仮面ライダーマックス

第24話「スワンへの反逆!」

 

 

 シゲルに呼ばれてイグアナのカート、イグアカートが駆けつけた。シゲルはイグアカートの上に乗って、ハンドルを握ってアクセルを踏んだ。

「ノゾム、ソウマ、いったん出直すぞ!」

「冗談じゃない!ビースターを倒す手前まで来てるのに!」

 呼びかけるシゲルだが、ソウマは納得しない。ノゾムもユウキとの戦いをやめない。

「今そこでやっつけても、他のヤツにやられちまうぞ!」

 シゲルがさらに呼びかけて、イグアカートを走らせる。突っ込んでくるイグアカートを、シュンとララ、セイラが回避する。

「ぐっ!」

 ユウキがイグアカートの突進を受けて突き飛ばされる。

「さっさと乗れ、お前たち!」

「余計なことを・・!」

 呼びかけるシゲルにいら立ちながらも、ノゾムはソウマとともにイグアカートに乗った。シゲルがイグアカートを加速して、この場を離れた。

「ユウキ、私たちも1回離れよう・・!」

「くっ・・!」

 セイラが駆け寄ってきて、ユウキがノゾムを倒せなかったことへのいら立ちを噛みしめる。

「マックスたちが・・ヤツらを追わねば・・・!」

「シュン、待って・・!」

 シュンがノゾムたちを追って歩き出して、ララも彼に続いた。

 

 シュンたちの前から撤退したノゾムたち。しかしシゲルの持ちかけた撤退の案に、ノゾムもソウマも納得していなかった。

「あそこにいたライオンヤローとドラゴンヤローは倒さなくちゃならなかった・・それなのに・・!」

「悪かったって・・だけど、命あっての物種だっていうのも忘れないでくれよな・・」

 鋭く言いかけるノゾムに滅入って、シゲルがため息をつく。

“スリービースト。”

“シャットダウン。”

 ノゾムたちが変身を解いて、腑に落ちない表情を浮かべる。

「これからどうするつもりだ、ノゾム・・?」

 シゲルが聞いてきて、ノゾムが怒りを感じて目つきを鋭くする。彼はエリカのことを思い出していた。

「あの女のところへ行く・・アイツの思い上がりを叩き潰す・・!」

「やっぱりな・・止めても行くんだろうけど・・これだけは頭に入れていってもらうぞ・・」

 エリカへの憎悪を噛みしめるノゾムに、シゲルが呼びかける。

「スワンズ家は世界中のお偉いさんたちと関係を持っている。世界全部を動かせるくらいの実権を握っている。スワンズ家を敵に回すのは、全世界を敵に回すのと同じことだ。アイツら、お前やツバキちゃんたちに何をしてくるか分かったもんじゃないぞ・・」

「関係ない・・世界がオレの敵になるなら、世界全部を叩き潰すことも容赦しない・・!」

 忠告するシゲルだが、ノゾムは自分の考えを変えない。

「オレはもう行くぞ・・オレはアイツを、絶対に許さない・・・!」

“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”

 ノゾムはタイガーランナーに乗って、ソウマとシゲルの前から去っていった。

「世界全部を叩き潰すって・・間違いなく悪者のセリフだな・・」

 ノゾムの言動に滅入るシゲル。

「だけどそれがノゾムなんだよな・・そういう生き方をしないと、アイツは生きていることにならないとでも思ってるんじゃないかって・・」

「生き方は人それぞれって言ってもなぁ・・あれじゃスワンズ家の企みがなくても、アイツ、そのうちホントの犯罪者になっちまうな・・」

 ノゾムのことを気に掛けるソウマと、ノゾムの行く末を心配するシゲル。

「それでソウマはどうするんだ?ビースター退治か?」

「そうしたいところだけど、ノゾムを野放しにするのもどうかと思うからな・・」

 シゲルが問いかけて、ソウマがノゾムのことを考える。

「今はアイツの様子をうかがうことにするよ。アイツが余計な問題を増やさないように。」

「そうか。オレもそうしようと思っていたところだ。」

 ソウマの答えを聞いて、シゲルが笑みをこぼす。

「このまま乗っていけよ。スピードはオオカミには負けるけど、パワーはすごいぞ。」

「分かってる。さっき見てたから。」

 イグアカートを見上げるシゲルに、ソウマが頷く。2人はイグアカートに乗って、ノゾムを追っていった。

 

