仮面ライダーマックス
第38話「ノンストップの闘争本能!」
ノゾムがビーストビースターに変わった。エクシードフォルムを使ったことで、ノゾムの体がビースターへと変貌を遂げた。
「ノ・・ノゾムが・・ビースターに・・・!?」
「ノゾムお兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・!」
ツバキとワタルがノゾムを見て、緊張の色を隠せなくなる。
「アイツもビースターだったのかぁ・・!」
オクトパスビースターもノゾムを見て驚きを見せる。
「同じビースターなのに、さっきのおかしな格好で、オレたちを襲ってくるなんてぇ・・!」
オクトパスビースターが不満の声を上げて、ノゾムに近づいていく。ノゾムが彼に振り向いて、鋭い視線を向ける。
「な、何だよ〜・・オレたち、仲間だったんだろ〜・・!?」
オクトパスビースターが動揺して後ずさりする。ノゾムが飛び出してパンチを繰り出して、オクトパスビースターを突き飛ばす。
「お、おい・・何をするんだよ〜・・!?」
オクトパスビースターがさらに動揺して声を上げる。ノゾムが彼に向かってゆっくりと近づいていく。
「やめて〜!助けてくれ〜!オレはまだまだ楽しみたいんだよ〜!」
オクトパスビースターが慌てて助けを請う。ノゾムが握りしめた右手を振りかざして、オクトパスビースターにパンチを叩き込んだ。
「が、がはぁっ!」
オクトパスビースターが絶叫を上げて、力尽きて倒れる。
「やった・・悪いビースターを倒した・・!」
シゲルがノゾムを見て声を上げる。
「ノゾム、大丈夫か・・・!?」
ユウキが呼びかけると、ノゾムがゆっくりと彼に振り返ってきた。
次の瞬間、ノゾムが動き出してユウキの首をつかんできた。
「ぐっ!うぐっ!」
ユウキが首を持ち上げられてうめく。彼がノゾムの腕を振り払おうとする。
「ユウキさん!・・ノゾム、どうしたの!?」
ノゾムの行動にツバキが目を疑う。セイラがとっさに動いて、ノゾムをユウキから引き離そうとする。
「キャッ!」
しかしノゾムが突き出した左足に蹴り飛ばされて、セイラが地面を大きく転がる。
「セイラ!・・ノゾム!」
ユウキが怒りを覚えて、ノゾムの腕をつかむ手に力を込める。
(とんでもない力だ・・エックス以上・・エクシードに迫るほどかもしれない・・!)
ビースターとなったノゾムの力を痛感して、ユウキが緊張をふくらませる。
「ノゾム、やめろ!」
シゲルも呼びかけて、ノゾムを止めに向かう。ノゾムがシゲルに目を向けた瞬間、ユウキが足を振り上げた。
ノゾムの手から離れたユウキ。しかしノゾムが振りかざした左足が、ユウキの体に叩き込まれた。
「ぐっ!」
「うあっ!」
うめくユウキが突き飛ばされて、シゲルとぶつかって倒される。
「ノゾム!?いったいどうしちゃったんだよ!?」
タイチが動揺しながら、ノゾムに向かって呼びかける。するとノゾムがツバキとタイチに振り向く。
「逃げろ、2人とも!今のノゾムは敵味方の区別ができてない!」
シゲルが顔を上げて、ツバキたちに呼びかける。ノゾムが2人に向かって前進を始める。
「お願い、ノゾム!目を覚まして!」
ツバキが必死に呼びかけるが、ノゾムは止まらない。
「いけない・・逃げてください、タイチさん、ツバキさん!」
セイラが呼びかけるが、ツバキもタイチも逃げようとしない。ノゾムがツバキたちに向かって手を伸ばす。
「やめて、ノゾム!こんなこと、ノゾムが1番我慢できないことじゃないの!?」
ツバキがさらにノゾムに呼びかけた。この言葉を耳にして、ノゾムの動きが止まった。
「ノゾム・・!?」
ツバキがさらに声をかけて、ノゾムが彼女をじっと見つめる。
「ツバキ・・・オレ、どうかしていたのか・・!?」
ノゾムが問いかけたところで、変貌した自分の手を目にした。
