仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第2章

 

 

 一矢、太一と合流するため、光輝はメガブレイバーを走らせていた。彼の後ろにはヒカルも乗っていた。

「ホントはくるみちゃんと一緒にいてほしかったけど・・・しっかり捕まっていてね、ヒカルちゃん・・・!」

「すみません、光輝さん・・こんなときにわがままを言ってしまって・・・」

 呼びかける光輝にヒカルが謝る。光輝は気にすることなく、メガブレイバーのスピードを上げた。

 だが工場地帯に差し掛かったところで、メガブレイバーが突然止まった。

「どうしたんだ、メガブレイバー・・!?

「この付近に強い毒素が漂っている。これ以上先に進めば、下手に息を吸っただけで命に関わる・・」

 光輝が訊ねると、メガブレイバーが説明をする。遠くからにごりのある緑の煙がかすかに立ち上ってきていた。

「毒ガス!?・・ガルヴォルスの仕業・・・!?

「いや、ガルヴォルスの気配はない。ガルヴォルス以外の何者かの仕業なのだろう・・」

 警戒心を強める光輝に、メガブレイバーが状況を説明する。

「まさかこうも早くオメガと会うことになるとはな・・」

 光輝たちの前に1体の怪人が現れた。左半身が赤いサソリのような姿かたちをした怪人である。

「お前はゲルショッカーのサソリトカゲス・・お前もどうしてここに・・・!?

「オレ様を知っているとは光栄だな・・オメガ、ここでお前の息の根も止めてやるぞ!」

 メガブレイバーから降りた光輝を見据えて、怪人、サソリトカゲスが構える。

「メガブレイバー、ヒカルちゃんを連れてここから離れて・・僕がアイツを倒す・・・!」

 光輝もサソリトカゲスを見据えたまま、メガブレイバーに呼びかける。

「分かった。少し離れた場所で待機しているよ・・・しっかりつかまっていて・・」

「は、はい・・」

 聞き入れたメガブレイバーの呼びかけに、ヒカルが頷く。彼女を乗せたまま、メガブレイバーはこの場を離れた。

「これで安心して戦える・・・変身!」

 光輝がベルトに水晶をセットして、オメガに変身する。光輝がサソリトカゲスに立ち向かい、走り出す。

「くらえ、オメガ!」

 サソリトカゲスが口から毒ガスを吐き出す。光輝は高くジャンプして毒ガスをかわす。

「速いな、オメガ。だがどこまで逃げられるかな!?

