仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第9章

 

 

 BLACKRX、シンの前に立ちはだかったのはブラック将軍だった。

「改造手術を施されている仮面ライダー。そのうち2人は、私と同じブラックの名を持つ者・・」

 3人のライダーを鋭く見据えるブラック将軍。

「全ての世界の中で、ブラックはただ1人。この私だけでいい!」

 ブラック将軍が言い放ち、軍服を脱ぎ捨てる。すると彼の姿が不気味な怪人へと変わった。

 最強怪人、ヒルカメレオンである。

「覚悟しろ、仮面ライダー!この私自ら、貴様らの死刑を執行する!」

 飛びかかってきたヒルカメレオンに対して、BLACKたちは横に飛んで回避する。

「お前たちにこれ以上、命を弄ばせはしない!」

 シンがヒルカメレオンに迫り、爪を振りかざす。だが突然、ヒルカメレオンの姿がシンたちの視界から消えた。

「いない・・!」

「姿を消したか・・!」

 シンとBLACKが声を上げる。周りを見回すが、ヒルカメレオンの姿が見当たらない。

「まずは貴様からエネルギーをいただかせてもらうぞ・・!」

 ヒルカメレオンがシンの後ろに姿を現した。彼の長い管状の口が、シンの体に刺さった。

「ぐっ!」

 苦痛を覚えるシンから、ヒルカメレオンがエネルギーを吸い出していく。

「そうはさせない!」

 BLACKがシンを助けようとするが、ヒルカメレオンがシンを盾にしてきた。

「フッフッフ・・これでは攻撃できんだろう・・!」

「オレに構わずに攻撃しろ!オレはちょっとやそっとで音を上げたりはしない!」

 不気味な笑みを浮かべるヒルカメレオンと、BLACKRXに呼びかけるシン。

「なら少し耐えてくれ!すぐにヤツを引き離す!」

 BLACKがシンに向けて呼びかけると、意識を集中する。

「キングストーンフラッシュ!」

 BLACKがベルトからキングストーンのエネルギーを光にして放出する。その閃光に当てられて、ガラガランダが怯んでシンから離れる。

 シンも巻き込まれてダメージを受けたが、身体能力、自然治癒力の高まりで彼の受けたダメージは大きくならなかった。

「大丈夫か!?力は加減してはいるが・・!」

「気にするな・・このぐらいで音を上げたりしないと言っただろう・・」

 声をかけるBLACKにシンが答える。怯んでいたヒルカメレオンが再び姿を消した。

「人の血を吸うヒルのようにエネルギーを吸収し、カメレオンのように周囲に同化して姿を消す・・姑息なマネを・・!」

「オレに任せてくれ!ヤツの居場所を見つけ出す!」

 いら立ちを見せるシンに、RXが呼びかけてきた。

「マクロアイ!」

 RXがヒルカメレオンの居場所を探るため、「マクロアイ」を発動させた。BLACKの持つ「マルチアイ」が進化した能力で、透視能力が加わっている。

 RXのマクロアイが、透明になっているヒルカメレオンの居場所を捉えた。RXがその場所に飛び込み、ヒルカメレオンをつかんで投げ飛ばした。

 また姿を消さないうちに攻撃しようと、BLACKがヒルカメレオンに向かっていく。

「ライダーパンチ!」

 エネルギーを集中させたBLACKのパンチが、ヒルカメレオンの左肩に命中した。だが決定打にはならなかった。

「おのれ、ライダー・・だがまだだ・・・!」

 ヒルカメレオンがうめきながら、また姿を消す。RXがマクロアイでヒルカメレオンの行方を探る。

 だが次の瞬間、RXたちに向けてビームが放出された。ビームによる爆発に彼らは襲われた。

「ぐっ!」

「ごあっ!」

 吹き飛ばされて横転するRXたち。ヒルカメレオンのパワーは格段にアップしていた。

「私の位置を捉えるとは、面白い能力を持っているな。だがたとえ私の居場所や攻撃が見えたとしても、貴様らが私に勝つ可能性はゼロだ!」

 姿を現したヒルカメレオンが哄笑を上げる。高まっている回復力で、BLACKRXもシンもすぐに立ち上がった。

「今の攻撃を受けて立てるとは・・それも改造人間としての力か・・」

「確かにオレたちは改造人間だ・・だが、それでもオレたちは人間だと思っている・・・!」

 呟きかけるヒルカメレオンに、BLACKが言葉を返す。

「体は人間からかけ離れてしまっていても、魂と正義は人間と変わらない・・!」

「命を弄ぶお前たちから植えつけられたこの力を、オレたちはお前たちを倒すために使う・・お前たちの企みを、絶対に許してなるものか!」

 RXもシンもヒルカメレオンに向けて決意を言い放つ。劣勢に立たされても、彼らの自由と平和を願う心は少しも揺らいでいなかった。

「その強い意思は褒めておいてやろう・・だが実力が上なのはこの私だ!」

 言い放つヒルカメレオンが体を震わせる。すると彼の姿が何人にも増えていく。

「これは・・!?

「透過能力を逆利用して、分身を作り出したのだ!お前たちに本物が見分けられるか!?

