仮面ライダーマックス

第41話「ヒューマンの反旗!」

 

 

「キリオが倒された?」

 黒ずくめの男からの報告を聞いて、ジンキが眉をひそめる。

「エクシードのカードを狙っていたようですが、返り討ちとなったようです。」

「ジンキ、愚かなことだ・・だが神奈ノゾムたちが始末してくれて、手間が省けた。」

 男がさらに報告を告げて、ジンキが呟く。

「このままヤツらの監視を続けろ。軽率な行動は控えろ。」

「了解。各チームにそのように伝えます。」

 ジンキからの命令に答えて、男は社長室を出た。するとララが入れ違いで社長室を訪れた。

「社長・・このままベルトとカードを取り戻さなくていいんですか・・?」

「もちろんベルトとカードは取り戻す。だが今のお前では、エクシードの力も手にしているヤツには敵わない。」

 心配の声をかけるララに、ジンキは表情を変えずに言いかける。

「だったら、どうやってベルトとカードを・・・」

「私が取り戻す。もはや私以外に、エクシードのマックスに対抗できる者はいないからな・・」

 声を上げるララに、ジンキは自ら戦いに赴くことを告げた。

「社長が自ら、ですか!?・・でも、それだと社長が・・・!」

「私をここまでにさせたのは、お前たちの情けない体たらくが大きいのだぞ・・もっとも、私に何の非もないとは言えないが・・」

 心配するララにジンキが鋭い視線を向ける。彼に睨まれて、ララが怯えて後ずさりする。

「す、すみません・・社長・・・」

「今さら謝罪したところで無意味だ。結果を出さなければ意味がない。」

 ただただ謝るララに冷たく告げて、ジンキが窓から外を見下ろす。

「エクシードとなったマックスと初めて戦ったときは驚かされたが、今度はそうはいかない・・必ずベルトとカードを取り返す・・」

 自身の野心を呟いて、ジンキが笑みを浮かべる。

「私こそが真の支配者。この世界の者たちは皆、私が道を示さなければ正しい道へは進めないのだ。」

 自分こそが全てを統べるにふさわしいと断言するジンキ。ノゾムたちからベルトとアニマルカードを奪い取るべく、彼は戦意をふくらませていた。

 

 ビースターの力も安定させられるようになって、ノゾムは落ち着きを取り戻しつつあった。彼はいつものように動物公園での動物の世話をしていた。

(オレも落ち着けているってことだな・・みんな、オレに懐いてきている・・)

 自分に恐れを抱いてない動物たちを見て、ノゾムは笑みをこぼしていた。

「ノゾム、調子いいみたいだね。」

 そこへタイチがやってきて、ノゾムに声をかけてきた。

「僕の作業は区切りついたから、何か手伝うよ。」

「こっちももう少しでキリがよくなるから・・」

 手を差し伸べるタイチに、ノゾムは作業しながら答える。

「ノゾム・・動物の世話だけじゃなくて、他のことも僕にできることだったら、遠慮なく言って・・」

 タイチが真剣な顔で言いかけてきた。彼の言葉を聞いて、ノゾムが戸惑いを覚える。

「あぁ・・オレによく分かんないことがあったら、頼りにさせてもらうよ・・」

「ありがとう、ノゾム・・嬉しいよ、僕・・・」

 頷くノゾムにタイチが笑みを浮かべた。

「人間もビースターも関係ない・・みんな優しさを持っているんだ・・ノゾムもユウキさんも、セイラさんも・・・」

 タイチがノゾムたちも、そしてセイラのことを考えていた。

(タイチ・・・)

 彼の心境を察して、ノゾムも戸惑いをふくらませていた。

 

 これまで各地でビースターによる怪事件。エックスビースが証拠隠滅や証人の抹殺など、真実の封殺を徹底していたため、ビースターの存在が警察や世間に知れ渡ることはなかった。

