仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第7章

 

 

 1号と2号の前にゾルが立ちはだかった。因縁の相手を目にして、ゾルが不敵な笑みを浮かべてきた。

「仮面ライダー、お前たちには手ひどい目にあった・・だがこの恨みも今日で晴れる・・お前たちを葬り去ることでな!」

 ゾルは高らかに言い放つと、上着を脱ぎ捨ててきた。彼が正体を現し、黄金の体毛をした最強怪人、狼男に変身した。

「ハイパーショッカーは、単に組織の集まりというだけではない。それぞれの組織の知恵と科学力を用いることで、我々は自分自身を強化させることに成功した・・」

 狼男が笑みをこぼして、1号と2号に向けて右手をかざす。

「たとえお前たち2人がかりでも、今の私を止められると思わないことだな!」

 狼男は言い放つと素早く飛びかかり、爪で1号と2号を切り付けてきた。

「ぐっ!」

「何というスピード・・!」

 狼男の速さに1号と2号が毒づく。足を止めて振り返った狼男が両手を伸ばし、指差しから弾丸を発射してきた。

「危ない!」

 声をかける1号が、2号と同時に弾丸をかわす。だがすぐに2号に狼男が詰め寄ってきて、爪での攻撃を仕掛けてきた。

「一文字!」

 1号が狼男に向かっていくが、気付いた彼に突撃を回避されてしまう。

「大丈夫か、一文字!?

「このくらいで弱音は吐けない・・だがヤツは格段に強くなっているのも確かだ・・!」

 声をかけ合う1号と2号。狼男の強さは、かつて2人が相手をしていたときを大きく上回っていた。

「ならば一気に決めるしかないということか・・・!」

 1号が先に飛び出して、狼男に向かっていく。だが彼が繰り出すパンチは、狼男に軽々とかわされていく。

「ライダーパンチ!」

 1号に注意を向けていた狼男に、2号が飛びかかってきた。力を込めたライダーパンチを体に受けた狼男だが、押されただけですぐに踏みとどまった。

「スピードだけではない・・パワーも増している・・・!」

 ライダーパンチにも耐えた狼男に、2号はさらに驚きを感じていた。

「だが負けるわけにはいかない・・オレたち仮面ライダーは、悪から世界を守るために戦い、勝たなければならない!」

「そうだ・・人々に希望がある限り、仮面ライダーは負けない!」

 決意を言い放って、1号と2号が狼男を見据える。

「性懲りもなく我々の邪魔ばかり・・仮面ライダー、貴様らの存在は実に不愉快だ・・・!」

 いら立ちを見せる狼男だが、すぐに笑みを浮かべてきた。

「だがそれもこれで終わる・・この手で貴様らの命を絶ってくれる!」

 狼男が1号と2号に向かって飛びかかってきた。だが突然、彼が横に突き飛ばされた。

「これは!」

 2人のライダーが声を上げながら振り返る。その視線の先に、新たなる2人の仮面ライダーが現れた。

 クウガ、五代(ごだい)雄介(ゆうすけ)とアギト、津上(つがみ)翔一(しょういち)である。

「お待たせしました。危ないところでしたね・・」

「みなさんが大変なときに遅れてしまって、すみません・・」

 雄介と翔一が1号と2号に声をかけてきた。彼らが飛び込んで繰り出したキックを受けて、狼男は突き飛ばされたのである。

「クウガ、アギト、ここというところで出てきたか・・・!」

 立ち上がった狼男が、雄介と翔一に目を向ける。2人が1号、2号とともに構えを取る。

「だが今の私に、たとえライダーが何人束になろうとも勝つことはできぬわ!この手でまとめて処罰してくれる!」

 狼男が素早く飛びかかり、爪を振りかざす。雄介と翔一は反応してその爪をかわして、反撃のパンチを繰り出す。

 それぞれ1発ずつパンチを当てた2人だが、再び素早く動く狼男に追撃をかわされる。

「本当に速い・・ペガサスになって狙いを定めるか・・・!」

 雄介が狼男に対して、打開の糸口を見出そうとした。だが狼男が翔一に向かって飛び込み、一気に詰め寄ってきた。

「まずはアギト、貴様だ!」

 狼男が翔一に向けて爪を振り上げた。だがその爪を翔一に受け止められた。

「何っ!?