 声を荒げるシンの前で、ヒルカメレオンが高らかに言い放つ。

「マクロアイ!・・・体を振動させて、何人もいるように見せている・・しかもその振動で、本物と偽者が瞬間的に入れ替わっている・・・!」

 ヒルカメレオンの実態を見抜こうとしたRXが、彼の分身能力に驚かされることになった。

「たとえお前たちの透視能力でも、私のこの動きは見抜けまい!じわりじわりと貴様らを追い詰めてくれるぞ、仮面ライダー!」

 ヒルカメレオンが言い放って、分身とともに迫ってきた。その無数の爪と牙にRXたちが切り裂かれていく。

「このままではやられてしまう!脱出しなければ!」

 BLACKが声と力を振り絞って、意識を集中する。RXも彼に合わせる。

「キングストーンフラッシュ!」

 2人の黒のライダーが放った閃光が、分身を伴って押し寄せてきていたヒルカメレオンを怯ませた。増えていた彼の分身が光の中で消えていった。

 ヒルカメレオンの分身攻撃を打ち破ったものの、BLACKRXも体力を大きく消耗した。

「本当に侮れないな、貴様らの力は・・だが今度こそ終わりだ・・」

 ヒルカメレオンは勝ち誇り、BLACKに迫った。立ち上がろうとするBLACKだが、ダメージが回復していない。

「まずは貴様だ、仮面ライダーBLACK!」

 そのとき、BLACKにとどめを刺そうとしたヒルカメレオンが横から突き飛ばされた。突然のことにBLACKだけでなく、RXもシンも驚きを感じていた。

「待たせたな、君たち・・遅れてすまなかった・・」

 BLACKに声をかけてきたのは新たなる仮面ライダーZO麻生(あそう)(まさる)だった。さらにもう1人のライダー、J瀬川(せがわ)耕司(こうじ)も駆けつけていた。

「貴様たちは・・!」

「オレは仮面ライダーZO!」

「仮面ライダーJ!」

 声を荒げるヒルカメレオンに、ZOJが名乗りを上げる。

「自然を、世界を破壊しようとするお前たちを、オレは許さない!」

「ほざくな!何人来ようと、我々の作戦を邪魔することはできぬわ!」

 言い放つJにヒルカメレオンが高らかに言い返す。彼は再び体を震わせて、分身を作り出した。

「振動を使っての分身と透明化か・・だが、ムダだ・・!」

「精霊たちが、本物のお前の居場所を教えてくれる!」

 ZOJが言い放ち、2人同時にパンチを繰り出す。2人のパンチが的確に、本物のヒルカメレオンに命中した。

「くっ!・・お前たちにも見抜かれるとは・・・!」

 憤りを見せるヒルカメレオンが、とっさにビームを放つ。RXに向かって放たれたビームだが、RXの体が青色の液体へと変わっていった。

 液体はヒルカメレオンの周りを取り巻き、その肉体に刺激を与えてダメージを与えていく。

 倒れたヒルカメレオンの前で、液体が人の形を取る。その姿はRXではない別の仮面ライダーだった。

「貴様は・・!」

「オレは怒りの王子!RX!バイオライダー!」

 ヒルカメレオンに向けて名乗りを上げるライダー。RXの多段変身形態「バイオライダー」である。

「バイオブレード!」

