仮面ライダーマックス
第23話「デンドロビウムのお姫様!」
街へ買い物に来ていたツバキとタイチ。次のお店へ向かう中、2人はシゲルが来たことを思い出した。
「まさか、3人目のビーストライダーが現れたなんてね・・」
「しかもソウマくんの知り合いで、陰ながらサポートもしてくれていたみたい・・」
タイチとツバキがシゲルについて会話をしていく。
「こうして3人のライダーがそろったんだ。どんなビースターが出てきたって、負けることはないよ。」
「でもビースターもエックスビースもまだまだ謎だらけ。油断は禁物だよ。」
興奮を見せるタイチに、ツバキが苦笑いを見せる。
「あ、そうだ。福引の券があったんだった。」
タイチが思い出して、ポケットから福引券を1枚取り出した。
「こういうのはなかなか当たらないものだけど、やらなきゃまず当たんないよね。」
ツバキが言いかけて、タイチと目を合わせて頷き合う。2人は福引をしている店へ行って、その前でできている列に並んだ。
「ちょっと並んでいるね。人気あるみたい・・」
ツバキが列を見て呟く。福引で1等といった当たりはまだ出ていない。
そしてもう少しでタイチたちの番が回ってこようとしたときだった。
「面白そうね。私にやらせなさい。」
そこへ1人の少女が現れて、福引の係員に呼びかけてきた。彼女の後ろには数人の黒ずくめの男たちがいた。
「申し訳ありません。券がないと福引をすることはできません・・」
「私がやると言っているのだからやるの。いいから早くやらせるのよ。」
注意を告げる係員に、少女が鋭い視線を向ける。黒ずくめの男たちが係員たちの前に立ちはだかる。
「こ、この人は!?・・世界有数の資産家、スワンズ家のご息女、エリカ・スワンズ!?」
周りにいた人の1人が少女、エリカを見て驚きの声を上げる。
「誰が呼び捨てにしていいと言ったの!?“様”を付けなさい、“様”を!」
エリカが振り向いて、その人に鋭い視線を向ける。
(こ、これはとんでもないことになりそう・・・!)
(もしもあんなのをノゾムが目撃したら・・・!)
ツバキとタイチがエリカとノゾムの対面を予感して、一抹の不安を覚えた。
ソウマにビースドライバーを奪い返された。この失態を犯したキリオに、ジンキは鋭い視線を向けていた。
「大口を叩いておいての失敗だ。この責任、取らないわけにはいかないぞ、キリオ・・」
「分かってる!ベルトは3つともオレが取り返してやる!」
ジンキから言われて、キリオがいら立ちをあらわにして言い返す。
「オレだってこのまま終わらせるつもりはない!この屈辱、あの3人にぶつけてやる!」
声と体を震わせて、キリオは社長室を飛び出した。
「やはり鮫山にはエックスビースの任務をこなすのには問題があります。ヤツはあくまで自分を優先させて行動しています・・」
シュンがジンキに目を向けて苦言を呈する。
「それだけ人材不足になりつつあるのだ。上級の人材がな・・」
ジンキが言いかけてため息をつく。
「お前にも期待をかけているぞ、シュン。」
「分かりました・・」
ジンキに言われてシュンが頭を下げる。シュンも社長室を出て廊下を歩く。
(私がやるしかない・・私しか、社長の命令を実行することができない・・・!)
