仮面ライダーマックス
第40話「アナザー獣戦士!?」
ツバキの父、大塚テツロウ。シゲアキたち研究チームとともに、ビースドライバー、ビースブレスとリードライバー、アニマルカードを開発した人物である。
3種のアイテムとアニマルカードはノゾム、ソウマ、シゲルの手に渡り、それぞれの戦いのために使われている。
しかしベルトは他にも開発されていた。正確には開発途中で放棄され、完成には至っていなかった。
使うには他のベルトを超える危険が伴うと、テツロウたちは判断したのである。
「このベルトはこの世にあってはならないものだ・・」
「すぐに処分したほうがよさそうだ。設計データも含めて・・」
テツロウとシゲアキが不安を浮かべて、ベルトの処分を決めた。そして研究チームの面々に、ベルトのことは他言しないように徹底した。
しかしこのベルトの存在が、大きな事件の幕開けをすることとなった。
ノゾムたちとともにビースターやエックスビースとの戦いを潜り抜けてきたツバキ。彼女は父であるテツロウをことを思い出していた。
「お父さん・・・お父さんたちの作ったベルトとカード、ノゾムたちの戦う力になっているよ・・・」
ツバキが自分の胸に手を当てて呟く。
「ツバキ・・・」
そこへノゾムがやってきて、ツバキが振り向いた。
「ノゾム・・落ち着いているみたいだね・・」
「あぁ・・いろいろありすぎて気が滅入りそうになったけど、今は大丈夫だ・・ツバキやみんながいてくれたおかげだ・・・」
微笑みかけるツバキに、ノゾムが感謝を口にする。
「またビースターの力で暴走するかもしれない・・そのときはまた、力ずくで止める・・・」
「どんなことになっても、ムチャクチャには逆らい続ける。それがノゾムなんだね・・」
自分の意思を貫くノゾムに、ツバキがさらに微笑む。
「たとえベルトがなくても、オレは敵と戦おうとした・・だけどオレがここまで戦えたのは、ツバキの持ってきたベルトとカードのおかげだ・・」
ノゾムが言いかけて、マックスカードを取り出して見つめる。
「人を襲うビースターと戦う中で、ユウキさんとセイラさんに会った・・」
「ユウキとの出会いは最悪だった・・お互いに強く憎み合うことになった・・」
「でも今は分かり合うことができたじゃない・・」
「それは・・そうだな・・・」
ユウキたちとの出会いも思い返して、ノゾムが肩を落として、ツバキが笑みをこぼす。
「ソウマくんと再会して、シゲルさんとも会って・・」
「ちょっとギクシャクしたこともあったけど、今は心強い仲間だと思う・・・」
「ノゾムはたくさんの人に支えられているね・・それも、心の優しい人ばかり・・・」
「そういうヤツがこの世の中にいておかしくないのに・・身勝手なヤツもいて、そいつが何もとがめられずに平気な顔をしている・・・」
「それが、ノゾムの戦い・・これからもきっと変わることのない、ノゾムの気持ち・・・」
「そうだな・・こればかりは変えるつもりはない・・これがなくなったら、オレはオレでなくなる・・・」
これまでの時間と考えを確かめて、ツバキとノゾムが会話を交わしていく。
「オレは戦い続ける・・人間もビースターも関係なく、身勝手な敵を倒す・・・!」
「ノゾムはそうするって、私も分かっている・・きっとみんなも・・・」
「そしてツバキやみんなのところに戻る・・必ず・・・」
「それも分かっているよ、ノゾム・・」
ノゾムの意思を聞いて、ツバキが小さく頷いた。
「ありがとう、お父さん・・私がノゾムたちと出会えたのも、お父さんがこのベルトとカードを作ってくれたからだよ・・・」
ツバキがテツロウへの感謝を呟く。
「そういえば、ツバキの父親の話は聞いたことがなかったな・・オレの親父は、全然親父らしくなかったけど、ツバキの父親は違うんだろう・・・?」
ノゾムが話を聞いてきて、ツバキが微笑んで頷いた。
「お父さんは優しかった・・仕事熱心で、家にいることはほとんどなかったけど・・私とお母さんのことを、仕事以上に大切に思っていた・・」
ツバキがテツロウのことを思い出して、安らぎを感じていく。しかし彼女の笑みがだんだんと曇っていく。