 バイオライダーが剣「バイオブレード」を手にして、ヒルカメレオンに切りかかる。その刃を後ろに下がってかわしていくヒルカメレオンだが、光を宿したバイオライダーの一閃「スパークカッター」で、エネルギーを吸収する長い口を切り裂かれた。

「おのれ!これで勝ったと思うな!」

 ヒルカメレオンが地面に両手をついて、エネルギーを送り込む。その地面から熱が放出され、バイオライダーを追い込んでいく。

「今のお前の体は熱に弱い!熱エネルギーで朽ち果てるがいい、バイオライダー!」

 ヒルカメレオンがさらにビームを放出していく。その熱がバイオライダーを追い詰めているかに見えた。

 だがバイオライダーの姿が変わっていた。金属質のボディと強いパワーを備えたライダーである。

「貴様・・!」

「オレは炎の王子!RX!ロボライダー!」

 声を荒げるヒルカメレオンに、「ロボライダー」が名乗りを上げる。RXのもう1つの多段変身形態で、バイオライダーとは対照的にパワー重視の能力を備えている。

「お前が引き出した熱エネルギーは、今のオレにとってパワーを上げる活性剤となっている!ヒルカメレオン、いや、ブラック将軍、お前の攻撃は通用しないぞ!」

「おのれ・・おのれ、仮面ライダー!」

 言い放つロボライダーに、ヒルカメレオンが姿を透明にして襲いかかる。ロボライダーの不意を突いて背後からしがみつくヒルカメレオンだが、ロボライダーのパワーをねじ伏せることができず、逆に反撃のパンチを受けて押されることになった。

「ボルティックシューター!」

 ロボライダーが光線銃「ボルティックシューター」を手にして、光の弾丸「ハードショット」を発射する。ヒルカメレオンが射撃されて膝をつく。

「今だ!」

 BLACKが呼びかけると、ZOJがヒルカメレオンに向かっていく。同時にロボライダーがRXへと戻る。

ZOキック!」

「ライダーキック!」

 ZOJのキックがヒルカメレオンに命中する。突き飛ばされたヒルカメレオンのそばに、シンが立ちはだかる。

 シンが両手の爪と刃「ハイバイブネイル」でヒルカメレオンを切り付けていく。

「ライダーパンチ!」

 そこへBLACKがエネルギーを込めたパンチを、ヒルカメレオンに叩き込む。立て続けに攻撃を受けていくヒルカメレオンを見据えて、BLACKRXが並び立ち、大きくジャンプする。

「ライダーキック!」

RXキック!」

 エネルギーを集めたBLACKの右足とRXの両足が、ヒルカメレオンに叩き込まれた。ダメージが蓄積され、ヒルカメレオンは姿を消すことも分身を作り出すこともできなくなっていた。

「全ての世界を守るためにオレは、オレたちは戦い続ける!リボルケイン!」

 RXがベルト「サンライザー」から剣状スティック「リボルケイン」を取り出す。刀身に光を宿したリボルケインで、RXがヒルカメレオンの体を貫いた。

「この私が・・敗れるとは・・・だが仮面ライダー、貴様たちはいずれ、ハイパーショッカーの軍門に下ることになる・・お前たちを待っているのは・・敗北と破滅だけ・・・!」

