仮面ライダーマックス
第42話「ヘルへの逃亡!」
ビースターの暗躍やその証拠は、エックスビースによって全て隠されていた。エックスビースがビースターのことが公にならないように徹底していて、目撃者の抹殺や処分も行っていた。
しかし今回、ビースターのことが世間に知れ渡ることとなった。
「がはっ!」
黒ずくめの男の1人がジンキの放つ闇に首を絞められて、倒れて事切れた。ビースターの情報が世間に知れ渡ったことを報告してきた部下である。
「どのような状況下でも、定められている任務と仕事をこなすのがエックスビースの一員だ。それをこなせないとは・・まして、決して犯してはならない過ちを・・」
部下の失態にジンキが怒りをふくらませていく。彼の怒りを目の当たりにして、他の男たちも恐怖を隠せなくなっていた。
「だがこれは、神奈ノゾムに気が向いていた私の落ち度でもある。私もこの事態の収拾に当たる必要がある・・」
「社長・・・」
自責の念も感じていくジンキに、男の1人が戸惑いを見せる。
「エックスビースに関する情報が漏えいしている様子は?」
「それはありません。我々に関する情報は完全防衛を徹底しています。」
「よし。我らの支配下のビースターは、ビースターであることを明かさないようにしろ。そして我らと関わりのあるビースターの中で協力的でない者の排除を遂行する。ヤツらが我々のことを口にする前に口封じをする。」
「了解!」
ジンキの命令に答えて、男たちが行動を開始した。
「ララ、お前と私はベルトとカードの回収を続行する。」
「私・・今度こそ・・今度こそ成功させてみせる・・・!」
続けて言いかけるジンキに、ララが震えながら答える。
「人間どもがいい気になる時代は終わる。誰もが真の支配者に心から従う時代が訪れる。」
この状況下でも自分の支配が絶対であることは揺るがない。ジンキはそう考えて目つきを鋭くした。
ビースターに関するニュースはTVでも取り上げられていた。ノゾムたちもこのニュースを見て、動揺を隠せなくなっていた。
「騒ぎがどんどん大きくなっているよ・・・」
「ビースターを排除しようって意見が増えているみたいだ・・」
タイチとソウマがビースターのニュースに声を上げる。
「こんな状態でビースターが見つかったら、大変なことになる。そのビースターと人間、どっちかが必ず危険になる・・!」
「ビースターが・・・いけない!セイラさんたちも危ない!」
シゲルが不安を口にすると、タイチがセイラたちを心配して、たまらず飛び出した。
「タイチくん!」
「オレも行く・・今のタイチは落ち着いてるように見えない・・・」
ツバキが叫んで、ノゾムがタイチを追いかけた。
「ユウキさんたちもこのニュースを見て知っているはず・・それでも、3人がビースターであることが知られてしまったら・・・!?」
ツバキもユウキたちがかつてない危険に遭遇しようとしていることを予感して、気が気でなくなっていた。
ツバキたちの思っていた通り、ユウキ、セイラ、タツヤもビースターに関するニュースを目にしていた。
「とんでもないことになってしまった・・・」
「人々はビースターという怪物がいることを知って、恐怖を感じている・・ビースターを滅ぼそうとする人も出てくるかもしれない・・」
ユウキとタツヤが今の事態の危機感を強く痛感していた。
「自分勝手に行動しているビースターが追い込まれるのはいいけど、そうじゃない、オレたちみたいな人まで悪者にされてしまうのはよくない・・」
「でもどうやって?・・下手に動いたら、私たちまで悪者扱いされてしまう・・・」
これからのことを考えるユウキに、セイラが不安を口にする。
「・・・残酷なようだけど、今は自分の身を守ることを優先しよう・・」
「タツヤさん・・・!」
深刻な顔を浮かべるタツヤの言葉に、ユウキが声を荒げる。
「冷たいようだけど、セイラさんの言う通り、下手に助けようとしたら、私たちもビースターであることが知られてしまい、悪者扱いされることになる・・そうなったら私たちの身の安全どころか、ノゾムくんたちまで危険に巻き込むという最悪の事態になってしまう・・・!」
事態をより重く見ているタツヤの言葉に反論できなくて、ユウキは押し黙るしかなかった。
「セイラさん!」
そこへタイチが駆けつけて、ユウキたちに声をかけてきた。ノゾムも遅れてタイチに追いついた。
「タイチさん、ノゾムさん・・・」
「あのビースターのニュースのことだよね・・?」
セイラが戸惑いを見せて、ユウキが問いかける。ノゾムとタイチが真剣な顔で頷いた。
「セイラさんはもう、他のビースターに関わっちゃダメだ・・この騒ぎが収まるまで・・・!」
タイチがセイラたちを心配して呼び止めてきた。
