仮面ライダーマックス

第33話「エックスコーポレーションに潜む謎!」

 

 

 ノゾムを復活させるためのカードを手に入れようとして、ソウマたちはエックスコーポレーションの本社に乗り込んだ。彼らを止めようとビースターたちが次々に現れる。

「ちくしょう・・しつこいヤツらだぜ・・!」

「この中じゃイグアナもオオカミも入れないしな・・!」

 ソウマとシゲルがビースターたちに対して毒づく。

「このままじゃ、そのうちあのジンキという人が戻ってくるかもしれない・・・!」

「そうなったら、私たちは一気に窮地に立たされることになる・・・!」

 セイラとタツヤがジンキのことを考えて、不安を感じていく。

「アイツが出てくるなら好都合だけど・・!」

「その前にここにいるビースターたちを追っ払っておかないとな・・」

 ソウマとシゲルが言葉を交わして、ジャッカルカードとラビットカードを取り出した。

“ジャッカル!”

“ラビット。”

 2人はビースドライバーとビースブレスに、ジャッカルカードとラビットカードをセットした。

“チャージ・ジャッカール!ジャックスピード・ジャックソウル・ジャックジャックジャッカル!”

“スタートアップ・ラビット。”

 ソウマとシゲルがそれぞれジャッカルフォルム、ラビットフォルムに変身した。

「これでスピードアップだ!一気に終わらせる!」

 ソウマが言い放って、加速して駆け出して、ビースターに高速のパンチとキックを叩き込んでいく。受け身もままならず、ビースターたちが次々に倒れていく。

「カードがある可能性が高いのは、やっぱり社長室か!?

 シゲルが振り向いて、タツヤに問いかける。

「持ち歩いていなければ、社長室にあるはずだ!」

「このまま突っ切って、社長室に殴り込みといこうか!」

 タツヤの答えを聞いて、シゲルが納得する。彼らは上へ上へと駆け上がって、ついに最上階の社長室にたどり着いた。

「ここか・・!」

「このどこかに、ノゾムさんを助けられるカードが・・・!」

 社長室の中を見回して、セイラとソウマが呟く。

「グズグズしている暇はない!手分けしてくまなく探そう!」

 ソウマが呼びかけて、シゲルたちと一緒にカードを探した。机の引き出しや棚を徹底的に調べるが、求めているカードは見当たらない。

「ここにないのか・・だとしたら、ジンキが持っているんじゃ・・!?

 事態が最悪の方向に向いていると思って、タツヤが息をのむ。

「どっちにしてもアイツの相手をするのは望むところだ・・!」

「だけどここだと戦いにくい・・外へ出たほうがよさそうだ・・!」

 ソウマが笑みをこぼして、シゲルが周りを見回して呼びかける。

「こっちだ!追い詰めろ!」

 廊下から声がして、ソウマたちが身構える。

「廊下を突っ切るにはまた暴れないといけなくなる・・こうなったら窓から外へ出るぞ!」

「おいおい、マジかよ!?40階から急降下するつもりか!?

 シゲルの呼びかけにソウマがたまらず声を上げる。

「でなきゃジンキと他のビースターに挟み撃ちにされてしまう!そうなったら一巻の終わりだぞ!」

「命懸けでやってきてるんだ。そのくらいどうってことないか・・」

 シゲルがさらに呼びかけて、ソウマが渋々納得する。

「それじゃ、せーので同時に窓から飛び出すぞ!」

「は、はい・・!」

 シゲルが声をかけて、セイラが頷いた。

“イグアナ。”

 シゲルがビースブレスにイグアナカードをセットした。

「行くぞ・・せーの!」

“スタートアップ・イグアナ。”

 彼が掛け声とともに、ソウマたちと一緒に窓を破って外へ飛び出した。

「イグアナ、来てくれ・・いったんここから離れるぞ・・・!」

 シゲルが声を振り絞るように、イグアカートを呼ぶ。イグアカートが駆けつけて、シゲルたちを地上に落ちる直前で受け止めた。

「あ・・危ないところだった・・」

「危機一髪だった〜・・」

 セイラとソウマが戸惑いを見せて呟く。

「外に出たけど、狭い道じゃやっぱり不利だ・・いったん広いところに出て、体勢を立て直したほうが・・」

 シゲルが次の出方を考えていた。そのとき、イグアカートが突然止まって、シゲルたちが振り落とされないように踏みとどまる。

「あ、危ないな・・どうしたんだ、いきなり・・!?

