仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第3章

 

 

「ダロムとバラオムがやられた・・!?

 映司たち他のライダーの出現を聞いて、死神博士が声を荒げる。

「これではライダーたちが集結するのも時間の問題だぞ・・・!」

「うろたえるな。」

 ゾルも声を上げたところで、重圧のある足音が響いてきた。彼らの前に現れたのは、シャドームーンと竜也だった。

「来たか、シャドームーン・・その男か、オメガを、仮面ライダーを倒す切り札は・・?」

 ジャークが竜也に目を向けて声をかける。

「オレはオメガを、吉川光輝を倒すだけだ。お前たちの仲間になるつもりはない。それを忘れるな・・」

「貴様、我らにそのような口を叩けると思っているのか!?

 ブラック将軍が不満をあらわにするが、竜也は逆に彼を鋭く睨み付けてきた。

「思い上がるな・・お前から叩き潰すぞ・・・!」

 竜也から鋭い視線を向けられて、ブラック将軍が思わず後ずさりをした。

「オレは吉川光輝を倒すためにここに来た。ヤツは偽善の象徴だ。この手で倒さなければ、オレは本当の平和を取り戻せない・・」

「仮面ライダーを倒すことを目的としていることは共通しているか・・オメガがお前より先に我々に遭遇しないことを願うとしようか・・」

 自分の考えを低く告げる竜也を見て、死神博士が笑みを見せる。

「邪眼はライダーたちの導きでスピリットフォームとなったオメガに敗れた。他のライダーを倒していけば、オメガは限界を超える力を発揮できなくなる・・」

 地獄大使がオメガである光輝に対して勝機を見出す。

「他の仮面ライダーの討伐はこちらでやらせてもらおう。お前の邪魔はさせん。」

「それでオレがお前たちを信じると思っているのか?お前たちが何を企んでいようと、オレの邪魔をするなら容赦しないぞ・・・!」

 ジャークが声をかけるが、竜也は聞き入れようとせずに彼らの前から去っていった。

「小僧の分際で・・なぜあのようなヤツをここに連れてきたのだ・・・!?

「ヤツを仲間にも部下にもするつもりはない。単にヤツのオメガに対する本能を利用するに過ぎぬ・・」

 不満を口にするブラック将軍だが、ジャークは冷静に竜也の行動を見計らっていた。

 

 ハイパーショッカー本拠地の中にある別の部屋。そこではそれぞれの組織で幹部の地位についている怪人たちが出撃を待っていた。

 中には時間つぶしをしている者もいた。「ブラックサタン」、「デルザー軍団」にそれぞれ所属しているジェネラル・シャドウは、「GOD(ゴッド)」の秘密警察第一室長、アポロガイストを相手にトランプ、ポーカーをしていた。アポロガイストは今、白いスーツの男の姿をしていた。

「あの男、海道竜也・・あのような輩を引き入れることには、私としては反対だ。」

「私も賛成の考えは持ち合わせてはいない。だがあのようなヤツを利用するのも、逆に面白いというものだ。」

 不満を口にするアポロガイストに、シャドウは淡々と答える。2人のポーカーの勝負は互角の勝敗となっていた。

「利用できるものは利用するか。私もそのほうが面白いな。」

「私としては1対1の勝負が望ましいが、あれだけの数のライダーを相手にする以上、そうも言ってられん。」

 それぞれの考えを言葉にして交わしていくアポロガイストとシャドウ。2人は手札を変えて、カードを見せ合う。

「残念ながら私はスカ・・お前はフラッシュ、しかもジョーカー入りか・・」

 この勝負の敗北とシャドウがそろえたカードに、アポロガイストが肩を落とす。その彼の前で、シャドウは自分のそろえたカードに疑念を感じていた。

「どうしたのだ?」

「このカードのそろい・・何かが起こる気がしてならん・・」

 アポロガイストが投げかけた疑問に、シャドウが意味深な言葉を口にする。

「クローバーのフラッシュ・・数字は5、9、10、11、そしてジョーカー・・これが何を示しているというのだ?」

「そこまでは私にも見えてはいない。だが何かがあるように思えるのだ・・」

 さらに疑問を投げかけるアポロガイストに対して、シャドウがさらに意味深な言葉を投げかける。

 スペードのキングを自称するシャドウは、占いによって自分の行動を決めることが多い。このフラッシュに対して、シャドウは疑念を捨てられないでいた。

 