「ありがとう、タイチくん・・私たち、私たちのできることをやっていくつもりよ・・」
セイラがタイチに感謝して、自分たちの考えを告げる。
「僕も、僕のできることをするよ!セイラさんたちを守ることぐらいはできるはずだよ!」
「本当にありがとう、タイチくん・・でも君もムチャしないようにね。」
呼びかけるタイチにタツヤが励ます。
「そういうアンタたちだって・・オレも人のことは言えないけど・・」
ノゾムが肩を落としながら言いかける。
「ノゾムだって・・だからあまりビースターと関わらないほうが・・・」
「オレはオレだ・・ビースターも人間も関係ない・・どんな理由があっても、オレたちの敵に回るなら、オレは容赦しない・・・!」
ユウキが心配の声をかけるが、ノゾムは自分の信念を曲げない。
「ノゾムはノゾムの戦いを続けていくみたいだよ・・今みたいなことになっていても・・・」
ノゾムの心境を察して、タイチが肩を落とす。
「ノゾムさん、警察に捕まっても抵抗しようとしたくらいだから・・たとえ世界中の人みんなを敵に回しても、自分を貫こうとする・・自分が正しいと思っているんじゃなくて、逆にそういう人が許せなくて、徹底的に逆らおうとして・・」
セイラがエリカに反抗したときのことを思い出す。ユウキもそのことを思い出して、深刻な顔を浮かべる。
(オレだって、人間もビースターも関係ないと思っている・・ただ、身勝手な人を許せないだけ・・だからこそ、あのエリカという人を手にかけたことを、オレは悪いとは思っていない・・)
身勝手な敵と戦い続けていることに後悔はない。ユウキもそう確信して、自分に言い聞かせていた。
ビースターの逮捕、処罰い警察は本格的に踏み切った。ビースター出現の通報を聞いて、警察が現場に急行した。
「動くな、怪物!お前は包囲されている!」
「抵抗するなら発砲するぞ!」
警官たちが拳銃を構えて、警告を送る。しかしその先にいるアルマジロビースターは警官たちに従おうとせず、笑い声を上げる。
「そんなもんでオレを止められると思ったら、大間違いなんだよ!」
アルマジロビースターが警官たちに向かって飛びかかる。警官の1人が彼に首をつかまれて、持ち上げられて投げられる。
「がっ!」
警官が地面に強く叩き落とされて、意識を失った。
「撃て!これ以上バケモノの暴挙を許すな!」
警官たちがアルマジロビースターに向かって発砲する。しかし前から弾丸を受けても、アルマジロビースターは損傷もしない。
「こんなのは衝撃とはいえないな・・本当の衝撃っていうのは、こういうのを言うんだ!」
言い放つアルマジロビースターが体を丸めて、回転しながら突っ込んできた。
「うあっ!」
アルマジロビースターの突進を体に受けて、警官たちが突き飛ばされて激痛に襲われる。着地したアルマジロビースターが振り返って、倒れている警官たちを見て笑みをこぼす。
「不様だな・・ただの人間が、オレに勝てるわけがないだろうが・・!」
アルマジロビースターがあざ笑ってから、警官たちの前から姿を消した。
ビースターの騒動を気に掛けたまま、タイチとセイラは動物公園の近くの道を歩いていた。
「私たち、これから安心して暮らしていけるのかな?・・私たちのせいで、タイチさんたちに迷惑がかかってしまうんじゃ・・・」
「迷惑じゃないよ、セイラさん!・・セイラさんたちは、何も悪くないんだから・・・!」
自分を責めるセイラに、タイチが励ましを送る。
「これからも人間として生きていけばいいよ、セイラさんもユウキさんたちも・・!」
「タイチさん・・・でも、私たちは・・・」
「セイラさんたちが何を言っても、セイラさんたちの心は、人間以上に人間だよ・・!」
タイチが投げかける言葉を聞いて、セイラが戸惑いを感じていく。
「だから生きていこう・・みんな、生きていいんだから・・・!」
「タイチさん・・・私・・私・・・」
微笑みかけるタイチに、セイラが心を揺さぶられる。
身勝手や権力に振り回されて、自由に生きることも踏みにじられたセイラ。その理不尽への怒りでビースターに変わった彼女だったが、タイチに生きていいと言われたことが、とても嬉しかった。
そのとき、セイラが突然足を止めて、タイチが振り向く。
「どうしたの、セイラさん?・・もしかして・・・!?」
タイチが声をかけると、セイラとともに緊張を浮かべた。
「ここを離れよう・・関わったらいけない・・・!」
タイチは呼びかけて、セイラの腕をつかんで走り出した。タイチの優しさに戸惑いをふくらませながら、セイラは周囲に注意を向けた。
(ノゾムはノゾムの考えを貫くつもりだけど、体はビースターになっているんだ・・セイラさんたちと同じように、今の騒ぎに深入りさせるわけにいかない・・!)
