仮面ライダーマックス
第26話「エックスの可能性!」
リョウガにはマキシマムフォルムも通じなかった。ノゾムにもソウマにも動揺が広がっていた。
「あのビースター、今までの他のヤツらとは違う・・しかもノゾムの親父だとは・・」
「関係ない・・オレはアイツの言いなりには絶対にならない・・!」
ソウマが呟いて、ノゾムがリョウガへの憎悪をたぎらせる。
「マキシマムの力が通じないとなると、どうすりゃいいんだか・・・!」
「関係ないと言っている!オレは何が何でも、アイツをブッ倒すんだ!」
ソウマがため息をつくと、ノゾムがリョウガへの怒りをさらに増していく。
「ビースターを憎んでいるオレがいうのもなんだけど・・お前たち、仮にも血のつながった親子なんだろ?そうやって憎んだり傷つけ合ったりしていいものなのか?」
ソウマがノゾムとリョウガの関係と確執を気にする。
「実の親子だからこそ、許せないことがあるんだよ・・・!」
しかしノゾムは頑なに自分の意思を貫こうとする。
「分かっていたとはいえ、相変わらず強情だな、お前は・・」
何を言ってもノゾムの考えは変わらないと観念して、ソウマは肩をすくめた。そこへイグアカートに乗ったシゲルがやってきた。
「お前たち、ここにいたか。戦いに追いつけなくて悪かったな・・」
「シゲル、遅いっての。危うくやられるところだったんだぞ・・」
苦笑いを見せるシゲルに、ソウマが不満を振る舞う。
「だから悪かったって。それより、こんなのを見つけたんだ。」
シゲルは謝ってから、エックスカードを取り出してノゾムたちに見せた。
「アニマルカード・・?」
「エックス・・またワケありのカードみたいだな・・」
ノゾムが疑問符を浮かべて、ソウマが首をかしげる。
「オレも他のカードと違うと思って、すぐには使ってないんだ。試すならお前たちが見ている前でやったほうがいいかなって・・」
「まさか暴走するかもしれないってか?そんな物騒なものかもしれないっていうのか?」
シゲルの言葉を聞いて、ソウマが気まずくなる。
「まずはオレが使ってみる。何かあったら頼むぞ・・」
真剣な顔で言うと、シゲルはエックスカードの使用を試みる。
“エックス。”
彼がエックスカードをビースブレスにセットして、リードライバーにかざした。
「ぐっ!」
そのとき、ビースブレスとリードライバーから電気のようなショックが起こって、シゲルがうめく。彼は衝撃に襲われて倒れる。
「シゲル!」
痛みを感じて顔を歪めているシゲルを、ソウマが支える。
「どうしたんだ、シゲル!?」
「わ、分からない・・変身どころか、とんでもないショックを受ける・・!」
驚きの声を上げるソウマに、シゲルが声を振り絞って言いかける。
「コイツもマキシマムと同じで、使うには何か条件があるっていうのか?しかもコイツは、マキシマムよりも手ごわそうだな・・」
ノゾムがエックスカードを見つめて、肩を落とす。
「だけどきっと、とんでもない力を持っているかもしれない・・マキシマム以上の力を・・」
「それは、オレもそう思うけど、どうやればうまくいくのやら・・」
エックスカードを使うのは簡単でないことを痛感するノゾムとソウマ。
「どっちにしても、オレはアイツをブッ倒す・・アイツは昔から何も変わっていない・・自分が正しいと思い上がっている敵のままだ・・・!」
ノゾムがリョウガへの憎悪をたぎらせて、両手を握りしめる。
「アイツは親じゃない・・絶対に倒さなくちゃならないんだ・・・!」
「ノゾム・・もう迷いも後悔もないってことでいいんだな・・?」
自分の怒りを貫こうとするノゾムに、シゲルが問いかける。それでもノゾムの考えは変わらない。
「ノゾム、このカードはお前に預ける。お前なら、どうにかして使えそうな気がするから・・」
シゲルがエックスカードをノゾムに渡した。
「分かった・・使わなくちゃならないときになったら、無理やりにでも・・!」
受け取ったエックスカードを見つめて、ノゾムが目つきを鋭くする。
「2人とも体力は戻ったか?・・って、今のオレに聞かれてもなぁ・・」
問いかけて苦笑いを見せるシゲルに、ソウマは呆れた素振りを見せて笑みをこぼした。
「体のほうはもういい・・アイツとのケリを、今こそつける・・・!」
ノゾムは答えて、リョウガのいる会社へ再び向かった。
「今度は3人一緒での乗り込みだ。派手に行くとするか。」
「そうだな。」
シゲルがソウマと声をかけ合ってから、イグアナカードをビースブレスにセットした。
“イグアナ。”
彼はビースブレスをリードライバーにかざした。
“スタートアップ・イグアナ。”
イグアカートが駆けつけて、シゲルとソウマが乗った。
「ノゾム、乗れ!アイツらのとこへ突っ込むぜ!」
ソウマが呼びかけて、ノゾムもイグアカートに乗った。
“新作のアニマルカードを紛失した?”