 ソウマが驚いて、イグアカートと前方に目を向ける。その先に1人の男が立っていた。

「あれは・・黒木ジンキ!」

 セイラがジンキを目にして、緊張をふくらませる。

「エックスコーポで好き勝手に暴れてくれたものだな・・」

 ジンキが言いかけて、黒い姿へと変化を遂げる。ダークビースターとなった彼が、ソウマたちに近づいていく。

「イグアカート、横に動いて回避しろ!」

 シゲルが呼びかけて、イグアカートがジンキから離れる。ジンキが右手をかざして黒い光を放って、イグアカートに命中させた。

「うわっ!」

 イグアカートが横に倒れて、ソウマたちが振り落とされる。

「くそっ!アイツ、やる気なら相手になってやるぞ!」

 ソウマが怒りの声をあげて、ジンキの前に立つ。

「お前たちのベルトとアニマルカードを返してもらおうか。」

「ふざけんな!お前こそ、新しいカードをよこせよ!」

 呼びかけるジンキにソウマが怒鳴る。

「ムダな時間を取らせるな。従わないなら、お前たちの命も刈り取る。」

 ジンキがソウマに詰め寄って、握った右手を突き出す。

「うっ!」

 彼のパンチを受けて、ソウマが突き飛ばされて地面を転がる。

「ソウマ!」

「このジャッカルよりも速いなんて・・!」

 シゲルが声を上げて、ソウマがジンキの速さに毒づく。

「オレは全てを支配するに値する力を備えている。たとえビーストライダーでも、私を超えることはできん。」

 ジンキがビースドライバーとアニマルカードを狙って、ソウマに迫る。

「オレが注意を引き付けるから、2人はソウマを助けてくれ!」

 セイラとタツヤに呼びかけて、シゲルがジンキに向かっていく。高く速い跳躍力で、シゲルはジンキの周りを跳び回って注意を引き付ける。

「オレにとってお前は野ウサギどころか、蚊トンボにも値しない。」

 ジンキが呟いてから、素早く動いてシゲルの体にキックを叩き込んだ。

「がはっ!」

 強い衝撃が体を駆け巡って、シゲルがうめいてふらつく。

「シゲル!・・こ、このヤロー・・!」

 ソウマが声を振り絞って立ち上がる。彼がビースドライバーの左上のボタンを押して、シゲルがリードライバーの中心部を回転させる。

“ジャッカルチャージ!アニマルスマーッシュ!”

“ラビット・ロードスマッシュ。”

 ソウマが体を回転させて竜巻を放って、ジンキを巻き込んだ。シゲルが大きくジャンプして、竜巻の中に入るように急降下する。

 ソウマとシゲルがジンキに向かって、同時にキックを繰り出した。だがジンキの発した黒い光に、2人がキックを止められた。

「何っ!?

 驚きを覚えるソウマたちが、ジンキの光に押されて、竜巻ごと吹き飛ばされた。

「ぐあっ!」

 地面に強く叩きつけられて、ソウマとシゲルがうめいた。

“スリービースト。”

“シャットダウン。”

 ビースドライバーとリードライバーが外れて、2人の変身が解けた。

「ソウマさん!シゲルさん!」

 セイラがソウマたちに向かって叫ぶ。2人の前にジンキが近づく。

「ベルトとカードを返してもらう。人間が愚かさを捨てて進化を果たすために必要なことだからな。」

「何を言っている!?・・お前のせいで、中野さんは、みんなは・・・!」

 言いかけるジンキに、ソウマが顔を上げて鋭く睨みつける。

「あの研究チームの面々は進化を、私を拒んだ。死に値するのは当然だ。」

「貴様!・・うぐっ!」

 表情を変えないジンキに怒りを覚えるが、体に痛みを感じてうめく。

「私がいれば敵は殲滅することはできる。だが世界の安泰を維持するには、私1人だけが生き延びればいいというわけにはいかない。だからベルトとカードが必要となるのだ。」

「御託はいい・・貴様のせいで、オレたちは・・中野さんたちは!」

 ジンキの口にする言葉に、ソウマはさらに怒りをふくらませる。

「支配とか進化とか・・お前の目的はいったい何なんだ・・!?

 シゲルが声を振り絞って、ジンキに問いかける。

「全ての人間をビースターに覚醒させる。そうなれば弱肉強食の下、世界の支配と安泰が完成する。」

「人間をビースターに!?・・貴様、人間の命を何だと思っている!?