 ノゾムが脱走したという知らせは、エリカの耳にすぐに届いた。

「日本の警察はなんて情けないのかしら!犯罪者1人も満足に止められないなんて!」

 ノゾムを逃がした警察に、エリカは不満を感じていた。

「もしかしたら、また私に襲い掛かってくるかもしれないわ・・ああ、おぞましい!」

 ノゾムが来るのを恐れて、エリカが悲鳴を上げる。

「直ちに国中に指名手配にして!絶対にアイツを逃がさないで!」

 エリカが呼びかけて、黒ずくめの男たちが行動する。

「私たちの思い通りにならないことは何もない・・私たちに逆らうほど、愚かなことはないというのに!」

 自分たちこそ絶対。自分たちこそが世界を動かしている。エリカはそう思って疑わなかった。

 

 ノゾムの指名手配はすぐに街中に広まった。ユウキとセイラの耳にも届いた。

「ノゾムさんのことを、そこまで・・・」

「ノゾムくんを捕まえるように言ったのは、スワンズ家・・スワンズ家がいる限り、ノゾムくんは・・・!」

 ノゾムへの心配とスワンズ家への怒りを感じていくセイラとユウキ。

「もうスワンズ家を潰すしか、ノゾムくんを助けることができない・・!」

「行こう・・オレたちがやるしかない・・・!」

 ユウキとセイラが頷き合って、スワンズ家を目指して走り出した。

 

 スワンズ家の別荘は世界中に点在している。その中の1つにノゾムは向かっていた。

「あそこか・・オレをここまで追い込んで、正しいだなんて絶対に認めない・・・!」

 エリカ、そして理不尽への怒りをふくらませていくノゾム。

“マックス!”

 彼がビースドライバーにマックスカードをセットしてから、タイガーランナーを走らせた。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムがマックスに変身する。彼はタイガーランナーのスピードを上げて、スワン家の別荘へ向かう。

「な、何だ、アイツは!?

「こっちに向かってくるぞ!」

 別荘を警護していた黒ずくめの男たちが、ノゾムの接近に気付いた。

「止まれ!止まらなければ撃つぞ!」

 男たちが銃を構えて警告する。しかしノゾムはスピードを緩めない。

「撃て!」

 男たちが発砲するが、ノゾムもタイガーランナーも怯まない。ノゾムは男たちを退けて、別荘の塀を飛び越えて敷地内に入った。

 ノゾムはタイガーランナーから飛び降りて、別荘の建物の中へ窓を破って飛び込んだ。さらに黒ずくめの男たちが出てくるが、ノゾムは廊下を突っ切る。

 階段を上った先の廊下で、ノゾムは男の1人を捕まえた。

「は、放せ!放さんか!」

「あの小娘は、お前たちの主人はどこだ!?

 声を上げる男を壁に押し付けて、ノゾムが問い詰める。

「ふざけるな・・お嬢様を危険にさらすようなマネ、死んでもできるか・・!」

 男はエリカの居場所を話そうとしない。

「だったら死んでいろよ!」

 ノゾムはいら立ちをふくらませて、男を床に投げ飛ばす。男は息苦しさからせき込んでから、意識を失って動かなくなった。

「アイツはオレ自身で捜すしかないか・・だけどどうやって・・・!?

