仮面ライダーオメガ -Spirits of Riders-

第1章

 

 

仮面ライダー。

裏社会や宇宙、別世界からやってくる破壊者や侵略者から、自由と平和を守るために戦い続けてきた戦士。

その活躍は世界にまで知れ渡り、子供たちのヒーローともなっている。

 

初代仮面ライダーが誕生して40年の年月が流れた。

この40年の間に数々の仮面ライダーが登場し、世界を脅かす怪人と戦ってきた。

時にライダー同士が対決し、時に心を持った怪人がライダーに力を貸したりもした。

 

仲間や大切な人々の助けを受けながら、宿命や激闘、悲劇や絶望を乗り越えてきた仮面ライダーたち。

 

そして今、仮面ライダーたちにかつてない危機と宿命が訪れようとしていた。

 

 

 明かりがなく暗闇に包まれたトンネル。静寂を切り裂くように足音を響かせて、1人の青年がこのトンネルを歩いていた。

 海道(かいどう)竜也(たつや)。正義や世界の法に見放されて、正義に強い憎悪を抱いている。激しい憎悪に駆り立てられて、彼は世界の敵を手にかけてきた。

「まだだ・・まだ世界には、偽物の正義を振りかざすヤツがいる・・ヤツらがいる限り、世界は朽ち果てたままだ・・・」

 敵と見た人を手にかけても、本当の平和が戻ってくる気配がない。竜也の碇と憎しみは、和らぐどころか増していく一方だった。

「ここにいたか、海道竜也・・・」

 トンネルを抜けたところで、竜也は突然声をかけられた。彼は周りに意識を傾けて、声の主を探る。

 しばしの沈黙を置いてから、重圧のある足音が響いてきた。そして竜也の前に1人の人物が姿を現した。

 銀の鎧のような装甲をまとったような姿で、複眼は不気味な緑をしていた。

「何だ、お前は?・・お前も偽物の正義を口にするヤツか・・・!?

 竜也がその人物を鋭く睨みつけてくる。

「我が名はシャドームーン。全世界に存在する全ての仮面ライダーを葬る者・・」

「仮面ライダー?・・・オメガ・・吉川光輝のことか・・・!?

 声を発してきた人物、シャドームーンの言葉を聞いて、竜也が目つきを鋭くする。

「光輝を倒すのはオレだ。ヤツはオレが憎む偽物の正義の象徴だからな・・邪魔をするなら、誰だろうと容赦しない・・」

「オメガを葬りたいというなら好きにするがいい。だがお前が正義を憎むなら、倒すべきライダーはオメガだけではない・・」

「オレの敵味方の判断はオレ自身でやる・・他のヤツが勝手に決めるな・・・」

 呼びかけてくるシャドームーンだが、竜也は素直に話を聞き入れようとしない。

「オレは吉川光輝を、オメガを倒す・・これが世界のためになる・・・!」

「お前の思うように戦うといい・・我々も世界を塗り替えるため、まずは全世界の仮面ライダーを葬り去る・・・」

 決意を口にする竜也に、シャドームーンがさらに呼びかけていく。

「我々?他に誰かいるのか・・?」

「その通り。仮面ライダーに倒された者、仮面ライダーを憎む者はシャドームーンだけじゃないわ・・」

 竜也の問いかけに答えたのはシャドームーンではなかった。彼らの前に3匹のコウモリが現れた。機械的なコウモリで、それぞれ青、赤、黄色の体色をしていた。

「お前たち、以前にもオレの前に現れたな・・」

「覚えていてくれてたんだな。感心、感心。」

「あたしたちはキバット3姉妹♪世界と世界をつなぐトンネルを作ることができるんだよ〜♪」

 竜也が声をかけると、赤、黄色のコウモリが答えてくる。

 この3匹のコウモリはキバット3姉妹。長女のキバラン、次女のキバリン、三女のキバルンのキバット族の姉妹である。

「日に日に増しているあなたの怒りと憎しみのおかげで、私たちはいろんな世界へのトンネルをつなぐことができたわ・・」

「どういうことだ?・・オレを利用しようとしてもムダだ・・・!」

 悠然と声をかけてくるキバランに、竜也が鋭い視線を向けてくる。

「利用するも何も、お前の力でトンネルがつながってるんだ。あたしたちがそのトンネルをこの世界につなぎやすいようにしただけだって。」

「君の怒りと憎しみが、君の決意を叶えてくれてるんだよね〜♪」

 キバリン、キバルンも続けて竜也に声をかけていく。彼女たちの言っていることの意味が分からず、竜也が苛立ちを覚える。

「時期に分かるようになるわ。あなたの憎悪と願いが、この世界を大きく変えていくことになると・・・

 妖しく言いかけていくキバラン。次の瞬間に大きな空間の歪みが起こった。

 目を見開いた竜也が身構える。彼の前に不気味な影が次々と姿を現していった。

 

