仮面ライダーマックス
第35話「ナイトメア強襲!」
ゴロウの行方を追うシゲル。しかしゴロウの行方も手がかりも見つけることができなかった。
「これだけ捜しても見つからないなんて・・ツバキちゃんたちからも連絡はないし・・」
シゲルが取り出したスマートフォンを見て、焦りを感じていく。
「1回戻ったほうがいいか・・ノゾムのことも心配してないわけじゃない・・」
シゲルが1度ノゾムたちのところに戻ることを決めた。そのとき、彼はユウキ、セイラ、タツヤが歩いていくのを見つけた。
「あれは・・お前たち、待ってくれー!」
シゲルが追いかけると、ユウキたちが足を止めて振り返る。
「お前は・・ノゾムと同じビーストライダー・・・!」
ユウキがシゲルを見て警戒を見せる。
「ノゾムが生き返ったっていうのは、本当なのか・・・!?」
「あぁ・・今、アイツの別荘で寝てる。みんなも一緒さ。」
問いかけるユウキに、シゲルが気さくに答える。
「シゲルくん、ここで何をしているんだ・・・?」
タツヤがシゲルに疑問を投げかける。
「3人には話したほうがよさそうだな・・昨日から、ゴロウさんがいなくなった・・・!」
シゲルがユウキたちにゴロウのことを打ち明けた。
「ゴロウさんが!?・・連絡も全然取れないんですか・・!?」
「あぁ。今まで散々探し回ったけど、全然見つかんないんだ・・」
セイラが動揺して、シゲルが深刻さを込めて答える。
「まさか、エックスビースに捕まったのでは・・!?」
「その可能性は否定できないな・・だから急いで見つけなくちゃいけないんだ・・それもノゾムにはできるだけ黙ってて心配させないように・・」
タツヤが不安を口にして、シゲルが事情を口にする。
「私も捜そう。ユウキくんたちは先に戻っていて・・」
「でも、タツヤさんとシゲルさんだけで・・・」
タツヤが呼びかけるが、セイラが不安を見せる。
「休ませなくちゃいけないのは、ユウキくんも同じだから・・」
「タツヤさん・・・オレのために・・・」
気を遣うタツヤに、ユウキが戸惑いを覚える。その彼の肩に、タツヤが優しく手を乗せる。
「ビースター同士だからじゃない。ユウキくんはユウキくんだから、助けたいと思っている。そのことを覚えていて・・」
「オレが、オレだから・・・」
タツヤの投げかける言葉を聞いて、ユウキは心を揺さぶられる。彼の中で、ノゾムに対する感情が揺れ動いていた。
「ありがとうございます、タツヤさん・・じゃ、行きましょうか・・」
「うん・・セイラさん、ユウキくんを頼む・・」
シゲルとタツヤがゴロウを捜しに歩き出した。
「ユウキ、戻ろう・・・」
セイラが呼びかけて、ユウキは小さく頷いた。
ツバキに続いてタイチとワタルも目を覚ました。ノゾムも目を覚ましていたことに、2人は安心を感じた。
「ノゾム、もう大丈夫なのか・・・?」
「タイチたちも起きたか・・オレはもう大丈夫だ・・」
タイチが声をかけて、ノゾムが小さく頷いた。
「お兄ちゃん、もう心配かけたらダメだよ・・すっごく心配したんだから・・・!」
ワタルが涙をこらえながら、ノゾムに向かって声を振り絞る。
「悪かったな、ワタル・・オレはどんなことがあっても、絶対に死んだりしない・・まだエックスビースはいるんだからな・・・」
「エックスビースがいなくなっても、ずっと無事でいてね、ノゾムお兄ちゃん・・」
謝るノゾムにワタルが呼びかける。こらえきれずに涙を流す彼の頭に、ノゾムが優しく手を乗せた。
「もちろんだ・・オレのためにも、お前やみんなのためにも・・・」
「ノゾムお兄ちゃん・・・」
自分の正直な気持ちを口にするノゾムに、ワタルが涙を拭ってから笑みを見せた。
そのとき、ノゾムは近づいてくる足音を耳にした。