 攻撃を止められたことに驚く狼男。彼の爪を止めた翔一のアギトとしての姿が、灼熱の炎のような赤い姿「バーニングフォーム」に変化していた。

「逃げられる前に一気に決める!」

 翔一は左手で爪を押さえたまま、右手に炎のようなエネルギーを集める。そのエネルギーを込めて繰り出された「バーニングライダーパンチ」が、動きを止められている狼男に叩き込まれた。

 重みのあるパンチを受けて、狼男はこのダメージのために動きが鈍る。その隙を狙って、雄介が狼男に追撃を仕掛けてきた。

 次々に雄介のパンチが狼男にヒットしていく。その瞬間ごとに、彼の変身しているクウガの体に、電撃とともに金色の装飾が施されていく。

 雷の力を帯びたクウガの形態「ライジングフォーム」。その中の「ライジングマイティ」へと雄介は変わっていった。

「ヤツらのパワーが上がっている・・だがいくらパワーがアップしたとしても、スピードは私のほうが上だ!」

 狼男はジャンプで雄介の猛攻をかわし、さらに素早く動いて彼と翔一の注意をかき乱す。

「やっぱこれじゃ追い付けないか・・だったら!」

 翔一が意識を集中すると、アギトのバーニングフォームのボディの外皮が剥がれて、まばゆい光を宿した新たな装甲が現れた。アギト最強の形態「シャイニングフォーム」である。

「それで行くのか・・だったらオレも!」

 雄介も意識を集中させると、クウガのボディが黒い装甲のような姿へと変化する。クウガの最強形態「アルティメットフォーム」である。

 バーニングフォームよりもパワーは若干劣るものの、スピードをはじめとした身体能力が格段にあがったシャイニングフォームとなった翔一と、黒い力と炎を宿す雄介。強化した2人に向かって、狼男が飛びかかる。

 狼男が振りかざしてきた爪をかわし、翔一は反撃に出てパンチとキックを叩き込んでいく。彼に攻撃が通じなくなり、狼男は焦りを感じながら後ろに下がる。

「これがアギトの力か・・ならば!」

 狼男が両手を突き出して、指差しから弾丸を放つ。翔一の前に雄介が立ちはだかり、放たれた弾丸を全身で受け止めた。

「ちょっと、そういうことやって大丈夫なんですか!?

「平気、平気・・って強がりたいけど、やっぱりちょっと痛い・・・」

 たまらず心配の声を上げる翔一に、雄介が苦笑いをこぼす。アルティメットフォームのクウガは、狼男の攻撃にしっかりと耐えていた。

「おのれ・・体勢を整えるしかないというのか・・・!?

 毒づいた狼男が雄介たちから退こうとしたときだった。彼を後ろから銃を構えている1人の人物がいた。

 翔一の仲間、氷川(ひかわ)(まこと)。彼は強化スーツ「G3-X」を装着して、翔一たちの救援と狼男の逃走阻止を行っていた。

「氷川さん、来てくれたんですか!?

「アンノウンとは違うようだけど、このまま野放しにしていい相手でもないようだ・・」

 喜びの声を上げる翔一に、誠が落ち着いた様子で答える。

「ここから逃がさない。お前たちのように人々を脅かす存在は、この手で止めてやる・・・!」

 誠が手にしている銃「スコーピオン」を発砲する。この射撃を受けて、狼男が怯む。

「今だ!」

 誠の呼びかけに雄介と翔一、1号と2号が頷く。

「行くぞ、一文字!」

「おうっ!」

 声をかけ合って、1号と2号が同時にジャンプする。

「ダブルライダーキック!」

 2人のライダーキックが、スピードの落ちている狼男に命中した。突き飛ばされた狼男を見据えて、雄介も右足に炎のエネルギーを集めて飛び上がる。翔一も意識を集中させると、彼の前に6本角を模したエネルギーが出現する。

 炎を足にまとわせた雄介の「アルティメットキック」と、エネルギーを帯びて突撃する翔一の「シャイニングライダーキック」が、狼男に叩き込まれた。炎と光の力でとどめを刺されて狼男が倒れる。