「お父さんも中野さんも、エックスビースに・・・」
「ツバキ・・・」
テツロウたちがエックスビースに襲われたことを辛く思うツバキに、ノゾムも深刻さを感じていく。
「エックスビースはオレの敵だ・・必ずアイツらをぶっ潰してやる・・・」
「ノゾム、ありがとう・・私にもっと力があったら・・・」
言いかけるノゾムにツバキが感謝する。
「力があってもいいとは限らない・・この前までオレはそのことを思い知らされた・・・」
「うん・・だから私はもう力を求めない・・ノゾムたちに甘えてしまうことになるけど・・・」
「ツバキは自分の力を分かっているし、わがままでもない・・甘えてしまうことをいいと思ってない・・だからオレが我慢できないことにならない・・」
「本当・・ノゾムはノゾムだね・・自分の考えを貫くところは貫くけど、優しさも大きい・・」
「そういうツバキも、十分優しいじゃないか・・」
「そういってもらえると嬉しいよ・・・」
ノゾムとツバキが会話を続けて、安らぎをふくらませて笑みをこぼした。
「ノゾム、ツバキちゃん、大変だ!」
そこへタイチが駆け込んできて、ノゾムたちに声をかけてきた。
「どうしたの、タイチくん!?そんなに慌てて・・!」
ふらつきかけたタイチの肩をつかんで支えて、ツバキが声をかける。
「お、おかしなヤツが現れたんだ!見た目、ビーストライダーっぽいんだけど・・!」
「ビーストライダー!?」
タイチからの話を聞いて、ツバキが驚く。
「ライダーのベルトはオレのマックス、ソウマのフォックス、シゲルのオックスのヤツだけだろう?・・他にもあったっていうのか・・!?」
「そんなの分かんないよ・・でも、あの姿がライダーに見えたってだけだから・・!」
「私もベルトやカードのことはお父さんたちから詳しく聞いてなかったから・・・!」
ノゾムが投げかける疑問に、タイチもツバキも動揺を見せるばかりだった。
「とにかくさっさとその場所に行って確かめるぞ・・タイチ、どこだ・・!?」
「あ、うん、こっちだよ・・!」
ノゾムが呼びかけてタイチが答える。タイチに案内されて、ノゾムとツバキが走り出した。
爆発と白い煙が巻き起こる街中の広場。人々が逃げ惑うその奥に、1つの黒い影があった。
稲妻模様の赤いラインの入った黒いスーツ。装着しているベルトはビースドライバーに似ていた。
その人物の前にノゾム、ツバキ、タイチが駆けつけてきた。
「ノゾム、アイツだよ!」
「確かに、ビーストライダーに似ている・・!」
タイチが人物を指さして、ツバキが息をのむ。
「お前、何者だ!?・・エックスビースなのか・・!?」
ノゾムが人物に向かって問いかける。人物は彼らに振り向いただけで、何も答えない。
「何とか言え!誰なんだ、お前は!?」
「オレはアックス・・真の力を手に入れた者だ・・!」
ノゾムが怒鳴ると人物、アックスが答える。
「新たに手に入れたこの力、人間どもに見せつけてやるぞ・・・!」
「そんなことのために、関係ないヤツを襲っているのか・・!?」
自分の力を誇示しようとするアックスに、ノゾムが怒りをあらわにする。
“マックス!”
彼がマックスカードを取り出して、ビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムがマックスに変身した。
「オレの怒りは限界突破!」
ノゾムが言い放って、アックスに向かっていく。横に動いて回避を取ったアックスに、ノゾムが振り向き様に組み付く。
「お前があのマックスか・・オレの力を試すには丁度いい相手だ・・」
「ふざけたことをぬかすな・・そんな身勝手なこと、オレは認めない!」
呟きかけるアックスに、ノゾムがいら立ちをふくらませていく。彼がパンチを連続で繰り出すが、アックスに軽々と回避と防御をされていく。
「どうした?この程度では腕試しにならないぞ・・!」
アックスがあざ笑って、足を突き出してノゾムを蹴り飛ばす。
「ノゾム!」
地面を転がるノゾムに、ツバキとタイチが叫ぶ。立ち上がるノゾムが、アックスを睨みつける。
「お前のようなヤツは、さっさとブッ倒す・・!」
“エレファント!”