自分に言い聞かせるように心の中で呟いて、シュンはビースドライバー、リードライバーの奪取のために動き出した。
いつものように動物公園での仕事をこなしているノゾム。その様子をシゲルがソウマと一緒に見て、感心していた。
「立派なもんだね、ノゾムは。動物の世話なんてできなくて・・全然なついてもらえなくてな・・」
シゲルが腕組みをして大きく頷く。
「他人事みたいに言ってくれるな、シゲル。動物は人間と違って正直者だから、動物の世話をする方がいいって、ノゾムは思ってるんだよ・・」
ソウマが半ば呆れた様子でシゲルに言いかける。
「なるほどな。動物は、人間やビースターみたいに身勝手を働かすこともないからな・・」
「人間は身勝手じゃない!身勝手なのはビースターだ!」
頷くシゲルにソウマが不満の声を上げる。
「ノゾムにとっちゃ、人間の中にも身勝手なヤツがいると思ってる。だから動物の世話が好きだっていうのも分かるな・・」
「そこがオレの、ノゾムの気に入らないところだ・・」
ノゾムの考えを口にするシゲルに、ソウマが肩を落とした。
そのとき、ノゾムたちの耳に騒々しさが入ってきた。振り返った彼らの視線の先に、エリカたちがいた。
「何だ、あれは・・?」
「あれは、スワンズ家のエリカだぞ!世界で指折りの金持ちだ!」
疑問符を浮かべるノゾムにソウマが声を上げる。エリカと黒ずくめの男たちが、彼らに向かって歩いてきた。
「あなた、ここの人?ちょっとお願いしたいことがあるのだけど。」
エリカがノゾムに声をかけてきた。
「ここの動物たちはどれも上品で気に入ったわ。私に譲ってもらえるかしら?もちろん代金ははずませてもらうわ。」
「ここの動物は売り物じゃない。売ったり買ったりするものじゃないです・・」
エリカからの申し出に、ノゾムがため息まじりに言い返す。
「私はここの動物たちがほしいと言っているのよ!この私に逆らうこと、許されると思ってるの!?」
するとエリカが不満をあらわにして、ノゾムに詰め寄る。
「私の言うことを聞きなさい!その気になれば、無理やりにでも取り上げることができるけど、敬意を払って売買を申し付けているのよ!」
「そうやって、自分の思い通りにならないものはないと思い上がってるのかよ・・!?」
怒鳴るエリカの態度が、ノゾムの怒りを逆撫でする。
「思い上がり!?私は世界クラスの資産家、スワンズ家の1人よ!庶民は私たちの言うことを聞けば、幸せになれるのよ!」
「それが思い上がりなんだよ!」
態度を変えないエリカに、ノゾムが激高して飛びかかる。だが黒ずくめの男たちが伸ばした手に、ノゾムは地面に押さえつけられる。
「私に逆らうことは誰にも許されないのよ。お父様とお母様、おじい様とおばあ様以外はね。」
倒れたノゾムを見下して、エリカが笑みをこぼす。
「私に謝罪するなら許してあげるわ!ま、今の反抗的な態度で、買値は減額させてもらうけどね!」
「ふざけるな!オレはお前のようなヤツを、絶対に許さない!」
言い放つエリカに対して、ノゾムがさらに怒りをあらわにする。彼は起き上がろうとするが、黒ずくめの男たちに押さえつけられる。
それでもノゾムは強引に起き上がろうとする。男たちに押さえつけられている腕に激痛が走るが、ノゾムの高まる怒りが痛みを感じさせなくしていた。
「おいおい!これ以上ムリに動かそうとしたら、骨が折れるぞ!」
シゲルがノゾムの体の状態の危険を予感して叫ぶ。しかし彼の言葉もノゾムの耳には入っていない。
「往生際の悪いことね!何をしても私には逆らえないのに・・!」
エリカがノゾムを見下ろしてため息をつく。
「そうやって何もかも思い通りになるなどと、死んでも思うな!」
怒号を放つノゾムが強引に立ち上がろうとする。つかんでいる彼の腕の骨のきしみを感じ取って、男たちが一瞬躊躇した。
その瞬間、ノゾムが男たちの手を振り払って、エリカにつかみかかった。怒りに突き動かされたノゾムの手が、エリカの首をつかんで持ち上げた。
「は、放しなさいよ・・私に何かすれば、世界中があなたの敵に回ることになるのよ・・!」
「お前のような身勝手なヤツを、オレは許しはしない!お前に味方するようなら、そいつもオレは許さない!」
声を振り絞るエリカに、ノゾムが憎悪を向ける。
「オレが世界の敵になるんじゃない!世界がオレの敵に回ることになるんだよ!」
ノゾムが目を見開いて、エリカの首を締め上げる。
「おい、よせ、ノゾム!死んでしまうぞ!」
ソウマが呼び止めるが、ノゾムはエリカから手を放さない。
「やめろ、ノゾム!動物たちが怯えてるぞ!」
