仮面ライダーオメガ Legend of Riders

第5章

 

 

 精神エネルギーを振り絞って、光輝は士を追い詰めていた。だがエネルギーの過度な消耗で、光輝もオメガへの変身が解除されていた。

「くっ!・・・オレが、ここまでやられるとは・・・!」

 激痛にさいなまれてうめく士だが、傷ついた体は彼の思うように動かなかった。疲弊している体に鞭を入れて、光輝が士に歩み寄る。

 痛みにさいなまれる士を、光輝が息を絶え絶えにしながら見下ろす。そして激情の赴くまま、光輝が士に向けて拳を振り下ろす。

 傷ついた士を殴りつける光輝。体の自由が利かない士は、光輝の手を受け止めることができない。

「お前のようなヤツに・・仮面ライダーをけがされてたまるか・・・!」

 光輝が声を振り絞って、さらに士に殴りかかる。そしてさらに力を振り絞って拳を振り下ろすが、これは士の顔の横の地面を殴ることとなった。

「どうして・・・お前のような悪いヤツを倒そうとしているのに・・・」

 歯がゆさをあらわにして、光輝が体を震わせる。彼の目からうっすらと涙が浮かんできていた。

「これはみんなの夢を守るための戦いだ・・・それなのに、何で・・こんな気分になっちゃうんだよ!?

 たまらず声を張り上げる光輝。その姿を、士はじっと見据えていた。

「結局お前はどうしたいんだ?・・オレを倒すのか?それとも他の選択肢を選ぶのか・・?」

「黙れ!・・全てお前が悪いのに、勝手なことを言うな!」

 問いを投げかける士に、光輝が再び憤慨する。感情があらわになり、彼の目から涙がこぼれる。

「お前が・・みんなの・・みんなの夢を・・・!」

 光輝が声を振り絞ったときだった。彼らの周囲に突如稲妻が巻き起こった。

「な・・何だ・・・!?

 この事態に光輝が声を荒げる。何者かの仕業であると悟り、彼はとっさに立ち上がる。

 だが次の瞬間、光輝が突如顔面を殴られて突き飛ばされる。横転した光輝がすぐさま立ち上がる。

「うまく潰し合いをしてくれて、うまく事が運んでるな・・」

 光輝たちの前に立ちはだかったのは、ホッパーガルヴォルスとなっている大介だった。大介は光輝を見据えながら、士を踏みつける。

「待ってたんだよ、ディケイド・・お前がこうして不様をさらす瞬間をな!」

「ぐあっ!・・何だ、お前は!?・・何を企んでいる・・・!?

 言い放つ大介に、うめく士が鋭く問い詰める。

「オレは土田大介・・この世界とは別の世界からやってきた、本当の世界の破壊者だ!」

「別の世界から・・それじゃあの大黒点も、お前の仕業なのか・・・!?

 高らかに名乗る大介に、光輝が声を荒げる。

「オレはあるものを求めて、この世界にやってきた・・正確にはディケイド、お前を追ってな・・」

「オレを追って・・・まさか、お前の狙いは・・・!?

 大介がかける言葉に、士が毒づく。すると大介が士を強く踏みつけると、彼が持っていたライドブッカーを奪い取る。

「何を考えているのか知らないけど・・いいことじゃないってことは確かだ・・だから、お前の勝手にはさせない・・・!」

「うるさい!」

 前に出てくる光輝だが、大介が右手をかざして衝撃波を放つ。戦うだけの力が残っていなかった光輝は、回避もままならずに突き飛ばされる。

「死に損ないはすっこんでいろ!まぁ、ここまでディケイドを追い詰めてくれたことには感謝しているがな!」

 大介は光輝に言い放つと、人間の姿に戻る。彼はライドブッカーから1枚のカードを引き抜いた。

「見つけたぞ・・オレは今まで、この力を求めて世界を回っていたんだ・・・!」

 大介は哄笑を上げると、ライドブッカーを士に向けて落とす。

「もうひとつ、そのベルトを使わせてもらうぞ・・」

 大介は言いかけると、手にしたカードを士のベルトにセットする。

Kamen ride Alpha.”

