仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第5章

 

 

 光輝たちと別れて、単独で行動していた一矢。ハイパーショッカーや竜也の動向を気にすることもなく、一矢は1人思うがままに動いていた。

「吉川光輝や他の連中が何をしようとオレには関係ない。だがオレの前に立ちはだかるヤツには容赦しないがな・・」

 自分自身のことしか考えていない一矢。彼はバイクでの移動を考えていた。

「仮面ライダー・・誰もかれも愚かしい存在です・・」

 そこへ1人の男が一矢の前に現れた。

「誰だ?お前もふざけたことを考えているヤツの1人か?」

「私をふざけているとは、愚かしい存在は人を見る目もないようだ・・」

 強気な態度を見せる一矢を男があざける。

「だが君たちが持っているクリスタルユニットがどのようなものか、調べてみるのもいいかもしれませんね・・」

「お前、本当にふざけているな。オレを愚かとか、オレの持っているギガスを調べたいとか・・ふざけているヤツの考えることは逆に理解できない・・」

 興味を見せてくる男を、今度は一矢が嘲笑してきた。

「すぐにオレの前から消え失せろ。そうすれば何もしないでおいてやる。」

「同じ脅しを返させてもらいましょう。ギガスユニットを渡しなさい。さもなければ命はありませんよ・・」

 互いに警告を送る一矢と男。

「私たちの言うとおりにしたほうが賢明だと思いますよ。」

 そこへ別の男が現れ、一矢に声をかけてきた。彼の肩には奇妙な人形が乗っかっていた。

「またふざけたヤツが現れたか・・何にしても、お前たちはオレには勝てないことに変わりはない。」

「それはどうでしょう・・もっとも、私はクリスタルユニットよりも、君の最後に興味があります。物事は終わりを迎えて初めて完成する。ギガス、君も同じです・・」

 強気な態度を崩さない一矢に、人形を乗せている男が表情を変えずに言いかける。

「一応自己紹介をしておきましょう。井坂(いさか)深紅郎(しんくろう)です。

「私は真木(まき)清人(きよと)。よろしく。」

 男たち、井坂と真木が自己紹介をしてくる。

「名前などどうでもいい。早くオレの前から消え失せろ。それともオレの力を見たいと?」

 一矢は強気な態度のまま、水晶を手にする。

「仕方がありませんね。強引な手段というのも、嫌いではありません・・」

Weather.”