シゲルも呼びかけて、ここでノゾムは我に返って振り向いた。目を見開く彼に対して、近くにいたウサギや馬が怯えて身構えていた。
動物たちの動揺を目の当たりにして、ノゾムも動揺を覚えてエリカから手を放す。えりかが首に手を当てて、息苦しさからせき込む。
次の瞬間、黒ずくめの男の1人がノゾムの後頭部を殴りつけた。ノゾムが意識を失って、その場に倒れた。
「ノゾム!」
シゲルが叫んで、ソウマとともにノゾムに駆け寄ろうとした。だが黒ずくめの男たちが立ちはだかって、ノゾムは彼らに拘束された。
「大丈夫ですか、エリカお嬢様・・!?」
男の1人がエリカに駆け寄るが、彼女に顔を叩かれる。
「なぜ放したのよ!?そのせいで私は死にかけたのよ!」
「も、申し訳ありません!」
怒鳴りかかるエリカに男が頭を下げる。
「警察に連絡して!すぐにでも暴行と殺人行為で逮捕してもらって!」
エリカが涙ながらに呼びかけて、男が警察に通報した。ソウマとシゲルが男たちに行く手を阻まれたまま、気絶したノゾムは警察に連行されてしまった。
「えっ!?ノゾムが捕まった!?」
ソウマから話を聞いて、帰ってきたツバキとタイチが驚きを隠せなくなる。ゴロウもこの話を聞いて、動揺を感じていた。
「その後、エリカ・スワンズは出直すと言って帰っていったけど、また買い占めに来るんじゃないかと思う・・」
エリカの行動を推測して不安を感じるゴロウ。
「きっとスワンズ家が警察に手を回しているはず・・もうノゾムが釈放されることは・・」
「そんな!?」
タイチが口にした言葉に、ツバキが不安をふくらませる。やるせなさを胸に秘めたまま、ソウマが別荘を出ようとする。
「ソウマくん、どこへ行くの?」
ツバキが声をかけるが、ソウマは答えることなく外へ出た。
「ソウマ・・オレが見てくる。みんなは待っててくれ・・」
シゲルがツバキたちに呼びかけてから、ソウマを追いかけた。
外へ出たソウマとシゲル。別荘から離れたところで、2人は足を止めた。
「ノゾムを助けに行くつもりか?」
シゲルが問いかけて、ソウマが小さく頷いた。
「相手はビースターじゃなく人間だぞ。お前が敵だと思っているのはビースターのほうだろ?」
「だからこそだ。ノゾムはビースターを滅ぼすために必要な力を持ってる。そのノゾムがこんなことで戦えなくなるのは、オレは納得いかない・・」
問い詰めるシゲルに自分の考えを告げるソウマ。彼はノゾムを、ビースターと戦う仲間と認識していた。
「だったらオレも行く。お前だって、こんなことで戦えなくなったら納得いかないだろ?」
「それもそうだな・・すまないな、シゲル。いつもいつも・・」
自分も助けに向かうことを告げたシゲルに、ソウマが笑みをこぼす。
「そうと決まったらおしゃべりはここまでだ。ノゾムを助けに行こうか。」
ソウマが言いかけて、フォックスカードを手にした。シゲルもオックスカードを手にして、ソウマと見せ合う。
“フォックス!”
“オックス。”
2人がそれぞれフォックスカード、オックスカードをビースドライバー、ビースブレスにセットした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
“スタートアップ・オックス。”
ソウマがビースドライバーの左上のボタンを押して、シゲルがビースブレスをリードライバーの中心部の前にかざした。2人がフォックスとオックスに変身した。
「まずはオレが先に行く。オレのスピードの本領発揮だ。」
ソウマが言いかけて、続けてウルフカードを手にして、ビースドライバーのフォックスカードと入れ替えた。
“ウルフ!”
“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”
彼に呼ばれてウルフルスロットルが駆けつけた。
「オレは近くで待ってるからな。」
「あぁ!お先に!」
シゲルに答えてから、ソウマはウルフルスロットルを走らせて、警察署へ向かった。
ノゾムが逮捕されたことは、ユウキとセイラの耳にも届いていた。
「ノゾムさんが・・ノゾムさんは、自分から悪いことをする人じゃない・・・!」
「きっと相手が我慢ならない態度を取って、それでノゾムくんを怒らせて・・」
ノゾムの心境を察して、セイラとユウキが深刻さをふくらませていく。
「ツバキさんたちじゃノゾムくんを助け出すことができない・・警察に捕まって、逮捕されるだけ・・!」
「でも、私たちは人間じゃない・・ビースターになれば、ノゾムさんを助け出すことができる・・・!」
ユウキとセイラが決意を固めて、互いに目を合わせて頷き合う。2人はノゾムを助けるため、ビースターになって警察署に向かった。