 ベルトから音声が発せられる。そのベルトから光が発せられ、その中から別のベルトが出現した。

「ついに見つけたぞ・・最初にして最強のクリスタルユニット、アルファが!」

 大介は笑みを浮かべると、アルファのベルトを手にする。

「うまくいったみたいね・・私たちがうまく段取りしてあげたおかげなんだけど・・」

 そこへ1匹の白いコウモリが飛んできて、大介に声をかけてきた。機械的な様相のコウモリである。

「キ・・キバーラ・・お前がコイツを呼んだのか・・・!?

 士がそのコウモリ、キバーラに向けて声をかける。彼と彼女は顔見知りだった。

「そうよ。アルファのベルトを手に入れたいっていうから、アンタが手に入れたのを思い出してね・・」

「お前・・・!」

 言いかけるキバーラに士が毒づく。たまらず起き上がろうとするが、まだダメージは回復していない。

「もしもキバーラとキバット3姉妹に出会わなければ、アルファのことなど知る由もなかったがな・・だが今こうしてオレは、アルファの力を手に入れることができた!」

「そんなにすごいというのか、そのアルファは!?・・そのアルファを手にして、どうするつもりなんだ!?

「決まってる!全ての世界を破壊して、オレの理想郷を創り上げるんだ!」

 問い詰める光輝に、大介が目を見開いて言い放つ。

「もはやオレが納得する世界になるのを待つつもりはない・・ここぞというところで攻めて、逆転サヨナラにする!」

 野心をむき出しにする大介が跳躍する。彼が着地した先には、意識を失っているヒカルが横たわっていた。

「ヒカルちゃん!?・・お前、ヒカルちゃんに何をしたんだ!?

「連れてきただけだ。この女にはこれからオレが見せるホームランの最初の見物人になってもらおうと思ってな・・」

 声を上げる光輝に、大介が不敵に言いかける。そんな彼らの前に、キバラン、キバリン、キバルンもやってくる

「アルファを手に入れた以上、お前もディケイドももう用済みだ・・スカルライダーを出せ!」

「任せてちょーだい♪」

 大介の呼びかけにキバランが上機嫌に答える。キバット3姉妹が放つ思念波によって、空間が捻じ曲げられていく。

 その歪曲した空間から、装甲をまとった人たちが続々と出てきた。骸骨を思わせる仮面をしており、クリスタルユニットの装甲と同じ容姿をしていた。

「な、な、何だ、お前たちは!?

 その人たちに光輝が声を荒げる。人たちは光輝と士の前に続々と立ち並ぶ。

「スカルライダー。量産型のクリスタルユニットだ。性能はオメガたちより弱いが、これだけの人数を弱ってるお前たちがどうにかできるわけがない!」

 大介が言い放つと、スカルライダーたちがいっせいに構えを取る。

「オレは場所を変えて、この娘が目を覚ますのを待つ。お前たちはそこの2人を叩きのめせ!」

 大介の呼びかけを受けて、スカルライダーたちが光輝と士に襲い掛かる。反撃を考える2人だが、もはや戦う力はなかった。

「待て、大介!・・・ヒカルちゃん・・ヒカルちゃん!」

 光輝の呼びかけも虚しく、大介はヒカルを連れて姿を消してしまった。スカルライダーたちの襲撃にあい、光輝と士がさらに危機に陥る。

「くっ!・・このままではヒカルちゃんを助けるどころか、こっちまでやられてしまう・・・メガブレイバー!」

 光輝が声を振り絞って呼びかける。その呼び声を受けて、1台のバイクが走り込んできた。

 メガブレイバー。オメガユニット装着者の護衛用に開発されたマシンで、今はオメガである光輝の心強いパートナーとなっている。

「メガブレイバー・・来てくれたんだ・・・」

「メガブレイバーがやってきただと!?

 メガブレイバーの救援に光輝が微笑み、スカルライダーが驚愕の声を上げる。スカルライダーたちを蹴散らして、メガブレイバーが光輝の前で停車する。

「光輝、大丈夫!?