 サソリトカゲスがさらに毒ガスが吐き出していく。光輝は素早く動いて毒ガスをかいくぐり、サソリトカゲスにパンチを叩き込む。

 光輝の攻撃に押されるサソリトカゲス。光輝がさらに追撃を加えていく。

 だがその最中、光輝が息苦しさを覚える。サソリトカゲスが吐き出した毒ガスが周りに充満していた。オメガになっていなければ、光輝は窒息死に陥っていただろう。

「しまった・・毒ガスが・・・!」

「調子に乗ったようだな、オメガ・・お前でもオレの酸欠ガスには耐えられまい・・」

 苦しむ光輝をあざ笑うサソリトカゲス。サソリトカゲスが振りかざした爪に切り付けられて、光輝のまとうオメガの装甲から火花が散る。

「このまま放っておいても倒れるだろうが、それでは何をしてくるか分からない・・すぐに始末してやるぞ・・・!」

 サソリトカゲスが早くとどめを刺そうと、光輝に迫る。

「このままではやられてしまう・・ガスを吹き飛ばさないと・・・メガフラッシャー!」

 光輝がベルトの水晶から精神エネルギーを光に変えて放出する。光はサソリトカゲスの目をくらませ、周囲に散らばっていたガスを吹き飛ばした。

「戦いが長引いたら不利だ・・一気に倒さないと・・・!」

 光輝がベルトの水晶を右手の甲にセットする。エネルギーを集めた右手を握りしめて、彼はサソリトカゲスに向かっていく。

「ライダーパンチ!」

 必殺のパンチ「メガブレイカー」がサソリトカゲスの体に命中した。威力のある一撃を受けて、サソリトカゲスが突き飛ばされる。

「ライダーパンチ・・まさかまたライダーに倒されることになるとは・・・」

 倒れたサソリトカゲスが爆発を引き起こす。勝利を収めた光輝だが、体力と精神力を消耗して、平然としていられなかった。

「少し無茶をしすぎたか・・でも、すぐにヒカルちゃんのところに行かないと・・」

「へぇ・・お前がオメガか・・・」

 ヒカルと合流しようとしたところで声をかけられ、光輝が足を止める。振り返った彼の前に、1人の青年が立っていた。

「僕とどっちが強いのか、確かめさせてもらうよ・・・」

 青年の頬に異様な紋様が浮かび上がる。ガルヴォルスとは違う紋様である。

 さらに異形の怪物へと変貌する青年。彼はドラゴンオルフェノクへと変身した。

「ガルヴォルス!?・・いや、ガルヴォルスとは違うようだ・・・!」

 光輝が警戒心を強めながら、ドラゴンオルフェノク、北崎(きたざき)を見据える。

「だが心のある怪人とは思えない・・戦うしかないか・・・!」

 構える光輝に向かって北崎が迫る。大きな両手から伸びている爪を、光輝は動いてかわしていく。

 だがサソリトカゲスとの戦いで消耗した体力は回復しておらず、光輝は次第に北崎に追い詰められていく。

「ぐっ!」

 北崎の爪がオメガの装甲を切り付け、光輝がうめく。持ち上げられた彼は、そのまま北崎に投げつけられた。

 倒れたところに追い打ちをかけるように、北崎が光輝を踏みつける。力強く踏みつけられて、光輝が激痛を覚える。

「こんなもんなの?・・つまんないなぁ・・」

 退屈を口にする北崎に蹴り飛ばされ、光輝が激しく横転する。ダメージが大きく、光輝はすぐに起き上がることができなくなっていた。

「もういいや・・とどめ、刺しちゃうよ・・」

 北崎がどす黒い光の球を出して放つ。光輝には回避できる体力が残っていない。

 そのとき、光輝に向かっていた光の球が、横から飛んできた何かにぶつかって爆発を起こした。振り向いた光輝は、見知った人物を目撃する。

 かつて光輝と力を合わせた2人の仮面ライダーがいた。

 電王に変身した良太郎とWに変身している翔太郎とフィリップである。ソードフォームの電王がソードモードの「デンガッシャー」の刀身を放って、北崎の光の球を弾き飛ばしたのである。

「君たちは・・良太郎くん、翔太郎くん!」

「へっ!オレ、参上!」

 声を上げる光輝の前で、モモタロスが憑依している良太郎が高らかにポーズを決める。

「異変が起きてるってフィリップがいうもんだからな。捜査してたところでデンライナーがやってきたってわけだ・・」

 翔太郎が光輝に事情を説明する。3人の仮面ライダーが北崎を見据える。

“いろんな世界や時間の怪人たちが集まってきている。しかも、仮面ライダーと戦ってきた彼らが結託して、ハイパーショッカーを結成している・・”

 Wに変身している翔太郎と一体化しているフィリップの意識が説明を入れる。

「ハイパーショッカー・・蜘蛛男もそんなことを言っていた・・・」

「とにかく、今はコイツを何とかするほうが先決だ・・」

 動揺を浮かべる光輝に呼びかけて、翔太郎が北崎に振り向いた。

「せっかく楽しんでたのに・・邪魔されたらイヤになるじゃないか・・・!」

 声を低く鋭くして、北崎が光輝たちに迫る。

「やろうってんなら相手になってやるぜ。けど覚悟はしてもらう。オレは最初からクライマックスだぜ!」

 良太郎がデンガッシャーを構えて、北崎を迎え撃つ。

「いくぜ、いくぜ、いくぜ!」

 連続でデンガッシャーで北崎に切りかかる良太郎だが、北崎には通じず、さらにデンガッシャーの刀身をつかまれてしまう。

「何っ!?