「誰か、こっちに近づいてくる・・2人だ・・足音が聞こえる・・」
「えっ?・・私には聞こえないよ、ノゾム・・」
「僕も・・」
ノゾムが呟いた声に、ツバキとタイチが疑問符を浮かべる。2人とワタルには足音は聞こえていない。
「みんなは、聞こえていないのか・・・!?」
ノゾムは動揺を見せながら、別荘から外へ出る。彼はユウキとセイラが歩いてくるのを目にした。
「ユウキ・・セイラ・・・!」
「えっ!?」
ノゾムが言いかけて、ツバキたちが声を上げて外に顔を出した。
「ユウキさん・・・2人とも、大丈夫ですか・・!?」
「うん・・疲れているけど、体は平気・・」
ツバキが心配の声をかけて、セイラが微笑んで答えて、ユウキに目を向けた。
「ノゾム・・・」
「ユウキ・・・」
ユウキとノゾムが真剣な顔で互いに目を向ける。込み上げてくる激情を抑えるのに、2人とも必死だった。
「ノゾムは、ビースターそのものを滅ぼそうとしていないのか・・・?」
「ビースターも人間も関係ない・・自分たちのためだけに他の人を傷付けて平気でいるヤツが、オレの敵だ・・・」
ユウキが問いかけて、ノゾムが自分の正直な考えを口にする。
「身勝手な人・・オレも、そんな敵を許せないと思っていた・・・」
「お前も、オレと同じだったのは、ホントだったんだな・・・」
会話をしていくにつれて、共感をしていくユウキとノゾム。
「オレは、傷つくのが辛い・・だから、ホントはどれだけ信じられるヤツだとしても、すぐに信じることができない・・・」
「でも、いつか必ず分かり合えるときが来る・・オレたちは、オレたちだけじゃないから・・」
ノゾムが本音を口にして、ユウキがセイラとツバキたちに目を向ける。ユウキはツバキたちのノゾムに対する思いを感じ取っていた。
「そうだな・・オレたちは、1人じゃないってことだな・・みんながいなかったら、オレはこうして立っていられなかった・・・」
ツバキたちに助けられたことを噛みしめて、ノゾムは感謝をふくらませていた。
(オレが、あんなに憎み合っていたヤツと、後になって仲直りするなんて・・)
ユウキとの和解を不思議に感じて、ノゾムが心の中で苦笑していた。
「そういえば、あのタツヤって人はどうしたんだ?・・シゲルもいないし・・」
「それは・・・」
ノゾムが疑問を投げかけて、セイラが口ごもる。
「途中でシゲルさんと会ったの・・?」
「はい。用事があるそうで・・」
タイチが問いかけて、セイラが小さく頷く。
「用事か・・もしかして、エックスビースのヤツらが何かしようとしているのかも・・」
「ノゾム・・・」
ノゾムが呟いて、ツバキが不安を覚える。ノゾムにゴロウのことを気にさせてはいけないと、彼女は思っていた。
ゴロウの行方を追うシゲルとタツヤ。しかし2人で捜しても、ゴロウは見つからない。
「ゴロウさん、全然見つからない・・!」
「やはり、ノゾムくんに事情を話して、エックスビースに乗り込んだほうがいいかもしれない・・」
肩を落とすシゲルに、タツヤが深刻な顔を浮かべて言いかける。
「できることなら、ノゾムくんにこれ以上戦ってほしくはない・・少なくても、あのエクシードのカードを使ってほしくない・・」
「どういうことなんだ、タツヤさん・・?」
タツヤが口にした言葉に、シゲルが疑問符を浮かべる。
「これはまだ確証があるわけじゃないが・・エクシードのカードを使い続けたら・・・」
タツヤがシゲルに話を切り出そうとした。
そのとき、シゲルたちの耳に足音が入ってきた。
「もしかして、ゴロウさんかもしれない・・!」
シゲルが希望を感じて、足音のほうに向かって走り出した。