 井坂は自分の体に「ウェザーメモリ」を差し込み、ウェザードーパントへと変身する。

「変身。」

 ベルトに水晶をセットして、ギガスに変身する一矢。

「オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから・・」

 勝気に言い放つ一矢が、井坂から真木に視線を移す。

「2人同時にかかってこい。でないとすぐに終わってしまうぞ。」

 一矢が真木に向けてギガシューターを発砲する。彼が挑発のつもりで撃ったために当たらなかったが、真木の肩に乗っていた人形が落ちてしまった。

「あっ!あああっ!」

 すると冷静だった真木が激しく取り乱して、人形を拾って汚れを払う。彼は所持している人形に何かが起こるとパニックを起こすのである。

「よくも・・よくもやってくれましたね・・・!」

 一矢に鋭い視線を向けて、真木が変貌を遂げる。紫の体色をした恐竜のグリードへと。

「その気になったか。だがお前たちが束になっても、勝つのはオレだ。」

 一矢が言いかけて、真木に向かって駆け出す。彼の重みのあるパンチが、真木の体に叩き込まれていく。

 一方的に一矢が追い詰めているように見えた。だが真木には彼の攻撃が通用していなかった。

「どうしました?強いのは態度だけですか?」

「どうやらそこそこやれるようだな・・」

 声をかけてくる真木に向けて、一矢が攻撃を再開する。その彼に向けて、真木が右手から衝撃波を放った。

「くっ!」

「そろそろ反撃をさせてもらいますよ・・」

 うめく一矢に向けて言いかけて、真木が右手から紫の光を出現させる。放出された紫の光が、一矢の周囲に飛び込んで爆発を引き起こす。

「小賢しいマネを・・そんなことでオレに勝てると・・」

「思っていますよ。」

 うめく一矢に呼びかけてきたのは井坂だった。ウェザードーパントとなった彼は突風と竜巻を起こして、一矢を宙に持ち上げた。

「ぐっ!風を操るのか・・!」

「それだけではありませんよ。」

 竜巻に閉じ込められている一矢に向けて、井坂はさらに電撃を放つ。回避することもできず、一矢がダメージを負っていく。

「私のこの力は天候を操る。天候にまつわるものならどのような能力を扱うことが可能なのです。」

「だから風も雷も操れるということか・・・!」

 井坂の説明を聞いて、一矢が声を上げる。電撃と風が治まり、一矢が地面に叩き落とされる。

「時間をムダに費やすのは好ましいとは思いません。ここで終わりにしましょう。」

「それには賛成ですが、彼を完結させるのは私の役目です。」

 一矢にとどめを刺そうとした井坂に声をかけたのは真木だった。

「私が興味があるのは人や物の終わりです。クリスタルユニットそのものは、終わりという完成に比べれば些細なことです。」

「いいでしょう。ですがギガスユニットは残しておいてくださいよ。ガイアメモリの力をさらに引き出すことが可能になるかもしれませんので・・」

 淡々と語りかける真木に、井坂は一矢のとどめを譲った。真木が一矢に右手を伸ばして、紫の光を集中させる。

「私によって結末を迎えられること、光栄に思いなさい・・」

「そうやすやすと終わりなんて口にするもんじゃねぇよ・・」

 そのとき、一矢たちに向けて声がかかった。各々の装甲をまとった2人が彼らの前に現れた。

「お前たち・・あのときの・・・!」

「ここから先はオレがやらせてもらう。お前が言っていたように、オレだけでも十分なのだが・・」

 声を上げる一矢に、男の1人が強気に言ってきた。

「ファイズとカブトですか・・仮面ライダーという忌まわしい存在がまた現れましたか・・・」

 井坂が男たち、(いぬい)(たくみ)、ファイズと天道(てんどう)総司(そうじ)、カブトに振り返る。

「そうしてくれたほうが助かる、といいたいが、お前のようなヤツばっかいい思いをするのも癪だからな・・」

 悪ぶった態度を見せるも、巧も総司と共闘する姿勢を見せていた。

「オレの名は天道総司。天の道を往き、総てを司る男。」

「残念ですが、君が歩んできたと思われる天の道とやら、私が終わらせてやりましょう・・」

 名乗りを上げる総司に、真木が淡々と言葉を投げかけてきた。

「天の道は気高く果てしないもの。終わりのあるものでも、お前程度に終わらせられるものでもない。お前の言う終わりなど、オレの進む先にはない。」

Cast off.Change beetle.”

 総司がベルトのゼクターホーンを動かすと、カブトの装甲「マスクドアーマー」が弾け飛んで、「マスクドフォーム」から「ライダーフォーム」に変身する。

「オレのスピードについてこられるか?」

「そうだな・・10秒ぐらいはついてってやるよ・・」

 声をかけてきた総司に巧が淡々と答える。

Complete.”

 巧がリストウォッチ型デバイス「ファイズアクセル」を起動させると、ファイズの装甲が黒になり、「アクセルフォーム」へと変身する。

「その10秒間、オレについてこれるか、確かめるのも面白い・・」

Clock up.”

Start up.”