 良太郎と翔太郎に助けられた光輝とヒカル。一矢たちと合流しようとしていた彼らの前に、くるみが走り込んできた。

「ヒカルちゃん、やっぱり家に帰ったほうがいいよ・・光輝だってピンチだったそうじゃない・・・!」

 ヒカルに詰め寄って心配の声を上げるくるみ。

「これ以上首突っ込んだら、もう安全保障できないわよ・・あたしと一緒に・・!」

「ごめんなさい、くるみさん・・でも私も、光輝さんの力になりたいんです・・・」

 連れ戻そうとするくるみに、ヒカルが自分の気持ちを口にした。

「私、ガルヴォルスのクイーンでした・・でも人間でなくても、ガルヴォルスでも、私は私だということを、光輝さんが教えてくれました・・・」

「ヒカルちゃん・・・」

 ヒカルの気持ちを聞いて、光輝が戸惑いを感じていた。

「くるみさんの心配を裏切ってしまって悪いと思っていますが、私は光輝さんを助けたいんです・・・」

「ヒカルちゃん・・そこまでアンタは・・・」

 呼びかけるヒカルに、くるみも戸惑いを見せる。ヒカルの気持ちをくみ取って、くるみも決心する。

「だったらあたしも付き合うわ。あたしもとことん付き合っちゃうんだから。」

「くるみちゃんまで・・どんな危険なことがあるか分かんないのに・・」

 くるみの呼びかけに光輝が不安を口にする。しかしくるみも引き下がらない。

「ヒカルちゃんが行くっていうのに、あたしだけ行かないわけにはいかないわ!あたしもとことん付き合っちゃうんだからね!」

「くるみちゃん・・・みんな、ガンコだね・・僕も人のこと言えないけど・・・」

 くるみを連れていくことを受け入れながらも、光輝は参って肩を落としていた。

「そろそろ先を急ぐぞ。でないと照井たちがうるせぇからな・・」

 翔太郎が声をかけると、光輝が真剣な表情を見せて頷く。彼らは改めて走り出して、一矢たちと合流した。

「遅いぞ、野上。何をもたついてる・・」

「お前たちのことだから手こずっていたのだろう・・」

 遅れてきた光輝たちに向けて、侑斗と竜が不満を口にする。

「あれ?あなたは、どこかで・・・?」

 光輝が映司を見て疑問を投げかけた。

 光輝は映司がオーズに変身して戦うところを目撃していた。だが映司はそのとき、光輝に気付いていなかった。

「はじめまして。オレ、日野映司っていいます。もしかしてあなたも仮面ライダーっていうのですか・・?」

「仮面ライダー・・・そうだ、思い出した!風都に来たとき、見たことのない仮面ライダーに変身してた人だ!」

 映司が自己紹介をすると、光輝が喜びの声を上げた。

「世界にはまだまだ、たくさんの仮面ライダーがいるんですね〜♪僕も負けないように頑張らないと!」

「この期に及んで、お前はまだ甘いことを口にしているのだな・・」

 喜びと意気込みを見せる光輝に対して、一矢が肩を落としていた。

「ところで、本当に何が起こっているの?あの怪人たち、自分たちをハイパーショッカーって・・・」

 そこへ太一が不安を込めて疑問を投げかけてきた。

「それなら僕が説明させてもらうよ。」

 その疑問に答えようとしていたのは、遅れて現れたフィリップだった。

「フィリップ・・お前もこっちに来てたのか・・」

「今度は世界全体に影響を及ぼす可能性のあることだからね。さすがにじっとはしていられない・・」

 翔太郎が声をかけると、フィリップが頷いた。

「僕たちや君たち仮面ライダーと戦ってきた怪人たちが結託、結成されたのがハイパーショッカーだ。ハイパーショッカーは僕たち仮面ライダーを全滅させて、全ての世界を支配しようと企んでいる。」

「全ての世界を支配・・そんなバカなこと・・・!」

 フィリップの説明を聞いて、後藤が怒りを覚える。

「仮面ライダーの存在する世界に通じるトンネルが通じている。ライダーもこっちに来ている可能性もあるが、怪人たちが僕たちを追い詰めようとしている可能性もある。」

「それじゃ、ヤツらが結託したように、オレたちも他の仮面ライダーを探し出して合流しないと・・」

 フィリップのさらなる説明に、映司が動揺を見せる。

「それは大丈夫だと思う・・そんな大きな事件に、他のライダーのみなさんが気付かないはずがないです・・」

 そこへ光輝が真剣な表情を浮かべて言いかける。正義感とライダーへの信頼を彼は見せていた。

「それが光輝くん・・君に言っておいたほうがいいことがあるんだ・・」

 その彼に良太郎が声をかけてきた。

「情報を得たんだ・・ハイパーショッカーの本拠地に、海道竜也くんがいたって・・・」

「えっ・・・!?

