花を散らす。

「効くぜ、おめぇの攻撃・・だけどな、コイツは耐えられるか!?

Limit break.”

 弦太朗がエレキスイッチをビリーザロッドの柄に映すと、ロッドに電気エネルギーが集まっていく。

「ライダー100億ボルトブレイク!」

 シャドームーンに向かっていき、ビリーザロッドを振りかざす弦太朗。この一閃は短剣のシャドーセイバーで防がれたが、その刀身を折ることになった。

「おのれ・・この私が、このようなヤツに手を焼かされることになるとは・・!」

 毒づくシャドームーンが折れたシャドーセイバーを捨て、左手からビームを放つ。ビームに絡め取られて弦太朗が持ち上げられ、さらに跳ね飛ばされる。

「身動きが取れなかったぜ・・なら今度はコイツだ!」

Fire.”

 弦太朗がアストロスイッチ「ファイヤー」をセットする。フォーゼの姿が紅くなり、炎属性形態「ファイヤーステイツ」となった。

 シャドームーンが左手からビームを放出する。弦太朗が後ろに動いてかわし、ビームは地面に当たって炎を巻き上げた。

「しめた!」

 弦太朗が銃「ヒーハックガン」を手にして、ファイヤースイッチを移す。巻き上げられた炎がファイヤースイッチに吸収されていく。

「よっしゃ!エネルギー充填完了!」

Limit break.”

 弦太朗がヒーハックガンを構えて、エネルギーを集中させる。

「ライダー爆熱シュート!」

 弦太朗がヒーハックガンから炎を放出する。膨大な炎を受けて、シャドームーンがダメージを負う。

「熱エネルギーを吸収するとは・・・!」

 シャドームーンが両足にエネルギーを集中させる。弦太朗が通常のフォーゼに戻り、光輝がそばにやってくる。

「そろそろとどめといこうぜ!ライダーの友情ってヤツを、アイツに見せてやろうぜ!」

 弦太朗が光輝に呼びかけて、ロケットスイッチとドリルスイッチをセットして、フォーゼドライバーのレバーを引いた。

Rocket,Drill.Limit break.”

 右腕にロケット、左足にドリルを装備して飛び上がる弦太朗。光輝もジャンプして右足にエネルギーを集中させる。

 シャドームーンも2人を迎え撃つため、高くジャンプする。

「シャドーキック!」

「ライダーロケットドリルキック!」

「スピリットライダーキック!」

 シャドームーンの両足のキックと、弦太朗と光輝の2人のキックがぶつかり合った。膨大なエネルギーが爆発を起こし、まばゆい光とともに轟音が響いた。

 ドリルを装備から外した弦太朗が、光輝とともに着地した。シャドームーンが爆発から飛び出し、地上に落下した。

「よっしゃー!決まったぜー!」

「勝った・・今まで攻撃を当てることもできなかったのに・・・」

 ガッツポーズを見せる弦太朗と、勝てたことに驚きを感じていた光輝。だがシャドームーンが2人の前で立ち上がってきた。

「おおっ!けっこうしぶてぇじゃねぇかよ!あんだけやって立ってくるなんて・・!」

 弦太朗が慌てて身構える。だがシャドームーンが受けたダメージは大きかった。

「まさか、お前たちのようなヤツに敗れるとは・・だが勝ったなどと思うな・・・」

 シャドームーンが光輝たちに向けて声を振り絞る。

「いずれ必ず蘇り・・お前たち仮面ライダーを葬りに来る・・・首を洗って待っていることだな・・・」

 力尽きたシャドームーンが倒れ、動かなくなった。

「シャドームーン・・・」

 彼の姿を見下ろして、光輝は困惑を浮かべた。光太郎と親友でありながら分かり合うことができなかったシャドームーンに、光輝はやるせなさを感じていた。

「竜也とも、分かり合えないのだろうか・・どんなに呼びかけても、気持ちが伝わらないのだろうか・・・」

 シャドームーンの姿を見て、光輝は竜也への気持ちが揺らいでいた。動揺している彼に、弦太朗が声をかけてきた。

「おめぇにも助けてぇダチがいるみてぇだな・・本気で助けてぇって思ってんなら、そのことに集中することだ。ホントのダチなら大丈夫だ。ダチだって言えるヤツなら、ゼッテー気持ちを伝えられるはずだ。場合によっちゃ、拳と拳で熱く語り合うのもいいな・・」

