仮面ライダーオメガ Legend of Riders
第7章
歴代仮面ライダーの力の前に、スカルライダーは劣勢を強いられていた。それは肉体的だけでなく、精神的にも追い込まれていた。
「まずいぞ!これではとても歯が立たない!」
「我々の武器や性能では、ヤツらには太刀打ちできない!」
ライダーたちから後ずさりして、ついに弱音まで口にするスカルライダーたち。だが彼らにはまだ秘策があった。
「こうなれば奥の手だ!ヤツらと同じように、我々も力を合わせるのだ!」
「おうっ!」
スカルライダーの1人が声を張り上げると、他の面々も同意する。彼らは意識を集中し、力を合わせるイメージを膨らませる。
するとスカルライダーの体を光が包み込む。さらに彼らは融合を行い、光を大きくしていく。
その光が完全にひとつにまとまると、巨大な1人のスカルライダーが姿を現した。
「おいおいおい、なんじゃこりゃあーーー!?」
「こりゃビックリだ!ひとつにまとまって大きくなったぞ!」
巨大なスカルライダーを目の当たりにして、電王とキバットが驚きの声を上げる。
「どうすんだよ!?こんなのどう相手にしろってんだ!?」
「ここはオレに任せろ!」
電王が再び声を荒げたとき、前に出てきたのはJだった。
「大地の精霊よ、オレに力を貸してくれ・・・!」
Jが意識を集中すると、大地の精霊のエネルギーが光となってあふれてきた。その光を受けたJの体が徐々に大きくなっていく。
これがJの奇跡の力である。彼は大地の精霊の力を受けることで、ジャンボフォーメーションを発動し巨大化することができるのである。
「マジかよ・・アイツもビックサイズになりやがった・・!」
「Jのジャンボフォーメーション・・ここで引き出してくるとはな・・・」
落ち着きがなくなる電王と、淡々と呟きかける士。
「まさか巨大化するライダーまでいたとは・・・だが大きくなれるのは1人だけだ!ヤツを倒せば勝ったも同然だ!」
いきり立ったスカルライダーがJに向かっていく。身構えたJが、スカルライダーが繰り出したパンチを防ぐ。
「自然と正義を重んじるオレたちは、お前たちの悪しき力には絶対負けない!」
Jは言い放つと、スカルライダーに反撃を仕掛ける。彼の力に押されて、スカルライダーが後ずさりする。
「おい!オレたちもいるんだぞ!気をつけろ!」
この戦いの衝撃が周囲を揺るがし、巻き込まれそうになった電王が声を荒げる。しかしJにもスカルライダーにもその声は伝わっていなかった。
スカルライダーを果敢に攻め立てるJ。精霊の力を宿した彼のパワーは、スカルライダーの策略をものともしない。
Jが繰り出したパンチを受けて、スカルライダーが大きく突き飛ばされる。倒れた衝撃が周囲の大地をも大きく揺るがす。
立ち上がるスカルライダーを見据えてから、Jが大きく飛び上がる。そのジャンプ力は通常時の比ではなく、雲の上にまで達するほどになっていた。
「ライダーキック!」
降下するJがスカルライダーに向けて飛び蹴りを放つ。彼が突き出している右足は、エネルギーを集束させているだけでなく、降下時の衝動で発する熱で紅くなっていた。
「う、うわあぁぁ!」
絶叫を上げるスカルライダーが、Jのキックを受ける。Jのキックは爆弾の爆発のような衝撃と轟音をもたらした。
「J!」
ZOが駆け出し、他の仮面ライダーもJに駆けつける。爆発の跡地にはスカルライダーの姿はなく、そこに立っていたJも通常の大きさに戻っていた。
「J、大丈夫か・・!?」
「オレは大丈夫だ・・これも大地の精霊と、みんなのおかげだ・・」
ZOの呼びかけにJが答える。スカルライダーたちとの壮絶な戦いを終えて、仮面ライダーたちが一瞬安堵を覚える。
「後は君たちの力にかかっているぞ、オメガ・・・」
1号が山の空を見据えて言いかける。ライダーたちは光輝に世界の未来を託すのだった。
歴代の仮面ライダーの後押しを受けて、光輝はメガブレイバーに乗って疾走する。そこへギガブレイバーに乗る一矢と、クリスレイダーに乗る太一が追いついてきた。
「遅いぞ。やはり君はその程度ということか・・」