ノゾムへの連絡をためらって、タイチはソウマとシゲルへ連絡を試みた。
「ソウマくん、大変なんだ!すぐに動物公園に・・!」
タイチがまずソウマに連絡を入れようとした。そのとき、彼とセイラの前にアルマジロビースターが現れた。
「追いかけっこは好きじゃないんだよな・・・」
「ビースター・・こんなところに出てくるなんて・・・!」
アルマジロビースターが笑みを浮かべて、タイチが息をのむ。
「次はオレがお前らを痛めつける番だ・・警察に知らせてもムダだぞ・・オレは人間より強いんだから・・・!」
アルマジロビースターがタイチたちに迫る。
(もう私がやるしかない・・私しか、タイチさんを守れない・・・!)
セイラが思い立って、アルマジロビースターと戦おうとした。しかしタイチに腕を引かれて止められる。
「セイラちゃん、今はセイラちゃんは戦っちゃダメだよ・・・!」
タイチが小声でセイラに呼びかける。
「でも、タイチさんが・・・!」
セイラが心配の声を上げると、タイチが彼女を守ろうとする。
「勇ましいことだな、女を守るナイト気取りが・・だけど今のは勇気じゃなくて、無謀だっていうんだよ・・!」
アルマジロビースターが笑い声を上げて、タイチたちに迫る。
「危ない!」
タイチがセイラを抱えて横に飛んで、アルマジロビースターの突撃をよける。
「うあっ!」
そのとき、タイチが倒れて地面に当たった右肩を痛めて、顔を歪めた。
「タイチさん!?」
セイラが声を上げて、タイチを支える。タイチは痛めた肩を押さえてうめく。
「運よくかわしたが、奇跡は連続じゃ起きないぞ・・!」
振り返ったアルマジロビースターが再びタイチたちを狙って突っ込んできた。
「セイラさん・・僕に構わず、逃げて・・・!」
タイチが声を振り絞って、セイラに呼びかける。しかしセイラは逃げようとせず、アルマジロビースターに目を向けた。
「タイチさんに、手出しはさせない!」
言い放つセイラが感覚を研ぎ澄ませる。
「セイラさん、ダメだ!」
タイチが叫ぶが、セイラはキャットビースターに変わって、彼を抱えてジャンプした。
「なぬっ!?」
足を止めて振り返ったアルマジロビースターが、セイラに対して驚きを覚える。
「あの女もビースターだったのか・・!?」
セイラへの激情を噛みしめて、アルマジロビースターが笑みをこぼす。
「追いかけっこは好きじゃないって言ってるじゃないか・・・!」
アルマジロビースターが走り出して、セイラたちを追いかけていった。
タイチからの連絡が途中で途切れて、ソウマは危機的状況を察知した。彼はノゾムには知らせず、シゲルに知らせることにした。
「オレだけに知らせたのは正解だったかもな。」
「あのビースターを助けるのは納得いかないけど、タイチがピンチなんだ。さすがに行かないわけにはいかないな・・」
シゲルが呟いて、ソウマがタイチたちを助けに行こうとする。
「一般市民からしたら、ビースターもビーストライダーも同じだと思われてもおかしくない。だからオレたちも、無闇に人前で変身するのはよくない・・」
「ハァ・・ライダーも窮屈になる状況になったな・・」
シゲルが注意を呼びかけて、ソウマが肩を落としてため息をついた。
「それじゃ、さっさと変身してとっとと行くぞ。」
「あぁ・・!」
シゲルが言いかけてソウマが頷く。2人は物陰に隠れてからそれぞれオックスカード、フォックスカードを取り出した。
“フォックス!”
