仮面ライダーマックス

第28話「パトレンジャー出動!?」

 

 

 ノゾムたちを振り切って再び逃走した魁利。工場の近くの道に来たところで、彼は透真、宇美花と合流した。

「何グズグズしていたんだ?」

「またおかしな連中と警察が出てきて、抜け出すのに手間取っちゃったよ・・」

 透真が呆れながら問いかけて、魁利が気さくに答える。彼らはルパンレンジャーへの変身を解いた。

「これでまた“ルパンコレクション”を回収できたね。」

 宇美花が黄金のバットを見て笑みをこぼす。3人は周りを見回してからアイマスクを外した。

 そのとき、ソウマがウルフルスロットルに乗って駆けつけた。魁利たちがとっさに動いてウルフルスロットルをかわすが、魁利がアイマスクを落としてしまう。

「オレにスピードで勝とうなんてムチャな話だぞ、泥棒たち。」

 ソウマがウルフルスロットルから降りて笑みをこぼす。続けてイグアカートが駆けつけてシゲル、ツバキ、タイチも魁利たちを確認した。

「相変わらず速いな、ソウマ。たまには追いかけるこっちの身になってくれって・・」

 シゲルが肩を落とす素振りを見せて、魁利たちに目を向ける。

「さっきの野球ヤローたちは逃げちゃったぞ。だから追いかけてきたってわけ。」

 気さくに声をかけるシゲルを、魁利たちが警戒する。

「あ、あなたたち・・!?

 そのとき、ツバキが魁利たちを見て驚きを覚える。彼女とタイチは怪盗たちの正体が魁利たちだと気付く。

(しまったぁ・・ばれた・・・!)

 正体を知られて魁利が宇美花とともに気まずくなる。透真が自分たちのことを知ったツバキたちやソウマたちを、何が何でも始末しようと考える。

「大変、大変、たいへーん!」

 そこへ声がかかってきて、魁利たちが振り返る。彼らに向かって飛んできたのは、意思を持つVSビーグル「グッドストライカー」。愛称はグッティである。

「グッティ、どうしたの!?今、取り込み中!」

 宇美花がグッティを受け止めて、必死に呼びかける。

「こっちもそれどころじゃないよー!あのマックスっていうの、警察に捕まっちゃったよー!」

「何だって!?

 グッティが告げた言葉に、ツバキたちが驚きの声を上げた。

 

 魁利とデビルバッターたちとの戦いの中で、駆けつけた圭一郎たちに連行されることになったノゾム。手錠をかけられて取調室に連れてこられたノゾムだが、怒りをあらわにしていた。

「おとなしくしな!公務執行妨害になるぞ!」

「何が公務執行妨害だ!オレを勝手に悪者扱いして、こんなところに連れ込んで!」

 つかさが怒鳴るが、ノゾムは怒りをふくらませるばかりだった。

「これじゃロープでグルグル巻きにしても、自分の体バラバラにしてでも出ていきそうだ・・」

「感心している場合じゃないだろう!本当に飛び出す前に事情を聞き出すんだ!」

 気まずくなる咲也に、圭一郎が不満を見せる。

「おいっ!お前も怪盗の仲間だってことは分かってるんだ!仲間は今どこにいる!?

 圭一郎が机を叩いて、ノゾムに問い詰める。

「だから、オレは泥棒なんかじゃないって言っているだろうが!」

「ウソをつくな!怪盗と一緒だっただろうが!」

 ノゾムが反論するが、圭一郎は聞き入れようとしない。

「ウソだ!?・・どうしてオレの言っていることがウソだって分かるんだよ・・!?

 彼の口にした言葉を聞いて、ノゾムがさらに怒りをふくらませていく。

「勝手にウソだと決めつけるのは、話を聞こうとせずに何もかも決めつけることだ・・そういう勝手なヤツ、オレは許しちゃおかない!」

 ノゾムが怒りを爆発させて、椅子から立ち上がって、強引に手錠を引きちぎろうとする。

「おい、よせ!人間の力で手錠が切れるわけがない!逆に腕が切れるぞ!」

 つかさが呼び止めるが、ノゾムは聞かずに圭一郎につかみかかろうとした。

「みんな、ストップだ!」

 そこへ1人の黒人が取調室に入ってきて、ノゾムと圭一郎たちを呼びとめてきた。

「ヒルトップ管理官!」

 圭一郎たちが上官、ヒルトップに振り向いて敬礼を送る。

「神奈ノゾムくんはホシじゃないよ。彼はビーストライダーとして、ビースターというモンスターと戦っているんだ。」

 ヒルトップがノゾムについて語りかける。彼は情報を入手して、魁利たち怪盗と接点がないと判断した。

「今回相手をしていたのはビースターじゃなかったけどね。」

「ということは僕たち、誤認逮捕しちゃったってことですかー!?