「まさか私が・・こんな形で敗れるとは・・・」

 力尽きた狼男が爆発を引き起こした。戦いを終えて、1号、2号、雄介、翔一、誠が合流する。

「ありがとうございます、氷川さん・・氷川さんが逃がさないようにしてくれたから・・」

「あの怪人を倒したのは君たちの力だ・・僕は大したことはしていない・・」

 感謝する翔一に誠が弁解を入れる。

「でも、それでも氷川さんのおかげです・・ありがとうございました・・・」

「ゾル大佐は倒れたが、ハイパーショッカーはまだ滅びていない・・」

 さらに感謝を見せていた翔一に、2号が声をかけてきた。

「みんなの援護に向かおう。君たちも力を貸してくれ・・」

「分かっています・・行きましょう・・」

 1号の呼びかけに雄介が頷く。彼らは他の仮面ライダーたちの援護に向かうことにした。

 

 V3とライダーマン、真司と渡の前に立ちふさがったのは死神博士だった。

「命を弄ぶお前たちの企みは、オレのこの手で止めてみせる!」

「オレもお前も科学と悪事に手を染めている・・命を弄んだ償いのためにも、この手でお前を倒すぞ!」

 V3とライダーマンが死神博士に向かって言い放つ。彼らを見据えて、死神博士が笑みをこぼす。

「我々の世界征服の妨害を幾度となく行ってきた仮面ライダー・・だが今度こそ、お前たちと人間たちに恐怖と絶望を与えるときがやってきた・・」

 死神博士は言い放つと、身に着けているマントで全身を包んだ。すると彼の姿がイカの怪人へと変わった。

「仮面ライダー、ここをお前たちの墓場にしてくれるぞ・・・!」

 死神博士が変身した最強怪人、イカデビルがV3たちに向けて触手を伸ばしてきた。V3たちはとっさに動いて触手をかわす。

「イカのバケモノ・・あんまりいい気がしないんだけど・・・!」

 真司が呟きながらイカデビルに立ち向かう。だが彼の突撃は、イカデビルに難なくかわされる。

「私は科学者だが、お前たちより劣っているとは思っておらぬ。知識も力も・・」

 イカデビルが触手を伸ばして、真司の首に巻きつける。動いて振り払おうとする彼だが、触手から抜け出せない。

「ロープアーム!」

 ライダーマンが改造手術を施している右手「カセットアーム」を「ロープアーム」に変えて、先端の爪を飛ばす。爪のついたロープがイカデビルに巻き付き、注意力を散漫にさせる。

「今の内だ・・!」

Advent.”

 真司がアドベントカードをセットして、ドラグレッダーを呼び出す。ドラグレッダーが口から炎の球「ドラグブレス」を吐き出して、真司を捕まえている触手を焼き切った。

「大丈夫か?」

「はい・・ありがとうございます。助かりました・・」

 ライダーマンに声をかけられて、真司が感謝の言葉を返す。

 V3と渡がイカデビルに攻撃を仕掛けていく。だがイカデビルは軽やかに動いて攻撃をかわしていく。

「さすがは仮面ライダー。さすがと言っておこう・・だが私も進化を遂げている・・・」

 不気味な笑みを浮かべて、イカデビルが右手を振り上げた。彼のこの行動にV3たちが身構える。

 しかし緊張の中、何も起こる気配がない。

「何も起きない・・・どういうことなんだ・・・?」

「気をつけろ、渡・・あれだけのヤツの動きに何もないということはない・・・!」

 疑問を感じる渡に、ベルトにセットされているキバットが呼びかける。

「気をつけろ!上から何か来るぞ!」

 V3が呼びかけると、ライダーマン、真司、渡が空を見上げる。上空から落下してきたのは、落下の熱で赤くなった、ボールほどの大きさの隕石だった。

「おいおい、オレみたいなことするなって!」

 慌てる真司が、渡と一緒に逃げるように隕石をよけていく。V3もライダーマンも的確に動いて隕石をかわしていく。

「強化した私の力は、宇宙の小隕石を落とすことが可能となった。仮面ライダー、これでお前たちを葬ってくれる!」

 イカデビルが右手だけでなく左手も動かしていく。真司たちに向かって、隕石が次々に落下してくる。

「このままではやられる・・隕石をコントロールしているヤツを倒すしかない!」

「それは分かってるんですけど・・うわっ!」

 V3の呼びかけに答えるが、真司は隕石が落下した爆発と衝撃に襲われて、激しく転倒する。

「もう、こうなったらコイツで・・!」

Final vent.”

