仮面ライダーマックス

第22話「オレの力は天下無敵!」

 

 

 ソウマからビースドライバーを奪って、フォックスに変身したキリオ。彼はスピードとエネルギーを込めたキックを、ノゾム目がけて繰り出した。

 ノゾムがパンチを繰り出して、キリオのキックとぶつかり合った。キリオがノゾムによって押し返された。

「ぐおっ!」

 キリオが地面に倒れてうめく。すぐに起き上がった彼だが、ノゾムに競り負けたことへの驚きを隠せなくなる。

「バカな!?オレの力が通じないだと!?

「マキシマムはマックスやフォックス以上のパワーがあるんだ。フォックスで勝てるわけがないだろうが・・」

 声を上げるキリオに、ノゾムがため息まじりに言いかける。

「それにお前はフォックスの力を出し切れていない・・ソウマのほうがまだまだ強いぞ・・」

「ノゾム・・・」

 ノゾムが続けて言った言葉に、ソウマが戸惑いを覚える。

「お前じゃフォックスの力は使いこなせない・・さっさとベルトをソウマに返せよ・・・!」

 ノゾムが手招きして、キリオにビースドライバーを返すことを要求する。

「フン!そんなことでベルトを返すものかよ!」

“スリービースト。”

 キリオがビースドライバーを外して、シャークビースターになった。彼がスピードを上げてノゾムに飛びかかる。

 キリオがスピードを上げて、ノゾムを攻め立てる。その動きはマキシマムフォルムとなっているノゾムでも、対応が難しいほどだった。

「コイツ、ビースターになっているときのほうが全然すごいじゃないか・・!」

 キリオのスピードに毒づくノゾム。彼がキリオが振りかざした爪が、マックスのスーツを切りつけて火花を散らす。

「さっきはカッコ悪い様を見せたが、もうそんなことにはならないぞ!」

 キリオが言い放ってノゾムを攻め立てる。

「マキシマムでも追いつけない・・1回出直すしかないか・・!」

 危機感を覚えるノゾムが、ビースドライバーにタイガーカードをセットした。

“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”

 タイガーランナーがノゾムたちのいる場所へ駆けつけた。

「ソウマ、そいつに乗れ!」

「バカを言うな・・ベルトを取り返すまで逃げられるか・・・!」

 ノゾムが呼びかけるが、ソウマは聞こうとしない。

「そんなにここで死にたいならここにいろ!オレだけでも出直すぞ!」

 ノゾムに怒鳴られて、ソウマがいら立ちを噛みしめる。ビースドライバーを取り戻したい気持ちでいっぱいだったが、彼はやむなくタイガーランナーに乗った。

 それを見送ったノゾムも、森の中に飛び込んだ。

「ここまで来て逃げる気かよ!」

 キリオが追いかけるが、木々でノゾムの姿を見失ってしまう。

「ちっ・・もうちょっとでやれそうだったのにな・・・!」

 ノゾムたちを逃がしたことにいら立つキリオ。彼がシャークビースターから人の姿に戻る。

「だが何とかできない相手じゃない。それなのに手こずっているようじゃ、浜松も大したことはないってことだな。」

 キリオが笑みを取り戻して、シュンをあざ笑う。

「さて、まずはコイツを社長に渡してこないとな。もう1つを手に入れるのはその後だ。」

 キリオがソウマのビースドライバーを見つめて喜ぶ。彼はエックスビースの施設へ向かった。

 

 タイガーランナーに運ばれて、キリオから離れたソウマ。ビースドライバーを取られたまま逃げてきたことに、ソウマの怒りは限界を超えていた。

 ノゾムもソウマの前まで戻ってきて、マックスへの変身を解いた。

「あのサメヤロー、今まで会ったビースターの中で1番力があるな・・マキシマム以上のスピードだ・・・!」

 ノゾムがキリオへのいら立ちを噛みしめる。

「なぜ、オレの邪魔をした・・・オレの全てを奪ったビースターを見つけられたのに・・・!」

 ソウマがノゾムを鋭く睨みつけてくる。

「あのサメヤローと何があった?・・ワタルみたいに、家族を殺されたとかなのか・・・?」

 ノゾムが改めてソウマに問いかける。口ごもるソウマだが、ノゾムに打ち明けることを決めた。

「オレには、親代わりになってくれた人がいたんだ・・ホントの両親を亡くしたオレを引き取ってくれた・・」

 ソウマが自分の過去を語り始める。

「その人の名は中野(なかの)シゲアキ。マックスやフォックスのベルトの開発チームの一員だった・・」

「ベルトの!?