 ヒルトップの話を聞いて、咲也が慌てる。

「も、申し訳ありませんでした!」

「す、すぐに手錠を外す!」

 咲也が深々と頭を下げて、つかさがノゾムの両手にかかっている手錠を外した。ノゾムが痛みの残っている手首をさすってから、つかさに目を向ける。

「おい・・女がそういう棘のある態度をすると嫌われやすくなるぞ・・」

「よ、余計なお世話だ!」

 ノゾムが投げかけた言葉に、つさかが不満を言い返す。

「長官、しかし・・たとえ怪盗と関わりがなくても、暴行と公務執行妨害を行ったことに変わりは・・!」

「そうやって強要をするから、彼は怒りを出すんじゃないかな?」

 反論する圭一郎にヒルトップが助言する。圭一郎はいら立ちを抑えて、ノゾムに視線を戻す。

「ノゾムくん、落し物だよ。後で拾っておいたんだ。」

 ヒルトップがノゾムにビースドライバーを差し出した。

「それは・・!」

 ノゾムが戸惑いを覚えて、ヒルトップからビースドライバーを受け取った。

「どこかの部隊や施設に所属しているわけじゃないけど、悪者と戦っていることは私たちと同じだから・・」

 ヒルトップが励ましの言葉を送って、ノゾムの肩に手を乗せる。ノゾムは彼の手を払って、取調室から廊下に出る。

「オレは正義の味方じゃない・・身勝手なヤツの敵だ・・・」

「そんな、勝手な・・!」

 ノゾムの口にした自分の考えに、圭一郎が不満を言い返す。

「オレたちに何かを無理やり押し付けるようなマネをしてくるなら、誰だろうと容赦しない・・・」

 ノゾムはそう言うと、圭一郎たちの前から去っていった。

「彼には彼の戦いがある。君たちに君たちの戦いがあるようにね。」

「長官・・・」

 ヒルトップが投げかけた言葉を聞いて、咲也とつかさが戸惑いを感じていた。

(人々を不安に陥れる勝手を、見過ごすことはできない・・ギャングラーも、怪盗たちも・・!)

 圭一郎はノゾムにも怪盗たちにも心を許さず、胸中で決意を強くしていた。

 

 ツバキたちが警察署に向かうことになり、魁利たちはその間に逃げ切ることができた。しかし魁利は素顔を見られたことを気まずく思っていた。

「オレとしたことが不覚だな。今は正体を他の人にばらされないことを祈るしかないな・・」

「何とかして黙らせるしかない・・最悪、口封じも・・・!」

 魁利が頭に手を当てて、透真がツバキたちを警戒する。

「お店閉めてどっかに行かなくちゃならなくなる〜・・」

 宇美花が気まずくなって頭を抱える。

「困りますね、そういう忌々しき事態を招いては・・」

 そこへ1人の老人が現れて、魁利たちに声をかけてきた。

「コグレさん・・!」

「相変わらず神出鬼没だな・・」

 宇美花と透真が老人、コグレに振り向いて声を上げる。

「お宝は持ってきた。これからもルパンコレクションを集めて、アンタに渡すさ。」

 魁利が言いかけて、黄金のバットをコグレに差し出した。

「そのことですが、申し訳ないです。その情報、あなたたちを誘い出すための偽の情報だったようです。」

「何だって!?

 コグレが口にした言葉に、魁利が驚きの声を上げる。

「正確にはあなた方を含む戦隊をおびき出すための情報だったようです。戦隊への恨みを持つ者たちによる・・」

「さっきの野球の怪物たちのことだね。」

 コグレが語りかけて、宇美花が納得する。

「それで正体を知られちゃったのは悪かったけど、何とか穏便に問題解決にならないかなぁ?」

 魁利が気まずさを見せて、両手を合わせてコグレに頼み込む。

「その穏便に、ですが・・どうやらうまく行きそうですよ。」

「えっ・・!?

 コグレの言葉に魁利と宇美花が声を上げた。

 

 圭一郎たちの前から去ったノゾムは、彼を心配して駆けつけたツバキたちと合流した。

「ノゾム、大丈夫!?

