仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第4章

 

 

 ヒカル、くるみ、映司、後藤とともに仮面ライダーたちの行方を追っていた光輝。その最中、光輝は竜也に対する不安を感じていた。

「竜也くんは、今も今のこの世界に怒りと憎しみを感じている・・世界の中にあった悪に怒っただけなのに・・・」

「事情はよく分かりませんが、あなたの知り合いが平和をつかみたいって思っていることは分かります・・」

 呟いていた光輝に声をかけてきたのは映司だった。

「世界を本当の意味で平和にしたい。その原動力が、怒りとか憎しみとかいう危なっかしい気持ちなんじゃないかな・・?」

「でも、竜也くんのしていることとは正しいとは思えない・・思えないけど・・・」

「平和への欲望があるだけ。でもその欲望が暴走しているってことだと思う・・結局は、正義とか誰かを守りたいとか、そういう気持ちも全部、欲望の一種なんじゃないかって・・」

「正義は欲望とは違う!正義に悪いイメージなんて全然ない!」

「オレも正直そう思いたくないよ・・でも考えたら・・・」

 映司の言葉に反発する光輝だが、感情的になってしまったことを後悔する。

「ゴメン・・あなたに悪気はなくて、むしろ励ましてくれてたのに・・・」

「気にしなくていいよ・・オレ、少し前まではちゃんとした欲望がなかった・・正義とか悪とか、そういうのの前にやりたいって気持ちがなかなか湧いてこなかったことがあった・・・」

 謝る光輝に、映司が自分の気持ちと経験を打ち明けた。

 映司は世界を旅して、様々な場所を訪れた。だがその最中、戦火に包まれた場所で、彼は1人の少女を救うことができなかった。

 手を伸ばしても助けられなかった自分の無力と後悔から、映司は何かを求めることさえもしなくなっていた。

 しかし仲間たちの励ましを受けて、映司は再び何かを求めることを、手を伸ばしてつかもうとすることを心に宿したのである。

「求めること、欲望を持つことは悪いことじゃない。だけど欲望を暴走させるのはよくない・・怒りと憎しみを暴走させているなら、絶対に止めないといけない・・」

「映司さん・・・そうですね・・世界や正義に怒りや憎しみを感じて、その行動が悪いことにつながっているなら、止めないといけない・・全力で・・・」

 映司に勇気づけられて、光輝は改めて決意する・自由と平和のためにハイパーショッカーを倒すことを。怒りと憎しみに囚われている竜也を止めることを。

「ホントに正義バカなんだから、光輝は・・・」

 光輝の様子を見て、くるみが呆れていた。

「だが正義感と、みんなを守りたいという気持ちが強いことは確かだ。その点はオレも認める・・」

 後藤は光輝の姿を見て真剣に評価していた。

「真面目に考えないほうがいいですよ。光輝、まだまだ子供ですから。」

「これでも一応はいろんな人の相手をしてきましたからね。女性に限っても優しい人から自己中心的な人までね・・」

 くるみに声をかけられるも、後藤は真剣な対応を見せた。

 そのとき、光輝たちのいる場所に重圧のある足音が響いてきた。その足音を耳にして、光輝たちは緊張を隠せなくなった。

「どうしたの、光輝?みんなも・・・?」

 くるみだけが足音から感じられる緊迫をさほど感じていなかった。

「後藤さん、何でしょう・・この緊張感・・・!?

「分からない・・ただの力の持ち主ではないことは確かだ・・・まさか、海道竜也・・・!?

 映司と後藤が緊張を膨らませていく。しかし光輝がその推測を否定した。

「違う・・竜也くんとは違う・・でも後藤さんの言うとおり、ただ者じゃない・・・ハイパーショッカーの怪人なのか・・・!?

 緊張の色を見せながら、推測を巡らせていく光輝。

 足音は光輝たちに向かって近づいてきていた。やがてその足音の正体が明らかになっていく。

 銀色の鎧のような風貌。また仮面ライダーに似た姿をしていた。

「もしかして、あの人も、仮面ライダー・・・!?

 緊張とともに疑問を感じていく光輝。彼はその人物に近づこうとする。

「吉川光輝・・いや、オメガ・・そしてオーズとバースか・・」

 声をかけられたことで、後藤が眼前にいるのが自分たちの味方でないことを直感した。彼らの前に現れたのはシャドームーンだった。

「我が名はシャドームーン。オメガ、オーズ、バース、ここでお前たちを葬り去ってくれる・・」

「気をつけろ!そいつは敵だ!」

 名乗るシャドームーンと、声を上げる後藤。シャドームーンが右手から放ったビームを、光輝たちは横に飛んで、ヒカルとくるみもとっさに動いてかわした。

「ヒカルちゃん、くるみちゃん、大丈夫!?