連絡を取っていたリョウガ。彼の連絡先はエックスコーポレーション、ジンキだった。
「申し訳ありません。マックスと交戦している間に、他の侵入者が持ち出したようです。」
リョウガがジンキに謝罪して、状況を説明する。
“すぐに取り戻せ。3人のビーストライダーのベルトとカードとともに。”
「分かりました。直ちに行動します。」
ジンキとの連絡を終えて、リョウガが整列している黒ずくめの男たちに振り返る。
「エックスカードは我々の最高機密に属する。確実に、そして秘密裏に任務を遂行しろ。」
「了解。」
リョウガの指示を受けて、男たちが答えて社長室を出た。
(変身したときは私がヤツらを叩く。従わなければ葬るまでだ。)
続いて外に出たリョウガには、息子であるノゾムを手にかけることにもためらいはなかった。
会社の前に出てきたところで、男たちは近づいてくるエンジン音を耳にして警戒する。彼らの前にノゾム、ソウマ、シゲルを乗せたイグアカートが走ってきた。
“マックス!”
ノゾムがビースドライバーにマックスカードをセットした。
「おい、ノゾム、1人で先に突っ走る気か!?」
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ソウマの声を聞くことなく、ノゾムはマックスに変身して、イグアカートから飛び出して男たちを蹴散らした。
「ノゾム、1人で突っ走って・・」
“フォックス!”
ノゾムの独断専行に呆れながら、ソウマもビースドライバーにフォックスカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
ソウマもフォックスに変身して、続いてイグアカートから降りた。
「2人とも突っ走るのが好きだな。オレもそうなんだけどな。」
“オックス。”
ノゾムとソウマの行動に呆れながら、シゲルがビースブレスにオックスカードをセットして、リードライバーにかざした。
「変身!」
“スタートアップ・オックス。”
シゲルもオックスに変身して、イグアカートを加速させる。銃を発砲する男たちを退けて、イグアカートが会社の正面入り口に突っ込んだ。
「2人は先に奥へ行ったか。オレも追いかけないとな・・」
シゲルは呟いてから、イグアカートから降りる。
「お前は外で待ってろ。誰か攻撃してきても大きなケガは追わせるなよ。」
シゲルが呼びかけて、イグアカートが声を上げる。素直に聞いたと思って、シゲルはノゾムたちを追いかけた。
会社に乗り込んだノゾムとソウマ。階段へ向かおうとした2人の前に、リョウガが現れた。
「また来たか。次こそはベルトとカードを返してもらう。」
「ここで終わらせる・・思い出したくもない過去を・・!」
無表情のまま言いかけるリョウガに、ノゾムが敵意を向ける。
「あくまで私に逆らうというのか。実に滑稽だ。」
リョウガがホースビースターへの変身を果たす。立ちはだかる彼にノゾムとソウマが構えを取る。
「今度は尻尾巻いて逃げるつもりはないぞ・・!」
「お前たちは私から逃げられない。確実にお前たちを倒す。」
ソウマが言いかけて、リョウガが彼らに向かっていく。
「ぐっ!」
高い瞬発力を発揮するリョウガの突撃を受けて、ノゾムとソウマが突き飛ばされる。2人が壁を破って外へ飛び出した。
「やっぱりすごい速さだ・・だけど、スピード勝負で負けるオレじゃない!」
“ジャッカル!”
ソウマが言い放って、ビースドライバーにあるフォックスカードをジャッカルカードと入れ替えた。
“チャージ・ジャッカール!ジャックスピード・ジャックソウル・ジャックジャックジャッカル!”