 良太郎が告げた言葉に、光輝は耳を疑った。

「まさか、竜也くんが、悪の怪人たちの仲間になるなんて・・・!?

「正確には仲間になったわけではない。あくまで彼の目的は君だよ。」

 驚きを見せる光輝にフィリップが目を向ける。

「海道竜也は君を倒すために、ハイパーショッカーの情報力を利用しているだけだよ。もっとも、ハイパーショッカーも彼を利用しているんだけどね・・」

「竜也くん・・そこまで僕のことを・・・」

 フィリップの説明を聞いて、光輝が竜也のことで思いつめる。

 偽りの正義に陥れられたことに怒りを覚えた竜也は、ガルヴォルスとなり、偽りの正義を振りかざしている者を次々に手をかけてきた。特に光輝、オメガを正義の象徴として激しく憎悪していた。

 これまで正義を賭けての竜也との戦いを繰り広げてきた光輝。だが竜也の考えは変わらず、安らぎを取り戻させることもできないままになっていた。

「それで、他の仮面ライダーのみなさんは?近くに来ているの?」

「それは分からない。まだ居場所も分かっていないし・・ライダーだから簡単にやられるなんてことはないだろうけど・・・」

 光輝が疑問を投げかけると、翔太郎が深刻さを見せて答える。近くに何人の仮面ライダーが今回の異常を察知してやってきているのか、また彼らが今どこにいるのか、把握できないでいた。

「相手が何だろうとオレには関係ない。オレ1人で十分だ。」

「さっきは無様にやられていたのにか?」

 一矢が強気な態度を見せる。その態度に対して侑斗が口を挟む。

「今度はあのような無様をすることはない。お前たちの出番はもうないということだ。」

「態度も行動も軽率だな。それではどんなことになるか分からなくなるぞ・・」

 一矢の態度に次に不満を口にしたのは後藤だった。

「だが、オレもそういう自己満足な人間との付き合いはある。それも長めの時間な・・」

「はっきりしていることは2つ。ハイパーショッカーの企みを阻止すること。他の仮面ライダーのみなさんを探して、合流すること。ですね?」

 映司が投げかけた問いかけに、侑斗が頷く。

「オレに質問するな。」

 だが竜は不満を見せて、映司に背を向ける。彼は質問されるのを極端に嫌っている。

「その2つをうまくやり抜くためには、別々に行動したほうがいい。別々になったところを狙われる危険はあるが、そのほうが効率がいい・・」

「そうですか・・でしたら僕は、ヒカルちゃんとくるみちゃんと一緒にいます。」

 後藤の提案を受けて、光輝が自分の決意を口にしてきた。

「様々な世界を脅かす事態になっていることは分かっています。ですが、ヒカルちゃんやくるみちゃんを守れないで、世界を守るなんてできるはずがないから・・」

「光輝さん・・・」

 光輝の言葉を聞いて、ヒカルが戸惑いを見せる。しかしヒカルはすぐに光輝に笑みを見せる。

「光輝さんの気持ちは嬉しいです・・でも守られてばかりでいたいなら、私は最初からここに来ようとは思いません。ですから私も私なりに、光輝さんを助けたいです・・」

「あたしもヒカルちゃんと同じ気持ちよ。光輝のやることはいつも危なっかしくて、あたしがついてないと何に首を突っ込むか分かったもんじゃないからね。」

 ヒカルに続いてくるみも声をかける。2人の言葉を聞いて、光輝は頷いた。

「それじゃ僕は2人と一緒だ。太一くんはどうする?」

「僕も戦うよ・・僕にどこまでできるか分かんないけど・・・」

 光輝に声をかけられて、太一が答える。

「もしも弥生ちゃんが、ヒカルさんとくるみさんみたいに一緒に行くようなことになるなら、僕も弥生ちゃんを守るために・・・」

「太一くん・・私もじっとしているわけにいかないね・・私が太一くんを支えてあげないと・・」

 決心を口にする太一に、弥生も微笑みかけた。

「ハイパーショッカーもだけど、竜也くんも止めないと・・いくら世界のためでも、何もかもムチャクチャにしていいことにはならない・・・!」

 竜也のことを考えて、光輝が手を強く握りしめる。正義と戦いの中で苦悩している彼に、ヒカルは戸惑いを感じていた。

 