「うん!あたしたちは・・!」

 光輝の呼び声にくるみが答えた。だがシャドームーンの姿を目にしたヒカルが、怖がって震えていた。

「ヒカルちゃん!?どうしたの、ヒカルちゃん!?

「私、あの人と以前に会ったことがあるんです・・シャドームーン・・光太郎さんの親友なんです・・・!」

 心配の声をかけるくるみに、ヒカルが声を振り絞って答える。彼女のこの言葉を聞いて、光輝が動揺を覚える。

 (みなみ)光太郎(こうたろう)。日食の日に生まれた彼は、ゴルゴムによって世紀王「ブラックサン」として改造された。だが脳改造を施される前にゴルゴム本拠地を脱出。「仮面ライダーBLACK」として自由と平和を守るために、ゴルゴムと戦い続けた。

 その熾烈な戦いを終えた光太郎だったが、クライシス帝国に敗れ、BLACKへの変身機能を破壊されてしまう。だが体内に埋め込まれた世紀王の石「キングストーン」が太陽エネルギーを吸収したことで、光太郎は「仮面ライダーBLACK RX」として生まれ変わったのである。

 光太郎には兄弟同然というべき親友がいた。秋月(あきづき)信彦(のぶひこ)。光太郎と同じ日食の日に生まれている。

 信彦も光太郎共々ゴルゴムに捕まり、世紀王、シャドームーンに改造された。光太郎とともに脱出することができなかった信彦は、脳改造も施され、世紀王として光太郎に戦いを挑んだ。

「光太郎さんの親友が、シャドームーンに・・光太郎とあの人のように、僕と竜也くんは・・・」

 親友として見ていた相手と戦うことの辛さを、光輝も痛感していた。そのため、彼はシャドームーンと戦うことに複雑な気分を感じていた。

「光輝さん・・戦ってください・・・」

 迷いを見せている光輝に呼びかけたのはヒカルだった。

「光太郎さんも、今の光輝さんのように悩んだり迷ったりしていました・・それでも光太郎さんは、自由と平和のために戦い続けてきたんです・・・」

「ヒカルちゃん・・・光太郎さん・・・」

 ヒカルの言葉を聞いて、光輝が戸惑いを見せる。

「迷っていられない・・光太郎さんだって、辛いのに戦ってきたんだ・・それなのに、僕が迷っている場合じゃない・・・!」

 ヒカルに励まされて、光輝がシャドームーンに視線を向ける。

「シャドームーン!自由と平和を守るために、僕はお前たちの企みを止めてみせる!」

 光輝は言い放って水晶を手にする。

「変身!」

 光輝がベルトに水晶をセットして、オメガに変身する。

「仮面ライダーオメガ!」

 高らかに名乗りを上げる光輝が、シャドームーンを見据える。

「シャドームーン!お前やハイパーショッカーの企みは、オレが止めてやるぞ!」

「ムダだ。お前たちではオレには勝てぬ。お前たちの命は、既に我が手中にある。」

 言い放つ光輝と、淡々と言葉を投げかけるシャドームーン。シャドームーンが放ったビームをジャンプでかわして、光輝が立ち向かう。

 連続でパンチとキックを繰り出していく光輝だが、その攻撃の全てをシャドームーンにかわされていく。

「どうした、オメガ?オレを止めるのではないのか?」

 シャドームーンが光輝をつかみ、力を込めて突き飛ばす。横転する光輝に向けて、シャドームーンがさらに両手からビームを放ち、その周囲に爆発を巻き起こす。

「光輝くん!」

「後藤さん、オレたちも行きましょう!」

 声を上げる後藤に映司が呼びかける。後藤がセルメダルをベルトにセットし、映司も3枚のコアメダルをセットする。

「変身!」

“タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ・タ・ト・バ!”