 ノゾムがエリカの居場所を追い求めて、思考を巡らせる。

 そのとき、ノゾムは人の声を耳にした。それは別荘の中や周辺にいる男たちの声ではなく、別荘から離れた場所にいる人の声だった。

「マックスの能力・・これをうまく使えば・・・!」

 思い立ったノゾムが意識を集中して耳を澄ます。彼は耳に入ってくる声や音の中から、エリカの声を聞き分ける。

「いた・・あそこか・・!」

 ノゾムがエリカの居場所をつかんで、再び走り出した。彼の前に、男たちに連れられて避難しようとしていたエリカを見つけた。

「お嬢様、お逃げください!」

 男たちが手にした銃を発砲して、ノゾムの行く手を阻む。しかしノゾムは弾丸をものともせずに突っ込んでいく。

「ぐあっ!」

「がはっ!」

 ノゾムの突進を受けて、男たちが壁に叩きつけられる。体を震わせるエリカの前に、ノゾムが立ちはだかった。

「こ、こんなことをして、ただで済むと思っているの!?どこまでもあなたを逃がさずに追い詰めていくわよ!」

 エリカが怒鳴りかかるも、緊迫のあまり後ずさりしていく。

「それはオレのセリフだ・・身勝手にオレを追い詰めたお前は、絶対に許さない・・!」

 ノゾムが怒りをふくらませて、エリカの肩をつかんで壁に押し付ける。

「は、放しなさい!私は世界有数の権力者、スワンズ家のエリカよ!」

「それがどうした!?・・今のお前はオレの敵・・それ以外の何者でもない・・・!」

 声を振り絞るエリカだが、ノゾムは鋭く言いかけるだけである。

「放しなさい!私の言うことが聞けないの!?

「聞けないな・・何もかも思い通りになるなんて、死んでも思うな・・!」

 怒鳴るエリカをノゾムがさらに強く壁に押し付ける。エリカが痛みを感じて顔を歪める。

「何をしているの!?早く私を助けなさい!私はエリカ・スワンズよ!」

「助けを求めれば誰か助けてくれるのか!?やめろと言われて敵がやめてくれるのか!?いつまでもいい気になってんじゃないぞ!」

「私はスワンズ家よ!私たちの思い通りにならないことは何もないのよ!」

「だったら自力で何とかしてみせろよ!オレのこの手を払って追い払ってみせろよ!」

「あなたが私に指図しないで!私が呼べば私を助ける人間が現れるのよ!」

「他人や金を頼りにするな!自分が動こうとしなきゃ何にもならないんだよ!」

「あたしはあなたたちとは違うのよ!あたしにはあなたたちにはない力が・・!」

「オレのこの手を押しのけることもできないで、何が力だ!お前の口にする思い上がった力なんか、紙くずよりも薄っぺらなんだよ!」

 助けられて、自分の思い通りになって当然と思っているエリカを、ノゾムがさらに壁に押し付ける。

「ぐあぁっ!や、やめて!放して!放しなさいったら!」

 激痛を覚えて悲鳴を上げるエリカ。彼女が怒鳴るが、ノゾムは手を放さず、男たちも気絶していて助けに来ない。

「オレは今のアンタのようなことをされたなら、まず自力で敵を引き離す・・ムチャクチャなことを押し付けられるのは我慢ならないからな・・・!」

 ノゾムは鋭く言うと、エリカを壁から引き離して、廊下に突き飛ばした。倒れたエリカが腕の痛みを感じて立ち上がることができないでいた。

「絶対に許さないわよ・・あなたのこと、世界中に知らせて指名手配させてやるわ・・!」

 エリカがノゾムに怒りの声を投げかける。

“スリービースト。”

 するとノゾムがマックスへの変身を解いて、エリカに正体を見せた。

「あ、あなたは・・!?

「そんなマネをしてみろ・・こんなものじゃ済まさないぞ・・・!」

 驚きをあらわにするエリカに、ノゾムが鋭く言いかける。

「何度も言わせないで・・私に何かあれば、世界中があなたの敵に・・・!」

「世界がオレの敵になるなら、世界も叩きつぶす・・!」

 脅しをかけるエリカに、ノゾムが鋭い視線を向ける。彼に睨まれて、エリカが言葉を詰まらせる。

「もう2度とオレたちにふざけたマネをするな・・したら絶対に反省しない敵と見なして、容赦しない・・・!」

 ノゾムはそう言うと、エリカの前から歩き出した。

「許しません・・許しませんわ・・あなたは万死に値します!」

 ノゾムの姿が見えなくなったところで、エリカが彼への怒りを口にする。

「みんな、すぐに出てきなさい!神奈ノゾムを指名手配にするのよ!」

 エリカが呼びかけるが、誰からも返事がない。

「みんな何をしているのよ!クビにするわよ!代わりはいくらでもいるんだから!」

 エリカがいら立ちを抱えたまま、立ち上がって廊下を歩き出した。

 

