仮面ライダーマックス
第27話「ルパンレンジャー参上!?」
新たなるカード、エックスカードを手に入れたノゾム。しかし彼はリョウガに対するいら立ちを抱えたままだった。
この日、ノゾムはツバキ、タイチと一緒に動物公園を離れて散歩に出かけることになった。
「気分がいいってわけじゃないけど、気分転換になるなら・・」
「うん・・たまに運動したほうが、体だけじゃなくて心もスッキリするもんだからね・・」
気乗りしない素振りを見せているノゾムに、タイチが微笑んで言いかける。
(ノゾムはお父さんのことを憎んでいた・・本当の親子なのに、お父さんはノゾムを息子と思わず、ノゾムも身勝手な敵だと思っていた・・・)
ノゾムとリョウガのことを考えて、ツバキは苦悩を感じていた。
(ああいうのが親子の形じゃない・・あるわけない・・・!)
ノゾムとリョウガの関係が本当の親子の形ではないと、ツバキは自分に言い聞かせていた。
「そういえば最近、謎の怪盗がニュースで話題になっているみたいだよ。」
タイチがふと話題を投げかけて、ツバキが我に返る。
「狙った獲物は必ず盗む、3人組の怪盗みたい。それも盗みに入ったのが、違法なカジノや銀行ばかりなんだよ・・」
「怪盗?・・泥棒のことなどオレには関係ない・・オレに何かしてこなければな・・」
タイチが語りかけるが、ノゾムは興味を持っていなかった。
そのとき、おなががなる音がして、タイチがおなかに手を当てた。
「おなか、すいてきちゃった。アハハ・・そろそろお昼ごはんの時間だね・・」
タイチが照れ笑いを見せて、ツバキが笑みをこぼした。
「でもこの辺りに食べる所は・・・」
ツバキが言いかけて周りを見回す。
「あっ。あそこにお店があるよ。」
彼女が歩く先でお店を見つけて指さして、ノゾムとタイチも目を向ける。
「ビストロ“ジュレ”・・フレンチかぁ・・ちょっと高そうだけど、たまにはいいかな・・」
タイチが戸惑いを見せながら言いかける。
「オレも別にいいぞ・・少しぐらいならいいんじゃないか・・」
「それじゃそこに決まりね。」
ノゾムも聞き入れて、ツバキが2人と一緒にジュレに向かった。
「いらっしゃいませー♪」
ジュレに入ったノゾムたちを、1人のウェイトレス、早見宇美花が迎えた。ジュレの店内のテーブル席のほとんどに、客が食事をとっていた。
「よかったぁ。ギリギリ待たなくて座れるよ・・」
タイチが安心の笑みを浮かべて、ノゾムたちと一緒に席に着いた。
「ご注文をうかがいますね。」
宇美花がメニューを差し出して、ツバキとタイチがにらめっこするようにメニューを見つめる。
「ど、どれを頼めばいいのか・・・」
「あの〜・・おススメはどれになりますでしょうか〜・・?」
タイチがオドオドして、ツバキが宇美花に問いかける。
「どれもおススメですけど、これとこれなんてどうですか?」
宇美花がメニューからおすすめと思う料理を指し示した。
「料理を作るのはオレの仕事なんだから、宇美花が勝手におすすめを決めないでほしいな。」
そこへキッチンにいるコックの青年、宵町透真が宇美花に苦言を投げかけてきた。
「いいじゃない、透真。お客様が困っているんだから・・」
「そういうことは料理できるようになってからにしてくれ。」
「それができるならやってるよ〜、も〜・・」
「そんな口を叩くなら、少しでもうまくなれって・・」
ふくれっ面を見せる宇美花に、透真が愚痴をこぼす。
「オレはこれにするが・・これ以上ケンカするなら帰るぞ・・」
ノゾムも注文をして、宇美花と透真に対して目つきを鋭くする。
「申し訳ありませんでした。ただ今調理にかかります。」
透真が不満を抱えたまま答えて、調理を続けた。ノゾムの不満がこれ以上ふくらまなかったことに、ツバキとタイチは安心していた。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ。」
注文した料理を運んで、宇美花が笑みを見せた。ツバキとタイチが料理を口にする。
「おいしい。食感も風味もかなりいい・・」
「さすがフレンチはレベルが高いなぁ・・」
ツバキとタイチが透真の料理に喜ぶ。ノゾムも続けて料理を口にする。
「おいしい・・これがフレンチってヤツか・・」
ノゾムが料理の味を確かめて戸惑いを覚える。彼はフレンチをフレンチと認識して食べたのは初めてだった。
「結構素直みたいだね、あの人。」
「しかし短気そうでもあるな。オレは関わり合いにはなりたくないな・・」
キッチンからノゾムたちを見て、宇美花が笑みをこぼして、透真が不満げに答えた。
そのとき、再びジュレのドアが開いて、1人の青年、夜野魁利が入ってきた。
「魁利、この忙しいときにまたサボって〜!」