 彼の話を聞いてノゾムが驚く。

「中野さんはツバキの父さんと大親友の関係だった・・おじさんはツバキと別れた後どうなったのかは分かんないけど、中野さんはオレの見ている前で・・・!」

 シゲアキが手にかけられた瞬間を思い出すソウマ。その犯人こそがキリオだった。

「中野さんとおじさんがツバキに渡したりうまく隠したりしたから、ベルトはそのときにビースターたちに見つからずに済んだ・・だけど、中野さんはあのビースターに・・!」

「それで、ツバキに渡されたベルトは今がオレが、お前のベルトは、お前の親代わりが隠した1つなのか?」

 話を続けて憤りを見せるソウマに、ノゾムが疑問を投げかける。

「そうだ・・中野さんが残してくれた手がかりを頼りに、ベルトを見つけることができたんだ・・」

「そうだったのか・・だけど今は、お前のベルトは・・・」

「そうだよ・・中野さんの仇であるアイツに・・・!」

 ノゾムと話を交わして、ソウマがキリオへの憎悪をふくらませる。

「早く取り返して、アイツを地獄に叩き落としてやる・・ベルトを、ビースターのいいようにさせるものか・・!」

「だとしてもあれだけの相手だ・・マキシマムだけでやるとしたら、何か作戦を立てないとな・・オレのベルトまで取られたらおしまいだぞ・・」

 キリオを倒すことを強く誓うソウマに、ノゾムが自分の考えを口にする。

「身勝手なヤツらを許せないって思ってるノゾムらしくないな・・えらく慎重じゃないか・・」

「こういうことは失敗したくないんだよ・・失敗してイヤな思いをしたくないからな・・」

 皮肉を込めた笑みを浮かべるソウマに、ノゾムが自分の考えを口にする。イヤな思いをしたくないからこそ、ノゾムは慎重になっていた。

「話に聞いていたのとちょっと違うみたいだな。ただガムシャラってわけじゃなさそうだ。」

 そこへ声がかかって、ノゾムとソウマが振り返る。2人の前に1人の男が現れた。

「何だ、アンタは?・・オレたちに何か用か・・!?

「シゲル・・シゲルか!」

 ノゾムが身構える中、ソウマが男、牛込(うしごめ)シゲルに声をかける。

「こうして面と向かうのは久しぶりだな、ソウマ。」

「オレにサイとワニのカードを置いていったのも、シゲルだったよね・・!?

 気さくに声をかけるシゲルに、ソウマが問いかける。

「あぁ。ホントだったらそのときに会えたらと思ってたけど、オレも追われる身だったものでね・・」

「オレのために危険に飛び込むようなマネをして・・迷惑かけてすまない、シゲル・・」

 答えるシゲルにソウマが謝る。シゲルのことを理解していって、ノゾムが納得する。

「だけど、それもみんな、アイツに奪われてしまった・・アイツらを倒すための力を・・・!」

「その力を取り返さないことには、何をするにしても始まらないな・・」

 キリオへの憎悪を浮かべるソウマに、シゲルが助言を告げる。

「だけどオレだけでベルトを取り戻すには、あのサメヤローをおびき出すしかないぞ・・それもベルトを持たせてな・・」

 ノゾムがベルトを取り返す段取りを考える。

「お前だけっていうのは間違いだぜ。オレも乗りこませてくれ。」

 シゲルがノゾムに気さくに呼びかけてきた。

「戦えるだけの力があるのか?相手は大勢のビースターだぞ・・」

「ま、ソウマのベルトを取り戻すことぐらいはできるぜ。」

 ノゾムが疑問を投げかけるが、シゲルは気さくさを絶やさない。

「シゲル、お前、もしかして・・!?