 総司が言いかけて、巧とともに高速で動き出した。

 総司の変身するカブトには超高速を可能とする「クロックアップ」を行うことができる。目にもとまらぬスピードで動くことができ、使用者には周囲の動きが止まりそうなほどゆっくりに見えている。

 巧が変身したファイズ・アクセルフォームは、10秒間の超高速を可能とする。その間は必殺技も高速で強化された形で連発させることもできるが、その超高速を10秒以上維持できない。

 巧と総司が一気に引き上げたスピードで、井坂と真木を翻弄していく。

「これはかなりのスピードですね・・」

 2人のスピードに対して真木が呟きかける。

「この速さ・・忌々しいことです・・・」

 井坂がウェザーの力を使って竜巻と雷を同時に放つ。だがその風と光の動きも、巧と総司には止まっているかのように捉えていた。目だけではなく全ての感覚で。

 風も雷もその動きをつかんで回避して、総司が井坂に手足による素早い攻撃を叩き込む。同時に真木の周囲に8方向から円錐状の赤い光が出現し、巧が飛び蹴り「クリムゾンスマッシュ」を連続で叩き込む。

1,2,3.”

「ライダーキック。」

Rider kick.”

 総司が井坂に向けて後ろ回し蹴りを叩き込む。2人の超高速の攻撃を受けて、井坂と真木が倒れる。

3,2,1...Time out.Reformation.”

Clock over.”

 巧と総司の超高速が終わり、ファイズが元の形態に戻る。

「おばあちゃんは言っていた。料理は小さなことで、大きく味が変わると・・天気や温度にも、料理には注意をする必要がある・・お前の天気の力を見切ることなどたやすい・・」

 総司が右手を天に高らかに掲げて、語りかけていく。

「オレはそういう細かいことを気にするのは好きじゃねぇな・・」

 彼の言葉に対して、巧が悪ぶった態度を見せた。

「残念ですが、先に終わりを迎えるのはあなたたちのようですね・・」

 だが巧と総司の攻撃を受けても、井坂と真木は倒れずに立ち上がってきた。

「スピードは驚くべきものがありましたが、私を倒すまでには至らなかったようですね・・あなたたち仮面ライダーは存在してはなりません。今度こそ葬らせてもらいますよ・・」

 井坂が低い声で告げると、ウェザーの力で空気を操る。巧と総司の周りの空気の圧力が変化して、水蒸気爆発が起こる。

「うおっ!」

「ぐっ!」

 激しい爆発に襲われて、巧と総司が吹き飛ばされる。横転する2人の前に、真木が立ちはだかった。

「今度こそ終わりです。ファイズ、カブト、私の手によって最期を迎えるのです・・」

 真木が両手を上に掲げて、エネルギーを集中させる。黒と紫の入り混じるエネルギーが集まり、強力になっていく。

「コイツら、少し厄介だな・・」

「少し早いが、ハイパーキャストオフを使うしかないようだ・・」

 巧と総司が切り札を使おうと考えた。

 そのとき、突然飛び込んできた電撃を受けて、真木が体勢を崩す。その拍子でためていたエネルギーを上空に放出してしまった。

「何者ですか・・・?」

 振り向いた真木の見据える先には、2人の仮面ライダーがいた。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せとオレを呼ぶ!聞け、悪人ども!!オレは正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!」

