仮面ライダーオメガ Legend of Riders
第8章
光輝が手にしたスピリットカリバー。その力を受けて、オメガはスピリットフォームへの変化を遂げていた。
「すごい力だ・・それもこの剣の力だけじゃない・・仮面ライダーの力も、この剣に込められている・・・」
光輝がスピリットカリバーとスピリットフォームの力を感じ取る。この力には、数々の正義と信念、魂が込められていた。
「この力・・この光・・・我が闇の力を弱める・・・!」
邪眼が光輝を前にして怯む。彼は魂の光に抗うことができなかった。
「闇の力に負けてたまるか!最後に勝つのは希望の光、強き魂、そして正義だ!」
光輝がスピリットカリバーを構えて、邪眼に言い放つ。仮面ライダーたちの正義と信念を背に受けて、光輝は立ち上がったのだ。
「おのれ!そのような光などに・・お前から葬り去ってくれる・・・!」
いきり立った邪眼が光輝に迫る。光輝はスピリットカリバーを振りかざし、邪眼を切りつける。
「ぐああっ!」
この一閃に激痛を覚え、邪眼が絶叫を上げる。光輝が立て続けにスピリットカリバーを振りかざし、邪眼を攻め立てる。
スピリットフォームになったことで、光輝の振るうオメガの力は飛躍的に増していた。
これがスピリットカリバーの力だった。剣としての扱うだけでなく、オメガユニット装着者の精神エネルギーをより強い力に変えることが可能である。
引き上げられたオメガの力は、邪眼の闇の力をも上回っていた。
「みんなの魂が込められたこの光・・お前でも破ることはできない!」
光輝はスピリットカリバーを地面に刺すと、そのまま邪眼に立ち向かい、パンチを叩き込む。スピリットカリバーが手元から離れても、水晶がスピリットカリバーにセットされていれば、自然にスピリットフォームが消失されることはない。
邪眼が反撃に転じて闇のエネルギーを放出する。
「スピリットフラッシャー!」
光輝が全身から精神エネルギーを放出し、邪眼のエネルギーを跳ね返す。電撃のような衝撃を受けて、邪眼が怯む。
光輝が地面に突き刺していたスピリットカリバーを再び手にする。彼が意識を集中すると、精神エネルギーがスピリットカリバーの刀身に集束されていく。
「この程度で・・この程度で敗れるものか・・・!」
邪眼が力を振り絞って光輝を迎え撃つ。
「スピリットスラッシャー!」
光輝がスピリットカリバーを振りかざす。その刀身に集められていたエネルギーが、光の刃となって放たれる。
邪眼が両手を突き出して闇のエネルギーを放出する。光と闇、2つの力がぶつかり合い、周囲を大きく揺るがす。
「負けるものか・・正義、夢、願い、全てが託されているこの力・・絶対に無駄にするわけにはいかないんだ!」
言い放つ光輝の決意が強まる。それに呼応して、光の刃も力を強める。
光の刃が闇の力を徐々に押していく。やがて押さえ切れなくなり、邪眼が光の刃を体に叩き込まれる。
自身の闇を光に浸食されて、邪眼が倒れる。力を振り絞った光輝も、呼吸を荒くしていた。
「光輝さん・・・やりましたね・・・」
ヒカルが安堵の笑みを浮かべて、光輝に声をかける。だが光輝は緊張を解いてはいなかった。
「いや、まだだ・・・」
「えっ・・・?」
光輝が口にした言葉に、ヒカルが当惑を覚える。倒れていた邪眼が立ち上がり、闇の力をあふれさせていた。
「お・・おのれ・・仮面ライダー・・・!」
邪眼が不気味な声を振り絞って、光輝に迫る。
「ヒカルちゃん、離れていて・・・」
光輝の呼びかけに頷くと、ヒカルは後ずさりしていく。光輝は邪眼を見据えて、意識を集中する。
「オレは、オレたちは戦い続ける・・貴様のような悪の闇がある限り、仮面ライダーは戦うんだ!」
邪眼を指差し、光輝が鋭く言い放つ。
「小賢しいことを・・・お前を、この手で・・・!」
いきり立つ邪眼がエネルギーを集束させていく。光輝はスピリットカリバーを再び地面に突き刺すと、空に向けて大きく飛び上がる。
「スピリットライダーキック!」
精神エネルギーを集束させた右足を突き出し、降下する光輝。彼が放つキック「スピリットスマッシャー」が、邪眼の放つ闇の力とぶつかる。
高められた光と闇の力がぶつかり合い、旋風のような奔流を巻き起こす。光輝のキックの威力が強まる一方で、邪眼の力が弱まり、押され始めていく。
