仮面ライダーオメガ&電王 Past of Justice
第2章
時の電車、デンライナーに良太郎、ハナとともに乗車した光輝。異世界のような異空間を走るデンライナーの中の風景を、彼は見渡していた。
乗客は一般の乗客の他、4人のイマジンがいた、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスである。
「おう、良太郎!何だかおもしれぇことになってきたな!」
「こ、こんなところに怪人が!?」
モモタロスが声をかけてきたところで、光輝が緊迫を見せる。
「それにその声・・良太郎くんに取りついたヤツ・・今度はこの電車を乗っ取りに来たのか!?」
「おうおう!やる気か、コイツ!?」
敵意を見せ合う光輝とモモタロス。すると良太郎が割って入り、慌てて2人を止めようとする。
「違うんだ、光輝くん!モモタロスたちは悪いイマジンじゃないんだ!」
「えっ!?・・悪い怪人じゃないの・・・!?」
光輝がモモタロスたちを見回す。戦意を解いた彼に、良太郎が安堵を見せる。
「いいこと言ってくれるね、良太郎・・もっとも、先輩は態度の悪いイマジンだけどね・・」
ウラタロスが口にした言葉に、モモタロスが不満を覚える。
「何だ、カメ公!?・・オレの態度のどこが悪いって・・!?」
「そうやって突っかかるところだよ。もう少し冷静に優雅に振舞わないと・・」
「うそつきカメのくせにいい気になりやがって・・!」
ウラタロスの挑発に怒りをあらわにするモモタロス。
「ちょっと待った!怪人でもケンカはよくないって!」
そこへ光輝が割って入り、モモタロスたちの仲裁に入る。
「そういうところを見せられたら、よい子が泣いちゃうって!」
「泣いちゃう・・・泣けるで!」
光輝が口にした言葉に反応したのは、今まで寝ていたキンタロスだった。彼は「泣く」、または似た響きの言葉に過剰に反応するのである。
目を覚ましたキンタロスが、光輝に詰め寄って懐紙を手渡してきた。
「涙はこれで拭いとき!男は滅多に泣いたらあかん!」
「いや、僕、泣いてないんだけど・・・」
力を込めて呼びかけるキンタロスに、光輝は唖然となっていた。
「みんな楽しそうじゃない♪僕も混ぜてよー♪」
そこへリュウタロスが割り込み、光輝に詰め寄ってきた。
「僕の遊び相手になってもいいよね?答えは聞いてない!」
「聞いてって!」
言い寄ってくるリュウタロスに、光輝がたまらず声を荒げる。そこへモモタロスが詰め寄り、リュウタロスに文句を言ってきた。
「おい、小僧!コイツの相手はオレがしてるんだ!割り込むな!」
「何だよ、モモタロス!僕が遊ぶんだからさ!」
「2人ともやめてって、ホントに!」
言い争いをする2人に、ハナが割って入ってきた。彼女はその勢いで、モモタロスの顔面を殴りつけてしまう。
「イッテー!何しやがんだ、このコハナクソ女!んがっ!」
不満の声を上げたところで、逆に苛立ちを覚えたハナに蹴り飛ばされてしまうモモタロス。
「いい加減大人しくしなさいよね、モモ!」
「くっそー・・!」
ハナに怒鳴られて、モモタロスはうめくばかりだった。このやり取りに光輝は唖然となっていた。
「何やら騒がしいようですねぇ・・」
そんな光輝たちのいる車両に、1人の初老の男がやってきた。デンライナーのルールを取り仕切るオーナーである。
オーナーに続いて1人の少女も入ってきた。デンライナーの客室乗務員、ナオミである。
「はーい、こんにちはー♪あら?新しいお客様ですねー♪」
明るく声をかけてくるナオミに、光輝は唖然となっていた。
「いれ立てのコーヒーになりまーす♪あなたもどうぞー♪」
「いや、僕、コーヒーはダメなんです・・」
特製のコーヒーを差し出してきたナオミに、光輝が苦笑いを見せる。
「そうですかー?残念ですー・・」
やや落ち込んだ素振りを見せて、ナオミが引き下がる。席に着いたオーナーが、旗の立ったチャーハンを食していた。旗を倒さずにチャーハンをスプーンですくって食べるのが、彼の美学となっている。