 しかしただ1人、ノゾムたちとビースターの戦いを目撃した人物がいた。

 真野(まの)カツヒコ。雑誌記者とカメラマンをしていた。

「とんでもない写真と映像を撮っちまったぜ!これなら特ダネ間違いなし!有名記者の仲間入りだ!」

 自分の躍進を確信したカツヒコ。彼は自分が撮った写真を雑誌社に売り込みに向かった。

「何なんだよ、こりゃ・・?」

 雑誌社の編集長がカツヒコの写真を見て眉をひそめる。

「最近多発している怪事件の犯人!そしてそのバケモノと戦っている一団ですよー!」

 カツヒコが写真に写っているビースターとマックスを指し示して、高らかに言い放つ。

「そう言われてもなぁ・・こんなんじゃ作り物やデマと思われるのがオチだぞ。最近は映像の改変もお手のもんだし・・」

「何言ってるんですかー!?これが改変してないものは、調べりゃ分かりますってー!」

「これじゃ読者や視聴者の関心を引くのは厳しいぞ・・」

「そんなことはない!今度はライブでヤツらを撮影してきますよ!」

 不満を口にする編集長に、カツヒコが力を込めて呼びかける。

「そういうくだらないものじゃなくて、有名人のスキャンダルを追いかけたらどうだ?今はこの俳優の不倫について、こっちは動いてるから・・」

「そんなんじゃ読者はすぐに飽きちゃいますよ!オレはこのままこの事件を追います!」

 編集長の呼びかけに言い返すと、カツヒコは写真をバッグに入れて外へ飛び出した。

「おい、真野、待て!」

 編集長が呼び止めるが、カツヒコは聞かずに出ていってしまった。

「ったく、しょうがないヤツだ・・そろそろアイツの年貢の納め時かもしれんな・・」

 カツヒコの自分勝手な行動に滅入って、編集長が大きくため息をついた。

 

 編集長に自分の写真を認めてもらえず、カツヒコは不満いっぱいになっていた。

「何だよ、アイツ!せっかくいいネタと動かぬ証拠を出してきたってのに突っぱねやがって!」

 いら立ちが治まらず、カツヒコが地団太を踏む。

「こうなったら意地でもあのバケモノのライブ映像撮ってやるんだからな!」

 カツヒコは躍起になって、ビースターを撮影することを心に決めていた。

「おわあっ!」

 そのとき、近くで悲鳴がしたのを耳にして、カストルがスマートフォンを手にして操作した。

「これなら誰にも文句は言えねぇ・・これ以上、動かせねぇ証拠を!」

 ビースターの事件を撮影するため、カツヒコは準備を整えて走り出した。

 

 キノコの怪物、マッシュビースターが街中で毒霧をまき散らしていた。毒を受けた周囲の人々が苦しんで倒れていく。

「いいぜ・・もっと苦しめ・・みんなが苦しむのを見てると、気分がいい・・・」

 マッシュビースターが人々の様子を見て、喜びを感じていく。

「他のとこに行って、そこのヤツらも苦しめてやるんだ・・・」

「そんなことはさせないぞ、ビースター・・!」

 笑みをこぼすマッシュビースターに、ソウマが駆けつけてきた。

「ビースターはみんなを苦しめる存在・・オレが1人残らず片づけてやる!」

“フォックス!”

 ビースターへの怒りを口にして、ソウマがフォックスカードを取り出して、ビースドライバーにセットした。

(そうだ・・あの3人だってビースター・・倒されるべきなんだ・・・!)

「変身!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

 ユウキたちにも敵意を感じているソウマは、ビースドライバーの左上のボタンを押して、フォックスに変身した。

「オレの強さは疾風迅雷!」

 ソウマは言い放って、マッシュビースターに向かっていく。

「ビーストライダーだったか・・お前もオレの毒で苦しませてやるよ・・・!」

 マッシュビースターが口から毒霧を吐き出す。ソウマはジャンプして毒霧をかわして、マッシュビースターの後ろに回り込んだ。

「お前も苦しめられるのはまっぴらなんだよ・・!」

 ソウマが鋭く言って、マッシュビースターの体にキックを当てた。マッシュビースターは押されるも、すぐに踏みとどまって笑みをこぼした。

「これでも折れの体は柔らかいほうでな・・ちょっとやそっとの衝撃じゃオレには効かないんだよ・・」

 マッシュビースターが自分の体を軽く撫でて、自信を見せる。彼の体の柔らかさが、ソウマの攻撃の衝撃を和らげたのである。

「力不足だっていうのか?・・だったらこれならどうだ!」

“ライノス!”

 ソウマが言い返して、取り出したライノスカードを、ビースドライバーにセットされているフォックスカードと入れ替えた。

“チャージ・ライノース!サイパワー!サイスピード!ハイスピード・ライノース!”

 フォックスのスーツが灰色になって、マスクもサイを思わせる模様となって、額の部分に角が生えた。ソウマはライノスフォルムとなって、パワーを上げた。

「お前も姿をコロコロと変えられるんだったな・・まぁ、何になったところで、オレの毒には敵いはしないけどな・・」

 マッシュビースターが自信を見せて、ソウマを狙って毒霧を吐き出した。

「パワーは上がっているけど、スピードが落ちているわけじゃないぞ!」

 ソウマが言い放って、毒霧の真っ只中に飛び込んだ。彼の突進力によって生じた風が、毒霧をかき消した。

「何っ!?

