仮面ライダーマックス
第32話「ノゾムの死!」
ジンキに体を撃ち抜かれて、ノゾムは倒れた。動かなくなった彼の鼓動は聞こえなくなっていた。
「ノゾム、目を開けて!起きてよ、ノゾム!」
ツバキが声を張り上げて呼びかけるが、ノゾムは目を覚まさない。
「これで神奈ノゾムを始末した。ビースドライバーとアニマルカードを返してもらう。」
ジンキがビースドライバーを奪い取ろうと、ノゾムに近づいてくる。
「ツバキたちに手を出させるか!」
ソウマが叫んで、ウルフカードを取り出した。シゲルもイグアナカードを手にした。
“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”
“スタートアップ・イグアナ。”
2人が呼んだウルフルスロットルとイグアカートが駆けつけてきた。
「ノゾムとツバキを助けろ!」
ソウマが呼びかけて、ウルフルスロットルが一気にスピードを上げて、ツバキとノゾムを連れて駆け抜けた。
「逃がしはしない。」
ジンキがノゾムを捕まえようと、体から黒いオーラを発する。そこへイグアカートが走り込んできて、ジンキの行く手を阻んだ。
「みんな、ここから引き上げるぞ!」
シゲルが呼びかけて、ソウマたちがこの場から離れようとする。だが彼らの前にララと黒ずくめの男たちが立ちはだかった。
「ここから先へは行かせないよ・・・!」
ララが言いかけて、ソウマたちに鋭い視線を向ける。
「イグアカート、こっちだ!」
シゲルが呼びかけて、イグアカートが駆けつけてララたちを引き離した。
「今のうちだ!イグアカートに乗るんだ!」
シゲルが呼びかけて、ソウマ、タイチとともにイグアカートに乗り込んだ。イグアカートは黒ずくめの男たちを退けて、荒野を走り去った。
「私たちも行こう・・!」
「は、はい・・!」
タツヤが呼びかけて、セイラが頷く。2人はそれぞれスネイクビースター、キャットビースターとなると、ユウキを連れて一気にスピードを上げた。
「逃がしたか・・私としたことが・・・」
ノゾムたちを全員逃がして、ビースドライバーも奪えなかった自分に、ジンキは憤りを覚える。彼がダークビースターから人の姿に戻る。
「ごめんなさい、社長・・私が出るのが遅れたせいで・・・」
ララが悲しい顔を浮かべて、ジンキに謝る。
「これは私のミスだ。私が果たすべき責任だ・・」
ジンキはララに言葉を返すと、1人ゆっくりと歩き出す。
「ビーストライダーとその仲間を捜索しろ。ビースドライバーとアニマルカードを手に入れる。」
「分かりました。監視を強化して、捜索を行います。」
ジンキからの指示に黒ずくめの男の1人が答える。彼が他の男たちとともに、ノゾムたちの捜索に向かった。
(社長は責任感が強い・・他の人に厳しいけど、自分にも厳しい・・・)
ジンキの人格を改めて思い知って、ララは戸惑いを感じていく。
(私も仕事を成功させないと、エックスビースでの居場所がなくなる・・・!)