「何だ、これは!?・・これ、オレなのか・・・!?」
自分がビースターになっていることに、ノゾムが驚きを隠せなくなる。
「ノゾムくん・・よく聞くんだ・・これは、エクシードのカードを使った影響だ・・・!」
タツヤがノゾムに、起こっている異変について告げる。
「エクシードのカードを!?・・まさかカードを使ったことで、オレの体がビースターになったっていうのか・・!?」
ノゾムがさらに驚いて、再び自分の体を確かめる。
「しかもビースターになった途端、ノゾムは見境を失くしたんだ・・悪いビースターを倒しただけじゃなく、オレたちにも襲い掛かってきたんだ・・」
シゲルも続けてノゾムに状況を語る。
「オレが、自分を見失っていたっていうのか・・!?」
ビースターの本能に振り回されたことに、ノゾムはいら立ちと絶望を覚える。
「オレはオレだ・・どんな力にも、振り回されてたまるか・・!」
体に力を込めることで、ビースターの力を無理やり押さえ込もうとするノゾム。すると彼の姿がビースターから人の姿に戻った。
「ノゾム!」
ツバキが叫んでタイチ、シゲルとともにノゾムに駆け寄る。ユウキ、セイラ、タツヤも人の姿に戻る。
「ノゾム、大丈夫!?・・私たちのこと、分かる・・!?」
「あ・・あぁ・・みんな、分かるぞ・・・」
ツバキが問いかけて、ノゾムが小さく頷いて答える。
「ノゾムさん、私たちのことが分かるみたい・・」
「うん・・ビースターの力と本能に振り回されて自分を見失っていたけど、今は自分を取り戻している・・」
セイラがノゾムの様子を見て安心して、ユウキも頷いた。
「またビースターになったりエクシードのカードを使ったりして、また自分を見失う可能性がある・・マックスの力はともかく、ビースターの力をノゾムはコントロールできていないみたいだ・・・」
「そのときはまた、私たちが止めないといけなくなるってことね・・・」
ユウキがノゾムのことを気に掛けて、セイラが不安と覚悟を覚える。
ツバキもタイチもノゾムが元に戻ったことに安心していた。彼らは動物公園へと戻っていく。
そんな中、ノゾムはまた自分を見失って暴走してしまうのではないかという不安を、心の奥で感じていた。
ノゾムを別荘に連れて行った後、ツバキとタイチはソウマのお見舞いに向かった。ツバキたちはノゾムに起きた異変について言わないことを決めた。
「ツバキ、タイチ、今日も来てくれたか。」
病室を訪れたツバキたちに、ソウマが声をかける。彼はベッドの上で、快活に体を動かしていた。
「ソウマくん、そんなに動いて、体は大丈夫なの・・!?」
「あぁ。もうリハビリも始めてる。先生はこの短時間でここまで回復したのは驚きだって言ってたよ。」
驚くツバキにソウマが気さくに答える。彼は深呼吸をしてから、ベッドに入って体を休めた。
「もう少しで退院できそうだ。ノゾムとシゲルに心配しなくていいって伝えておいてくれ。」
「あ、うん、分かったよ、ソウマくん・・」
気さくに言いかけるソウマに、ツバキが作り笑顔を見せて頷いた。
「でもソウマくん、あんまりムリしないようにね。病み上がりが1番心配な時期なんだから・・病気じゃなくてケガだけどね・・」
タイチがソウマに注意を呼びかけて、照れ笑いを見せた。
「それじゃソウマくん、私たちは行くね。」
「えっ?もう行くのか?まぁ、2人もノゾムたちもいろいろあるからな・・」
病室を後にするツバキに、ソウマが戸惑いを見せる。
「オレもすぐに復活するって、みんなに伝えてくれ。オレの強さは疾風迅雷!ケガを治すのも早いんだからな!」
「だからムリは禁物だよ、ソウマくん・・それじゃまたね、ソウマくん。」
意気込みを見せるソウマに言いかけてから、タイチはツバキと一緒に病室を後にした。
(そうだ・・オレもグズグズしてられない。早く復活して、ビースターを倒してやるんだから・・・!)