 他の仮面ライダーを探して合流するため、光輝たちは別れて行動を再開した。

 太一は弥生、翔太郎、フィリップ、竜と一緒に動いていた。フィリップは「地球(ほし)の本棚」と呼ばれるデータベースから、ライダーの居場所を検索しようとしていた。

「以前にも思ったけど、次元を超えて様々な世界を行き来する。実に興味深い・・」

「おい、フィリップ・・余計なこと考えてないで早く検索しろ・・」

 次元に興味津々になっているフィリップに、翔太郎が注意をする。

「他の仮面ライダーもこっちに向かってきているよ。ただハイパーショッカーの動きを警戒して、大きな動きに出ていない・・」

「やっぱ他のライダーも、慎重に行動してるってことなのか・・・」

 検索を行ったフィリップの言葉を聞いて、翔太郎が呟きかける。

「それで、ライダーのみなさんの居場所、分かりましたか・・?」

「もちろん、全員の現在位置を把握しているよ。」

 太一の問いかけにフィリップが答えたときだった。

「やはり別れて行動を始めたか、お前たち・・」

 そこへ声がかかり、太一たちが緊張を覚える。振り返った彼らの前に、4体の怪人たちが現れた。1体は金の体色をしており、残りはブリキの人形のような顔をしていた。

「モールイマジン、そして“ゲドン”の十面鬼、ユム・キミル。ハイパーショッカーに加わっていたか・・」

「さすがはWの片割れ。我々の情報も手に入れていたか。」

 フィリップが語りかけると、ユムが淡々と答えてきた。

「だが我々に関する情報があったとしても、それだけの人数で我らに敵うはずもなかろう。」

 強気な態度を見せるユム。3体のモールイマジンが前に出て、それぞれ斧型の刃、ドリル、かぎ爪となっている左手を構える。

「お前たち、オレたちを甘く見すぎだ。大人数なら止められるほど、オレたちは弱くはないぞ。」

 竜がユムたちに対して鋭い視線を向ける。

「それに、オレとフィリップは、2人で1人の仮面ライダーだからな・・」

「弥生さん、僕の体を頼むよ。」

 続けて翔太郎も言いかけ、フィリップが弥生に声をかける。

Cyclone.”

Joker!”

Accel.”

 3人の持つガイアメモリから音声が発する。

「変身。」

「変・・身!」

Cyclone,Joker!”

Accel.

 それぞれのメモリをセットして、翔太郎と竜がW・サイクロンジョーカーとアクセルに変身する。倒れそうになったフィリップの体を弥生が支える。

「僕もやるよ・・もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・変身・・・!」

 太一もベルトに水晶をセットして、クリスに変身する。だが3人の仮面ライダーを前にしても、ユムもモールイマジンも動じていない。

「勝てる自信があるってのか?それとも何か企んでるのか?」

「敵の情報を知り得ているのは、お前たちだけではないということだ。」

 翔太郎が疑問を投げかけて、ユムが言葉を返す。するとモールイマジンたちが太一たちに襲いかかってきた。

「さぁ、お前たちの罪を数えろ。」

「振り切るぜ!」

 翔太郎、フィリップ、竜が言い放ち、太一とともにモールイマジンに立ち向かう。

 斧のモールイマジンの刃を、竜がエンジンブレードで受け止める。ドリルのモールイマジン、かぎ爪のモールイマジンを太一と翔太郎が素早く攻め立てていく。

「3対3に持ち込んだことで、お前たちには隙が生まれてくる・・」

 その戦いを見ていたユムが、太一たちに向けて両手を伸ばした。彼らの戦いの場に爆発が起こり、太一、翔太郎、竜が吹き飛ばされる。

「くそっ!不意打ちを仕掛けてくるとは・・!」

「我らゲドンやハイパーショッカーが世界を支配するためには、仮面ライダー、お前たちが邪魔なのだ。」

 毒づく翔太郎と、淡々と言葉を投げかけるユム。

「一気にライダーたちを倒せ!この好機を逃すな!」

 ユムの命令を受けて、モールイマジンたちが反撃に転じる。イマジン3体が太一と翔太郎に狙いを絞り、ユムが竜を遠距離から爆発と衝撃波で攻め立てる。

“僕たちの不得意な戦い方を仕掛けてくる。僕に負けない情報力だ。”