 ツバキがノゾムに駆け寄って、心配の声をかける。

「オレは大丈夫だ・・それより、泥棒と怪物はどうなった?」

「どっちも逃げられた・・みんなすばしっこいヤツらで・・」

 ノゾムが問いかけて、ソウマがため息まじりに答える。

「いくらスピード自慢のオレでも、どさくさに紛れて逃げられたんじゃな・・」

「いいわけはこのくらいでな・・それより、これからどうするんだ?怪盗と怪物たちを追いかけるのか?」

 肩を落とすソウマに言いかけて、シゲルがノゾムに問いかける。

「どうもこうもない・・オレたちに何もしてこなければ、オレも何もしない・・」

「そして何かしてきたら倒す、か・・ノゾムらしくやっているね・・」

 ノゾムの答えを聞いて、タイチが苦笑いを見せる。

 そのとき、街中に突然、野球仮面が姿を現した。それも巨大になって。

「な、何なんだー!?

 巨大になった野球仮面に、タイチが驚きの叫びを上げた。

 

 黄金のバットを魁利たちに盗まれて、ノゾムたちから逃げてきた野球仮面、グローブン、デビルバッターたち。2組のスーパー戦隊と3人の仮面ライダーに、野球仮面たちは焦りを感じていた。

「おのれ、ルパンレンジャーとパトレンジャー、マックスどもめ・・!」

「何としてでも黄金のバットを取り戻さなければ・・!」

 グローブンと野球仮面が声を振り絞る。デビルバッターたちも動揺を隠せなくなっていた。

「すっかり弱気になっているじゃなイカー!」

 そこへイカの姿をした怪人が現れて、野球仮面たちに声をかけてきた。

「ビビー!」

 イカの怪人の周りを、小悪魔のような生き物が飛び回っていた。

「奪われたなら奪い返せばいいんじゃなイカー!」

「イカデビルの言う通りデビ!ビビデビもついてるデビー!」

 怪人、イカデビルと小悪魔、ビビデビが野球仮面たちに呼びかける。

「こうなれば延長戦だ!みんな、気合い入れていくぞ!」

 野球仮面がグローブンたちに呼びかけて、気合いを入れる。彼は再び魁利たちに立ち向かうことを心に決めた。

「それじゃビビデビが気合を入れてやるデビー!巨大化ウイルス注入!ガブッ!」

 ビビデビが野球仮面にかみついた。野球仮面の体にビビデビと同じ姿のウイルスが送り込まれる。

 ビビデビの送り込んだ巨大化ウイルスの効果で、野球仮面の体が大きくなった。

「ひと暴れしてやれ、野球仮面!」

「戦隊やライダーたちをおびき出すデビー!」

 イカデビルとビビデビが言い放つ。野球仮面が手にしたバットを振りかざして、そばの家やビルを叩いた。

 

 巨大化した野球仮面が暴れ出したのを目撃して、タイチが動揺をあらわにする。ツバキが緊張を感じて、ソウマとシゲルが身構える。

「何でいきなりあんなにでっかくなっちゃったのー!?

 タイチが野球仮面を見上げて叫ぶ。

「ここまでふざけたマネを・・2度と出てこられないようにしないと分かんないみたいだな・・!」

 ノゾムが野球仮面に対して怒りを覚える。

「おいおい、ノゾム・・あんなデカブツ、どうやって相手するんだよ・・!?

 シゲルがノゾムに苦言を投げかける。

「敵が何をしてこようとブッ倒すだけだ・・!」

 ノゾムが鋭く言うと、野球仮面に向かって走り出した。

「ノゾム!・・あんな相手にも向かっていくなんて・・・!」

 呼び止めるもノゾムは立ち止まることなく、ツバキが不安を浮かべる。

「オレたちも行くぞ!オレたちが行けばムチャも少しはなくなるかも!」

「そうだな・・!」

 ソウマが呼びかけて、シゲルが頷く。2人もノゾムを追って走り出した。

 

 バットを振り回して暴れ回る野球仮面。街の中を前進する彼が、ふと足を止めた。

 その視線の先のビルの屋上に、アイマスクを付けた魁利、透真、宇美花が立っていた。

「探してるのはコイツだろ?」

 魁利が気さくに言って、黄金のバットを取り出して見せる。

「それは黄金のバット!すぐに返すのだ!」

 野球仮面が魁利たちに向かって動き出す。

「返せだって?どうする?」

 宇美花が問いかけて、魁利が黄金のバットを上に上げた。すると透真がVSチェンジャーを撃って、バットを破壊した。

「なっ!?