 驚くマッシュビースターに、ソウマが突っ込んできた。

「うおっ!」

 マッシュビースターが突き飛ばされて、地面を大きく転がる。

「オレの毒が効かない!?・・こんなやり方で吹き飛ばすだと・・!?

「もうビースターにはやられない・・オレが必ず倒す!」

 動揺するマッシュビースターに鋭く言うソウマ。彼がビースドライバーの左上のボタンを2回押す。

“ライノスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ソウマの体からエネルギーがあふれ出す。彼はマッシュビースターに向かって突撃する。

「ごあぁっ!」

 マッシュビースターが大きく突き飛ばされて、空中で爆発を起こした。

「やった・・オレだって、やれるんだからな・・・!」

 自信を口にするソウマが、元のフォックスの姿に戻った。彼はビースターを倒していく決意をさらに強めた。

 

 ソウマとマッシュビースターの戦いを、カツヒコが撮影していた。ライブ動画というありのままの映像を撮ることで、彼は特ダネをつかんだと確信していた。

「やった・・やりましたよ・・これならバッチシだ・・!」

 しっかりと撮影できて、それがそのまま動画サイトに流れていることに、カツヒコは歓喜を感じていた。

「リアルタイムなら改変も修正もできないから、誰も文句はいえないぞ!このスクープをつかんだオレは、今度こそ有名記者の仲間入りだぜー!」

 カツヒコは笑顔を振りまきながら、動画サイトで流れている自分の撮った映像を確かめた。

「いいぞ、いいぞ!再生回数がうなぎ上りだぞ〜!」

 カツヒコがガッツポーズをして、雑誌社のほうに目を向けた。

「向こうはきっと慌ててるだろうな・・けどそこへの売り込みはダメだな!他のとこに売り込んで、アイツらを後悔させてやるさ!」

 カツヒコはさらに笑みをこぼすと、きびすを返して別の雑誌社のほうへ向かった。

 

 ビースターの事件を片付けて、ソウマは帰ろうとした。

「ここにいたのはマックスではなくフォックスだったか。」

 そこへ声がかかって、ソウマが振り返る。彼の前に現れたのはジンキだった。

「お前は!・・エックスビースのボスが自ら出てくるとはな・・!」

「お前のベルトとカードも返してもらうぞ。お前を打ち負かす間に、神奈ノゾムが来るかもしれない。」

 身構えるソウマに、ジンキが呟きかける。

「オレを前座だと思っていると、後悔することになるぞ!」

 ソウマが言い放って、ジンキに向かっていく。ダークビースターとなったジンキに、ソウマがスピードを上げてキックを繰り出す。

 ジンキが両腕を掲げて、双馬のキックを軽々と防いでいく。

「ムダに速い動きなど、私の前ではただの小細工でしかない。」

 ジンキはさらに呟くと、ソウマの右腕をつかんで振りかざした。

「おわっ!」

 ソウマが投げ飛ばされて、地面を転がる。ジンキが体から黒い光を放出して、立ち上がったソウマにぶつけた。

「ぐっ!ぐあっ!」

 フォックスのスーツから火花が散って、ソウマがうめく。彼がダメージを増やしてその場に膝をつく。

「いかにビーストライダーでも、越えられない壁があるというものだ。」

 ジンキが告げて、ソウマにゆっくりと近づいていく。

「ふざけるな・・ビースターは1人残らず、この手で倒す・・ビースターはこの世にいてはいけないんだよ・・!」

 ソウマが声と力を振り絞って、ジンキに言い返す。

「私がこの世界の支配者。私に従わない者こそが、この世にいてはならない存在だ。」

 ジンキは口調を変えずに話を続けて、ソウマの眼前まで迫った。

「ベルトとカードを渡すか、反抗して命を落とすか。どちらかを選べ。」

「どっちも選ぶか・・お前たちを倒すのが、オレの選択肢だ!」

 選択を求めるジンキに、ソウマが怒号を放ってパンチを繰り出す。しかしジンキに左手で軽々と受け止められた。

「そのような選択肢は存在しない。」

 ジンキが低い声で言いかけて、闇を使ってソウマを攻撃しようとした。

「ソウマ!」

 そこへシゲルがノゾムと一緒に駆けつけてきた。

「アイツ・・また出てきたのか・・・!」

 ノゾムがジンキを見て目つきを鋭くする。

「ここからはオレたちも混ぜてもらうぞ!」

“オックス。”

 シゲルが言いかけて、オックスカードをビースブレスにセットする。

“マックス!”