「あなたがこの電車の責任者ですか・・・?」
光輝がオーナーに向けて声をかけてきた。オーナーはチャーハンを食べ続けながら、光輝に語り始めた。
「時間の歪みが、断続的に発生していますね・・」
「そうだと聞いています・・しかも犯人がガルヴォルスだと・・」
光輝が答えると、オーナーが小さく頷く。
「そのガルヴォルス、激しい怒りによって力を増しているようです・・」
「激しい怒り・・もしかして、竜也くん・・・!?」
オーナーの言葉を耳にして、光輝が緊迫を覚える。
竜也は光輝との因縁がある。偽物の正義を憎む竜也は、光輝をその正義の象徴として敵視し、激しい激闘を繰り広げることとなった。
今もまだその因縁に終止符は打たれていない。いずれそのための戦いと決着が2人に待ちうけているかもしれない。光輝はそのことを心の中に押し込めていた。
「それじゃ、その時間の歪みというのは、竜也くんが起こしているっていうんですか・・・!?」
「正確には、彼と契約を結んだイマジンが・・・」
問い詰める光輝に、オーナーが付け加える。
イマジンは過去へ渡るために契約を交わす。その契約者の願いを叶えることで、イマジンは契約者の体をこじ開けて過去へ飛ぶのである。その契約は時にイマジンの勝手や独断で結ばれることもある。
「そのイマジンが、そのガルヴォルスの知らないうちに契約が結ばれたという可能性もあるのよ・・今までそういうのもあったから・・」
困惑を見せている光輝に、ハナが説明を付け加える。
「それじゃ、竜也くんが気付かないうちに、契約が結ばれたってこと・・・!?」
「イマジンは契約者の記憶を媒体にして姿かたちを持ちます。怒りと憎しみに満ちたガルヴォルスは、イマジンにとってはまさに秘宝・・」
「大変だ・・すぐに竜也くんを見つけないと大変なことに・・・!」
オーナーの話を聞いて、光輝が慌てだす。
「待って、光輝さん!イマジンは、竜也さんの望みを契約の内容としているのよ!」
しかしハナに呼びかけられて、光輝が思いとどまる。
「光輝さん、竜也さんが願っていたり、強くやり抜こうとしていたりしてない?もしかしたらイマジンは、その願いを叶えようとしているかもしれない・・」
「・・竜也くんは、正義を強く憎んでいる・・警察や僕みたいなライダーを攻撃してきた・・そのイマジンも、警察やライダーを狙っているんじゃ・・・」
「その可能性もあるわね・・・」
不安を膨らませていく光輝とハナ。
「ねぇ、もしかしたら、ゼロノスである侑斗も狙われるんじゃ・・・!?」
良太郎が口にした不安に、ハナもさらなる不安を覚える。
「その心配はいらない・・」
そこへ声がかかり、光輝たちが振り返る。彼らのいる車両に、侑斗と一矢が入ってきた。
「か、一矢さん!?どうしてここに!?」
「この男に話を聞こうとしたら、おかしな電車に乗せられてな・・」
声を荒げる光輝に、一矢が悠然と答える。
「何がおかしな電車だ!?ゼロライナーをバカにするな!」
「あの姿かたちがおかしくなくて何だという?あの電車でないと時間を渡れないというから乗ったというのに、まさか文句を言われるとは・・」
「言わせておけば!」
高飛車に振舞う一矢につかみかかろうとする侑斗だが、デネブに止められる。
「本当に申し訳ない・・侑斗は照れ屋だが、本当は優しい心の持ち主で・・!」
「デネブ、余計なことを言うな!」
一矢に謝るデネブに、侑斗が怒鳴りかかる。さらに現状が分からなくなり、光輝が疑問符を浮かべていく。
「もしかして、君たちも時間を走る電車の乗員・・・?」
「時間を走る電車・・間違いではないんだけどな・・・そういうお前も、オメガユニットの装着者だな?」
互いに質問を投げかける光輝と侑斗。
「話はだいたい聞かせてもらった。イマジンの他に、ガルヴォルスというのが何かやらかしているようだな・・」
「警察や僕たちみたいな仮面ライダーが狙われる可能性が高いんだ・・犠牲者が出る前にイマジンとガルヴォルスを止めないといけないんだ・・」