 映司と後藤がオーズ・タトバコンボとバースに変身して、光輝と交戦するシャドームーンに立ち向かう。映司がかぎ爪「トラクロー」を振りかざし、後藤が銃「バースバスター」で援護射撃を行うが、シャドームーンはどちらも難なくかわしてみせた。

「そんな・・映司くんと後藤さんも攻撃を当てられないなんて・・・!」

「あの人は、相手の動きを記憶するんです。だから光輝さんたちの戦い方や癖なども全部記憶していて、どう対処したらいいのかも分かっているんだと思います・・」

 声を荒げるくるみに、ヒカルが不安を浮かべたまま言いかける。

 シャドームーンの目「マイティアイ」には、望遠、広視界、暗視、透視の能力が備わっている他、相手の動きをモニターすることもできる。

 シャドームーンはこれまでの仮面ライダーたちの戦いをモニターしてきていた。そのため、光輝たちの攻撃はシャドームーンに完全に読まれていた。

「このままじゃやられてしまう・・メガブレイバー!」

 光輝の呼びかけを受けて、メガブレイバーが駆けつけた。光輝がメガブレイバーに乗って、シャドームーンに向かっていく。

 メガブレイバーの突進もシャドームーンは回避する。光輝はメガブレイバーを転回させて、再びシャドームーンに向かう。

 だがシャドームーンが右手からビームを放ち、光輝がそのビームに絡みつかれる。

「うあっ!」

 メガブレイバーから振り落されて、光輝が横転する。立ち上がる彼の眼前に、シャドームーンが詰め寄ってきた。

「どうした、オメガ?お前の力はその程度か!?

 シャドームーンが光輝に向けて打撃を繰り出す。オメガの装甲に銀の拳が叩き込まれ、光輝が押されていく。

「光輝くん!・・こうなったら、このコンボで行くしかない・・・!」

 映司がベルトにセットされているコアメダルのうち、トラ、バッタと紅いメダル2枚を入れ替えた。

“タカ!クジャク!コンドル!”

 映司のまとうオーズの装甲が紅く染まり、背中からも炎のような翼が広がった。オーズのコンボの1つ「タジャドルコンボ」である。

 3種の鳥のコアメダルの力を発揮した映司は、背中の翼をはばたかせるように空を飛び上がる。彼は左腕に手甲型武器「タジャスピナー」をつけて、光輝を追い詰めるシャドームーンに向かって降下する。

 シャドームーンに向けて、タジャスピナーから炎の弾を放つ。炎の弾が光輝とシャドームーンの間に飛び込み、爆発を巻き起こす。

 映司が旋回して、再びシャドームーンに向かっていく。

“タカ!クジャク!コンドル!ギン!ギガスキャン!”

 3枚のコアメダルと4枚のセルメダルをタジャスピナーにセットする。紅い炎に包まれた彼が、シャドームーンに向かって突進を仕掛ける。

「シャドーフラッシュ!」

 シャドームーンがベルトからエネルギーを放出する。エネルギーは光の壁となって、映司の炎と突進を防いだ。

「言ったはずだ。お前たちの命は我が手中にあると・・」

 映司の放ったマグナブレイズも的確な対処で打ち破ったシャドームーン。あらゆる攻撃が通用せず追い詰められていく状況に、光輝も映司も後藤も焦りを膨らませていた。

「こちらの動きが全て読まれている・・これではセルバーストもバース・デイも通用しないだろう・・どうすればいい・・・!?

 打開の糸口が見出せず、後藤は攻撃を仕掛けられないでいた。

「こうなったら、あれをやるしかないか・・アイツがこっちの動きを読んでいる以上、やれば確実に勝てるという保証はないが・・・!」

「あの姿になるしかないのか・・また暴走しないと言い切れないけど・・・!」

 光輝も映司もオメガ、オーズの最強形態に変身しようと考えていた。だがこれもシャドームーンに読まれるのではないかと思い、2人はためらいを感じていた。

 そのとき、光輝たちのいる場所に突然爆発が起こった。シャドームーンの仕業ではなかった。

「オメガを・・吉川光輝を倒すのはオレだ・・・!」

 爆発の煙をかき分けて現れたのは竜也だった。

「竜也くん・・・!」

「オレの邪魔をするなら容赦しないと言ったはずだ!」

 声を上げる光輝と、怒りの叫びを上げる竜也。竜也の姿が竜を思わせる姿のドラゴンガルヴォルスに変化する。

「そろそろ頃合いか・・」

 シャドームーンは呟きかけると、近くの建物の上まで引き下がる。構えを取る竜也を光輝が見据える。

「また怪人が・・ハイパーショッカーか・・・!」

「違う!竜也くんは、怪人でも悪の組織に属してもいない!」

 映司が声を上げると、光輝が反射的に反発してきた。

「竜也くんは悪い心の持ち主じゃない・・怒りと憎しみを膨らませているだけなんだ・・・!」

「だがこれは、単純に怒りや憎しみを見せているとは思えない・・その力、あまりにも巨大すぎる・・・!」

 光輝の説明を聞いて、後藤が竜也に対して危機感を募らせる。

「たとえ君の言葉が真実だとしても、彼の怒りと力を放置すべきでないと、君も思っているだろう・・・!?