 ユムに関心の言葉を上げるフィリップ。

「感心してる場合じゃないだろ、相棒!コイツらに勝つ方法を探してくれ!」

“あるにはあるが、人数的に不利だよ。”

 不満げに呼びかける翔太郎だが、フィリップはすぐに打開の手段を見つけられないでいた。

 太一もドリルのモールイマジンの猛攻に回避が間に合わなくなり、押され気味となっていた。

「何とかしないと・・何とか・・・うわっ!」

 モールイマジンのドリルが命中し、太一のまとうクリスの装甲から火花が散る。倒れる彼に詰め寄って、モールイマジンがドリルの切っ先を向ける。

「太一!」

「太一くん!」

 声を上げる翔太郎と弥生。翔太郎が助けに向かおうとするが、モールイマジン2体に行く手を阻まれる。

 太一に向けてドリルを突き出そうとするモールイマジン。だがそのとき、モールイマジンに一閃が飛び込み、太一から突き放された。

「えっ・・!?

 驚きの声を上げる太一。彼の視界に入ったのは、棒状の武器を持った仮面ライダー。

 仮面ライダー(エックス)(じん)(けい)(すけ)だった。

「大丈夫か、君たち!?

「はい・・まさかここで、仮面ライダーが来てくれて助けてくれるなんて・・・」

 Xに声をかけられて、太一が安心感を覚える。

「それに、来たのはオレ1人ではない。」

 Xが言った直後だった。もう1人の戦士が、Wと交戦していたモールイマジンたちに飛びかかった。仮面ライダーアマゾンである。

「アマゾン、助かった・・ナイスタイミングだ・・」

「ライダー、アマゾンのともだち・・アマゾン、ともだち、たすける・・・」

 翔太郎が声をかけると、アマゾンが頷く。彼はXと並び立ち、ユムとモールイマジンを見据える。

「じゅうめんき、お前たちもハイパーショッカーも、アマゾン、ゆるさない・・・!」

「まさかアマゾン、お前が私の前に現れるとはな・・よかろう。私が直接お前を葬り去ってやるぞ・・・!」

 構えるアマゾンに対して喜びを見せるユム。

「アマゾン、翔太郎くんたちと力を合わせて、ヤツらを倒すぞ!」

「キキー!」

 Xの呼びかけにアマゾンが答える。太一、翔太郎、竜も並び立つ。

「早く終わらせよう・・こんなの、僕はイヤだから・・・」

 太一は呟きかけると、クリスセイバーを手にして構える。

「行け、モールイマジン!」

 ユムの命令を受けて、モールイマジンが太一たちに向かってきた。太一とアマゾンがモールイマジンの横をすり抜けて、ユムに立ち向かう。

「お前たちのことも調べがついている。お前たちに万にひとつの勝ち目もない!」

 言い放つユムが、飛びかかってきたアマゾンを迎え撃つ。肉弾戦でも、ユムは太一とアマゾンに負けず劣らずだった。

 だがスピードに長けている太一とアマゾンは、ユムの打撃を素早くかいくぐっていく。

「アマゾンだけでなく、コイツも動き回りおって・・・!」

 ユムが太一に向けて爆発を放つが、太一はジャンプして爆発をかわす。彼はそのままユムの上を飛びながら、クリスセイバーを振りかざす。

「うっ!」

 体を切り付けられてユムがうめく。そこへアマゾンが飛び込み、腕のカッターでさらにユムを切り付けていく。

「おのれ、アマゾン・・おのれ、クリス!」

 怒りを覚えたユムが両手を伸ばし、太一とアマゾンに向けて爆発を放つ。だが2人とも素早く回避していた。

「本当は怖いけど、こんなにみんなに助けられているのに、逃げてばかりじゃいられない・・・!」

 太一はベルトの水晶をクリスセイバーの柄にセットする。精神エネルギーがクリスセイバーの刀身に集まっていく。

「クリスストラッシュ!」

 太一が振りかざしたクリスセイバーから光の刃から放たれる。反応したユムは紙一重で光の刃を回避した。

 だがアマゾンが高く飛び上がり、ユムに向かって降下してきた。彼の右手には紅いエネルギーが集中していた。

「スーパー大切断!」

 アマゾンの手刀に切り裂かれて、ユムが突き飛ばされる。決定打を受けたユムだが、すぐに立ち上がってきた。

「アマゾン、お前に倒されるとは・・だがまだ終わりではないぞ・・・ハイパーショッカーの力は、この程度ではないぞ・・・」

