仮面ライダーマックス

第46話「ジンキの仁義!」

 

 

 ララとビートルビースターの一団が倒された知らせは、ジンキの耳に届いた。

「ララまで倒されたのか・・勝手に神奈ノゾムと戦うとは・・・!」

 ララが独断でノゾムたちに戦いを挑んだことに、ジンキが肩を落とす。

「私が出向かなければならない、確固たる理由ができたようだ・・」

 ジンキは目つきを鋭くして、席を立つ。

「神奈ノゾムと仲間の監視を徹底しろ。死にたくなければ戦いを仕掛けるな。」

“了解しました。”

 ジンキが通信機で命令を下して、部下が応答した。

(私がベルトとカードを取り戻す・・私の全てと、このエックスビースを賭けて・・・!)

 ノゾムたちを全力で倒すことを、ジンキは心に決めていた。

 

 ララたちを倒したノゾム、ソウマ、シゲルだが、ユウキを見つけることはできなかった。別荘にも帰ってこないユウキを、ツバキ、タイチ、ワタルは心配していた。

「ユウキさん、どうしたっていうんだ・・・!?

「セイラお姉ちゃんだけじゃなく、ユウキお兄ちゃんまでいなくなったら・・・!」

 タイチとワタルが不安を感じて、いてもたってもいられなくなる。ツバキもユウキのことを思って、悲しみに暮れる。

「アイツも意地の強いヤツだ・・そう簡単にやられるわけがない・・・」

 ノゾムがツバキのそばに来て声をかける。

「ノゾム・・・うん。そうだね・・私たちが信じなくてどうするって感じだよね・・」

 ノゾムに励まされて、ツバキが微笑んで頷いた。

「オレのやることはユウキを見つけることと、エックスビースをぶっ潰すことだ・・・」

「ノゾムくん・・・」

 自分の考えを口にするノゾムに、タツヤが戸惑いを覚える。

「もうこれ以上、オレの大切なものを壊されてたまるか・・・!」

 エックスビースへの怒りを噛みしめて、ノゾムが両手を強く握りしめていた。

 

 路地裏で数人の女子たちに囲まれる男子。彼は言うことを聞くように脅されていた。

「ずべこべ言わずにさっさと買ってこいよ。きっちり人数分さ。」

「でも・・僕のお金だけじゃ全部買えないよ・・」

 買い物を要求する女子に、男子が言い返す。

「は!?まさかあたしらに金出せっていうのか!?

「金がねぇならどっかから持ってくりゃいいんだよ!ちっとは頭使え!」

 女子たちが不満を浮かべて、男子に怒鳴りかかる。

「それとも痛い目みねぇと分かんねぇっていうのかよ!?

 女子の1人に胸ぐらをつかみあげられて、男子が怯えてしまう。

 そのとき、女子たちに近付いてくる足音が響いてきた。彼女たちの前に現れたのは、ドラゴンビースターになっているユウキだった。

「な、何だ、お前は!?

「もしかして、ネットで噂になってるバケモノじゃ・・!?

 女子たちがユウキを見て緊張と恐怖を覚える。

「お前たち・・そいつに何かさせて、自分たちは安全なところでいい気になるつもりか・・・!?

 ユウキが女子たちに向かって、鋭く問い詰める。

「や、やべぇ!早く逃げろー!」

「おい、アイツを足止めしろ!絶対に追わせるんじゃねぇぞ!」

 女子たちが男子をユウキに押し付けて、自分たちだけで逃げ出す。ユウキは受け止めた男子を軽く受け流すと、素早く動いて女子たちの前に回り込んできた。

「他のヤツを盾や身代わりにして、自分たちだけで逃げる・・自分たちさえよければそれでいいという身勝手なヤツらが・・!」

「何わけ分かんねぇことぬかしやがる!?

「バケモノのくせに、あたしらに説教たれんな!」

 鋭く言いかけるユウキに、女子たちが怒鳴りかかる。

「確かにオレの体はバケモノだ・・だが・・・!」

 ユウキが言いかけて、剣を具現化して構える。

「お前たちはそのバケモノを大きく超えるクズだ・・・!」

 ユウキが剣を振りかざして、女子たちを切りつけた。

「キャアッ!」

 女子たちが悲鳴を上げて、次々に倒れて動かなくなった。怖がって震えている男子の前に、ユウキが歩み寄った。

「これで、世の中を狂わせるゴミがまた消えた・・・」

「ひ・・ひぃぃ!」

 呟きかけるユウキに怯えて、男子は悲鳴を上げて逃げ出していった。

(このまま敵を潰していけばいい・・たとえオレを認めなくても、何もバカなことをしなければそれで・・・)

 人の姿に戻ったユウキが、心の中で思いを呟く。

(セイラ・・世界が愚かなことにならないように、オレは戦う・・戦い続ける・・・!)

