仮面ライダーオメガ&電王 Past of Justice
第3章
竜也の力で空いた穴に吸い込まれ、時間の狭間に投げ出された光輝と良太郎。イマジンが抜け出て電王の力が半減してしまい、良太郎は時間の狭間の流れに流されるままとなっていた。
「何が起こっているんだ!?・・・それは分からないが、このままではどうなってしまうか分からないぞ・・・!」
危機感を膨らませる光輝が打開の糸口を探る。
「何とか、ここから脱出しなければ・・・!」
光輝は良太郎の手をつかみ、意識を集中する。
「良太郎くん、しっかりつかまっていてくれ・・・!」
「う、うん・・・!」
「よし・・メガフラッシャー!」
良太郎が頷くと、光輝が精神エネルギーを放出した。放たれた閃光とエネルギーが時間の狭間にぶつかり、次元の穴を発生させた。
「開いた!・・とりあえずあそこから外に出るしかない!」
光輝が良太郎を連れて、その穴から時間の狭間から外に飛び出した。外の世界に出て地面に落ちた2人は、オメガ、電王への変身が解除された。
「いたたた・・何とか脱出できた・・元の世界に戻れたみたいだよ・・」
安心感を覚えて立ち上がる光輝。だが良太郎は自分たちがいる場所に違和感を感じていた。
「早くみんなのところに戻らないと・・心配させたらいけない・・」
「あっ!ちょっと待ってー!」
駆けだしていく光輝と、慌てて追いかけていく良太郎。だが唐突に光輝が立ち止まり、良太郎がぶつかりそうになる。
「ち、ちょっと、どうしたの・・・?」
「・・・アハハ・・おなかがすいてきちゃった・・・」
声をかける良太郎に、光輝が照れ笑いを浮かべる。言葉が出なくなる良太郎をよそに、光輝が食べ物を買うために近くのコンビニエンスストアに立ち寄る。
店で売られているものの中からおにぎりを選ぶ。だがそのおにぎりの包みに書かれている賞味期限が、現在より1年も前の日付となっていた。
「ちょっと店員さん、賞味期限切れてますよ!」
「は?何を言っているのですか?どれもまだ大丈夫ですよ・・」
声を上げる光輝だが、店員は何も怪しくないと思って疑わなかった。
「す、すいません・・し、失礼します・・・」
そこへ良太郎が駆け込み、光輝を連れてコンビニエンスストアを出ていった。
「良太郎くん、何かおかしいよ!間違いなく賞味期限の日付は1年以上前のものだったよ!」
「ううん・・その日付は多分間違っていないよ・・だって、アレ・・・」
声を張り上げる光輝に、良太郎が困惑気味に言いかける。彼が指し示した電光掲示板に記されている日付も、現在より1年以上前のものとなっていた。
「どういうことなんだ!?・・・良太郎くん、これって・・・!?」
「うん・・多分、僕たちは過去に来てしまったんだ・・現在より1年前に・・・」
一抹の不安を覚えた光輝に、良太郎が憶測を口にする。時間の狭間に吸い込まれた光輝と良太郎は、脱出しようとして1年以上前の時間に来てしまったのである。
「まさかこんな形で過去に来るなんて・・・」
「僕たちが帰るためには、ハナさんたちか侑斗が僕たちを見つけてくれるしかないよ・・」
困惑を浮かべる光輝と、ひとつの望みを願う良太郎。2人は時の電車の到着を待つ以外に方法がなかった。
そのとき、光輝はふと考え事を始めた。
「どうしたの・・・?」
「1年前・・僕がオメガに初めて変身した頃だ・・・そのときも、竜也くんが・・・」
良太郎が声をかけると、光輝が呟きかける。彼はオメガとなった自分と、竜也と出会った瞬間を思い返していた。
そして光輝は同時に、一抹の不安を覚えた。
「どうしたの、光輝くん・・・?」
「・・もしも竜也くんもここに来ているとしたら・・間違いなく自分の過去を変えようとする・・偽物の正義について知らないままでいようとするかもしれない・・・」
良太郎に問いかけられて、光輝が不安を口にしていた。
1年前の時代に来ていたのは、光輝と良太郎だけではなかった。竜也とドラゴンイマジンもこの時代に来ていた。
「ここは?・・・オレがいた場所とは違う・・・」
「ここは過去だ。主の怒りの原点となっている時間への扉を、主自身が開けたのだ・・」
周囲を見回す竜也に、ドラゴンイマジンが説明する。
「過去?・・怒りの原点?・・何をふざけたことを・・・」