彼はジャッカルフォルムとなって、さらにスピードを上げた。
「オレの強さは疾風迅雷!」
続いて窓から飛び出してきたリョウガに、ソウマが向かっていく。ソウマが高速でパンチを繰り出していく。
だがリョウガにパンチを全て高速でかわされてしまう。
「ジ、ジャッカルよりも速いだと!?」
驚きを覚えるソウマに、リョウガが右手を伸ばす。
「ぐおっ!」
フォックスの仮面を押さえつけられて、ソウマが地面に落とされる。
「このヤロー!」
ノゾムがいら立ちを浮かべて、リョウガに飛びかかる。だが素早く飛び込んできたリョウガの高速の突撃をぶつけられて、ノゾムが翻弄される。
「くそっ・・いつまでもいい気になるなよ、ビースター!」
怒りの声を上げるソウマが立ち上がって、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“ジャッカルチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ソウマは加速してリョウガの周りを駆け回る。彼は回転からリョウガに向かってキックを繰り出す。
だがリョウガはソウマのキックの連続を、全て手で防いでかいくぐっていた。そしてソウマの足をつかんで、リョウガが放り投げる。
「うあっ!」
ソウマが壁に叩きつけられてうめく。
「ソウマ!大丈夫か、ソウマ!?」
外へ出てきたシゲルがソウマに呼びかける。
「3人目のビーストライダーか。お前のベルトとカードももらうぞ。」
リョウガがシゲルに振り向いて、口調を変えずに言いかける。
「お前の思い通りには絶対にさせない!」
“マキシマム!”
ノゾムが叫んで、ビースドライバーにマキシマムカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”
彼はマキシマムフォルムに変身して、リョウガに向かっていく。
「ムダだということが理解できないとは・・」
リョウガがノゾムの繰り出したパンチとキックをかいくぐって、速さを伴ったパンチをノゾムに当てる。
「ノゾム!」
シゲルが叫んで、リョウガに向かっていく。彼が繰り出すパンチを、リョウガは難なくかわす。
「お前も私には敵わない。速さも、力も。」
リョウガがシゲルの右腕をつかんで上に放り投げる。落下してきたシゲルを、リョウガが右足を突き出して蹴り飛ばす。
「くっ・・!」
シゲルはうめきながら立ち上がって、ノゾムと合流する。
「並みのビースターじゃないな、お前の親父さん・・!」
「アイツはオレの父じゃない・・今も、昔から・・!」
皮肉を口にするシゲルに、ノゾムがリョウガへの憎悪をふくらませていく。
「ここは同時攻撃といきますか・・!」
「そうしないとアイツを倒せそうにないのか・・・!」
シゲルの提案に、ノゾムが仕方なく聞き入れる。
“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”
“オックス・ロードスマッシュ。”
ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを2回押して、シゲルがリードライバーの中心部を回転させる。ノゾムがジャンプして両足のキックを、シゲルがエネルギーを集めた右のパンチを繰り出す。
リョウガが全身に力を込めて、右のパンチをノゾムのキックに、左のパンチをシゲルのパンチにぶつける。
「ぐっ!」
「ぐあっ!」
ノゾムとシゲルが突き飛ばされて、地面や壁に叩きつけられる。
「ノゾム!シゲル!」
ソウマが叫びながら立ち上がる。3人のビーストライダーが力を合わせても、リョウガには太刀打ちできない。
「ベルトとカードを全て渡せ。でなければお前たちの命はない。」
リョウガがノゾムたちに忠告を送る。しかしノゾムたちは聞き入れようとしない。
「お前の思い通りになるくらいなら・・コイツを使って、そのしっぺ返しでくたばったほうがマシだ!」
ノゾムが言い放って、エックスカードを取り出した。
「エックスカード・・お前たちが持っていたか。それも渡してもらおう。」
リョウガがエックスカードを奪おうと、ノゾムへ近づいていく。
「何度も言わせるな!オレはお前の言いなりにはならない!」
“エックス!”