ソウマがフォックスカードをビースドライバーにセットした。
“オックス。”
シゲルもオックスカードをビースブレスにセットした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
“スタートアップ・オックス。”
ソウマとシゲルがフォックス、オックスに変身した。
“ウルフ!”
“イグアナ。”
ソウマとシゲルは続けてウルフカード、イグアナカードを使った。
“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”
“スタートアップ・イグアナ。”
物陰から出た2人がウルフルスロットルとイグアカートを呼んだ。彼らはウルフルスロットル、イグアカートに乗って、タイチたちのところへ向かった。
タイチを連れてアルマジロビースターから逃げ出すセイラ。彼女は落ち着ける場所を探しながら、建物の屋根や屋上を飛び移っていた。
「うわっ!」
小道に下りたセイラだが、そこにいた男が彼女を見て驚きの声を上げた。
(しまった!見られた!)
セイラがたまらずジャンプして、小道から離れる。男は慌てて自分のスマートフォンを取り出して、警察に通報していた。
感覚を研ぎ澄ませて、周りに人がいないことを確かめるセイラ。彼女は別の小道に着地して、タイチを降ろして周りを見回してから、ビースターから人の姿に戻った。
(人に見られた・・私たちのことがばれていなければいいけど・・・!)
悪い方向に事態が進まないことを願って、セイラがタイチを支える。
「タイチさん、しっかりして!タイチさん!」
セイラが呼びかけるが、タイチは気絶していて目を覚まさない。
「逃げられると思うなよ・・!」
そこへアルマジロビースターが追いついて、セイラが緊張をふくらませて振り向いた。
「さて、せっかくの相手なんだから、徹底的に遊んでもらうぞ・・!」
アルマジロビースターがセイラを狙って迫る。タイチを守ろうとするセイラだが、ビースターになることをためらう。
そのとき、ソウマとウルフルスロットル、シゲルとイグアカートが駆けつけて、アルマジロビースターの前で止まった。
「ここからはオレたちが相手になってやるよ。」
シゲルはイグアカートから降りて、アルマジロビースターに声をかける。
「お前は早くタイチを連れてここから離れろ・・妙なマネしたら許さないぞ・・!」
ウルフルスロットルから降りたソウマが、セイラに呼びかける。セイラは小さく頷いてから、タイチを連れてこの場を離れていく。
「ビースターは1人残らずぶっ潰す・・今回はノゾムの分まで、オレたちは戦う・・!」
ソウマがアルマジロビースターに目を向けて、鋭く言いかける。
「ビーストライダーか・・まとめて遊んでやるよ!」
アルマジロビースターが言いかけて、ソウマたちに飛びかかる。アルマジロビースターが振りかざす手を、ソウマたちが素早くかわす。
ソウマが右足を振りかざしてキックを繰り出すが、アルマジロビースターがジャンプしてかわした。
「なかなかすばしっこいな・・だけどこれは止められるか!」
アルマジロビースターが言いかけてから、体を丸めて突進を仕掛けてきた。
「うおっ!」
シゲルがアルマジロビースターの突進を受けて突き飛ばされる。ソウマもスピードを上げるが、アルマジロビースターの突進力に追いつかれる。
「ぐっ!」
ジャンプしたところで足を叩かれて、ソウマが体勢を崩して地面に落下した。
「ヘッヘッヘ!パワーもスピードもオレには敵わないってか!」
着地したアルマジロビースターがソウマたちをあざ笑う。
「それは聞き捨てならないな・・スピードも、そしてパワーもお前より上だ!」
ソウマが言い返して、ライノスカードを取り出した。
“ライノス!”
彼がビースドライバーにあるフォックスカードを、ライノスカードと入れ替えた。
“チャージ・ライノース!サイパワー!サイスピード!ハイスピード・ライノース!”