「ふざけてなどいない。この時代が今までいた時間よりも過去であることは事実。日付を確認したらどうだ?」
苛立ちを浮かべる竜也に、ドラゴンイマジンが答える。竜也が近くの時計から日付を確かめる。
「本当だ・・1年以上も前の日付・・・どういうことだ・・・!?」
「言っているだろう。ここは過去であると・・主はこの時代に、怒りを生み出した原点があるはずだ・・」
「怒り・・・1年前・・・」
ドラゴンイマジンの言葉から、竜也は記憶を巡らせていく。
竜也は警察、正義が自分が信じていたものとは遠くかけ離れていたものであると思い知らされた。偽善や傲慢に対する怒りで、彼はドラゴンガルヴォルスへと変身した。
偽善や偽りの正義が自分を大きく狂わせた。その激しい怒りで、竜也はガルヴォルスの力を高め、オメガである光輝と幾度となく激闘を繰り広げることとなった。
「そうだ・・あのときから全てが始まった・・このときのうちにヤツらを仕留めてしまえば、オレの運命は狂うことはなかった・・・」
さらなる怒りを膨らませていく竜也。彼の怒りは、自分の運命の乱れへと向けられた。
「この過去に偽りの正義があるなら、オレはそれを倒す・・それだけだ・・・!」
偽りの正義の打倒と本当の平和の奪還のため、動き出す竜也。その自分の行動が時間を乱す罪になることを、彼は知る由もなかった。
メガブレイバーを頼りに、一矢たちは光輝と良太郎のいる時代を探っていた。ハナはオメガユニットとメガブレイバーのシンクロから、チケットに2人のいる時代を読み込ませようとしていた。
「おい、まだなのかよ・・ウズウズしてきちまうぜ・・・!」
興奮を抑えきれなくなり、モモタロスがメガブレイバーの後ろで右往左往する。
「少しはじっとしてなさいよ、モモ!メガブレイバーが集中できないじゃない!」
ハナがそんなモモタロスに不満の声を上げる。
「うるせぇ、コハナクソ女!テメェこそ黙ってろ・・んがっ!」
言い返そうとしたモモタロスだが、ハナからパンチを受けて追い出されてしまう。
「ゴメンね、うるさくして・・・」
「私なら大丈夫だ。こうして会話をしていても、オメガの反応を自然にキャッチすることができる。探知できる範囲内ならば、この場や周囲がどのような状況下であってもすぐに探知できる・・」
謝るハナにメガブレイバーが弁解を入れる。
「ねぇ・・光輝さんは、何のために戦っているの?・・やっぱり、世界を守るために・・・?」
ハナが唐突にメガブレイバーに訊ねてきた。
「そうだ。光輝は世界の平和と、人々の自由を守るために、オメガとして戦っている・・だが彼はこうも思っている・・1人の人間の心すら救えないのに、世界を守れるはずがない、と・・」
「1人の人間・・それが、さっき光輝さんに攻撃してきたガルヴォルス・・・」
ハナが竜也のことを思い出していく。
「1人の心さえも救おうとする・・それが自分の正義であると、光輝は確信している・・・」
「そうね・・良太郎も、みんなの時間も1人の時間も関係なく守っている・・2人とも真っ直ぐだからね・・・」
メガブレイバーの言葉を受けて、ハナが微笑む。彼女は改めて2人を信じることにした。
「いた!光輝の居場所が!」
「どこ!?どの時代にいるの!?」
光輝たちの居場所をキャッチしたメガブレイバーに、ハナが声を上げる。
「ここから2時の方向・・あの光の点滅しているほうだ・・!」
メガブレイバーの言葉を受けて、ハナはチケットをかざす。チケットにその時代の日付が記された。
不安を抱えたまま、光輝は良太郎とともに過去の街を駆けまわっていた。彼はこの時代に来ている竜也を探していた。
「待ってよ、光輝くん・・何も手がかりがないのに走り回っても・・・」
「でも、早くしないと竜也くんの怒りで過去が変わってしまうかもしれない・・・!」
呼びかける良太郎だが、光輝は竜也を探すのを中断しない。
「それに、ちょっとしたことでも歴史が変わってしまうかもしれないって・・・」
良太郎のこの言葉で、光輝はようやく踏みとどまった。
「みんなもこの時代に来てくれる。そうすれば竜也さんも探しやすくなる・・・」
「・・その前に何かが起こらなければいいんだけど・・・」
良太郎に励まされるも、光輝は不安を拭えないでいた。