「ひとまずここから撤退するんだ・・このままではやられてしまう・・!」

 呼びかけてくるメガブレイバーに光輝が指示を出す。彼はメガブレイバーに乗ると、迫ってくるスカルライダーを蹴散らして走り出す。

 そのとき、光輝はスカルライダーに追い込まれている士を目にする。一瞬歯がゆさを感じながらも、光輝は士に向かっていく。

「乗れ!」

 光輝が呼びかけて手を伸ばす。士がとっさにその手を取って、メガブレイバーの後ろに乗り込む。

 2人の青年を乗せて、速さに特化したスピードフォームとなったメガブレイバーは加速してこの場を走り去っていった。

 

 既に日が落ちて、時刻は夜に差しかかっていた。傷ついた光輝、一矢、太一、光太郎、巧、士は水神家に戻り、くるみと弥生からの介抱を受けていた。

「まさかオレたちの戦いが、ヤツらの手の中で行われていたものだったとは・・・」

 深刻な面持ちを浮かべて呟きかける光太郎。ダメージのひどかった士は意識を失い、ソファーで横たわっていた。

「この事態を招いたのは、僕のせいなんです・・・」

 光輝はこの状況に関して自分を責めていた。

「確かにアイツのしたことは間違っています・・でもそれに対する怒りに駆られるあまり、僕は大介の企みに加担してしまった・・」

「光輝くん、あまり自分を責めてはいけない・・オレたちが今しなければいけないのは、あの男を止めることだ・・」

 後悔する光輝を光太郎が励ます。その言葉を受けて、光輝が気持ちを落ち着ける。

「それにしても、このオレを陥れるとは、実にふざけたマネを・・」

 一矢が大介に対して苛立ちを浮かべていた。

「卑劣な手段はオレの考えに反する行為だ。身の程知らずのあの連中に、オレが1番であることを見せつける必要がある・・君たちはここで待っていろ。オレが終止符を打ってくる・・」

「イヤだね・・いつまでもワケ分かんないことに巻き込まれて、オレは参ってんだよ・・」

 呼びかけてくる一矢に不満を口にしてきたのは巧だった。

「そう思っているなら、オレに何もかも任せてもらおうか。厄介事を引き受けてもらえるのだから、君にも好都合だが?」

「それもイヤだね。アンタはツラが気に食わない。中学校の頃、オレを勝手に保険委員にしたヤツに似てる・・」

 さらに呼びかけてくる一矢に、巧が憮然とした態度を見せる。彼らのいるリビングにもやもやとした空気が立ち込めていた。

 そんな中、光輝が唐突に立ち上がり、頭に巻かれていた包帯を外す。

「行かないと・・ヒカルちゃんを助けに行かないと・・・」

「ち、ちょっと待ちなさい、光輝!そんな体で戦えるわけないでしょ!」

 ヒカルを助けようとする光輝を、くるみがたまらず呼び止める。

「確かにこんな状態じゃ、ヒカルちゃんを助けることも戦うこともできない・・だけどそれでも、僕は行かなくちゃいけない・・行かないとヒカルちゃんが・・・」

「あたしも分かるよ、その気持ちは・・でもそのために、光輝が犠牲になったら、悲しくなるだけじゃない・・・!」

 決意を口にする光輝に、くるみが悲痛の面持ちを浮かべる。

「ヒカルちゃんを見殺しにはしたくないけど、力ずくでもアンタを引き止めるから!」

「くるみちゃん・・・本当にゴメン・・僕はどうしても、ヒカルちゃんを助けにいかなくちゃいけないんだ・・・」

 声を張り上げるくるみだが、それでも光輝の決意は変わらない。止めようとして光輝の腕をつかんでいたくるみの両手が、力なく離れていく。

「こんなことになったのは、怒りに任せて戦った僕の責任だ・・この責任は取らないといけない・・それに、たとえどんなことがあっても、世界を守るために戦わないといけない・・そしてそのために自分が犠牲になって、周りの人々を悲しませてはいけない・・」

 言いかける光輝に、光太郎と巧が目を向ける。

「世界の平和と人々の自由と幸せを守るために戦い続けていく・・それがヒーロー・・それが、仮面ライダーなんだ・・・!」

「光輝・・・」

 鋭く言いかける光輝に、くるみが戸惑いを覚える。彼が今、身も心も正義で満たされていたことに、彼女の心も揺れていた。それは夢物語ではなく、心の底からの決意だった。

 それから光輝は何も語らず、家を出て行った。くるみは困惑したまま、彼を追いかけることができなかった。

 だが一矢と太一、光太郎と巧も、それぞれの意思を強固のものにしていた。

 