ソウマが心の中で、意気込みとビースターへの怒りをふくらませていた。
見境を失くして敵味方の区別もつかなくなっていたことを、ノゾムは深く苦悩していた。
ビースターになったことを気に病んでいるのではない。ビースターの本能に振り回されたことに、ノゾムはいら立ちを感じていた。
「ノゾムさん・・そっちに行ってもいいですか・・・?」
そこへセイラがノゾムに向かって声をかけてきた。
「あぁ、いい・・」
ノゾムが答えると、セイラが部屋に入ってきた。
「ノゾムさん、大丈夫ですか?・・どこか、おかしいと思うところは・・?」
「今のところはおかしいとか痛いとかっていうのはない・・ビースターになる前と特に変わっていない気がするが・・・」
セイラが心配して、ノゾムが自分の体の感覚を確かめながら答える。
「セイラ・・お前やユウキは、初めてビースターになったとき、ビースターの力を制御できたのか・・・?」
ノゾムがセイラに力のことを聞く。
「分からない・・確かに初めてビースターになったときは、自分を見失っていた感じはあった・・でもビースターの力に振り回されていたというよりは、怒りで我を忘れていたというほうが合っていたかもしれない・・」
「怒りで我を忘れる、か・・それだったら、オレにも当てはまるな・・だとしたら、セイラたちとオレは違うことになる・・」
セイラの話を聞いて、ノゾムが自分の状態を思い返して言いかける。
「あのとき、オレは意識を失っていた・・体の痛みを感じて意識がなくなって・・気が付いたらツバキたちの目の前にいた・・・」
「ノゾムさん・・・」
ノゾムから話を聞いて、セイラは戸惑いを感じていた。
セイラもユウキも初めてビースターになったとき、きっかけとなった怒りのままにその力を振るっていた。しかしノゾムは込み上げてきたビースターの力で、自分の理性が失われて暴走していた。
ビースターの力を制御できないでいるノゾムに、セイラも苦悩を深めていた。
「あの、ノゾムさん・・もしまたノゾムさんが暴走してしまうことがあったら・・私たちが全力で止めます・・ノゾムさんの心を、取り戻してみせます・・!」
「セイラ・・・オレはもう、ムチャクチャなのに振り回されたりはしない・・たとえオレ自身の力にも・・・!」
励ましの言葉を送るセイラに、ノゾムが自分の信念を貫こうとする。
「ノゾムさんらしいですね・・ノゾムさんはどんなときでも、自分を貫こうとする・・・」
ノゾムらしさを実感して、セイラが物悲しい笑みを浮かべた。
「神奈ノゾムがビースターに?」
黒ずくめの男からの報告を聞いて、ジンキが疑問を覚える。
「どうやら、エクシードのカードを使った副作用によるものと推測されます。」
「引き続き、神奈ノゾムとその仲間の監視を続けろ。ヤツが交戦、もしくはビースターに変化したら報告しろ。決して攻撃を仕掛けるな。」
さらなる報告をする男に、ジンキが命令を出した。男は一礼をしてから社長室を出た。
(マックスがビースターとなるとは・・エクシードのカードの効力は本物だったか。)
ノゾムの異変を知って、ジンキが笑みをこぼす。彼はエクシードカードの副作用に感付いていた。
(エクシードのカードを量産すれば、高い戦闘力を発揮できるだけでなく、ビースターとして覚醒させることができる。)
人間をビースターへと変えて、自分がその全てを束ねることを、ジンキは企んでいた。
その彼と男の会話を、キリオは廊下で盗み聞きしていた。
エックスビースから外へ出たキリオは、手下のビースターを1人呼びつけていた。
「用は何ッスか、アニキ?またとんでもない山ッスか?」
手下の青年がキリオに気さくに声をかける。