ララは気を引き締めなおして、ノゾムたちの捜索に向かった。
ジンキたちから辛くも逃げ切ることができたツバキたち。しかしノゾムはジンキの手にかかって、目を覚まさない。
「ノゾム・・どうしてこんなことに・・・!」
ツバキがノゾムを見つめて、悲しみをふくらませていく。
「起きろよ・・起きろよ、ノゾム!これからもイヤなヤツと戦うんだろ!?」
「ノゾム、目を覚ましてくれ!どうして君が死ななくちゃならないんだよ!」
ソウマとタイチもノゾムに向かって必死に呼びかける。
「ノゾムさん・・こんなことになるなんて・・・!」
セイラもノゾムが倒れたことを悲しむ。するとソウマが振り返って、彼女とユウキたちを睨みつけてきた。
「お前のせいだ・・お前がノゾムを追い詰めなければ、ノゾムは死なずに済んだんだ!」
ソウマが怒りの声を上げて、ユウキに詰め寄ろうとした。だがシゲルに両腕を押さえられて止められる。
「何をするんだ、シゲル!?放せ!」
「今はアイツらと争っているときじゃないだろう!オレたちのホントの敵は、エックスビースだ!」
怒鳴るソウマにシゲルが呼びかける。彼の言葉を聞いて、ソウマが思いとどまる。
「ユウキさん、エックスビースは僕たちを始末しようと狙ってきます・・何とかしないと、僕たちはずっと追われることになってしまいます・・力を貸してください・・・!」
タイチがユウキたちに歩み寄って頼んできた。
「オレは・・ノゾムのために戦うことはできない・・ノゾムは、オレたちを・・・!」
しかしユウキはタイチの頼みを聞き入れようとしない。
「ユウキもノゾムさんも勘違いして、すれ違っているだけ・・守るものがあるのは、どっちも同じだよ・・・!」
セイラもユウキに向かって呼びかける。
「でもノゾムは君を襲って、オレにも・・・!」
「ユウキはすれ違ったままでいいの!?歩み寄ろうとしてくれる人も拒絶してしまうの!?」
頑なな意思を示すユウキに、セイラが声を張り上げる。
「だけど、ノゾムは違う・・ノゾムは・・・!」
「そこまでノゾムさんを敵だと言い張るなら、私はあなたとはもう一緒にいられない・・・」
ノゾムを敵だと言い張るユウキに、セイラは不満をあらわにした。
「タイチさん、私に何ができるか分からないけど、やれることをやれたらと思っています・・・」
「セイラさん・・僕なんか、セイラさんと比べたら全然何もできないよ・・あなたやソウマくんたちみたいに戦うこともできない・・・」
自分の思いを伝えるセイラに、タイチが感謝する。
「オレたちができるのは、エックスビースを倒してノゾムの仇を討つことだけ・・・!」
シゲルが口にした言葉に、ソウマたちが頷く。彼らはエックスビースと戦う決意をさらに強めていた。
そのとき、ノゾムの体から光があふれ出してきた。
「えっ・・!?」
突然のことにツバキたちが驚きの声を上げる。
「ノゾム、どうしたの!?目が覚めたの!?」
ツバキが近寄って呼びかけるが、ノゾムは目を覚まさない。
「これはまさか、もしかして・・!?」
タツヤがノゾムに起こっている異変が何かに気付き始めた。
「タツヤさん、ノゾムさんに何が起こっているのか、分かるのですか・・!?」
「推測でしかないが・・もしも当たっていたのなら、彼は・・・!」
セイラが問いかけて、タツヤが緊張を感じながら答える。
「ノゾムくんはあのエックスカードを使っていた・・今、エックスカードがベルトに入ったままなら、それが彼の命をつなぎ止めている・・・!」
「ノゾムが、ベルトとエックスのカードに守られている・・・!?」
タツヤの説明を聞いて、ツバキがノゾムを見つめて戸惑いをふくらませていく。
「だったら、エックスのカードに何か秘密が・・ノゾムを助ける方法が・・・!」
ソウマが思い立って、ノゾムのビースドライバーに向かって手を伸ばす。
「外してはダメだ!外したらノゾムくんが死ぬことになる!」
タツヤが呼び止めて、ソウマがノゾムに伸ばしかけた手を止めた。
「今のノゾムはエックスのカードに生かされている・・ベルトを外したらその力を受けられなくなってしまう・・!」
「くっ・・それじゃ、どうすれば・・・!?」
タツヤの言葉を聞いて、ソウマが焦りをふくらませていく。
「タツヤさん、教えてください・・どうすればノゾムを助けることができるのですか・・・!?」
ツバキが真剣な顔でタツヤに話を聞く。しかしタツヤは深刻さをふくらませていた。
「あのカードを手に入れれば、ノゾムくんの命を助けることはできる・・しかし・・・」
「教えてください!ノゾムを助けられるなら!」
ためらいを見せるタツヤに、タイチも頼み込む。
「エックスビースでは、ベルトとアニマルカードを手に入れたときのために備えて、あるカードを作り出していた。しかしそれは今はエックスビースにある。社長の手元にある可能性もある・・」
タツヤが話を切り出して、ツバキたちに語りかける。
「エックスビースに乗り込むという危険な賭けに出ないといけないってわけか・・」
「エックスビースを潰せて、一石二鳥になるじゃないか!迷うことはない!」
シゲルが頷いて、ソウマが意気込みを見せる。
「それで、手に入れようとするカードというのは・・・?」
セイラが問いかけて、タツヤが小さく頷い手から答えた。