「オレはブレイド!仮面ライダーブレイドだ!」

 2人のライダー、(じょう)(しげる)、仮面ライダーストロンガーと剣崎(けんざき)(かず)()、ブレイドが名乗りを上げる。

「今度はストロンガーとブレイドですか・・次々とライダーが集結しているようですね・・・」

 真木は呟いてから、紫の光の弾を発射する。ストロンガーと一真はジャンプして弾をかわす。

「忌まわしき仮面ライダー・・全員まとめてここで処分してやりますよ・・・!」

 井坂がいら立ちを浮かべて、ストロンガーたちに突風を放つ。突風はかまいたちのような刃となって、ストロンガーの体や一真たちのまとう装甲を切り付けた。

「何人束になろうと、私の使うガイアメモリの力には敵いませんよ!」

「それは大きな間違いだ。」

 言い放つ井坂に対して返ってくる声があった。一矢が飛び込んでパンチを繰り出し、井坂を突き飛ばした。

「オレを無視して話を進めるとは、ずい分とふざけたことをするな、どいつもこいつも・・」

「ギガス・・まだいたとは・・ではまず、あなたのギガスユニットをもらい受けましょう・・・」

 不満を口にする一矢に、井坂が狙いを戻す。その2人の間に割って入るように一真が飛び込み、剣「ブレイラウザー」を振り下ろしてきた。

「風や竜巻を操る・・厄介な相手だが、たくさんの能力を使えるのはオレも同じだ!」

「手を出すな。お前ではオレの足手まといにしかならない。」

 井坂に言い放つ一真に、一矢が強気な態度を見せる。

「ずい分と高飛車だが、その態度ほど優勢とは言えない。それにオレは、世界を守るために、命のあるものみんなのために、それを脅かすコイツらと戦うのが、オレの使命だ!」

「お前のその使命感と熱意、気に入ったぜ・・!」

 一矢に言葉を投げかける一真に感銘を受けて、ストロンガーも井坂の前に立ちはだかった。

「無敵や最強に浮かれてばかりではいけない。今日の自分は昨日より強く、明日の自分は今日よりも強い。それが“ストロンガー”だ!」

「大口を叩くじゃないか。その向上心は褒めてやるが、向上心でも越えられない存在はある。それがオレだ。」

 高らかに言い放つストロンガーに、一矢がため息をつく。

「そこまでアイツの相手をしたいなら勝手にしろ。だがオレの邪魔はするな。」

 一矢は言いかけると、ベルトの水晶を右手の甲部にセットする。

「さて、アイツはそれなりの手ごわさがあるからな。少し早いがチャージアップを使うとするか・・・!」

 ストロンガーも呟いて、意識を集中する。

「チャージアップ!」

 言い放つストロンガーの胸のS字が回転し、胸部に胸のラインが入る。電気エネルギーを瞬間的に高める能力「チャージアップ」である。

 チャージアップを行ったストロンガーは、通常の何倍ものパワーを発揮することができる。だがその強力なパワーを使えるのは、発動してから1分だけである。

「時間がないんだ・・一気に決めさせてもらうぞ!」

 井坂に向かっていくストロンガーが、パンチとキックを連続で繰り出していく。電気エネルギーを高めていたストロンガーの手足には電気が放たれていた。

「電気でしたら、私の扱う雷のほうが・・!」

 井坂が両手を伸ばして電撃を放出する。ストロンガーが電撃をかわすと、一矢が井坂に飛びかかってきた。

「ギガスマッシャー!」

 エネルギーを集めた一矢のパンチが、井坂の体に叩き込まれた。この一撃を受けて、井坂が後ずさりをする。

Kick,Thunder,Mach,Lightning sonic.”

 一真が3枚のカードをブレイラウザーにセットする。高速で助走した後大きく飛び上がり、電撃をまとった右足でのキックを繰り出す。

 同時にストロンガーも大きくジャンプして、体を回転させる。

「超電子ドリルキック!」

 電気を体にまとわせたストロンガーの「超電子ドリルキック」と一真のキック「ライトニングソニック」が井坂の体に叩き込まれた。決定打を受けた井坂が大きく突き飛ばされた。

