仮面ライダーマックス
第30話「ヘビのごとく絡む因縁!」
タツヤはスネイクビースターだった。彼のビースターとしての姿を見て、セイラは戸惑いを覚える。
「タツヤさん、あなたもビースターだったのですか・・・!?」
セイラがタツヤに向かって声を振り絞る。
「ビースターになったところで、たった1人でオレたちをどうにかできると思っているのか!?」
「おとなしく来ればいいものを・・刃向かうならば息の根を止めてやるぞ!」
ビートルビースターとスタッグビースターがいきり立って、タツヤに飛びかかる。タツヤが軽やかな動きで、ビースターたちの攻撃をかいくぐっていく。
しかしタツヤは積極的に攻撃を仕掛けようとしない。ビースターたちを引き離すための攻撃ばかりである。
(もしかして、タツヤさんは・・・!?)
「よそ見をしないで!」
タツヤの動きに気付き始めたセイラに、ララが飛びかかってきた。彼女が振りかざした右足をかわして、セイラがタツヤのほうへ走り出す。
「タツヤさん!」
セイラがタツヤを抱えて、ビートルビースターたちの中の2人を蹴り飛ばしてから、この場を離れた。
「逃がさない!」
ララがセイラとタツヤを追いかけるが、彼女もビートルビースターたちも2人を見失ってしまった。
「逃げられた・・また失敗しちゃった・・・」
人の姿に戻ったララが落ち込んで、大きく肩を落とした。
「早く追いかけましょう、ララさん!お前たち、行くぞ!」
ビートルビースターの1人がララに呼びかけてから、他のビースターたちとともにセイラたちを追いかけていった。
互いの正体を目の当たりにして、ノゾムもユウキも動揺を隠せなくなっていた。
「どういうことなんだ・・・ビースターを滅ぼすことを考えていたのか、ノゾムくん!?」
ユウキが感情をあらわにして、ノゾムに問い詰める。
「オレは身勝手なヤツをブッ倒すだけだ・・アンタもオレを倒そうとしてきたじゃないか・・!」
ノゾムが立ち上がろうとしながら、ユウキを鋭く睨みつける。
「一方的に攻撃してくるヤツに、おとなしくやられるヤツがいるのか!?」
「ふざけるな!優しさを持っているビースターを倒そうとした君が!」
互いに怒鳴り声を上げるノゾムとユウキ。2人はかつてない激情に駆られていた。
「ビースターも人間も関係ない・・オレはオレの敵を倒すだけだ!」
「優しい心の持ち主まで倒す・・それがお前の考えなのか、ノゾム!?」
ノゾムが自分の信念を言い放つが、ユウキの怒りを逆撫でするだけである。
そのとき、ユウキは近づいてくるエンジン音を耳にした。フォックス、オックスに変身したソウマとシゲルが、ウルフルスロットル、イグアカートに乗って駆けつけてきた。
「どいつも・・こいつも!」
怒りをふくらませたユウキが力を振り絞って、ドラゴンビースターとなった。その直後、ソウマとシゲルがノゾムの姿を視認した。
「ノゾム!」
シゲルが手を伸ばしてノゾムをつかんで引き寄せる。ソウマが同時にウルフルスロットルを加速させて、ユウキに突っ込む。
ユウキが振りかざした右のパンチが、ウルフルスロットルの頭に命中した。ウルフルスロットルがその衝撃で一瞬ふらついた。
それでもソウマはスピードを緩めず、シゲル、ノゾムとともに走り去った。
「フォックス、オックス・・マックス・・・神奈ノゾム!」
人の姿に戻ったユウキが、怒りの叫びを上げた。
ソウマとシゲルに助けられたノゾム。3人は動物公園の別荘に戻ってきて、ノゾムはベッドに寝かされた。
「オレは大丈夫だ・・こんなところで寝ていられるか・・・!」