「僕も戦うよ・・このままだと、僕たちが辛い思いをすることになるから・・・」
一矢と太一が光輝に声をかけてくる。
「一矢さん・・太一くん・・・行こう!」
2人に呼びかけると、光輝は速度を上げる。一矢と太一も彼に続く。
上空に暗雲の立ち込める山地の中にある荒野に、3人はたどり着いた。そこではホッパーガルヴォルスとなった大介と、ドラゴンガルヴォルスとなった竜也が戦っていた。
「2人のガルヴォルスが・・仲間割れ・・・!?」
「あの男・・ここに来ていたのか・・・」
太一が困惑の言葉を上げ、一矢が呟きかける。偽善への憎悪に燃える竜也が、徐々に大介を追い込みつつあった。
「そろそろ決着が着きそうだ。とどめはオレが・・」
「そうはいかないわ・・」
一矢が臨戦態勢に入ったところで、靖子が姿を現す。
「あなたたちの相手は私がする・・変身。」
靖子がベルトに水晶をセットして、ベータに変身する。
「大介は相当の実力者よ。たとえガルヴォルスの力が通じなくても、今の彼にはアルファの力がある・・」
「アルファ・・・!?」
靖子が言いかける言葉に、光輝が息を呑む。
「アルファの力が披露される前に、私の攻撃から生き延びられるかしら・・・?」
靖子が光輝たちに向けてベータウィップを振りかざす。精神エネルギーによって伸びてくる光の鞭を、光輝たちは発進してかわす。
「クリスレイダー、フライヤーフォーム!」
太一の呼びかけを受けて、クリスレイダーがフライヤーフォームになる。飛翔した太一が、飛び降りてきた靖子を見据える。
「今度も倒してあげるわ。今度は2度と立ち上がれないようにしてあげる・・」
「もうあなたには負けない・・負けたくないんだ!」
妖しく微笑む靖子に、太一が感情をあらわにする。降下してきたクリスレイダー目がけて、靖子がベータウィップを振りかざす。
太一もクリスセイバーを手にして、飛び込んでくる光の鞭を弾き返す。しかし靖子の鞭さばきで、太一は距離を詰めることができない。
「どんなことをしても、あなたたちに勝機はない。たとえ私に勝てても、アルファの前では無力も同然・・」
靖子がベータウィップの柄にベルトの水晶をはめ込む。太一もクリスセイバーに水晶をセットする。
「確かに僕は無力だ・・でも僕はもう、1人じゃない!」
太一が声を振り絞ったときだった。スピードフォームとなったメガブレイバーとギガブレイバーを駆り、光輝と一矢が靖子に向かって飛び込んできた。
「お前たちの企みのために、世界を壊させてたまるか!」
「オレを無視するとはいい度胸だな・・」
光輝が言い放ち、一矢が苦言を呈する。迫ってくる2人に、靖子は注意力をかき乱される。とっさにエネルギーを込めた鞭の一閃「ベータスラッシャー」を放つが、光輝と一矢は加速したまま回避してみせる。
靖子の横をすり抜けていく2人。その瞬間、靖子は遅れて飛び込んできた太一にようやく気付く。
「しまっ・・!」
「クリスストラッシュ!」
驚愕を覚える靖子に向けて、太一が光の刃を放つ。靖子はとっさに飛び退いてかわすが、光の刃は地上に命中し、その衝撃で舞い上がった砂塵で視界がさえぎられる。
「くっ・・こんなことで私が・・・!」
たまらず声を荒げる靖子。彼女は光輝たちを必死に探す。
そのとき、この砂塵をかき分けて、太一が靖子の懐に素早く飛び込んできた。クリスクリスタルはクリスセイバーにセットされたままで、太一の精神エネルギーが充てんされていた。
「えっ・・・!?」
「クリスの速さは並じゃないよ・・・クリスブレイド!」
怯む靖子に向けて、太一がクリスセイバーを叩き込む。振り上げられた刃が、靖子の体を切り裂いた。
「ま、まさか私が、こんなことで・・・!」
体中から電流をあふれさせて、靖子が倒れる。ベータユニットの爆発に巻き込まれ、彼女は息絶えた。
「僕だってやれるんだ・・やんなくちゃいけないんだ・・・」
呟きかける太一が、メガブレイバー、ギガブレイバーから降りた光輝と一矢に振り返る。3人は顔を合わせたところで、竜也と大介の戦いに目を向けた。
正義への憎悪をたぎらせる竜也に、大介は劣勢を強いられていた。