 驚きの声を上げる良太郎が、北崎の爪で電王の装甲を切り付けられる。

「相変わらず単純だな、モモタロスは・・」

“君も人のことを言えないけどね、熟卵(ハーフボイルド)・・”

 呆れる翔太郎にフィリップが口を挟む。

「うるさいって・・さて、こっちも遊びに来たわけじゃないからな・・」

 翔太郎も気持ちを切り替えて、良太郎に加勢して北崎に攻撃を仕掛ける。風と格闘を駆使して、W・サイクロンジョーカーが北崎を攻め立てる。

「そんな図体じゃオレたちは捕まえられないぜ。」

 落ち着いた素振りで言いかけて、翔太郎が追撃を仕掛ける。

 そのとき、北崎のオルフェノクとしての姿に変化が起きた。同時に彼のスピードが格段に上がり、良太郎と翔太郎の攻撃を素早くすり抜けた。

「何っ!?

「急に速くなったぞ!」

 驚きの声を上げる2人。回避や迎撃が間に合わず、2人が北崎の攻撃を受ける。

“あのオルフェノクはパワー重視の魔人態とスピード重視の龍人態、2つの形態を持っている。そのスピードはサイクロンを大きく超える・・”

 フィリップが翔太郎に向けて説明を入れる。北崎の速さは、電王、Wのそれを明らかに上回っていた。

「このままでは良太郎くんもWもやられてしまう・・・!」

 このピンチを乗り越えようと、光輝が思考を巡らせる。思い立った彼は、素早く動く北崎に対して力を振り絞った。

「メガフラッシャー!」

 光輝が精神エネルギーを光に変えて放出した。高速で動いていた北崎も周囲に大きく広がる光まではかわし切れず、この場を離れることとなった。

 北崎の強襲を辛くも退けることができた光輝。だが力を使い果たした光輝が、オメガへの変身が解けた。

「光輝!」

 良太郎と翔太郎が電王、Wへの変身を解除して光輝に駆け寄る。モモタロスの憑依も解かれて、良太郎は自分の意識を表に出していた。

「光輝くん、大丈夫!?

「うん、何とか・・ちょっと力を使いすぎたかな・・・」

 心配の声をかける良太郎に、光輝が微笑みかける。だが力の使い過ぎで、光輝の意気は上がっていた。

「ムチャしすぎだ・・ま、オレも人のこと言えないし、あぁでもしなかったらやられてたかもしれなかった・・」

 翔太郎がため息をつきながら答える。そこへメガブレイバーに乗ったヒカルがやってきた。

「光輝さん!・・大丈夫ですか、光輝さん!?

「ヒカルちゃん・・・大丈夫、大丈夫・・少し休めば問題ないよ・・・」

 心配の声をかけるヒカルに、光輝が作り笑顔を見せる。だが彼はすぐに真剣な表情を見せる。

「そうだ、急がないと・・一矢さんと太一くんにも、怪人たちが襲ってきているかもしれない・・」

「それは多分大丈夫だと思うよ・・僕たちの仲間が向かっているから・・」

 不安を口にする光輝に、良太郎が微笑んで答えた。

 