 固まった決意を確かめて、ユウキは次の敵を追って歩き出した。

 

 エックスビースのビースターたちとの長い戦いから戻ったノゾムたち。体を休めていた彼らだが、ユウキやエックスビースのことを考えて、気分のほうは休まらなかった。

 そんなノゾムのそばに、ツバキが歩み寄った。

「ノゾム、しっかり休んだほうがいいよ・・・って、言ってもムチャだよね・・私だって心配だよ・・ユウキさんのことも、ノゾムのことも・・」

「オレが・・・?」

 励ましの言葉を送るツバキに、ノゾムが疑問を投げかける。

「ビースターの力に負けないようにはなったけど・・それでも、戦いで傷ついたり命を落としたりするんじゃないかって、考えてしまうことがあるの・・・」

「オレはそんなことにはならない・・そうなったらオレとしても終わりだし、ツバキもタイチも、みんなにとってもイヤな気分になってしまう・・・!」

 心配をふくらませるツバキに、ノゾムが自分の意思を貫き続ける。

「だけど、ツバキやみんなからそう言われて、オレは心が安らぐ・・ありがとうな・・」

「ノゾム・・こっちこそありがとうね・・・」

 ノゾムが感謝して、ツバキが笑顔を見せた。

「これで何とか落ち着けそうだ・・明日からまた忙しいぞ・・・」

 ノゾムが言いかけて、窓から外を見つめた。

(今度こそ終わらせてやる・・エックスビースの身勝手を・・!)

 エックスビース打倒を、ノゾムは改めて決意していた。

 

 夜の街道を1人歩くジンキ。彼は自らベルトとアニマルカードを奪おうと、エックスビースから外へ出ていた。

(神奈ノゾム、お前たちビーストライダーとの戦いも次で最後だ。お前たちも私の支配に屈することになる。)

 ノゾムたちとの決着を思い描くジンキ。

(私には力がある。全てを支配することのできる絶対的な力が。己の無知と無力を棚に上げて思い上がっている愚か者たちは、私の支配に屈するのが摂理だ。)

 自分が全ての中心にあると確信しているジンキ。

(ビーストライダー、お前たちも例外ではない。)

 ノゾムたちへの敵意を宿して、ジンキは街道を通った。

 

 夜が明けて、ノゾムたちは動物公園の近くの道に足を運んでいた。

「ユウキさんはまだ戻ってきてない・・連絡も全然ないよ・・」

 タイチがユウキのことを話して、ノゾムがため息をつく。

「タツヤさん、アンタはもういいのか?」

「あぁ。十分休めた。タイチくんたちのおかげだよ・・」

 シゲルが問いかけて、タツヤが答えて感謝した。

「私が感覚を研ぎ澄ませて、ユウキくんの居場所を探る・・ユウキくんに何か動きがあれば、感じ取れるはず・・」

 シゲルが言いかけて、ノゾムが小さく頷いた。

「オレがビースターの力をうまく使えていたら・・・」

「ノゾムくん、君はビースターの力に頼らずに、マックスとして戦い続けている。だからムリにビースターの力を使おうとしなくていい・・」

 自分に至らなさを感じているノゾムに、タツヤが呼びかける。

「それに、戦いにおいては、私はこのくらいしかできないから・・」

「そんなことないですよ、タツヤさん!・・タツヤさんが力を貸してくれなかったら、ノゾムは目を覚まさなかった・・・」

 話を続けるタツヤに、ツバキが謝意を示す。

「あぁ・・みんながいなかったら、オレはこうしてここにいなかった・・・」

 ノゾムが微笑んで、タツヤに頷いた。

 そのとき、タツヤが気配を感じ取って緊張を浮かべた。

「どうしたんですか、タツヤさん・・!?

「感じる・・ビースターの力だ・・・!」

 タイチが声をかけて、タツヤが声を振り絞る。

「もしかして、ユウキさんが戻ってきた・・・!?

「違う・・これは・・・!」

 ツバキが声を上げると、タツヤが答えて振り返る。彼らに向かって歩いてきたのは、ジンキだった。

「黒木ジンキ!?・・エックスビースのトップ自ら出てきた!?