 野球仮面だけでなく、グローブンたちも驚きの声を上げた。

「さて、これからどうする?」

 透真が問いかけて、魁利が笑みをこぼす。

「アイツらの相手をする必要はないけど、いつまでもうろつかれるのも面倒だしね。」

 魁利が言いかけて、透真たちとともに野球仮面たちに戦いを挑むことにした。

 そのとき、ノゾム、ソウマ、シゲルが駆けつけて、グローブンたちの前で足を止めた。

「貴様らは、あのときの仮面ライダー!」

「お前たち・・どこまでふざけたことをすれば気が済むんだ・・!?

 グローブンが声を上げて、ノゾムが彼らに鋭い視線を向ける。

「仮面ライダーもスーパー戦隊も、まとめてここで始末してやればいいんじゃなイカー!」

 イカデビルが躍り出て、ノゾムたちと魁利たちを迎え撃つ。

「そこまでだ、怪物ども!」

 そこへパトカーが駆けつけて、圭一郎、咲也、つかさが降りてVSチェンジャーを構えた。

「アンタたちは、さっきの・・!」

 ノゾムが圭一郎たちに振り向いて声を上げる。

「オレたち警察の任務と使命だけでなく、オレたち自身の責任と願い・・それがオレたちの戦う理由だ!」

 VSチェンジャーをグローブンたちに向けたまま、ノゾムに言いかける。

「お前たちの戦いで誰かが傷つき悲しむようなことになるなら、オレたちはお前たちとも戦う!」

「オレはそんなことをしようとは思わない・・そう考えているヤツをブッ倒すだけだ・・!」

 決意を告げる圭一郎に、ノゾムも自分の考えを口にする。

「みんな集まってきたぞ〜・・!」

「こうなったら、全員まとめて始末してやるぞー!」

 デビルキャッチャーが頭を抱えて、デビルピッチャーがいきり立つ。

「戦隊もライダーも、オレたちにかかれば鬼にバットだ!」

「それを言うなら鬼に金棒だ!」

 デビルバッターがバットを手にすると、つかさがツッコミを入れる。

「お前たちはここでブッ倒されるだけだ・・!」

 ノゾムが鋭く言って、マックスカードを取り出した。ソウマ、シゲルもフォックスカード、オックスカードを手にした。

“マックス!”

“フォックス!”

“オックス。”

 ノゾムとソウマがビースドライバーにマックスカード、フォックスカードをセットして左上のボタンを押して、シゲルがビースブレスにオックスカードをセットしてリードライバーにかざす。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

“スタートアップ・オックス。”

 ノゾム、ソウマ、シゲルがマックス、フォックス、オックスに変身した。

「仮面ライダーっていうのが、3人そろったみたいだね♪」

「喜んでいる場合じゃないだろ。」

「オレたちもやるよ。」

 笑顔を浮かべる宇美花に、透真と魁利が呼びかける。3人がVSチェンジャーにVSビーグルをセットして、それぞれダイヤルコードとグリップを回す。

「怪盗チェンジ!」

“マスカレイズ!怪盗チェンジ!”

「はっ!」

 トリガーを引いたことでVSチェンジャーから放たれた光を浴びる魁利たち。彼らがルパンレンジャーへと変身を果たした。

「オレたちも後れを取るな!変身だ!」

「了解!」

 圭一郎が呼びかけて、咲也とつかさが答える。3人もVSチェンジャーにVSビーグルをセットして、グリップを下に回す。

「警察チェンジ!”

“パトライズ!警察チェンジ!”

「はっ!」

 トリガーを引いたことでVSチェンジャーから放たれた光を浴びる圭一郎たち。彼らもパトレンジャーへ変身した。

 ルパンレンジャー、パトレンジャー、そしてマックスたちビーストライダーがグローブンたちの前に集結した。

「ルパンレッド!」

「ルパンブルー!」

「ルパンイエロー!」

 魁利、透真、宇美花が名乗りを上げる。

「怪盗戦隊!」

「ルパンレンジャー!」

 魁利が声を上げて、透真たちと声をそろえた。

「パトレン1号!」

「パトレン2号!」

「パトレン3号!」

「警察戦隊、パトレンジャー!」

 圭一郎、咲也、つかさが名乗りを上げて、声をそろえた。

「オレの怒りは限界突破!」

「オレの強さは疾風迅雷!」

「オレの力は天下無敵!」

 ノゾム、ソウマ、シゲルもグローブンたちに向かって言い放った。

「おのれ、戦隊とライダー!まとめて倒して、ゲームセットにしてくれる!」

 グローブンがいら立ちを見せて、デビルバッターたちも構えを取る。

「予告する。アンタらのお宝、いただくぜ!」

「国際警察の権限において、実力を行使する!」

 魁利と圭一郎がグローブンたちに向かって言い放つ。

「お前たち、オレがいることを忘れるな!」

 そこへ野球仮面がバットを振り下ろしてきた。

「おわっ!」

 バットが地面に当たった衝撃で、ノゾムたちや圭一郎たちが揺さぶられる。魁利たちは揺れながらもジャンプして、グローブンたちの前に着地した。

「あのデカブツを何とかしないと、面倒なことになりそうだ・・」

 魁利が野球仮面を見上げて呟く。

「グッティー!グッティ、どこー!?

