仮面ライダーオメガ&電王 Past of Justice

第4章

 

 

 ドラゴンイマジンに踏みつけられ、竜也が苦しむ。怒りの力で強化したドラゴンイマジンに、竜也は追い込まれる一方となっていた。

「いけない・・竜也くんが・・・!」

 良太郎が電王に変身しないまま、竜也を助けようとする。

「おい、よせ、良太郎!変身しないで何とかなるわけねぇだろ!」

 モモタロスが呼び止めるが、良太郎は聞き入れようとしない。良太郎に入ることも止めることもできず、モモタロスはまさに手も足も出なくなっていた。

 そのとき、ドラゴンイマジンが突然の爆発に襲われる。彼は後ろに下がり、竜也から足をどける。

「やれやれ。やはりオレが出ないと終わらないようだな・・」

 そこへギガスに変身した一矢が現れた。彼が放ったギガシューターの射撃が、ドラゴンイマジンに命中したのである。

「ギガスか・・だがギガスが来たところで・・」

「オレを忘れてもらっては困るな・・」

 ドラゴンイマジンが言いかけたとき、ゼロノスに変身した侑斗が現れる。クリスに変身した太一も遅れて駆け付ける。

「ゴメン、みんな・・デンライナーから出るのに手間取ってしまって・・・」

「ゼロノスとクリスも来たか・・だが何人束になろうと、今の私に勝つことはできない!」

 謝る太一と、高らかに言い放つドラゴンイマジン。

「それはオレのセリフだ・・お前が何をしようと、オレに勝つことはできない・・」

 一矢が強気な態度を見せて、ドラゴンイマジンの前に立ちはだかる。

「私の強さは単にパワーが上がっただけではない。自分の手足となるイマジンを生み出すこともできる・・」

 ドラゴンイマジンが力を集め、周囲に放射する。大量のイマジンがドラゴンイマジンの周囲に続々と出現する。

「イマジン!?こんなに呼びだしたのか!?

「1体1体では大したことはないが、これだけの数なら体力が持たないだろう・・」

 声を荒げる侑斗。ドラゴンイマジンが一矢たちにイマジンたちを差し向ける。

「野上、何やっている!?早く変身しろ!」

 侑斗がイマジンたちを迎え撃ちながら、良太郎に呼びかける。それに答えたのはモモタロスだった。

「アイツのおかしな力で、良太郎に入れなくなっちまったんだよ・・!」

「何だとっ!?

 モモタロスの言葉を聞いて、侑斗が驚愕する。彼も良太郎に起きている事態を痛感していた。

「今の君と光輝くんがここにいては危険だ・・良太郎くん、光輝くんをデンライナーに・・!」

 太一の呼びかけを受けて、良太郎が光輝が倒れているほうに向かう。だがイマジンたちに行く手を阻まれ、一矢たちもイマジンたちの相手で手いっぱいだった。

「ちっくしょう!これじゃ手も足も出ねぇ!うわっ!」

 焦りを浮かべていたところでイマジンたちに襲われて、モモタロスが追い詰められる。その勢いのまま、彼は光輝に倒れそうになった。

 だが砂のような状態のモモタロスがすり抜けず、光輝の体に入り込んでしまった。

「えっ!?

 この事態に太一と良太郎が驚きの声を上げる。意識を失っていた光輝が目を開き、ゆっくりと立ち上がる。

「オレ、参上・・・!」

 光輝が不敵な笑みを見せてきた。だが彼の目の色が紅くなり、雰囲気もがらりと変わっていた。

 モモタロスが光輝の体に憑依していたのである。

「・・って、何でコイツに入り込んでんだよ!?