ノゾムが怒りを叫んで、エックスカードをビースドライバーにセットして、左上のボタンをセットした。するとビースドライバーから電気ショックが起こる。
「ぐあっ!・・コイツ!いうことを聞け!」
ノゾムが激痛を感じながら、エックスカードに向かって怒鳴る。
「ムダだ。お前ではそのカードを使うことはできない。」
「うるさい!・・オレのことを、勝手に決めるな!」
リョウガが言いかけるが、ノゾムが声と力を振り絞って激痛に耐える。
「オレは身勝手を許さない・・身勝手にいいように振り回されたら、オレはオレでなくなる!」
理不尽への怒りをふくらませていくノゾム。
「オレは身勝手な連中を叩き潰す!それを邪魔するものにも、オレは容赦しない!お前もだ!」
ノゾムが握りしめた右手を、ビースドライバーに叩きつけた。一瞬生じていた電撃が強まったが、電撃は治まった。
“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”
ノゾムがまとっているマックスのスーツに変化が起こる。白くなったスーツの真ん中に縦のラインが入り、マスクも「X」の形のラインが入っていた。
ノゾムは新たなる姿「エックスフォルム」となった。
「使えた・・あのカードを・・!」
「しかもあれって・・昔の機械の直し方だよな・・・!?」
シゲルが驚いてソウマが呆れる。
「まさか、エックスカードを使うとは・・!」
エックスカードを使われたことに、リョウガは動揺を覚える。
「オレの怒りは限界突破・・オレはお前をブッ倒さないと、我慢がならない・・!」
ノゾムが声を振り絞って、リョウガに向かって歩き出す。
「たとえエックスになれたとしても、使いこなせるとは限らない。いずれにしろ、お前たちは私に従う以外の選択肢は・・」
リョウガが言いかけていたところで、ノゾムが飛び込んで彼の体にパンチを繰り出した。
「うぐっ!」
攻撃された衝撃と痛みを感じて、リョウガが後ずさりする。
「こ・・これほどの力だと・・!?」
エックスカードの力が予想以上だったことに、リョウガは驚きを隠せなくなる。
「は、速い・・オレよりも速かったぞ、確かに・・・!」
「あれが、エックスの力なのか・・・!」
ソウマとシゲルもエックスフォルムの力に驚いていた。マキシマムフォルムのパワーやジャッカルフォルムのスピードを超えていたリョウガをも上回る強さを、エックスフォルムは発揮していた。
「しかし何があろうと、私はお前たちを掌握していることに変わりはない。これからもそれは変わらない。」
リョウガが態度を変えることなく、ベルトとカードを奪い取ろうと考える。
「そうやって、自分が正しいと思い上がって、自分の思い通りにならないものは何もないと言い張る・・そんなヤツを、オレはのさばらせるつもりはない!」
ノゾムが怒りをあらわにして、リョウガに向かってゆっくりと歩いていく。
「思い上がりではない。それが真実だからだ。」
「自分だけの考えで真実を変えるな!」
リョウガの口にする言葉に反発するノゾム。
ノゾムが高速で飛び込んで、リョウガに連続でパンチを叩き込んでいく。リョウガもスピードを上げてかいくぐろうとするが、ノゾムのスピードについていけない。
「これがエックスの力・・私をも上回る力が出せるというのか・・・!」
エックスフォルムの力とそれを引き出しているノゾムに、リョウガは脅威を感じて冷静さを揺さぶられていた。
「それでも私は倒れるわけにはいかない・・私がいなければ、国内が混乱に陥ることになる・・・!」
負けられないと自分に言い聞かせて、リョウガが感情をあらわにする。
「私がいなければ、全ては!」
「お前がいるから、オレもみんなもおかしくなるんだよ!」
叫ぶリョウガにノゾムが怒鳴る。突っ込んできたリョウガの体に、ノゾムが力を込めたパンチを叩き込んだ。
地上に落下したリョウガの前に、ノゾムが着地した。
「そういえばコレ・・シゲルの持っていたヤツに似ているな・・」
ノゾムが両腕に着いていた腕輪に気付いた。両方ともカードの差し込み口があった。
「ここまでやったんだ・・やってみないわけにはいかない・・・!」
ノゾムが思い立って、マックスカードを右の腕輪にセットした。
“エックスマーックス!ジェネラリーアクション!”
腕輪「エックスブレス」から音声が発する。マックスの右半分が白から赤に変わった。
「えっ!?また姿が変わった!?」
さらに変身したノゾムに、ソウマが驚く。
「何をしようとムダだ。お前たちは私に逆らうことは・・」
「逆らう以外の道は、オレにはない!」
リョウガの投げかける言葉をノゾムがはねつける。
ノゾムがリョウガにさらにパンチとキックを繰り出す。彼の攻撃はパワーもスピードも先ほどより上がっていた。
「あれが、今のノゾムの力ってことか・・!」
シゲルがノゾムの戦いを見て、戸惑いを感じていく。ノゾムの猛攻に押されて、リョウガが呼吸を乱す。
「今度はコイツを入れてみるか・・!」
ノゾムは今度はマキシマムカードを取り出して、左腕にあるエックスブレスにセットした。
“エックスマキシマーム!アンリミテッドパワー!”