「それは分かっている・・でも・・でも・・・!」

 後藤に問いかけられるが、光輝は迷いを消せないでいた。

「君が戦っているのは悪を倒すためではなく、人の心を守るためではないのか!?

 後藤のこの言葉に光輝は突き動かされた。彼は迷いを振り切って、竜也を見据える。

「光輝を倒せば、偽物の正義を壊すことができる・・オレは、偽りの正義を絶対に許さない!」

 怒りを膨らませて、竜也が光輝に向かっていく。迎え撃つ光輝が、竜也にパンチを叩き込んでいく。

 だが怒りを力に変えていく竜也は、高まっていくその力で徐々に光輝を追い詰められていく。

「竜也くん・・君は今も、誰の言葉にも耳を貸さないのか・・・!?

「この世界をムチャクチャにする正義に、オレは屈しない!」

 声を荒げる光輝に竜也が怒鳴る。彼の打撃を受けて、光輝が突き倒される。

「光輝くん!」

 映司が竜也に立ち向かい、後藤がバースバスターで援護射撃を行う。

「お前たちも、邪魔をするな!」

 竜也が怒りのままに映司に飛びかかり、エネルギーを集めた両手をオーズの装甲に衝撃を与える。さらに竜也は後藤に迫り、打撃をバースの装甲に叩き込む。

「ぐっ!・・お、重い!」

 竜也の重みのある攻撃にうめく後藤。彼がまとっているバースのモニターに歪みが起こる。

「映司くん!後藤さん!・・竜也くん!」

 光輝が立ち上がって、竜也に立ち向かう。だが竜也が映司と後藤に襲いかかるのに間に合わない。

「キングストーンフラッシュ!」

 そのとき、エネルギーの閃光が竜也に飛び込んできた。まばゆい光に当てられて、竜也が怯む。

「この光・・もしかして・・・!」

 光輝が振り向いた先には、2人の黒の戦士が立っていた。BLACKRXがキングストーンのエネルギーを放出する「キングストーンフラッシュ」を放ち、竜也の攻撃を止めたのである。