 真司がアドベントカードをセットして、ドラグレッダーと一緒に飛び上がる。だが落ちてきた隕石にぶつかって、彼は叩き落とされる。

「くっ・・ジャンプしてのライダーキックをやろうとしても、隕石の格好の的になるだけだ・・・!」

 追い込まれていく状況に、ライダーマンが焦りの言葉を口にする。

「ムダな抵抗はやめることだ。お前たちを待っているのは、地獄への入り口だけだ・・」

 反撃することもできない真司たちを見て、イカデビルが不気味に笑う。

「地獄へ行くのはお前のほうだ。」

 そこへ紺色のドリルがイカデビルに向かってきた。イカデビルはとっさに動いて、その突進をかわした。

 真司たちの前に現れたドリルは、彼の変身する龍騎と同型の仮面ライダーだった。

「どうした?相変わらず間の抜けた戦い方をしていたのか?」

 真司に向かって紺色のライダー、秋山(あきやま)(れん)が声をかけてきた。ナイトに変身した彼が、必殺技「飛翔斬」でイカデビルに攻撃を仕掛けたのである。

「蓮、来てくれたのか・・助かった〜・・」

「オレの周りで好き勝手なことをやっている連中がいたんでな・・情報を集めてヤツらをしらみつぶしにしていたところで、ここに来たわけだ・・」

 安堵を浮かべる真司に蓮が事情を説明する。

「待て。私の言葉を無視して突っ走るのは賢明ではないぞ・・」

 さらに1人の仮面ライダーが現れた。イクサに変身した名護(なご)啓介(けいすけ)である。

「名護さんも来てくれたんですか・・・!」

「ファンガイアだけでなく、様々な怪物たちが罪を重ねていた・・そこにいるヤツのことも、その暗躍に気付いていた・・」

 渡が声をかけると、啓介は頷いてイカデビルに視線を戻す。

「死神博士と言ったな?命を弄ぶお前の罪は重い・・その命、神に返しなさい。」

「ナイトとイクサも現れたか・・だがそれでも、私には太刀打ちできぬ・・・!」

 言い放つ啓介に対して、イカデビルが不気味な笑みを浮かべる。彼のさらなる操作によって、再び隕石が落下してくる。

「また!?これじゃきりがないって!」

「だったら一気に終わらせてしまうのがいいのではないのか?」

 声を荒げる真司に蓮が呼びかける。思い立った真司が蓮と一緒にあるカードをセットした。

Survive.”

 真司と蓮がまとっている龍騎とナイトの装甲に変化が起こる。2人は最強形態「サバイブ」へと変身したのである。

「これなら何とか切り抜けられるかな・・!」

「できなければバーベキューにされるだけだ・・やるぞ、城戸!」

 真司と蓮がイカデビルに向かっていく。イカデビルが落下させていく隕石を、2人はかいくぐっていく。

「早いがこちらもパワーアップしたほうがよさそうだ・・お前もそうしなさい。」

「分かりました・・」

 啓介の呼びかけに渡が答える。啓介が携帯電話型の武器「イクサライザー」を取り出して、1、9、3の順に押していく。

“ラ・イ・ジ・ン・グ。”

 すると啓介のまとうイクサの装甲の外装が弾け飛び、新たな青い装甲が現れた。イクサの最強形態「ライジングイクサ」である。

「渡、こっちもキバっていくぜ!」

 キバットに呼びかけられて、渡が立ち上がる。

「タツロット!」

「了解でーす♪ビュビューン♪」

 渡の呼び声を受けて、黄金の竜、タツロットが駆けつけてきた。

「ホントにすっごいことになってるねー♪テンションフォルテッシモ♪」

 タツロットがハイテンションで飛び、渡のまとうキバの装甲の、力を制御する鎖を断ち切った。渡の左腕にタツロットがセットされると同時に、キバの装甲に黄金の光が宿る。

「変身!」

 タツロットの叫び声とともに、渡はキバの最強形態「エンペラーフォーム」への変身を果たした。

「いくらその姿やライジングになったといっても、長引けば不利になることに変わりはない。一気に終わらせるのです。」

「分かりました、名護さん・・」

 啓介の呼びかけを受けて渡が頷く。啓介はイクサ専用武器「イクサカリバー」を剣型の「カリバーモード」に変えて手にして、渡も魔皇剣「ザンバットソード」を引き抜いた。

 落下してきた隕石を、渡と啓介が手にした剣で切り裂いていく。その切れ味はすさまじく、小さな隕石を次々に両断していった。

「おのれ、ライダー・・だがいつまでそうしていられるか・・!」

「そのセリフ、そっくり返してやる・・」

 声を荒げるイカデビルに、蓮が「ダークブレード」を振りかざしてきた。とっさに動いて回避したイカデビルだが、隕石の操作を完全に妨害されていた。

「この私が、今の私が追い込まれているとは・・・!」

「そろそろこっちが火野球をぶつける番だ!」

Shoot vent.”