「ビーストライダー、マックスのことは聞いてるか?そいつのベルトとカード全部奪い取ってくるんだ。」
「ビーストライダーって、あのビーストライダーッスかー!?そいつは手ごわいッスね〜!」
キリオが命令を出すと、青年が困った素振りを見せる。
「オレの言うことは聞けねぇっていうのか・・!?」
「勘違いしないでほしいッス。やらないなんて言ってないッスよ。」
にらみつけてくるキリオに、青年が気さくな態度のまま言い返す。
「オレも一緒だ。大船に乗ったつもりでいろよ、リョウヘイ。」
「へへ!それなら心強いッス!」
笑みを見せるキリオに青年、リョウヘイが気さくに答えた。2人はノゾムの持つビースドライバーとアニマルカードを狙って動き出した。
ノゾムとツバキたちの様子を見に行こうと、動物公園に向かっていたシゲル。
エクシードカードの使用によるビースターへの変貌。ノゾムがまた暴走するのではないかと、シゲルは気に掛けていた。
「オレも全力で止めないといけなくなるな・・さすがに骨が折れるか・・」
独り言を呟いて、シゲルは公園への道を歩いていく。その途中、彼はキリオが歩いていくのを目撃した。
「あれはエックスビースの!・・ノゾムにこれ以上戦わせるわけにはいかない・・オレがアイツらを止めるしかないな・・!」
シゲルは気を引き締めて、キリオとリョウヘイを追いかけた。彼が近付いてくるのに感付いて、キリオたちが足を止めた。
「別のビーストライダーが出てきやがったか。けどおめぇと遊んでりゃ、向こうからこっちに来てくれるな。」
シゲルに振り向いたキリオが、ノゾムをおびき出せると思って笑みを浮かべた。
「オレをダシに使う気か?そういうなめられ方は好きじゃないね・・・!」
シゲルが言い返して、オックスカードを取り出した。
“オックス。”
彼がビースブレスにオックスカードをセットして、リードライバーにかざした。
「変身!」
“スタートアップ・オックス。”
シゲルがオックスに変身して構えを取る。
「オレの力は天下無敵!」
「おもしれぇ・・どっちが天下無敵か、ここで思い知らせてやるぞ!」
言い放つシゲルをあざ笑って、キリオがシャークビースターとなった。
「オレもやっちゃうッス!」
リョウヘイも意気込みを見せて、サルの姿をしたモンキービースターとなった。
「お前たちは、オレ1人で十分だ・・!」
ノゾムのことを考えて、シゲルがキリオたちに向かっていった。
ビースターとなったキリオたちがシゲルと戦っている音が、ユウキ、セイラ、タツヤの耳に入ってきた。
「これは、あのサメのビースター・・・!」
「ビースター同士が戦っているか、もしかしたらシゲルくんが・・ソウマくんはまだ戦える状態じゃないが・・・」
セイラとタツヤが気配について語る。
「もしもシゲルくんだったら、1人で戦わせるわけにはいかない・・!」
タツヤが言いかけて、セイラが真剣な顔で頷いた。そのとき、ノゾムが別荘から外へ飛び出してきた。
「ノゾム・・!?」
「お前たちも感じたんだろう?・・ビースターが、どこかで暴れているみたいだ・・・」
声を上げるユウキに、ノゾムが問いかける。
「ノゾムくんも、ビースターの戦いを聞きつけたのか・・・!?」
タツヤがノゾムの感覚が、マックスに変身していなくても研ぎ澄まされていることに気付いて驚く。
(しかもノゾム、感じたって・・ビースターの中でも、かなり鋭い感覚を備えているみたいだ・・・!)
ユウキもノゾムがビースターとしてより覚醒していることに気付く。エクシードカードを使ったノゾムは、ビースターとしての能力を覚醒させて、増強させているとユウキは思った。
(エクシードカード・・ここまで人をビースターへと変えてしまうのか・・・!)