 ノゾムもビースドライバーにマックスカードをセットした。

「変身!」

 ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押して、シゲルがビースブレスをリードライバーにかざした。

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

“スタートアップ・オックス。”

 ノゾムとシゲルがマックス、オックスに変身した。

「オレの怒りは限界突破!」

「オレの力は天下無敵!」

 2人が言い放って、ジンキに向かっていく。ジンキが彼らに目を向けた瞬間に、ソウマが後ろに下がる。

 ノゾムがパンチを繰り出してジンキを攻め立てる。その間にシゲルがソウマのそばに駆けつける。

「ソウマ、大丈夫か!?

「あぁ・・こんなことで音は上げないぞ・・!」

 シゲルが呼びかけて、ソウマが声を振り絞って答える。

「お前も出てきたか、神奈ノゾム。ベルトとカードを返してもらうぞ。」

 ジンキがノゾムの攻撃をかわしながら言いかける。

「お前の思い通りには、オレは絶対にならない!」

 ノゾムが言い返して、ジンキに向かってキックを繰り出す。ジンキが闇でキックを防いで、ノゾムが距離を取る。

「何もかも自分の思い通りにできると思うな・・そんな思い上がるヤツを、オレは許さない・・!」

「思い上がりではない。私は支配者だ。私だけが全てを動かせることを許されている。」

「お前は支配者じゃない・・オレの敵だ!」

 ジンキの態度に怒りをふくらませて、ノゾムがエックスカードを取り出した。

“エックス!”

 彼はビースドライバーにセットされているマックスカードを、エックスカードと入れ替えた。

“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”

 マックスのスーツが白くなって、ノゾムがエックスフォルムに変身する。

「ノゾム、エクシードのカードまで使ったら、また暴走することになるんじゃ・・!?

 シゲルがノゾムに心配の声をかける。

「もう暴走はしない・・暴走させようとする力は、オレが抑え込む!」

 ノゾムが声を張り上げて、2枚のエクシードカードを取り出した。

“エクシード!インフィニットマックス!”

 彼がエックスブレスにそれぞれエクシードカードをセットした。

“チャージ・エクシード!インフィニット・エックス!インフィニット・マックス!ビース・エクシードライダー!”

 マックスのスーツが銀色になった。ノゾムはエクシードフォルムとなって、ジンキの前に立ちはだかった。

「エクシードの力を使っても、私は必ずお前からエクシードのカードを取り戻す・・!」

「2度とふざけたマネができないように、ここでお前をブッ倒す・・!」

 ジンキとノゾムが互いに鋭く言いかける。2人が同時に飛び出して、攻撃を仕掛けた。

 

 その頃、ツバキ、タイチ、ワタル、ワオンは動物公園にいた。ツバキたちはノゾムたちの身を案じて、特にノゾムが暴走してしまうかどうかを心配していた。

「ノゾム、大丈夫だよね?・・もう暴走しないよね・・・?」

「大丈夫だよ・・ノゾムはそういう悪いものをはねのけてきたんだ。今までだってこれからだって・・」

 心配を口にするツバキに、タイチが微笑んで言いかける。ツバキは不安を抑えて、小さく頷いた。

「ユウキお兄ちゃんたちにも知らせた方が・・!」

「ユウキくん・・・セイラさん・・・」

 ワタルが呼びかけると、タイチがセイラのことを気にして表情を曇らせる。

「タイチお兄ちゃん・・・?」

「えっ?・・う、ううん、何でもないよ・・」

 ワタルが声をかけて、タイチが我に返って苦笑いを見せる。タイチが慌ててスマートフォンを取り出して、ユウキたちに連絡しようとした。

「えっ!?・・何だ、こりゃ・・!?

 スマートフォンに映った映像を目の当たりにして、タイチが動揺を覚える。

「タイチくん・・?」

 彼の様子を気にして、ツバキが声をかける。

「大変だよ・・ちょっと、これ見て!」

 タイチが声を上げて、ツバキとワタルが彼のスマートフォンの画面を見た。映し出されている映像に、マッシュビースターの姿があった。

「ビースターが映ってる・・!?

「しかもこれ、生の動画だよ!・・誰かが撮ったってこと・・!?

 ワタルとツバキが動画を見て驚く。

「でも今までネットでビースターについて出たこと、全然なかったはずだよね・・!?

「エックスビースが、ビースターに関する情報を隠ぺいしてたはず・・それなのに、誰かが撮影して逃げ切ったってこと・・!?