「フン。やはりお前たちは、ビースターがどういう存在なのかを分かっていないようだな。もっとも、それもまだ秘密事項の中にあることだが。」

「分かっている!自分のことしか考えてないバケモノ!滅びないといけないヤツらだってな!」

 表情を変えずに語っていくジンキの言葉を、ソウマが拒絶していく。

「そこまで言い張るなら教えてやろう。ビースターは人間の進化だ。」

 ジンキが口にしたこの言葉に、ソウマ、シゲル、セイラは耳を疑った。

「どこまでもバカなことを・・ビースターが元が人間だったなんて寝言、信じられるわけないだろうが!」

 ソウマが体を震わせて怒号を放つ。

「いや、本当だ・・ビースターは、元々は人間だ・・・!」

 タツヤも続けてソウマたちに言いかけてきた。

「アンタまでそんなこと・・・!」

「信じないというならそう思い込めばいい。だがこれは紛れもない事実だ。」

 タツヤにもいら立ちを見せるソウマに、ジンキがさらに告げる。

「金子セイラ、お前や霧生ユウキのように自然にビースターとして覚醒することも稀にだがある。だがほとんどのビースターは、我らエックスビースによって調整を施された者だ。」

「調整って・・あなた、人体実験を・・!?

 ジンキの話を聞いて、セイラが声を上げる。

「実験・・正確には調整だ。人間からビースターに進化させるためのな。」

「貴様、やはり人間の命を弄んで・・!」

 話を続けるジンキを、ソウマが鋭く睨みつける。

「調整を受けたビースターは位置情報の把握や洗脳ができるように調整してある。だが自然覚醒したビースターまではそうはいかない。そのビースターの反逆を防ぐために開発させたのが・・」

「ビーストライダー・・ベルトとアニマルカードってわけか・・!」

 さらに話を続けるジンキに、シゲルが言いかける。

「だがベルトとカードを制作した研究チームは、それらを使って我々への反逆を企てていた。ヤツらが行動を起こす前に気付けてよかった。」

「それで中野さんたちを・・・!?

「邪魔者は排除するのみ。ムダな時間を取らせるだけの愚か者だからな。」

「貴様!・・ぐっ!」

 ジンキの言葉を聞いて怒りをふくらませるソウマだが、体の痛みで立ち上がることができない。

「ベルトとカードをおとなしく渡すなら、命は助ける。我々に従う者を無意味に始末する必要はないからな。」

 ジンキが要求を投げかけると、ビースターから人の姿に戻る。

「ベルトを手に入れたら、新たに開発したカードを試す。起動する方法、そしてそのときに発揮される力を確認するために。」

 ジンキは笑みを浮かべて、上着の内ポケットから2枚のカードを取り出した。

「あれは、エクシードのカード・・やはり社長が持っていたのか・・!」

 タツヤが「エクシードカード」を見て息をのむ。

「あれが、ノゾムさんを助けるためのカードなんですか・・・!?

 セイラが聞くと、タツヤが小さく頷いた。

「しかし社長の手元にあり、ソウマくんとシゲルくんがやられてしまった今、エクシードのカードを手に入れるのは絶望的だ・・!」

「そんな・・でも諦めたらノゾムさんが・・・!」

 エクシードカードを奪える可能性が低いと考えるタツヤに、セイラが感情を込めて言い返す。ノゾムを助けたい一心で、彼女は諦めようとしない。

「オレはお前たちには絶対に従わない・・たとえ死んでもな!」

 ソウマが感情をあらわにして、力を振り絞って立ち上がる。

「往生際が悪い・ムダな時間を取らせるな・・」

 ジンキが目つきを鋭くして、ソウマに近づいていく。

「死んだほうがマシ・・それもまた愚か者の考えだ・・」

 ジンキはため息をついてから、左手を振り上げて、衝撃波でソウマを吹き飛ばした。

「ぐっ!・・こんなことをしても、貴様には絶対に従わない・・・!」

「従う以外の道を選ぼうとするとは・・お前を始末して力ずくでベルトとカードを手にすることもできるというのに・・」

 うめくソウマが強情になって、ジンキが肩を落とす。

「そんなに死にたいのならば、望みどおりにするのが情けか・・」

 ジンキがソウマにとどめを刺そうと、左手を構えた。

 そのとき、ジンキが持っていた2枚のエクシードカードが消えた。セイラがスピードを上げて飛び込んで、エクシードカードを奪ったのである。

「お前・・エクシードのカードを・・!」

「ノゾムさんを助けるためには、このカードが必要なの・・絶対に届けるよ・・・!」

 目を見開くジンキに、セイラが低い声で言いかける。彼女はノゾムのところに向かって走り出す。

「逃がしはしない・・息の根を止める!」

「行かせない!」

 怒りを覚えたジンキに対して、タツヤがスネイクビースターになって、触手を伸ばした。ジンキが触手に気付いて、素早く動いてかわす。

「こんなときに邪魔をするか!」

 ジンキが怒鳴って、ダークビースターとなって黒い光の球を放つ。

「ごあっ!」

 タツヤが光の球をぶつけられて、壁に強く叩きつけられる。

「早くカードを取り返さなければ・・!」

“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”