 町中に点在する1件の家。その家には1人の青年が居候をしていた。

 吉川(よしかわ)光輝(こうき)。正義感が強くヒーローに憧れを抱いている。その性格や振る舞いが子供染みていると思われていることがある。

 光輝は今、TV画面に釘付けになっていた。画面に映し出されていたのは、仮面ライダーの雄姿だった。

 「仮面ライダー」は日本を代表するヒーローシリーズのひとつである。人間離れした能力と宿命に苦悩しながらも、世界や人々を脅かす怪人に立ち向かう。変身ポーズと変身や必殺技を行う際に用いるベルトが特徴的である。

 そして仮面ライダーの最大の特徴は、バイクをはじめとした専用マシンと、必殺技「ライダーキック」である。これらのアクションと演出が、ライダーの人気に火をつけているのである。

「いやぁ、何度見ても仮面ライダーのすごさは全然衰えないよ〜♪興奮が止まらな〜い♪」

 仮面ライダー1号、2号の活躍に興奮を隠せなくなる光輝。

「もう、ホントに大人げないんだから、光輝は・・・」

 そこへ1人の少女が現れ、光輝を見て呆れる。

 水神(みずがみ)くるみ。この水神家に住んでいる少女で、持ち前の活発さと自信に満ちあふれた性格をしている。

「そういう言い方は失礼だよ、くるみちゃん!仮面ライダーは今年で生誕40周年!ライダーの活躍とアクション、ストーリーは簡単に語れるものじゃないよ!」

「そういう光輝ももういい大人なんだから、いつまでも子供みたいなことしないの。あたしまで恥ずかしくなっちゃうわよ・・」

 仮面ライダーについて力説する光輝だが、くるみは呆れるばかりとなってため息をついていた。

「光輝さん、仮面ライダーに熱中していますね。」

 そこへまた1人、少女が顔を出してきた。

 ヒカル。光輝と同じく水神家に居候している少女。2人に出会ったときは記憶喪失になっており、「ヒカル」という名前も2人が考えたものである。

「ヒカルちゃんも何とか言ってよ・・光輝にもう少しシャキッとしなさいって・・」

「いいじゃないですか、くるみさん。光輝さんらしくて、私は好きですよ・・」

 くるみが光輝に注意するように言うが、ヒカルは光輝を優しく見守るだけだった。

「こうしてTVの中で戦っているだけじゃない・・僕は、僕たちは仮面ライダーとなって戦っている人たちと出会えたんだ・・」

 ライダー1号の活躍を見ながら、光輝は仮面ライダーたちとの出会いを思い出していく。

 「イマジン」と呼ばれる怪人を憑依して「(でん)(おう)」に変身して時間を守る野上(のがみ)良太郎(りょうたろう)。探偵として、「(ダブル)」として「ドーパント」と呼ばれる怪人が引き起こす事件を解決していく(ひだり)(しょう)太郎(たろう)とフィリップ。

 彼らとの出会いで、正義と絆を強めることができた、光輝はそう思っていた。

 

 夕食のための買い物に行くことになった光輝とヒカル。買い物に向かう途中も、光輝は仮面ライダーへの興奮を膨らませていた。

「光輝さん、本当に仮面ライダーが好きなんですね・・」

「うん・・ヒーローはみんな好きだけど、仮面ライダーは特にね・・世界の平和とみんなの幸せを守るために、素顔を隠して戦っている・・その姿に僕は憧れてきたんだ・・」

 ヒカルが声をかけると、光輝がまたまた興奮を膨らませる。

「でも光輝さんも、その仮面ライダーとして戦っているんですよね・・」

 ヒカルがかけた言葉に光輝は頷いた。彼は今、これまで憧れとしていた仮面ライダーに彼自身も変身するようになっていた。

「仮面ライダーとして戦うことがどういうことなのか、実際にライダーに変身して戦ってみて、その本当の意味を分かったような気がしたよ・・・」

 自分が戦う意味を思い返して、光輝は改めて決意を強めていく。彼の決意と正義感を察して、ヒカルも喜びを感じていた。

「キャアッ!」

「うわあっ!」

 そのとき、街のほうから悲鳴が飛び込んできた。緊張を感じて振り返った光輝とヒカルが、街から逃げてきた人々を目撃する。

「何があったんですか!?