光輝が真剣な面持ちを見せて、侑斗に呼びかける。
「それで、光輝くんの言う仮面ライダーは、これで全員なのかい?電王とゼロノスも、仮面ライダーに含まれているんだよね・・?」
そこへ良太郎が訊ねてきた。
「ゼロノス・・・?」
「侑斗が変身する戦士のことだよ・・」
疑問を投げかける光輝に、良太郎が答える。このやり取りに侑斗は憮然としていた。
「電王とゼロノス、オメガとギガス・・・あっ!」
「どうしたの・・・?」
声を上げる光輝に、良太郎が訊ねる。
「大変だ・・・すぐに向かわないと・・・!」
光輝の心に宿った一抹の不安。彼は自分と一矢以外のクリスタルユニット装着者を知っていた。
街外れの道を歩く2人の男女がいた。谷山太一と岬弥生である。
太一は非常に内向的な性格で、何事においても勇気が持てず逃げ場を求めてばかりだった。だが光輝との出会いを機に弥生を守りたいという気持ちが強まり、クリスタルユニット「クリスユニット」を手にして戦う道を選んだのだった。
奇妙な感覚を覚えた太一は、弥生と一緒に街に向かっていた。
「本当なの、その話?・・とてもおかしなことになっているとは思えないけど・・・」
「僕も確信があるわけじゃない・・ただそんな気がしてならないんだ・・・」
弥生が疑問を投げかけると、太一は困り顔を見せて答える。
「このまま何もなくて、僕の思い過ごしで終わればいいんだけど・・・」
太一が不安を込めて言葉を投げかけたときだった。
「そこの男、止まれ。」
後ろから声をかけられて、太一と弥生が足を止める。振り返った2人の視線の先には、紅い体色の竜に似た怪人がいた。
「ガルヴォルス・・・!」
「ガルヴォルス?私はイマジン。契約者の望みを叶えるために行動している・・」
緊迫を見せる太一たちに、怪人、ドラゴンイマジンが淡々と答える。
「正義を偽る者の排除が契約者の願い・・お前も、その対象だ・・・」
ドラゴンイマジンが言いかけると、具現化した剣を手にして太一に飛びかかる。
「弥生ちゃん!」
太一が弥生を横に突き飛ばして、ドラゴンイマジンの突進を外させる。同じく横転していた太一は、1つの水晶を取り出していた。
「変身・・・!」
その水晶をベルトにセットする太一。すると彼の体を緑の装甲が包み込んだ。
クリスタルユニットのひとつ「クリス」。標準的な戦闘能力を持つオメガと比べて、クリスは速さに特化した性能となっている。
「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・!」
低く告げる太一が、ドラゴンイマジンに向かっていく。彼が繰り出すパンチを、ドラゴンイマジンがかわしていく。
「お前があのクリスタルユニットの装着者だったとはな・・だがその程度の攻撃では私は倒せないぞ・・」
ドラゴンイマジンが反撃に転ずる。彼が繰り出した爪に切り裂かれて、太一がまとうクリスの装甲から火花が散る。
「くっ!・・速い・・!」
毒づく太一に向けて、ドラゴンイマジンが追い打ちを仕掛ける。太一はとっさにジャンプして、ドラゴンイマジンの攻撃をかわした。
「これじゃやられてしまう・・・クリスレイダー!」
危機感を覚える太一。彼の呼び声を受けて、1台のバイクが駆け付けてきた。
クリスレイダー。クリスユニットの装着者の護衛のために開発された高性能マシンである。クリス同様、速さに特化した性能を備えている。
「これは手ごわそうな相手だ・・しかもガルヴォルスではないようだ・・!」
「気付くのが早いね、クリスレイダー・・力を貸してほしいんだ・・・」
声をかけるクリスレイダーに、太一が呼びかける。人工知能を備えているクリスレイダーは、会話を的確に行うこともできるのである。
「お任せを!私は太一どのの味方ですので!」
答えるクリスレイダーに太一が乗る。彼は装備している剣「クリスセイバー」を手にして、クリスレイダーを走らせる。