しかしノゾムはベッドから体を起こして立ち上がろうとする。
「おい、ノゾム、まだ休んでないと・・!」
「またエックスのカードを使ったんだろう!?体力を消耗しているのに、その状態で動いてもすぐに倒れてしまう!」
シゲルとソウマが慌ててノゾムを呼び止める。
「オレは倒れない・・アイツをブッ倒すまでは、絶対に倒れない!・・ユウキのヤツ・・!」
「ユウキって・・あのユウキのことか・・!?」
「アイツがビースターだったってことなのか・・!?」
ノゾムが口にした言葉を聞いて、ソウマとシゲルが驚きを覚える。
「アイツがあのドラゴンヤローだった・・オレを倒そうと突っかかってきたんだ・・・!」
ノゾムがユウキのことを思い出して、いら立ちをふくらませていく。彼はユウキのことが信じられなくなっていた。
「ノゾム!」
そこへツバキ、タイチ、ワタル、ワオンがやってきて、ノゾムたちに声をかけてきた。
「ソウマくんから連絡を聞いて・・何があったの・・・!?」
ツバキがノゾムを心配して、深刻な顔を見せる。
「あのドラゴンのビースターは、ユウキだったんだ・・アイツはオレを倒すために、オレたちに近づいてずっとそばにいて・・・!」
「えっ!?ユウキさんがビースター!?」
ノゾムが口にした話に、ツバキが耳を疑う。
「そんなわけないよ、ノゾム兄ちゃん!ユウキ兄ちゃんが悪いビースターだなんて!」
ワタルが感情をあらわにして、ノゾムの言葉を否定しようとする。
「ウソじゃない・・オレは見たんだ・・あのドラゴンヤローがユウキの姿に戻るのを・・・!」
「それじゃホントに、オレたちを騙していたって言うのか・・・!?」
ノゾムが声を振り絞って、ソウマもユウキへの疑念を抱くようになった。
「私、ユウキさんに会いに行ってくる・・・!」
ツバキが切り出した言葉に、ソウマたちが動揺を覚える。
「待つんだ、ツバキ・・ユウキがビースターなら、近づくのは危険だ・・!」
「でも、ユウキさんは優しい人だよ・・そのユウキさんが、自分のためだけに罪のない人を傷付けるはずがない!」
ソウマが呼び止めるが、ツバキは聞かずに外へ飛び出した。
「ツバキちゃん、待って!」
「ツバキお姉ちゃん!」
タイチがツバキを追いかけて、ワタルとワオンも続く。
「みんな・・アイツのことを分かってない・・みんな、アイツに何かされたら、オレは・・・!」
ノゾムが危機感を覚えて、体に力を入れてベッドから立ち上がる。
「落ち着けって!ツバキたちを呼び戻せるのは、ノゾムだけじゃない!」
ソウマに呼び止められて、ノゾムが戸惑いを覚えた。
「お前は1人じゃない!オレがいることを忘れないでくれよな、ノゾム!」
「ソウマ・・・!」
ソウマの呼びかけを受けて、ノゾムが落ち着きを取り戻していく。
「ノゾムが回復したら追いかける。ソウマはツバキちゃんたちのところについてやってくれ。」
「分かった!任せてくれ!」
シゲルが呼びかけて、ソウマが答える。ソウマはツバキたちを追って、外へ飛び出した。
「行くならもう少し休んでからだ。アイツと戦うにしても、体勢を整えないことには・・」
「くっ・・・!」
シゲルになだめられて、ノゾムはおとなしくすることにした。
(セイラ、お前はビースターでも優しい心を持っていた・・ユウキは・・・)
セイラのことも考えて、ノゾムはさらなる苦悩と激情に襲われていた。
ノゾムたちに逃げられていら立ちをふくらませていたユウキ。彼の元へセイラとタツヤが合流した。
「ユウキ、大丈夫!?あのビースターは!?」
「サメのビースターは追い払ったけど・・マックスの正体が・・・!」