警察に捕まって取調室に連れ込まれたノゾム。ノゾムは怒りをあらわにして、刑事に机に押し付けられた。
「おとなしくしろ!いつまでも暴れおって!」
「ふざけるな!悪いのはアイツのほうだろうが!勝手に動物を買い占めようとしたアイツのほうが!」
怒鳴る刑事にノゾムが怒鳴り返す。彼が強引に起き上がろうとするのを、刑事と警官が必死に押さえ込む。
「お前はエリカ・スワンズ氏に襲い掛かり、首を絞めて殺そうとした。暴行と殺人未遂の容疑がかかっている。」
「アイツは公園の動物を勝手に買い占めようとしたんだぞ!明らかに間違っていることをしているヤツを、警察は野放しにするのか!?」
「今はお前の容疑について追及する!お前のやったことは列記とした犯罪だ!」
「悪いのはアイツのほうだろうが!それなのにオレを悪者にして!」
エリカへの暴行を追及する刑事だが、ノゾムはエリカの横暴と彼女への怒りを訴える。
「アイツじゃなくオレを悪いと決めつけるなら、オレはアンタたちも許しはしない!」
「いい加減にしろ!お前がスワンズ氏に暴行を働いたことは明白!それを認めないつもりか!?」
怒鳴りかかるノゾムに刑事も怒りの声を上げる。ノゾムが強引に起き上がろうとして、痛みに軋む体を無理やり動かそうとする。
「コイツを眠らせろ!このままだと、コイツは自分の骨が折れるのも構わずに暴れ出すぞ!」
刑事が呼びかけて、警官の1人が麻酔の入った注射を取り出した。
そのとき、ソウマの持ったウルフルスロットルが取調室の壁を打ち破ってきた。
「おわっ!」
刑事と警官たちがウルフルスロットルの突進で押される。倒れたノゾムが顔を上げて、停車したウルフルスロットルに目を向ける。
「思った通り、ここでも暴れていたみたいだな・・!」
「ソウマ・・ここまで来たのか・・!?」
振り向いて声をかけるソウマに、ノゾムが声を上げる。
「話は後だ!すぐにここから出るぞ!」
ソウマはそう言って、ノゾムが使っているビースドライバーを渡した。ノゾムは逮捕されたとき、ビースドライバーを着けていなかった。
「かっこがつかないと思うけど、後ろに乗れ!マッハで脱出する!」
「そうするしかないな・・!」
ソウマの呼びかけを聞き入れて、ノゾムがウルフルスロットルに乗った。
“ホーク!”
続けてノゾムはビースドライバーにホークカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・ホーク!ソウルショック・ソウルハート・スカイハイホーク!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、マックス・ホークフォルムに変身した。
「またまた一気に飛ばすぞ!」
ソウマが加速したウルフルスロットルが警察署を飛び出した。
「待て!」
警官たちが呼びかけて、ソウマとノゾムに向かって発砲する。しかし超スピードのウルフルスロットルには当たらない。
「非常線を張れ!2人を逃がすな!」
刑事が警官たちに指示を出す。
「大変です!本署にか、怪物が!」
警官の1人が駆けつけて、刑事に報告をする。
「怪物!?こんなときにふざけたことを言うな!」
「本当です!怪物2人が現れて、交戦中ですが歯が立ちません!」
怒鳴る刑事に警官がさらに報告する。
「お前たちは神奈ノゾムを追え!他の者は襲撃者の対応をする!」
「はいっ!」
刑事が呼びかけて警官たちが答える。警官数人がパトカーや白バイに乗ってノゾムたちを追いかけて、残りの警官と刑事が警察署の防衛に向かった。
ドラゴンビースターとなったユウキとキャットビースターとなったセイラ。2人はノゾムを助けるために警察署に乗り込んだ。
ノゾムが既にソウマに助け出されていたことも知らずに。
「いない・・もしかして、外に・・!?」
セイラが耳を澄まして周囲の音を聞き分けて、ノゾムの居場所を探る。
「ノゾムさんの声が遠くからかすかだけど聞こえる・・ここからずいぶん離れているみたい・・・!」
「そこへ行ってみよう・・長居は避けたほうがいい・・・!」
セイラが言いかけて、ユウキが小さく頷く。2人がセイラが聞き取ったほうへと移動して、警察署を後にした。
ソウマに助けられて外へ脱したノゾム。ウルフルスロットルが止まった先で、シゲルが待っていた。
「2人とも無事に戻ってこれたな。」
「向こうがちょっと派手になってしまったけどな・・」
シゲルが声をかけて、ソウマが皮肉を込めて答える。
「それでこれからどうするんだ?このまま帰っても警察がマークしてるはずだ・・」
