仮面ライダーマックス
第47話「エックスビース壊滅!」
ノゾム、ソウマ、シゲルの同時キックを、ジンキが闇で迎え撃つ。
「滅びろ、我が支配に逆らうビーストライダー・・たとえ強い力を得ようと、私に刃向かうことは許されない・・!」
「何度も言わせるな・・オレはお前たちの思い通りにはならない!」
互いに鋭く言い放つジンキとノゾム。ノゾムがソウマ、シゲルとともに足に力を込める。
「私の力が押されるなど・・あり得ない・・私が破れるなど、決して認めん・・・!」
ジンキがノゾムたちのキックに押されて、いら立ちをふくらませる。その意思に反して、彼の体にキックが叩き込まれた。
「がはっ!」
ノゾムたちのキックに突き飛ばされて、ジンキがうめく。彼は力を振り絞って踏みとどまって、ノゾムたちに鋭い視線を向ける。
「コイツ・・オレたちのこれだけの攻撃を受けても倒れないなんて・・!」
「エックスビースのボスで、自分を支配者なんて言い張るだけのことはあるな・・!」
ジンキの底力を目の当たりにして、ソウマとシゲルが毒づく。
「関係ない・・思い上がる敵は、誰だろうと何だろうと、必ずブッ倒す・・!」
ノゾムは敵への怒りを絶やさず、ジンキに鋭い視線を返す。
「お前たちを野放しにはできないが・・私が倒れるわけにはいかない・・次に会うときが、お前たちの最期だと思え・・・!」
ジンキが声を振り絞ると、闇を拡散させて姿を消す。
「逃げるな!」
ノゾムが叫んで、突っ込んで闇を振り払う。しかしその先にジンキはいなかった。
「逃げ足も速いのかよ・・だけど、ここまで追い詰めたんだ・・すぐには派手に動けないはずだ・・!」
ソウマがジンキに対してため息をついてから、ノゾムに言いかける。
「だとしてもこのまま逃がしてたまるか!すぐに追いかける!」
怒りの治まらないノゾムは、ジンキを追いかけようとした。
「うっ・・!」
そのとき、ノゾムが体に痛みを感じて、その場に膝をつく。
「ノゾム!?」
シゲルが声を上げて、ソウマと一緒にノゾムを支える。
「ノゾム、しっかりしろ!」
「大丈夫か!?」
ソウマとシゲルが呼びかけて、ノゾムが小さく頷く。
「エクシードの力を使いすぎたみたいだな・・ビースターの力に囚われて暴走することはなくなったけど、それでも体力の消耗は大きいのは変わんないってことか・・」
呼吸を乱しているノゾムの様子を見て、シゲルが呟く。
「こりゃ1回出直したほうがよさそうだな・・悔しいけど、このまま行っても返り討ちにされるのがオチだ・・」
「その間に、アイツが何か悪さをしなきゃいいけどな・・・!」
シゲルが呼びかけて、ソウマが不安を口にする。ノゾムもいら立ちを抱えたまま、1度引き返すことにした。
ノゾムたちに返り討ちにされて、ジンキはいら立ちをふくらませていた。人の姿に戻った彼は、エックスビースの本部施設を目指していた。
「神奈ノゾム、このままでは済まさんぞ・・次こそは必ず、ヤツらからベルトとカードを取り戻す・・・!」
ノゾムたちへの憎悪をたぎらせて、ジンキは次の攻撃に備えた。
そのとき、ジンキは気配を感じて足を止めた。
「この力・・霧生ユウキか・・・」
ジンキが呟いて振り返る。彼の前にユウキが現れた。
「エックスビースの親玉・・お前を倒せば、エックスビースは全滅になる・・・!」
「何?・・本部、応答しろ!」
ユウキが低く告げて、ジンキが通信機に呼びかける。しかし誰も応答しない。
「まさか貴様、本部を攻撃したのか・・・!?」
ジンキがユウキに鋭い視線を向ける。ユウキもジンキに対して目つきを鋭くしていた。
「お前たちも、この世界を狂わせている元凶・・オレが1人残らず叩きつぶす・・・!」
「貴様も私の支配を阻もうとするというのか・・・!?」
互いに敵意をむき出しにするユウキとジンキ。2人がそれぞれドラゴンビースター、ダークビースターに変身した。
「貴様も神奈ノゾムと同様、必ず排除しなければならない・・・!」
「倒されなければならないのは、お前のほうだ・・!」