 タツヤがジンキの登場に驚く。ノゾム、ソウマ、シゲルもジンキを見て身構える。

「お前たちの持っているベルトとカード、全て渡してもらおう。」

 ジンキが目つきを鋭くして、ノゾムたちに呼びかける。

「エックスビース・・お前たちにこれ以上、オレたちをムチャクチャにされてたまるか!」

 ノゾムが怒りの声を上げて、マックスカードを手にした。

「ツバキたちはここから離れろ!」

「う、うんっ!」

 ソウマが呼びかけて、ツバキが頷く。彼女はタイチ、タツヤと一緒にノゾムたちから離れた。

「ビースターは滅ぼす・・お前たちもだ!」

 ソウマがジンキに言い放って、シゲルとともにフォックスカード、オックスカードを取り出した。

“マックス!”

“フォックス!”

“オックス。”

 ノゾムとソウマがビースドライバーにマックスカード、フォックスカードをセットして、シゲルがビースブレスにオックスカードをセットした。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

“スタートアップ・オックス。”

 ノゾム、ソウマ、シゲルがマックス、フォックス、オックスに変身した。

「オレの怒りは限界突破!」

「オレの強さは疾風迅雷!」

「オレの力は天下無敵!」

 ノゾムたちがジンキに向かって言い放つ。

「私は全ての支配者。私のすることは世界が進むべき道となる。」

 ジンキが呟いてから、ダークビースターへと変化した。

「何もかも自分の思い通りになる・・その思い上がり、我慢ならない・・!」

 ノゾムがいら立ちを見せて、ジンキに向かって前進する。ジンキも前進して、互いに眼前まで距離を詰めたところで足を止めた。

「私の支配のため、まずはお前たちのベルトとカードを取り戻す・・・!」

 ジンキが鋭く言いかけて、ノゾムに右手を振りかざす。ノゾムは身をかがめてかわして、ジンキにパンチを繰り出す。

 ジンキが後ろに下がって、ノゾムのパンチをかわす。

「私の支配を、お前たちなどに邪魔されるわけにはいかない・・!」

「どいつもこいつも、支配者っていうのは、みんなにどれだけイヤな思いをさせれば気が済むんだよ・・・!」

 自分の意思を貫くジンキに、ノゾムがいら立ちをふくらませる。

「愚か者など、我々の力と支配に簡単に屈服することになる。気にする価値もない。」

「お前というヤツは、どこまで思い上がるつもりだ!」

 あざ笑うジンキに、ノゾムが怒りを爆発させる。彼の力を込めたパンチを、ジンキはジャンプでかわす。

 着地したジンキにソウマとシゲルが向かってきて、足を振りかざしてきた。ジンキが手をかざして2人のキックを受け止めた。

「まずはお前たちのベルトから・・」

 ジンキがソウマたちのベルトに手を伸ばす。そこへノゾムが飛び込んで、キックで背中を押してジンキを突き飛ばした。

「助かった・・アイツ、マジで直接ベルトを狙ってきたか・・!」

 ソウマがひと息ついてから、ノゾムたちとともにジンキに視線を戻した。

「ここはもっとスピードとチームワークが必要になってくるか・・!」

“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”

 ソウマが呟いて、ウルフカードを手にしてビースドライバーにセットした。

「オレも一気にやらせてもらうぞ・・!」

 ノゾムも言いかけて、エックスカードを取り出した。

 そのとき、ノゾムの足元から黒い闇が飛び出してきて、彼の手からエックスカードをはじき飛ばした。

「なっ!?