 その後、チャージアップが終わり、ストロンガーの変化が元に戻った。

「これだけのパワーが集まったんだ。壊せないものなんてないぜ!」

「フン。オレがいればそれで十分だったがな・・」

 高らかに言い放つストロンガーの隣で、一矢が強気な態度を見せる。そのとき、3人の攻撃を受けた井坂が起き上がってきた。

「あれだけの攻撃を受けて、まだ立ち上がってくるなんて・・・!」

 一真が井坂を見据えて声を荒げる。だが受けたダメージは大きく、井坂は力を出せなくなっていた。

「またしても・・仮面ライダーに敗れることになるとは・・・実に愚かしいことだ・・・」

 井坂がふらつきながら声を振り絞る。すると一矢が強気な笑みを浮かべてきた。

「お前が後悔するのは、オレに挑んだことそのものだ。オレに勝てないことを、頭だけでなく体にも叩き込んでおけ。」

「フフフ・・またよみがえることができたなら、今度こそ・・お前たちを・・・」

 笑みを浮かべる井坂が倒れて、完全に消滅していった。黒い霧が散っていくように。

「井坂くんが敗れましたか・・ここは1度引いたほうがよさそうですね・・・」

 真木は一矢たちに背を向けると、紫の光に包まれて姿を消した。

「アイツは逃げたか・・今さらだが、それが賢明な判断だ・・」

 一矢は言いかけてから、ギガスへの変身を解除する。

「それにしても、お前に会ったのは久しぶりだな・・」

 一矢が巧に振り向いて声をかけてきた。

「別にアンタに会いに来たわけじゃねぇ・・おかしなヤツらが何かやっているから、厄介払いしてるだけだ・・」

 すると巧が悪ぶった態度で言葉を返してきた。

「みんなから連絡を聞いた。オメガが大変なことになっているようだ・・」

 するとここでストロンガーが光輝たちのことを話してきた。

「光輝か。ヤツが何をしようと、オレには関係ないがな・・」

「くるみさんにも危険が及んだそうだ・・」

「何っ・・!?

 強気な態度を見せるも、くるみが危機に陥ったと聞いて、一矢が緊張を隠せなくなった。

「1度みんなと合流しよう。敵の情報を交換して整理しておいたほうが・・」

 一真が投げかけた言葉にストロンガーが頷く。総司もそのつもりでいた。

 

 キバランたちにヒカルを連れ去られて落ち込んでいた光輝だが、光太郎たちの励ましを受けて、決心を取り戻していた。彼らはデンライナーから戻ってきた良太郎、侑斗と合流した。

「ヒカルさんが連れていかれたって、ホントなの・・・!?

 良太郎の問いかけに、光輝が沈痛の面持ちを見せて頷く。

「すぐに助けに行かないといけない・・だけどどこに連れて行かれたのかも分からない・・・」

「ハイパーショッカーの動きも気になるところだ。次にどんな手を打ってくるか分からんぞ・・」

 言いかける光輝に1号が、そして2号も声をかけてきた。

「光輝くん、君がヒカルさんを助けたいというならそれも構わないが、ハイパーショッカーがそこに付け込んで襲ってこないとも限らない。十分に気を付けてくれ・・」

「先輩・・すみません・・こんな状況なのに、わがままを言ってしまって・・・」

 謝る光輝に良太郎が手を差し伸べてきた。

「僕も一緒に行くよ・・君やヒカルさんを助けたいし、みんなの時間を守りたいし・・」

「良太郎くん・・ありがとう・・・」

 光輝が感謝の言葉を返して、良太郎の手を取って握手を交わした。

「仕方がない・・お前たちに付き合わせてもらうぞ。オレの見えないところでウロウロされても、かえって迷惑だからな・・」

 侑斗も光輝と良太郎についていくことにした。

「くるみさんはデンライナーで休ませることにするわ。目を覚ますまでならオーナーも許してくれるわ・・」

 ハナが呼びかけて、光輝と良太郎が頷いた。

「では行こう・・ヒカルちゃんを助けたいし、竜也くんを、やっぱりこのままにはしておけない・・」

 光輝が竜也のことを思い出して、深刻さを募らせていく。しかし彼はすぐに真剣な表情を浮かべた。

「以降、良太郎くん、侑斗さん・・」

「うん・・」

 呼びかける光輝に良太郎が頷く。3人はヒカルを探すため、再び行動を開始した。

 