 光輝が逃げてきた人の1人に駆け寄って声をかけた。

「怪物だ!クモみたいな怪物が街に現れて・・!」

 その人は事情を説明すると、再び逃げ出していった。

「クモみたいな怪物・・まさかまたガルヴォルスが・・・!」

 光輝だけでなく、ヒカルも怪物の正体を頭に浮かべた。

 ガルヴォルスは人類の進化系である。異形の怪物の姿と本能を得て、その衝動の赴くままに破壊や殺戮を行っていく。

 光輝とヒカルは街に現れた怪物をガルヴォルスであると思い、街に向かって駆け出した。

 街の真ん中で足を止めた2人。そこで光輝は街中の異変に気付いた。

「ここ、クモの糸だらけだ・・・!」

「えっ・・・!?

 光輝の呼びかけを聞いて、ヒカルが困惑を見せる。街の中はクモが出したと思われる糸が張り巡らされていた。

「出てこい、怪人!こんなことをして何をしようというんだ!?

 光輝が周りを見回して叫ぶ。すると1体の怪物が姿を現した。クモの姿をした怪人である。

「威勢がいいヤツが出てきたものだな・・お前もオレの毒牙にかかりたいのか・・・?」

 怪人が光輝とヒカルに目を向けて、不気味な笑みを浮かべてきた。

「あれはガルヴォルスとは違う・・何者なんだ!?

 光輝が怪人に向けて呼びかけてくる。

「オレは蜘蛛男。ハイパーショッカーの全世界征服のために行動している・・」

「蜘蛛男・・そうか、蜘蛛男か、その姿は!」

 名乗ってきた怪人、蜘蛛男の言葉を聞いて、光輝が記憶を巡らせる。

 「ショッカー」は怪人や戦闘員を率いて世界征服を目論んだ秘密組織で、仮面ライダー1号、2号が戦った敵である。そして蜘蛛男はショッカーの怪人の1人で、1号が最初に戦った敵でもある。

「でもおかしい・・蜘蛛男は1号ライダーに倒されたはず!?・・それに、ハイパーショッカーって・・ゲルショッカーやネオショッカーは出てきたけど、ハイパーショッカーは初めて聞いた・・・」

 蜘蛛男の発言に光輝が疑問を覚える。だが彼は気持ちを切り替えて、蜘蛛男を止めることに専念する。

「どういうことなのかは分からないけど、街のみんなを苦しめる怪人を野放しにするわけにはいかない!」

 光輝は蜘蛛男に言い放つと、ひとつの水晶を取り出した。

「変身!」

 光輝が水晶を、腰につけているベルトの中心部にセットする。すると彼の体を赤い装甲が包み込む。

 これがクリスタルユニットの1機「オメガユニット」である。水晶に込められたエネルギーを戦闘力に変換するクリスタルシステムを盛り込んだクリスタルユニットは、装着者の精神と連動して機能する。装着、各必殺技の使用の際は、水晶「ソウルクリスタル」を介する。

 使用には使用者の強靭な精神力が必要で、精神力が弱いとシステムにエラーを来たしてしまい、最悪死に至ることもある。

「仮面ライダーオメガ!」

 オメガに変身した光輝が高らかに名乗りを上げる。

「仮面ライダー!?・・この世界にも仮面ライダーがいたのか!?