「バカな・・闇が、またしても光に敗れるのか・・・!?」
「光は、心の強さでどこまでも輝ける!闇を打ち払うほどにまで、光は強くなれるんだ!」
うめく邪眼に言い放つ光輝。スピリットスマッシャーが闇の力を押し切り、邪眼の体に叩き込まれた。
強力な一撃を受けた邪眼から、弱まっていく闇があふれていく。彼は力を自身に留めることができなくなり、崩壊しようとしていた。
「またしても、闇が光に敗れるとは・・・だがこれで、闇がなくなると思うな・・・闇がある限り、私は何度でも蘇る・・・!」
「闇が世界を覆うとき、光も強く輝く・・この世界に光がある限り、ヒーローは戦う・・仮面ライダーは戦い続けるんだ!」
消滅していく邪眼に向けて、光輝が言い放つ。彼の心には、数多くの支えを受けた正義の炎が強く燃え上がっていた。
断末魔の絶叫を上げて、邪眼が消滅していく。あふれ出た闇は虚空に舞い上がり、霧のようにかき消えていった。
「終わった・・・オレとみんなの力で、邪眼を倒すことができた・・・」
戦いの終末を実感して、光輝が握り締める右手をじっと見つめる。彼は微笑みかけているヒカルに振り返る。
「光輝さん・・・」
「ありがとう、ヒカルちゃん・・・君やみんなが助けてくれたから・・・」
ヒカルに感謝の言葉をかけると、光輝はゆっくりと歩いていく。その姿を、立ち上がった一矢と太一も見守る。
「あの力・・認めるわけにはいかないな・・・」
「すごかったよ・・光輝くんのあの力・・・」
腑に落ちない心境の一矢と、感嘆の声を上げる太一。ゆっくりと歩いていく光輝を、ヒカルは追いかけていった。
世界の平和を守るため、光輝たちを援護してスカルライダーたちと戦った仮面ライダーたち。彼らの前に、光輝がヒカルとともにやってきた。
「やはり戻ってきたか・・・」
「全て終わったということか・・・」
「無事に戻ってきたようだ、光輝くんたちは・・・」
士、巧、そしてRXが呟きかける。光輝は仮面ライダーたちを見回して、頷きかけた。
「ありがとうございます、みなさん・・・みなさんがいなければ、オレは今回の危機を抜け出すことができなかった・・・」
「いや、君たちの正義と勇気が、戦いの勝利と世界の平和を導いたのだ・・」
感謝を見せる光輝に、1号が言葉を返す。
「君は諦めることなく、自由と平和のために戦い続けた・・自分の犯した過ちに責任を感じ、大切なものを守ろうと懸命になっていた・・」
「こうしてみんながここに来たのは偶然かもしれないが、我々が結束したのは、君の強き心が導いたものだ・・」
2号とV3も光輝に激励を送る。その言葉を受け止めて、光輝がさらなる感謝を覚える。
「これが、僕が導いた・・・」
「お前、けっこう様になってたぜ・・」
「あぁ。お前もかなりクライマックスだったぜ・・」
戸惑いを浮かべる光輝に、翔太郎と電王が気さくに言いかける。多くの感謝を感じたまま、光輝はオメガへの変身を解除する。
「僕、こうしてオメガとして戦えたことを、嬉しく思います・・・みなさんの正義が、分かったような気がします・・」
「僕たちはそれぞれの世界で、身を引き裂かれるような苦難に立ち向かい、今もこうして戦い続けている・・だけど僕たちは、決して1人ではない・・支えてくれる人が、必ずいる・・・」
心境を語る光輝に、Gが優しく言いかける。その言葉を受けて、光輝は微笑んで頷いた。
そのとき、仮面ライダーたちの背後の空間が歪み出す。世界と世界をつなぐ道である。
「えっ・・・?」
「戻るときがきたようだ・・・」
戸惑いを見せる光輝に、V3が言いかける。
「いつかまた、会えますでしょうか・・・?」
「あぁ。いつの日か必ず会えるさ・・こうして出会うことができたのだから・・・」
「そのときはまた、ともに戦っていこう・・・」
光輝が訊ねると、1号と2号が答える。その言葉から、光輝は仮面ライダーたちとの絆を感じていた。
そこへギガス、クリスへの変身を解除した一矢と太一が駆けつけてきた。
「改めて見ると・・これだけ揃うものか・・・」
「すごい・・仮面ライダーが、こんなにも・・・」
呟きかける一矢と太一。
「また会おう、光輝くん・・戦い続ける限り、我々はともにある・・・」