「えっ?太一くんだけで行くの・・?」

 太一が口にした言葉に、弥生が戸惑いを見せる。彼は彼女、翔太郎たちと別行動を取ろうとしていた。

「光輝くんのことが心配なんだ・・今回の悪者たちだけじゃなく、あの怖い人のことも気にしている・・今までなかったようなとんでもないことになるんじゃないかって・・・」

「そうか・・だったら弥生さんをデンライナーにでも連れていくか。あそこなら少しは安全だろ・・」

 太一の気持ちを聞いて翔太郎が答えていく。

「ハイパーショッカーの戦力は計り知れない・・危険だと判断したら、無理に戦おうとしなくていい・・」

 Xが太一に励ましの言葉を送る。太一は気持ちを引き締めて、クリス専用バイク「クリスレイダー」に乗る。

「クリスレイダー、空から光輝くんや他の仮面ライダーを探すんだ・・」

「任せておけ、太一どの!他のライダーたちを探す機能は持っていないが、必ず見つけ出してみせるぞ!」

 太一の呼びかけにクリスレイダーが高らかに答える。太一を乗せて走り出したクリスレイダーが、通常形態の「スピードフォーム」から飛行形態の「フライヤーフォーム」に変形して飛び上がった。

 

 映司たちと別れて、光輝、良太郎、侑斗はヒカルと竜也の捜索を始めた。しかし2人の手がかりさえも分からず、光輝たちは浦東に暮れていた。

「まったく、当てもなくウロウロして・・お前の行動にも呆れてくるぞ、吉川・・」

 侑斗が不満を口にすると、光輝が苦笑いを浮かべる。

「僕、くるみちゃんやみんなから子供っぽいってよく言われて・・でも、ヒカルちゃんは、僕のそういうところが僕らしいって言ってくれて・・何だか嬉しくなっちゃった・・・」

「そんな答えをしてくるのもどうかしている・・」

 光輝が口にした話に、侑斗が再び呆れてため息をつく。

「辛いことや悲しいことがあったときに、ヒカルちゃんに何度も勇気づけられた・・だから僕がヒカルちゃんを助ける・・何としてでも・・・!」

「ヒカルさんを助けるためだったら、みんなも分かってくれるよ・・世界や時間を、悪い人たちの勝手にはできない・・・」

 光輝の気持ちを受けて、良太郎も自分の考えを告げた。

「お兄ちゃんも僕の遊び相手だね・・?」

 そこへ子供の声が飛び込んで、光輝たちが振り返る。だが彼らの前に現れたのは子供ではなく、1体の長身の怪人だった。

「怪人・・ハイパーショッカーか・・・!」

「科学実験で生み出されたネオ生命体、ドラス・・・!」

 光輝が身構え、侑斗が言いかける。彼らの前に現れた怪人、ドラスはその姿からはまず想像しないような子供のような声と性格をしている。

「お兄ちゃんたちなら、僕を楽しくさせてくれるって教えてくれたから・・だから遊んでよ、お兄ちゃん・・」

「今は僕は君の相手をしている時間はない・・そこをどいてくれ・・・!」

 無邪気に声をかけてくるドラスに、光輝が呼びかける。しかしドラスは退こうとしない。

「僕が1番になるためにも・・遊んでくれなきゃダメだよ・・・」

 ドラスが右肩からレーザーを発射してきた。

「変身!」

Sword form.”

Altair form.”