長いすれ違いと対立を経て、ようやく心からの和解を果たすことができたノゾムとユウキ。河川敷に来た2人は、流れる川を見つめながら気分を落ち着けていた。
「オレはエックスビースをぶっ潰す・・そこの社長ってヤツに借りを返すぐらいはしないとな・・」
「オレもエックスビースと戦う・・オレとセイラ、タツヤさんを狙ってくる理不尽に屈しないために・・」
ノゾムとユウキがそれぞれの決意を口にする。考え方や理由は違う2人だが、エックスビース打倒を決めていたのは同じだった。
「世の中を思い通りにして、オレたちや他のヤツをムチャクチャにしていい気になっているアイツらを、オレは許しはしない・・どんなことをしても、この手でブッ倒す・・!」
「セイラやツバキさんの言う通りだ・・オレと君、似た者同士ってことか・・」
不条理を振りかざす敵を憎むノゾムに共感して、ユウキが笑みをこぼす。
「似た者同士なのに、あそこまで憎み合って戦うことになるなんて・・・」
「似た者同士だからなのかもしれない・・オレもノゾムも、かなりガンコみたいだって・・」
「だから他のヤツのいうことを聞かずに、あそこまでぶつかり合うことになったのか・・」
「今思えば、バカバカしいって思えるけどね・・こんなことをしなくても分かり合えたはずだって・・」
ノゾムとユウキが会話をして、互いに苦笑いを見せ合う。
「オレたち、力を合わせることもできるだろうか・・・」
「簡単にすぐにってわけにはいかないけど、遠い話でもないな・・」
不安と戸惑いを浮かべるユウキに、ノゾムは突っ張った態度を見せて答えた。
「ここまで時間がかかったんだ・・きっと気長に待てると思う・・」
「オレは気が長いほうじゃないんだけどな・・・」
微笑むユウキの言葉に、ノゾムがため息まじりに言葉を返す。屈託のない会話をして、2人は笑みをこぼしていた。
そのとき、ノゾムとユウキが近づいてくる足音を耳にして振り返る。
「あれは、ゴロウさんだ・・あんなところで何をやっているんだ・・?」
ノゾムがゴロウを見つけて疑問符を浮かべる。一方、ユウキはゴロウがいたことに動揺と安心を感じて、感情が表に出ないように抑えた。
ユウキはゴロウの行方が分からなかったことを聞いていた。しかしノゾムはゴロウのことを聞かされていなかった。
「ノ・・ノゾムくん、ユウキくん・・」
ゴロウもノゾムたちに気付いて笑みを浮かべる。ふらついた彼を、ノゾムが駆け寄って支える。
「ゴロウさん、大丈夫か!?しっかりしてくれ!」
「ノゾムくん、僕は・・」
呼びかけるノゾムに、ゴロウが弱々しく声を上げる。
「何があったんだ!?誰かに襲われたのか!?」
心配の声をかけるノゾム。彼はビースターやエックスビースのことを切り出さないようにした。
「分からない・・何があったのか・・・」
ゴロウが思考を巡らせて声を振り絞る。何かが起こっているのではないかと、ノゾムは直感した。
ゴロウが疲れ切って、ノゾムに支えられたまま意識を失った。
「ゴロウさん!」
ノゾムがゴロウに呼びかけて、緊張をふくらませていく。
「すぐに病院へ!すぐそこにある!」
「あぁ!」
ユウキが呼びかけて、ノゾムがゴロウを連れていこうとした。
そこへララと数人の黒ずくめの男たちが現れた。
「アイツら・・こんなときに!」
ノゾムがララたちを見て、目つきを鋭くする。
「あなたたち・・今度こそ、ベルトとカードを取り戻す・・・!」
ララが激情をあらわにして、ローズビースターとなった。男たちもビートルビースター、スタッグビースターに変身した。
ユウキがとっさに自分のスマートフォンを取り出して、連絡を試みる。
「セイラ、エックスビースが!・・ゴロウさんも一緒だ!」
“ゴロウさん、見つかったの!?・・分かった!すぐに行くわ!”