1号が光輝たちに言いかけると、他のライダーたちとともにそれぞれの世界に戻っていった。
光輝たちの前には、変身を解いた光太郎、巧、士が残っていた。
「オレも願ってるぜ・・こっちだけじゃなく、お前たちの世界も幸せになることを・・・」
「ありがとう、巧さん・・どこまでやれるか分んないけど、やってみるよ・・・」
巧の言葉に太一が微笑んで頷く。一矢は悠然とした態度を見せるばかりだった。
その傍らで、光輝と士は互いを鋭く見据えていた。2人の確執はまだ解消されたわけではなかった。
「僕はまだ、お前を仮面ライダーとは認めていない・・だけど、完全な悪者というわけじゃないみたいだ・・・」
「悪者扱いしてくれたほうがいいな。ヒーロー気取りでちやほやされるくらいならな・・」
鋭く言いかける光輝に、士が憮然とした態度を取る。その態度に不満を覚えたが、光輝はこらえた。
「オレも行くぜ・・オレの旅はまだ終わっていないからな・・・」
士がきびすを返して歩き出そうとしたとき、光輝が言葉を切り出す。
「言ったよね?お前は全てを破壊する世界の破壊者だって・・・」
光輝が口にした言葉に、士が眉をひそめる。
「確かにお前は破壊者だよ・・少なくても、僕たちの夢を壊しかけた・・・」
「そうか・・・そのくらいで済んだだけ、今回はいいところだったか・・・」
士の返事に光輝がさらなる不満を覚える。
「いなくなるなら早くいなくなれ・・でないと今度こそお前を倒すぞ・・・!」
「オレが負けることはもうないが、あんまり面倒なのはゴメンだ・・ここはお前の言葉を聞いてやる・・・」
あくまで尊大な態度を見せたまま、士は歩き出していった。
「光輝の考えには賛同しないが、ヤツの態度にも腑に落ちないな・・」
去っていく士を見送って、一矢が憮然とした態度を取る。光輝は視線を光太郎に向けていた。
「本当にありがとうございました・・・あなたに出会えて、僕は本当に嬉しいです・・・」
「オレも君と出会えたことを嬉しく思うよ・・たとえほんの少しでも・・・」
互いに自分の気持ちを打ち明け、感謝の言葉を告げる光輝と光太郎。
「これからも友や大切な人を守るために戦ってほしい・・ひとりぼっちがどういうものなのか、オレは知っている・・・だから決して、孤独に陥らないでほしい・・・」
「光太郎さん・・・ありがとうございます・・みんなだけじゃなく、みんなも心も守っていきます・・・」
光太郎の願いを受けて、光輝が微笑んで頷く。正義と勇気を分かち合った2人が、握手を交わし、結束を固める。
「それではみんな、元気で・・・」
「光太郎さんも、お元気で・・・」
光輝との別れを告げると、光太郎も自分の世界に戻っていった。
(ありがとうございます、光太郎さん・・・僕は戦います・・仮面ライダーが守り続けてきた世界を、僕も守っていきます・・・)
決意を告げる光輝に見送られながら、光太郎も自分の世界へと戻っていった。
この戦況を上空から見守っていたキバーラとキバット3姉妹。戦いの終結に、彼女たちはため息をついていた。
「あ〜あ、終わっちゃった〜・・」
「もう少し楽しんでいたかったのに〜・・」
「どんなことだって終わりが来るものだよ。この戦いだって・・」
不満を口にするキバルンとキバリンに、キバランが言いかける。
「あなたたちはどうするの?アルファの仕事はもう終わったんでしょう?」
キバーラがキバランたちに声をかけてくる。
「私たちは自由気ままにやっていくわ・・まだまだいろんな世界と、楽しいことがいっぱいあるし・・」
「そういうキバーラはどうするの?このままディケイドについていくわけ?」
キバランが答え、キバリンがキバーラに聞き返す。
「そうね。私の役目はまだ終わってないから・・」
「それじゃあたしたちとはここでお別れだね・・まだどこかで会いたいなぁ・・」
キバーラの答えを聞いて、キバルンが再びため息をつく。
「またいつか会えるわよ・・そのとき、私たちが敵同士にならないことを願うわ・・」
「そうね・・お互い、またこうして一緒に楽しめることを切に願うわ・・・」
挨拶を交わすキバーラとキバラン。キバランたちと別れて、キバーラは次元のトンネルを通って別の世界へと去っていった。
「それじゃ、私たちも行くわよ・・・」