 自信を見せるシゲルに、ソウマは戸惑いを感じていた。

 

 ソウマのビースドライバーを持って、キリオはエックスビースの社長室を訪れた。

「戻ってきたのか、キリオ。しかもベルトの1つを取り戻してきたか。」

「あぁ。試しに使ってみたがうまく使えなくてな。それでもう1つは奪い損なっちまった・・」

 声をかけるジンキに、キリオが気さくに答える。彼から目を向けられて、シュンがいら立ちを押し殺していた。

「キリオ、お前はもう1つのベルトを追っていたのだったな。ならばシュンたちと協力して、2つのベルトも全て手に入れろ。」

 ジンキがキリオに指示を出す。

「社長、ベルト入手はオレだけで十分だぜ。シュンたちじゃ足手まといになっちまう。」

「これは命令だ。ベルトを取り戻すのは我々にとって重要な事項だ。」

 強気を見せるキリオに対して、ジンキが目つきを鋭くする。

「分かった、分かりましたよ。その代わり、このベルト、オレに使わせてくれないですかね?」

「いいだろう。ベルトとカードのデータを入手したいからな。ベルトの能力を全て使って戦え。そうすればデータも取りやすい。」

 頷くキリオの頼みをジンキが許可する。キリオが喜びを感じて、シュンに振り返る。

「そういうことだ。仲良くやろうな、浜松。」

 シュンにからかうように呼びかけてから、キリオは社長室を出た。

「いいのですか、社長!?任務にベルトを持ち出して、奪い取られたらどうするのですか!?

 シュンがジンキに対して声を上げる。シュンは冷静さを保てないでいた。

「お前たち上級ビースターなら、そのような失態はしない。そうだろう?」

「私ならともかく、鮫山は自信過剰の面があります!今はベルトを手に入れて、明らかに調子に乗っています!」

「そういうところを差し引いても、キリオは上級のビースター。エックスビースの上層部にいるにふさわしい男だ。」

 抗議の声を上げるシュンだが、ジンキは考えを変えない。

「今は他のベルトも手に入れることが最優先だ。シュン、お前も行け。」

「・・分かりました・・・!」

 ジンキの命令に、シュンはキリオへの疑念を抱えたまま頷いた。彼もビースドライバー奪取のため、外へ赴いた。

「鮫山キリオを監視しろ。ヤツがビーストライダーになったときの戦闘データを収集しろ。」

“了解。”

 ジンキが呼びかけて、通信相手の男が答えた。

 

 再びエックスビースの施設の近くに来たノゾム、ソウマ、シゲル。施設の敷地内や近隣は多くの警備員が滞在していた。

「オレたちがさっき乗り込もうとしたから、警備を強化してきたか・・!」

 ノゾムが警備員たちを見て毒づく。

「こりゃベルト奪ったヤツを引っ張り出すのは骨が折れるな・・」

 この状況にシゲルも苦言を呈する。

「それでもベルトを取り返す・・そうじゃなきゃ、オレはオレでなくなる・・・!」

 ソウマはあくまでビースドライバーを取り戻すことだけを考えていた。

「敵討ちもできなくなる、か・・何が何でも、サメヤローを引っ張り出してベルトを取り返さないとな・・・」

 ノゾムが言いかけて、ソウマが小さく頷いた。

「これからどうするんだ?このままアイツが出てくるまで、ここで待つつもりか?」

 シゲルがノゾムたちに疑問を投げかける。

「そんな堅苦しいことをするくらいなら、真正面から乗り込んだほうがマシだな・・」

「それじゃ作戦に何もないじゃないか・・」

 ノゾムが口にした言葉い、シゲルが呆れる。

「い、いた・・アイツが・・!」

 そのとき、ソウマが声を上げて指さして、ノゾムとシゲルも振り向く。キリオが施設から外へ出て、シュンとララも続く。

「こうも都合よく出てくるとはな・・・!」

 シゲルがキリオを見て苦笑いを浮かべる。

「しかもオレのベルトを持ってる・・余裕しゃくしゃくじゃないか・・!」

 ビースドライバーを身に着けているキリオに、ソウマがさらにいら立つ。

「アイツからベルトを奪い返す。そうしたらすぐにベルトを受け取ってフォックスになれ・・」

「言われなくても分かっている・・!」

 ノゾムの呼びかけに、ソウマはいら立ちを浮かべたまま答える。ノゾムがキリオたちのほうへ向かって走り出す。

“マックス!”