「あ〜、ゴメンゴメン。みなさん、申し訳ありませーん!今日はこれから団体の予約が入っていますので、これで閉店でーす!」
注意をする宇美花に言い返してから、魁利がノゾムたちに呼びかける。
「チェ!また閉店かよ!」
「この店、たまにこういうのがあるからイヤなのよね・・!」
客たちが不満を口にしながら、仕方なくジュレを出ていく。
「あなたたちもお帰りくださいませ。申し訳ないです〜・・」
「あ、あの、そういう無理やりは・・」
魁利がさらに呼びかけて、ツバキが気まずくなる。彼女とタイチはノゾムが怒り出すのを恐れた。
「ホラ。あなたも今日はおしまいですよ。」
魁利がノゾムにも呼びかけて手を伸ばす。するとノゾムがフォークを皿の上に置いてから、右手で魁利の伸ばしてきた手をつかんだ。
「イ、イタタタ・・!」
ノゾムに腕を持ち上げられて、魁利が痛がる。
「魁利!?」
透真と宇美花がたまらずノゾムに対して身構える。魁利がとっさにノゾムの手を払って、つかまれた腕を押さえる。
「ま、まずいことになっちゃう・・・!」
ノゾムが騒動を起こすことになると、タイチがツバキと一緒に不安をふくらませていく。
「これ・・お持ち帰りしたいんだけど・・・」
「えっ・・!?」
ノゾムが口にした言葉に、ツバキとタイチ、宇美花が驚きの声を上げる。
「あのですね・・ここはお持ち帰りできる店じゃ・・」
「分かった、分かりました。すぐに別の入れ物に移しますから・・」
透真の不満をさえぎって、魁利が大きく頷いてみせる。透真はため息をついてから、ノゾムたちの分の料理を他の皿に移すことにした。
ノゾムたちも後にしてから、魁利はジュレを閉めた。振り返った彼に対して、透真と宇美花が肩を落とす。
「魁利、相変わらず強引なんだから・・」
「これで売り上げが悪くなったらどうするつもりだ・・」
宇美花と透真が強引な魁利に文句を言う。
「悪かった、悪かったって・・・それよりも、本職の時間だ。」
謝る素振りを見せてから、魁利は真剣な顔を浮かべて言いかける。彼の言葉を受けて、透真も宇美花も真剣に頷いた。
ノゾム、ツバキ、タイチはジュレから近くの公園に移動していた。彼らはそこのベンチに座って、昼食の続きをしていた。
「あの人も店の人だったのかな?ちょっと強引だったよね・・」
「予約が入っているならもっと早く知らせるものなのに・・」
タイチとツバキが魁利の態度に対する不満を感じながら、ノゾムと一緒に料理を口にしていく。
「でもお持ち帰りさせてくれたのはよかったかも・・」
「でもあの人は融通が利くというよりはいい加減と言ったほうがいいかも・・」
2人は魁利のことを思い出して言いかける。そんな中でも、ノゾムは黙々と食べ続けて、食事を終えていた。
「なかなかの味だった・・でも何度も行きたくなるって感じでもないな・・またいきなり追い出されたらイヤだし・・」
ノゾムがひと息ついてから感想を口にする。
「やっぱり、気にしていたんだね・・・」
魁利のことをノゾムも不満に感じていたことに、ツバキとタイチが戸惑いを感じた。
「一同、せいれーつ!」
そのとき、号令とともに2人の怪人と複数の黒タイツ姿の男たちが現れた。
「な、何だ!?」
怪人たちの出現にタイチがツバキと一緒に驚いて、声を上げる。
「ビースター・・じゃないみたい・・・誰なの、この人たち!?」
ツバキが怪人たちを見て声を上げる。
「オレは黒十字軍のホームラン王、野球仮面だ!」
「オレの名はグローブン!野球仮面に加勢するぞ!」
2人の怪人、野球仮面とグローブンが名乗りを上げる。
「野球仮面!?グローブン!?黒十字軍!?」
「またおかしなヤツらが出てきたか・・何かふざけたことを企んでいるのか・・・!?」
タイチが疑問符を浮かべて、ノゾムが野球仮面たちに問いかける。
「オレたちはこの世界、この地球、この宇宙を支配するのだ!」
「まずはオレたちの野球の力、地球のヤツらに見せつけてやるぞ!」
野球仮面とグローブンが自分たちの目的を語りかける。黒タイツの男たち、ショッカー戦闘員とゾルダーが彼らの後ろに整列する。
「オレの周りでふざけたマネをしようっていうなら、オレは容赦しないぞ・・!」
ノゾムが野球仮面たちを鋭くにらみつけてきた。
「何だ、小僧!?オレたちに逆らうつもりか!?」
「オレたちに挑んでくるその度胸は褒めてやるぞ!しかしオレたちの野球パワーに、ただの人間のお前に耐えられるかな!?」
グローブンと野球仮面がノゾムに言い放つ。
「思い上がるヤツ・・お前たちのやることを、見逃すわけにはいかない・・!」
野球仮面たちに怒りをあらわにして、ノゾムがマックスカードを手にした。
“マックス!”