 モモタロスが憑依している光輝も驚きの声を上げる。なぜこのようなことになっているのか、モモタロス自身にも分からないことだった。

 だが取り囲んできたイマジンたちを目の当たりにして、光輝は不敵な笑みを浮かべた。

「こうなったらやってやる・・どんなときでもオレはクライマックスだぜ!」

 言い放つ光輝が転がっていた水晶を手にする。

「えっと確か、ベルトに入れりゃいいんだよな・・・変身!」

 光輝が水晶をベルトに水晶をセットして、オメガに変身する。この事態にイマジンたちが動揺する。

「オレ、参上!・・くーっ!やっぱオレのほうが決まってるぜ!」

 名乗りを上げた光輝が、決めポーズをしたことを大喜びする。

「さーって、ここから反撃開始だ!いくぜ、いくぜ、いくぜ!」

 光輝がイマジンたちに立ち向かっていく。果敢に攻め立てる彼に、イマジンたちが撃退されていく。

「電王のイマジンがオメガの体に入ったのか・・思わぬ事態というヤツか・・・!」

 光輝とモモタロスの融合に毒づくドラゴンイマジン。

「電王を戦闘不能にしただけでもよしとするか・・」

 ドラゴンイマジンは冷静さを取り戻すと、光輝たちの前から姿を消えた。同時にイマジンたちも光輝たちから逃げ出していった。

「逃げたか・・手間ばかりかけさせて逃げるとは・・・」

「それが懸命だろう。どんな小細工をしようとオレには勝てないのだから・・・」

 毒づく侑斗と、勝気に言いかける一矢。光輝たちがそれぞれ変身を解除していく。

「モモタロス、だよね?・・・どうして、光輝くんの中に・・・」

 良太郎が恐る恐る、モモタロスが憑依している光輝に近づいていく。

「オレにだって分かんねぇよ・・コイツに倒れたらそのまま入っちまったんだよー!」

 光輝が絶叫を上げて頭を抱える。どうしたらいいのか分からず、良太郎も困惑していた。

“これ・・いったいどうなっているんだ!?”

 そのとき、光輝の意識が目覚め、彼に入っているモモタロスを揺さぶった。光輝の強い意思がモモタロスを追い出すこととなった。

「うわっ!またいきなり追い出された!」

 光輝の体から出されたモモタロスが声を荒げる。そこへ良太郎が声をかけてきた。

「光輝くん、モモタロス・・大丈夫、だよね・・・?」

「良太郎くん・・・おかしな気分になったけど、何とか平気だよ・・」

「オレもこの通りピンピンしてるぜ!」

 光輝とモモタロスが答えるが、事態の深刻さが彼らに重くのしかかっていた。

「あれ?竜也くんは・・・?」

 光輝が周囲を見回して疑問を浮かべた。彼らの周囲に竜也の姿はなかった。

 

 強化したドラゴンイマジンに敵わず、竜也は怒りをさらに膨らませていた。

「アイツ・・どこまでも思い上がって・・・!」

 疲れきっている体を引きずって、竜也が怒りの言葉を口にする。

「ヤツも、世界の愚か者も、何もかもオレが叩き潰す・・このままでいいはずがない・・絶対に認めはしない!」

 さらに怒りを膨らませる竜也に再び紋様が走った。彼の姿がドラゴンガルヴォルスへと変身する。

「まずはオレの大学に戻らないと・・オレの怒りの始まりを、オレ自身が消す・・・!」

 冷徹に告げると、竜也は大学へと戻っていった。

 

 デンライナーに戻った光輝たち。だがドラゴンイマジンの力を受けた良太郎は、まだモモタロスたちとの融合ができないままだった。

「良太郎とのリンクを断ち切るなんて・・とんでもないイマジンが出てきたものね・・」

 ハナも良太郎に起きている事態に深刻になっていた。

「今考えられる手段は、野上とイマジンのリンクを阻害しているあのイマジンを倒すことだけだ・・だが、そのイマジンの力は増すばかりだ・・」

「そんなことは関係ない。オレにかかればどんな相手も負けを認めざるを得ないからな。」

 侑斗が呟いたところで、一矢が勝気な振る舞いを見せた。

「それにあの怪物、他のたくさんの怪物を呼び出していたよ・・このまま過去の世界が無茶苦茶になったら・・・」

 太一が思わず不安を口にする。

「過去が壊れてなくなれば、現在にも影響する・・今を守るのなら、急いだほうがいいということだ・・」

 侑斗も続けて言いかける。すると光輝が重く閉ざしていた口を開いた。

「過去で起きた偽善と悪だくみ・・それが竜也くんの運命をあそこまで狂わせてしまったんだ・・もしもその出来事がなければ、竜也くんは平和に暮せたはず・・・」

「それは違うわ、光輝さん!どんなに辛いことでも、過ぎてしまったらもう過去になってしまう・・過去を変えてもいいことにはならない・・逆に時間を、みんなの存在を無茶苦茶にしてしまう!」

 竜也の辛さを口にする光輝にハナが声を荒げる。

「あの人や私たちがやらなくちゃいけないことは、忘れちゃいけない過去を絶対に手放さないこと、そしてこれからを大切に過ごしていくこと・・過去のために、未来を壊していいことにはならない・・たとえその人の時間が幸せに感じてしまっても・・・」