その頃、竜也はかつて自分が通っていた大学に来ていた。その校舎を見据えて、竜也は憤りを膨らませていた。
大学でのいじめ、そのいじめが見過ごされる事態。その全てが竜也の運命を狂わせ、ガルヴォルスへと転化させることとなった。
「オレがここでヤツらを仕留めれば、オレは偽善に振り回されることがなくなる・・すぐにヤツらを見つけ出して息の根を止めてやる・・・!」
偽善への憎悪をたぎらせて、竜也が右手を強く握りしめる。
「倒す、壊すというだけならば、主の手を煩わせることもない・・・」
そこへドラゴンイマジンが現れ、竜也に声をかけてきた。
「どういうことだ・・!?」
「こういうことだ・・・」
目つきを鋭くする竜也のそばで、ドラゴンイマジンが具現化した剣を手にして振りかざす。剣から放たれた光の刃が、大学の校舎に直撃した。
損壊を喫した大学。この騒動に学生や教師たちが慌てて避難していく。
「どういうつもりだ・・ここにいるヤツら全員を手にかけるつもりか・・・!?」
「手間をかけて敵だけを葬る必要はない。まとめて一緒に叩きのめしてやればいい・・」
声を荒げる竜也に、ドラゴンイマジンが不敵な態度で答える。
「主も今までそうしてきたではないか。偽物の正義を滅ぼすために、どんなことにも手を染めてきたではないか・・」
「分かったような口を叩くな!そこまで思い上がって・・・お前も、オレの敵だ!」
ドラゴンイマジンに怒りをあらわにする竜也が、ドラゴンガルヴォルスへと変身する。するとドラゴンイマジンが哄笑を上げてきた。
「私はお前の記憶からこの姿を手に入れた・・私はお前の怒りの姿といっても過言ではない・・」
「ふざけるな!オレはお前など知らない!オレはお前を考えたこともない!」
いきり立った竜也がドラゴンイマジンに飛びかかる。だが両腕を掲げたドラゴンイマジンに、繰り出した右手を防がれる。
「ぐっ!・・押し切れない・・・!」
「言っただろう・・私の力はお前の怒りによって生まれている・・お前の怒りが強いなら、私は相応の力を備えている・・・!」
攻めきれなくなる竜也に、ドラゴンイマジンが淡々と声をかける。
「どこまでもふざけたことを・・どこまで思い上がれば気が済む!?」
さらに怒りを膨らませる竜也が、さらに力を引き出す。
「まだ力を上げていくのか・・だが・・・!」
だがドラゴンイマジンに逆に押し切られて、竜也が突き飛ばされる。ドラゴンイマジンが振りかざす剣が、竜也の体を切りつけていく。
「まだ私のほうが上だ!」
ドラゴンイマジンの反撃を受けて、竜也が横転する。
「こんなことが・・オレが、こんなことで倒れるなど・・・!」
「悔しがる必要はない。なぜならこの力は、お前の怒りなのだから・・・」
声を振り絞る竜也を見下ろすドラゴンイマジン。立ち上がろうとする竜也だが、思うように力を入れることができない。
「ここを破壊すれば、主の怒りも消える・・私も過去を壊せる・・まさに一石二鳥だ・・」
「やめろ!」
そこへ光輝と良太郎が駆け付けてきた。ドラゴンイマジンの攻撃による爆発を聞きつけてきたのである。
「イマジン・・ここで何をしているんだ!?」
「オメガ、そして電王か・・・」
声を上げる光輝に目を向けるドラゴンイマジン。
「良太郎くんは少し離れていて・・今の君は電王の力が半減してしまうから・・・」
光輝が良太郎を心配して、戦わせないようにする。
プラットフォームの電王は、変身前よりは強化されているが、他のフォームと比較して力が劣ってしまう。モモタロスたちとの憑依も疎通もできない良太郎が戦おうとしても、返り討ちにされるのは明らかだった。
「でも大丈夫・・光輝くんだけで・・・!?」
「過去に来てもこのオメガの力は何の影響も受けていない・・変身はできるし、力も十分に発揮できる・・・!」
不安を口にする良太郎に、光輝が自信を見せる。
「この過去が壊されたら、現代も未来も消えてしまう・・それはみんなの平和や自由も消えるということだ・・そんなこと、許すわけにはいかない・・・!」
決意を言い放つ光輝が水晶を手にする。
「変身!」
水晶をベルトにセットして、光輝がオメガに変身する。
「いいだろう・・オメガ、お前から始末してやるぞ・・・!」