一気に加速してドラゴンイマジンに突進を仕掛けるクリスレイダー。だがドラゴンイマジンはジャンプして、クリスレイダーをかわす。
「くっ!」
太一がとっさにクリスセイバーを振り上げるが、ドラゴンイマジンに当たらず空を切る。転回したクリスレイダーが、再び走り込んでいく。
「あまり時間を取っていられるわけではないのでな・・」
ドラゴンイマジンは呟きかけると、剣を具現化して手にする。向かってきた太一の攻撃をかわして、ドラゴンイマジンが彼に斬りつける。
「うわっ!」
クリスの装甲から火花を散らしながら、太一がクリスレイダーから投げ出された。彼は横転してから、すぐに立ち上がって態勢を整える。
「負けるわけにはいかない・・負けたら、弥生ちゃんが危なくなる・・・!」
声を振り絞る太一が、クリスセイバーにベルトの水晶をセットして、力を増していく。
「クリスストラッシュ!」
太一が振りかざしたクリスセイバーから、光の刃が放たれる。ドラゴンイマジンが剣を振りかざして、光の刃を受け止める。
ドラゴンイマジンが力を込めて、光の刃を弾き飛ばした。
「そんな!?」
「クリス、まさかその程度だとは・・」
驚愕する太一に、ドラゴンイマジンが飛びかかる。彼が振りかざしてきた剣に斬られて、太一のまとうクリスの装甲から火花が散る。
「うわっ!」
苦痛の声をあげて横転する太一。彼をまとうクリスの装甲が消失する。
「いけない・・このままでは・・・!」
「これで終わりだ。また邪魔されても困るから、ここで始末させてもらうぞ・・・!」
必死に起き上がる太一にとどめを刺そうと、ドラゴンイマジンが剣を構える。
「やめろ!」
そこへオメガ専用マシン「メガブレイバー」に乗った光輝が飛び込んできた。ドラゴンイマジンがとっさに後ろに下がって、メガブレイバーの突進をかわした。
「太一くん、大丈夫!?」
「光輝くん・・・!」
呼びかける光輝に、太一が声を振り絞る。遅れて良太郎も駆け付けてきた。
「モモタロス、行くよ・・・!」
ドラゴンイマジンを見据えて、良太郎がベルトをセットする。光輝も水晶を手にする。
「変身!」
“Sword form.”
水晶をベルトにセットした光輝と、ライダーパスをベルトにかざした良太郎。2人がそれぞれオメガと電王に変身する。
「仮面ライダー・・」
「オレ・・」
「・・オメガ!」
「・・参上!・・って、マネすんな、オレの決めポーズ!」
それぞれ名乗りを上げたところで、モモタロスが憑依している良太郎が、光輝に文句を言ってきた。2人の名乗りのポーズの最後が同じだったのである。
「マネじゃない!これはオレの考えたポーズだ!」
「ウソつけ!先に考えたのはオレだぞ!だから勝手に使うな!」
ポーズについて口喧嘩を始める光輝と良太郎。
「お前たち、ふざけているつもりなら下がっていろ・・」
そこへ侑斗が前に出て、光輝と良太郎に声をかける。
「そうだ。侑斗の言葉には賛同するが、オレだけでも十分だ・・」
一矢も続けて前に出てきた。彼と侑斗がドラゴンイマジンを見据える。
「変身。」
一矢と侑斗がギガスとゼロノスに変身する。
「オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから・・」
「最初に言っておく!オレはかーなーり、強い!」
一矢と侑斗が高らかに言い放つ。
「どうやらケンカしている場合ではないようだ・・」
「まずはあのドラゴンヤローをブッ倒すのが先だ!」
光輝と良太郎もドラゴンイマジンに振り向く。
「テメェを倒せばいいってことは分かってんだ!一気にクライマックスでいくぜ、いくぜ、いくぜ!」
先陣を切った良太郎が、ソードモードのデンガッシャーをドラゴンイマジンに向けて振りかざす。ドラゴンイマジンも剣を振って、デンガッシャーを受け止めていく。
「電王まで現れるとは・・だが契約者との契約は、正義や仮面ライダーを倒すこと。電王も仮面ライダーに含めてもよさそうだ・・」