声を振り絞るノゾムがエレファントカードを取り出して、ビースドライバーにセットされているマックスカードと入れ替える。
“チャージ・エレファーント!ハイフット・ハイレッグ・ハイハイエレファーント!”
エレファントフォルムとなったノゾムが、アックスを迎え撃つ。
「姿を変えてきたか。それでどれほどのものとなったか・・」
アックスは呟いてから、ノゾムに向かって前進する。
ノゾムがアックスと組み付いて、力比べに持ち込む。しかしノゾムはアックスを押し切ることができない。
「姿を変えたところでその程度なのか・・!?」
「おわっ!」
言いかけるアックスに持ち上げられて、ノゾムが投げ飛ばされる。
「エレファントなのに力負けした!?」
「なんてパワーなんだ、あのライダー!?」
ツバキとタイチがアックスの力に驚きの声を上げる。
「ノゾム!」
そこへソウマとシゲルが駆けつけて、ノゾムたちの戦いを目の当たりにする。
「何だ、ありゃ!?新しいビーストライダー!?」
「アイツが暴れているってことなのか!?・・だったらまず止めないと!」
シゲルとソウマがアックスを見て声を上げる。
「ノゾム、オレたちもやるぞ!」
“フォックス!”
ソウマがノゾムに呼びかけて、フォックスカードをビースドライバーにセットした。
“オックス。”
シゲルもブースブレスにオックスカードをセットして、リードライバーにかざした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
“スタートアップ・オックス。”
ソウマとシゲルがフォックス、オックスに変身した。
「オレの強さは疾風迅雷!」
「オレの力は天下無敵!」
2人が言い放って、ノゾムと合流した。
「エレファントでも手こずってるってことは、相当のパワーだな、アイツは・・!」
ソウマがノゾムに言いかけて、アックスの力を警戒する。
「フォックスとオックスも出てきたか。3人そろえばマシになるか。」
アックスがソウマたちを見て呟く。
「3人寄れば文殊の知恵ってな。オレたち3人相手に勝てはしないぜ!」
シゲルが自信を見せて、アックスにゆっくりと向かっていく。
「お前たちを倒して、この力が最強であることを証明する・・・!」
アックスが野心を告げて、シゲルを迎え撃つ。2人が手を組んで、力比べを演じる。
「オックスの力もその程度か・・」
アックスが呟いてから、シゲルを持ち上げて押し返した。
「おわっ!」
シゲルが地面を転がって、ノゾムとソウマが駆け寄る。
「おい、大丈夫か!?」
「何のこれしき!・・だけどアイツ、なかなかやるぞ・・!」
ソウマが問いかけて、シゲルが笑みをこぼしながら答える。
「パワーがアイツでも、スピードはオレだ!空回りにさせてやるよ!」
ソウマが飛び出して、スピードを上げながらアックスの周りでジャンプを繰り返す。しかしアックスは彼の動きに惑わされずに、冷静さを保っていた。
ソウマがアックスの後ろに回って、回し蹴りを繰り出す。しかしアックスにかわされて、さらにその足を腕で押さえられた。
「何っ!?うあっ!」
驚くソウマが振り回されて、投げられて地面を転がった。
「ソウマくん!」
倒れたソウマにツバキが叫ぶ。
「こうなったら同時にキックを当てるぞ!」
シゲルが呼びかけて、ノゾムとソウマが頷いた。2人がビースドライバーの左上のボタンを2回押して、シゲルがリードライバーの中心部を回転させる。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
“オックス・ロードスマッシュ。”
3人が同時にジャンプして、アックスに向かってキックを繰り出す。
“アックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
アックスもビースドライバーの左上のボタンを2回押して、両手にエネルギーを集中させる。彼がノゾムたちに向かって両腕を振りかざす。
「ぐあっ!」
ノゾムたちがキックをはねのけられて、地面に強く叩きつけられる。
「ノゾム!」
ツバキが声を上げて、ノゾムたちが立ち上がる。
「オレたち3人のキックも跳ね返すのか・・!?」
ソウマがアックスの力に驚くばかりになる。
「だったらこっちも力を出せばいいだけだ・・!」
ノゾムが感情をむき出しにして、マキシマムカードを取り出した。
“マキシマム!”