 改めてセイラを追いかけようとしたとき、ソウマがウルフルスロットルを呼び出した。ソウマがウルフルスロットルに乗って、ジンキを追い抜いてセイラを追った。

 その瞬間にイグアカートもシゲルとタツヤを乗せて走り去った。

「逃がしはしない・・必ずカードを取り戻す・・・!」

 ジンキはエクシードカードを取り戻そうと、セイラを追っていった。

 

 エクシードカードを持ってノゾムを助けに急ぐセイラ。ウルフルスロットルに乗ったソウマが、彼女に追いついた。

「ウルフルスロットルに乗れ!コイツのほうが速い!」

 呼びかけてきたソウマに、セイラが戸惑いを覚える。

「ビースターの味方をするつもりはないが、ノゾムを助けるには一刻を争うからな!」

「それでも、助けてくれてありがとう・・ノゾムさんを助けるために・・!」

 感情を込めて言うソウマに、セイラが微笑んで感謝した。彼女も乗ったところで、ウルフルスロットルが加速する。

 だがジンキが追いかけてきて、ウルフルスロットルに迫ってきた。

「アイツ、オオカミのスピードも超えるっていうのか!?

 ジンキのスピードにソウマが驚きを隠せなくなる。ジンキがウルフルスロットルに追いつこうとした。

 そこへドラゴンビースターとなったユウキが飛び込んできて、ジンキに組み付いた。

「ユウキ!」

 ユウキの姿を一瞬視界に入れて、セイラが叫ぶ。彼女とソウマから、ジンキがユウキに引き離される。

「貴様も私の邪魔をするか!」

「セイラには手は出させない!」

 互いに怒鳴るジンキとユウキ。ユウキの姿が刺々しいものへと変わる。

「自然にビースターになった身でここまで力を付けるとはな・・だが私を超えることはできん!」

 ジンキが言いかけて、ユウキの体に手を当てて黒い光を放つ。

「ぐっ!」

 ユウキが光に押されて突き飛ばされる。彼は踏みとどまって、ジンキに鋭い視線を向ける。

「コイツ、他のビースターよりも強力だ・・今のオレでも敵うかどうか・・・!」

 ジンキの力を痛感して、ユウキが焦りを覚える。

「お前の相手をしている暇はない。これ以上邪魔するなら、すぐに始末する・・!」

 ジンキはユウキに忠告を送ると、セイラのところへ向かおうとした。

「させない!」

 ユウキが体に力を入れて、ジンキに飛びかかる。ユウキが力を込めたパンチを繰り出すが、ジンキの発した黒い光に阻まれる。

「始末すると言ったはずだ!」

 ジンキが鋭く言って、光を飛ばした。

「うぐっ!」

 ヒカリに体を貫かれて、突き飛ばされるユウキがうめく。倒れた彼が激痛に襲われてのたうちまわる。

「どいつもこいつも邪魔をして・・どこまでも死にたがりになりたがるか・・!」

 ジンキがいら立ちを膨らませながら、セイラを追いかけて走り出した。

「セイラ・・追いかけないと・・・!」

 ジンキを止めようとするユウキだが、体に力が入らずに起き上がることができない。

「もっと力が・・セイラを守れる力を・・アイツを倒せる力を・・・!」

 力を渇望して、無理やり体を起こそうとするユウキ。しかし体が言うことを聞かず、彼はビースターから人の姿に戻った。

 

 別荘のベッドで眠り続けるノゾムをツバキ、タイチ、ワタル、ワオンが介抱していた。生死の狭間をさまよっているノゾムには、まだビースドライバーが付けられたままになっていた。