「でも、過去や未来のために、人が苦しんでばかりでいいことにもならない・・竜也くんの心に希望が戻るなら・・・」

 ハナの言葉を聞いても、光輝は竜也に対して悩み苦しんでいた。すると良太郎が光輝に声をかけてきた。

「でも、竜也くんのやろうとしていることが、彼の幸せにならないことは、光輝くんも分かっているよね・・・?」

「良太郎くん・・・」

 良太郎が投げかけた言葉に、光輝が戸惑いを覚える。

「竜也くんの間違いを止めること・・それが本当の幸せになるし、過去や未来を守ることになるんじゃないかな・・・」

「良太郎くん・・・そうだ・・竜也くんのしていることは、決して正しいことじゃない・・・」

 良太郎に励まされて、光輝が真剣な面持ちを浮かべる。

「竜也くんは偽物の正義を壊して本当の世界を取り戻そうとしている・・でもこれは結局は壊すことでしかない・・・」

「光輝くん・・・」

 テーブル席から立ち上がる光輝に、太一が困惑を浮かべる。

「過去ばかりを追い求めるために、未来に背を向けてはいけない・・戻らない昨日を求めるより、やってくる明日を信じることのほうが大切なんだ・・・」

 迷いを振り切り、竜也と向き合うことを誓う光輝。

「その意気だぜ、光輝!これでこそオレが入ったヤツだぜ!」

 モモタロスが光輝の決心を大喜びする。

「やれやれ。相変わらず騒々しいね、先輩・・」

 するとウラタロスが呆れた素振りを見せてきた。その態度に怒って、モモタロスが食ってかかる。

「このカメ公!いっぺんそのひん曲がった性格叩きなおして、泣かしてやるぞ!」

「ん!泣けるで!」

 モモタロスの言葉に反応して、居眠りをしていたキンタロスが起き上がってきた。

「わーい♪何だか楽しくなりそー♪」

 さらにリュウタロスが面白がって駆け寄ってきた。

「僕がアイツをやっつけるけどいいよね?答えは聞いてない♪」

「テメェ!少しは人の話を聞け!」

「うるさいな!モモタロスは黙っててよね!」

 怒鳴ってくるモモタロスにリュウタロスが不満の声を上げる。

「もう!みんな、ケンカはダメだよ!」

 光輝と良太郎が慌ててモモタロスを止める。このやり取りに呆れていた一矢だが、オーナーが旗つきのチャーハンを食しているのを目にする。

「旗つきとは、その年で子供染みたことをしているな・・」

「これが私の美学であり、勝負の訓練でもあるのです・・たとえ子供染みていようと、私の負けられない戦いなのです・・」

「これが戦いか・・呆れてものも言えないな・・」

「それはご自由に。私は去る者は追いませんので・・」

 オーナーが投げかけたこの言葉に、一矢が反応した。

「その言い回し・・オレが劣っているということだな・・・」

「そのつもりはないのですが・・・」

「そこまでいうならば、オレが上であることを見せつけてやる。オレにできないことは何もないからな・・」

 一矢がオーナーの前の席に座り、スプーンを手にしてきた。

「もう、子供染みてるって言ったばかりなのに・・・」

「クソガキのおめぇが言うなよ・・」

 呆れるハナにモモタロスが文句を言ってきた。すると怒ったハナに後ろから蹴り飛ばされた。

「もう・・これで大丈夫なのかな・・・」

 さい先不安ばかりのこの雰囲気に、太一は気まずくなっていた。

 

 街の中心に立ち並ぶビルや大きな建物。そのひとつの上にドラゴンイマジンはいた。

「破壊ならここのほうがより効果的だろう・・もう主の思惑に乗る必要もないからな・・・」

 街を見下ろして、ドラゴンイマジンが笑みをこぼしていく。

「暴れろ!好きなように破壊するがいい!」

 ドラゴンイマジンが自ら呼びだしたイマジンたちに呼びかける。喜びを見せながらイマジンたちが暴れ始めた。

 破損する建物。逃げ惑う人々。その過去での破壊行為は、現代にも影響していた。

 過去で破壊された建物は現代でも崩れるように消滅していく。過去での人々の影響で、現代に生きる人々の存在をも消していた。

「世界が愚かとなっている。そのこともまた愚かに思える・・それは主と同じであると言える・・・」

 崩壊をきたしていく街を見下ろして、ドラゴンイマジンが呟いていく。

「愚かさを消すには、愚か者の存在そのものを消す・・過去を失ったものに現在はない。それこそが主の望みにもなるのは皮肉だが・・」

 ドラゴンイマジンは剣を手にして、自らも破壊活動に出るのだった。

 