「弦太朗くん・・・ありがとう・・ここで後ろ向きに考えて、諦めてしまうのがよくない・・」

 弦太朗に励まされて、光輝が勇気を振り絞る。

「オレは行く・・ヒカルちゃんと、竜也くんを助けに・・・メガブレイバー!」

 決意を口にする光輝がメガブレイバーを呼ぶ。彼がハンドルを握るとメガブレイバーが光に包まれ、ボディに金色のラインが加わった。

 オメガ・スピリットフォームと連動した姿、「スピリットブレイバー」。メガブレイバーのパワードフォーム以上のパワーと、スピードフォーム以上のスピードを兼ね備えた形態である。

「スピリットブレイバー、ヒカルちゃんと竜也くんのところに行くぞ・・」

「分かった。急ごう、光輝くん。」

 光輝の呼びかけにスピリットブレイバーが答える。光輝はスピリットブレイバーに乗り、ヒカルと竜也の居場所に向かって走り出した。

「あの男のいいようになるのはいい気分がしない。オレが直接終わらせる・・」

「僕も行くよ・・イヤな予感がする・・・」

 一矢と太一もギガブレイバー、クリスレイダーに乗って、光輝を追いかけた。

「へっ!熱いじゃねぇか!それじゃオレも・・!」

Radar.”

 弦太朗も光輝たちを追いかけようとしたときだった。通信が入り、彼はレーダースイッチをセットして連絡に出た。

“如月、何をやってるんだ!?寄り道していないで早く目的地に行け!

 弦太朗のクラスメイト、歌星(うたほし)賢吾(けんご)が呼びかけてきた。

「何だよ、賢吾!せっかくの仮面ライダーとのご対面だってのに・・!」

 弦太朗は文句を言いながらも、光輝たちを追いかけるのを諦め、マシンマッシグラーに乗ってこの場を後にした。

 

 光輝の居場所を求めて、竜也は歩き続けていた。彼の後ろをキバランたちがついてきていた。

「いつまでついてくるつもりだ?そんなにオレを怒らせたいのか・・!?

「そんなつもりなんてないわ。言ったでしょう?私たちはこの状況を見ているだけだって・・」

 睨み付けてくる竜也に、キバランたちは明るく振る舞っていた。

「よそ見してる場合じゃないんじゃないの?」

「お目当ての彼、もうそこまで来てるよ♪」

 キバリン、キバルンの呼びかけを聞いて、竜也が振り返る。彼の耳にバイク音が入ってきていた。

「来たか、吉川光輝・・今度こそ・・・!」

 目つきを鋭くする竜也の前に、スピリットカリバーで駆けつけた光輝が止まる。一矢と太一も続いて停車した。

「竜也くん・・君は偽物の正義を倒すために、怒りと憎しみの赴くままに戦ってきた・・でも、そのやり方は敵だけじゃなく、君自身も、君が大切にしているものまで傷つけることになる・・・」