 弱々しく笑みをこぼすヒルカメレオンから、RXがリボルケインを引き抜いた。貫かれたヒルカメレオンの体から火花が散る。

「地獄で待っているぞ・・仮面ライダーたちよ・・・」

 RXの「リボルクラッシュ」によって、ヒルカメレオンが倒れて爆発を起こした。

「終わった・・本当に手ごわい相手だった・・・」

「少しでも気を抜いていたら、負けていたのはオレたちだったかもしれなかった・・・」

 JBLACKが肩の力を抜いて、束の間の休息を取った。だが彼らはすぐに気を引き締めた。

 RXたちを戦闘員たちが取り囲んでいた。

「諦めの悪いヤツらが・・・!」

「お前たちが何を企んでいようと、オレたちはお前たちの企みを阻止してみせるぞ!」

 シンとZOが言い放って身構える。RXたちも戦闘員との戦いに身を投じるのだった。

 

 翔太郎、竜、士の前に立ちはだかったのは、ジャークとシャドウだった。翔太郎が2人を見据える中、彼と意識を共有しているフィリップが2人に関する情報を口にする。

“ジェネラル・シャドウ・・かつてブラックサタンに所属していた男で、スペードのキングと名乗っている。そしてジャーク将軍は、クライシス帝国の最高司令官。2人とも戦闘能力、指揮能力ともに高い。侮らないほうがいいよ。”