 再び自分が通っていた大学に戻ってきた竜也。校舎を目にしたことで、彼は怒りを膨らませていた。

「愚か者が、オレのこの居場所を、平和を壊した・・・」

 ドラゴンガルヴォルスとなったまま、竜也が大学の敷地内に足を踏み入れる。

「愚か者がいなければ、オレは平和の中でいられる・・・」

「そのために、誰かを傷つけたり何かを壊したりしていい理由にはならない・・」

 そこへ声をかけられて、竜也が足を止める。振り返った彼の前に現れたのは、良太郎と侑斗だった。

「お前たち・・またオレの邪魔をするのか・・・!?

「邪魔してやるさ・・お前のために、オレたちや他のヤツの時間を壊されたらたまんないからな・・」

 鋭く言いかける竜也に、侑斗も鋭く言い返す。

「平和を求める君の行動は、いつの間にか独りよがりになっちゃったんだね・・独りよがりで時間を壊しても、何の得にもならない・・・」

「それを決めるのはオレだ・・オレの平和がどういう形になるかは、オレ以外には決められない・・・!」

 切実に呼びかける良太郎だが、竜也は聞き入れようとしない。

「誰かを、何かを犠牲にする平和なんてない・・間違いをさせないために、君を止めなくちゃいけない・・・」

「オレは止められない・・オレは止まるわけにはいかない・・・!」

 敵意を見せてくる竜也に挑もうとする良太郎。だが侑斗に手で呼び止められる。

「お前はまだ戦える状態じゃない・・ここはオレがやる・・」

「侑斗・・・」

「不満があるなら早く変身できるようになれ。オレみたいにな・・」

 戸惑いを見せる良太郎に代わって、侑斗が竜也と戦おうとする。

「オレが相手になってやる・・・変身。」

Altair form.”

 侑斗がベルトにカードをセットして、アルタイルフォームのゼロノスに変身する。

「最初に言っておく!オレはかーなーり、強い!」

 高らかに言い放つ侑斗が、ゼロガッシャーを手にして竜也に向かっていく。竜也も剣を手にして、侑斗を迎え撃つ。

「誰にも平和を壊させない・・そのためならお前も倒す!」

「そこまで言い張るなら、見事オレを倒してみるか!」

 互いに言い放つ竜也と侑斗。モモタロスたちとの融合ができず、良太郎は見守ることしかできずにいた。

 