心配の声をかけるセイラに、ユウキがノゾムのことを口にした。
「ユウキ・・マックスのことを知ったの・・・!?」
セイラがユウキの話を聞いて、動揺を浮かべる。
「セイラ・・マックスの正体を知っていたんじゃ・・・!?」
ユウキが問い詰めるが、セイラが目をそらす。
「どうして!?・・マックスはビースターを倒そうとしている・・オレたちみたいなのも関係なく・・!」
「ノゾムさんはそうじゃない・・ビースターも人間も関係ない・・身勝手な人には怒りを燃やして、優しい人には心を開く・・ユウキだって、そのことは分かっていたはず・・!」
「ならなぜ、アイツはオレを攻撃してきたんだ!?ビースターだったオレを、マックスとなったノゾムは・・!」
「それはきっと、勘違いとすれ違い・・・!」
ノゾムへの怒りをふくらませていくユウキに、セイラが必死に呼びかけていく。彼女の口にした言葉を聞いて、ユウキが目を見開く。
「ユウキはノゾムさんときちんと話をしていないんじゃないの?・・きちんと話せば、お互い分かり合える・・・!」
「オ、オレがノゾムと、マックスと分かり合う・・・!?」
セイラの投げかける言葉に、ユウキが心を揺さぶられていく。
「君たちの事情はよく分からないけど、追手がやってくる・・ここを離れたほうがいい・・・!」
タツヤが呼びかけて、ユウキとセイラが我に返った。
「そうでした・・ユウキ、今は行こう・・!」
「考えるのは、その後にしたほうがいいみたいだ・・・」
セイラが呼びかけて、ユウキは渋々聞き入れることにした。
ユウキを捜して、動物公園の周りを駆けまわるツバキ。タイチもワタルもユウキのことを気に掛けて、周りを見回していた。
そんなツバキたちにソウマが追いついた。
「ツバキ、ビースターであるユウキと会って、どうするつもりなんだ!?・・ビースターである以上、襲い掛かってくる可能性だってあるんだぞ・・!」
ソウマがツバキに詰め寄って呼び止める。
「ユウキさんは心のある人だよ・・無差別に人を襲って喜ぶ人じゃない・・!」
「ビースターに心はない!ビースターは滅ぼさないといけないんだ!」
「もしもビースター全員に心がなかったら、ノゾムが悩んだりするはずないよ!」
「どうしたっていうんだ、ノゾムもお前も!?ビースターに肩入れするなんて・・!」
ユウキを信じようとするツバキに、ソウマは激情を抑えられなくなる。
「ビースターも人間も、心のある人とそうでない人がいる・・ユウキさんのように優しい人もいるし、あのエリカのような自分勝手な人もいる・・ビースターの中に悪い人がいるのは確かだけど、全員そうだと決めつけるのはよくないよ・・!」
「ビースターはオレたちの全てを奪ったんだ・・ツバキの父さんも、中野さんも・・!」
説得の言葉を口にしようとするツバキだが、ソウマのビースターへの怒りは治まらない。
「まずはユウキさんと会って、話を聞かないと・・・!」
ツバキはユウキを捜して再び歩き出す。ソウマはツバキの言動に納得できないでいた。
そこへユウキ、セイラ、タツヤがツバキたちの前に現れた。
「ユウキさん!セイラさん!」
ツバキが声を上げて、ユウキたちに駆け寄る。
「ツバキさん・・みんな・・・!」
セイラもツバキたちを見て戸惑いを見せる。
「ノゾムから話は聞いた・・ユウキさんは・・・」
「みんな、聞いてしまったのね・・私たちが、ビースターだということに・・・」
ツバキが話を切り出すと、セイラが悲しい顔を浮かべる。
「そ、そんな!?・・セイラさんも、ビースターだったの・・・!?」