「そんなの知るか!テメェはオレにここで倒されるんだからよ!」
淡々と声をかけるドラゴンイマジンに、良太郎が高らかに言い返す。果敢に攻める良太郎だが、ドラゴンイマジンに軽々と攻撃を防御、回避されていく。
「電王の力はその程度なのか?拍子抜けだ・・」
「くっそー!なんて身軽なヤツだ!」
呆れるドラゴンイマジンに、良太郎が不満を口にする。そこへ一矢が前に出て、良太郎を横に突き飛ばしてきた。
「これではいつまでたっても終わらない。オレが終わらせる。」
「ちょっと待て!まだオレが相手をしてんだぞ!」
淡々と言いかける一矢に抗議する良太郎だが、
「無視かよ・・・!」
気にせずドラゴンイマジンを見据える一矢に、良太郎はただうめくだけだった。
「電王とゼロノス、オメガとギガスまで現れるとは・・これだけの相手をするのはさすがに骨が折れる・・・」
ドラゴンイマジンが光輝たちを見回して、状況を危惧する。
「逃がしはしない!お前を倒し、時間の歪みを消す!」
そんな彼に光輝が高らかに言い放つ。良太郎、侑斗、一矢も臨戦態勢に入っていた。
「光輝・・まさかここにいたとはな・・・」
そのとき、光輝たちの前に竜也が姿を現した。怒りをあらわにした竜也が、光輝たちに向かいながら異形の怪物へと変身していった。
竜の姿に似たドラゴンガルヴォルスとなった竜也が、光輝に右手を突き出してきた。
「こんなときに!」
うめく光輝が竜也の右手をかわし、距離を取ろうとする。だが竜也はさらに光輝に詰め寄って追撃を仕掛ける。
「やめるんだ、竜也くん!こんなことをしている場合ではない!」
「うるさい!お前を倒すことで、偽りの正義を滅ぼすことができる!」
呼びかける光輝だが、竜也は聞こうとしない。
「モモタロス、あのイマジンを止めてくれ!竜也くんはオレが食い止める!」
「指図されるのは気に入らねぇが、オレの手柄になるからよしとするか・・!」
光輝の呼びかけを受けて、良太郎がドラゴンイマジンに向かっていく。
「おっしゃあ!いくぜ、いくぜ、いくぜ!」
良太郎が気合を入れて、ソードモードのデンガッシャーを振りかざす。ドラゴンイマジンがデンガッシャーを剣で受け止めていく。
「契約者まで現れるとは・・こんなことで契約を破られるわけにはいかない・・・!」
危機感を感じたドラゴンイマジンが、剣を振りかざして良太郎を引き離す。すかさず彼は飛び上がり、姿を消していった。
「おい、コラ!逃げんのか!?ちゃんとオレと戦え!」
良太郎が叫ぶが、ドラゴンイマジンが戻ってくることはなかった。呼びかける光輝だが、竜也は聞こうとせず、怒りのままに攻撃を続ける。
「お前を倒すことで、偽りの正義を滅ぼせる・・それは今も間違ってはいない!」
「やめるんだ、竜也くん!今はこんなことをしている場合ではないんだ!」
竜也が放った両手の突きが、光輝を突き飛ばした。追撃を仕掛けようとした竜也だが、侑斗が「ボウガンモード」となったゼロガッシャーを発射してきた。
「口で言っても分からないから、無理矢理止めるしかないだろ・・」
「邪魔をするなら、お前も容赦しないぞ・・・!」
強気に言いかける侑斗に、竜也が振り返る。
「それなら全然構わないぞ。後悔しないように倒してやる・・!」
侑斗の強気な態度に怒りを膨らませる竜也。向かってきた竜也を、侑斗はゼロガッシャーをサーベルモードにして迎え撃つ。
だが怒りを増した竜也の力に、侑斗が押されていく。
「くっ!予想以上に力のあるヤツだ・・スピードも加わって、厄介になっている・・・!」
竜也の力に毒づく侑斗。竜也の繰り出したパンチが、侑斗のまとうゼロノスの装甲に叩き込まれて火花を散らす。
「このままでは侑斗くんがやられてしまう・・メガブレイバー!」
光輝の呼びかけを受けて、オメガ専用マシン「メガブレイバー」が駆け付けてきた。
“おー!何だか面白そうだー”
そのとき、リュウタロスが良太郎に憑依しているモモタロスを追いだし、良太郎に憑依してきた。
“Gun form.”