ジンキとユウキが同時に飛び出して、力を込めたパンチを繰り出す。パンチがぶつかり合うが、ジンキが力負けして押される。
「ノゾムと戦ったときのダメージが残っているというのか・・いや、それだけでなく、ヤツの力も上昇している・・・!」
ジンキが劣勢を痛感して、ユウキを見て毒づく。
「私は倒れるわけにはいかない・・この愚かな世界を正せるのは、私しかいない・・!」
ジンキが声と力を振り絞って、全身から闇を放出する。
「オレは闇を恐れない・・セイラやオレたちみたいに、理不尽に振り回されるのはもう増やしてはならない!」
ユウキがセイラのことを思って、全身に力を込める。彼の姿が刺々しいものとなる。
「お前を倒して、エックスビースを終わらせる!」
ユウキが言い放って、ジンキに向かって突っ込む。闇に止められるが、ユウキは力を振り絞って押し込んでいく。
「たとえエックスビースが滅びても、私の支配が崩壊することはない・・私こそが真の支配者だからだ!」
ジンキが自分の意思と野心を口にする。彼が闇に力を注いで、ユウキを押し返そうとする。
「誰の支配ももうたくさんだ・・オレが、全ての身勝手を世界から排除する!」
ユウキが力を込めて、闇を押し込んでいく。しかしユウキの高まる力に、逆に押されていく。
そしてついに、ユウキの突撃がジンキの闇を打ち破った。
「バカな!?」
驚きの声を上げるジンキに、ノゾムが具現化した剣を振りかざした。
「がはっ!」
ジンキが絶叫を上げて、崩れ落ちるように膝をついた。
「私はまだ・・倒れるわけにはいかない・・私が倒れたら、世界は愚かさを増すばかり・・・!」
声を振り絞るジンキだが、ユウキに剣で体を貫かれた。
「お前たちがいるほうが、世界は愚かになっていくんだ・・・!」
ユウキが低く告げて、剣を引き抜いた。力尽きたジンキが黒い霧のように散って消えていった。
「これで、エックスビースは全滅した・・・」
ユウキは剣を降ろして呟きかける。
「でもまた敵はたくさんいる・・全て倒さない限り、オレたちに安息は来ない・・・」
敵意の炎を絶やさずに、ジンキは歩き出す。全ての敵を倒すことが、今の彼の戦いになっていた。
動物公園に戻ってきたノゾムたちをツバキ、タイチ、ワタル、ワオンが迎えた。
「ノゾム、大丈夫・・・!?」
「あぁ・・ちょっと疲れただけだ・・・!」
ツバキが心配の声をかけて、ノゾムが答える。
「エックスビースのボスは、追い詰めたけど逃げられてしまった・・・」
「かなりダメージを与えたから、しばらくは派手には動けないはずだけど・・・」
シゲルとソウマがジンキのことを話す。
「ユウキさん、本当にどこに行ってしまったのかな・・・?」
ツバキがユウキのことを思い出して、悲しい顔を浮かべる。
「いい加減、連絡ぐらいしてくれたらいいのに・・・」
ノゾムもユウキへの不満を感じ始めていた。
「お兄ちゃん、今日はもう休もう・・ユウキお兄ちゃんを捜すのは、また明日にしよう・・」
ワタルがノゾムを心配して言いかける。
「ワタル・・そうだな・・明日に仕切り直しにするか・・・」
ノゾムがひと息ついて答えて、ワタルの頭を優しく撫でた。
(ビースターの力に耐えられるようにはなったみたいだけど、エクシードの力はあんまり長い時間使うのはよくないみたいだ・・マジでオレたちがサポートしてやらないと・・・)
ノゾムへのサポートをしようと、シゲルはより強く思うようになっていた。
翌日。休息のために眠りについていたノゾム。目を覚ましたところで、タイチが慌てて飛び込んできた。
「タイチ・・どうした?・・ユウキが帰ってきたか・・・?」
「そうじゃないけど・・大変なんだよ!エックスコーポレーションが・・エックスビースが炎上したって!」
目をこするノゾムに、タイチが説明をする。
「エックスビースが・・!?」
ノゾムがベッドから飛び起きて、TVのスイッチを入れてニュースを見た。エックスコーポレーションの炎上、壊滅のニュースで持ちきりになっていた。
「施設も本社も中がムチャクチャになっていたそうなんだ・・コーポレーションの社員たちはみんな殺されていて・・」