エクシードカードの効果を思い知って、ユウキは心を揺さぶられていた。
「ノゾムくん、君はこれ以上戦ってはいけない・・少なくてもエクシードのカードを使うのは、絶対にやめるべきだ・・!」
タツヤがノゾムに戦わないように呼び止める。
「また、ノゾムさんが暴走してしまうから、ですか・・・!?」
セイラが問いかけて、タツヤが小さく頷いた。
「オレはもう振り回されない・・たとえオレの中にある力でも、オレを思い通りにすることはできない・・!」
ノゾムはマックスになることを、エクシードカードを使うことにためらいを感じていない。
「ノゾム、落ち着いて・・ノゾムの体と命は、ノゾムだけのものじゃないよ・・!」
ツバキがタイチ、ワタル、ワオンと一緒にやってきて、ノゾムを呼び止めた。
「だから、もう少し自分を大事にして・・・!」
「そうだよ、ノゾム・・父さんがいなくなって、君まで何かあったら、僕たちは・・・!」
ツバキに続いてタイチもノゾムを心配する。
「オレは死んだりしないし、もう自分を見失ったりしない・・どんなことになっても、オレはオレでいる・・・!」
「お願いだよ、お兄ちゃん!絶対に帰ってきて!」
それでも自分の考えを貫こうとするノゾムに、ワタルも必死に呼びかける。ワタルは目から大粒の涙をこぼしていた。
「言われなくてもそのつもりだ・・オレのためにも、ワタルやみんなのためにも・・」
「お兄ちゃん・・・!」
微笑んで頭を撫でてくるノゾムに、ワタルが戸惑いを見せた。
キリオとリョウヘイの攻撃に、シゲルは悪戦苦闘していた。
「ぐあっ!」
キリオたちに爪で切りつけられて、オックスのスーツから火花が散って、シゲルが突き飛ばされてうめく。
「ケッ!オックス1人じゃまるで手応えがねぇな。これじゃ暇つぶしになるかどうかも・・」
キリオがため息まじりに不満を口にする。
「暇つぶしにもならないかどうか、証明しておかなくちゃな・・!」
シゲルが言い返すと、ラビットカードを取り出した。
“ラビット。”
彼がラビットカードをビースブレスにセットして、リードライバーにかざした。
“スタートアップ・ラビット。”
シゲルがラビットフォルムとなって、スピードを上げた。
「小賢しいマネをしたとこで・・!」
「せめて逃げ足ぐらいまともじゃないとつまんないッスね!逃がすつもり、全然ないッスけどね!」
キリオがまたため息をついて、リョウヘイがあざ笑う。
「ソウマほどじゃないけど、スピードも負けてないっていうのを見せてやるさ!」
シゲルは笑みをこぼすと、素早くジャンプしてキリオたちの周りを跳び回る。
「どこまでも小賢しい・・!」
キリオがいら立ちを浮かべて、上に跳んでシゲルに突撃した。
「うあっ!」
体に突撃されてシゲルがうめく。彼が体勢を崩して地面に落下した。
「アニキ、とどめはいただくッス!」
リョウヘイが倒れたシゲルに向かっていく。起き上がるシゲルだが、回避が間に合わない。
「シゲルさん!」
そこへキャットビースターとなったセイラが駆けつけて、シゲルを抱えてリョウヘイの目の前を横切った。
「おっ!わわっ!」
驚いたリョウヘイがバランスを崩して、前のめりに大きく転んだ。
「みんな・・わざわざ来て助けてくれたのか・・!」
シゲルが声をかけて、セイラが小さく頷いた。ドラゴンビースターとなったユウキ、すねエイクビースターとなったタツヤも駆けつける。
「裏切り者どもも来たか・・肝心のマックスが出てこなくちゃ話にならねぇ・・!」
キリオがユウキたちを見ていら立ちをふくらませていく。そこへノゾムがツバキたちと一緒に駆けつけた。
「今度はお前か、サメヤロー・・!」
「出てきたか、マックス!お前のベルトとカードをいただくぞ!」
にらみつけてくるノゾムに、キリオが言い放つ。
「お前たちも本当にしつこいヤツだ・・2度と出てこれないように、ここでブッ倒してやる・・!」
ノゾムが怒りの声を上げて、マックスカードを取り出した。
「ノゾム、エクシードのカードは使わないで・・・!」
ツバキがノゾムに注意を呼びかける。
「・・・アイツらがさっさと降参するのを願うんだな・・!」
“マックス!”