「まさかこれほどの力を出してくるとは・・!」
「どうした?威張っていてその程度か?」
うめく大介と、冷徹に告げる竜也。
「まさか追い詰められてのアルファの発動になるとは・・・」
大介は言いかけると大きく飛び上がり、ヒカルのいる崖の上に上る。そこで彼は人間の姿に戻る。
「ヒカルちゃん!」
ヒカルの姿を目にして、光輝が声を上げる。彼らに目を向けて、大介がアルファユニットを掲げて不敵な笑みを見せる。
「幸運に思うがいい!オレがアルファになる瞬間を見られることを!その圧倒的な力であの世にいけることを!」
大介がアルファのベルトを身に付け、水晶を掲げる。
「変身!」
高らかに言い放つと、大介が水晶をベルトにセットする。アルファの力がついに発揮されようとしていた。
そのとき、アルファのベルトから漆黒の稲妻が放出された。この異変に光輝たちだけでなく、大介自身も驚愕を覚える。
「何っ!?何だ、これは・・!?」
声を荒げる大介が、アルファのベルトに手を伸ばす。だがあふれ出すエネルギーに拒絶され、彼は電気ショックのような衝撃に襲われる。
そのエネルギーに巻き込まれていく大介。抗おうとする彼だが、漆黒のエネルギーになす術なく飲み込まれていく。
「抑え切れない・・これが、アルファの力・・ここまですごいというのか・・・!?」
ついに意識までもが漆黒に飲み込まれてしまった大介。この異常に光輝が困惑していた。
「どうなっているんだ・・・大介に何が起こっているんだ・・・!?」
この異変に光輝が声を荒げる。アルファユニットから放出していた漆黒が濃縮され始め、人の形となっていく。
「ついに・・ついに私は復活を遂げた・・・」
その闇から声が発せられる。だがその声は大介のものではなかった。
「何だ・・何が起こっている・・・!?」
「さっきの人じゃない・・別人だ・・・!」
一矢と太一が声を荒げる。立ちはだかる闇から、ヒカルがたまらず崖から逃げ出す。
「ヒカルちゃん!」
光輝がとっさに飛び上がり、落ちそうになったヒカルを受け止める。
「大丈夫、ヒカルちゃん!?」
「光輝さん・・・はい・・」
呼びかける光輝にヒカルが微笑んで答える。2人は闇に振り向き、光輝が目つきを鋭くする。
「お前は誰だ!?大介ではないな!?」
「・・我が名は邪眼・・あらゆる世界に闇をもたらし、破壊する者・・・」
光輝が疑問を投げかけると、闇、邪眼が低い声音で名乗る。
「邪眼・・・どういうことなんだ!?・・アルファユニットとどういう関係があるんだ・・・!?」
「私はこのベルトに封印されていた・・ベルトの起動によって、私は復活を果たした・・・」
さらに問いかける光輝に、邪眼が続けていく。
「私は闇の集合によって誕生し、破壊と支配のために闇を広げた・・だがこのベルトの強大な力に呼び寄せられ、私は封印された・・さらにベルトは1枚の札に形を変え、世界の破壊者の手に委ねられていた・・・」
「世界の破壊者・・ディケイド・・アイツのことか・・・!」
邪眼の言葉を聞いて、光輝が士を思い浮かべる。
「おそらくヤツはアルファユニットに封じ込められ、さらに士がカードとして保管していた・・力を秘めたアルファユニットを求めた大介が変身を行おうとしたことで、ヤツの封印が解かれたということか・・」
「それじゃ、あの人の意識と心は、もう・・・」
一矢が語りかけ、太一が困惑を覚える。
無限に広がる闇の中から誕生した邪眼は、自分に宿る闇を広げて世界を飲み込み、光をかき消そうとしていた。だがアルファユニットの力に引かれて邪眼は封印され、さらにアルファユニットもカードに封印されて、世界を渡ってきていた士の手に渡った。
だが大介によって士はカードを奪われ、アルファユニットが起動されたことで邪眼が封印から解放されてしまったのである。
「我々闇の一族は、光の力に及ばず、古の戦いに敗れた・・だが我が闇は、今や光をも凌駕している・・何人たりとも、もはや私を止めることはできない・・・」
闇をあふれさせる邪眼の姿が固定化される。その姿は一つ目の怪人であるが、人の形に近くなっており、厳密に言えば仮面ライダーの姿に似ている。