「“エクシード”のカードだ・・」
ジンキの力に押さえつけられたキリオは、彼への怒りをふくらませていた。
「おのれ・・どいつもこいつもなめたマネしやがって・・・!」
いら立ちを抑えられず、キリオがそばにあった壁に拳を叩きつける。
「ジンキもビーストライダーたちも、オレがまとめてぶっ潰してやるぞ!最後に笑うのはこのオレだ!」
野心をむき出しにしたキリオが笑みを取り戻す。彼は自分の敵に回る者を一掃しようと企んでいた。
ノゾムを助けるため、ソウマたちはエックスコーポレーション本社に乗り込もうとしていた。ソウマとシゲル、セイラとタツヤが本社の近くに来ていた。
「ここに例のカードがあるのか・・?」
「その可能性が高い・・社長が、黒木ジンキが持っている可能性もあるけど・・・」
シゲルが聞いてきて、タツヤが深刻な表情を浮かべたまま答える。
「ハッキリした場所が分かっているわけじゃないってことか・・どっちにしても、ドンパチやらなくちゃならないか・・・!」
ソウマが言いかけて、本社の社屋を見上げる。
「ゆっくり考えている時間もない・・たとえ見つかって囲まれることになっても、このまま乗り込もう・・!」
「はい・・ノゾムさんを、私たちで・・・!」
ソウマが呼びかけて、セイラが小さく頷いた。
「まさかビースターと協力することになるなんて・・・」
セイラ、タツヤと組むことへの不満を口にするソウマ。
「今はそれは言いっこなしだ。強い味方が1人でもいたほうがいいときだ。」
シゲルになだめられて、ソウマは小さく頷いた。セイラとタツヤも社屋に視線を戻す。
「よし・・一斉に一気に乗り込むぞ・・・!」
シゲルが呼びかけて、ソウマが頷く。
“フォックス!”
ソウマがビースドライバーにフォックスカードをセットした。
“オックス。”
シゲルがビースブレスにオックスカードをセットした。2人がエックスコーポレーション本社に、正面入り口から入っていった。
「あ、あれは、ビーストライダー!」
入り口前にいた警備員が、やってくるソウマたちを見て身構える。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
“スタートアップ・オックス。”
ソウマとシゲルがフォックスとオックスに変身して、警備員を押しのける。気絶した警備員を横目に、セイラとタツヤもソウマたちに続く。
「社長室にあるってことですよね!?それはどこに・・!?」
「この最上階だ・・!」
セイラの問いかけにタツヤが答える。
「えっ!?最上階って・・ここ、40階はあるぞ!」
ソウマが思わず足を止めて声を荒げる。彼らは長い道を駆け上がることになった。
ソウマたちがエックスコーポレーション本社に乗り込んだことは、すぐにジンキの耳に届いた。
「まさか本社に乗り込んでくるとは・・」
ソウマたちの行動にジンキが肩を落とす。
(狙いはエクシードか。エックスとエクシードは誰でも使えるわけではないが、取られていいものでもない・・)
「すぐに本社に戻る。それまで逃がさないようにしろ。」
“了解です。”
ジンキが指示を出して、通信相手の部下が答える。
「それと、ビーストライダーたちの関係者を押さえろ。ライダーたちと裏切り者たちが本社に乗り込んでいる今が好機だ。」
“分かりました。部隊を送ります。”
ジンキがさらに指示を出して、部下との連絡を終えた。
「私がヤツらに、改めて引導を渡してやろう。」
ソウマたちを一掃しようと、ジンキはエックスコーポレーション本社へ向かった。
ソウマたちが乗り込んで、中にいた警備員やビースターたちと交戦することとなった。本社でガラスが割れたり爆発が起こったりして、それは周囲からうかがうことができた。
そしてすぐにニュースとなって、世間に知れ渡ることになった。
「ソウマくんたちだね・・でも詳しいことは言っていない・・」
「会社で爆発事故が起こっているってことになっているけど・・・」
ツバキとタイチがニュースを見て言いかける。エックスビースが隠ぺい工作をしているのだと、2人は思っていた。
「大丈夫・・ソウマくんやセイラさんたちは、無事に戻ってくるよ・・そして、ノゾムもまた目を覚ます・・」
タイチが微笑みかけて、ツバキを励ます。
「ありがとう、タイチくん・・でもノゾムやソウマくんのことだけじゃない・・ユウキさんのことも気になるの・・」
ツバキがユウキのことを気に掛けていた。ノゾムが瀕死の状態になっていても、彼を信じることができずにいるユウキを、ツバキは心配していた。
「ノゾムだけじゃない・・ユウキさんもかなりガンコみたいだ・・それだけ辛い思いをしてきたことだね、2人とも・・・」
「だから反発したときは、徹底的に反発する・・周りがどんなに呼びかけても、傷つけられたくないから、自分の気持ちを貫こうとする・・・」
ツバキとタイチがノゾムとユウキの気持ちを察して、苦悩を感じていく。ノゾムとユウキが最悪、分かり合えないままになってしまうと2人は考えさせられていた。
そのとき、タイチの持っていた携帯電話が鳴り出した。相手はワタルだった。
「どうしたの、ワタルくん?」
“タイチお兄ちゃん、助けて!黒い服を着た人が、僕とワオンを追ってくる!”