ノゾムが言い返すと、マックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。
「抵抗してもムダだ・・お前のベルトとカードはオレがもらう!」
キリオが笑みを強めて、ノゾムに向かって飛びかかる。素早い動きを駆使して爪を振りかざすキリオに、ノゾムはマックスのスーツを切りつけられて突き飛ばされる。
「ノゾム!」
シゲルが声を上げて、ユウキがノゾムに加勢しようと飛び出す。セイラも続こうとするが、リョウヘイが割って入ってきた。
「さっきはちょっかい出してくれたッスね!お礼させてもらうッスよ!」
「やめて・・関係ない人を巻き込まないで・・!」
笑みをこぼすリョウヘイに、セイラが振り絞るように呼びかける。
「アニキは強いしすごいッス!オレはアニキについていくって決めたッス!他のヤツがどうなろうと関係ないッスよ!」
「そういう考えが・・世の中をおかしくしていく・・・!」
キリオのためなら手段を選ばないと口にするリョウヘイに、セイラが怒りを覚える。
「人間もビースターも関係ない・・自分勝手な人が、私たちの敵よ!」
セイラが目つきを鋭くして、リョウヘイに向かって飛びかかる。2人が手を振りかざして、爪をぶつけ合う。
「シゲルくん、体勢を整えよう・・!」
「あぁっ・・!」
タツヤに呼びかけられて、シゲルがノゾムたちから1度距離を取った。
その頃、ソウマは体を回復させて、ついに退院のときを迎えようとしていた。
「ありがとうございました。おかげで元気になりましたよ。」
「渋谷くんの回復には、私も驚いたよ。しかし治ったばかりだから、しばらくは激しい運動は控えるようにね。」
感謝するソウマに医者が注意を投げかける。
「アハハ・・それじゃ失礼します。」
ソウマは照れ笑いを見せて、病院を後にした。
(さて、医者には悪いけど、ビースターを倒すためにはオレも戦わないといけないからな・・・!)
ところがソウマは、すぐにでもビースターとの戦いに戻ろうと考えていた。
そのとき、動物公園のほうから逃げ惑う人々を、ソウマは目撃した。
「あれは・・もしかして、ビースターが・・!?」
思い立ったソウマが足を速めて、騒ぎのほうへ向かった。
スピードを上げていくキリオに、ノゾムは追い詰められていた。
「そんなもんか!だったらこのままベルトを奪い取ってやるぞ!」
キリオがノゾムのビースドライバーを狙って手を伸ばす。
「そうはいくか・・!」
ノゾムが身構えて、エックスカードを取り出した。
“エックス!”
彼はビースドライバーにエックスカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”
ノゾムがエックスフォルムに変身して、キリオを迎え撃った。
(ノゾム、エクシードのカードまでは使わないで・・・!)
ノゾムがまた暴走しないことを、ツバキが心の中で願っていた。
「そんなのになったからって、オレに勝った気でいるなよ・・!」
キリオがあざ笑って、スピードを上げて動き出す。
「そのセリフ、そっくり返してやる・・!」
ノゾムは低く告げて、キリオを迎え撃つ。キリオが振りかざしてきた右手を、ノゾムが左手で受け止めた。
「今度こそ、お前をブッ倒してやる・・!」
ノゾムがキリオの腕をつかんだまま、右手でビースドライバーの左上のボタンを押そうとした。するとキリオが左手でノゾムの右腕をつかんだ。
「今だ、リョウヘイ!」
「ウッス!」
キリオが呼びかけて、リョウヘイがセイラの前から飛び出して、ノゾムに飛びかかった。リョウヘイが手を伸ばして、ノゾムが着けているビースドライバーを外した。
「なっ!?」
ビースドライバーを取られてマックスへの変身が解けて、ノゾムが驚く。
「アニキ、やったッス!ベルトを取ったッス!」
リョウヘイが喜んで、キリオにビースドライバーを掲げて見せる。
「よくやったぞ、リョウヘイ!・・さて、このままコイツの息の根を止めてやるぞ・・散々苦汁をなめさせられたからな・・・!」
キリオは喜んでから、ノゾムの腕をつかんで持ち上げる。
「ぐっ!ぐあっ!」
両腕をひねられてノゾムが絶叫する。
「ノゾム!」
「このままへし折ってやるぞ!」
ツバキが叫んで、キリオが笑みを浮かべて手に力を込める。
(オレは死なない・・こんなところでやられるわけには・・こんなヤツにやられるわけにはいかない・・・!)
理不尽への怒りをふくらませるノゾム。その激情が彼自身の体を刺激した。
ノゾムの腕がキリオの手を払いのけた。後ずさりして目を見開くキリオの前で、ノゾムがビーストビースターになった。
「ノゾム!」
「これが、コイツのビースターとしての姿か!」
タイチが叫んで、キリオが言いかけて笑みをこぼす。
「あれは、ビースター・・!」
そこへソウマが駆けつけて目を見開いた。
「ビースターは倒す・・ツバキたちを傷付けさせはしない!」
“フォックス!”
ソウマが怒りを叫んで、ビースドライバーにフォックスカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
ソウマがフォックスに変身して飛び出した。ビーストビースターがノゾムであることを知らないまま。