タイチがセイラのことを知って、動揺を見せる。しかしセイラの心境を察して、彼は気分を落ち着かせようとする。
「セイラさんは悪いビースターじゃない・・ちゃんと心を持った人ですよ・・」
「タイチさん・・私を、私たちを受け入れてくれるのですか・・・?」
微笑みかけるタイチに、セイラが戸惑いを覚える。
「たとえ体が普通の人間と違っても、僕たちと出会ったセイラさんやユウキくんと、心も気持ちも変わっていないよ・・」
「そうだよ。セイラさんもユウキさんも、平和に生きていこうとしていただけですよ。」
タイチに続いてツバキもユウキたちを励ます。
「みなさん、私たちを受け入れる気持ちが変わっていない・・・」
「だけど、ノゾムはオレのことをどう思っているか・・・」
ツバキたちの優しさに心を揺さぶられるセイラだが、ユウキはノゾムへの疑念を感じずにはいられなかった。
「みんな・・そこまでコイツらに思い入れを・・・!」
ソウマはビースターであるユウキたちに対して、憎しみを抑えられないでいた。
そこへノゾムがシゲルに支えられながら、ツバキたちの前に現れた。
「ノゾム!シゲルさん!」
ツバキが声をかけて、ユウキたちもノゾムに目を向ける。ノゾムとユウキが互いに鋭い視線を向け合う。
「ノゾム、待って・・ユウキさんもノゾムのように、ムチャクチャなことを許せなくて戦っているだけ・・!」
ツバキがノゾムに呼びかけてなだめようとする。
「ユウキさん、ノゾムもただ自分勝手な人を憎んでいるだけなんです!ビースターそのものを憎んでいるわけじゃないんです!」
ツバキはユウキに振り向いて呼びかける。
「ということは、オレを自分勝手な人だと決めつけて・・!」
「ユウキ・・アンタはあくまでオレを・・・!」
しかしユウキもノゾムも互いに分かり合おうとせず、憎しみを向け合う。
「いい加減にして!」
ツバキとセイラが同時に、ノゾムとユウキに怒鳴った。
「そうやって信じようとせずに憎み続けたら、きっとずっと分かり合えない・・・!」
「信じてあげて、ユウキ、ノゾムさん!話せば分かり合えます!」
ツバキとセイラがノゾムたちに呼びかける。
「オレはもう、ユウキを信じることができない・・オレはもう、裏切られるのを繰り返したくはない・・・!」
「ノゾム・・・!」
信じる気持ちが持てないノゾムに、ツバキが動揺を感じずにいられなかった。
「見つけたよ、裏切り者たち・・・!」
そこへララと黒ずくめの男たちが、ノゾムたちの前に現れた。
「おとなしく言うこと聞いて付いてきて・・でないと倒すしかなくなるよ・・・!」
ララが低い声で言うと、男たちとともにビースターに変わった。
「アイツらはエックスビースのビースター・・だったら遠慮なくブッ倒せるというものだ!」
ノゾムが言い放つと、マックスカードを取り出した。
“マックス!”
彼はビースドライバーにマックスカードをセットして、左上のボタンを押す。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ノゾムはマックスに変身して、ララたちに向かっていく。彼がララと交戦して、激しい攻防を繰り広げる。
「マックスを食い止めている間に、我々は小宮タツヤを!」
ビートルビースターとスタッグビースターがタツヤを狙って飛びかかる。
「タツヤさんは逃げてください!」
セイラがタツヤに呼びかけて、ユウキとともに飛び出す。2人がキャットビースター、ドラゴンビースターになって、ビートルビースター、スタッグビースターを迎え撃つ。
「ビースターどもばかりに好き勝手やらせるか!」
“フォックス!”