 ノゾムがビースドライバーにマックスカードをセットして、左上のボタンを押した。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 彼はマックスに変身して、キリオたちの前に飛び出した。

「マックス!」

 シュンがノゾムの登場に身構える。

「出てきたね、マックス・・シュンが受けた苦しみ・・倍にしてお前に味わわせる・・・!」

 ララがいきり立って、ローズビースターに変身した。

「マックス・・私の全てを賭けて、私の任務を果たす!」

 シュンも言い放って、ライオンビースターとなってノゾムに飛びかかる。シュンとララの同時攻撃を、ノゾムが必死に回避する。

「面白くなってきたな・・オレも楽しませてもらうぜ!」

“フォックス!”

 キリオが笑みをこぼして、ビースドライバーにフォックスカードをセットした。

「変身・・!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、キリオはフォックスに変身した。彼がシュンたちと交戦しているノゾムを狙って歩を進める。

「ちょっとまった!」

 そこへシゲルも出てきて、キリオの行く手を阻んだ。

「お、お前!?

 キリオがシゲルを見て驚く。彼はシゲルと会うのは初めてではなかった。

「オレのことを狙ってきてたな。目的はコイツか?」

 シゲルが言いかけて、腰に装着していたベルトを見せた。ビースドライバーとは形状が違っていた。

「ビーストライダーのベルトとは違う・・どういうことだよ!?

「マックスやフォックスのベルトを参考にしているけど、設計図そのままに作られたわけじゃない。他のベルトとは違う感じになってしまったみたいだ。」

 声を上げるキリオに、シゲルがベルトについて説明する。シゲルはさらに左腕に着けていた腕輪を見せた。

「カードを使って変身したり戦ったりするのは、マックスたちと同じだけどな。どのカードもマックスたちのベルトみたいに使えるぜ。」

 シゲルはさらに説明して、1枚のカードを取り出した。牛が描かれたカード「オックスカード」である。

 シゲルがオックスカードを腕輪「ビースブレス」にセットした。

“オックス。”

 ビースブレスから音声が発せられる。

「変身!」

 シゲルがビースブレスを着けた左腕を、ベルト「リードライバー」の中心部の前にかざした。

“スタートアップ・オックス。”

 シゲルの体を茶色のラインの入った黒いスーツと、牛を思わせる模様の黒と銀の仮面が包んだ。

「オレの力は天下無敵!このオックスの力、見せてやるぜ!」

 シゲルがキリオに向かって強気に言い放つ。彼はビーストライダー「オックス」に変身したのである。

「今度はお前のベルト一式、いただかせてもらうぞ!お前の鼻っ柱をへし折ってな!」

 キリオが高笑いしてから、シゲルに飛びかかる。キリオがスピードを上げて、シゲルにパンチとキックを連続で叩き込んでいく。

 しかしシゲルは攻撃を受けても平然としていた。

「何っ!?効いてないだと!?

「ヘッ。いいマッサージになったってとこか。」

 驚きをあらわにするキリオに、シゲルが笑みをこぼす。

「それじゃ今度はこっちの番だぜ!」

 シゲルが反撃に出て、キリオにパンチを繰り出す。重みのあるパンチを体に受けて、キリオがうめく。

「このパワー・・フォックス以上か・・!」

 シゲルの力を痛感して、キリオが毒づく。

「だけどスピードが上なのは分かりきっていること!」

 キリオが言い放って、スピードを上げてシゲルに飛びかかる。キリオがシゲルの後ろに回って、両手を背中に叩き込んで彼を突き飛ばす。

「さっさと再起不能にして、お前のベルトをいただかせてもらうぜ!」

 キリオが言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。

“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 彼はスピードを上げて、シゲルに向かってジャンプしてキックを繰り出す。

「これならパワーでも負けはしない!」

 キリオが勝ち誇って、シゲルの体にキックを叩き込んだ。シゲルは押されるも、キリオのキックに耐えた。

「おいおい、ウソだろ・・!?