 家を出た光輝を待っていたのはメガブレイバーだった。メガブレイバーは、光輝が戦いに臨むことを悟っていた。

「やっぱり行くんだね、光輝・・」

 メガブレイバーが声をかけると、光輝は小さく頷く。

「急いでヒカルちゃんを助けたい・・力を貸してくれ、メガブレイバー・・」

「改まって言わなくてもいいよ・・私は君のパートナーなんだから・・」

 呼びかけてくる光輝に、メガブレイバーが弁解する。その励ましを受けて、光輝が微笑む。

「ありがとう、メガブレイバー・・それじゃ行くよ・・・!」

 光輝はメガブレイバーに乗り、走り出す。ヒカルを助けるべく、彼は戦いの場に赴くのだった。

 林が立ち並ぶ公道を駆け抜けていく光輝。その途中、彼は小さな広場にて佇む1人の初老の男を見つけ、止まる。

「あの・・ここで何をしているんですか・・・?」

 男に駆け寄った光輝が声をかける。

「この辺りは危険です・・早く避難してください・・・」

「危険?・・あの山のことか?」

 呼びかける光輝に、男が低い声で問いかけてくる。

「あの山・・あそこに・・・」

 振り向いて呟きかける光輝。男の言う山の周辺の上空は、暗雲で満たされていた。

「あの山で不吉なことが起ころうとしている・・とてつもない何かが・・・」

「そのとてつもないことを止めなければならないんです・・僕は行きます・・・」

 語りかける男に、光輝が真剣な面持ちで言いかける。

「この道を道なりに進め・・幸運を祈る・・・」

 男の言葉を受けて、光輝は頷いた。彼は改めてメガブレイバーに乗り、山に向かって走り出していった。

 

 アルファユニットを手に入れ、ヒカルが目を覚ますのを待つ大介。喜びを浮かべている彼の前に、靖子が現れた。

「アルファを手に入れたようね・・」

「あぁ・・これでオレを受け入れない世界は、この力で完膚なきまでに叩きのめしてやるぞ・・・」

 妖しく微笑んでくる靖子に、大介が不敵な笑みを見せる。

「だったらなぜアルファに変身しないの?何か考えがあるの?」

「考えというものではない・・この女に、オレがアルファになる瞬間を見せたいだけだ・・そのときこそ、ゲームセットだ・・・」

 疑問を投げかける靖子に答え、大介が目を見開く。

「そう・・なら他の人たちはどうでもいいわね?仮面ライダーたちは私が始末しておくわ・・そろそろスカルライダーたちが歓迎している頃ね・・」

 靖子は再び微笑むと、仮面ライダーたちと交戦するため動き出した。

 彼女が姿を消してから、ヒカルが意識を取り戻した。

「ここは・・・?」

「やっと目が覚めたか・・ワクワクしながら待っていたぞ・・」

 起き上がるヒカルに大介が声をかける。彼の姿を目の当たりにして、ヒカルが恐怖を覚える。

「心配するな。今は手は出さない。これからオレがアルファになる瞬間を見せてやろうというのだ・・」

「アルファ・・・どうして私に・・・!?

「さぁな。単に観客がいないとつまらないだけだ・・」

 固唾を呑むヒカルに、大介が淡々と答える。

「どの世界もオレを邪険にする・・そんな世界など、オレが全て壊してやる・・・!」

「いけません・・そんなことしたら、悲劇が増えるだけです・・・」

「何が悲劇だ?ゴミ掃除の感覚で、腐ってるヤツらを排除しようとしているだけだ。誰もが物分かりがよければ、オレに破壊されずに済んだのにな・・」

 ヒカルの呼びかけに応じず、大介が苛立ちを浮かべる。

「そういうお前も物分かりが悪いのではないのか?」

 そこへ鋭い声がかかり、ヒカルと大介が振り向く。眼下の荒野にはドラゴンガルヴォルス、竜也の姿があった。

「何だ、お前は?オレに何の用だ?」

「世界を破壊しようとしているのはお前か?・・オレもこの腐りきった世界を嫌悪している・・」

 眉をひそめる大介に、竜也が低い声音で言いかける。

「いずれこの世界の偽善を叩き潰すことになる・・だがそれを行うのはオレだ。お前も私利私欲に満たされた愚か者の1人だ・・!」

「聞き捨てならないな・・そういうお前も、結局は私利私欲なヤツじゃないか・・」

「自分の罪を棚に上げて濡れ衣を着せる・・どこまでもその愚かさは・・・!」

 冷徹に言葉を返す大介に、竜也が憤りを膨らませる。

「お前のようなヤツは、ガルヴォルスとしての力の差を見せ付ける必要があるな・・」

 言いかける大介がホッパーガルヴォルスに変身する。剣を具現化させた竜也が飛びかかり、一閃を放つ。

 大介はこれをかわし、竜也の体に打撃を叩き込む。剣を捨てた竜也も反撃し、大介と激闘を繰り広げる。

 その戦いを目の当たりにして、ヒカルは困惑するばかりだった。

 