「りょーかーい・・」
「分ったよ、お姉ちゃん♪」
キバランの呼びかけにキバリン、キバルンが答える。彼女たちも次元のトンネルを通って、別の世界へと去っていった。
邪眼の攻撃を受けて撃退された竜也。だが竜也の傷は浅く、既に回復していた。
「もう倒された後か・・・まさかアイツ、あのような力を発揮してくるとは・・・」
オメガの新たなる力を感じ取っていた竜也が、苛立ちをあらわにする。
「だがヤツがどれほどの力を出そうと、オレは偽善を壊す・・それ以外に、オレの道はない・・・」
オメガと正義への憎悪をたぎらせていく竜也。彼は次の戦いに向けて、1人歩いていくのだった。
仮面ライダーたちとの出会いと共闘、そして別れを経た光輝。彼の中にある正義と決意が、さらに強固なものとなっていた。
だが、世界と世界をつなぐ次元のトンネルはまだ消えてはいなかった。同時にスピリットカリバーが淡い光をまとっていた。
「この剣も、元の世界に戻ろうとしているみたいだ・・・」
「えっ・・・?」
光輝が口にした言葉に、ヒカルが戸惑いを覚える。彼が握っていたスピリットカリバーが浮遊し、次元のトンネルに向かって飛んでいった。
魂の剣を別の世界に向かわせると、次元のトンネルは姿を消した。
「いいんですか、光輝さん?・・・あの剣があれば・・・」
「あの剣は別の世界からやってきたものだ・・元の世界に帰るべきだ・・・」
ヒカルが声をかけると、光輝は真剣な面持ちで答える。
「それに・・また必要になったときは、また僕たちのところにやってくる・・僕はそう信じてる・・・」
「光輝さん・・・」
光輝の言葉を聞いて、ヒカルも微笑みかける。オメガのスピリットフォームの発現は、今回だけではない。彼女もそう信じていた。
「最終的に1番なのはオレだ。君が発揮したあの力をも、オレは超えている・・」
「あれだけすごい力があるなら、もっと早く出てほしかったよ・・・」
一矢が勝気な態度を見せ、太一が不満げに言いかける。振り向いた光輝が、喜びを込めた笑顔を見せた。
そこへメガブレイバーが駆けつけ、光輝の前で止まった。
「メガブレイバー・・どうしたの・・・?」
「光輝、スカルライダーがまだ生き残っているみたいなんだ・・・」
光輝が訊ねると、メガブレイバーが答える。その言葉を聞いて、光輝が緊迫を覚える。
「全員が仮面ライダーに倒されたわけじゃなかったっていうの・・・!?」
「ヒーローも詰めが甘いということか・・・」
太一が声を荒げ、一矢が肩を落とす。その隣で、光輝が意気込みを見せていた。
「だったら僕がやるしかない・・スカルライダーの企みを、僕が完全に阻止してみせる・・・!」
光輝が告げた言葉に、ヒカルが笑顔で頷く。それを確かめると、光輝はメガブレイバーに視線を移す。
「行くよ、メガブレイバー・・僕たちがこの世界を守るんだ・・・!」
「任せておいてくれ、光輝・・君とともに正義を貫かせてくれ・・」
呼びかける光輝に、メガブレイバーが答える。光輝はメガブレイバーに乗り、前を見据える。
「気をつけてください、光輝さん・・・」
「ありがとう、ヒカルちゃん・・・必ずヒカルちゃんとくるみちゃんのところに帰るから・・・」
呼びかけてくるヒカルに光輝が頷く。彼はメガブレイバーを駆り、スカルライダーの追撃に赴いた。
「光輝さん・・・」
光輝の後姿を見つめて、ヒカルが戸惑いを覚える。ふと空を見上げた彼女は、輝く太陽の黒点が元の大きさに戻っていたことに気付く。
(これで、平和が戻ってきたんですね・・・)
事件の終結を実感して、ヒカルは笑顔を浮かべていた。
世界の平和を象徴するかのように、太陽からは輝きが煌いていた。その光が照らす道を、光輝とメガブレイバーは疾走していた。
それぞれの世界から駆けつけてきた仮面ライダーたちの援護を受けて、光輝は大介の野望と事件の元凶である邪眼を打ち破ることに成功した。
だが、まだスカルライダーたちが完全に倒れたわけではない。さらにガルヴォルスの猛威も完全に消えたわけでもない。
世界を脅かす悪と戦うため、光輝はこれからも戦い続ける。正義を重んじるヒーローとして、自由の戦士、仮面ライダーとして。
自由と平和、大切なものを守るため、吉川光輝は戦い続ける。
仮面ライダーオメガは、戦い続けるのだ。