「ノゾムの言った通りだ。ライダーになったときだと、お前は大したことはないみたいだ。」

 動揺をふくらませるキリオに、シゲルが笑みをこぼす。

「今度はこっちの必殺技と行くか!」

 シゲルが言いかけて、リードライバーの中心部を回転させる。

“オックス・ロードスマッシュ。”

 リードライバーからエネルギーがあふれて、シゲルの体を伝って右手に集まっていく。彼が走り出して、キリオにパンチを繰り出した。

「ぐあぁっ!」

 キリオが体にパンチを受けて突き飛ばされる。その衝撃で彼からビースドライバーが外れた。

 シゲルが宙に飛んだビースドライバーをつかんで、遅れて出てきたソウマに振り返った。

「ソウマ!」

 シゲルが放り投げたビースドライバーを、ソウマが右手でキャッチして、即座に腰に装着した。

「よくもベルトを盗んで好き勝手やってくれたな!この怒り、10倍にして叩き込んでやるよ!」

「変身!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

 フォックスカードがセットされたままのビースドライバーの左上のボタンを押して、ソウマはフォックスに変身した。

「オレの強さは疾風迅雷!ここからがオレの反撃の時間だ!」

 ソウマが言い放って、キリオに向かって走り出す。

「このヤロー・・オレのベルトを返せ!」

 怒りの叫びを上げたキリオが、シャークビースターになってソウマを迎え撃つ。

「お前のベルトじゃないだろうが!」

 ソウマが怒号を放って、スピードに乗せてパンチとキックを繰り出す。だが彼の攻撃をキリオが素早くかわす。

「ビースターのときはキレが全然違うみたいだな、アイツは・・!」

 キリオのビースターとしての力を目の当たりにして、シゲルが毒づく。

「ぐっ!」

 キリオに切りつけられたフォックスのスーツから火花が散って、ソウマが突き飛ばされる。シゲルが駆け寄って彼を支える。

「すまない、シゲル・・でもアイツはオレが必ず・・!」

「中野さんの敵討ちだろ。その気持ちは分かるが、ここはオレにも協力させてくれよ。」

 謝意を見せながらもキリオを憎悪するソウマに、シゲルが協力を進言する。

「1人で何とかできる相手じゃないことは、お前も分かってるはずだ。片意地張ってやられるぐらいなら、力合わせてでも倒したほうがいいだろ?」

「くっ・・やられるよりはマシか・・・!」

 シゲルに説得されて、ソウマが提案を聞き入れる。

「ソウマ、コイツを使え。お前とオレでアイツのスピードを止めるぜ。」

 シゲルが2枚のカードを取り出して、1枚をソウマに渡してきた。彼が受け取ったそのカードにはジャッカルが描かれていた。

「これならスピードアップができそうだ・・!」

 ソウマがアニマルカード「ジャッカルカード」を見て頷く。

「オレはコイツを使うことにするぜ。」

 シゲルが言いかけて、持っていたカードを見せた。ウサギが描かれた「ラビットカード」である。

「えっ!?ウサギ!?

 ラビットカードを見てソウマが一瞬あ然となる。

「バカにするもんじゃないよ。要は扱い方だよ。力も動物も。」

 シゲルが気さくな笑みをこぼして、ソウマが肩を落とす。2人は気を引き締めなおして、キリオに視線を戻した。

「さぁ、こっちの反撃の時間だ!」

「あぁ!」

 シゲルの呼びかけにソウマが答える。

“ジャッカル!”

“ラビット!”