「スペードのキングか・・ジョーカーのオレとしては因縁の相手になりそうかな・・」

 フィリップの説明を聞いて、翔太郎がシャドウに挑もうとする。

「世界の破壊者、ディケイドと2人で1人の仮面ライダー、Wか・・シャドウよ、どちらを狙っている?」

「私はディケイドとの勝負を所望する。世界の破壊者の力がどれほどのものか、一騎打ちをしてみたい・・」

 ジャークが投げかけた問いかけに答えて、シャドウが士を見据える。

「よかろう・・では予はWを葬るとしよう・・・」

 ジャークが手にしていた杖を、シャドウがフェンシングのような剣を手にして構える。

「オレの相手がしたいとは、物好きなヤツもいたもんだ・・後悔することになるぞ・・」

「貴様との勝負ができるなら、敗北しようと後悔はせぬ。だがオレを侮っていると、敗北するのは貴様のほうだ、ディケイド。」

 強気な態度を見せる士に、シャドウが剣の切っ先を向ける。

「仕方がないな・・それじゃそっちは任せたぜ・・」

 士にシャドウの相手を譲り、翔太郎がジャークに視線を戻す。

「ジャーク将軍、お前の罪を数えろ。」

 翔太郎がフィリップと声を合わせて、ジャークに向けて言い放つ。距離を詰めて攻撃を繰り出す翔太郎だが、ジャークが杖を掲げてパンチとキックを防いでいく。

「大きな体に似合わず、動きも速くて的確だな・・」

「見事な動きだ。仮面ライダーの1人というだけのことはある・・いや、貴様は2人で1人の仮面ライダーだったな・・」

 互いの力を褒め合う翔太郎とジャーク。

「だが予の力はこの程度ではない。クライシス帝国最高司令官の力、思い知らせてくれるぞ・・・!」

 ジャークが言い放つと、来ていた装束を脱ぎ捨てる。その中から現れたジャークの姿は、機械的かつ屈強なものだった。

「それは・・・!」

「これが予の真の姿、最強怪人、ジャークミドラ!仮面ライダーWよ、ここで粉々に打ち砕いてくれる!」

 声を上げる翔太郎に、ジャークが変身した最強怪人、ジャークミドラが言い放つ。ジャークミドラが巨大な剣を手にして、翔太郎に迫る。

 軽やかに攻撃をかわそうとする翔太郎だが、ジャークミドラはパワーが高いだけでなくスピードも速く、剣の攻撃を受けることになった。

「左!」

 竜がジャークミドラに立ち向かおうとしたが、新たに現れた怪人に行く手を阻まれる。ブドウネアブラムシの怪人、フィロキセラワームである。

「お前の相手はオレがしてやる。パワーもスピードもオレのほうが上だ。」

「それはどうかな?オレのスピードについてこられるかな?・・振り切るぜ!」

 強気な態度を見せるフィロキセラワームに、竜が立ち向かう。エンジンブレードを振りかざす彼だが、フィロキセラワームの固い表皮を切り付けることができない。

「だから言っただろう、パワーはオレのほうが上だと・・そしてスピードも・・!」

 フィロキセラワームがエンジンブレードの刀身をはねのける。次の瞬間、フィロキセラワームが高速で動き出し、竜の視界から消える。

 さらに次の瞬間、竜が目に見えない攻撃に襲われ、アクセルの装甲から火花が散る。フィロキセラワームはワーム特有の高速で竜を攻め立てていた。

「これがワームの超スピードか・・だが、オレはそれすらも超える!」

 竜が言い放つと、アクセルメモリを信号機とストップウォッチを模したガイアメモリ「トライアルメモリ」と入れ替えた。

Trial.”

 竜のまとっているアクセルの装甲が赤から黄色、青へと変わっていく。同時に装甲の外装が弾け飛んだ。

 アクセルの超高速形態「アクセルトライアル」である。

「お前はトライアルのスピードと勝負したがるのだろうが、オレにはそんな暇はないのでな・・!」

 フィロキセラワームに言い放つと、竜が再び手にしたトライアルメモリのスイッチを入れる。トライアルメモリを上に投げた次の瞬間、彼はワームを上回るスピードを発揮した。

 一気にスピードを上げた竜は、フィロキセラワームの高速の動きを捉えていた。周囲がスローで動いているような感覚の中、竜がフィロキセラワームとの距離を詰めた。

 空中に放り投げられたトライアルメモリがカウントを刻む中、竜とフィロキセラワームが高速での攻防の連続を繰り広げていく。

 アクセルトライアルはパワーでは通常形態より劣るが、超高速による連続攻撃の蓄積はそのパワーを超えるものとなっている。ただしその能力に大きな負担がかかり、アクセルトライアルは10秒以上維持することができない。

 竜の発揮するスピードは、フィロキセラワームのスピードを超えて攻撃を命中させていく。その命中の衝撃の軌跡が「T」の字を描いていた。

 トライアルメモリのカウントがタイムリミットに近づく中、竜がフィロキセラワームにキックの連続を叩き込んでいく。

 さらに竜はエンジンブレードを手にして、フィロキセラワームをT字に切り付ける。その後、彼は落ちてきたトライアルメモリを手にして、スイッチを押して停止させる。

Trial,Maximum drive!”

 音声を発するトライアルメモリのカウントは、98を示していた。

「9秒8・・それがお前の絶望までのタイムだ・・・!」

 竜が立て続けに繰り出した「マシンガンスパイク」と「マシンガンスラッシャー」を受けて、フィロキセラワームが倒れて爆発を起こした。竜はすぐにアクセルトライアルから通常形態へと戻った。

「けっこう速いんだね・・ビックリしちゃったよ・・」

 その竜に向けて声がかかった。死神博士からの療養と再調整を受けたドラスが現れた。

「でもね、僕も速くなったんだよ・・お兄ちゃんより速くなったと思うよ・・」

 無邪気に話してきた瞬間、ドラスの姿が竜の視界から消えた。そして彼は目に見えない攻撃に襲われ、アクセルの装甲から火花が散る。

「これは、ヤツと同じ超スピード・・・!?