ノゾムがビースドライバーにマキシマムカードをセットした。
“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”
ノゾムがマキシマムフォルムとなって、アックスに向かって歩き出す。
「姿を変えたところで、オレに勝てるということにはならんぞ・・」
「やりもしないで勝手に決めるな・・!」
強気を見せるアックスに、ノゾムが怒りの声を上げる。ノゾムがパンチを繰り出して、アックスに当てて押していく。
「前よりはやるようになったが、まだまだオレには及ばないな。」
アックスは身をかがめてパンチをかわすと、ノゾムの体にパンチを叩き込んだ。
「ぐっ!」
重みのあるパンチを叩き込まれて、ノゾムが怯む。体勢を崩した彼を、アックスが足を出して蹴り飛ばす。
「マキシマムも通用しないなんて!?」
「あのライダー、本当にとんでもない強さ・・!」
追い込まれるノゾムに、タイチとツバキが動揺をふくらませていく。
「あまり時間を長引かせるのは面白くない。そろそろ終わらせてもらうぞ。」
アックスが言いかけると、腰に備えていた2つのパーツを組み合わせた。彼は斧「アクスレイダー」を手にして構えた。
ノゾムが再び飛びかかるが、アックスが振りかざしたアクスレイダーにマックスのスーツを切りつけられる。
「ノゾム、無闇に飛び込んでもやられるだけだ!」
突き飛ばされるノゾムに、シゲルが呼びかける。アックスと距離を取ったノゾムが、エックスカードを取り出した。
「コイツで今度こそお前をブッ倒す・・!」
“エックス!”
ノゾムが怒りをふくらませて、ビースドライバーにエックスカードをセットした。
“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”
ノゾムがエックスフォルムになって、さらにマックスカードとマキシマムカードを取り出した。
“エックスマーックス!ジェネラリーアクション!”
“エックスマキシマーム!アンリミテッドパワー!”
右腕と左腕のエックスブレスにマックスカード、マキシマムカードをセットしたことで、マックスのスーツの右左がそれぞれ赤、黒いラインの入った赤に変わった。
「何になってもお前たちではオレには勝てはしない。」
アックスが言いかけて、アクスレイダーを振り下ろす。ノゾムが両手でアクスレイダーの刃を挟むように受け止めた。
「おっ!真剣白刃取り!」
ノゾムがアクスレイダーを止めたことに、タイチが声を上げた。
「くっ・・先ほどよりもパワーが格段に上がっているのか・・!」
アクスレイダーを押しても引いても動かすことができなくなって、アックスが毒づく。ノゾムがアクスレイダーを取ったまま、腕を振りかざしてアックスを投げ飛ばした。
すぐに立ち上がったアックスだが、ノゾムが繰り出したパンチとキックに押されていく。
「さすがにエックスの力のほうが上みたいだな!」
ソウマが正気を見出して頷いた。ノゾムが跳躍しながらのキックを体に受けて、アックスが押される。
「このまま倒れるわけにはいかない・・まだ、この力を味わってはいないのだから・・!」
アックスがいら立ちを噛みしめて、ビースドライバーにセットされていたアックスカードを取り出して、アクスレイダーの刃と柄の間のスロットにセットした。
“レイダーチャージ!”