「ベルトを求めたあの男の体を媒体にして、私は完全なる復活を果たした・・全ての世界を闇で覆いつくし、全て無に帰してくれる・・・」
「ふざけるな!そんなこと、オレたちが許さないぞ!」
邪眼の言葉に反発してきたのは光輝だった。
「オレたち人類にはまだ光がある・・その光は、お前たち闇を越えることだってできる!みんなの夢や願いを受けて、仮面ライダーは戦う!世界に光がある限り、ライダーたちは戦い続けるんだ!」
「仮面ライダー・・幾度となく我が同士を滅ぼしてきた存在・・だがライダーがいかに抗おうとも、全て無意味となる・・・」
決意を言い放つ光輝の言葉を、邪眼があざ笑ってくる。
「お前たちが大げさに叫ぶ変身など、我が闇の力の前では、遊びにしか過ぎぬ・・・」
言い放つ邪眼が全身から稲妻のようなエネルギーを放出させる。それを目の当たりにしても退くことなく、光輝たちが構える。
「仮面ライダーオメガ!」
「オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから。」
「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・!」
光輝、一矢、太一が邪眼に向けて言い放つ。
「来い・・お前たちに宿る光、この手で消してくれる・・・!」
邪眼が手招きをしながら言い放つ。彼の体から出ている稲妻が解き放たれ、光輝たちのいる地上を揺るがして爆発を引き起こす。
邪眼の闇のエネルギーを回避しようと、光輝、一矢、太一が動き出す。散開した彼らの中心に、浮遊した邪眼が降下、着地してきた。
一矢が飛びかかり、邪眼に向けて打撃を繰り出そうとする。だが邪眼の発した稲妻に弾き飛ばされる。
「一矢さん!」
声を荒げる光輝。視線を移す邪眼が、太一に攻撃の矛先を向ける。
瞬間移動のような速さで一気に迫り、邪眼が太一の眼前に立つ。危機感を覚えた太一に、邪眼が重みのある打撃を叩き込む。
「ぐあっ!」
クリスの装甲から火花を散らしながら、太一も突き飛ばされる。
「くっ!」
光輝が毒づきながら邪眼に立ち向かう。ジャンプで注意をそらしながら隙をうかがい、光輝が距離を詰めてパンチを繰り出す。
だが邪眼が発する電撃に弾き飛ばされ、光輝も突き飛ばされる。
「光輝くん!」
声を上げる太一。邪眼の強大な力の前に、光輝たちは吹き飛ばされる一方だった。
「この闇の力、お前たちに阻むこともできぬ・・私のもたらす闇が、全ての世界を滅びに導く・・」
「人格は変わっても、その思い上がった考えは変わっていないようだな・・!」
言いかける邪眼に向かって、竜也が飛びかかる。邪眼の放つエネルギーの壁に打撃を阻まれるが、竜也は引かずに強引に押し切ろうとする。
「お前も闇の力を宿した我が同士・・なぜ私に刃向かう・・?」
「お前と同士?たわ言を口にするな。光も闇も関係ない。オレの敵は、偽善と思い上がり・・お前は敵以外の何者でもない・・・!」
問いかける邪眼に、竜也が冷淡に言葉を返す。彼が突き出す拳が障壁を破り、邪眼の体に命中する。
だが、一瞬怯んだ邪眼が右手を突き出し、そこから光線が放たれる。光線は刃となって、竜也の左肩を貫いた。
「ぐあっ!」
「ならば闇の力を味わい、絶望を宿して朽ち果てるがいい・・・」
うめく竜也に言いかけると、邪眼が光の刃を振り上げる。跳ね上げられた竜也に向けて、邪眼がエネルギーを放出する。
その攻撃の直撃を受けた竜也が、地上に落下し、林の中に姿を消した。
「貴様・・ガルヴォルスにも容赦しないのか・・・!」
立ち上がった光輝が声を振り絞る。一矢も太一も立ち上がり、邪眼を見据えていた。
「まだ立ち上がるのか・・だがムダだ。お前たちには、万にひとつの勝ち目もない・・」
「オレのやることにムダなどない・・当然、不可能などもな・・」
冷淡に告げる邪眼に、一矢が悠然さを見せる。
「確かにお前と戦うのはイヤだよ・・でもこのままお前も好きなようにさせたら、もっと嫌なことになるから・・・」
太一も邪眼に向けて敵意を向けていた。