ユウキの呼びかけにセイラが答えた。
「ゴロウさんを安全なところまで連れていくのが先だ!」
「そうするしかないな!」
ユウキが呼びかけて、ノゾムが毒づきながら答える。2人はゴロウを連れて、ララたちから逃げ出す。
「逃がさない!」
ララが声を上げて、ノゾムたちを追いかける。変身していない2人は、すぐに彼女に回り込まれた。
「くっ・・やっぱり戦うしかないってことなのか・・・!」
ビースターたちに取り囲まれて、ノゾムが毒づく。
「オレがコイツらの相手をする!ユウキはゴロウさんを連れて先に行ってくれ!」
「ノゾム!」
ノゾムが呼びかけて、ユウキが動揺を見せる。ノゾムがユウキにゴロウを預けてから、マックスカードを取り出した。
“マックス!”
ノゾムがビースドライバーにマックスカードをセットして、左上のボタンを押した。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
彼がマックスに変身して、ララたちに立ち向かう。
「ノゾム!」
「早く行け!」
声を上げるユウキに、ララにパンチを繰り出すノゾムが呼びかける。頷いたユウキがドラゴンビースターになった。
「裏切り者が!追いかけるぞ!」
ビートルビースターの1人が呼びかけて、他のビースターたちとともにユウキたちを追いかけようとする。
“チャージ・シャーク!シャーシャーシャーシャー・シャークソード!”
“ガンガン・シャークガーン!”
ノゾムがシャークソードを手にして、ガンモードにして発砲した。ビートルビースターたちが射撃に阻まれて足を止める。
「お前たちの相手はオレだ!まとめてブッ倒してやる!」
ノゾムが言い放って、再びシャークソードを連射する。ビートルビースターたちが射撃をかわして、ノゾムに反撃を仕掛ける。
“シャークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押して、シャークソードの引き金を引く。シャークソードの先からビームが放たれてビートルビースターとスタッグビースターを1人ずつ撃ち抜いて倒した。
「もういい気にはさせない・・お前は私が倒す!」
ララがノゾムに怒りを見せて、全身に力を込める。
「オレはもう倒れない・・ムチャクチャを押し付けるお前たちを、オレは許しはしない!」
ノゾムも怒りをあらわにして、ララたちに向かっていった。
ゴロウを抱えてララたちから離れたユウキ。動物公園の近くまで来たところで、彼はビースターから人の姿に戻った。
(ゴロウさんには、ノゾムたちやオレたちのことを知られるわけにはいかないからね・・)
これ以上自分たちの戦いに巻き込んではいけないと、ユウキはゴロウを気遣っていた。
「ユウキ!」
セイラがやってきて、ユウキたちと合流した。
「ツバキさんとタイチさんもこっちに向かっているわ・・私だけ先に来たの・・」
「セイラ・・早くゴロウさんを病院に・・・!」
セイラが事情を話して、ユウキがゴロウを連れて行こうとした。
そのとき、ゴロウが意識を取り戻して体を起こした。
「ゴロウさん!」
「気が付きましたか!」
セイラとユウキがゴロウに向かって声を上げる。
「これから病院に行きましょう!かなり疲れているみたいです!」
ユウキがゴロウに心配の声をかけた。ところがゴロウは目がうつろで、彼の声に答えない。
「ゴロウさん・・どうしたんですか・・・!?」
ユウキがゴロウの様子を気にして、さらに声をかける。するとゴロウが体を震わせてきた。
「ゴロウさん・・・!?」
ゴロウの異変に、セイラが動揺を浮かべる。次の瞬間、ゴロウの姿が変わって、クジラを思わせる怪人となった。
「ゴ、ゴロウさん!?」
ゴロウの変貌にユウキが目を疑う。ゴロウが口から光を発してエネルギーを集める。
「危ない!」
ユウキがとっさにドラゴンビースターとなって、セイラを庇う。ゴロウが口から放った光が、ユウキの背中に直撃した。
「ぐあっ!」
ユウキが苦痛を感じて、ふらついてセイラにもたれかかる。
「ユウキ!ユウキ、しっかりして!」
セイラがユウキを支えて呼びかける。痛みに耐えようとするユウキだが、自力で踏みとどまることができない。
「ゴロウさん、どうしたんですか!?・・やめてください!目を覚ましてください!」
セイラが動揺しながら呼びかけるが、ゴロウは2人への攻撃をやめない。
(私たちの声が届かない・・私たちのことが、分かっていない・・・!?)