「オレに大切なものはない・・オレはそのようなものを全て失った・・偽りの正義に、何もかも奪われた・・」

「ウソだ・・・」

 竜也が返した答えを光輝が否定する。

「何もかもないなんてウソだ・・君はまだこうして力を持って、自分を貫こうとしているじゃないか・・・!」

「そうしなければ、オレはオレでなくなる・・本当の平和をつかむためには、吉川光輝、偽りの正義の象徴のオメガであるお前を倒さなければならない・・・!」

「オレと君は・・戦うしかないというのか・・・」

 自分の考えを曲げようとしない竜也に、光輝は歯がゆさを感じていた。

「オレは敵を全て倒す・・でなければ世界はよくならない・・・!」

 決意を口にする竜也の頬に異様な紋様が浮かび上がる。彼がドラゴンガルヴォルスに変身し、光輝に鋭い視線を向ける。

「その姿のオメガであっても、オレはお前たちを倒す!」

 憎悪をさらに引き上げて、竜也が紅いオーラを放ちながら刺々しい姿へと変化した。彼は自らの怒りと憎しみを力に変えていたが、それらを制御できない暴走状態にあった。

「たとえ世界や平和のためでも、みんなを無差別に傷つけていいことにはならない・・竜也くん、君のこれ以上の暴走を許すわけにはいかない・・・!」

 光輝が迷いを振り切り、竜也を見据える。

「君のために・・僕自身のために・・そして世界の平和を人々の自由を守るために戦っている、仮面ライダーのために!」

 光輝が決意を言い放ち、竜也に向かっていく。光輝と竜也が同時に右手を突き出してきた。

 2人のパンチがぶつかり合い、衝撃が膨大なエネルギーの爆発となって周囲に衝撃をもたらした。互いに押し切ろうとした2人だが、打撃の相殺の衝撃で跳ね返された。

「今まで以上にパワーが上がっている・・スピリットフォームでも勝つのが難しくなっている・・・!」

 竜也の力に驚愕する光輝。今の竜也の憎悪と力は、スピリットフォーム・オメガを脅かすものとなっていた。

「見ていられないな・・やはりオレがやる・・」

 一矢が強気な態度を見せたまま、右足の脚部にベルトの水晶をセットする。

「あ、待ってったら・・!」

 太一も慌ててベルトの水晶を、手にしたクリスセイバーにセットした。一矢がジャンプして、太一がクリスセイバーを構える。

「ギガスマッシャー!」

「クリスストラッシュ!」

 一矢のキックと太一の光の刃が繰り出される。

「邪魔だ!」

 竜也が体からオーラを放出して、一矢と太一を吹き飛ばした。痛烈なダメージを受けて、2人がギガス、クリスへの変身が解かれた。

「一矢さん!太一くん!」

 声を荒げる光輝が、再び竜也に向かっていく。今度は彼は連続でパンチとキックを繰り出していく。

「そうそう。その調子でどんどん攻め合うといいわ・・」

「これだけのパワーを持った2人の勝負・・」

「もちろんぶつけ合う衝撃もものすごいからね♪これなら次元の壁に穴が開くのも時間の問題だね♪」

 2人の戦いをキバラン、キバリン、キバルンが見守っていた。

「今の世界の連中は思い上がったヤツばかりだ!自分たちのためにしか行動を起こさない!守られても感謝の1つも見せようとしない!そんなヤツらを、お前は守っているんだぞ、吉川光輝!」

「オレたちの戦いは、全てが世界に知れ渡っていることではないのかもしれない・・オレたちの戦いを理解しようとしない人もいるかもしれない・・だけど、世界にはオレたちの存在を知り、オレたちを応援してくれる人たちがたくさんいる・・!」