 突如襲撃してきたカメバズーカとソードフィッシュオルフェノクを、一矢と太一は迎え撃った。

 背中のバズーカを発射していくカメバズーカだが、一矢に軽々とかわされていた。

「やはりその姿の通り、動きも攻撃ものろいようだな。もっとも、オレのほうが強いのだから納得できなくないがな・・」

 一矢が勝気な態度をカメバズーカに見せつける。

「生憎、カメと競争するウサギになるつもりはないのでな。すぐに終わらせてやる・・」

 一矢はそういうと、ベルトの水晶を右手の甲部にセットする。背中のバズーカを発射するカメバズーカだが、一矢はこの砲撃をかわして距離を詰めた。

「ギガブレイカー!」

 エネルギーを集めたパンチを頭部に叩き込まれて、カメバズーカが吹き飛ばされる。1度立ち上がるも、カメバズーカはふらついて力尽き、爆発を引き起こした。

 その頃、太一もソードフィッシュオルフェノクの2本の剣をかわして優位に立っていた。

「もうやめようよ・・こんなことをしても、僕もあなたもイヤになるだけだって・・・」

 太一は低く告げると、右手に剣「クリスセイバー」を手にする。立ち向かう太一が振りかざすクリスセイバーを、ソードフィッシュオルフェノクが2本の剣で受け止める。

 だが太一がクリスセイバーを振り抜くと、ソードフィッシュオルフェノクが剣ごと突き飛ばされた。太一はベルトの水晶をクリスセイバーの柄にセットする。

「クリスストラッシュ!」

 太一がクリスセイバーを振りかざして、光の刃を放つ。この一閃を受けて、ソードフィッシュオルフェノクが爆発に巻き込まれて、灰となって消滅した。

「ふぅ・・終わった・・・」

「あの程度のヤツにてこずるとは、相変わらず甘いな、お前は・・」

 安堵する太一を一矢が見下してくる。

「それにしてもこの人たち、何なんだろう?・・ガルヴォルスじゃないみたいだったし・・・」

「何者だろうとオレに攻撃しようとするなら倒すだけだ。それにこういうヤツらに詳しいヤツがいるだろう・・?」

 疑問を覚える太一と、悠然とした態度を取る一矢。弥生も2人と戦った怪人たちの正体が分からず、不安を感じていた。

「この世界の仮面ライダーもやりおるわ・・」

「あの程度の怪人たちでは手も足も出ないか・・」

 そこへ声がかかり、一矢と太一が振り返る。その先には白いローブを身に着けた2人の男たちがいた。1人は白く、1人は緑色の顔色をしていた。

「誰だ、お前たちは?コイツらの仲間か?」

 一矢が勝気な笑みを見せて、男たちに声をかける。

「組織は違えど愛しの怪人たちだったことに変わりはない・・この仇、とらせてもらうぞ・・・!」

 白の男が呟いてから、右手を伸ばした。すると一矢が衝撃に襲われて突き飛ばされる。

「えっ!?

 突然のことに太一が驚く。男は右手から念動力を放って、一矢を突き飛ばしたのである。

「次はお前だ、クリス。ここをお前たちの墓場にしてくれるぞ。」

 今度は緑色の男が両手から電気のようなビームを発射してきた。太一は横に飛んでビームをかわした。

「誰なんだ、あなたたちは!?僕たちに何をしようとしているんだ!?

「いいだろう、教えてやろう・・わしはゴルゴムの大神官、ダロム・・」

「同じく大神官、バラオム・・だが今はハイパーショッカーの一員であるがな・・」

 声を上げる太一に対し、ダロムとバラオムが自己紹介をする。世界の支配と人類の文明の破壊を企む暗黒結社「ゴルゴム」の大神官である2人だが、今はハイパーショッカーのメンバーとして行動していた。

「我らの全世界の支配のためには、仮面ライダー、お前たちが邪魔なのだ・・」

「ギガス、クリス、お前たちも地獄に叩き落としてやるぞ・・・!」

 バラオムが不敵に言いかけ、ダロムが右手を伸ばして念動力を放つ。太一が動きを封じられて体を持ち上げられる。

「うっ!・・こ、この・・・!」

 もがいて抵抗する太一だが、体力の消耗もあって、ダロムの念動力から抜け出すことができない。ダロムに動かされて、太一がバラオムのいるほうに向かって投げ飛ばされた。

 さらにバラオムが両手からビームを放つ。その直撃を受けてクリスの装甲から爆発が起こり、太一が倒れる。

「どうした、仮面ライダー?貴様らの強さとはこんなものなのか?」

「このままここでお前たちを始末してくれる。仲良くあの世に行くがいい・・」

 ダロムがあざ笑い、バラオムが一矢と太一にとどめを刺そうと両手を構える。そのてから2人に向けてビームが放たれる。

 だがそのとき、一矢と太一の前に人影が割って入ってきた。振り下ろされた一条の刃が、バラオムのビームを弾き飛ばした。

「今のは・・・!?