ソウマがいきり立って、ビースドライバーにフォックスカードをセットした。
「やれやれ。みんな張り切っちゃって・・・」
“オックス。”
シゲルがため息まじりに、ビースブレスにオックスカードをセットした。
「変身!」
ソウマがビースドライバーの左上のボタンを押して、シゲルがビースブレスをリードライバーにかざした。
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
“スタートアップ・オックス。”
2人がフォックス、オックスに変身した。
「ツバキたちはここから離れて!オレたちがヤツらをここで足止めする!」
「ソウマくん!」
呼びかけるソウマにツバキが声を上げる。ソウマとシゲルもビースターたちに向かっていく。
ビーストライダーとビースターが入り乱れての大混戦が繰り広げられた。
ノゾムたちの混戦の情報が、ジンキの耳にも入ってきた。
「そうか。ビーストライダーたちも裏切り者も、全員絶対に逃がすな。」
“了解。”
ジンキの指示に、通信先の男が答えた。
(時期にキリオも来るだろう。数でも質でも、エックスビースがヤツらより優れていることを証明してもらおうか。)
ジンキは心の中でララたちの任務遂行を考えながら、席を立って社長室を出た。
ララの素早い動きから繰り出されるキックを、ノゾムは回避と防御でかいくぐる。
「いい加減にやられちゃってよ!シュンの仇であるお前がいると、私は安心できないんだよ!」
ララがノゾムに向かって怒りを叫ぶ。
「自分たちのためだけに、オレたちをムチャクチャにしようとするお前たちが、仇だとか勝手なことを言って・・!」
ノゾムもララへの怒りをふくらませる。彼が反撃に出てパンチを繰り出す。
「ぐっ!」
ララが押されてうめくも、すぐに踏みとどまる。
「自分たちのしていることを棚に上げて、自分たちが正しいなどと思い上がるな!」
ノゾムが怒号を放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがジャンプして、ララに向かってエネルギーを集めたキックを繰り出す。ララがバラの花びらを放って、ノゾムのキックを受け止めた。
「何っ!?うあっ!」
ノゾムが花吹雪に押されて吹き飛ばされる。
「ノゾム!」
「ノゾムさん!」
倒れたノゾムにソウマとセイラが叫ぶ。立ち上がるノゾムに、ララが近づいてくる。
「くそっ!・・こうなったら、エックスの力で・・!」
ノゾムが毒づいて、エックスカードを取り出した。
「やめろ、ノゾム!エックスのカードは体力を大きく消耗する!これだけビースターがいる中で使うのは危険だ!」
シゲルに呼び止められて、ノゾムがエックスカードの使用を思いとどまる。
そこへシャークビースターが飛び込んできて、爪でマックスのスーツを切りつけてきた。
「ぐっ!」
マックスのスーツから火花が散って、ノゾムが押されてうめく。キリオが着地して、ララのそばに近寄る。
「ずいぶんと派手にやってるな、お前ら・・グズグズしてると、オレが獲物を全部独り占めしちまうぞ!」
キリオが笑みを見せてから、ノゾムを狙って飛びかかる。ノゾムがとっさに足を振り上げて、キリオをけん制する。
「ノゾム、1人だけでムチャするのはなしだぞ・・!」
「たまには力を合わせることもやってくれよな!」
ソウマとシゲルがノゾムの横に並んで呼びかける。
「そうしたほうがいいみたいだな・・!」
ノゾムが渋々納得して、ソウマたちとともにキリオに目を向ける。
「ビーストライダー、3人まとめて、このオレが仕留めてやるぜ!」
「そいつはどうかな。仕留められるのはお前のほうだ!」
キリオが言い放って、シゲルが笑みを見せる。彼がリードライバーの中心部を回転させて、ノゾムとソウマがビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
“オックス・ロードスマッシュ。”
ノゾムたちが足にエネルギーを集めて、同時にジャンプする。キリオが両手に力を込めて、彼らに向かって爪を振りかざす。
ノゾムたちのキックとキリオの爪がぶつかり合って、激しい衝撃と火花を巻き起こす。