 ユムが太一とアマゾンを見据えて、声を振り絞る。

「お前たちもすぐに地獄に落ちることになる・・・待っているぞ・・仮面ライダー・・・」

 再び倒れたユムが爆発を起こして倒れた。司令塔がいなくなり、モールイマジンがうろたえる。

 逃げ出そうとするモールイマジンたちだが、翔太郎と竜に行く手を阻まれる。

「ここまでやって逃げられるなんて思うなよ。」

「残念だが、お前たちが行き着くゴールはこっちじゃない・・」

Joker,Maximum drive!”

Engine,Maximum drive!”

 翔太郎がサイクロンメモリを右腰のスロットに移し替え、竜がエンジンブレードの刀身にあるスロットにエンジンメモリを差し込む。翔太郎が巻き上がる竜巻に乗って飛び上がり、竜がエネルギーを集めたエンジンブレードを構える。

「ジョーカーエクストリーム!」

「エースラッシャー!」

 体を緑と黒の2つに分割したWのキックと、エンジンブレードから放たれたAの字のエネルギーが、ドリルとかぎ爪のモールイマジンを撃破した。

 残った斧のモールイマジンが自分だけでも逃げようとするが、その前にXが立ちはだかった。

「お前も逃がさないぞ!ライドルスティック!」

 Xが万能武器「ライドル」を変形させた棒型武器「ライドルスティック」を振りかざす。モールイマジンが刃を振りかざして迎え撃つが、ライドルスティックに弾き返されていく。

「ライドル脳天割り!」

 大きくジャンプしたXが、モールイマジンの頭にライドルスティックを叩き付けた。倒れて動かなくなったモールイマジンが爆発を引き起こした。

 ユムとモールイマジンを撃破した太一たち。太一は安心したが、竜とXは警戒を解いてはいなかった。

「やはりハイパーショッカーは、オレたちが別れたところを狙ってきている・・・」

「やべぇな・・ヤツら、オレたちや他の仮面ライダーをつぶしにかかってる・・マジで急がねぇと・・・」

 竜と翔太郎が不安の言葉を口にする。それを聞いて太一が再び不安を覚える。

 

 時の電車「デンライナー」。あらゆる時代の乗客が利用する他、過去に飛んだイマジンの追跡を行うこともある。時の電車は空間、場所問わずレールが自動的に展開、撤去されるため、基本的にどこにでも走行することができる。

 1度デンライナーに戻ってきた良太郎と侑斗。中でオーナーと客室乗務員ナオミ、良太郎に憑いているイマジンのモモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、そして小さな女の子、ハナがいた。

「良太郎、厄介なことになったよ・・ハイパーショッカーが、本格的に仮面ライダーの攻撃に乗り出したよ・・」

 ハナが言いかけると、良太郎が小さく頷いた。

「あの人たちが世界征服を企んでいて、僕たちを邪魔者としてやっつけようとしていることは分かっているけど、それ以外にも目的があるような気がしているんだ・・」

「それ以外の目的?」

 良太郎が口にした言葉に、侑斗が眉をひそめる。

「特に海道竜也くんが・・オメガである光輝くんを倒すことだけを考えているんじゃ・・・」

「そんなゴチャゴチャしたことを気にしても面倒なだけだ。要はアイツらを倒せばいいだけだろ?」

 深刻さを見せる良太郎に、モモタロスが強気な態度を見せる。

「ハァ・・相変わらず先輩は野蛮だね・・」

 そこへウラタロスが彼に態度に対して呆れた素振りを見せる。

「何だと、コイツ!」

「男と男の真剣勝負・・やっぱ泣けるで!」

 不満を見せるモモタロスだが、感動を見せているキンタロスに気分をそがれてしまう。

「今度も面白くなりそうだね♪アイツら敵だからやっつけてもいいよね?答えは聞かないけど。」

 リュウタロスもノリノリになっていた。イマジンたちが騒いでいる中、良太郎はひとつの不安を感じていた。

「竜也くんの行動を考えたら・・光輝くんが危ない・・・!」

 光輝と竜也の対決に、良太郎は不安を膨らませていた。

 

 

 

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