 オメガとなった光輝の姿を見て、蜘蛛男が驚く。

「まずはライダーの1人であるお前から始末してやる・・地獄に落ちろ、仮面ライダー!」

 構えを取る光輝に、蜘蛛男が向かってきた。振りかざしてきた爪を、光輝はジャンプしてかわす。

「ヒカルちゃん、離れているんだ!」

 着地した光輝の呼びかけを受けて、ヒカルが彼と蜘蛛男から離れて物陰に隠れる。

 再び向かってくる蜘蛛男の攻撃を、光輝は回避と防御でかいくぐっていく。

「なかなか素早いようだな・・だがこれならどうだ!」

 蜘蛛男が口から針を飛ばしてきた。針はスピードが速く、光輝はかわすので精一杯になった。

「まだまだ!」

 蜘蛛男が光輝に接近しながら、さらに針を飛ばしてくる。その数本が、光輝のまとうオメガの装甲に命中し、火花を散らす。

「くっ!」

 衝撃に襲われて怯む光輝。そこへ蜘蛛男が口から糸を吐き出し、光輝の右腕に絡ませた。

「これでもう逃げられないぞ・・」

「しまった!」

 不気味な笑みを見せる蜘蛛男に、光輝が毒づく。蜘蛛男が糸を振り回すと、光輝が引っ張られて倒されていく。

「これまで我ら怪人の作戦をことごとく踏みにじってきた仮面ライダー・・だがお前たちの勝利はもう訪れない!ここでお前の息の根を止めてやる!」

 言い放つ蜘蛛男に投げつけられて、光輝が建物の壁に叩きつけられる。

「ぐっ!・・このままではやられてしまう・・・メガブレイバー!」

 体の痛みに耐えながら、光輝が声を振り絞る。彼の呼び声を受けて、1台のバイクが走り込んできた。

 「メガブレイバー」。オメガユニット装着者の護衛用に開発されたマシンで、今はオメガである光輝の心強いパートナーとなっている。

 蜘蛛男と地上に落ちた光輝の間を、メガブレイバーが走り抜けた。その車輪で蜘蛛男の糸が断ち切れた。

 糸を振り払った光輝のそばに、メガブレイバーが駆け付けてきた。

「ありがとう、メガブレイバー・・助かったよ・・」

「オメガがいるところ、私、メガブレイバーありだ・・」

 感謝の言葉をかける光輝に、メガブレイバーも言葉を返す。

 メガブレイバーは人工知能を備えており、会話をすることも可能となっている。

「ガルヴォルスではないようだが、街に危害を加える敵ということは間違いないかい・・?」」

「うん・・だから力を貸してくれ、メガブレイバー・・・」

 問いかけるメガブレイバーに呼びかけ、光輝がメガブレイバーに乗る。メガブレイバーが走り出し、蜘蛛男に向かっていく。

 蜘蛛男が口から針を飛ばしてくるが、光輝がメガブレイバーの前輪を上げて針を弾き飛ばす。

「ならばこれで引きずりおろして・・!」

 続けて蜘蛛男が糸を吐き出すが、光輝とメガブレイバーは糸をかいくぐる。そのままメガブレイバーが突進し、蜘蛛男を突き飛ばす。

「ぐおっ!」

「今だ!」

 横転する蜘蛛男を見据えて、光輝がベルトの水晶を右足の脚部に移す。右足に彼の精神エネルギーが集まっていく。

 立ち上がった蜘蛛男に向かって、光輝が高らかにジャンプする。

「ライダーキック!」

 光輝が必殺キック「メガスマッシャー」を繰り出す。この直撃を受けた蜘蛛男が激しく横転する。

「また、仮面ライダーにやられるのか・・・」

 力尽きた蜘蛛男が爆発を引き起こした。蜘蛛男を倒した光輝が、オメガへの変身を解除する。

「光輝さん!」

 そこへヒカルが声をかけ、光輝に駆け寄ってきた。

「ヒカルちゃん・・無事でよかった・・・でも、どうしてショッカーの怪人がここに・・・!?

 ヒカルの無事に安心する光輝だが、ひとつの疑問を感じていた。

 蜘蛛男は仮面ライダー1号に倒された。そもそもショッカーはライダーによって壊滅させられている。そのショッカー怪人が現れるはずがない。

「何かが起きる・・そう思えてくるんだ・・・」

「光輝さん・・・」

 思い詰める光輝を見つめて、ヒカルも不安を膨らませていた。

 