「はいはーい♪」

 宇美花が呼ぶと、グッティが飛んできて快活に答えた。

「これはグッと来る展開だねぇ〜♪思いっきりやっちゃうよー♪」

 グッティが明るく言いかけると、魁利たちがVSチェンジャーからVSビークルを射出する。

“ゲットセット!レディ?飛べ!飛べ!飛べ!・・・ゴー!”

“レ・レ・レ・レーッド!”

“ブ・ブ・ブ・ブルー!”

“イ・イ・イ・イエロー!”

 それぞれのVSビークルが巨大化して、巨大マシン「ダイヤルファイター」となった。魁利たちがダイヤルファイターに乗り込んだ。

「よし!2人とも行くぞ!」

「怪盗合体!」

 魁利が呼びかけて透真、宇美花と声をそろえる。

“勝利を奪い取ろうぜ!快盗ガッタイム!”

 ダイヤルファイターとグッティが変形、合体を果たす。

「完成、ルパンカイザー!」

 合体ロボ「ルパンカイザー」が野球仮面の前に降り立った。

「行くぞ!この延長戦を制すのは私だ!」

「どうかな。決勝打を打つのはオレたちのほうだ!」

 互いに言い放つ野球仮面と魁利。野球仮面がルパンカイザーと組み合って、バットを振りかざす。

「おわっ!」

 バットで叩かれたルパンカイザーから火花が散って、その衝撃に揺さぶられて魁利たちがうめく。

「ならばこれならどうだ・・!」

 透真が言いかけて、ルパンカイザーが右腕のガトリング砲を発射する。

「ぬおっ!なんの!千本ノックしてやるぞい!」

 最初は射撃されて痛がった野球仮面だが、バットを高速で振って、射撃を打ち返していく。

「もー!なんてヤツなのよー!」

「今度はボールの乱れ打ちをくらえー!」

 宇美花が不満の声を上げると、野球仮面がボールを連続で打つ。ルパンカイザーが次々にボールを当てられて火花を散らす。

「そろそろこっちの反撃の時間だ!」

 魁利が笑みをこぼして、ルパンカイザーが素早く動いてボールをかわす。野球仮面がバットを持って飛びかかるが、ルパンカイザーがすれ違いざまに左腕の回転ノコギリで切りつけた。

「ぐっ!・・やりおる、ルパンレンジャー・・!」

 膝をついた野球仮面が、振り返ってルパンカイザーに目を向ける。

「よし。とどめだ・・!」

 透真が呼びかけて、ルパンカイザーがエネルギーを集める。

“グッドストライカー、連射!倒れちまえショットー!”

 ルパンカイザーからエネルギーの球が連射された。

「この投球、見事全部打ち返してやるぞー!」

 野球仮面がバットを振って、エネルギーの球を打ち返そうとする。しかし全てを打ち返すことができず、次々に球をぶつけられてダメージを負った。

「くぅ〜・・ついに引退の時が来たか〜・・・!」

 自分の最期を痛感して、野球仮面が涙ぐむ。

「私はいなくなるが・・戦隊とライダーは永久に不滅・・・サラバ!」

 倒れながら断末魔を叫んで、野球仮面が爆発を起こした。

「永久に・・じゃない、永遠にアデュー。」

 魁利は言い間違えそうになるも、野球仮面に手向けの言葉を送った。

 

 デビルバッターの振るバット、デビルピッチャー、デビルキャッチャーが投げるボールにノゾム、ソウマ、シゲルは手を焼かされていた。

「どうだ!乱闘ならオレたちは無敵だ!」

 デビルバッターがノゾムたちに言い放って、勝ち誇る。

「何が乱闘だ!スポーツマンシップの欠片もないな!」

「もっとも、こっちは試合をしているつもりもないけどな・・」

 ソウマが不満を口にして、シゲルが皮肉を言う。

「お前たちの思い上がりもここまでだ・・一気に叩きのめす!」

 ノゾムが言い放って、エックスカードを取り出した。

“エックス!”