 ドラスが発揮したスピードに驚愕する竜。死神博士から施された再調整で、ドラスはワームの超高速を植え付けられていた。

「くっ・・トライアルが使えれば・・・!」

 竜がトライアルを使えないことに毒づく。使ってもスピードで対応できるどころか、体にかかる負担に押しつぶされて逆に敗北を招くことが、彼には分かっていた。

「照井!」

 翔太郎が竜のピンチに声を上げるが、ジャークミドラの攻撃を対応するのに手一杯になっていた。

 一方、士はシャドウとの一騎打ちを繰り広げていた。剣を連続で突き出していくシャドウだが、士はその突きを次々にかわしていく。

「なかなかやるな。だがそろそろ反撃させてもらうぜ。」

 士がソードモードのライドブッカーを構えて、シャドウに立ち向かう。彼が繰り出す一閃を、シャドウも回避と剣での防御でかいくぐっていく。

「いいぞ、ディケイド。これほど手応えのある勝負をさせてくれる仮面ライダーは、ストロンガーに続いて2人目だ。」

「当然だ。だがそれで満足していていいのか?」

 褒め言葉を投げかけるシャドウに、士が強気な態度を見せる。

「オレの力と旅の道は、まだまだこんなもんで終わったりはしないんだぜ。」

「それは興味深いですね・・」

 そこへ真木が現れて、士に声をかけてきた。

「ディケイド、私は1つだけ君に共感しているものがあります。それはあなたが破壊者であることです。」

 真木が肩に乗せている人形に目を向けたまま、士に語りかけていく。

「物事は終わりを迎えて完成する。世界の破壊者であるあなたは、全てを完成へと導く、まさに栄光の存在なのです・・」

「そんな褒め言葉を言われても、全然嬉しくないな・・確かにオレは世界の破壊者だ。だがオレが破壊するのは、世界を怖し、世界のつながりさえも壊そうとしている、お前らみたいな連中だ。」

 士が言葉を返して、真木にライドブッカーの切っ先を向ける。

「オレをそんな風に崇拝するのはやめろ。オレは通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。」

 士が言い放って、ライドブッカーをガンモードにして発砲する。その光の弾丸は真木を外したが、その衝動で彼の肩の人形が地面に落ちる。

「な、何でことを!」

 冷静沈着から一変して、人形を拾い上げて心配する真木。何とか落ち着きを取り戻して、彼は士に視線を戻した。

「非常に残念です・・あなたのような人を敵に回すことを・・・」

 真木が言いかけると、恐竜のグリードへと変身する。

「邪魔をするな、真木!これはオレとディケイドの勝負だ!」

 シャドウが真木に不満の声を上げる。しかし真木は引き下がろうとせず、右手にエネルギーを集めていく。

「私の美学は結末にあります。あなたたちの勝敗も破滅も、私が追い求めているものに他なりません・・」

 真木が士に向けて紫のエネルギーの球を放つ。士は横に飛んで球をかわすが、真木が続けて放った光線に襲われる。

「ぐっ!」

 激しい衝撃に苦痛を覚えて、士がうめく。さらに真木からの念力が加わり、士が地面に叩き伏せられる。

「コイツ・・思った以上のパワーを持っている・・・!」

 真木の驚異の力に驚愕する士。起き上がる彼の前に、真木が立ちはだかる。

「これが終焉の力。君に当てはめれば、完全なる破壊の力です・・ディケイド、門矢士くん、ここがあなたの完結の場所です・・」

「オレが、こんなところで・・・!」

「結末をもたらす破壊者に結末を与える・・実に皮肉ですね・・」

 真木が士に向けてとどめを刺そうとする。翔太郎もジャークミドラに追い詰められ、竜もドラスのスピードに対応できない。

 そのとき、突然士たちのいる場所の上空の空間が突然歪み出した。世界と世界をつなぐトンネルが新たに出現したのである。

 そのトンネルから赤色の船が現れた。形状と赤い帆に記されたマークから、それは海賊船だった。

「あれは・・・!?

 出現した海賊船に竜が声を荒げる。その海賊船から6人の男女が降りてきた。

「ここに大いなる力があるとのことだが・・」

「何か変だよ、ここ・・僕たちがいた世界と違う気が・・・」

 青い服の青年、ジョー・ギブケンが周りを見回し、茶髪の青年、ドン・ドッゴイヤーが不安の声を上げる。

「それに、ザンギャックでもスーパー戦隊でもない方たちがいるみたいですし・・」

「こんなんじゃ大いなる力なんてないんじゃないの?」

 桃色の服の少女、アイム・ド・ファミーユも周りを見回し、黄色の服の少女、ルカ・ミルフィが不満を口にする。

「おー!これはもしかして、仮面ライダーではないですかー!」

 そのとき、もう1人の茶髪の青年、伊狩(いかり)(がい)が大声を上げてきた。

「知ってるのか、鎧?」

 赤い服の青年、マーベラスが鎧に問いかけてきた。

「もちろんですよー!仮面ライダーは、スーパー戦隊と同じく世界や宇宙の平和を守り続けてきたスーパーヒーローたちですよ!まさか実際にこうして会えたなんて、まさに夢みたいですよー!」