タイチが声をかけると、ワタルが慌てて答えた。
「何だって?ワタルくん、今どこ!?」
“動物公園の近く!今、商店街の入り口の前を通った!”
タイチが問いかけて、ワタルが必死に答える。
「分かった!すぐにそっちに行くから!」
タイチはワタルとの連絡を終えると、彼のところへ急ぐ。
「タイチくん!」
ツバキも慌ててタイチを追いかける。
「もしかして、ビースターかエックスビースに追われているんじゃ・・!?」
「こんなときに出てくるなんて・・今はソウマくんたちと連絡取れないし・・・!」
ツバキが口にした不安に、タイチが答える。ソウマたちのような力がないと実感しながらも、2人はワタルとワオンを助けに向かった。
追いかけてくる黒ずくめの男たちから、ワタルとワオンは必死に逃げていた。
「がんばって・・走るんだよ、ワオン!」
ワタルがワオンに呼びかけて、男たちから逃げていく。しかし体力を消耗して、彼らは疲れを隠せなくなる。
(ダメ・・このままじゃ追いつかれちゃう・・・!)
絶体絶命を痛感して、ワタルが絶望を感じていく。彼らとの距離を、男たちが詰めていく。
「ワタルくん!」
そこへタイチが駆けつけて、ワオンを抱えてワタルを引っ張って、横道に連れていった。
「大丈夫、ワタルくん!?」
「う、うん・・危機一髪だったよ〜・・・!」
タイチの心配の声に、ワタルが戸惑いを見せながら答える。
「ワタルくん、僕の背中につかまって!走るからしっかりね!」
タイチがワタルを背負って呼びかける。
「ワオンちゃんも・・タイチくん、逃げましょう!」
ツバキがワオンを抱えて、タイチに声をかける。タイチたちが動物公園を目指して走り出した。
「いたぞ・・包囲して捕らえろ・・!」
黒ずくめの男の1人が、タイチたちの姿を目撃して、他の男たちに呼びかける。
「しまった!見つかった!」
タイチが声をあげて、ツバキたちと一緒に足を速める。しかし男たちに回り込まれて、取り囲まれてしまう。
「これじゃ、逃げられない・・!」
絶体絶命を感じて、ツバキが息をのむ。
「おとなしく来てもらう。抵抗するなら命はないと思え。」
男の1人がツバキたちに忠告を送る。ソウマたちに助けを求めることもできず、ツバキたちは絶望を覚えた。
「やめろ!」
そこへ声がかかって、ツバキたちと男たちが振り返る。ドラゴンビースターとなったユウキが降りてきて割って入ってきた。
「ユ、ユウキさん・・!」
現れたユウキにツバキが戸惑いを覚える。ユウキはゆっくりと男たちに振り向く。
「裏切り者のビースターか・・!」
「オレたちはそこにいる連中を捕まえに来たのだ!」
男たちがユウキに向かって呼びかける。
「オレは身勝手な考えを持っている人間を野放しにはしない・・だけどオレの敵の中に、ビースターがいることも間違いない・・!」
ユウキが自分の考えを確かめるように告げる。
「お前たちも・・オレの敵だ!」
ユウキが両手を握りしめて、男たちに向かっていく。男たちがとっさにビートルビースター、スタッグビースターに変身する。
ユウキが力を込めたパンチを繰り出して、ビースターたちを突き飛ばしていく。
「怯むな!一斉にかかれば、いくらヤツでも太刀打ちできるものか!」
ビートルビースターの1人が呼びかけて、他のビースターたちと同時に飛び込む。ユウキがビースターに力で押し込まれる。
「オレは屈しない・・お前たちにも・・アイツにも!」