 光輝が出た後、一矢と太一も続いて飛び出していった。そして光太郎と巧も、戦いに赴こうとしていた。

「オレの世界じゃないが、夢や幸せが壊れるのはいい気分がないからな・・」

 巧は呟きかけると、憮然とした態度のまま外に出て行った。

「オレも行く・・くるみちゃん、彼を頼む・・・」

「分かりました・・光輝をお願いします・・・」

 光太郎がかけた言葉に、くるみが答える。それを見てから、光太郎も家を出て行った。

「光輝・・・ヒカルちゃん・・・」

 光輝たちのことが気がかりで、くるみが不安を浮かべる。弥生も深刻さを隠せないでいた。

 そのとき、眠り続けていた士が意識を取り戻した。だが体を起こしたところで、彼は傷と疲労が痛みを訴えられて顔を歪める。

「アンタ・・目が覚めたのね・・」

「ここはどこだ?・・何がどうなっている・・・?」

 肩を落として声をかけるくるみに、士が問いかけてくる。

「まだ動いてはいけません・・ケガがひどいんですから・・・」

「分かってる・・だが、オレがここでのん気にお寝んねしているわけにいかないんだよ・・・」

 弥生が呼び止めるが、士は聞かずに立ち上がる。

「アイツだって戦ってるんだ・・それなのにオレが戦わなかったら、いい笑いものだ・・」

「アイツ・・光輝のことね・・・」

 士の言葉に答えたのはくるみだった。

「アイツは頭の中が子供だ・・いい年してヒーローに憧れていて、ムキになって突っかかってくる・・だが、それがアイツの全てなんだ・・ヒーローやら正義やらを取ったら、何も残らない・・」

「そうね・・光輝はホントに子供だけど、正義感は人一倍だから・・ヒカルちゃんを助けようと一生懸命になって、世界の平和を守るために本気で戦ってる・・・アンタや一矢さんみたいに大口叩く人よりは、マシだと思うけど・・」

「言ってくれるじゃないか・・だがアイツは、子供たちの夢を守るために、仮面ライダーとなって戦っている・・それは確かだ・・・」

 淡々と言いかける士と、肩を落としながらも感嘆の言葉を口にするくるみ。

「そろそろ行くぞ・・あの大介ってヤツの思い通りになるのは癪だからな・・」

 士は戦いに赴くため、家を出て行った。くるみと弥生は、戦士たちの帰りを待ち続けるのだった。

 