彼がマックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。
「なぬっ!?コイツ、仮面ライダーだったのか!?」
「仮面ライダー・・スーパー戦隊と並ぶ戦士のことか!」
野球仮面が驚いて、グローブンも身構える。
「オレの怒りは限界突破!お前たちはここでオレがブッ倒す!」
ノゾムが言い放って、野球仮面たちに向かっていく。
「おのれ!お前たち、やれー!」
「イー!」
「ホイ!」
グローブンが呼びかけて、ショッカー戦闘員とゾルダーたちが走り出す。ノゾムがショッカー戦闘員たちにパンチとキックを仕掛けて、次々に撃退していく。
「僕たちはここから離れて、ソウマくんとシゲルさんに知らせよう!」
「う、うん!」
タイチが呼びかけて、ツバキが頷く。2人はこの場から離れようとした。
「おのれ、仮面ライダー・・こうなればオレが相手だ!」
グローブンがいきり立って、エネルギーを込めたボールを投げつける。
「ぐっ!」
ノゾムがボールをぶつけられて突き飛ばされる。
「次はオレの千本ノックをお見舞いしてやるぞ!オレの打率は10割だ!」
野球仮面が意気込みを見せて、バットを持って素振りをする。
「この地獄のノックに耐えられるかな〜!?」
「ふざけるな!オレはお前たちの遊びに付き合うつもりはない!」
言い放つ野球仮面にノゾムが怒りを叫ぶ。野球仮面がバットを振って、ノゾムを狙って連続でボールを打ち込んだ。
そのとき、ノゾムに向かっていたボールが突然はじき飛ばされた。彼と野球仮面たちが振り返った先にいたのは、それぞれ赤、青、黄色の礼服とシルクハット、アイマスクを身に着けた人物たち。
魁利、透真、宇美花のもう1つの顔。世間をにぎわせている怪盗とは、彼らのことだった。
「あれは“ギャングラー”・・のようには見えないが・・・」
「アイツらが持ってるって情報だけど・・・」
透真と宇美花が野球仮面たちを見て疑問符を浮かべる。
「相手が誰だろうと関係ない。オレたちの目的は、“ルパンコレクション”を手に入れることだ。」
魁利は深く考えずに、自分たちの目的を果たそうとする。
「もしかして、あれが噂の怪盗・・!?」
「怪盗が、僕たちの前に現れたなんて!」
ツバキとタイチが怪盗たちを見て驚きを見せる。
「怪盗だか乱闘だか知らんが、お前たちにも地獄の千本ノックを味わってもらうぞ!」
野球仮面が魁利たちに向かってバットを向ける。
「生憎、アンタたちと野球にも遊びにも付き合うつもりはないよ。」
「いただくものをいただいて、さっさとサヨナラホームラーンってね♪」
魁利と宇美花が言い返すと、透真とともにガン型アイテム「VSチェンジャー」にアイテム「VSビーグル」をセットして、それぞれダイヤルコードとグリップを回す。
「怪盗チェンジ!」
“マスカレイズ!怪盗チェンジ!”