「関係ない・・アイツのことを調べずにオレを勝手に悪者扱いしてくるなら、警察もオレの敵だ・・!」
ソウマの問いかけを受けて、ノゾムが理不尽への怒りをあらわにする。
「これは、正義の味方の言うセリフじゃないな・・」
「というか、オレたちみんなそんなつもりで戦ってないだろ・・ただ、敵を許せないから戦っているわけで・・」
肩を落とすシゲルに、ソウマが半ば呆れた態度で言いかける。
「オレはあの小娘を許しちゃいかない・・アイツの思い上がりを叩き潰す・・!」
「オレだってムカつく性格をしてるけど、アイツは人間だぞ・・」
「関係ない!あんな考えを持っているヤツらが、何もかもおかしくさせてるんだ!」
ソウマが苦言を呈するが、ノゾムの怒りは治まらない。
「まさかここで3人とも集まっているとはな・・」
そこへ声がかかって、ノゾムたちが振り返る。彼らの前にシュンとララが現れた。
「エックスビース・・またベルトを奪いに来たってか。」
「お前たちにこれ以上、ベルトを使わせるわけにはいかない・・!」
気さくに振る舞うシゲルと、いら立ちを見せるシュン。
「今度こそ渡して・・ベルトを・・ベルトを!」
感情をあらわにしたララが、ローズビースターになった。
「覚悟するがいい、身の程知らずの人間・・!」
目つきを鋭くしたシュンも、ライオンビースターになった。
「いいぜ・・今回はスピード勝負だ!」
ノゾムが鋭く言いかけて、シュンを迎え撃つ。
「おいおい、スピードはオレの十八番だっての!」
ソウマも文句を言いながら、ノゾムに続く。
「シュン!」
ララがシュンを助けに行こうとするが、シゲルが立ちはだかる。
「君の相手はオレだぜ、お嬢ちゃん。」
「邪魔をしないで・・シュンを傷付けさせない!」
気さくな態度を見せるシゲルに、ララが怒りの声を上げる。彼女が足を振り上げるが、シゲルは両腕で防いで耐える。
ノゾムとソウマがスピードを上げて、シュンを攻め立てる。2人の動きに翻弄されて、シュンが焦りを感じていく。
「いくら2人がかりで来られているとはいえ、私が押されているだと!?しかもマックスは、マキシマムではないというのに!?」
追い詰められていることに納得がいかず、シュンがさらにいら立つ。
「オレは自分の思い通りにならないものはないと思い上がっているヤツらを、許すつもりはない・・!」
「ビースターを1人残らずぶっ潰す・・それだけだ!」
それぞれの戦う理由を言い放って、ノゾムとソウマがさらに攻め立てる。2人が同時に繰り出したパンチを体に受けて、シュンが突き飛ばされる。
「この勢いでアイツにとどめを刺す!」
ソウマが言い放って、ノゾムも頷いた。2人がビースドライバーに手を伸ばそうとした。
「マックス!」
そのとき、ユウキがセイラとともに駆けつけて、マックスになっているノゾムに向かって叫んできた。
「アイツ・・こんなときに・・!」
ノゾムがいら立ちを浮かべて、ユウキを迎え撃つ。飛び上がったノゾムに向かって、ユウキもジャンプする。
飛行するノゾムの足をつかんで、ユウキが引きずりおろす。
「何っ!?」
引っ張られたことに驚くノゾムが地面に叩きつけられる。彼はユウキの手を振り払って、立ち上がって身構える。
「お前がいると、心のあるビースターまで倒されることになる!お前はオレが必ず倒す!」
「お前もしつこいんだよ・・いい加減にブッ倒さないといけないみたいだな・・!」
互いに怒りを向け合うユウキとノゾム。2人が激しく攻撃をぶつけ合い、セイラが緊張を覚える。
「やめて、2人とも!私たちが争う必要なんてない!」
セイラが呼び止めるが、ノゾムもユウキも戦いをやめない。
「やめて!」
セイラが飛びかかって、ユウキに飛びついてノゾムから引き離す。
「放せ!マックスはオレたちの敵!倒さないとオレたちの身に危険が・・!」
「そんなことにはならない!あの人は心ある人の味方よ!」
怒鳴るユウキにセイラが呼びかける。
「アイツは味方じゃない!邪魔をしないでくれ!」
ユウキがさらに怒鳴って、セイラを振り払ってノゾムに飛びかかる。
「こりゃちょっとややこしくなってきたか・・!」
戦況をよくないと思ったシゲルが、1枚のアニマルカードを取り出した。
“イグアナ。”
アニマルカード「イグアナカード」」をビースブレスにセットして、シゲルがリードライバーにかざした。
“スタートアップ・イグアナ。”
リードライバーから音声が出る。すると1台の車が走り込んできた。イグアナを思わせる姿かたちをしたカートである。
イグアナのカート「イグアカート」がシゲルの前に現れた。