 過去の破壊のために暴れまわるイマジンたち。ドラゴンイマジンも破壊活動に加わろうとしていた。

「やめろ、お前たち!」

 そこへメガブレイバーに乗って、光輝が駆け付けてきた。

「変身!」

 光輝はメガブレイバーに乗ったまま、ベルトを水晶にセットしてオメガに変身する。光輝はメガブレイバーを加速させて、イマジンたちをなぎ払う。

「オメガか・・」

 メガブレイバーから降りた光輝の前に、ドラゴンイマジンが立ちはだかる。

「イマジン、これ以上お前たちの好きなようにはさせないぞ!」

「どうかな?怒りの力を手に入れて強くなった私に敵うと・・」

 言い放つ光輝にドラゴンイマジンが言い返そうとしたときだった。

「オレを忘れるな、怪物・・」

 一矢もドラゴンイマジンの前に姿を現した。太一も遅れて駆け付けた。

「ギガスとクリスも来たか・・電王とゼロノスは姿を見せないか・・」

「お前の相手など、本当はオレだけで十分なのだ。オレだけでお前たち全てを始末できる・・」

 互いに不敵な態度を見せ合うドラゴンイマジンと一矢。

「変身。」

「変身・・・!」

 一矢と太一がギガスとクリスに変身する。

「仮面ライダーオメガ!」

「オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから・・」

「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・!」

 光輝、一矢、太一がドラゴンイマジンに向けて言い放つ。3人の前に他のイマジンたちが立ちはだかる。

「たとえ3人だろうと、これだけのイマジンを相手にどこまで持つか?」

 ドラゴンイマジンの前で、イマジンたちが光輝たちに襲いかかる。同時に光輝が先行し、真っ向からイマジンを迎え撃つ。

「やれやれ。相変わらず考えなしだな・・」

「でも、光輝くんらしさが戻っているよ・・・」

 呆れる一矢と安心する太一。2人にもイマジンたちが迫ってきた。

「身の程知らずが・・逃げるのなら今のうちだぞ・・?」

 警告する一矢だが、イマジンたちは唸り声をあげるばかりで逃げようとしない。

「そんなにオレに倒されたいか・・納得がいかないが、望み通りにしてやろう・・・」

 一矢がギガシューターを発砲して、イマジンたちを狙撃していく。さらに接近してきたイマジンたちにも、一矢は打撃で応戦する。

 太一もクリスセイバーを手にして、イマジンたちを撃退していく。

「あまり僕に近づかないでほしいよ・・・」

 不満を口にしながら攻撃を続ける太一。彼と一矢の猛攻で、イマジンたちが次々と倒れていく。

 一方、光輝はイマジンたちをかき分けて、ドラゴンイマジンの前に立った。

「お前は竜也くんの怒りの化身・・だからなおさら、お前を放っておくわけにはいかない・・・!」

「今の私を止めることは、誰にもできない・・・!」

 決意を示す光輝に対し、ドラゴンイマジンが力を振り絞る。彼の姿が刺々しいものへと変化していく。

「これは主の力でもある・・だからこのようなパワーアップも可能なのだ・・・!」

 強化形態へと進化したドラゴンイマジンに、光輝は緊張を膨らませていた。

 

 怒りのままに向かってくる竜也に、侑斗は決め手を欠いていた。

「パワーがさらに上がっている・・これでは力不足だ・・・デネブ!」

 侑斗の呼びかけを受けて、デネブが駆け付けてきた。

「パワー勝負ならコイツで・・!」

Vega form.”

 デネブとの融合を経て、侑斗のまとうゼロノスの形態がベガフォームへと変化する。

「最初に言っておく!・・・言おうとしたことを忘れた!」

“ふざけたことを言っている場合じゃないだろ、デネブ!”

 デネブの発言に侑斗が文句を言う。

「どこまでもふざけたことを・・・!」

 竜也が飛びかかり、侑斗に向けて剣を振り下ろす。侑斗はゼロガッシャーを掲げて、竜也の攻撃を受け止める。

「この敵、思った以上にパワーがある・・・!」

“油断するな!ヤツのパワーはさらに上がっているぞ!”

 うめくデネブに侑斗が呼びかける。竜也が繰り出した右足を受けて、ゼロノスの装甲から火花が散る。

「こうなったら、真っ二つにしてやる!」

Full charge.”

 侑斗の構えるゼロガッシャーの刀身にエネルギーが集まる。彼は竜也に向けて斬撃「スプレンデッドエンド」を放つ。

 竜也が侑斗の一撃に巻き込まれる。その瞬間、エネルギーの奔流がVの字を描いていた。

「やったぞ、侑斗!一発逆転だぞ!」

“だから油断するな!まだ倒したかどうか分からないだろ!”

 喜ぶデネブに侑斗が呼びかける。この戦いを見ていた良太郎も、緊張の色を隠せないでいた。

 そのとき、発せられていた煙の中から、竜也が姿を見せた。その姿は刺々しいものへと変わり、力も強まっていた。

「このまま終わるものか・・・終わらせてたまるか!」

 さらに怒りを膨らませた竜也が、エネルギーを放出して突進してきた。この一撃を受けて、侑斗が大きく突き飛ばされる。

「ぐあっ!」

 大きなダメージを負って、侑斗がうめく。

「侑斗!」

 慌てて駆け寄ろうとする良太郎だが、思わず足を止めた。彼は電王の力が発揮できないと痛感していた。

「何とかしないと・・このままじゃ侑斗が・・竜也くんが・・・!」

 良太郎が不安を焦りを膨らませていたときだった。

 上空から純白の光が降下し、良太郎の体に入った。すると彼から白い羽根が舞い上がった。

「降臨・・満を持して・・・」

 良太郎の声と雰囲気が一変した。彼は倒れている侑斗を見下ろして、不敵な笑みを見せる。

「そこに倒れているのはあの料理番か。何とも醜い姿だ・・」

「その声は・・・誰なのだ・・・?」

 良太郎に入っている者の正体が思い出せず、デネブが疑問符を浮かべる。

Altair form.”