 彼がビースドライバーにセットされているマックスカードを、エックスカードと入れ替える。

“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”

 ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押すと、マックスのスーツが白くなって真ん中に縦のラインが入り、マスクも「X」の形のラインが入っていた。彼がエックスフォルムへの変身を果たす。

「どんな姿になったところでぇ〜・・」

「オレたちが負けることは絶対にない!」

 デビルキャッチャーとデビルピッチャーがノゾムを見て言いかける。2人とデビルバッターがノゾムに向かって飛びかかる。

 デビルバッターが振り下ろしたバットを、ノゾムが右手で軽々と受け止める。

「おわっ!」

 デビルバッターがそのままノゾムに投げ飛ばされる。

「コイツ!」

 デビルピッチャーがデビルキャッチャーとともにボールを投げつける。ノゾムが両手を振りかざしてボールを跳ね返した。

「アタッ!」

 逆にボールをぶつけられて、デビルピッチャーとデビルキャッチャーがしりもちをつく。

「お前たち、何をしている!」

 グローブンが怒鳴って、ショッカー戦闘員とゾルダーたちがノゾムたちに向かっていく。

「お前たち、止まれ!」

 そこへ圭一郎がパトメガボーを「メガホンモード」にして呼びかけると、ショッカー戦闘員たちが反応して足を止めた。

「よーし!せいれーつ!」

 咲也も呼びかけて、ショッカー戦闘員たちが整列する。

「よし!一斉検挙!」

 つかさが警棒モードのパトメガボーを振りかざして、ショッカー戦闘員たちを打ち倒していく。

「おのれ、パトレンジャーどもめ!」

 グローブンが圭一郎たちに怒りを見せる。そのとき、ルパンカイザーの合体が解けて、グッティが圭一郎の手元に来た。

「お前らにもグッと来たから、力を貸してやるぜー!」

「相変わらず何考えているのか分かんないヤツだ・・」

 掛け声を上げるグッティに、咲也が呆れた素振りで言いかける。圭一郎がVSチェンジャーにグッティをセットした。

“突撃用意!1号・2号・3号・一致団結!”

 すると圭一郎、咲也、つかさが合体して、1人の戦士「パトレンU号」となった。

“イチゲキストライク!”

 パトレンU号が構えたVSチェンジャーからビームが放たれた。

「ごあぁっ!」

 ビームを直撃されて、グローブンが爆発を起こしながら倒れた。パトレンU号の合体が解除されて、元の3人に戻った。

「ビビー!グローブンがやられたデビー!」

 ビビデビがグローブンに向かって叫ぶ。

「ビビデビ、喝を入れてヤリイカー!」

 イカデビルがビビデビに呼びかける。

「了解デビー!喝・・じゃない、巨大化ウイルス注入!ガブッ!」

 ビビデビが噛みついて、グローブンに巨大化ウイルスを注入した。グローブンも巨大化を果たして、ノゾムたちの前に立ちはだかる。

「どいつもこいつもふざけたことを・・!」

 ノゾムがいら立ちを浮かべて、右腕のエックスブレスにホークカードをセットした。

“エックスホーク!フライングスピード!”

 マックスのスーツの右側が黄色に変わった。ノゾムはホークフォルムの力を身に宿して、宙に浮いた。

「行けるわけなイカー!」

 イカデビルが触手を伸ばして、グローブンに向かおうとしたノゾムの足に巻きつけた。

「ぐっ!」

 ノゾムが引っ張られて地面に叩きつけられる。

「お前の相手は吾輩じゃなイカー!」

「オレたちも続けー!」

 イカデビルが叫んで、デビルバッターたちがノゾムに向かっていく。

「おっと!1人によってたかってってのはなしだぜ!」

 シゲルが呼びかけて、ソウマとともにデビルバッターたちの前に立つ。ソウマがビースドライバーの左上のボタンを2回押して、シゲルがリードライバーの中心部を回転させる。

“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

“オックス・ロードスマッシュ。”