 憎悪の言葉を口にする竜也に、光輝も自分の気持ちを告げていく。

「みんなを信じて、みんなを支えて、みんなのために頑張っている人たちのためにも、オレは、仮面ライダーオメガであるオレは、竜也くん、君を救わないといけないんだ!」

「お前にオレは救えない!誰も世界を救おうとしない!だからオレがやる!やるんだ!」

 光輝の決意と竜也の意思が、力となって激しくぶつかり合う。パンチとパンチ、キックとキックがぶつかり合う度に、雷のような衝撃と轟音が巻き起こっていった。

 そしてその衝撃は、この場の空を揺さぶって次元を揺るがし始めた。

「この調子、この調子♪もう少しで・・」

「この世界が次元の穴に押しつぶされて崩壊する・・」

「この世界の崩壊がどういうものになるのか・・本当に楽しみ・・・」

 キバルン、キバリン、キバランが世界の崩壊を待ちわびていた。彼女たちが見下ろす中、光輝と竜也の対決は続く。

 光輝が竜也を見据えたまま、地面に突き立てていたスピリットカリバーを引き抜いた。

「オレの正義と魂を、君に伝える・・君の体と心に刻みつける・・・!」

「オレはお前の考えには惑わされない・・偽りの正義が、オレを思い通りにできると思うな!」

 光輝の思いを竜也が頑なに拒絶する。2人が構えて、力を込めた攻撃を繰り出そうとした。

「やめて!」

 そこへ声が飛び込み、光輝と竜也が攻撃の手を止めた。彼らの前に現れたのは、キバランたちに捕まっていたヒカルだった。

「ヒカルちゃん!無事だったんだね!」

 光輝がヒカルの姿を見て喜びの声を上げる。しかしヒカルは沈痛の面持ちを浮かべたまま、彼らに呼びかける。

「戦わないでください、光輝さん、竜也さん!2人が大きな力をぶつけ合ったら、世界が壊れてしまいます!」

「えっ・・!?

 ヒカルが口にした言葉に、光輝は驚愕を隠せなくなる。

「あのコウモリたちの狙いは、光輝さんと竜也さんを戦わせて、そのエネルギーで次元の壁に穴を開けることなんです!次元の穴が開いたら、世界が耐えられなくなって・・!」

「そんな・・そんなことが・・・!?

 ヒカルが告げた言葉に、光輝は愕然となる。自分たちの戦いが世界の破滅を招くことになると聞かされて、彼は動揺を感じずにいられなかった。

「それでオレを迷わせようとしてもムダだ・・オレは本当の平和を取り戻すために戦う・・・!」

 しかし竜也は聞き入れようとせず、光輝と戦おうとしていた。

「何を言っているんだ、竜也くん!?オレたちがこのまま戦い続ければ、世界そのものが崩壊することになるんだぞ!君が望んでいる本当の平和も、実現できなくなる!」

「このまま思い上がった連中の勝手にさせるぐらいなら、全てを壊してでも!」

「君は世界が壊れてしまっても構わないというのか!?

「既に世界は壊れている!偽りの正義を叩き潰さない限り、世界は壊れたままだ!」

 呼びかける光輝に、竜也は戦いを挑もうとするばかりだった。彼の態度に、光輝は怒りを募らせていた。

「自分の目的のためなら、関係のない人たちや世界そのものさえも傷つけ、そのことを悪いとも思わない・・そこまで堕ちてしまったというのか・・・!?

 光輝が怒りを膨らませて、スピリットカリバーを構える。

「竜也くん、オレは君を、このまま見過ごすことはできない!」

「それがお前の本性!ようやく見せてきたか、吉川光輝!」

 光輝がスピリットカリバーにエネルギーを集中させて、竜也がさらに怒りを膨らませて力に変えていく。

「スピリットスラッシャー!」

 光輝がスピリットカリバーを振りかざして光の刃を放ち、竜也が紅いオーラを放出する。2つの力がぶつかり合って、巨大なエネルギーが上空に飛び火する。

 その膨大なエネルギーが、空を突き破って次元の壁に穴を開けた。

「あ、穴が・・・!」

「ついに穴が開いたわね・・・」

 愕然となるヒカルと、喜びの笑みをこぼすキバラン。次元の穴は光輝と竜也の力の影響で、徐々に広がりを見せていった。

「やめて、光輝くん!これ以上やったら、この世界が!」

 ヒカルが呼びかけるが、光輝も竜也も攻撃をやめない。

「やめてって言っているでしょう!」

 声を張り上げるヒカルから光が放出された。その光が光輝と竜也の激突からあふれ出しているエネルギーを遮断していった。

「この光・・・もしかして、ヒカルちゃん・・・!?