マックスのスーツの左側が赤に変わり、黒のラインが入った。ノゾムはマックスフォルムとマキシマムフォルム、2つの力を兼ね備えていた。
リョウガがスピードを上げて、ノゾムに突撃を仕掛けた。しかしノゾムは少し押されただけでダメージを受けていない。
ノゾムが握りしめた両手をリョウガに叩き込む。
「ぐっ!」
リョウガが大きく突き飛ばされて、強く壁に叩きつけられる。
「エックスカード・・他のアニマルカードの力を重ね掛けすることもできるとは・・・!」
エックスフォルムのさらなる能力に、リョウガは驚くばかりになっていた。
「オレは許しはしない・・お前のようなヤツを、絶対に!」
リョウガへの怒りを言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“エックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーだけでなく、両腕のエックスブレスからも光があふれ出す。3つの光はノゾムの両足の先へ移っていく。
ノゾムが大きくジャンプして、リョウガに向かって足を振りかざす。リョウガが力を込めて拳を振りかざすが、ノゾムのキックの連続を体に叩き込まれる。
「がはあっ!」
リョウガが絶叫を上げて、体から火花を散らしながら大きく吹き飛ばされる。ノゾムが着地した先で、倒れたリョウガがゆっくりと起き上がる。
「お前たちは全てを敵に回すつもりか!?・・私や他の者を押しのけて、全ての支配者にでもなるつもりか・・!?」
「オレはそんなつもりはない・・支配者っていうヤツを、オレは憎む・・・!」
問い詰めてくるリョウガに対して、ノゾムは自分の意思を貫く。
「オレと全てが敵同士になるとしたら、それはオレが全ての敵になるんじゃない・・全てがオレを敵に回すことになるんだよ・・・!」
「愚かな・・それが、自分を中心としている者の考え方だ・・」
ノゾムの口にする言葉を、リョウガがあざ笑う。
「自分たちの思い上がりを棚に上げて、オレがお前たちと同じだと思うな!」
ノゾムが怒りをあらわにして、リョウガにつかみかかろうとした。だがその前にリョウガが仰向けに倒れた。
「私がいなくなれば・・もはや世界は、完全なる彼らの支配下に・・・」
声を振り絞った直後、リョウガの体が崩壊を起こした。エックスフォルムとなったノゾムの攻撃で、リョウガは滅びた。
「やった・・あのビースターを倒した・・・!」
ソウマが戸惑いを覚えて、シゲルがノゾムの強さに驚きを感じていた。
「ノゾム、これでよかったのか?・・あんな性格だけど、あの人はお前の・・・」
「コイツはオレの親父じゃない・・親父らしいところは、何もしてこなかった・・・!」
シゲルが聞くが、ノゾムの考えは変わらない。たとえ血がつながっていても、彼とリョウガとの間に親子の絆も意識もなかった。
“スリービースト。”
ノゾムがビースドライバーからエックスカードを取り出して、マックスへの変身を解いた。
そのとき、ノゾムが突然ふらついてその場に倒れた。
「ノゾム!?」
シゲルとソウマが駆け寄って、ノゾムを支える。
「ノゾム、しっかりしろ!」
「ノゾム!」
シゲルとソウマが呼びかけるが、ノゾムは意識を失って目を覚まさなかった。
ソウマたちに助けられて、ノゾムは別荘に運ばれた。しばらくしてノゾムは意識を取り戻して、ベッドから体を起こした。
「ノゾム!・・よかった・・目が覚めたんだね・・!」
ツバキがノゾムの目覚めを、涙ながらに喜ぶ。
「ここは・・オレの部屋か・・・」
「あぁ。あれからすぐに倒れたんだ。それでオレたちがここまで連れてきたんだ。」
周りを見回すノゾムに、シゲルが説明する。
「ちょっと疲れたんじゃないかな・・ずっと気を張り詰めすぎだったし・・」
タイチが苦笑いを見せて、ノゾムに励ましを投げかける。
「今はゆっくり休んで、ノゾム。もう気に病むことはないんだから・・」
ツバキが呼びかけて、ノゾムを寝かせようとする。
「今はおとなしくした方がいいみたいだな・・・」
ノゾムは彼女の言う通りにして、ベッドに横たわった。
(ノゾムの家族は私たちとは違う・・仲のいい私の家族とは・・・)
ノゾムの心境を感じて、ツバキは胸を締め付けられる思いを感じていた。
(それに、これからノゾムに、何か大変なことが起こる気がする・・・)
ツバキはさらなる不安を感じて、ノゾムにこれ以上何も起きてほしくないと思うようになっていた。
「ツバキちゃん、そろそろ仕事に戻ろう・・」
タイチが声をかけて、ツバキが頷く。2人はノゾムのことを気に掛けたまま、部屋を後にした。
実の父を手にかけたことを、ノゾムは後悔していなかった。