「ノゾムお兄ちゃんが、こんなことになっていたなんて・・・!」

 ワタルがノゾムを見つめて、悲しい顔を浮かべる。

「ゴメン、ワタルくん・・大事なことなのに話せなくて・・・」

「ううん、僕は大丈夫・・ノゾムお兄ちゃんのほうが大変なんだから・・」

 謝るタイチにワタルが首を横に振る。彼はノゾムのために気を引き締めていた。

「ノゾムお兄ちゃんを助けられるカードがあって、ソウマお兄ちゃんたちが手に入れてるんだよね・・?」

「うん。ソウマくんたちなら何とかしてくれる・・ユウキさんも、ノゾムのことを信じてくれる・・・」

 ワタルの問いかけにツバキが答える。彼女はユウキのことを信じていた。

 そのとき、別荘のドアが開いて、人の姿に戻ったセイラが入ってきた。

「セイラさん!」

「ツバキさん、このカードです!早くノゾムさんに!」

 声を上げたツバキに呼びかけて、セイラがエクシードカードを差し出す。

「ありがとう、セイラさん!これでノゾムを・・・って、2枚!?

「えっ!?ど、どっちを使えば・・!?

 セイラに感謝するタイチがエクシードカード2枚を見て、ワタルと一緒に驚く。

「でもこれ、2枚とも同じカード・・・!」

 ツバキがエクシードカードを手に取って、考えを巡らせる。

「急いで!エックスビースの社長が追ってきて、ソウマさんが食い止めると言って・・!」

「えっ!?ソウマくんが!?

 セイラが呼びかけて、ツバキが緊張をふくらませる。

「このカードをベルトにセットしよう!そうすればノゾムはきっと!」

 ツバキが言いかけて、ノゾムをベッドから引っ張って床に寝かせる。

“エクシード!”

 ツバキがノゾムのビースドライバーにセットされたままのエックスカードとエクシードカードの1枚を入れ替えた。しかしノゾムに何も起こらず、彼も目を覚まさない。

「どうして!?・・何も起こらない・・・!?

 ツバキが動揺しながら、ノゾムに向かって声を上げる。

「お願い、ノゾム!目を覚まして!」

 ツバキがノゾムに向かって必死に呼びかける。彼女はビースドライバーの左上のボタンを押すが、ドライバーは何も反応しない。

「死なないで、ノゾム!みんな、あなたのことを待っているんだから!このまま死んだりすることは絶対にないんじゃないの、あなたは!?

 ツバキが感情を込めて呼びかける。彼女はひたすらビースドライバーのボタンを押す。

 そのとき、2枚のエクシードカードとエックスカードから光があふれ出した。

「これって・・・!?

 ワタルがヒカルを見つめて、驚きを感じていく。

「もしかして、エックスのカードも一緒に使うんじゃ・・・!?

“エックス!”

 思い立ったツバキが、ビースドライバーにエックスカードを入れ直す。

“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”

 ノゾムがマックス・エックスフォルムに変身して、両腕にエックスブレスが装着される。

“エクシード!インフィニットマックス!”

 ツバキがエックスブレスにエクシードカードをセットする。

“チャージ・エクシード!インフィニット・エックス!インフィニット・マックス!ビース・エクシードライダー!”

 ノゾムをまとうマックスのスーツからまばゆい光があふれ出した。

「うわっ!」

 そのまぶしさにくらんで、ツバキたちは目を閉じた。

 

 ジンキを食い止めようとするソウマだが、ジンキの力に押されて別荘の前まで突き飛ばされた。

「どこまでも立ち上がる・・ムダな死にぞこないが・・・!」

 倒れて動かなくなったソウマにいら立つジンキ。彼は別荘に目を向けて乗り込もうとした。

 そのとき、別荘からまばゆい光があふれ出してきた。

「な、何だ、あれは・・・!?

 ジンキが光を警戒して足を止める。別荘のドアが開いて、中から1人出てきた。

 それはマックス、ノゾムだった。その姿はエックスフォルムの白から銀色になっていて、前と後ろに金のラインがX字になるように描かれていた。

「マックス・・その姿は・・・!?

 ジンキがノゾムを目の当たりにして、驚きを覚える。ノゾムは意識を取り戻して、落ちつきを保っていた。

「まさか貴様、エクシードのカードを!?

「長く眠っていたみたいだけど、あのとき、お前がオレを攻撃したのは分かっている・・・!」

 声を上げるジンキに向かって、ノゾムが低く告げる。

「オレはお前を許しはしない・・オレの生き方を、お前に決めさせるか・・!」

 怒りの声を上げるノゾムが、ジンキの前に立ちはだかる。新たなる姿「エクシードフォルム」となって、ノゾムは目覚めたのだった。

 

 

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