 エリカの別荘を目指すソウマとシゲル。2人は別荘から銃声や轟音がするのを耳にした。

「派手にやっているな、ノゾムのヤツ・・」

「それじゃ、オレたちもコソコソやる必要はなさそうだな。」

 ソウマがため息をついて、シゲルが苦笑する。イグアカートがスピードを緩めることなく、別荘の敷地に飛び込んだ。

「おーい!どこにいるんだー!?聞こえてたら姿を見せろー!」

 シゲルがノゾムに向かって呼びかける。

「フォックス!オックス!」

 しかし2人の前に現れたのは、ビースターとなったシュンとララだった。

「おいおい・・違うのが出てきちゃったじゃないか・・!」

「いいじゃんか。お目当てのビースターなんだから・・」

 不満を口にするソウマに、シゲルがまた苦笑いを浮かべた。2人がイグアカートから降りて、シュンたちの前に来た。

「今度こそベルトをいただくぞ・・それは元々、我々の物なのだから・・!」

「お前たちの物じゃないだろう!ベルトもカードも、元々は中野さんたちが作ったものだ!」

 手招きをするシュンにソウマが言い返す。

「そういうことだ。諦めて帰るんだな。それとも、オレたちにやっつけられたいか・・!?

「私たちはやられない・・やられるのはあなたたちのほうよ!」

 目つきを鋭くするシゲルに、ララがいら立ちを見せる。ソウマとシゲルがフォックスカード、オックスカードを手にした。

“フォックス!”

“オックス。”

 2人がそれぞれフォックスカード、オックスカードをビースドライバー、ビースブレスにセットした。

「変身!」

 ソウマがビースドライバーの左上のボタンを押して、シゲルがビースブレスをリードライバーにかざした。

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

“スタートアップ・オックス。”

 2人がフォックス、オックスに変身して、ララを迎え撃つ。

「オレの強さは疾風迅雷!」

 ソウマがララと同時に足を振りかざして、キックをぶつけ合う。

「オレの力は天下無敵!」

 シゲルも言い放って突っ込んで、ララがとっさに後ろに下がる。

「お前たちを野放しにすれば、私に未来はない・・この任務、必ず果たす!」

 退路のない現状を痛感して、シュンがソウマたちに向かっていった。

 

 騒然となっている別荘に、ユウキとセイラもたどり着いた。

「これって・・ここにビースターがいるんじゃ・・・!?

「早くノゾムくんを見つけて、ここから離れないと・・!」

 セイラが不安を浮かべて、ユウキがノゾムを捜して周囲を見回す。

「二手に分かれて捜そう・・ここから外のあの森のそばで合流しよう・・!」

 ユウキが呼びかけてセイラが頷く。2人は別れて別々に別荘の中に入った。

(ノゾムさん・・!)

 廊下を歩くノゾムを見つけて、セイラが駆けつける。

「アンタ・・・!」

「ノゾムさん、無事だったんですね・・よかった・・・!」

 足を止めたノゾムに、セイラが安心を見せる。

「ここは危険だから、早く離れたほうが・・」

 セイラがノゾムに逃げるように促す。そのとき、ノゾムがソウマたちを目撃した。

「そうしたいところだけど、まだやらなくちゃならないことがある・・・」

 ノゾムはそう言うと、セイラの前から走り去って外へ出た。

「ノゾムさん・・・」

 マックスとして戦おうとするノゾムに、セイラは複雑な気分を感じていた。

 

 シュン、ララと激しい攻防を繰り広げるソウマとシゲル。ノゾムが駆けつけてソウマたちと合流した。

「ここでの用事は済んだのか!?