ガンフォームへと変身した良太郎が、光輝が乗る前にメガブレイバーに乗りこんでいった。
「何をするんだ!?オメガである光輝ではなく、君が乗ってくるとは・・!」
「だって面白そうなんだもん♪このまま走るけどいいよね?答えは聞かないけど♪」
抗議の声を上げるメガブレイバーを乗り回そうとする良太郎。彼はそのまま侑斗と竜也の攻防に向かっていく。
侑斗に攻撃を加えようとしたとき、竜也は良太郎とメガブレイバーに割りこまれて妨害される。
「どいつもこいつも・・オレの邪魔をするな!」
怒りを爆発させて叫ぶ竜也。彼から膨大なエネルギーが放出され、光輝たちが緊迫を覚える。
さらに振動だけでなく、空にも歪みが生じた。侑斗はその歪みが、時間の歪みであると気付いた。
「まずいぞ!すぐにここから離れろ!」
「侑斗くん!?」
侑斗の呼びかけに光輝が声を上げる。
「ヤツの怒りで次元の壁が裂ける。裂け目にのまれれば、時の亡者となってしまうぞ!」
「それはまずいじゃないか!早くもう1度クリスにならないと・・!」
侑斗の言葉を聞いて、太一が慌てて弥生に駆け寄る。
「変身・・・!」
太一がベルトに水晶をセットして、クリスに変身する。一矢と侑斗も次元の歪みから退避していった。
だがメガブレイバーに乗っていた良太郎は、次元の穴の出現によって大きく揺さぶられていた。穴はまさにブラックホールで、中にあらゆるものを吸いこもうとしていた。
「このままでは良太郎くんが・・・メガブレイバー、スピードフォーム・・!」
光輝が呼びかけようとしたとき、良太郎がメガブレイバーから離れて跳ね上げられた。
「良太郎くん!」
光輝が慌てて良太郎を追いかける。2人は次元の穴に吸い込まれて、空中に浮かび上がる。
「光輝くん!」
「野上!」
太一と侑斗が呼びかけるが、光輝と良太郎が次元の穴へと吸い込まれていく。その瞬間、良太郎に憑依していたリュウタロスが抜け出て、電王が素体形態「プラットフォーム」になってしまう。
光輝と良太郎が吸い込まれ、直後に次元の穴が塞がれてしまった。
「しまった・・野上たちが時間の狭間に放り出されてしまった・・・!」
この事態に侑斗が危機感を覚える。
「光輝くんたちは、どうなってしまったんだ・・・!?」
「2人は時間の狭間に放り出されてしまった・・デンライナーやゼロライナーといった時の電車でも走行が困難な、嵐のような空間だ・・その狭間からどの時代に投げ出されるのか分からない・・最悪ずっと狭間の中をさまよって、時の亡者になるか、狭間の中でバラバラになってしまうか・・・!」
問い詰めてくる太一に、侑斗が声を振り絞るように説明する。
「大変ではないですか!すぐに追いかけないと・・!」
「そうしようとしても、狭間のどこにいるのかも分からないんだぞ・・無限の広さの中から、野上たちを見つけ出すことはほぼ不可能だ・・」
声を上げる弥生に侑斗が言葉を返す。光輝と良太郎を助けようとしても、逆に状況を悪化させかねないと、侑斗は危険視していた。
「そういえば、竜也の姿が見えないな・・」
そこで一矢が口を挟んできた。太一と侑斗が視線を移して、竜也の姿もないことに気付いた。
「いつの間に逃げたのだ?・・何にせよ、また現れたら今度こそオレが倒すが・・」
「いや、海道竜也くんがどこかに立ち去った様子はなかった・・もしかしたら、彼も次元の穴に入っていったのかもしれない・・」
淡々と答える一矢に続いて言葉をかけたのは、メガブレイバーだった。
「それに、光輝の居場所なら察知することができる。私が時の電車の走る空間に赴けば・・」
「お前、2人の居場所が分かるのか・・・!?」
メガブレイバーの言葉に侑斗が声を荒げる。
「デンライナーにもこのことを伝えるんだ!うまくいけば乗せてくれるかもしれない!」
オメガユニットの位置をキャッチできるメガブレイバーを頼りに、侑斗たちは光輝と良太郎の捜索を開始するのだった。
良太郎から弾きだされたリュウタロスが、デンライナーに戻ってきた。
「お、おい!どうしたってんだよ!?」
食堂車のテーブルの上に転がり込んできたリュウタロスに、モモタロスが声を荒げる。
「そんなこと僕にも分かんないよ!いきなり良太郎から追い出されたんだよ!」
「追い出されただって!?・・もしや、時間の狭間に投げ出されたから・・・」
言い返すリュウタロスの言葉に、ウラタロスが呟きかける。
「オレたちが入れねぇ状態になってるってことかよ・・やべぇ!このままじゃ良太郎が・・!」
「その心配はいらない。野上には吉川光輝がついている・・」
緊迫するモモタロスに声をかけてきたのは、デンライナーに乗ってきた侑斗だった。一矢と太一もデンライナーに乗り込んできていた。
「オーナー・・オーナーが許可してくれるなら、野上と吉川光輝を追跡することができる・・・」
侑斗がオーナーに振り向き、声をかけてきた。
「それは、メガブレイバーが光輝くんを探させるというものですね・・いいでしょう・・これは時間の歪みを止めるためにも、必要不可欠ですので・・」
「感謝する、オーナー・・メガブレイバーをデンライナーに・・」
オーナーの了承を受けた侑斗が呼びかけると、ハナが頷く。メガブレイバーを頼りに、デンライナーとゼロライナーは光輝と良太郎の捜索に出るのだった。