 タイチとツバキが疑問を投げかけていく。

「再生回数が増えている・・コメントも書き込まれているよ・・!」

「これは・・とんでもないことになりそうだよ・・・!」

 動画をさらにみて、タイチとツバキは不安を感じていた。

 

 カツヒコが撮影した動画は、ネットで話題となった。この騒動を警察も聞きつけて、警視庁でも動揺が広がっていた。

「どういうことだ!?・・本物のバケモノがいたというのか・・!?

「あれは作り物でないし、ライブ映像だから改変された形跡もない・・!」

 刑事たちが動画を見て緊張をふくらませていく。

「こんな怪物が街の中に潜んでいたら、人々が不安を感じますし、危険だ!」

「大混乱になる前に、この怪物たちを殲滅しなければ・・!」

 ビースターに対する危機感を覚えて、刑事たちは決断を下した。人々への危害が拡大しないうちに、ビースターを倒すことを。

 

 エクシードフォルムとなったノゾムが、ジンキと激しい戦いを繰り広げる。2人が組み付いて力比べを演じる。

「何度も同じ相手に敗北する私ではない。」

「お前もオレがここでブッ倒す・・お前の身勝手を認めるわけにはいかない!」

 言いかけるジンキにノゾムが怒号を放つ。

「お前のせいでオレたちの人生は狂わされた!ゴロウさんも、お前たちのせいで!」

「彼は我々の支配の尊い人柱となった。これは光栄なことなのだぞ。」

「何が光栄だ!どこまでも思い上がって!」

 嘲笑してくるジンキに、ノゾムがさらに怒りを覚える。激高したノゾムがジンキの腕を握りしめて、彼の体に膝蹴りを叩き込む。

 ジンキが体に衝撃を覚えて顔を歪める。彼が闇を放出して、ノゾムを引き離そうとする。

 マックスのスーツから火花が出るが、ノゾムはジンキの腕を放さない。

「おのれ!離れろ、小僧!」

 ジンキが叫んで、さらに闇を放出する。

「ぐっ!」

 うめくノゾムがここでジンキから手を放す。

「今度こそ・・今度こそお前をブッ倒す!」

 ノゾムが怒りの声を上げて、ビースドライバーの左上のボタンを3回押した。

“エクシードスマッシャー!”

 ノゾムがエクシードスマッシャーを手にして、画面をスライドしてサメのアイコンを出して、そばのボタンを押した。

“シャークスマーッシュ!”

 エクシードスマッシャーの刀身が光り出す。ノゾムがエクシードスマッシャーを振りかざすと、刀身が鞭のように伸びてしなった。

「うっ!」

 闇を発してもはじかれて、ジンキがエクシードスマッシャーに切りつけられてうめく。怯んだ彼が後ずさりをして、ノゾムに鋭い視線を向ける。

「エクシードの力をさらに使えるようになっている・・!」

 ノゾムの力に追い詰められて、ジンキが毒づく。

“社長、緊急事態ですです!ビースターの映像がインターネットで流れています!”

 そのとき、ジンキの頭の中に声が流れてきた。部下のビースターが思念をジンキに送っていた。

(ビースターに関する情報は徹底して封殺してきたはずだ!)

“申し訳ありません!神奈ノゾムとその仲間の監視に力を入れすぎて・・!”

(言い訳はいい!すぐに戻る!)

 部下に怒りの言葉を送って、ジンキはノゾムに視線を戻した。

「命拾いしたな・・だが次も奇跡が起こると思うな・・・!」

 鋭く言うジンキが闇を放出する。

「逃げるな!」

 ノゾムが追いかけるが、ジンキは闇の中に姿を消してしまった。

「アイツ・・・ちくしょうが!」

 ジンキへの怒りが治まらなくて、ノゾムが地面を強く踏みつける。

「ノゾム・・・」

 ノゾムの心境を察して、ソウマもシゲルも深刻さをふくらませていた。

「みんな、大変だよ!」

 そこへツバキがタイチたちと一緒に駆けつけてきた。

「どうしたんだ、ツバキ?そんな慌てて・・」

 ソウマが疑問符を浮かべて、ツバキたちに声をかける

「ほほほ、本当に大変なんだから!ビースターを映した動画が流れているんだ!」

「何だって!?

 タイチが続けて言いかけて、シゲルが驚きの声を上げる。

「ということは、ビースターのことが、一気に世間に・・!?

「こりゃ、大騒ぎになってしまうぞ・・・!」

 タイチが息をのんで、シゲルが不安を感じていく。ノゾムも世の中が騒がしくなるこの事態を、よしと思っていなかった。

 

 

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