「あと1つ・・ここだけだ・・!」

 ソウマが問いかけて、ノゾムが低い声で答える。

「それならさっさと終わらせて、とっとと帰ろうぜ。みんな心配してるはずだからな。」

 シゲルが呼びかけて、ノゾムが頷く。

「いい加減お前たちをブッ倒さないとな・・そうしないと安心できなくなるからな・・!」

「マックス・・お前のベルトもいただくぞ・・!」

 互いに鋭い視線を向け合うノゾムとシュン。

“マキシマム!”

 ノゾムがマキシマムカードをビースドライバーにセットした。

「変身!」

“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックス・マキシマムフォルムに変身した。

「オレの怒りは限界突破!これで終わりにしてやる!」

 ノゾムが駆け出して、シュンとの真っ向勝負を仕掛ける。スピードを上げて爪を振りかざすシュンだが、ノゾムは防御と回避でかいくぐる。

 ノゾムが反撃を仕掛けて、シュンの体にパンチを叩き込んでいく。

「シュン!シュンはやらせない!」

 ララがシュンを加勢しようとするが、ソウマとシゲルに阻まれる。

「お前の相手はオレたちだ!」

「邪魔をするな!」

 言い放つソウマにララが怒りをふくらませる。前進しようとする彼女を、ソウマとシゲルが食い止める。

 シュンがスピードを上げて、ノゾムの死角を狙う。しかしノゾムは気付いて、シュンの攻撃にすぐに反応する。

「もう終わりにするぞ・・お前の顔を見るのもウンザリだ、ライオンヤロー!」

“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ノゾムが怒号を放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。彼が大きくジャンプして、エネルギーを集めた両足を突き出す。

「オレは負けん!負けるわけにはいかないのだ!」

 シュンが両手に力を込めて前に出す。彼のパンチがノゾムのキックとぶつかり合う。

「ぐあぁっ!」

 パンチが競り負けて、シュンがノゾムのキックを体に受けて突き飛ばされる。

「シュン!」

 ララが悲鳴を上げて、ソウマとシゲルをはねのけて、倒れたシュンに駆け寄る。

「シュン、大丈夫!?シュン!」

 ララが呼びかけるが、シュンは苦痛でうめくばかりである。

「絶対に・・絶対に許さないよ!」

 ノゾムたちに怒りを向けてから、ララはシュンを抱えて逃走した。

「くそっ!また逃げられた・・!」

 シュンたちに逃げられて、ソウマが毒づく。

「だけど決定打を与えた感じはした・・生きていたとしても、しばらくは出てこれそうもないはずだ・・・」

 ノゾムが落ち着きを取り戻して呟く。ソウマが肩を落として、シゲルが笑みをこぼす。

「用事が済んだなら長居は無用だ。とっとと離れるぞ。」

 シゲルが呼びかけて、ノゾムとソウマが頷く。駆けつけたイグアカートに乗って、3人は屋敷を後にした。

 

 混迷する屋敷から外へ出ようとしたエリカ。彼女がどれだけ呼びかけても、黒ずくめの男たちは現れない。

「こうなったら、他の場所から呼び寄せるしかないわね・・ここにいるみんなは全員クビにしてやるんだから・・・!」

 いら立ちを浮かべたまま、エリカは庭へ出た。そのとき、彼女はドラゴンビースターになっているユウキを目の当たりにした。

「か、怪物!?・・どうしてこんなところに怪物が・・・!?

 エリカが恐怖を覚えて後ずさりする。

「何をしているの!?早く目を覚ましなさい!私が殺されてもいいというの!?

 エリカが呼びかけるが、それでも男たちは来ない。

「やめなさい!私に何かあれば、世界が黙っていないわよ!」

 エリカがユウキに視線を戻して、鋭く睨みつける。

「あの男は、お前が逮捕させた男はどこだ・・!?

 ユウキがエリカにノゾムのことを問い詰める。

「聞こえなかったの!?私にそんな口を利いてもいいと思ってるの!?