 ヒカルの力に気付いて、光輝が注意をそらす。クイーンガルヴォルスとしての力を彼女が解放していると、彼は感じ取っていた。

「落ち着くんだ、ヒカルちゃん!力を解放したら、ヒカルちゃんが危ない!」

「光輝さんや世界そのものが危ないのに、私が何もしないでいるなんてできません!」

 互いに声を張り上げる光輝とヒカル。光輝は竜也への攻撃を中断して、ヒカルに向かっていく。

「ヒカルちゃん!」

 光輝がヒカルに飛びついて、力の解放を思いとどまらせる。戸惑いを感じたヒカルが力を抑えていく。

「ヒカルちゃん・・すまない・・君にまで、こんな危険な思いをさせてしまって・・・!」

「いいんです、光輝さん・・光輝さんのほうが、全然危険な思いをしているんですから・・私も、このくらいのことは・・・」

 謝る光輝にヒカルが微笑みかける。光輝は冷静さを、ヒカルは落ち着きを取り戻していた。

「逃がさない・・オレは・・偽りの正義を・・・!」

 竜也の声を耳にして、光輝とヒカルが緊張を浮かべる。紅いオーラをあふれさせている竜也に、別の不気味なオーラが流れ込んできていた。

「このエネルギーはいったい・・竜也くんに、何が・・・!?

「光輝さん、あれ!・・まさか・・・!?

 緊迫する光輝とヒカル。竜也に流れ込んできていたエネルギーは、空に広がる次元の穴からだった。

「こりゃ驚いたな・・異次元のエネルギーが、アイツの心に反応して引き寄せられてるよ・・」

「海道竜也・・あたしたちが思ってた以上の怒りと憎しみの力を持ってたんだね・・でも、こういうのも楽しくなるね・・・」

 キバリンとキバルンが竜也の様子を見て喜びを見せる。異次元のエネルギーは竜也に反応して、力を分け与えていた。だが流れ込んでくるこのエネルギーは、彼にさらなる暴走をもたらしていた。

「オレは戦う・・思い上がった偽りの正義を、全て叩きつぶす!」

 怒りと力を爆発させて、竜也が光輝たちに迫る。だが今の彼にもたらしている巨大な怒りは、異次元のエネルギーが促進させているものだった。

「落ち着くんだ、竜也くん!その力は・・!」

「吉川光輝、オメガ、お前もこの手で倒す!」

 呼びかける光輝だが、竜也は聞こうとしない。竜也は不気味なオーラを身にまとって、ゆっくりと光輝に向かって歩いてくる。

「このまま放っておいたら、竜也くんが力にのみ込まれてしまう・・止めるしかない・・オメガの力を叩き込んででも・・・!」

 光輝が声を振り絞ると、ヒカルを一矢と太一のいるほうに促す。

「ヒカルちゃん・・一矢さんと太一くんのそばについていてくれ・・オレが竜也くんを止める・・・!」

「光輝さん・・・!?

 光輝の呼びかけにヒカルが当惑を浮かべる。

「この仮面ライダーオメガとしての力と正義、今こそ使うときなんだ・・でもきっと、その力は周りにも被害を及ぼしてしまう・・だから、安全なところまで離れていてほしい・・・」