ユウキが言い放って、刺々しい姿へと変貌する。彼は拳を振りかざして、ビートルビースターとスタッグビースターを吹き飛ばした。
「まさか、我々をいっぺんに吹き飛ばすとは・・!」
スタッグビースターの1人がユウキの力を痛感して息をのむ。
「これ以上手を出すな・・オレたちに・・・!」
声を振り絞るユウキが握りしめた右手に、黒い稲妻のような光が包む。彼が繰り出した右のパンチが、スタッグビースターの体に叩き込まれた。
「がはぁっ!」
スタッグビースターが上空に跳ね上げられて、爆発、消滅した。
「わ・・我々では、とてもヤツに太刀打ちできない・・・!」
「ララ様に報告を・・社長は今は手が離せない・・!」
力の差が歴然であると思い知って、ビートルビースターたちが慌てて逃げ出した。
「ユウキさん・・ありがとうございます・・・」
ツバキが感謝を口にして、ユウキが振り返って人の姿に戻る。
「オレは人間の味方をするつもりはない・・ビースターの味方でもない・・優しい心の持ち主の味方だ・・・」
ユウキが自分の思いを口にする。彼は自分の気持ちの整理を付けようと、心の中で必死になっていた。
「ユウキお兄ちゃん・・お兄ちゃんのことは聞いたよ・・・」
ワタルが深刻な顔を浮かべて、ユウキに近づく。
「ノゾムお兄ちゃんは、悪いことをしてるのに正しいと思い込んでる悪者と戦ってるんだよ・・ビースターみんなをやっつけようってわけじゃないよ・・!」
「いや・・ノゾムはオレたちの敵だった・・アイツを何とかしないと、オレたちは生きていくことができないんだ・・」
「違うよ!ノゾムお兄ちゃんは悪くない!ユウキお兄ちゃんだって!どっちも悪くないのに、争う必要なんてないじゃない!」
ノゾムを敵だと思っているユウキに、ワタルが必死に呼びかける。
「ケンカしているなら仲直りしよう!このままだなんて絶対よくないよ!」
「オレはもう裏切られたくない・・このままノゾムを受け入れたら、オレはオレでなくなる・・・!」
「そういう気持ちが、ユウキお兄ちゃんが、ノゾムお兄ちゃんを裏切っていることになるじゃないか!」
自分の意地を貫こうとするユウキに、ワタルが不満の声を上げた。
「お願いだよ・・ノゾムお兄ちゃんと、仲直りしてよ・・・!」
ワタルが涙ながらにユウキに訴える。ワタルの思いと自分の意思に、ユウキは葛藤していた。
「ユウキさん、ワタルくんもノゾムを信じているんです・・あなたの気持ちは、子供の心を踏みにじってまで貫こうとするものなんですか・・・!?」
ツバキも思いつめる表情で、ユウキに問い詰める。それでも理屈で切り替えられる気持ちでないと思って、ユウキは苦悩を深めていた。
「オレは、自分を殺してまで、自分を抑えることはできない・・・!」
ユウキは低く告げると、ツバキたちの前から歩き出した。
(ユウキさん・・どうしてもあなたは、ノゾムと分かり合うことはできないの・・・?)
つながりの溝を深めていくユウキに、ツバキは心を痛めていた。
ノゾムとタイチたちのことを気にして、ゴロウは心配していた。彼はノゾムが瀕死の状態にあることを知らされていなかった。
(みんな、騒がしくなっているみたいだけど・・大丈夫かな・・・?)
落ちつきがなくて右往左往するゴロウ。彼はノゾムたちの様子を見に行こうと外へ出た。
その先の道で、ゴロウは足を止めた。彼の前に1つの人影が現れた。
「代々木ゴロウね?・・一緒に来てほしいの・・・」
ゴロウが声をかけられて緊張を覚える。彼の前に現れたのはララだった。