 突然のことにノゾムが驚く。闇がエックスカードを奪って、ジンキの手元に戻った。

「そう何度もエックスやエクシードのカードを使わせると思っていたか?パワーアップを果たす前に、お前たちを叩く。」

 ジンキがエックスカードを見ながら言いかける。

「このヤロー・・カードを返せ!」

 ノゾムが怒りをふくらませて、ジンキに向かって飛びかかる。だがジンキが発した闇をぶつけられて、ノゾムが押し返される。

「ぐっ!」

「ノゾム!」

 倒れたノゾムにソウマとシゲルが叫ぶ。

「これは元々我々のものだ。返せというのは言い方が違う。」

 ジンキが再びエックスカードに目を向けて、ノゾムたちに言いかける。

「力も全て我々に集約するのが摂理。お前たちも我々と世界のためにその力を尽くせ。」

 ジンキがノゾムたいに向かって言いかける。

「お前の言うことは死んでも聞かない・・お前の思い通りには絶対にならない!」

 ノゾムが怒りをあらわにして、ジンキに向かって言い放つ。

「オレもアンタの言いなりになるのはまっぴらゴメンだな。何でもかんでも決めつけられそうでな・・」

 シゲルも苦笑をこぼして、ジンキに言葉を返す。

「お前たちの意思は関係ない。従うか死ぬか、2つしか選択肢はない。」

「いや、それだけじゃないぞ、選択肢は・・!」

 ジンキが投げかける言葉に、ソウマが言い返す。

 そこへウルフルスロットルが駆けつけて、ジンキに向かってきた。直後にソウマもジンキに向かって走り出す。

“チャージ・ジャッカール!ジャックスピード・ジャックソウル・ジャックジャックジャッカル!”

 ソウマはジャッカルフォルムとなって、さらにスピードを上げた。

 ジンキがウルフルスロットルの突進をかわすが、詰め寄ってきたソウマのキックで、持っていたエックスカードを手放してしまう。

「ノゾム!」

 ソウマがエックスカードをつかんで、ノゾムに向かって投げつける。

“エックス!”

 ノゾムがつかんだエックスカードを、ビースドライバーにセットした。

「もう油断しない・・お前にカードは渡さない!」

 ノゾムが言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを押した。

“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”

 ノゾムがエックスフォルムに変身して、両腕にエックスブレスを装備した。

“エクシード!インフィニットマックス!”

 彼はエックスブレスにそれぞれエクシードカードをセットした。

“チャージ・エクシード!インフィニット・エックス!インフィニット・マックス!ビース・エクシードライダー!”

 ノゾムはさらにエクシードフォルムとなって、ジンキの前に立ちはだかった。

「エクシードになったところで、私の支配を止めることはできない・・・!」

「止める・・これ以上、お前の思い通りにはさせない!」

 ジンキとノゾムが互いに鋭く言いかける。2人が同時に飛び出して、パンチを繰り出して叩きつける。

 ジンキがノゾムの力に競り負けて押される。一瞬劣勢を感じるジンキだが、ノゾムに再び向かっていく。

“エクシードスマッシャー!”

 ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを3回押して、エクシードスマッシャーを呼び出した。ジンキが発した闇を、ノゾムはエクシードスマッシャーを振りかざして切り裂いた。

“エレファントスマーッシュ!”

 ノゾムがゾウのパワーを身に宿して、ジンキが繰り出したパンチを受け止めた。

「うぐっ!」

 ジンキがそのまま腕をつかまれて、ノゾムに投げ飛ばされた。ジンキは着地して、ノゾムに鋭い視線を向ける。

「私は全ての支配者だ・・私が世界を束ねて、今の愚かさを全て正す・・・!」

 ジンキが声を振り絞って、前進から闇を放出する。ノゾム、そしてソウマとシゲルがジンキに目を向けて身構えた。

 

 ジンキとノゾムたちの戦いは、エックスビースにて監視されていた。

「社長に万が一のことがあると推測できる場合は、すぐに援護に出れるように!」

「たとえ社長の怒りを買うことになっても、社長の身の安全を最優先に・・!」

 黒ずくめの男たちが監視と即時対応に追われていた。ビースターの部隊もエックスビースから出撃しようとしていた。

 そのとき、エックスビースの施設内で轟音が轟いた。

「な、何だ!?

 男が声を上げて、施設内にいたビースターが音のした方へ向かった。その地点、ロビー近くの廊下に来たところで、彼らは足を止めた。

 ビートルビースター、スタッグビースターたちの前に姿を現したのは、ドラゴンビースターとなったユウキだった。

「き、貴様は!?・・裏切り者の・・!」

「本部施設に乗り込んでくるとは・・!」

 ビートルビースターたちがユウキを見て緊張を覚える。

「お前たちもセイラの仇・・オレたちの敵だ・・・!」

 ユウキが鋭く言いかけて、ビートルビースターたちに向かって前進する。

「ここをやらせるな!ヤツを追い出せ!」

 スタッグビースターが声を上げて、他のビースターたちとともにユウキに向かっていく。しかしユウキが繰り出したパンチを受けて、ビースターたちが次々に壁や床に叩きつけられていく。

「アイツ・・今まで以上の力を発揮している・・!?

「我々の力が通じていない・・!?