「遅れてすまなかった、光輝くん・・」

「こ、光太郎さん・・いや、どっちも光太郎さんでした・・BLACKRX、ありがとうございます・・・」

 BLACKに声をかけられて、光輝が動揺を見せながらも感謝の言葉をかける。

「君と彼のことは聞いている・・オレたちも親友との戦いの辛さを感じてきたからな・・」

 RXが光輝に向けて呼びかけていく。

「だが世界の平和を守るために・・いや、友のためを思うなら立ち向かわなければならないこともある・・」

RX・・はい。分かっています・・・!」

 RXに励まされて、光輝が立ち上がる。映司も後藤も竜也を見据えていた。

「また邪魔者が・・オレの邪魔をするな!」

 さらに怒りを膨らませて、光輝たちに向かっていく。

「電光ライダーキック!」

 だがそこへ飛び込んできた電撃を帯びたキックを受けて、竜也が突き飛ばされる。横転するも、竜也はすぐに体勢を整えて立ち上がる。

「君に事情があるのは分かっているが、世界と人々のため、君の思い通りにはさせられん・・・!」

 竜也の前に現れたのは仮面ライダー1号、本郷(ほんごう)(たけし)と2号、一文(いちもん)()隼人(はやと)である。

「先輩・・来てくれたんですか・・・!」

 1号と2号の救援に、光輝が喜びの声を上げる。

「他のライダーたちも、ショッカーと本格的な戦いを繰り広げている。君たちのことにも感づいていて、合流しようと向かってきている。」

 2号からの説明を聞いて、光輝が安心を覚える。だが竜也の怒りを感じ取って、光輝はすぐに緊張を感じる。

「これ以上暴れるなら、純粋悪でない君であっても容赦するわけにはいかない・・・!」

「お前たちも偽りの正義を守ろうとするのか・・ならばお前たちもオレが叩き潰す!」

 2号の言葉に反発して、竜也が飛びかかる。

「行くぞ、みんな!」

「おう!」

「はい!」

 1号の呼びかけに2号、BLACKRXが答える。紅いエネルギーをまとった竜也に対して、1号と2号、BLACKRXが時間差でジャンプする。

「ダブルライダーキック!」

 2人のライダーによるライダーキックが竜也に命中し、その突進を止める。

「ライダーキック!」

RXキック!」

 続けてBLACKRXが続けてエネルギーを集めたキックを繰り出す。この攻撃を受けて、竜也が突き飛ばされる。

 4人のライダーのライダーキックを受けて、竜也のダメージは大きくなっていた。しかし彼は痛みを感じていないかのように立ち上がってきた。

「倒れない・・偽りの正義を叩き潰すまで、オレは倒れないぞ!」

「何という気迫だ・・これほどまでの怒りとは・・・!」

「激しい怒りが、体の痛みをはねつけているのか・・・!」

 声を張り上げる竜也の姿を見て、1号と2号が脅威を感じていた。

「キャアッ!」

 そのとき、ヒカルとくるみの悲鳴が光輝たちの耳に入ってきた。

「ヒカルちゃん、くるみちゃん!」

 声を上げて2人に駆け寄ろうとする光輝。気絶して倒れた2人のそばには3匹のコウモリがいた。それぞれ青、赤、黄色の体色だが、機械的な様相は共通していた。

「何だ、お前たちは!?・・ヒカルちゃんとくるみちゃんから離れろ!」

「そうはいかないよ。とりあえず優しいこの子には、君とそこの彼の対決のための人質みたいなのになってもらうから・・」

 呼びかける光輝だが、青いコウモリが笑みをこぼすだけだった。

「オメガと海道竜也、アンタたちの勝負も終わりが近づいてるよ・・」

「勝負!?・・どういうことだ!?・・・お前たちは何者だ!?

 赤いコウモリの言葉に対して、光輝が問いかける。

「そうだね♪ちゃんと自己紹介しないとね♪あたしはキバルン♪」

 黄色のコウモリ、キバルンが明るく答える。

「あたしはキバリン!」

「私はキバラン。私たちはキバット3姉妹。よろしくね。」

 赤いコウモリ、キバリンと青いコウモリ、キバランも自己紹介をする。

「私たちが世界と世界をつなぐ道を作って、いろんな世界の怪人や組織が集まったの。」

「それがハイパーショッカーとして、協力し合ってるわけ。」

「でもいろんな世界の仮面ライダーまで来ちゃったんだけどね・・でもこれもこれで面白くなってるからいいんだけどね♪」

 キバラン、キバリン、キバルンが光輝たちに語りかけてくる。ハイパーショッカーの企みや行動は、彼女たちキバット3姉妹がきっかけを作っていた。

「どうしてこんなことを・・世界がムチャクチャになってもいいというのか!?

「いいのよ。世界がムチャクチャになれば、そこに住む人たちの心もムチャクチャになる・・」

「希望をなくした人間は悪の組織に従うことになる。もしかしたら、あたしたちにも従っちゃったりして・・」

 怒りを見せる光輝に、キバランとキバリンが態度を変えずに答える。

「何者かは分からないが、2人から離れろ!」

 後藤がバースバスターを撃つが、キバルンが発したバリアに射撃を防がれる。

「言ったはずだよ。この子は人質だって・・」

「助けたかったら見つけ出してくるといいよ。君たちなら見つけ出せると思うわ・・」

 冷たく言いかけるキバルンとキバラン。キバット3姉妹はヒカルとともに姿を消した。

「待て!・・ヒカルちゃん!」

 光輝が駆け込むが、ヒカルを連れ戻すことができなかった。

「ヒカルちゃん・・・竜也くん、君もオレも踊らされている!オレたちが戦っている場合じゃないんだ!」

 光輝が竜也に振り返って呼びかける。しかし竜也は怒りをあらわにしたままだった。

「オレはお前を倒す・・それ以外に、本当の平和は戻らない!」

「オレと戦うことしか考えていないのか、君は!?