ゴロウの変貌にセイラは驚きを隠せなくなる。ゴロウが再び口から光を放とうとした。
セイラがとっさにキャットビースターになって、ユウキを抱えて走り出した。ゴロウが放った光を、彼女は必死に動いてかわした。
光が当たった地面に爆発が起こる。ゴロウは爆発の周囲を見渡してから、ゆっくりと歩き出した。
「ユウキ、大丈夫!?」
「オ・・オレは大丈夫だ・・それよりもゴロウさんを・・・!」
セイラからの心配の声に答えて、ユウキがゴロウに目を向ける。
「いけない・・その先にはノゾムがいる・・今、ゴロウさんと鉢合わせしたら、大変なことになる・・!」
ユウキが危機感を覚えて、ゴロウを追いかける。
「ユウキ、待って!」
セイラも慌てて走り出して、ユウキとともにゴロウを追った。
ララの放つバラの花吹雪に翻弄されて、ノゾムが吹き飛ばされる。すぐに立ち上がるノゾムだが、ビートルビースターとスタッグビースターに腕をつかまれる。
「今度こそ・・今度こそベルトとカードを・・・!」
ララが笑みを浮かべて、ノゾムに迫る。ノゾムがビースターたちの手を振り払うことができない。
「ノゾム!」
そこへオックス・ラビットフォルムになったシゲルが駆けつけて、ビースターたちにキックを叩き込んだ。ノゾムがビースターたちの手を振り払って、シゲル、スネイクビースターになっているタツヤと合流した。
「ノゾム、大丈夫か!?」
「あぁ・・オレよりも、ゴロウさんのことを・・今、ユウキが連れて逃げてる!」
シゲルの問いかけに答えて、ノゾムが呼びかける。
「ゴロウさん・・ノゾム、あのな・・!」
シゲルがノゾムに話を切り出そうとしたときだった。ララが再び花吹雪を放って、ノゾムたちがとっさに横に動いてよける。
「お前たち、どこまでもオレたちを追い詰めようとしてきて・・そんなにブッ倒されたいとでもいうのかよ・・!」
執拗に攻めてくるララたちに、ノゾムの怒りが頂点に達する。
「そこまでバカなことをされたいっていうなら、望みどおりにしてやるよ!」
“マキシマム!”