タイチがニュースになっていることを、ノゾムに語りかける。
「ビースターのことはエックスビースが隠してきたけど、そのエックスビースがこんなことになっちゃ・・」
「隠すヤツらがいなくなって、隠せるものも隠せなくなったってことか・・・」
タイチが投げかけた言葉に、ノゾムがため息まじりに答える。
「エックスビースのことも、コーポレーションがそれとビースターに関わっていたことも、まだみんなは知ってはいないみたいだけど・・・」
「これでビースターが好き勝手なことがやりづらくなるわけか・・」
タイチが話を続けて、ノゾムが呟きかける。
「オレたちの周りで勝手なマネをしてくるヤツがいたら、オレがブッ倒すだけだ・・・!」
「それがビースターでも、人間でも、か・・」
ノゾムの決意を聞いて、タイチが彼の意思を悟って笑みをこぼす。
「みんなのところに行く。顔を出しておかないと・・」
「僕も一緒に行くよ。みんなもこのニュース聞いて、落ち着いてないから・・」
ノゾムが歩き出して、タイチも一緒についていった。
ノゾムたちがツバキたちと合流した。ツバキたちもエックスビースのニュースを聞いて、複雑な気分を感じていた。
「ノゾム、エックスビースが・・・」
「あぁ。タイチから聞いた・・」
ツバキが声をかけて、ノゾムが小さく頷く。
「だけど誰がエックスビースを・・ジンキが倒れたなら分かるけど、エックスビースそのものには、昨日はオレたちは乗り込んじゃいない・・」
「まさか、ユウキくんがエックスビースを滅ぼしたのでは・・・!?」
ソウマが言いかけて、タツヤがユウキのことを考える。
「こりゃ、ちょっと調べたほうがよさそうかもな・・」
シゲルが言いかけて、ノゾムたちが真剣な顔で頷いた。
「私はもう大丈夫だ。一緒に行かせてくれ・・」
タツヤがノゾムたちに、一緒に行くことを告げる。
「オレは構わない・・助かるよ・・」
ノゾムが答えてタツヤに微笑みかける。
「やれやれ・・猫の手を借りたいってこのことなのかもな・・」
ソウマが小声でつぶやくと、シゲルが気まずさを感じて軽くこつく。
「善は急げだ。早く行こうぜ。」
シゲルが呼びかけて、ノゾム、ソウマ、タツヤとともにエックスビースの本部施設のほうへ向かった。
「僕たちは家で待っていよう、ツバキちゃん、ワタルくん・・」
「うん・・」
タイチが呼びかけて、ツバキとワタルが頷く。3人とワオンは家に戻って、ノゾムたちの連絡とユウキの帰りを待つことにした。
炎上していたエックスビースの本部施設は、燃え尽きて建物も中の機材もほとんどなくなっていた。
「ホントに燃えてなくなっちまったな・・」
シゲルがエックスビースの跡地を見つめて呟く。
「そこからビースターの気配は感じられない・・施設を調べている人たちの中にもだ・・」
「ホントに全滅したってことなのか・・」
タツヤが感覚を研ぎ澄ませて言いかけて、ソウマがため息をついた。
(オレたちじゃない。他の誰かがこんなことをしたのは確かだ・・やっぱり、ユウキがやったのか・・・!?)
ノゾムが考えを巡らせて、ユウキのことを気に掛ける。
そのとき、タツヤが気配を感じて緊張を覚える。
「どうしたんだ、タツヤさん?」
シゲルがタツヤに振り向いて声をかける。
「ビースターの気配だ・・しかもこの感じは・・ユウキくん・・!?」
「えっ・・!?」
タツヤの言葉を聞いて、ノゾムたちが声を荒げる。
「どこだ!?どこにいるんだ!?」
「街のほうだ・・そんなに遠くはない・・!」
ソウマが問いかけて、タツヤが気配のする方に振り返った。
「ユウキ・・どこをほっつき歩いているんだか・・!」
ノゾムは愚痴をこぼして、その方向へ走り出した。
「ノゾム!」
ソウマが声を上げてシゲル、タツヤと一緒にノゾムを追いかけていった。
高速道路の真ん中で、多数の車が転倒、停車していた。その中で数人が倒れて動かなくなっていた。
「何だよ・・チンタラ走ってるアイツらが悪いのによ・・!」
運転手の男の1人が悲鳴を上げる。彼の眼前にいたのは、ドラゴンビースターとなっているユウキだった。