 毒づくイカデビルに向けて、真司が炎の弾を発射する。炎の弾をぶつけられて、イカデビルが突き飛ばされる。

「一気に決めるぞ、城戸!」

「あぁ!」

 蓮の声に真司が頷く。

Final vent.”

 2人がカードをセットすると、ドラゴン「ドラグランザー」とコウモリ「ダークレイダー」がバイクモードに変わる。真司と蓮がそれぞれのバイクに乗り込み、イカデビルに向かって突進を仕掛けた。

 2つの強大なエネルギーの突撃を受けて、イカデビルが大きなダメージを負う。

「おのれ・・私はまだ倒れたりは・・・!」

「いや、お前はここで朽ち果てるしかありません・・」

 膝をつくイカデビルの前に、イクサライザーを構える啓介が立ちはだかった。

「火遊びは終わりだ。私が火葬してあげます・・」

 啓介がエネルギーを集中させたイクサライザーを、イカデビルに向けて発砲する。エネルギー波「ファイナルライジングブラスト」が放たれる。

 膨大なエネルギー波の反動で、啓介が後ろに押される。エネルギー波の爆発で、イカデビルが大きく突き飛ばされる。

 踏みとどまって立ち上がるイカデビルの前に、ザンバットソードを構えた渡が立ちはだかった。

「今度こそ終わらせるよ・・キバット!」

「ウェイクアップ!」

 キバットの呼び声で、渡の持つザンバットソードの刀身が紅く輝く。彼が繰り出した紅い斬撃の連続が、イカデビルを切り付けて空中高く跳ね飛ばした。

「今です!」

 渡が声をかけると、V3とライダーマンが高くジャンプする。

V3キック!」

「ライダーキック!」

 2人のライダーのキックを受けて、イカデビルが地上に叩き落とされた。V3、ライダーマン、真司、蓮、渡、啓介が倒れたイカデビルの前に立った。

「これほどの力を相手にすれば・・さすがに勝ち目がないか・・だがヤツは、海道竜也の力は、手に負えないほどにまで上がっている・・・」

 イカデビルがV3たちに向けて、不気味な笑みを浮かべる。

「私を倒せても・・お前たちが勝利を手にすることは・・できない・・・」

 倒れたイカデビルが爆発を引き起こした。勝利を得たV3たちだったが、イカデビルが最後に口にした言葉を聞いて、緊張を感じたままになっていた。

「オメガ、大丈夫だろうか・・・」

「今は信じるしかない・・オレたちは今は、世界と人々を脅かす敵に立ち向かうことだけだ・・・!」

 深刻さを浮かべるライダーマンに、V3が呼びかける。真司たちも光輝を信じることを心に決めていた。

 

 映司、後藤、X、アマゾンと交戦するアポロガイスト。アポロガイストとの戦いを繰り返してきたXには、戦い方も把握していた。

「ムダだ、アポロガイスト!お前の攻撃はもうオレには通じないぞ!」

「それにお前はオレたちと違って、1人で戦っている。お前に勝てる可能性は明らかに低いぞ・・」

 Xと後藤がアポロガイストに言い放つ。だがアポロガイストは追い込まれた様子を見せるどころか、笑い声をあげてきた。

「私の勝てる可能性が低いだと?だから浅はかだというのだ。」

「どういういみ・・・!?