ノゾムがマキシマムカードを取り出して、ビースドライバーにセットした。
“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”
ノゾムがマキシマムフォルムとなって、ララを迎え撃つ。彼女が繰り出すキックを、ノゾムが両腕で防いでいく。
ノゾムが手を強く握りしめて、重みのあるパンチを繰り出す。
「うあっ!」
ララが突き飛ばされて、地面を激しく転がる。
「ララ様!」
ビートルビースターとスタッグビースターたちがララを守ろうと、ノゾムに向かっていく。ノゾムがパンチとキックを繰り出して、ビースターたちを返り討ちにしていく。
「お前たちも、倒されないと分かんないとでも言いたいのか!?」
ノゾムが怒鳴って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがジャンプして、エネルギーを集めた両足のキックを繰り出す。
「がはぁっ!」
スタッグビースターの1人がキックを受けて突き飛ばされて、爆発しを起こして消滅した。
「マックス・・オレたちが束になっても勝てないというのか・・!?」
ビースターたちが緊張をふくらませて、ノゾムから後ずさりする。
「逃げても社長に処罰されるだけだよ・・ベルトとカードを取り戻す以外に、私たちの未来はないの!」
ララが呼びかけて、ビースターたちが踏みとどまる。
「尻尾巻いて逃げればいいのに・・・!」
ノゾムがいら立ちを浮かべて、ララたちに立ち向かおうとした。
そこへ1つの光が飛びこんできて、ノゾムたちとララたちの間を突き抜けた。
「な、何だ!?」
突然のことにノゾムが驚く。彼らの前に現れたのは、クジラの姿の怪人、ホエールビースター。
「何だ、アイツは!?エックスビースのビースターか!」
ノゾムがホエールビースターを見て身構える。
「待て、ノゾム!あのビースターは、あの人は・・!」
シゲルがノゾムに向かって呼びかける。
「シゲル!?・・あのビースターを知っているのか・・・!?」
「・・・オレも、信じたくはない・・だけど、オレたちの前でビースターになったんだ・・・!」
ノゾムが振り向いて、シゲルが緊張を込めて答える。
「その人は・・ゴロウさんだ!」
「な・・何だと・・・!?」
シゲルが口にした言葉に、ノゾムが耳を疑った。
シゲルとタツヤはゴロウを見つけていた。しかし直後にビースターとなったゴロウに、2人は襲撃されることになった。
シゲルたちが追いつく前に、ノゾムたちはゴロウと再会していた。
「おい・・ウソをつくなよ・・そんなの、ウソでも許さないぞ!」
信じられないノゾムが、シゲルに怒鳴り声を上げる。
「私も信じられなかった・・しかし私もこの目で見た・・!」
「うるさい!こんなときにでたらめを言うな!ゴロウさんがビースターのわけがないだろうが!」
タツヤも言いかけるが、ノゾムは怒鳴って言葉をさえぎる。
「ウソかどうか自らの目で確かめてみることだな。」
そこへジンキが現れて、ノゾムに声をかけてきた。
「佐々木ゴロウ、人の姿になれ。」
ジンキが呼びかけると、ホエールビースターが人の姿になった。紛れもなくゴロウだった。
「な・・何なんだよ・・・今度はオレを騙す作戦かよ!?」
ノゾムが声と体を震わせて、さらに怒鳴りかかる。
「オレは騙されないぞ!お前たち、まとめてブッ倒してやる!」
「そうしたいならするがいい。恩人を自らその手にかけたいのなら。」
怒りを叫ぶノゾムに、ジンキが表情を変えずに言いかける。
「紛れもなく本物の佐々木ゴロウ。彼は我々が調整を施したのだ。我々の命令通りに行動する、強力なビースターにな。」
ジンキがゴロウに目を向けて語りかける。
「信じない・・認めてたまるか・・そんなムチャクチャなこと、絶対に認めるか!」
ノゾムが激情を高ぶらせて、叫び声を上げる。彼がゴロウに向かって前進していく。
「ノゾム・・ノゾムくんなのか・・・?」
そのとき、ゴロウがノゾムに向かって声を発してきた。
「ゴロウさん・・・!?」
ゴロウの声を耳にして、ノゾムが動揺を見せる。
「その声・・ノゾムくんなのか・・・!?」
「ゴロウさん・・・!」
ゴロウの声を聞いて、ノゾムが動揺を見せる。彼はようやく、ゴロウがビースターにされてしまったことを思い知らされた。