 声を張り上げる竜也に対して、光輝も怒りをあらわにする。

「みなさん、くるみちゃんを連れて!」

 光輝が映司たちに呼びかけると、意識を集中する。

「メガフラッシャー!」

 精神エネルギーを光に変えて放出する光輝。その光で竜也が目をくらまされる。

「くそっ・・くそっ!」

 竜也が全身から紅いエネルギーを放出して、光をかき消す。だがそのときには光輝たちの姿はなかった。

「絶対にお前を倒してやる・・オレを利用しようとするヤツがいようと、オレは何にも屈しない!」

 怒りを膨らませるも、人間の姿に戻る竜也。

「そこまでオメガと戦いたいなら、おびき出せばいいのよ・・」

 そこへ姿を消していたキバランたちが再び竜也の前に現れた。意識を失ったままのヒカルも一緒だった。

「この子のことを、オメガは絶対に見捨てない。アンタがこの子を連れていれば、オメガはきっとアンタの前に現れる・・」

「どんな勝負になるのか、楽しみだね〜♪」

 キバリンもキバルンも竜也に声をかけていく。

「何を企んでいる?オレを利用しようとしても、オレはお前たちの、誰の思い通りにはならないぞ・・・!」

「言ったはずよ。世界が混乱させるのが、私たちには面白いこと。たとえあなたたちが自分の思い描く平和を作り出すことでも、混乱は起きている。今も起きている。」

「その混乱から生まれる歪み、絶望、恐怖が、あたしたちの喜びになる・・」

 目つきを鋭くする竜也に、キバランとキバリンが企みを口にしていく。

「オレはまず吉川光輝を倒す・・それがお前たちの思い通りになると思うな・・・」

 キバランたちに言いかけると、竜也は1人歩き出そうとする。

「この子を連れてれば、オメガがやってくるよ♪」

「お前たちの手は借りない。オレはオレの戦いをする。邪魔をするならすぐにでもお前たちを始末するぞ・・・!」

 キバルンが明るく言いかけるが、竜也は聞かずに歩き出していった。

「あ〜あ、せっかく楽しくなると思ったのに〜・・」

「そうがっかりすることはないわ。まだ2人が勝負することに変わりはないんだから・・」

 落ち込むキバルンにキバランが呼びかける。

「それに、私たちがオメガを彼のところに案内してやれば・・」

「2人が戦う確率が高くなるってわけだね・・」

「まだまだ楽しくなりそうだね、お姉ちゃんたち♪」

 キバラン、キバリン、キバルンが喜びを膨らませていく。彼女たちは眠り続けているヒカルを連れて、異空間の中へと消えていった。

 

 竜也、キバット3姉妹の介入、さらに1号、2号、BLACKRXの登場を、シャドームーンは見届けていた。特にBLACKRXに対して、シャドームーンは戦意を膨らませていた。

「ブラックサンが2人・・時間の歪みが、変化する前後の2人のブラックサンを巡り合せたというのか・・」

 この現状に疑念を抱くも、シャドームーンは動じてはいなかった。逆にBLACKRXと戦う喜びと宿命を感じていた。

「海道竜也がオメガを狙っているように、オレの最終目的はあくまでもブラックサンだ。ブラックサンが2人現れようとも、オレがヤツと戦い、勝つことに変わりはない。」

 シャドームーンは振り返り、重圧のある足音を響かせて歩き出す。

「オレは様々な世界の仮面ライダーの動きを掌握している。ブラックサンも例外ではない。たとえ2人が共闘してオレに挑んでこようと、オレが負けることはない・・」

 自分の勝利を確信して、シャドームーンは姿を消した。

 

 竜也の猛攻から辛くも脱出することができた光輝たち。だがヒカルをキバランたちに連れ去られて、光輝は悔しさを感じていた。

「僕がそばについていながら、ヒカルちゃんを守れなかった・・竜也くんの心も救えず、何もできなかった・・・!」

 悔しさのあまり、そばにあった壁に両手を叩き付ける光輝。

「光輝くん・・・」

 彼を見つめて映司が戸惑いを浮かべる。自分を責める光輝の肩を、過去と現在、2人の光太郎が手を乗せてきた。

「悔しいのは光輝くんだけではない。ヒカルさんを守れなかったのが悔しいと感じているのは、僕たちも同じだ・・」

「だが悔やんでばかりもいられない・・本当にヒカルさんを助け出すためにも、オレたちが諦めずに立ち向かわなければならない。違うか?」

「光太郎さん・・・」

 2人の光太郎に励まされて、光輝は気持ちを落ち着かせていく。

(ヒカルちゃん・・必ず助けるから・・・!)

 ヒカル救出を決意して、光輝は改めて戦いに臨もうとしていた。

 

 

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