 2人がそれぞれビースドライバー、ビースブレスにセットされていたアニマルカードをジャッカルカード、ラビットカードと入れ替える。

“チャージ・ジャッカール!ジャックスピード・ジャックソウル・ジャックジャックジャッカル!”

“スタートアップ・ラビット。”

 フォックスのスーツが黒と茶色に変わった。オックスのスーツも黒から白に変わり、マスクの模様もウサギを思わせる形になった。

 ソウマは「ジャッカルフォルム」に、シゲルは「ラビットフォルム」に変身した。

「ビーストライダーはおかしなヤツらだな!コロコロと姿を変えやがって!」

 キリオがいきり立って、ソウマとシゲルに向かって飛びかかる。

 キリオが振りかざす爪を、シゲルがジャンプでかわす。そのジャンプ力は並外れていて、見えている姿が小さくなったほどである。

「何というジャンプだ・・だがジャンプがすごくても・・!」

「よそ見をしている暇はないぞ!」

 いら立ちを覚えるキリオにソウマが言い放つ。ソウマはスピードを上げて、キリオの周りを駆け回る。その姿は残像として何人もいるように見えていた。

「こしゃくなマネをしたところで、オレを倒せるか!」

 キリオがあざ笑って、ソウマを狙って爪を振りかざす。ところが切り裂かれたのは、ソウマの残像だった。

「何っ!?本物はどこだ!?

 キリオが本物のソウマを捜して、目つきを鋭くする。高速で動くソウマが、キリオの次々にパンチとキックを当てていく。

「オ、オレがスピードで追い詰められるだと!?そんなこと、あり得るか!」

 怒号を放つキリオがスピードを上げて、ソウマの姿を徹底的に切り裂いた。しかしその全てが残像だった。

「もうお前は、オレのスピードには追いつけないよ・・!」

 ソウマはキリオに向けて低く言うと、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“ジャッカルチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ソウマがさらにスピードを上げて、キリオの周りを高速回転していく。その渦の中でソウマが立て続けに飛び込んで、キリオにキックを命中させていく。

 キリオが突き飛ばされて、地面を大きく転がる。

「くそっ!こんなことでオレが!」

 キリオが怒りをあらわにして、足を止めたソウマを鋭く睨みつける。

“ラビット・ロードスマッシュ。”

 その瞬間、両足にエネルギーを集めたシゲルが、キリオに向かって急降下してきた。

「何っ!?おあっ!」

 キリオがとっさに動いて回避行動を取る。シゲルの急降下のキックは地面に直撃して、その衝撃に押されてキリオは再び地面を転がる。

「じ、冗談じゃない!このオレがアイツらなどに!・・このままやられてたまるかよ!」

 キリオは毒づいて、舞い上がる土煙に紛れて、ソウマたちから逃走した。

「鮫山、事態を悪化させて・・!」

 シュンがキリオの失態に毒づいて、ララとともにノゾムから離れていった。

「くっ・・3人に逃げられた・・・!」

 ノゾムも毒づいて、ソウマ、シゲルと合流した。

「やるな、アンタ。ソウマも速くなったな・・」

 ノゾムがシゲルとソウマに称賛を告げる。ノゾムが他人をほめることを意外に思っていて、ソウマは一瞬あ然となった。

「・・言っているだろ?オレの強さは疾風迅雷だってな。」

 ソウマが気さくに振る舞って、ノゾムに答えた。

 

 ソウマとシゲルにやられて引き上げを余儀なくされたキリオは、屈辱を噛みしめて体を震わせていた。

「おのれ、フォックス・・お前の息の根はオレが止めてやる・・・!」

 ソウマへの憎悪をむき出しにするキリオ。彼の後ろにシュンとララがやってきた。

「ベルトを再び奪われたのはお前の責任だ、鮫山・・!」

「うるさい!」

 叱責するシュンに怒鳴って、キリオは立ち去る。彼の後ろ姿を見て、シュンがため息をついた。

(これでは社長に合わせる顔がない・・私が、何とかしなければ・・・!)

 自分の全てを賭けて任務を果たすことを、シュンは心に誓っていた。

 

 

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