「光輝さん・・・」

「大丈夫・・僕は絶対に死なない・・僕がいなくなったら、ヒカルちゃんやくるみちゃん、みんなにイヤな思いをさせることになるから・・・」

 戸惑いを見せるヒカルに頷いて、光輝が竜也に向かっていく。

「光輝さん!」

 ヒカルが叫ぶ前で、光輝がスピリットカリバーを手にしてエネルギーを集中させる。

「竜也くん、世界の平和とみんなの自由を守るため、オレが君を止める・・スピリットスラッシャー!」

 光輝が竜也に向けてスピリットカリバーを振りかざして、光の刃を放つ。竜也も持てる力を振り絞って飛びかかり、光の刃にぶつかる。

 竜也は負けじと力を上げていく。しかし精神面だけでなく、彼の肉体も上昇していくパワーに耐えられなくなってきた。

「ぐっ!・・ぐぅぅ・・・!」

 体を駆け巡っていく激痛を感じて、竜也が顔を歪める。彼の体に亀裂が起こり始め、激痛を植え付けてきていた。

「このぐらいのことで・・止まるオレではないぞ!」

 押し寄せる痛みに耐えながら、竜也が光輝に向けて力を振り絞る。光輝も負けじと力を集中させる。

「竜也くん・・元の君に戻ってくれ・・・!」

「吉川光輝・・オメガ・・オレは・・お前を・・・!」

 力だけでなく意思もぶつけ合う光輝と竜也。2つの力の光が入り混じり、世界さえも揺るがしていく。

「竜也くん・・・竜也・・くん・・・!」

 光輝が竜也を救おうと、必死に手を伸ばそうとする。しかし光の影響か、思うように動くことができず、竜也に手が届かない。

「オレは救い出す・・世界も、竜也くんの心も・・・!」

 光輝が最後の力を振りかざして、スピリットカリバーを振りかざした。スピリットカリバーの切っ先が、竜也の体に命中した。

 竜也から紅いオーラが一気に放出されて抜けきっていった。憎悪を抱えたままだったが、竜也は脱力して倒れていく。

 だがそのとき、光輝が身に着けていたベルトが突然、砕けるように消えた。同時に彼のオメガへの変身が解けた。

「えっ・・・!?

 思いもしなかったことに、光輝は驚きを隠せなくなった。ベルトも消えて、彼はオメガに変身することができなくなってしまった。

「そんな・・オメガが・・消えるなんて・・・!?

 変身の解けた自分の両手を見つめて、光輝が愕然となって震える。

「光輝さん・・・」

 絶望を募らせていく光輝を見つめて、ヒカルも困惑する。

「まさかあれだけの憎悪の力を抑えこんでしまうなんてね・・」

 そんな光輝たちの前に、キバランたちが声をかけてきた。

「だけどこれでオメガユニットが壊れてしまった・・吉川光輝は、2度とオメガになることはない・・」

「それに世界の次元の歪みも、面白い方向に向かってるみたいだよ〜♪」

 キバリン、キバルンが続けて光輝たちに語りかけてくる。彼らが見上げた空は、次元の穴がさらに広がってきていた。

 その穴の中に、世界を押しつぶそうとしている邪悪な存在があった。

「全ての仮面ライダーが集まっている今が好機・・・」

 次元の穴の中から不気味な声が響いてきた。穴の中に不気味な眼光がきらめいていた。

「お前は・・お前は誰なんだ!?

 光輝が立ち上がって穴に向かって声を張り上げる。

「あなたなら、オメガになる前から仮面ライダーのファンだったあなたなら気付けると思うんだけど・・?」

 感情をむき出しにしている彼に、キバランが言葉を投げかけていく。

「ショッカーからデルザー軍団までの組織を支配し、仮面ライダーを苦しめてきたお方・・」

「それって・・まさか・・・!?

 キバランが告げた言葉に心当たりがあり、光輝が驚愕した。

「そう・・あの大首領・・あらゆる世界で怪人を生み出してきた存在の魂よ・・・」

 キバランのこの言葉で、光輝の緊張は一気に膨らんだ。

 仮面ライダーたちによって壊滅させられたショッカーからデルザー軍団までの悪の組織。その全てを支配していたのが岩石大首領である。

 岩石大首領も仮面ライダーたちの活躍で倒れたはずだった。だがその魂は異次元の中で存在し、脱出と世界の破滅の時を待っていたのである。

「大首領の魂は、次元の狭間で力を蓄えていたのよ・・」

「こうして次元に穴が開いたことで、大首領はこの世界に蘇る・・」

「大きくなった大首領の大きなパワーに押しつぶされて、この世界は一気に壊滅するんだからね〜・・」

 キバラン、キバリン、キバルンが妖しく語っていく。大首領の復活で、世界は一気に歪みを広げようとしていた。

 

 

第13章へ

 

小説

 

TOP

inserted by FC2 system