「はっ!」
トリガーを引いたことでVSチェンジャーから放たれた光を浴びる魁利たち。彼らがそれぞれの色のスーツと、シルクハットの形をしたゴーグルをした仮面を身にまとった。
「ルパンレッド!」
「ルパンブルー!」
「ルパンイエロー!」
魁利、透真、宇美花が名乗りを上げる。
「怪盗戦隊!」
「ルパンレンジャー!」
魁利が声を上げて、透真たちと声をそろえた。怪盗戦隊ルパンレンジャーがノゾムたちと野球仮面たちに現れた。
「怪盗戦隊・・ルパンレンジャー・・!?」
「あ、新しいスーパー戦隊がまた出てきたのかー!?」
タイチが動揺を浮かべて、野球仮面が驚きの声を上げる。
「予告する。アンタらのお宝、いただくぜ!」
魁利が野球仮面たちを指さして言い放つ。
「お宝?まさかこの黄金のバットでも狙ってるとでもいうのか!?」
グローブンが声を上げて、黄金のバットを取り出す。次の瞬間、ワイヤーが伸びてきてグローブンからバットをはじいた。
「はい、その通り。わざわざ差し出してくれてありがとうね。」
魁利がワイヤーを引き寄せて、バットを手にした。
「おのれ、怪盗戦隊・・お前たち、黄金のバットを取り戻せ!」
「イー!」
「ホイ」
グローブンが言い放って、ショッカー戦闘員とゾルダーが魁利たちに向かっていく。
「しつこいのは嫌われちゃうよ。」
「降りかかる火の粉は払うだけだ。」
宇美花が言いかけて、透真が低い声を投げかける。彼らが剣「ルパンソード」を手にした。
魁利たちがルパンソードを振りかざして、ショッカー戦闘員たちを切りつけて撃退していく。
「な、何だかゴチャゴチャな展開になってきたような・・・!」
ノゾム、野球仮面たち、ルパンレンジャーと大混戦になってきたことに、タイチは驚くばかりになっていた。
「レッド、お前は先に行け!」
「後から追いつくから!」
透真と宇美花が魁利に向かって呼びかける。
「分かった!お宝は任せとけ!」
魁利が答えて、黄金のバットを持って公園を離れた。丁度入れ違うように、ソウマとシゲルが公園にたどり着いた。
「な、何だ、コイツらは!?」
ソウマが透真たちと野球仮面たちを見て、驚きの声を上げる。
「あの噂の怪盗たちだよ!怪盗たちがそこのおかしな連中から何かを盗んで、1人がそれ持って逃げ出したんだ!」
タイチが動揺しながら説明するが、ソウマもシゲルも分からず状況の詳細を把握できないでいた。
「と、とにかく、オレたちはどうすりゃいいんだ・・・!?」
「そこの青と黄色が怪盗だってことと、2人が相手している連中が悪いヤツらだってことは確かか・・!」
自分たちのやるべきことを必死に見出そうとするシゲルとソウマ。
「まずはあの連中から倒すとするか・・!」
シゲルが呼びかけて、オックスカードを取り出した。ソウマもフォックスカードを手にした。
“フォックス!”
“オックス。”
ソウマがビースドライバーにフォックスカードをセットして左上のボタンを押して、シゲルがビースブレスにオックスカードをセットしてリードライバーにかざした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
“スタートアップ・オックス。”
2人がフォックス、オックスに変身して、ノゾムと合流する。
「2人も来たのか・・だったらここを任せていいか!?」
ノゾムがソウマたちに呼びかけてきた。
「任せてって・・ノゾムはどうするんだ!?」
「あの怪盗3人組のうちの1人を追いかける!何か持って逃げていったんだ!」
声を上げるソウマに、ノゾムが魁利のことを口にする。
「オレはそいつを追いかける!」
“タイガー!”