アクスレイダーの刀身にエネルギーが集まる。
「お前の好き勝手に付き合ってやるつもりは、オレにはない!」
ノゾムが怒りを口にして、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“エックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーとエックスブレスからあふれたエネルギーが、ノゾムの足に集まっていく。ノゾムがジャンプしてキックを繰り出して、アックスがアクスレイダーを振りかざす。
「ぐっ!」
「ぐあっ!」
衝突による閃光と衝撃で、ノゾムとアックスが吹き飛ばされた。ノゾムが地面を大きく転がって、アックス物陰の奥まで飛ばされて姿を消した。
「ノゾム、大丈夫か!?」
ソウマがシゲルと一緒にノゾムに駆け寄る。ツバキとタイチもノゾムたちのところへ行く。
「オレは平気だ・・それよりも、あのライダーは・・!?」
ノゾムが答えて、アックスの行方を探る。砂煙は治まったが、アックスの姿は見当たらない。
「逃げられたか・・何だったんだ、アイツ・・!?」
「エックスビースの新しい戦士か!?・・何だか厄介なことになるそうだな・・・!」
ソウマとシゲルがアックスのことを口にして毒づく。
「ノゾム、また暴走しそうな感じ、している・・・!?」
「オレは大丈夫だって・・エクシードまでなっていないし、体もおかしいと思えるところはない・・」
ツバキが心配して、ノゾムが自分の体を確かめながら答える。
「何か、イヤな予感がするよ〜・・何かとんでもないことが起こりそうな・・・」
タイチが不安を感じて周りをキョロキョロと見回す。
「今まで散々とんでもないことが起こっているんだ・・何が起こってもおかしいとはまず思わないだろうな・・・」
それでもノゾムは自分の考えを貫こうとする。
「何があっても、身勝手な敵には容赦しない。それがノゾムなんだね・・」
ツバキがノゾムの心境を察して微笑みかける。ノゾムが彼女に振り向いて、小さく頷いた。
ノゾムとの戦いで手傷を負ったアックス。ノゾムたちから離れた彼は、裏路地で呼吸を整えていた。
「マックス、これほどの力を秘めていたのか・・だがこのアックスの力はすばらしい・・力の扱いにも慣れてきたし、次こそはマックスたちを倒すことができる・・!」
ノゾムの発揮するマックスの力に脅威を感じながらも、アックスは自分の力に自信を感じていた。
「お前に次はない。」
そこへ声がかかって、アックスが緊張を覚える。振り返った彼の前に、1人の人物が現れた。
「お、お前は!?」
声を上げた途端、アックスがビースドライバーを奪い取られた。
“スリービースト。”
アックスの変身が解かれた瞬間、その装着者の体が貫かれた。
「オ、オレはまだ、この力に満足していない・・・!」
装着者がうめき声をもらして、倒れて動かなくなった。
「アックスの本来の装着者はお前ではない。勝手にベルトとカードを持ち出すとは・・」
人物がビースドライバーとアックスカードを拾って呟く。
「お前はアックスの力をまだ完全に引き出せてはいない。オレならお前を超えるだけの力は出せる。」
アックスカードを見つめて、人物が笑みを浮かべる。
「この程度ではないぞ。私とアックスは・・いや、我々“チェーン”は・・」
人物が呟いて振り返って歩き出す。人物は通信機を取り出して、連絡を取った。
薄明かりだけが差し込む大きな部屋。その中に1人の男が立っていた。
その男に向けて通信が入ってきた。
“ヤツは始末したぞ。ベルトもカードも取り戻した。”
「そうか。そのベルトとカードはそのままお前が持っていろ。お前の力として活用してくれていい。」
連絡を入れてきた人物に、男が笑みを浮かべて答える。
“いいのか?これもオレたちにとって重要な力なんだぞ?”
「オレにはそれ以上の力がある。アックスが他の誰かを使おうと、オレにとっては問題はない。」
“そうか。分かった。ではアックスのカードはオレがこのまま使わせてもらうぞ。”
「お前もその力を存分に堪能することだな・・」
人物からの言葉を聞いて、男が笑みを浮かべる。しかし彼の笑みはすぐに消えた。
「本格的な行動を起こすまでもう少しだ。それまではアイツのような、派手なことはするな。」
“分かっている。お前からの連絡があるまで、大人しくさせてもらう・・”
男が指示を出して、人物が答える。男が連絡を終えると、再び笑みを浮かべた。
「もうすぐだ・・もうすぐオレが取って代わる・・世界もエックスビースも、全てオレの力に屈服することになるのだ・・!」
男が歓喜と野心を感じて、笑い声を上げる。彼は次の一手の時を待ちわびていた。
新たに暗躍を始めた集団、チェーン。
エックスビースとは違う、ビースドライバーとアニマルカードを所持した集団。
彼らの策略による大事件と、ノゾムたちのかつてない戦いの幕開けは、すぐそこまで近づいていた。
その危機を、ノゾムたちは予感でしか知り得ていなかった。