 ヒカルを助けるため、メガブレイバーを走らせる光輝。目的地の山に差し掛かろうとしていたときだった。

 バイクに乗ったスカルライダーたちが、光輝とメガブレイバーに迫ってきた。

「ヤツらか・・・行くよ、メガブレイバー!」

「了解!」

 光輝の呼びかけにメガブレイバーが答える。

「変身!」

 光輝は手にした水晶をベルトにセットして、オメガに変身する。光輝はメガブレイバーを加速して、スカルライダーを迎え撃つ。

 スピードフォームとなってさらに加速するメガブレイバーが、スカルライダーを振り切る。だが荒野に駆け込んできた彼を、別のスカルライダーたちが待ち構えていた。

 通常のパワードフォームに戻ったメガブレイバーが止まる。周囲にはバイクに乗ったスカルライダーたちが取り囲んでいた。

「オメガか・・相手にとって不足はない・・」

「一気に畳み掛けて、ヤツを倒すぞ!」

 スカルライダーたちが光輝に向かって走り出す。光輝もメガブレイバーを駆り、迎撃する。

 その強力な突進が、スカルライダーたちを蹴散らしていく。

「なんてヤツだ・・やはり力が違いすぎる・・・!」

「真っ向から攻めるな!横から取り囲め!」

 声を張り上げるスカルライダーが、再び光輝に襲い掛かる。横から突き飛ばされて、光輝がメガブレイバーから投げ出される。

 横転して立ち上がった光輝に、スカルライダーたちが走り込んでくる。

「このままではやられる・・・メガフラッシャー!」

 光輝が精神エネルギーを放出する。その閃光を受けて、スカルライダーが怯んでバイクから投げ出される。

「くそっ!やってくれるじゃないか!」

 スカルライダーが毒づき、再び光輝を取り囲む。多人数のスカルライダーは、光輝にとって脅威だった。

「変身。」

「変身・・・!」

 そこへ一矢と太一が、ギガスとクリスに変身して現れた。

「一矢さん・・太一くん・・・」

 2人の登場に光輝が戸惑いを覚える。

「勘違いするな。オレはあの男の好き勝手にはさせたくないだけだ・・」

「ここでやらないと、僕たちも危なくなるんだ・・・」

 一矢と太一が声をかけてくる。3人を取り囲んでいるスカルライダーたちが、戦意を膨らませていく。

「これだけの大人数・・このくらいハンディキャップがあったほうが、君たちにはお似合いか・・」

「いいやがったな!3人まとめて始末してやるぞ!」

 強気な態度を見せる一矢に、スカルライダーたちがいきり立つ。その中の十数人が剣を手にする。

「武器まで使ってくるなんて・・卑怯じゃないか、この人たち・・・」

 太一がたまらず不満を口にする。緊張感を膨らませながら、光輝が身構える。

「待て!」

 そこへ声がかかり、スカルライダーたちが振り返る。光太郎、巧、士も駆けつけてきた。

「この世界を守るため、オレは貴様たちを倒す!」

「3人相手に大勢なんて、ずい分とだらしがないんだな・・」

「真打は遅れてくるものだと、相場が決まってるもんだ・・」

 光太郎、巧、士が声をかける。

Standing by.”

「変身!」

Complete.”

Kamen ride Decade.”

 3人が仮面ライダーへの変身を遂げる。RX、ファイズ、ディケイドもスカルライダーに挑む。

「またライダーが現れたか・・・!」

「恐れることはない!3人だろうと6人だろうと、オレたちには太刀打ちできん!」

 スカルライダーが6人に飛びかかっていく。この大人数を相手に、光輝たちが怯まずに迎え撃つ。

 だが多勢に無勢だった。個々の能力はあっても、1万人に達するスカルライダーに手を焼かされることになった。

「くっ!これではきりがない!」

 毒づく光輝だが、この状況を打破する策を見出すことができない。

 ソードモードのライドブッカーを手にする士が、数人のスカルライダーたちに追い込まれていく。

「このオレが、こんな相手に手こずるなんて・・・!」

 うめく士に、スカルライダーたちが攻め立ててくる。パンチとキックの猛襲、剣による一閃でディケイドの装甲から火花が散る。

「さすがの世界の破壊者も、これだけの人数相手じゃ分が悪いか・・」

 不敵に言いかけるスカルライダー。彼らに剣の切っ先を向けられ、士が窮地に立たされる。

 そのとき、スカルライダーたちが突如奇襲を受けて突き飛ばされる。この事態に士が一瞬目を疑った。

 彼の前に立っていたのは1人の男。その男に士は会った記憶があった。

「君はあのとき言ったね・・僕の世界を救えるのは、僕だけだって・・」

「お前、まさか・・・!?

 男の言葉に士が声を荒げる。

「君がかけてくれた言葉で、僕は戦う決意を固めることができた・・だから今度は僕が、君に力を貸そう・・」

 男は士に励ましの言葉を投げかけると、専用のボトルワインを取り出した。

「今、僕のヴィンテージが芳醇の時を迎える・・・変身!」

 男は掛け声とともに、腰に着けていたベルトにワインをセットする。彼の体を赤と黒を基調とした装甲が包み込む。

 吾郎(ごろう)。仮面ライダーG。ソムリエとして働いていたが、対テロ組織「シェード」に拉致され、改造人間「コードG」として改造された。だが恋人の言葉とワインによって、施された洗脳が解け、シェードとの戦いに身を投じるのだった。

 士はかつてGの世界を訪れたことがある。そこで彼は、ピンチに陥っていたGに激励したことが会った。

「お前もこの世界に来ていたのか・・」

「共に戦おう・・それぞれの正義と、世界を守るために・・・」

「G・・・ああっ!」

 Gの呼びかけを受けて、士が立ち上がって答える。2人のライダーが共闘し、迫り来るスカルライダーに立ち向かおうとしていた。

 

 同じく、スカルライダーに苦戦するRX。リボルケインを手にして反撃しているが、大人数には歯が立たなくなっていた。

「これではエネルギーの回復が消耗に追いつかない・・どうしたら・・・!?