 エリカが声を張り上げて、ユウキから後ずさりしていく。

「私はスワンズ家の一員!私の思い通りにならないことはないのよ!」

「そうやって・・他の人を傷つけても、平気な顔をしているのか・・・!?

 高らかに言い放つエリカに、ユウキが怒りを覚える。

「そんな人間がいるから、世の中はおかしいままなんだ・・お前のようなヤツを、オレは野放しにはしない!」

 ユウキが怒号を放って、駆け込んでエリカの首をつかんだ。

「ぐっ!・・は、放しなさい・・あなたも、世界を敵に回すつもり・・!?

 うめくエリカが脅しをかけるが、ユウキの怒りを逆撫でするだけだった。

「世界がお前の味方になるなら、世界はオレの敵になるんだ・・!」

「あなたは・・!」

「もう聞きたくはない・・お前の言葉も、お前の声も・・・!」

 声を振り絞るエリカの首を、ユウキがへし折った。腕がだらりと下がって、エリカが脱力して動かなくなった。

 ユウキが手を放すと、エリカは目を見開いたまま仰向けに倒れた。

「お前のようなヤツは、どこにもいてはいけないんだ・・・!」

 身勝手な人間への憎悪を口にして、ユウキはきびすを返して歩き出した。彼の手にかかり、エリカは息の根を止められた。

 

 ノゾムのことを心配するツバキたち。ワタルも心配していたが、ゴロウに促されて就寝することになった。

「ツバキちゃんも先に寝て。後は僕が待っているから・・」

「ううん、待ってる・・ノゾムのこと、どうしてもほっとけないから・・」

 心配の声をかけるタイチだが、ツバキはノゾムを待ち続けることにした。

「おっ。誰かこっちに来るよ・・!」

「えっ!?

 そのとき、ゴロウが声を上げて、彼が指さしたほうにツバキとタイチが目を向ける。ノゾム、ソウマ、シゲルが戻ってきた。

「ノゾム!」

 ツバキが飛び出してノゾムに駆け寄る。

「ノゾム、心配したんだから・・!」

「オレがアイツの思い通りになるわけがないだろうが・・」

 涙ながらに呼びかけるツバキに、ノゾムが突っ張った素振りを見せる。

「やれやれ。こんなときでも相変わらずなんだから、ノゾムは・・」

 シゲルがノゾムの態度を見て、苦笑いを浮かべる。

「ノゾムくん、もう休もう。いろいろあってくたくたでしょう・・」

「何かあればすぐに知らせるから・・」

 ゴロウとタイチがノゾムに呼びかけて、別荘へ招く。

「そうだな・・いい加減疲れたし・・・」

 ノゾムが頷いて、自分の部屋へと戻っていった。

「もうやってこないよね・・スワンズ家・・・?」

「分かんない・・ま、ノゾムならどこまでも逆らい続けるだろうな・・」

 不安を感じていくツバキに、ソウマが気さくに答える。ツバキが作り笑顔を見せて、小さく頷いた。

 

 ララに助けられたシュンだが、自分で歩くこともままならなくなっていた。

「シュン、しっかりして!もう少しでエックスビースだから!」

 ララが必死にシュンに呼びかける。

「私は・・私はまだ、倒れるわけには・・・」

 シュンも生き延びようと必死になっている。彼はララとともにエックスビースを目指す。

 そのとき、シュンが力尽きて前のめりに倒れた。

「シュン!?・・シュン!」

 ララが叫ぶ前で、シュンの体が崩壊を引き起こした。息の根が止まった彼が消滅を起こした。

「シュン!」

 シュンの消滅を目の当たりにして、ララが悲痛の叫びを上げる。

「シュンが・・シュンが!・・・マックス、絶対に許さない!お前だけは、私が必ず倒す!」

 ノゾムへの怒りをあらわにして、ララは復讐心をたぎらせていた。

 

 翌日、エリカ死亡のニュースが報道された。ノゾムの指名手配はされていなかった。

 スワンズ家の騒動は、既にエックスビースの根回しによって隠ぺいされていた。

 

 

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