 その反応に怒った侑斗が、アルタイルフォームへと戻す。

「ボケかましている場合か、デネブ!・・・オレは覚えているぞ、ジーク・・この時代に来ていたとはな・・・」

 デネブに文句を言ってから、侑斗が良太郎に声をかける。彼は良太郎に入った者の正体を知っていた。

 ジーク。良太郎に憑依してイマジンと戦ったことのあるイマジンである。自己中心的な性格で、初めて会った相手にも命令を口にするなど、高飛車な振る舞いが目立っている。

「そのようなものを見せられるならば、私が手を下すほうがいくらか気分がいい・・・変身。」

 ジークが憑依している良太郎が、ライダーパスをベルトにかざして電王に変身する。白の形態「ウィングフォーム」に。

「私が直々に相手をするのだ。君は幸運の持ち主だ・・」

 良太郎が竜也を指差し、高飛車な態度のまま言い放つ。彼の態度に竜也が怒りを見せる。

「また思い上がったことを・・・!」

 竜也が良太郎に向かって飛びかかる。だが跳躍した良太郎に突進をかわされ、さらに後ろから飛び蹴りを当てられる。

「無礼であるぞ。この私に襲いかかるなど・・」

「ふざけるな!」

 良太郎の態度にさらに怒る竜也。さらに突っ込んでくる彼を、良太郎は軽やかにかわそうとする。

 だが竜也は良太郎左腕をつかんでいた。

「おっ!?

 虚を突かれた良太郎が竜也に投げ飛ばされる。横転しながらも、良太郎はすぐに立ち上がる。

「なかなかやるではないか・・この私を捉えるとは・・」

 悠然さを崩さずに呟く良太郎。だが彼は竜也がスピードをも上回りつつあることを実感していた。

「残念だが、早めに切り上げさせてもらうよ。厄介事は気分が悪くなるからね・・」

 良太郎がデンガッシャーを手にして、二刀の斧「ハンドアックスモード」へと切り替える。

 向かってきた竜也を、良太郎は軽やかな動きでかわし、デンガッシャーで斬りつけていく。彼の立て続けの攻撃に、竜也は怯んで膝をつく。

「どうした?少し本気を出したらついてこれなくなったようだ・・」

 悠然と言いかける良太郎に、竜也が苛立ちを膨らませていく。良太郎はデンガッシャーを「ブーメランモード」に切り替えて、ひとつを竜也に投げつける。

「くっ!」

 竜也がうめきながら起き上がり、デンガッシャーをかわす。

「見苦しくなってきたな・・ここで終わりとするか・・」

Full charge.”

 良太郎がエネルギーを集中させて、デンガッシャーのひとつを竜也に投げつける。竜也がデンガッシャーをかわしたと同時に、良太郎はもうひとつのデンガッシャーをハンドアックスモードに切り替えて駆け出す。

 ハンドアックスを振りかざすと同時に、投げつけたブーメランが反転して、同時に相手に命中する。これが電王・ウィングフォームの必殺技「ロイヤルスマッシュ」である。

「いつまでも調子に乗るな!」

 その瞬間、竜也が一気にエネルギーを放出してきた。その爆発に押されて、良太郎がデンガッシャー共々吹き飛ばされる。

 だが、その竜也に侑斗は狙いを定めていた。彼はゼロガッシャーをボウガン型の「ボウガンモード」に切り替えて、エネルギーを集中させていた。

「悪いが、1対1の勝負をしているつもりはないんでな・・・!」

 侑斗が竜也に向けて光の矢「グランドストライク」を放つ。光の矢は竜也の胸を正確に撃ち抜き、貫いた。

 巻き起こる爆発を前にして、侑斗が立ち上がった良太郎に歩み寄る。

「やれやれ。余計なマネをしてくれたものだ・・」

「まさかお前に助けられるとはな・・お前は1997年に行ったのではないのか?」

 肩をすくめる良太郎に、侑斗が疑問を投げかける。

「時間の歪みに巻き込まれてしまってね。気がついたらこの時代にいて、お前たちを見つけたわけだ・・」

「なるほど。それは不幸中の幸いだったな。野上は今モモタロスの力を借りることができなくなっていた・・ジークがいなければ、野上は戦えなかった・・」

「やれやれ。不甲斐ないお供たちだ。私がいなければ何もできないとは・・」

 侑斗が話した事情を聞いて、良太郎が呆れて首を横に振る。

 そのとき、爆発で発せられていた煙が突如吹き飛ばされた。その中から竜也が現れ、憎悪をむき出しにしていた。

「バカな・・・!?

「これだけやって倒れないとは・・・!?

 侑斗も良太郎も驚愕を隠せなくなる。竜也はさらに力と怒りを暴走させ、2人に襲いかかろうとしていた。

 

 

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