「人の中にある光は、普段は小さなものだ・・だがその光は、心の力で大きく強くすることができるんだ!」
光輝も力強く呼びかける。彼の決心は今、強く輝かしいものとなっていた。
「光輝さん・・みなさん・・・」
光輝たちの戦いを見守って、ヒカルは戸惑いを見せるばかりだった。そのとき、光輝の言葉を邪眼があざ笑ってきた。
「心の強さだと?愚かな・・心など、闇を増強させるものでしかない。お前たちが絶望にひれ伏したとき、闇も増していくのだ・・」
邪眼が光輝たちに向けて電撃を放出する。
「メガスマッシャー!」
光輝が精神エネルギーを放出して、邪眼の電撃を相殺する。だが邪眼が一気に距離を詰めて右手を突き出し、光輝を押し付けて念動力を併用して大きく突き飛ばす。
一矢がギガシューターで邪眼を射撃する。
「クリスストラッシュ!」
続けて太一がクリスセイバーを振りかざして、光の刃を放つ。しかし邪眼はこれらの直撃をものともしていない。
邪眼は迫ってきた一矢のギガスの力を跳ね返し、太一のクリスの速さを見切って返り討ちにする。強大かつ的確な邪眼の戦力に、光輝は次第に攻め手を失っていく。
「とんでもない力だ・・どうすればあの力を止められるんだ・・・!?」
「どう足掻いてもお前たちは滅びるしかない・・諦めろ・・」
うめく光輝に向けて、邪眼が迫る。彼が繰り出す打撃が、光輝の体に叩き込まれていく。
「があっ!」
痛烈なダメージを受けて、光輝が邪眼の前で倒れ込む。怯んでいる彼に向けて、邪眼が一蹴を繰り出す。
蹴り飛ばされた光輝が激しく横転する。そこへすかさず飛びかかる一矢と太一だが、邪眼の放つ電撃に弾き飛ばされる。
「ぐっ!」
「うわっ!」
「一矢さん・・太一くん・・・!」
苦悶を見せる2人に、光輝が声を振り絞る。追い込まれていく彼らに、邪眼が徐々に距離を縮めていく。
「まさかこのオレが、ここまで追い詰められるとは・・・!」
「あんなのにどうやって勝てばいいんだ・・・!?」
「諦めたらダメだ・・みんなが・・仮面ライダーがついているんだから・・・!」
うめく一矢と太一に、光輝が呼びかける。
「こうなったらライダーキックだ・・全員の全ての力を、ヤツにぶつけるんだ・・・!」
「勝手に仕切らないでほしいな。実力はオレが1番なのだから・・」
「でもそうするしかない・・でないと本当にやられてしまう・・・」
呼びかける光輝に、一矢と太一が言葉を返す。3人はベルトの水晶を右足脚部にセットして、大きく飛び上がる。
「ライダーキック!」
「ギガスマッシャー!」
「クリススマッシャー!」
精神エネルギーを込めたキックを、光輝、一矢、太一が繰り出す。邪眼が右手を突き出して障壁を作り出し、3人の攻撃を防ぐ。
「諦めるか・・お前に、世界を滅ぼされてたまるか!」
「まだだ・・その程度では私には通じんぞ・・・!」
言い放つ光輝に邪眼が言葉を返す。障壁に力が込められ、凄まじい衝撃をもたらす。
「うわあっ!」
装甲から火花を散らしながら、光輝たちが吹き飛ばされる。全力の攻撃を防がれて、3人は絶体絶命の危機に陥った。
「もはや戦う力も、お前たちには残っていない・・この手で今度こそ、お前たちをひねりつぶしてくれる・・・!」
邪眼が光輝にむけて右手をかざす。攻撃の矛先を向けられて、光輝が緊迫を覚える。
そのとき邪眼の前にヒカルが駆け込んできた。
「やめて!もうやめてください!」
「ヒカルちゃん!」
ヒカルの登場に光輝が声を荒げる。
「もう光輝さんが傷つくのを見たくありません!だからやめてください!」
「ダメだ、ヒカルちゃん!すぐに逃げるんだ!」
悲痛の叫びを上げるヒカルに、光輝が呼びかける。恐怖のあまりに体を震わせる彼女を、邪眼が不気味な視線を向ける。
「お前も闇に堕ちるがいい・・この者たちとともに、我が力に葬られるがいい・・・」
邪眼がヒカルに向けて、闇のエネルギーを解き放つ。
「ヒカルちゃん!」
そこへ光輝が飛び込み、ヒカルを守る。彼女を庇って、彼が邪眼の攻撃を背中に受ける。
「光輝さん!」
悲鳴を上げるヒカル。だが光輝は倒れることなく、ゆっくりと邪眼に振り返る。