ノゾムが呼びかけてビースドライバーにタイガーカードをセットした。
“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”
ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押すと、タイガーランナーが駆けつけてきた。彼がタイガーランナーに乗って、魁利を追いかけた。
「おい、ノゾム!」
シゲルが呼びかけるが、彼とソウマにもショッカー戦闘員とゾルダーたちが迫ってきた。
「しょうがないな・・コイツらも、ノゾムも・・!」
ソウマが愚痴をこぼして、ゾルダーたちを迎え撃って撃退していく。彼とシゲル、透真と宇美花が合流する。
「こんなヤツら、オレたちだけで十分だ・・!」
「文句ならアイツらに言ってくれ!オレたちにも襲ってくるんだから!」
透真が言いかけて、ソウマが文句を口にする。
「いいじゃないの。協力してくれるなら早く片付くし。」
「これも成り行きだ。悪く思わないでくれよ。」
宇美花は共闘を受け入れていて、シゲルが気さくに答える。
「コイツらを追っ払ってからだな。細かいことはその後だ!」
シゲルが透真たちに言いかけて、野球仮面たちに向かっていく。
「お前もオレのバッティングを受けてみるか!」
野球仮面がバットを振りかざして、ボールを打って飛ばす。シゲルがパンチを繰り出して、ボールを跳ね返す。
「おのれ!ボールをパンチで打ち返すとは!」
「悪いがこれは試合じゃない。尻尾巻いて逃げなきゃここで倒させてもらうぞ!」
不満を口にするグローブンに、シゲルが笑みをこぼして言いかける。
「チーム対チーム・・これぞ野球の醍醐味だ!」
野球仮面が感動を込めた意気込みを見せて、何度も素振りをしてみせる。
「悪いが、オレたちは先を急がせてもらう。」
「仲間が待ってるからね。」
ところが透真と宇美花が魁利を追ってこの場を離れていく。
「あ、おいっ!そりゃないだろう!」
ソウマが透真たちに文句を言うが、襲い掛かってきたグローブンに組み付かれる。
「まったく・・何がどうなっているんだか!」
頭を抱えたい気分に駆られながら、ソウマがグローブンの振りかざす腕をジャンプでかわす。
「オレの強さは疾風迅雷!オレに追いつくヤツはいないんだよ!」
「面白い!オレのスピードボールのほうが上だということを、貴様にも思い知らせてやるぞ!」
言い放つソウマをグローブンがあざ笑う。
「オレの力は天下無敵!お前たちが何者かは知らないが、オレたちに何か仕掛けてくるなら容赦しないぞ!」
「お前のその全力勝負、オレが見事打ち返してやるぞ!」
互いに言い放つシゲルと野球仮面。2人も真正面からぶつかり合った。
黄金のバットを持って先に退散した魁利。彼は公園を離れて工場地帯に来ていた。
「さて。ここまで来ればひと安心ってとこか。」
魁利が足を止めて振り返って、敵が追いかけていないかを確かめた。
「2人ならうまく切り抜けて戻ってくるだろう。だからオレはこのまま・・」
魁利が再び移動をしようとしたときだった。眼前で爆発が起こって、彼は身構えた。
「オレたちのお宝に手を出すとは、とんでもないヤツらだぜ!」
魁利の前に、3人の怪人が自転車に乗って走ってきた。1人は背中にバットを背負い、2人はそれぞれ頭がグローブとキャッチャーミットになっていた。
「また野球絡みのおかしな連中・・さっきのヤツらの仲間か?」
魁利が怪人たちに向けて問いかける。
「その通り。オレは“クライム”のデビルバッター!」
「オレはデビルピッチャー!」
「オレはデビルキャッチャーだぁ。」
怪人たち、デビルバッター、デビルピッチャー、デビルキャッチャーが名乗りを上げた。
「オレたちの金のバット、返してもらうぞ!」
デビルバッターが背負っていたバットを手にして、魁利に向ける。
「そうはいかないな。このお宝はオレたちに必要なもんなんだ。返せと言われて返すわけないじゃん。」
魁利が言いかけてから、カードを手にして投げつける。しかしデビルバッターがバットを振って、カードを打ち返した。
「だったら乱闘タイムだ!力ずくで奪い返してやるぜ!」
「あんまり面倒かけないで済ませたかったんだけどなぁ・・」
デビルピッチャーが怒鳴り声を上げて、デビルキャッチャーがため息をつく。2人がボールを手にして、魁利を狙う。
「こりゃちょっとピンチかもな・・!」
魁利が焦りを感じながら、ルパンソードを構えた。
そこへノゾムの乗ったタイガーランナーが駆けつけて、魁利とデビルバッターたちの間に割って入ってきた。
「またおかしなヤツが出てきたか・・さっきのヤツらの仲間で間違いないのか・・!?」
タイガーランナーから降りたノゾムが、デビルバッターたちに向かって言いかける。
「アンタも人の物を盗んで、誰かにイヤな思いをしているのか・・!?」
「オレたちを悪い泥棒と一緒にしてもらったら困る。オレたちが盗む相手は、ギャングラーって連中だけだ。」
ノゾムがさらに問いかけてきて、魁利が半ば呆れた素振りを見せて答える。
「オレたちは狙ったお宝は必ず盗み出す。邪魔をしてくるなら、誰だろうと容赦しない。」
「容赦しない・・そういうところだけは、オレと似ているかもしれない・・・」
魁利の言葉を聞いて、ノゾムが共感を覚えた。
そのとき、ノゾムたちのいる場所に1台のパトカーが駆けつけてきた。止まったパトカーから3人の警察官の男女が降りてきた。
「そこまでだ、怪盗たち!ギャングラー!」
警官の1人、朝加圭一郎が呼びかける。彼が構えた銃はVSチェンジャーだった。
「あれ?あそこにいるのはギャングラーでも悪人でもなさそうですよ。あっちの3人は悪人そうですけど・・」
「外見だけで犯罪者だと決めつけるのは愚の骨頂よ。」
2人の警官、陽川咲也と明神つかさが声をかけ合う。
「しかし怪しいことをしているのは確かだ!対象は怪盗と他の4人全員!」
「了解!」
圭一郎が呼びかけて、咲也とつかさが答える。3人がVSチェンジャーにVSビークルをセットして、グリップを下に回す。
「警察チェンジ!”