ドラゴンイマジンが剣を構えて光輝を迎え撃つ。2人の攻防の最中、良太郎が竜也に近寄る。
「大丈夫!?・・すぐにここから離れないと・・・!」
「離れるだと!?・・オレはそんなつもりはない・・・!」
良太郎が差し伸べた手を、竜也が振り払う。
「ここにはオレの敵がいる・・ヤツらを叩き潰さなければ、オレは、世界は偽善に苦しめられることになる・・・!」
「・・・君とは会ったばかりだからよくは分からないけど、そんなことをしても、多分何もよくはならない・・むしろ逆に悪くなると思う・・・」
苛立ちを浮かべる竜也に、良太郎が自分の考えを口にする。
「憎しみをぶつけても、関係のない人、自分さえも傷つけてしまう・・ここで過去を変えても、自分を捻じ曲げることにしかならない・・」
「お前も勝手なことを・・・こうしなければ何も変わらないというのに・・・!」
切実に語りかける良太郎だが、竜也は聞き入れようとしない。
「思い上がった連中がいるから、世界は朽ち果てたままなんだ・・そのためにオレも、全てを狂わされてしまった・・・!」
「でも、壊してしまったら、それこそ全てを狂わせてしまう・・君自身も・・・」
「ならばこのまま朽ち果てた世界で生きろというのか!?愚か者たちが正しくされていることを受け入れろというのか!?」
「それを決めるのは君自身・・自分が納得できれば、他は関係ないんじゃないかな・・・」
「それが愚かさを招いているのではないか!」
良太郎の言葉を拒絶して、竜也が怒りをあらわにする。彼の怒りに呼応するように、体からエネルギーが放出される。
「これ以上、思い上がりの言葉を聞くつもりはない・・お前も敵として叩き潰す・・・!」
「いけない!良太郎くん、逃げるんだ!」
敵意をむき出しにする竜也と、良太郎に向けて呼びかける光輝。その直後、ドラゴンイマジンの剣が光輝のまとうオメガの装甲を切りつけて火花を散らす。
「ぐあっ!」
「よそ見をしている余裕はないぞ、オメガ!」
うめく光輝に、ドラゴンイマジンが追撃を仕掛ける。だが彼が振り下ろした剣を、光輝が両手で受け止める。
「逃げるんだ、良太郎くん・・今の君じゃ、竜也くんを止められない・・・!」
「ここで止めないとみんなが大変なことになる・・それは光輝くんも分かっているはずだよ・・・!」
ドラゴンイマジンの攻撃を防ぎながら呼びかける光輝に対し、良太郎が首を横に振る。
「オレは愚か者を滅ぼす!思い上がった愚か者が消えなければ、世界は朽ち果てたままだ!」
「それで過去を変えても、過去を壊しても、世界をよくすることにはならない・・・」
怒りを見せる竜也に、良太郎が真剣な眼差しを向ける。
「僕はみんなの“今”を守るために戦う・・たとえ敵わない相手だと分かっていても・・・!」
良太郎は言い放つと、ライダーパスを手にする。
「変身・・・!」
“Plat form.”
電王に変身する良太郎。だがモモタロスたちの力を借りることができず、プラットフォームへの変身に留まっていた。
「邪魔はさせない・・邪魔するものも全て叩き潰す・・・!」
いきり立った竜也が良太郎に攻撃を仕掛ける。力の弱い良太郎には、竜也に反撃することもままならなかった。
「このままでは良太郎くんが・・・!」
良太郎を助けようとする光輝だが、ドラゴンイマジンの攻撃に行く手を阻まれる。
そのとき、時間の空間を飛び出して、デンライナーとゼロライナーが光輝たちのそばに走り込んできた。
「あれは・・!」
「みんな、来てくれたんだ・・・!」
声を上げる光輝と良太郎。デンライナーがこの時代に来たことで、良太郎はモモタロスたちとの疎通が可能となった。
「良太郎、無事か!?」
「モモタロス・・・!」
デンライナーから飛び出してきたモモタロスに、良太郎が声を振り絞る。
「後はオレがやる!すぐに終わらせてやるぜ!」
「待って、モモタロス・・竜也くんは悪い人じゃない・・・」
竜也に挑戦しようとするモモタロスを、良太郎が呼び止める。
「倒してしまったらダメだ・・止めるだけにしないと・・・!」
「そう言われてもな、加減すんのは難しいんだけどな・・・けど、手加減の必要はなさそうな相手だからな・・・!」
良太郎の言葉を渋々受け入れるモモタロス。
“Sword form.”