「お前のために、ヒカルちゃんまで・・・お前だけは、絶対にここで倒さなければならないみたいだ・・・!」
声を振り絞る光輝が、邪眼を鋭く見据える。
「まだ絶望しないというのか・・これほどの力の差を見せ付けられても、まだ私に勝てると思っているのか?」
「オレたちが負ければ、世界が破滅に瀕する・・だからオレたちは何があっても、諦めるわけにはいかない・・」
疑問を投げかけてくる邪眼に、光輝が決意を口にする。
「たとえこの身が砕けようとも、世界を、自由と平和、夢を守っていく・・それがヒーロー・・それが、仮面ライダーだ・・・!」
押し寄せてくる痛みに耐えて、光輝が言い放つ。
「ライダーはみんなの夢、憧れ・・そんなみんなの夢を壊させないために、オレはお前を倒し、みんなのところに帰るんだ!」
力をみなぎらせて邪眼の前に立ちはだかる光輝。
クリスタルユニットは精神力によって力を増していく。光輝の決意が、彼自身に力を与えていたのである。
「こ、これは、光・・・!?」
立ちはだかる光輝に怯む邪眼。光輝が見せる決意。それは邪眼が恐れていた光として表れていた。
光輝の決意の光。それは遠くから戦況を見守っていた仮面ライダーたちにも見えていた。
「あれは、オメガの光か・・・!」
「彼の正義と心が、光となってあふれているのか・・・」
「オメガの力と合わさって、あんな光を生み出しているのか・・・」
1号、RX、士が光輝の光を見て呟きかける。
“人の心が光になる、か・・実に興味深い・・”
「またフィリップの興味津々が始まった・・」
興味を示すフィリップに、翔太郎が呆れる。
「だが、危ないことになってるのだけは確かだな・・」
「このまま何もせずにいるのはよくない・・助けに行くべきか・・・」
巧とGも呟きかける。交錯する考えの中、1号が呼びかける。
「彼らのところに行かなくても、オレたちには彼らに力を与えることができる・・」
「オレたちの力を、オメガたちに送るんだ・・・!」
「オレたちの力を、ひとつにまとめるんだ!」
1号の言葉を受けて、2号とV3が呼びかける。他の仮面ライダーたちも賛同し、頷く。
「よっしゃー!キバって行くぜー!」
「オレたちの力は、いつでもどこでも、限界突破でクライマックスだぜー!」
キバットと電王が声を張り上げる。仮面ライダーたちが各々のポーズを取り、意識を集中する。
彼らの体からエネルギーがあふれ出し、光となって空に舞い上がっていく。光は上空に停滞し、周囲の空間を歪ませていく。
その空間から一条の閃光が飛び出してきた。それは魂を奮い立たせる光の剣だった。
精神力を振り絞って光に変えて解き放つ光輝。彼の決意は仮面ライダーたちに伝わり、闇を切り裂く光の剣を呼び寄せた。
剣は光輝と邪眼の間に飛び込み、地面に突き刺さる。剣から発せられる光に目をくらまされ、邪眼が後ずさりする。
「この剣・・この光は・・・!?」
突然飛び込んできた剣に、光輝も驚きを覚える。だが彼はゆっくりと剣に近づき、手を伸ばす。
その柄をつかんだ瞬間、剣に宿っていた光が光輝に向かって流れ込んでくる。その光はオメガのベルトの水晶に入り込み、集束されていく。
「オメガクリスタルに・・・もしかして・・・!?」
思い立った光輝が、左手でベルトの水晶を外す。同時に彼は剣に水晶をはめ込むことのできるくぼみを発見する。
「もしかして、これが・・・!」
光輝は剣のその部分に水晶をセットする。すると剣が先ほど以上の輝きを放ち始めた。
「これは・・・!?」
この変動に光輝がさらに驚く。剣から発せられた光は、光輝がまとうオメガの装甲を包み込んでいく。
そしてオメガの装甲にも変化が現れる。通常の赤い装甲の一部分に、金のラインが入っていく。
やがて剣と装甲を包んでいた光が消えていく。消失したのではなく、オメガの装甲に収まっていったのが正しい。
新たなる姿へと変化を遂げたオメガ。その変化に光輝もヒカルも驚くばかりだった。
光輝が手にした剣は、魂の剣「スピリットカリバー」。その力を受けたオメガは、「スピリットフォーム」へと変化を遂げていた。