「そろそろ限界らしいな・・けっこう手こずらされたが・・・」

 必死になるRXに、徐々に詰め寄っていくスカルライダーたち。その中の1人がRXに飛びかかる。

 そのとき、そのスカルライダーが横から突き飛ばされた。突然のことにスカルライダーが動揺を見せる。

 その中で1番驚いていたのはRXだった。彼を助けたのは南光太郎だった。

「君は、オレ!?・・・どういうことなんだ・・・!?

「君が未来の僕の姿なのか・・・」

 声を荒げるRXに光太郎が言いかける。この場にもう1人の自分がいることに、彼は目を疑っていた。

「オレが連れてきたんだ・・過去のお前をな・・」

 そこへまた声がかけられる。赤を基調とし、電車をモチーフとした仮面ライダーだった。

「君はいったい・・・過去のオレ・・・!?

「そうだ。オレがお前の過去に行って、そこにいたお前を連れてきたってわけだ。こういうのはしちゃいけねぇらしいんだが、特別だとよ・・」

 疑問を投げかけるRXにライダーが答える。

 野上(のがみ)良太郎(りょうたろう)。仮面ライダー電王。時の列車「デンライナー」で時間を渡り、過去を破壊して現在をも破壊しようとする「イマジン」と戦っている。

 RXを助けた電王には今、イマジンの1人、モモタロスが憑依している。電王はイマジンの憑依と連動して様々なフォームへと変身しており、今はモモタロスが憑依した基本形態、ソードフォームを取っている。

 電王は光太郎の過去に飛び、そこにいた光太郎を連れてきたのである。RXの前に現れたのは、仮面ライダーBLACKだった頃の光太郎である。

「未来のオレが変身する姿に変化は起きているが、正義の心は変わってはいない・・そうだろう?」

「そうだ・・この世に悪がいる限り、この世に光がある限り、オレはいつでも、オレたちは何度でも蘇る・・・!」

 光太郎の言葉にRXが答える。そして光太郎が構えを取る。

「変・・身!」

 変身ポーズを取る光太郎。それはRXとは違うもので、彼が変身した姿も違っていた。

 RXの前身、仮面ライダーBLACKである。

「共に戦おう、RX・・!」

「もちろんだ、BLACK・・オレたちは一心同体だ!」

 手を組み共闘するBLACKとRX。過去と現在の黒き戦士のタッグが実現したのだった。

「2人だけじゃないぜ。オレのハートも、最初からクライマックスだぜ!」

 高らかに言い放つ電王も、専用武器「デンガッシャー」を手にして、取り囲むスカルライダーたちに挑もうとしていた。

 

 ヒカルを助けようとする光輝だが、スカルライダーに行く手を阻まれていた。逆に多人数を相手にする戦況に、彼は劣勢を強いられていた。

「こんなところで、立ち止まっている場合じゃないというのに・・・ぐあっ!」

 スカルライダーに斬りつけられて、光輝がうめき声を上げる。怯んでひざを付く彼に、スカルライダーの1人が剣の切っ先を向ける。

「手こずらせてくれたが、さすがのオメガもここまでのようだな・・」

「くそっ!・・負けるわけには、いかないんだ・・・!」

 不敵に言いかけるスカルライダーと、うめく光輝。だが複数のスカルライダーたちに囲まれて、彼は動くこともできなくなる。

「これで終わりだ!とどめだ、オメガ!」

 スカルライダーが光輝に向けて剣を振り下ろす。確実にやられたと思い、光輝が覚悟を決める。

 そのとき、スカルライダーが振り下ろした剣が突如受け止められる。直後、飛び込んできたキックがスカルライダーを突き飛ばす。

「諦めるな・・君が諦めたとき、世界の希望が潰えてしまうのだから・・・」

 声をかけられて、光輝が顔を上げる。彼の前には1人の仮面の戦士が立っていた。

 彼は緑の仮面、銀の手袋とブーツ、赤いマフラーを備えていた。

「よくも邪魔を・・何者だ、貴様!?

「オレは、仮面ライダー1号!」

 怒鳴るスカルライダーに、戦士が高らかに言い放つ。彼こそが初代仮面ライダー、仮面ライダー1号である。

「仮面ライダー・・仮面ライダー1号だ!」

 たまらず歓喜の声を上げる光輝。彼らの危機に、ついに1号ライダーが姿を現した。

 

 

 

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