「だからって追い回したり邪魔したりしていいことにはならない・・そんなことしたら相手も他の人も危険になることが分からないのか・・!?」
ユウキが男に向かって鋭く言いかける。
「向こうがチンタラしてなきゃそれでよかったんだよ!だからオレがアイツらにバカさ加減を教えてやったんだよ!」
男が感情をあらわにして言い放つ。するとユウキが彼の胸ぐらをつかんで持ち上げた。
「そんなマネのほうが馬鹿げているんだよ!」
激高したユウキが手に力を込める。男の首が曲がって、腕がだらりと下がる。
「どうして・・悔い改めようとしない・・・!?」
自分勝手な人への怒りを感じて、ユウキが男を地面に落とした。
「ユウキくん!」
そこへタツヤがノゾムたちと一緒に駆けつけて、ユウキに呼びかけた。タツヤが周りに倒れている人々を見て、目を見開く。
「ユウキくん・・まさか、君がこの人たちを・・・!?」
「身勝手な考えをしたヤツばかりだ・・こんな連中は消えたほうがいい・・・!」
タツヤが問いかけると、ユウキが怒りを口にする。
「お前・・心もバケモノだったってことなのか・・!?」
ソウマが怒りを覚えて、ユウキに鋭い視線を向ける。
「ビースターも人間も関係ない・・本当のバケモノは、自分たちのことしか考えず、自分たちは間違いをしていることを全く思っていないヤツらのことをいうんだ!」
怒りをさらにたぎらせて、ユウキが言い放つ
「その身勝手な敵を叩き潰していたのか、ユウキ・・・!?」
ノゾムが低い声で、ユウキに問い詰めてきた。
「ここにいる人、みんな敵なのか?・・関係ない人まで巻き込んでいるんじゃないのか・・・!?」
ノゾムが続けて言うと、シゲルとタツヤが思わず息をのむ。
「早く敵を滅ぼさないとならない・・そうしなければ悲劇がまた起きることになる・・!」
「だからって罪のない人まで巻き込んでいいことにはならないだろうに・・!」
声を振り絞るユウキに、シゲルが苦言を口にする。
「もはや行動を起こさなければ、世の中は身勝手が正しいことにされたままだ・・その間違いを、オレが正すんだ・・!」
「ふざけるな!自分勝手なのはお前のほうだろうが!」
強い意思を示すユウキに、ソウマが怒りを覚える。
「やっぱりビースターは許しちゃおかない存在だ・・人間の命を平気で壊すバケモノだ!」
“フォックス!”
ユウキに怒号を放って、ソウマがフォックスカードを取り出して、ビースドライバーにセットした。
「待ってくれ、ソウマくん!ユウキくんと戦うつもりか!?」
「出しゃばるな!ビースターの言葉は聞かない!」
タツヤが呼び止めるが、ソウマは怒鳴り声を返した。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
ソウマがビースドライバーの左上のボタンを押して、フォックスに変身した。
「ビースターは倒す・・1人残らず!」
「そうやってオレたちを悪者だと決めつける・・それが何もかもおかしくしているのが分からないのか!」
敵意をむき出しにするソウマにも、ユウキが怒りの矛先を向ける。2人が同時に飛び出して、攻撃を開始した。
スピードを上げてパンチとキックを繰り出すソウマ。ノゾムは翻弄されることなく、防御でソウマの攻撃をかいくぐる。
「おい、ソウマ、ユウキ、やめろって!一緒に敵と戦ってきた仲だろうが!」
シゲルが感情をあらわにして、ソウマとユウキを呼び止める。しかし2人とも戦いをやめない。
「ビースターは人を傷付けるバケモノ!オレにとってバケモノは、敵でしかない!」
「そんな考えがオレたちを追い込んで・・セイラを殺したんだ!」
互いに怒りの声を言い放つソウマとユウキ。ユウキが繰り出したパンチが、ソウマの体に命中した。
「ぐっ!」
ソウマが突き飛ばされて、地面を転がる。彼がすぐに立ち上がって、ユウキに鋭い視線を向ける。
「どいつもこいつも、オレをイラつかせる・・・!」
ノゾムがいら立ちを浮かべて、マックスカードを取り出した。
“マックス!”