ソウマがライノスフォルムに変身して、アルマジロビースターに向かっていった。
タイチを連れて落ち着ける場所を探すセイラ。2人は廃工場の近くを歩いていた。
「ここならしばらくは隠れていられるはず・・その間に、誰かに連絡を・・・!」
セイラがユウキに連絡を入れようとした。
「動くな!」
そのとき、警官たちが駆けつけて、セイラたちを取り囲んで拳銃と警棒を手にして構えた。
「怪物を排除する!お前が怪物であるという報告を受けている!」
警官の1人がセイラに向かって呼びかける。
「やめてください!けが人がいるんです!」
セイラがタイチを助けようと必死に呼びかける。しかし警官の1人が発砲してきて、2人のそばの地面に着弾した。
「怪物め、すぐにそこから離れろ!」
「これ以上襲わせはしないぞ!」
警官はセイラの言葉を聞かずに、彼女を狙って撃とうとしていた。あくまでビースターは問答無用で排除しようとする警察に、セイラは目を疑った。
(どうして・・どうして悪者だって決めつけるの・・・!?)
警察の仕打ちに怒りと悲しみを覚えるセイラ。彼女の脳裏に、自分が初めてビースターになったとき、勝手に悪者だと決めつけられたときのことを思い出した。
そのとき、ドラゴンビースター、スネイクビースターとなったユウキとタツヤが駆けつけた。2人が警官たちを突き飛ばして、セイラとタイチから引き離す。
「ユウキ・・タツヤさん・・・!?」
「早く逃げるんだ・・タイチくんを連れて・・・!」
声を振り絞るセイラに、タツヤが小声で呼びかける。
「またバケモノが出てきたのか!?」
「コイツらも始末しろ!」
警官たちが体勢を整えて、銃口をユウキたちに向ける。
「どうして・・オレたちを・・・オレたちは何もしていないのに・・・!」
ユウキも警官たちへの怒りを感じていく。
「今すぐオレたちの前から消えろ!さもないと容赦しないぞ!」
「待て!落ち着け、ユウキくん!」
怒号を放つユウキを、タツヤが呼び止める。
「撃て!怪物を全滅させるんだ!」
警官たちがユウキたちに向けて発砲する。ユウキが具現化した剣を手にして振りかざして、剣圧で弾丸をはじき飛ばした。
「な、なんてヤツだ・・・!」
警官たちが緊張を感じて後ずさりする。
「怯むな!怪物を倒さないと、人々が危険にさらされる!」
他の警官が呼びかけて、再び発砲する。ユウキが剣を振りかざして、弾丸をはじく。
「くっ!・・コイツら、どこまでも抵抗を・・!」
警官がいら立ちながら、さらに発砲を仕掛けようとした。
そのとき、警官たちの前にノゾムが現れた。
「ノ、ノゾムさん・・!?」
セイラがノゾムの登場に驚きを覚える。
「君、ここは危険だ!早く逃げるんだ!」
警官がノゾムに向かって呼びかける。するとノゾムが彼らに鋭い視線を向ける。
「ここから離れるのはお前たちのほうだ・・勝手なマネをして・・・!」
ノゾムが怒りの声を上げて、マックスカードを手にした。
「ノゾムくん・・君、まさか・・!?」
“マックス!”
タツヤが緊張を覚える中、ノゾムがビースドライバーにマックスカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
マックスに変身したノゾムに、警官たちが動揺を見せる。
「な、何だ、コイツは!?」
「コイツもそこのバケモノたちの仲間か!?」
「だったらコイツもすぐに倒すぞ!」
警官たちが動揺を振り払って、ノゾムにも銃口を向けた。
「オレまで始末しようとする・・お前たち・・どこまで身勝手なんだ!」
怒りを爆発させたノゾムが警官たちに向かっていく。放たれる弾丸をものともせずに、ノゾムが警官を殴りつける。
殴られた警官たちは、気絶しただけで大きな傷は受けていなかった。
「ノゾムくん・・君まで深入りしてくるなんて・・・!」
介入してきたノゾムに、タツヤは深刻さを浮かべる。
「身勝手なヤツは、何者だろうとオレの敵だ・・それに、タイチがお前たちが巻き込まれているなら、なおさら見て見ぬフリはできないだろうが・・・」
自分の考えを貫こうとするノゾム。たとえ相手が誰だろうと、敵に回るなら容赦しない。それが彼の揺るがない信念だった。
そのとき、タイチが意識を取り戻して体を起こした。
「タイチさん、大丈夫ですか!?」
「セイラさん・・・ユウキくん、タツヤさん・・ノゾム・・・!?」
セイラが微笑んで、タイチがユウキたちやノゾムを見て、動揺を見せる。彼もタツヤも深刻さをふくらませていく。
ノゾムもユウキたちも、ビースターを敵視する人々の抗争に巻き込まれることになった。