 暗黒に包まれた異空間。その中央にひとつの洞窟があった。

 洞窟の奥は城の中のような大部屋があった。そこは紅く淡い光に照らされているだけだった。

 その大部屋の壇上には5人の男が立っていた。

 ゾル大佐。かつてショッカー日本支部初代大幹部を務めていた。殺人を好む残虐さと、軍人のような一面を併せ持つ。

 死神博士。改造人間研究や怪人製造の第一人者であるショッカーの天才科学者である。

 地獄大使。かつてショッカー日本支部3代目幹部を務めていた。指揮能力と礼節に長けている。

 ブラック将軍。ゲルショッカー大幹部として活躍した男。冷酷非情な策略家で、事細かな作戦を企ててきた。

 ジャーク将軍。クライシス帝国の最高司令官。厳格な指揮官であるが、部下に対する温情も厚い。

 彼ら5人の前には、数多くの怪人たちが集まっていた。中には戦闘能力の高い幹部クラスの怪人もいた。

「蜘蛛男が倒された・・やはりこの世界にも仮面ライダーがいるようだ・・」

「他にもライダーが存在している。油断は禁物だ・・」

 ゾルと死神博士が蜘蛛男の敗北について語る。

「情けないヤツだ!ライダーを甘く見るから何度もやられることになるのだ!」

「軽口をたたくな、地獄大使。不愉快だが、我々は仮面ライダーに敗れ、1度は死んだ。ヤツらを侮れば、蜘蛛男の二の舞になるぞ。」

 高らかに言い放つ地獄大使と、毅然とした態度を振る舞うブラック将軍。

「仮面ライダーは、我らの侵略をことごとく打ち砕いてきた、共通にして最大の敵。ヤツらにこれ以上、我らの邪魔をさせるわけにはいかん。」

 ジャークが冷静な態度で、ライダーたちへの警戒を口にする。征服という共通の目的を持つ彼らだが、仮面ライダーへの警戒も全員抱いていた。

「まずはこの世界にいるライダーを始末することだ。オメガ、ギガス、クリス、3人の仮面ライダーを倒せば、この世界を手中にできる・・」

「なるほど・・それを期に他のライダーどもを倒すための侵略拡大とするのだな・・」

 死神博士の提案を聞いて、地獄大使が喜びの笑みを見せる。

「ライダーの中には協力して戦っているばかりではない。中にはライダー同士で戦った者もいる。オメガたちも例外ではないようだ。」

 ゾルがライダーに関する情報を告げていく。仮面ライダーの中には、自分自身の目的のために確執や衝突、対立をした者も少なくない。

「だが対立しても、さらに結束を強める結果を招いているのもまた事実だ。」

「それでも孤立させれば、さすがのライダーも倒せない相手ではない。オメガたちを1人1人叩き潰す。」

 ジャークとブラック将軍が言葉を交わしていく。

「それならばもう既に手は打ってある。まずはギガスとクリスを葬り去る。」

 死神博士がゾルたちに向けて笑みをこぼす。彼はライダー打倒と全世界征服に向けての次の手を打とうとしていた。

「よいか!仮面ライダーを葬り去ることで、全世界の征服は成功に向けて大きく前進する!それがここにいる者たちの共通の目的であり、我々が結集して編成した“ハイパーショッカー”の最大の目的だ!」

「イー!」

「おー!」

 ブラック将軍の呼びかけを受けてショッカー戦闘員が独特のかけ声を上げ、続けて他の組織に属していた戦闘員や怪人たちも声を上げた。

 それぞれの世界で征服活動を行っていた組織が結託、結成された新たなる巨大組織「ハイパーショッカー」が、仮面ライダー打倒に向けて本格的に動き出すのだった。

 

 蜘蛛男との戦いを終えた光輝は、知り合いへの連絡を取っていた。その連絡相手はクリスタルユニットの1機「クリスユニット」の所有者、谷山(たにやま)太一(たいち)である。

 太一は非常に内向的な性格で、何事においても勇気が持てず逃げ場を求めてばかりだった。だが光輝との出会いを機に大切な人を守りたいという気持ちが強まり、クリスユニットを手にして戦う道を選んだ。

“ガルヴォルスとは違う怪物・・・!?”

「うん・・あれはショッカー、仮面ライダーが戦った敵組織の怪人だよ・・」

 驚きの声を返す太一に、光輝が頷いた。

 「ガルヴォルス」は人類の進化系である。異形の怪物の姿と本能を得て、その衝動の赴くままに破壊や殺戮を行っていく。

 光輝はオメガに変身して、人々を襲うガルヴォルスに立ち向かってきた。苦悩や厳しさを痛感しながら、光輝は自分自身の正義を見出すことができたのである。

“でも、あれはTVの話でしょう?・・ガルヴォルスはともかく、TVに出ていた怪人が実際に出てくるなんてこと・・”

「それがホントのことなんだ・・前に歴代の仮面ライダーが実際に現れたし、もしかしたら怪人もいろんな世界からやってきているのかもしれない・・」

“そんな・・もしかして、その怪人たちが手を組んで、僕たちを狙ってくるんじゃ・・!?”