 鎧がマーベラスたちに熱く語っていく。彼はスーパー戦隊だけでなく、仮面ライダーについても詳しかった。

「そしてあそこにいるのは、仮面ライダーディケイド!世界の破壊者と言われながらもいろいろな世界を渡り歩いているライダーです!確かシンケンジャーのみなさんが会ったことがあるそうですよ!」

「ディケイド・・その名ならアカレッドから聞いたことがある・・」

 鎧の説明を聞いて、マーベラスが頷く。彼はかつて「赤き海賊団」に所属しており、そのリーダーだったアカレッドからディケイドのことを聞かされていた。

「何にしても、ここにお宝も大いなる力もないんだろ?だったらさっさとおさらばだ・・」

「そうだな・・いつまでもこんなところにいても仕方がないからな・・」

 マーベラスが引き上げようとして、ジョーも同意する。

「えっ!?ちょっと待ってくださいよー!せっかく仮面ライダーのみなさんに会えるんですからー!」

「僕もちょっと関わり合いになるのはよくないって思うよ・・」

「あたしもパス。目的のものはないし、面倒なのはゴメンだし。」

 呼びかける鎧だが、ドンもルカも引き下がろうとする。

「待ちなさい、あなたたち・・」

 そこへ真木に声をかけられて、マーベラスたちが足を止めた。

「何者かは知りませんが、私たちの前に堂々と現れて、何事もなく帰れるなどという好都合があると思っているのですか?あなたたちにも、よき終わりを与えてあげますよ・・」

「ということだが・・どうするんだ、キャプテン・・?」

 真木の言葉を聞いて、ジョーが疑問を投げかける。するとマーベラスが不敵な笑みを浮かべて、真木たちに振り返った。

「上等だ。ここにはお宝はないが、そこまでケンカを売られて、黙って帰るわけにはいかないな・・」

「どうやらアイツらは、あたしたちに痛い目にあわされたいみたいね。」

 マーベラスに続いてルカも強気な態度を見せる。

「えー!?・・このまま行っちゃったほうがいいと思うんだけど・・」

「いいじゃないですか、ハカセさん。ここで何が起こるか楽しみだったんです・・」

 不安の声を上げるドンだが、アイムも穏やかながらも、対決の意思を見せていた。

「オレたちに挑戦状を叩き付けてきたんだ。後悔するなよ。」

 マーベラスが言い放つと、ジョーたちとともに特有の携帯電話「モバイレーツ」、「ゴーカイセルラー」を取り出した。

「ゴーカイチェンジ!」

 モバイレーツ、ゴーカイセルラーに鍵「レンジャーキー」を差し込んで回す。

“ゴーーカイジャー!”

 音声が発せられると同時に、マーベラスたちが特有のスーツを身にまとう。その姿は仮面ライダーとは違う姿だった。

「これは、仮面ライダーではない・・・!?

「な、何者だ、貴様ら!?

 ジャークミドラが驚きの声を上げ、シャドウがマーベラスたちに問い詰める。

「ゴーカイレッド。」

「ゴーカイブルー。」

「ゴーカイイエロー♪」

「ゴーカイグリーン!」

「ゴーカイピンク。」

「ゴーーカイシルバー!」

 マーベラス、ジョー、ルカ、ドン、アイム、鎧がそれぞれ名乗りを上げる。

「海賊戦隊!」

「ゴーカイジャー!」

 マーベラスが言い放ち、6人が声をそろえる。スーパー戦隊の世界から、海賊戦隊、ゴーカイジャーがやってきた。

 

 

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