「おかしな連中がいるから調べてみたら、情けないお前たちを見ることになるとはな・・」

 声を上げる太一に向けて声がかかる。彼らの前に現れたのは、重みのある剣を手にして赤いジャケットを着た青年だった。

「あなたは・・・!」

「ドーパントではないようだが、悪だくみを考えているヤツらには変わりない・・倒させてもらうぞ・・・」

 さらに声を上げる前で、青年、照井(てるい)(りゅう)が紅いメモリを取り出した。「ガイアメモリ」のひとつ「アクセルメモリ」である。

Accel.”

「変・・身!」

 竜が音声を発したアクセルメモリをベルト「アクセルドライバー」にセットして、パワースロットルを回す。彼の体を紅い装甲が包み込んだ。

「おい、1人だけ先に行くな。オレの出る幕がなくなるだろうが。」

 そこへ別の青年がやってきて、変身した竜に声をかけてきた。

「コイツらもハイパーショッカーとかいうのに加わった連中か・・何にしてもウロウロされるのは気分が悪くなるな・・・」

 もう1人の青年、桜井(さくらい)侑斗(ゆうと)がダロムとバラオムに振り向く。彼はベルトを身につけて、1枚のカードを取り出す。

「変身。」

Altair form.”

 カードをベルトにセットした侑斗が、緑の装甲に包まれる。「ゼロノス」に変身した彼が、ダロム、バラオムに向けて高らかに言い放つ。

「最初に言っておく!オレはかーなーり、強い!」

「お前たちはオレについてこれない・・振り切るぜ!」

 竜も続けて言い放ち、侑斗とともにダロム、バラオムに向かって駆け出す。

 竜が剣「エンジンブレード」をバラオムに向けて振りかざす。バラオムは飛行して攻撃をかわすが、竜はさらに飛びかかって追撃を仕掛けていく。

 バラオムが光の壁を作り出して攻撃を防ごうとするが、竜の振り下ろしたエンジンブレードに打ち破られる。

 一方、ゼロノス・アルタイルフォームに変身した侑斗がダロムに挑む。ダロムが念動力を放つが、侑斗は素早く動いて距離を詰めていく。

 侑斗は「サーベルモード」の「ゼロガッシャー」を手にして、ダロムに振りかざす。ダロムは後ろに下がって、バラオムと合流する。

「ゼロノスとアクセル・・なかなかやるようじゃ・・・」

「こうなれば我々も本気にならねばならないようだ・・」

 笑みをこぼすダロムとバラオムが、身にまとっていたローブを脱いだ。その中から、白い三葉虫とサーベルタイガーの怪人が姿を現した。

「ついに大怪人としての姿を現したか・・・!」

 侑斗がダロムとバラオムを見据えて言いかける。

 大神官として怪人たちを指揮しているダロムたち。その正体は怪人たちを上回る戦闘能力を備えた大怪人である。

「本番はここからだ!ゼロノス、アクセル、お前たちも地獄に叩き落としてくれる!」

 バラオムが竜を狙って飛びかかってきた。強いパワーだけでなく、スピードも格段に上がっていたバラオムの速攻で、竜はアクセルの装甲を切り付けられて火花が散る。

「こんなもので、オレが負けると思っているのか!?

 竜がエンジンブレードを構えてバラオムを迎え撃つ。

 一方、ダロムは侑斗に襲いかかっていた。ダロムの放つ念動力は威力を増しており、侑斗の体を軽々と持ち上げていた。

「やはりパワーが上がっているか・・・!」

 毒づく侑斗がダロムの念動力で壁に叩き付けられる。倒れずに踏みとどまった彼のそばに、カラスのような顔をした怪人が駆けつけてきた。

「侑斗、大丈夫か!?痛いところは!?