 アポロガイストが口にした言葉に、アマゾンが疑問を投げかける。

「私は1人でもお前たちを始末できる・・それだけの力を、私は持っているのだ!」

 言い放ったアポロガイストの体から、不気味な光があふれ出してきた。彼はパワーアップを果たし、大怪人、スーパーアポロガイストへと変化した。

「パワーアップを果たしたか・・一筋縄ではいかなくなったというのか・・・!」

 危機感を覚えながら、後藤がアポロガイストに向かっていく。だが彼のパンチはアポロガイストのガイストカッターに防がれる。

「その通り!真の力を発揮した私の前では、貴様らは敗北するしかないのだ!」

 アポロガイストが強化したアポロショットから「スーパーマグナムショット」を発射する。至近距離からの射撃を受けて、突き飛ばされた後藤のバースの装甲から火花が散る。

「後藤さん!・・やらせるか!」

 映司が後藤を援護しようとアポロガイストに向かっていく。だがアポロガイストが放った青い光をぶつけられて、映司が突き飛ばされる。

「火野!・・ここまでとは・・・!」

 アポロガイストの強さに脅威を感じる後藤。アポロガイストがXとアマゾンに振り返った。

「次はお前たちの番だ、Xライダー、アマゾンライダー!」

 アポロガイストがアポロショットを発砲する。アマゾンと同時にスーパーマグナムショットをかわして、Xがアポロガイストに詰め寄る。

「ライドルスティック!」

 ライドルスティックを振りかざすXだが、アポロガイストはアポロショットとガイストカッターを駆使して、彼の打撃を防いでいく。

「おかしなことだ。今まで手こずらされてきたXライダーの動きが、こうも遅く感じるとはな!」

 アポロガイストがガイストカッターでXを切り付ける。Xが突き飛ばされると、アマゾンが大きくジャンプして、アポロガイストを狙ってきた。

「甘いぞ!」

 アポロガイストがアポロショットを撃って、アマゾンを迎撃する。撃たれたアマゾンが体勢を崩して、地上に落とされる。

「私のパワーが上がっただけではない。お前たちの戦闘データも、既に調べがついている。もはや仮面ライダーといえども、我々に勝つことは不可能なのだ!」

 アポロガイストが勝ち誇り、アポロショットの銃口をXに向けた。

「そろそろとどめを刺させてもらう・・まずは貴様だ、Xライダー!」

「悪いが、アンタのいいようにはさせねぇよ・・」

 言い放つアポロガイストに声をかけてきたのは、ファイズに変身した巧だった。

「オレが戦うのは、世界のみんなの夢と幸せを守るためだ。ここはオレのいる世界じゃねぇが、ほっとけねぇしな・・」

「ファイズ・・お前から私の処罰を受けたいか・・?」

 憮然としながらも決意を口にする巧みを、アポロガイストがあざ笑ってくる。

「悪いがオレは警察は苦手だ。あんまりいい思い出もねぇしな・・」

「相変わらずみたいだね、乾・・」

 その巧に声をかけてきた1人の青年。現れた彼は巧の知り合いだった。

「三原・・」

 青年、三原(みはら)修二(しゅうじ)に巧が声をかける。

「オルフェノクとは違うみたいだけど、オレも戦う・・放っておいたら、無関係でいられなくなるから・・・」

 修二が決意を口にすると、銃の形をした携帯電話「デルタフォン」を取り出した。

「変身!」

Standing by.Complete.”

 修二の呼びかけでデルタフォンが反応する。ベルトにデルタフォンをセットすると、彼の体を黒い装甲が包み込んでいった。

 ファイズと同じ種別のライダー、デルタである。

「デルタまで現れたか・・だが何人ライダーが集まろうと、私の勝利が揺らぐことはないのだ!」

 アポロガイストが巧と修二にアポロショットを放とうとする。

「ファイア!」

Burst mode.”

 修二がデルタフォンを使って射撃するが、スーパーマグナムショットに太刀打ちできず、巧とともに回避することになった。

「乾、これを使うんだ!」

 修二が巧に、トランクボックス型のアイテムを渡した。ファイズの強化アイテム「ファイズブラスター」である。

 巧がベルトからファイズフォンを取り出し、ファイズブラスターにセットする。

Awakening.”

 巧のまとうファイズの装甲が、赤い光を放ちながら変化が起きる。ファイズの強化形態「ブラスターフォーム」への変身である。

「オレも負けていられない・・こうなったらアレを・・・!」

 映司が立ち上がって、巧、修二と対峙するアポロガイストを見据える。その彼を後藤が呼び止める。

「よせ、日野!また暴走するかもしれないぞ!」

「分かっています!ですがこれ以外に、あの人を止める方法がオレにはないんです・・!」

 後藤の制止を振り切って、映司は意識を集中する。

「来い、紫のメダル!」

 呼び声を上げた映司の目が紫に光る。同時に彼の体から3枚の紫のメダルが飛び出してきた。

 映司はベルトにセットされていた3枚のメダルを、紫のメダルと入れ替えた。

“プテラ!トリケラ!ティラノ!プ・ト・ティラーノザウルース!”