 ビートルビースターたちが動揺して後ずさりする。

「お前たちも滅ぼす・・お前たちがオレたちを、世界を狂わせている・・・!」

 ユウキが怒りの声を上げて、刺々しい姿になった。彼が一気に加速して、ビートルビースターたちに向かって突っ込んだ。

 

“タイガースマーッシュ!”

 ノゾムがエクシードスマッシャーの画面にトラのアイコンを出して、トラの力を身にまとう。彼はスピードを上げて、ジンキの発する闇をかいくぐる。

「私はこの世界を正す・・この愚かな世界を束ねられるのは、真の支配者である私だけ・・!」

 ジンキが声を振り絞って、ノゾムを追撃する。ノゾムは素早く闇をかわして、ジンキの眼前に詰め寄った。

「オレも世の中がおかしいとは思っている・・だけど、お前もおかしくしてるヤツの1人なんだよ!」

 ノゾムが自分の考えを言い放って、ジンキを殴り飛ばす。激しく地面を転がるジンキが、すぐに立ち上がってノゾムに視線を戻す。

「お前たちのように無秩序、無能、自己満足な者が世界を動かせば、世界の悪化につながることは明白・・私以外に、世界を正せる支配者はいない!」

「支配すること自体、世界をムチャクチャにしていることなんだよ!」

 野心を口にするジンキに、ノゾムが怒りの声を上げる。

「オレたちは誰の支配も受けない!自分勝手なマネをしているヤツの思い通りには、絶対にならない!」

 ジンキや敵への怒りをふくらませて、ノゾムがエクシードスマッシャーの画面に「X」を表示して、そばのボタンを押した。

“エクシードチャージ!エクシードスマーッシュ!”

 ノゾムの全身から光があふれてくる。

「たとえエクシードの力でも、私のもたらす闇からは逃れることはできない・・!」

 ジンキが全身から黒い闇を放出する。ノゾムの光とジンキの闇が入り混じるようにぶつかり合い、激しい衝撃を巻き起こす。

 ノゾムがジャンプして、ジンキに向かってエネルギーを集めたキックを繰り出した。ジンキも闇を集めた両手を握って前に押し出す。

 ノゾムのキックとジンキのパンチがぶつかって、さらなる衝撃を巻き起こした。

「くっ!・・なんてパワーだ、あの2人・・!」

「だけど、オレたちが何もできないなんてことはない・・!」

 シゲルが毒づいて、ソウマがいきり立つ。

「そうだな・・オレもやれるだけやってみるか・・!」

 シゲルが頷いてから、気を引き締めなおしてジンキに目を向けた。

“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

“オックス・ロードスマッシュ。”

 ソウマとシゲルも走り出して、ジンキに向かってジャンプキックを繰り出した。ノゾムたち3人のキックが、ジンキと闇を押していく。

「ビースターの支配なんてまっぴらゴメンだ!」

「オレもアンタのやり方には納得してないんでな!」

 ソウマとシゲルも言い放って、ノゾムに加勢する。

「私が真の支配者だ・・誰にも、我々の邪魔はさせんぞ・・!」

 ジンキが憎悪をふくらませて、闇に力を込めた。世界の安定とそのための絶対的な支配を、彼はひたすら求めていた。

 

 ユウキの突入によって、エックスビースの本部施設にいたビースターたちは全滅を被った。施設の中にある調整装置を見回して、ユウキが怒りをふくらませていく。

(自己満足のために、他の人を利用する・・他の人を傷付けて、平気な顔をする・・人間もビースターも、愚か者は許してはおけない・・・!)

 ユウキが目つきを鋭くして、剣を構える。

(人間も身勝手だけど、命を利用する行為も見過ごすことはできない・・・!)

 ユウキが剣を振りかざして、調整装置の機械を切り裂いて、カプセルを壊した。

 破損した機械から火花が出て爆発が起こって、他の機械の爆発を誘発させる。

「これでエックスビースの支配を壊せるはず・・・!」

 施設の崩壊が確実だと思って、ユウキは施設から外へ出た。施設の仲が一気に爆発が広がって、建物をも崩壊させていった。

 外へ出たユウキが振り返って、炎上するエックスビースを見つめる。

(セイラ、これでエックスビースは、しばらくは行動を起こせない・・・)

 ユウキがセイラのことを思って、左手を強く握りしめる。

(でもオレの、オレたちの戦いは終わっていない・・ううん、始まったって言うべきか・・)

 身勝手な敵は世界中にまだまだたくさんいる。ユウキは自分に言い聞かせて、炎の立ち込めるエックスビースに背を向けて歩き出した。

 

 

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