モモタロスが憑依した良太郎のまとう電王の装甲が変化する。ソードフォームとなった彼が、デンガッシャーを手にする。
「言っとくがオレは屁理屈やせこいやり方はしねぇ!真正面からぶつかってやるぜ!」
「何が邪魔しようが、オレは止まるわけにはいかない!世界を正しい姿にするために!」
良太郎と竜也が飛び出し、同時に手持ちの武器を振りかざす。それぞれの刀身がぶつかり合うが、ソードフォームとなった電王の力でも、竜也の怒りの力に押され気味になっていた。
「くっ!けっこうパワーが上がってきてるじゃねぇか・・・!」
竜也の力に毒づく良太郎。
「こうなったらアレをやるしかねぇ・・てんこ盛り、いくぜ!」
良太郎が叫びながら、携帯電話「ケータロス」を取り出す。
“Momo,Ura,Kin,Ryu,Climax form.”
ケータロスのボタンを押してベルトにセットする良太郎。するとロッドフォーム、アックスフォームの仮面が両腕に、ガンフォームの仮面が胴体に装着され、電王の仮面も開くように新しくなる。
電王の強化形態「クライマックスフォーム」である。
「これなら向かうところ敵なしだ!いくぜ、いくぜ、いくぜ!」
良太郎がデンガッシャーを構えて竜也に立ち向かう。竜也も迎撃に出て剣を振りかざし、デンガッシャーと衝突する。
だが良太郎は力負けせず、竜也を押し切ろうとする。
「ぐっ!たとえどれほど力を上げようと・・!」
竜也が反撃に出て膝蹴りを繰り出す。電王の装甲から火花が散るも、良太郎は怯まない。
「こんなもんでオレは、オレたちは止められねぇぞ!」
良太郎がデンガッシャーを振りかざし、竜也に斬りかかる。竜也が怯んだところで、良太郎がライダーパスを取り出す。
「そろそろ決めるぜ、オレたちの必殺技!」
“Full charge.”
ライダーパスをベルトにかざして、電王がデンガッシャーを振りかざす。放たれた刀身にはソードフォーム以上のエネルギーが集束されていた。
「こんなもので、オレは止まるものか!」
竜也が剣を振り下ろすが、電王の「ボイスターズスラッシュ」に吹き飛ばされる。良太郎の攻撃で大きなダメージを負い、竜也が立ち上がれなくなる。
「お前も強かったが、オレたちのほうが上だったようだな!」
勝ち誇る良太郎。彼に追い込まれたことに、竜也がさらに怒りを感じていく。
「認めない・・こんなこと、認めるものか!」
そのとき、竜也からエネルギーが放出される。彼の体が刺々しいものへと変化していく。
「あの姿・・気をつけろ、良太郎くん!竜也くんの力が暴走している!」
光輝が良太郎に呼びかける。竜也は怒りを膨らませるあまり、暴走状態に陥っていた。敵と見た相手を見境なく攻撃し、力任せに打ち倒そうとする。それが今の彼だった。
「まだ倒れねぇのか・・だったら今度こそ!」
良太郎が竜也に立ち向かっていくが、竜也は力任せに突っ込み、良太郎を押しこんでいく。
「うおっ!パワーが上がってやがる!」
「良太郎くん!」
うめく良太郎を助けようとする光輝。そのとき、光輝はドラゴンイマジンにも異変が起きていることに気付き、緊張感を膨らませる。
「いいぞ・・主の怒りが私に流れ込んでくる・・私を強くしていく・・・!」
「まさか、竜也くんの怒りに反応しているのか・・・!?」
喜びを見せるドラゴンイマジンに、光輝が声を荒げる。
「その通り!主が怒りで力を上げるように、私も主の怒りで力を上げることができる!さらにその力は、時間の流れをも狂わせることができる!」
ドラゴンイマジンは言い放ち、光輝に向けて左手をかざす。その手から衝撃波が放たれ、光輝が突き飛ばされる。
「ぐっ!」
壁に叩きつけられて、光輝がうめく。竜也の暴走に追い込まれる良太郎に、ドラゴンイマジンが振り向く。
「オメガたちだけでなく、電王までいられると厄介になりそうだ・・」
ドラゴンイマジンが掲げた剣から電撃が放たれる。その電撃を受けて良太郎が苦痛を覚える。