 映司のまとうオーズの装甲が紫に変わり、形状にも変化が起こった。そして映司が獣のような雄叫びを上げる。

 オーズの最強形態「プトティラコンボ」である。だが映司はこのコンボを制御できておらず、暴走することもあり、自らの意思に関係なく変身することもある。

 だが今の映司は、世界と人の心を脅かす敵に立ち向かうことを望んでいたため、プトティラコンボをある程度制御することができていた。

「火野、大丈夫か・・!?

「はい・・何とか暴走しないでいるみたいです・・・!」

 後藤の呼びかけに映司が答える。彼が地面に右手を伸ばすと、武器「メダガブリュー」が引き出された。

「オーズ・・ヤツもパワーを解放したということか・・・!」

 強化を果たした2人のライダーを目の当たりにして、アポロガイストが危機感を募らせる。

「だが強化を果たしているのは私も同じ!まとめて貴様らを葬り去ってくれる!」

 アポロガイストが巧に向かっていく。至近距離からアポロショットで射撃するが、巧は軽やかにかわしていく。

 巧が反撃に転じて、パンチを連続で叩き込んでいく。アポロガイストがとっさにガイストカッターで防ごうとするが、巧の力を押さえきれなかった。

 そこへ映司が飛びかかり、斧型の「アックスモード」にしたメダガブリューをアポロガイストに向けて振りかざしてきた。この一閃を受けて、アポロガイストはガイストカッターで受け止めきれずに突き飛ばされる。

「何という力・・これほどまでとは・・・!

 巧と映司に脅威を感じるアポロガイスト。

Blade mode.”

 巧がファイズブラスターを手にして、「ブレイカーモード」へと形を変える。ファイズブラスターの銃口から、出力の高いビームの刃が発せられる。

Faiz blaster take off.”

 巧が背中にあるフォトンフィールドフローターを使って飛び上がり、アポロガイストに向かって降下していく。そこからファイズブラスターを振りかざす。

 アポロガイストがとっさに防ごうとするが、高出力の光の刃にガイストカッターを両断されてしまう。

「ぐおっ!」

 突き飛ばされたアポロガイストが痛烈なダメージを負う。力を振り絞って立ち上がった彼の前に、猛っている映司が立ちはだかる。

「今度こそ・・今度こそあなたを止める!」

“プ・ト・ティラーノ・ヒッサーツ!”

 映司が構えたメダガブリューから紫の光線が放出される。アポロガイストがかわしきれず、光線の直撃を受ける。

 だがアポロガイストはそれでも倒れずに踏みとどまる。だが巧と映司だけでなく、Xとアマゾンの攻撃は終わっていなかった。

「アポロガイスト、お前たちの野望は、オレたちがいる限り絶対に叶わない!」

 Xがアポロガイストに言い放つと、ジャンプしてライドルを使って回転をかける。アマゾンも続けて高くジャンプする。

Xキック!」

「アマゾンキック!」

 2人のライダーのライダーキックがアポロガイストに叩き込まれる。

Faiz pointer exceed charge.”

 同時に巧と映司がジャンプして、足にエネルギーを集める。2人のさらなるライダーキックが、アポロガイストに命中した。

 爆発に巻き込まれて、アポロガイストが空中に跳ね飛ばされる。上空から地上に叩き落とされた彼を、映司たちが見据える。

「仮面ライダー・・これで勝ったと思うな・・・私が倒されても、ハイパーショッカーが滅びることはないのだ・・・」

 アポロガイストが映司たちに向けて笑みを見せてくる。

「闇の力は・・決して滅びることはないのだ・・・」

 アポロガイストが爆発とともに消滅した。暴走を止めるため、映司はオーズへの変身を解除した。

「火野、無事か!?

 後藤が駆け寄って声をかけると、映司が微笑んできた。

「大丈夫です・・何とか自分を保っています・・・」

「あまりムチャをするな・・お前の体と命は、お前だけのものでないことを忘れるな・・」

 肩を落とす後藤に、映司は笑顔を見せていた。

「しばらくは待機することになりそうだ・・今はみんなを信じよう・・」

 Xの言葉に映司たちが頷く。彼らはひとまず、周囲の動きを見てから行動に移すことにした。

 

 

 

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