 レーザーによる爆発の中、光輝、良太郎、侑斗がとっさにオメガ、電王、ゼロノスに変身する。ジャンプして爆発から飛び出してきた3人が、ドラスに振り返る。

「仮面ライダーオメガ!」

「オレ、参上!・・って、またオレのマネしやがって!」

 光輝と一緒に決めポーズを決めた良太郎が不満の声を上げる。だが2人とも立ちはだかるドラスに視線を戻す。

「図体がデカいくせにガキみてぇなしゃべり方しやがって・・言っとくがオレは、相手がガキだろうと容赦しねぇ。どんな相手だろうと、オレは最初からクライマックスだぜ!」

 モモタロスが憑依している良太郎が、ソードモードのデンガッシャーを手にしてドラスに飛びかかる。

「いくぜ、いくぜ、いくぜ!」

 良太郎が振りかざしてくるデンガッシャーの刀身が、ドラスの体に叩き込まれる。しかし高い再生能力で、ドラスにつけられた傷がすぐに消える。

「うぇ!何だ、コイツ!?きもちわりぃ・・!」

 声を上げる良太郎が再びデンガッシャーを振りかざす。だがドラスが右手をかぎ爪状に変えて、デンガッシャーを受け止めた。

「何っ!?おわっ!」

 驚いたところでドラスのレーザーを受けて、良太郎が突き飛ばされる。

「良太郎くん!」

 光輝が良太郎を助けようとドラスに向かっていく。だがドラスが左手を鞭のように変えて、光輝を捕まえてきた。

「吉川!・・体を自由自在に変えてくる・・それがヤツの、ネオ生命体としての能力か・・・!」

 迂闊に飛び出すことができず、侑斗は攻撃を仕掛けることができなくなっていた。

「まずは君からやっつけるよ・・・」

 ドラスが光輝に狙いを向けて、右手を銃砲に変える。銃砲の銃口にエネルギーが集まる中、光輝はドラスの左腕から抜け出せないでいた。

「これで僕はまた1番に近づけるよ・・」

「そいつはどうかな?」

 喜びを見せていたドラスに向けて、突然声がかかった。その声にドラスが気を取られた一瞬に、光輝は左腕から脱出した。

「おめぇ・・!」

「お前は・・・!」

 良太郎と光輝が声を上げる。目を向けた先にいたその声の主に、2人は見覚えがあった。

「悪いがお前は1番には絶対になれない。オレがいるからな・・」

「お兄ちゃん、もしかして・・・」

 高飛車な態度を見せるその青年に、ドラスが声をかける。

「オレは(かど)()(つかさ)・・変身。」

Kamen ride Decade.”

 青年、士がベルト「ディケイドライバー」にライダーカードをセットして、マゼンタを基調とした装甲を身にまとう。

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。」

 ディケイドに変身した士が、ドラスを指差して高らかに言い放つ。

「お前・・また現れたのか・・・!」

 光輝が士に対していら立ちを覚える。

 様々な世界で「世界の破壊者」と忌み嫌われている士。彼は以前に光輝たちと会った際に高飛車な態度を取って、光輝から怒りを買ったことがある。ライダーとしての戦いにまで発展し、士は光輝に追い込まれることとなった。

「話はだいたい分かった。アイツを連れていかれて、ハイパーショッカーの連中が何かやらかしてるのも無視して、勝手なことをしてるって・・」

 またしても高飛車な振る舞いを取る士。これで怒りを一気に膨らませた光輝が、ゆっくりと士に近づきながら、ベルトの水晶を右手の甲部にセットする。

 反発を受けまいと軽くいなそうとした士だが、光輝に左手で強引につかまれ、エネルギーを込めたパンチを叩き込まれることとなった。

「お前・・相変わらずだな・・・」

「お前こそ・・オレはみんなの夢を踏みにじるお前の態度と行動をまだ許してはいない・・だけど・・・」

 皮肉を口にする士に鋭く言いかける光輝。だが2人はすぐにドラスに視線を戻す。

「ヒカルちゃんを助け出すためにも、竜也くんを止めるためにも、まずはアイツを何とかするしかなさそうだ・・」

「そのようだな・・お前が手っ取り早く問題を解決できるように、オレもアイツの相手になってやる・・・」

 ドラスを撃退するため、光輝と士が手を組むこととなった。

「おっと。オレのことを忘れてもらっちゃ困るぜ。」

 良太郎が侑斗とともにドラスに挑もうとしていた。

 

 

 

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