「ぐあっ!」
キリオがキックに押されて突き飛ばされて、大きく地面を転がる。ダメージが大きくなって、キリオが痛みに襲われて悶絶する。
「バカな!?・・オレが、これほどのダメージを受けるなど・・!」
キリオがうめき声を上げて、ノゾムたちを鋭く睨みつける。
「まさか、キリオ様が追い詰められるなど・・!?」
「キリオ様が倒されるわけにはいかない!」
スタッグビースターたちがキリオを助けようとする。
「待て!まずは裏切り者たちを・・!」
ビートルビースターがスタッグビースターたちを呼びとめるが、ユウキとセイラ、タツヤに行く手を阻まれる。
「ノゾムも許せないが、許せないのはお前たちも同じだ!」
「ユウキ・・・!」
言い放つユウキに、セイラが戸惑いを見せる。ユウキが剣を具現化して、ビートルビースターを切りつける。
「オレたちは体が硬くて力がある!」
「その程度でやられるか!」
ビートルビースターが勝ち誇って、その1人がユウキに突進する。
「ぐっ!」
踏みとどまるユウキだが、ビートルビースターにだんだんと押されていく。
「ユウキ!」
セイラが叫んで、ユウキを助けようとする。しかし他のビートルビースターに囲まれる。
「オレは負けられない・・お前たちにも、ノゾムにも!」
ユウキが言い放つと、刺々しい姿へと変貌を遂げる。力を上げた彼がビートルビースターを押し返していく。
「何っ!?この力・・貴様は・・!?」
驚くビートルビースターの頭をつかんで、ユウキが持ち上げて放り投げる。ビートルビースターが地面に叩きつけられてうめく。
「力が確実に上がっている・・1対1ではさすがに勝ち目がない・・!」
ユウキの高まった力に、ビートルビースターが危機感を覚える。ユウキが再び剣を手にして、ビートルビースターに向けて振りかざす。
「がはぁっ!」
頑丈だった体に傷を付けられて、ビートルビースターが絶叫を上げる。
「こんな・・こんなことが・・・!」
愕然となるビートルビースターが倒れて爆発を起こした。
「ビーストライダーだけではない・・霧生ユウキも力が上がっている・・・!」
他のビートルビースターがノゾムたちとユウキたちの力に焦りを覚える。
「キリオさん、ララさん、ここは撤退しましょう!」
「ふざけるな!・・オレはこんなことで逃げる男じゃ・・!」
スタッグビースターが呼びかけて、キリオがいら立ちを見せる。しかし体が思うように動かず、キリオはスタッグビースターたちに連れられていった。
「今度こそ・・今度会うときに必ずお前たちのベルトを奪って、息の根を止めてやるんだから!」
ララもいら立ちを見せて言い放ってから、ノゾムたちの前から姿を消した。
「何とか助かったみたいだ・・・!」
タツヤが周りを見回して安心を見せる。彼がセイラとともにビースターから人の姿に戻る。
しかしユウキはビースターの姿にまま、ノゾムに視線を向ける。
「たとえセイラやツバキさんが何と言おうと、オレは今はお前を信じることができない・・ビースターを攻撃してくるお前を・・・!」
「ユウキ・・・どうやら、オレたちは決着を着けないといけないみたいだな・・・!」
ユウキとノゾムが互いに敵意を向け合う。ツバキとセイラに呼び止められても、2人は互いへの怒りを抑えることができなかった。
「ユウキ、今はタツヤさんを安全なところへ連れて行かないと・・・!」
セイラに言われて、ユウキはこの場でノゾムと戦おうとせず、彼女とタツヤとともに引き下がることにした。
(ユウキさん・・ノゾム・・2人はこのまま、戦うしかないっていうの・・・!?)
ノゾムとユウキの対立を止められないことに、ツバキはやるせない気持ちを感じていた。
ノゾムたちとユウキたち、キリオたちの大混戦の収束を、ジンキは遠くから見ていた。
(神奈ノゾムと霧生ユウキ。2人はどうやら対立しているようだ・・これを利用しない手はないな・・)
ノゾムたちの険悪を目の当たりにして、ジンキは笑みを浮かべた。
(まとめて相手をしても私が勝つのは必然だが、効率を考えればいかなる手も使う。)
ノゾムとジンキの対決のときを待ちわびながら、ジンキもこの場を後にした。