 ソウマとシゲルがジャンプして、デビルピッチャーとデビルキャッチャーにキックを叩き込んだ。

「うあぁ〜!」

「こんなところで、オレがー!」

 デビルキャッチャーとデビルピッチャーが突き飛ばされて、倒れて爆発を起こした。

「お前たちー!おのれ、許さんぞ!」

 デビルバッターがバットを振り上げて飛びかかる。彼の前に魁利たちが立ちはだかる。

「オレたちが仲間のところへ送ってやる・・!」

 透真が言いかけて、魁利たちとともにVSチェンジャーを構えた。VSチェンジャーから放たれた光線が、デビルバッターに次々に命中した。

「な・・なんと屈辱的な日だ・・・!」

 デビルバッターが断末魔を口にして、倒れて爆発した。

「残りはイカと小悪魔、それとあのデカブツだな。」

 魁利が呟いて透真、宇美花とともにグローブンに目を向ける。グローブンがボールを持って、ノゾムたちに投げつけようとする。

「正義と平和はオレたちが守る!」

「いいねー♪またまたグッときたよー♪」

 決意を言い放つ圭一郎に、グッティが好感を持つ。グッティがVSチェンジャーから飛び出して、再び巨大化した。

“位置について用意!走れ!走れ!・・しゅつどーん!”

“轟音爆走!”

“百発百中!”

“乱撃乱打!”

 続けてVSチェンジャーから射出されたVSビークル「トリガーマシン」も巨大化して、圭一郎たちが乗り込んだ。

“正義を掴み取ろうぜ!警察ガッタイム!”

 トリガーマシンとグッティが変形、合体していく。

「完成、パトカイザー!」

 合体ロボ「パトカイザー」がグローブンの前に降り立った。

「また戦隊ロボが出たか!だがオレの敵ではないぞ!」

 グローブンがパトカイザーに向かってボールを投げつける。パトカイザーが右腕のロッドでボールを打ち返して、グローブンにぶつけた。

 パトカイザーが続けて左腕のトリガーキャノンを発射して、グローブンに命中させて吹き飛ばす。

「これで決めるぞ!」

 圭一郎が呼びかけて、パトカイザーがエネルギーを集める。

「パトカイザー、弾丸ストライク!」

 パトカイザーが放ったエネルギーの球が、グローブンに直撃した。

「ぐあぁ!・・代打で、終わりたかった・・・!」

 絶叫を上げるグローブンが倒れて、爆発を起こした。

「任務完了!」

 圭一郎たちがグローブンの最期を見届けて、敬礼を送った。

 

 スピードを上げてイカデビルに向かっていくノゾム。触手をかいくぐってパンチとキックを当てるノゾムだが、イカデビルへの決定打にはなっていない。

「イカカカカ!その程度では吾輩には敵わなイカー!」

 イカデビルがノゾムに向かって高らかに笑う。

「力が足りないなら上げてやる・・コイツで・・!」

 ノゾムが言い放って、左腕のエックスブレスにエレファントカードをセットした。

“エックスエレファーント!パワフルアターック!”

 マックスのスーツの左側が灰色になって、ノゾムはエレファントカードの力も身にまとった。

「パワーを上げてきたビビー!こうなったらまた巨大化ウィルスを・・!」

 ビビデビがイカデビルにも巨大化ウイルスを注入しようとした。しかしソウマに頭をつかまれた。

「そう何人も大きくさせてたまるかよ・・!」

「ビビ〜・・捕まってしまったデビ〜・・」

 ソウマが言いかけて、ビビデビが落ち込む。

 スピードだけでなくパワーも上がったノゾムのパンチを受けて、イカデビルが怯む。

「おのれ〜・・これで済むわけがないじゃなイカー!」

 イカデビルが怒りを叫んで、全身からビームを放出する。ノゾムが身構えてビームと爆発に耐える。

 そこへ魁利、透真、宇美花がVSチェンジャーでイカデビルを射撃した。振り向いたノゾムに魁利たちが合流した。

「何のマネだ?・・怪盗がオレを助けて何か得があるのか・・?」

「いや、これはただの気まぐれさ。何でかはオレにも分かんない。」

 問いかけるノゾムに、魁利が気さくに振る舞って答える。

「悪いはこれはオレの戦いだ・・オレがオレであるための、オレの全てを賭けた戦いだ・・怪盗がふざけ半分で首を突っ込んでくれるな・・!」

「ふざけ半分じゃない・・オレたちも命懸けで怪盗やってんだ・・オレたちの失ったものを取り戻すためにな!」

 鋭く言いかけるノゾムに、魁利が感情を込めて言い放つ。その言葉と口調から、ノゾムは魁利たちに並々ならぬ過去があると察した。

「何かワケありのようだな・・敵の思い通りになったら何もなくなくなるくらいの・・」

「オレたちのことを話すつもりはない・・詮索されるのがイヤなのはお互い様のようだが・・」

 ノゾムが投げかける言葉に透真が言い返す。

「ま、今は共通の敵がいるから手を組むってことで。」

 宇美花も気さくに言って、魁利たちと再びVSチェンジャーを発射する。

「イカー!」

 イカデビルが射撃を受けてしりもちをつく。

「あまり長引いてもお互いいい気がしないからな・・これで終わらせる・・!」

 ノゾムがイカデビルに視線を戻して、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“エックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ビースドライバーとエックスブレスから光があふれて、ノゾムの両足に集まる。彼がジャンプして、体を回転させて急降下する。