彼がビースドライバーにマックスカードをセットした。
「ノゾムくん、君まで戦うつもりなのか・・!?」
タツヤが声を上げるが、ノゾムは聞かずにソウマとユウキのほうへ歩いていく。
「変身・・!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
彼がマックスに変身して、交戦している2人に近づいた。
「ノゾム・・!?」
ノゾムの乱入にソウマが身構える。ユウキもノゾムにも警戒を見せていた。
「お前たち、いい加減にしろよ・・オレの前で何を戦っているんだよ・・!」
ノゾムがソウマとユウキに呼びかける。ノゾムは2人が戦うことをよく思っていないわけではなく、自分の見ている前でそれをされることに腹を立てていた。
「邪魔をしないでくれ、ノゾム!君だって、身勝手な人を許せないと考えているじゃないか!」
ユウキが激情を込めて、ノゾムに呼びかける。
「だからって、オレは関係ない他のヤツを巻き込むつもりになってないし、そんなことをしたら気分が悪くなってくる・・!」
「他の人だって悪くないわけじゃない・・敵を野放しにするばかりか、言い訳を付けて従うヤツもいる・・こんな世の中、変えなければならないんだ!」
他人を巻き込んで平気でいようとしないノゾムに、ユウキがさらに怒りを口にする。
「このふざけた世の中の、ふざけた人が、セイラの命を奪ったんだ!セイラは、オレたちは何も悪いことをしていないのに!」
「ユウキ・・・!」
敵への憎悪とセイラへの悲しみをふくらませるユウキに、ノゾムが心を揺さぶられていた。
「ビースターは人の命を奪って平気でいる・・お前もそのバケモノの1人なんだよ!」
ソウマがユウキを指さして言い放つ。
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーの左上のボタンを2回押して、ソウマがユウキに向かって走り出して、ジャンプキックを繰り出す。
ユウキが力を込めた右手を振りかざして、ソウマのキックをなぎ払った。
「ぐおっ!」
ソウマが横に突き飛ばされて、道路を大きく転がる。ダメージを受けた彼のフォックスへの変身が解けた。
「ソウマ!」
倒れたソウマにシゲルが駆け寄る。ノゾムとユウキが互いに目を向け合って、鋭い視線を向け合う。
「君は自分の信念を絶対に曲げない。どんなムチャクチャにも逆らい続けることを、オレも知っている・・」
ノゾムの言動を思い返して、ユウキが物悲しい笑みを浮かべる。
「だけど、それはオレも同じ・・もしも邪魔をしてくるなら、オレは君にも容赦しない・・・!」
「ユウキ・・オレとも戦うつもりでいるのかよ・・・!?」
揺るぎない意思を示すユウキに、ノゾムが言い返す。2人のすれ違いが大きくなり始めていた。
そのとき、事件の通報を受けたパトカーと救急車のサイレンが響いてきて、ノゾムたちの耳に入ってきた。
「誰にも邪魔はさせない・・オレは、敵を滅ぼす・・・!」
ノゾムたちに怒りを伝えて、ユウキはこの場から走り出した。
「ユウキ!」
ノゾムが呼び止めるが、ユウキは止まることなく去っていった。
「アイツ・・・!」
「ノゾム、オレたちも1度離れるぞ・・!」
いら立ちを噛みしめているノゾムに、タツヤが呼びかける。ノゾムがソウマに肩を貸したシゲルとともに頷いて、高速道路を後にした。
ノゾムたちと対峙したユウキは、彼らのことを考えて苦悩を感じていた。
(ノゾムたちとも戦うことになってしまった・・それでも、オレは敵と戦わないといけないんだ・・・!)
自分に言い聞かせて迷いを振り切ろうとするユウキ。しかし込み上げてくる苦悩は深まるばかりだった。
(セイラ、君を傷付けた敵を、オレはどうしても許すことができない・・だから戦う・・どんな相手でも・・・!)
セイラを想うことで決意を固めようとするユウキ。彼は手を強く握りしめて、敵を追い求めて歩き出した。
ユウキと対峙したノゾムたちが、ツバキたちの待つ動物公園に戻ってきた。
「ノゾム、エックスビースは・・・?」
ツバキが不安を感じながら、ノゾムたちに声をかける。
「エックスビースは壊滅してた。警察が調べていた・・」
「それと、さっきユウキくんに会った・・・」
その問いにシゲルが答えて、タツヤがユウキのことを打ち明けた。
「えっ!?ユウキくんに会ったの!?」
「あぁ・・だけどアイツ、敵を徹底的に排除しようと考えるようになっていた・・・」
タイチが声を上げると、タツヤが深刻な顔を浮かべた。
「セイラさんを殺された怒りに駆られて行動している・・敵を倒すために、半ば見境を失くしている様子だった・・・」
「そんな・・ユウキさんが、そこまで・・・!」
タツヤの話を聞いて、ツバキが激しく動揺する。
「どうしたらいいのか、オレには分からない・・ただ・・・」
ノゾムもユウキのことを考えて言いかける。
「もしもオレたちに何かしてくるなら、オレは容赦しない・・・!」
「ノゾム・・あなたとユウキさんが戦うのは、避けられないの・・・!?」
怒りを噛みしめるノゾムに、ツバキが問いかける。
「それは、アイツ次第だ・・・!」
ノゾムは低く言うと、ツバキたちの前から1人歩き出した。
「ノゾム・・・」
ノゾムとユウキのことを心配して、ツバキも苦悩を深めていた。