“パトライズ!警察チェンジ!”
「はっ!」
トリガーを引いたことでVSチェンジャーから放たれた光を浴びる圭一郎たち。彼らがそれぞれ赤、緑、ピンクのスーツとマスクを身にまとった。
「パトレン1号!」
「パトレン2号!」
「パトレン3号!」
圭一郎、咲也、つかさが名乗りを上げる。
「警察戦隊、パトレンジャー!」
圭一郎たちが声をそろえる。警察戦隊パトレンジャーがノゾムたちの前に現れた。
「国際警察の権限において、実力を行使する!」
圭一郎がノゾムたちに向かって言い放つ。彼らが魁利とデビルバッターたちだけでなく、ノゾムにも向かってきた。
「怪盗、今度こそお前を逮捕する!」
「相変わらず真面目だね。でも今はお前たちの相手をしている場合じゃないんだけど。」
圭一郎が呼びかけて、魁利が気さくに振る舞う。2人が素早くパンチとキックを繰り出して、激しい攻防を繰り広げる。
「君たちは逮捕しても問題なさそうだね!」
咲也が警棒「パトメガボー」を手にして、先をデビルバッターたちに向ける。
「また新しい戦隊が出てきたのか!?」
「スーパー戦隊・・いっぱい出てきて、気が遠くなってくるよ〜・・」
デビルピッチャーが驚いて、デビルキャッチャーが大きく肩を落とす。
「あなたは何者!?怪盗の仲間なの!?」
「オレは泥棒じゃない!そいつとそこのおかしなヤツらの相手をしているんだ!」
つかさが問い詰めて、ノゾムが声を上げる。ノゾムが両腕を押して、つかさを突き放す。
「あなたからも事情を聞かわせてもらう!一緒に来てもらうわ!」
「オレをどうにかしようとするなら、誰だろうと容赦しないぞ・・!」
連行することを告げるつかさに、ノゾムが不満の声を上げる。
「これでは不利だ!お前たち、いったん出直すぞ!」
「わ、分かった〜。」
デビルバッターが呼びかけて、デビルキャッチャーが答える。2人とデビルピッチャーが咲也から逃げて、この場から離れる。
「コラー!逃げるなー!」
咲也がデビルバッターたちを追いかけようとしたときだった。
「オレもそろそろおさらばしないとね。」
魁利が頃合いを見計らって、この場から離れる。
「待て!」
圭一郎が魁利を追いかけるが、その先にいたノゾムとぶつかってしまう。
「うあっ!」
そのはずみでビースドライバーが外れて、ノゾムのマックスへの変身が解けた。
「くっ・・逃げられたか!・・こうなったら!」
魁利に逃げられたことを悔しがる圭一郎が、倒れているノゾムに目を向けた。
「まずはお前から事情を聞かせてもらうぞ!」
「おい、放せ!敵は逃げていっただろうが!」
圭一郎が捕まえようとして、ノゾムが強引に立ち上がろうとする。
「おとなしくしろ!」
咲也とつかさがパトメガボーを振り下ろして、ノゾムの背中を叩いた。
「ぐっ!」
強い痛みに襲われて、ノゾムが倒れて意識を失った。
「よし。連行するぞ・・!」
圭一郎がノゾムを連れて、咲也、つかさとともにパトカーに乗って走り去った。その場にはビースドライバーが残された。