「うるさい、デネブ!いちいち心配しなくてもオレは平気だ!」

 動揺を見せながら心配してくる怪人、デネブに侑斗が言い返す。その2人のやり取りを見て、ダロムが嘲笑を見せてきた。

「我らではなくライダーに味方するとは、とんだ怪人の面汚しだ!」

「それは違うぞ!オレは怪人ではなく、イマジンだ!」

「違いがないだろうが!」

 ダロムに言い返すデネブに、侑斗がツッコミを入れる。

「デネブ、ヤツの念力に耐えるにはパワーが足りない!力を貸せ!」

「分かった、侑斗!任せろ!」

 侑斗の呼びかけにデネブが答える。

Vega form.”

 デネブとの融合をしたゼロノスの形状が変化する。パワーを重視した外見と形状に。

「最初に言っておく!オレは怪人ではない!」

“同じことを何度も言うな!”

 高らかと突拍子のないことを言い放つデネブに、侑斗が怒鳴りかける。

「姿を変えたところでムダなこと・・我ら大怪人には通用しない!」

 ダロムが侑斗に向けて念動力を放つ。だがゼロノス・ベガフォームとなった侑斗は、この念動力に耐えていた。

「少しはやるようになったか・・ならばこれはどうだ!」

 ダロムが触覚を伸ばして縄のようにして、侑斗の体を縛りつけてきた。念動力と相まって、侑斗は縄から逃れることができない。

“デネブ、お前が油断するから・・!”

「心配ない、侑斗!このくらいで“まいった”は言わないぞ!」

 文句を言う侑斗にデネブが高らかに言う。彼は力を振り絞って、ダロムの縄と念動力をはねのけようとする。

「ムダなこと・・まずはゼロノス、貴様から地獄に送ってやろう!」

「そこまでだ!」

 侑斗を葬ろうとしたとき、ダロムに向けて呼び声がかかる。彼らの前に新しく2人の青年が現れた。

「あの2人、ヤミーとは違うみたいだけど・・・」

「ヤミーではないが、オレたちの味方であるともいえない・・」

 青年たちがダロムとバラオムを見て、警戒を強める。彼らは身に着けているベルトにメダルをセットする。

「変身!」

“タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ・タ・ト・バ!”

 2人の青年がそれぞれ装甲を身に着けていく。1人は歌のような音声の中、頭部、腕、足にそれぞれ赤、黄、緑のラインが描かれているものを。1人は黒と銀と緑を基調としたものを。

「あれはオーズとバース・・・!」

「ヤツらとも会うことになるとは・・ならば先に始末してくれる!」

 ダロムとバラオムが言い放ち、2人の青年、火野(ひの)映司(えいじ)後藤(ごとう)慎太郎(しんたろう)に向かっていく。

「オレが白いヤツを狙う!」

「分かりました、後藤さん!」

 後藤の呼びかけに映司が答える。後藤がダロムを、映司がバラオムを迎え撃つ。

 バラオムが素早い動きと爪で襲いかかるが、映司も軽い身のこなしでかわしていく。

「パワーもあるし結構速いな・・だったら!」

 映司がベルトにセットしていたメダルのうち、黄色のメダルともう1枚の緑のメダルを取り換えた。

“タカ・カマキリ・バッタ!”

 映司の変身したオーズの腕のラインが黄色から緑に変わり、かぎ爪状の武器「カマキリソード」が伸びた。彼はカマキリソードを使って、バラオムの爪を防いでいく。

 一方、ダロムを迎え撃っていた後藤だが、ダロムの念動力に悪戦苦闘していた。

「くっ!・・すごいパワーだ・・このバースでも軽々と持ち上げてしまうとは・・・!」

 ダロムのパワーに脅威を覚える後藤。

「だがこっちはまだ手を見せてはいない・・・!」

Caterpillar leg .”

 後藤がベルトにメダルを入れると、脚部にキャタピラ型の装備「キャタピラレッグ」が装着された。彼はその装備の走行を併用して、ダロムに向かっていく。

 ダロムが念動力で動きを封じようとするが、後藤のまとうバースの重量のあるキャタピラレッグの走行は止まらない。その突進を受けて、ダロムが大きく突き飛ばされる。

「火野、コンボは控えろ!特に紫のヤツは!」

 後藤がバラオムと一進一退の攻防を繰り広げている映司に呼びかける。

「分かっています!紫のほうは自信がないですけど・・コイツで決めます!」

 映司は答えて、1本の剣「メダジャリバー」を手にして、メダルを3枚セットする。

“スキャニングチャージ!”