「ぐ、ぐあっ!」
ダメージを受けて膝をつく良太郎。電王への変身が解除された彼の体から、モモタロスが弾き出される。
「ちくしょう!なんて威力の攻撃だ!」
うめくモモタロスの前で、良太郎がゆっくりと立ち上がる。
「良太郎、もう1回いくぞ!」
「うん・・行くよ、モモタロス・・・!」
声をかけ合うモモタロスと良太郎。モモタロスが再び良太郎に憑依しようとした。
だがモモタロスは良太郎に憑依することができず、体をすり抜けてしまった。
「えっ・・!?」
良太郎とモモタロスだけでなく、光輝も驚きを覚える。
「どうなってやがるんだ・・・もう1回いくぞ、良太郎!」
モモタロスが改めて良太郎に入ろうとする。だが今度も良太郎の体をすり抜けてしまった。
「そんなバカな!?・・良太郎に入れねぇ・・・!?」
「どうなってるの・・・!?」
モモタロスも良太郎も困惑するばかりだった。良太郎の体にモモタロスが憑依することができなくなってしまった。
「憑依できないのは当然だ。私がリンクを断ち切ったのだからな。」
そこへドラゴンイマジンが声をかけてきた。
「電王のイマジンは電王の記憶と時間から生まれたリンクにて憑依というつながりを得ている。私がそのつながりをかき乱し、リンクを断ち切ったのだ。」
「だから、モモタロスは良太郎くんに入ることができないのか・・・!」
ドラゴンイマジンの言葉を聞いて、光輝が危機感を膨らませる。良太郎はモモタロスたちイマジンとの憑依によって電王の力を発揮する。そのつながりを揺さぶられたことで、彼は戦うこともままならなくなってしまった。
「これでもう電王は恐れるに足らん。ここでとどめを刺してくれる。」
「そうはさせない!これ以上、良太郎くんたちを苦しめるわけにはいかない!」
良太郎に迫るドラゴンイマジンの前に光輝が立ちはだかる。
「お前から先に倒されたいか?たとえオメガであろうと、怒りの力を得た私には勝てないぞ。」
「勝つ!世界の平和と人々の自由のため、オレは負けるわけにはいかないんだ!」
攻撃を仕掛ける光輝。だが彼が繰り出したパンチが、ドラゴンイマジンには全く通じていない。
ドラゴンイマジンが光輝の両腕をつかみ、大きく振り上げてから地面に叩きつける。何度か叩きつけてから光輝を上空に放り投げ、ドラゴンイマジンがエネルギーを放出する。
オメガの装甲から火花を散らしながら、地上に激しく落とされる光輝。オメガの装甲が消失した彼は、落下の衝撃で意識を失ってしまった。
「光輝くん!」
「やべぇぞ!このままじゃ!」
声を上げる良太郎とモモタロス。ドラゴンイマジンが光輝にとどめを刺そうと迫る。
そこへ竜也が飛び込み、ドラゴンイマジンを突き飛ばした。竜也はドラゴンイマジンに敵意を向けてきていた。
「これはどういうことだ?私は主の敵を倒そうとしているのだぞ?」
「光輝はオレが倒す・・そうすることで、オレは世界を壊している正義を打ち砕くことができる・・・!」
疑問を投げかけるドラゴンイマジンに、竜也が声を振り絞る。彼の態度をドラゴンイマジンがあざ笑ってきた。
「私の力は主の怒り。私の力で敵を倒すことは、主の怒りをぶつけることと同じではないのか?」
「オレはオレだ!邪魔をするならお前もオレの敵だ!」
「主にここまで憎まれるイマジン・・複雑なものだ・・・」
再び飛び込んできた竜也が右手を突き出す。だが彼の攻撃を受けてもドラゴンイマジンは怯まない。
「ここまで力が上がれば、もはや主に用はない。お前も私の邪魔をする敵として叩き潰してやろう・・!」
ドラゴンイマジンが右手を竜也に叩き込む。重みのある攻撃を受けて、竜也が怯む。
苦痛にさいなまれる竜也に、ドラゴンイマジンが追い打ちをかける。叩き伏せた竜也を踏みつける。
「ぐあっ!」
「今の私は、主をも上回っている!」
ドラゴンイマジンのパワーに、竜也は追い込まれる一方になっていた。