 イカデビルが触手数本を巻きつけて回転させて、ドリルにする。しかしノゾムのパワーに押されて、イカデビルがキックを食らう。

「ゲソー!またしてやられたじゃなイカー!」

 突き飛ばされたイカデビルが、絶叫を上げて爆発を起こした。

「全滅デビ〜!みんなやられちゃったデビ〜!」

 イカデビルたちがやられて、ビビデビが絶望する。

「それじゃこれで失礼するデビ〜・・」

 ソウマの手からこっそりを抜けて、ビビデビが逃げようとした。そのとき、彼が後ろからVSチャンジャーを突きつけられた。

「アデュー。」

 魁利がそのままVSチェンジャーの引き金を引いた。

「ビビー!」

 ビビデビが撃たれて吹き飛ばされて、空の彼方に消えていった。

「ふぅ。これで今回は終わりだな。」

「お目当てのお宝じゃなく、無駄骨になったが・・」

 魁利がひと息ついて、透真がため息まじりに言う。

「それじゃ私たちはこれで失礼するね。」

 宇美花が呼びかけて、透真とともにワイヤーを伸ばしてこの場を離れる。

「アンタたちとは、またどこかで会うかもしれないな・・その時まで、アデュー。」

 魁利はノゾムに言いかけてから、透真たちに続いて去っていった。

「また怪盗に逃げられてしまったか!」

 グローブンとの戦いを終えた圭一郎たちだが、魁利たちを捕まえることはできなかった。

「おかしな連中を倒しただけでも、よしと思うしかない・・」

 つかさが割り切ってひと息つく。

「あ、ありがとうございました、みなさん!あなたたちの協力がなかったら、どうなっていたか・・」

「オレはオレの戦いをしただけだ・・・」

 感謝して頭を下げる咲也に対して、ノゾムが自分の考えを貫く。圭一郎もノゾムに対して敬礼を送った。

 圭一郎たちもパトカーに乗って、ノゾムたちの前から去っていった。

「戦隊・・怪盗も警察も、いろいろわけありみたいだな・・・」

 魁利たちと圭一郎たち。それぞれの思いを察して、ノゾムも思惑を揺さぶられていた。

 そのとき、エックスカードの使用で体力を消耗したことで、ノゾムがふらついて地面に膝をつく。

“スリービースト。”

 彼からマックスへの変身が解けた。

「ノゾム!」

 ツバキたちが駆けつけて、ノゾムを支える。

「ノゾム、しっかりして!」

「エックスのカードを使って体力を消耗したんだ!」

 ツバキがノゾムに呼びかけて、ソウマが声を上げる。ノゾムが閉じていた目を開けて、ツバキたちを視界に入れる。

「オレはこんなことで死んだりしない・・オレの敵はまだいるんだから・・・」

「ノゾム・・・」

 疲れていても自分の考えを貫こうとするノゾムに、ツバキが戸惑いを覚える。

「それに、アイツらも抱えているようだ・・絶対に譲れない何かを・・・」

 ノゾムが魁利たち、圭一郎たちの戦いと信念に共感を感じていた。

「アイツの言う通り、またどこかで会うかもしれないな・・・」

 魁利たち、圭一郎たちとの再会をノゾムは予感していた。

“スリービースト。”

“シャットダウン。”

 ソウマとシゲルも変身を解除して、ノゾムたちに笑みをこぼした。

「それじゃ、そろそろ帰るとするか。」

 シゲルが呼びかけて、ノゾムたちと一緒に動物公園に向かう。

「いろいろありすぎてまだちょっと整理がついてないよ〜・・」

 タイチが動揺して頭を抱える。彼の様子を見てツバキたちが笑みをこぼした。

(ホント・・いろいろありすぎて、考えるのが逆にバカバカしくなるくらいだ・・・)

 今日の出来事に対して、ノゾムは心の中で苦笑をこぼしていた。

 

 マックスたちとルパンレンジャー、パトレンジャーとの出会い。

 しかしそれは、戦士の魂を賭けた最大の戦いの序章に過ぎなかった。

 

 

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