 音声を発するメダジャリバーを構える映司。その刀身にエネルギーが集中する。

「待て・・そいつはオレの相手だ・・!」

 そこへ竜が立ち上がり、エンジンブレードを構える。

Engine,Maximum drive!”

 エンジンブレードの刀身にもエネルギーが集まっていく。向かってくるバラオムに、竜がエンジンブレードを振りかざしてエネルギーの刃を放つ。

 即座に動きを止めたバラオムが、両手からビームを放って、エネルギーの刃を迎え撃つ。2人の攻撃は一進一退になっていた。

 そこへ映司が飛びかかり、メダジャリバーを振りかざした。強力な一閃「オーズバッシュ」がバラオムを捉えた。

 空間をも切り裂く映司の攻撃を受けて、バラオムが吹き飛ばされた。

「ぐおっ!・・まさかこのオレが、速さと刃で倒されることになるとは・・・!」

 体に刻まれた傷を押さえて、バラオムがうめく。

「だがオーズ、アクセル、これで勝ったと思うな・・ハイパーショッカーの戦力は、お前たちでも足元にも及ばないほどだ・・・!」

 映司と竜に言い放つと、バラオムが全身からエネルギーを放出する。断末魔の叫びをあげて、バラオムが倒れて爆発を引き起こした。

「絶望がお前のゴールだ・・」

 バラオムの最後を背にして、竜が低く告げる。決着をつけて、映司もメダジャリバーを下げて肩の力を抜いた。

 一方、ダロムの念動力をはねのけ、後藤が攻め立てていた。念動力だけでなく破壊ビームも駆使するが、後藤の変身しているバースはものともしなかった。

「おのれ、バース・・このままでは済まさんぞ・・・!」

「残念だが、お前たちはここで終わりだ・・お前たちに、世界の平和を乱させはしない!」

 うめくダロムに言い放つ後藤が、銃砲「バースバスター」にセルメダルを入れていく。

Cell burst.”

 バースバスターの銃口にエネルギーの光が集まっていく。

「待てぃ!私もフィニッシュを決めるぞ!」

 そこへデネブの憑依している侑斗も攻撃を仕掛けようとしていた。

Full charge.”

 武器「ゼロガッシャー」を「ボウガンモード」にして、ベルトのスイッチを押してエネルギーを集中させる侑斗。彼の放った光の矢「グランドストライク」と後藤のビーム砲「ブレストキャノンシュート」が、ダロムに命中した。

「おのれ、ライダー・・だがこれで勝ったと思うな・・お前たちの最後は近い・・・!」

 最後に声を振り絞ると、ダロムも倒れて爆発を引き起こした。

「くっ!・・ヤツらは・・・!」

「侑斗さんと竜さん・・それに・・・!」

 戦いを見守っていた一矢と太一が声を上げる。ゼロノス、アクセルに変身していた侑斗と竜だけでなく、オーズ、バースにとなっていた映司と後藤も変身を解いた。

「大丈夫か、お前たち?・・無事ではあるようだな・・・」

 侑斗が一矢と太一を見て言いかける。戦いが終わったのを確かめて、弥生が戻ってきた。

「ありがとうございます、侑斗さん、照井さん・・・でも、そこの2人は・・・?」

「えっと、はじめまして・・火野映司です・・」

「後藤慎太郎です。桜井さんと照井さんから事情を聞いてきました・・」

 弥生に問いかけられて、映司と後藤が自己紹介をする。

「今頃野上と左が吉川と合流しているはずだ。オレたちも合流するぞ・・」

「フン。どういうことかはまだ把握していないが、オレだけでも十分だがな・・」

 侑斗が呼びかけると、一矢が勝気な態度を見せる。彼らは光輝たちと合流するため、移動を始めた。

 

 

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