「そうかもしれない・・でも大丈夫だよ。僕たちもライダーなんだから・・」

 不安を感じる太一に、光輝が励ましの言葉を投げかける。

「できるだけすぐにみんなと合流できればと思っているから・・それじゃ、また・・」

 光輝はそう告げて、太一との連絡を終えた。

「太一くんたちにはまだ何も起きてはいないみたい・・でも、いつ何が起こるか分かんない・・」

 光輝がヒカルに不安を口にする。

「僕は太一くんたちと合流する。ヒカルちゃんは先に帰って、くるみちゃんと一緒にいて・・」

「ううん・・私も光輝さんと一緒に行きます。」

 呼びかけてくる光輝だが、ヒカルは彼についていくことを申し出てきた。

「ダメだよ、ヒカルちゃん!・・僕が行こうとしているのは、とても危険な場所だ。それも今まで以上に危険だと思えてならない・・・」

「それは分かっています・・でも、私は私よりも、光輝さんに何かが起こりそうな気がしてならないんです・・・」

 声を荒げる光輝だが、それでもヒカルは引き下がろうとしない。

「でも、やっぱり連れて行けないよ、ヒカルちゃん・・・1度家に戻ろう・・くるみちゃんにも事情を話しておかないと・・」

「光輝さん・・・」

 くるみのところに連れて行こうとする光輝に、ヒカルは沈痛の面持ちを浮かべた。2人は1度家に戻ることにした。

 

 光輝との連絡を終えた太一は知り合いと会っていた。

 (みさき)弥生(やよい)。太一の同級生で、気弱な彼の心の支えになっている。

 富士野(ふじの)一矢(かずや)。光輝と同じ大学に通う青年で、クリスタルユニット「ギガス」の装着者。「無敵」、「完全無欠」を絵に描いたような人物で、本人もそれを自負している。自分にできないことは何もないと本気で思っている。

 太一は弥生と一矢に、光輝から聞かされたことを話した。

「光輝のヤツ、またくだらないことを言ってきたか・・」

 一矢が光輝の言ってきたことに呆れていた。その隣で弥生が不安を感じていた。

「でも実際、光輝くんはそのショッカーっていう怪人と戦ったって・・」

「そんなおかしな連中だろうとガルヴォルスだろうと、オレには関係ない。オレに勝てるヤツはいないからな。」

 不安を口にする太一だが、一矢は勝気な態度を崩さない。

「やっぱり、光輝くんに直接会って、もっと詳しく話を聞かないと・・何かあったときも、力を合わせて何とかできると思うから・・・」

「そこまで頼るならお前たちだけでやってくれ。オレだけで十分だがな。」

 呼びかける太一だが、一矢は勝気な態度を変えない。2人の会話がかみ合わず、弥生も困ってしまっていた。

「お前たちがこの世界の仮面ライダー、ギガスとクリスか・・」

 そのとき、突然声をかけられて、一矢たちが振り返る。その先には2体の怪人が立ちはだかっていた。

 1体はカメの姿をした怪人、もう1体は全身から刃が生えているメカジキの姿をした怪人である。

「何だ、お前たちは?オレに用か?」

 一矢が強気な態度のまま、怪人たちに声をかけてくる。

「オレはハイパーショッカー所属のカメバズーカ。」

「オレはソードフィッシュオルフェノクと呼ばれている。ギガス、クリス、お前たちを潰しに来た。」

 「デストロン」の機械合成怪人、カメバズーカと人類の進化系「オルフェノク」の1人、ソードフィッシュオルフェノクが声をかけてくる。2人が身構えて、一矢たちに敵意を向ける。

「わざわざオレに挑戦してくるとは、身の程知らずがまたやってきたか・・・」

 一矢が言い放つとひとつの水晶を取り出してきた。

「お前たちのようなヤツらにウロウロされるのはいい気がしないのでな・・変身。」

 その水晶を身に着けていたベルトにセットする一矢。彼の体を青色の装甲が包み込んだ。

「オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから・・」

 カメバズーカとソードフィッシュオルフェノクに向けて、一矢が高らかに言い放つ。彼はギガスへと変身し、怪人たちに挑もうとしていた。

「僕もやるしかない・・・弥生ちゃん、離れていて・・・」

 太一が弥生に呼びかけて、一矢と同じく水晶を取り出す。

「変身・・・!」

 ベルトに水晶をセットする太一。彼がまとったのは緑色の装甲だった。

「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・!」

 声を振り絞る太一もカメバズーカとソードフィッシュオルフェノクを見据える。

「挑んでくるか、ギガス、クリス・・」

「だったらここで2人とも叩き潰してやる・・・!」

 いきり立ったカメバズーカとソードフィッシュオルフェノクが、一矢と太一に飛びかかっていった。

 

 

 

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