仮面ライダーマックス
第20話「セイラの罪!」
ツバキの前でキャットビースターとなったセイラ。彼女の変貌にツバキは驚きを隠せなくなった。
「セイラさん・・あなた、ビースターだったの・・・!?」
ツバキが動揺する前で、セイラがタダオに鋭い視線を向ける。
「あなたの狙いは私でしょう?・・ツバキさんは関係ないじゃない・・・!」
「オレの邪魔をしようとしたからだ・・お前を守ろうとするならば、そいつも息の根を止めてやる!」
怒りの声を上げるセイラに、タダオが憎悪をむき出しにする。
「私のために、他のみんなまで・・・あなたは、クラスのみんなと同じ・・自分たちが正しいと思い込んでいる・・・!」
「勝手なことをぬかすな!オレのダチを殺したヤツのくせに!」
敵意を浮かべるセイラに、タダオが怒号を放つ。
「私を地獄に追いやったあなたたちを、絶対に許しはしない!」
「コイツ、ぬけぬけと!」
言い放つセイラにタダオが飛びかかる。2人が振りかざす手の爪がぶつかり合って、火花を散らす。
「あなたたちは何もかも自分たちが正しいことにしてきた!どれだけ悪いことをしても、他の人を悪いことにして、自分たちが正しいことを押し付ける!」
「自分が正しいと言い張っているのはお前のほうだろうが!いつまでもいい気になっているんじゃないぞ!」
怒りと憎悪をぶつけ合うセイラとタダオ。タダオの突き出した爪がセイラの左腕をかすめた。
次の瞬間、痛みに顔をゆがめたのはセイラだけでなく、タダオもだった。セイラの右手の爪がタダオのわき腹に刺さっていた。
「金子・・お前・・・!」
「もう弱い私じゃない・・力に溺れているあなたたちとは違う・・・!」
うめくタダオにセイラも声を振り絞る。タダオがセイラを突き飛ばして、彼女との距離を取る。
「オレはビースターになって強くなった・・アイツがビースターであっても、オレが負けるわけがない!」
怒りの声を上げてから、タダオはセイラの前から走り去った。セイラはひと息ついてから、ツバキに振り返る。
「ツバキさん・・・」
体を震わせているツバキに動揺しながら、セイラはビースターから人の姿に戻る。
「私はビースター・・怪物だったの・・そして根津くんが言ったことは本当なんです・・・」
自分のことを打ち明けるセイラ。彼女はツバキに怖がられていると思って、悲しい顔を浮かべた。
「自分たちは正しくて、何も悪くないのに悪者にする・・私のクラスにいたのは、そんな人たちと、それに従うのをよしとしている人ばかりだった・・・」
セイラが昔のことをツバキに語りかける。辛い記憶を思い返して、セイラは胸を締め付けられるような気分を覚える。
「誰が見ても間違っていることが正しいことにされるのが、どうしても我慢できなかった・・たとえビースターになっていなくても、私はきっと・・・」
自分の中にある怒りを口にするセイラ。
(セイラさん・・・ノゾムと同じように、身勝手な人を許せなくて・・・)
ツバキがセイラがノゾムと似た感情を持っていると思って、戸惑いを感じていく。
「そんな理不尽、誰だって許せるものじゃないよ・・きっとノゾムだって・・・」
ツバキが口にした言葉を聞いて、セイラが動揺を浮かべる。
「ツバキさん・・もしかして、ノゾムさんが私のことを知っているのを・・・」
「えっ!?・・ノゾムも、あなたのことを知っていたの・・・!?」
セイラが口にした言葉を聞いて、ツバキが驚きながら問いかける。
「ノゾムさん、みなさんに黙っていたのですね・・みなさんにはたくさんお世話になっているから、知られたくないこと・・・」
ノゾムのへの感謝を胸に秘めて、セイラが微笑みかける。
「きっと、ノゾムはあなたに共感したから、ビースターであるあなたを受け入れた・・私も、最初はビースター全部が悪いと思っていたけど、今はビースターも人間も関係なくなってきている・・・」
ツバキも自分の考えをセイラに伝えていく。
「あなたがビースターであることは、私とノゾム以外で知っている人はいるの?」
「あ、いえ・・いないと思います・・」
ツバキが問いかけて、セイラが口ごもってから答える。
(ユウキのことは知られていないみたい・・これは黙っていないと、ユウキにまで負担をかけてしまう・・)
ユウキのことまでツバキやノゾムたちに知られてはいけないと思って、セイラは黙っていることにした。
「ツバキさん、今はユウキとノゾムさんを捜したほうがいいと思います・・・」
「そ、そうだったね・・早くしないと2人が・・!」
セイラから呼びかけられて、ツバキがノゾムたちのところへ向かおうとした。
「待ってください・・私が聞き分けます・・」
「聞き分ける・・・?」
セイラが呼びかけて、ツバキが疑問符を浮かべる。セイラは目を閉じて耳を澄まして音を聞き分ける。
キャットビースターとしての聴覚が遠くにある音をも拾って、目的の音とそうでないものを分けていく。
(この呼吸・・ノゾムさんの・・・!?)
セイラの耳がノゾムの呼吸を捉えた。
「こっちです!」
セイラが駆け出して、ツバキが彼女を追いかけていった。
ララの攻撃を受けて川に落ちたノゾム。川に流された彼だが、川沿いにはい出て難を逃れた。
「くそっ・・あのバラ女・・今度はライオンヤローと一緒にブッ飛ばしてやるぞ・・・!」
ララとシュンへの怒りを噛みしめるノゾム。体の疲れを感じて、彼は思うように動けず、立ち上がることができなかった。
「ノゾムくん!」
そのとき、ノゾムに向かって声がかかった。彼を捜していたユウキが彼のそばに駆けつけてきた。
「ノゾムくん、しっかりして!ノゾムくん!」
ユウキがノゾムを支えて呼びかける。ノゾムが体に力を入れて、ユウキに視線を向けた。
「ア、アンタ・・・」
「意識がある・・ノゾムくん、セイラとツバキさんのところへ戻ろう・・・!」
声をもらすノゾムに、ユウキが笑みをこぼして呼びかける。
(近くにまだビースターがいるはず・・多分、あのシュンというビースター・・・!)
シュンたちがノゾムを捜していることを予感して、ユウキはノゾムを連れて急いでこの場を離れた。
ノゾムを捜して川沿いを進んでいくシュンとララ。しかし2人はノゾムを見つけることができないでいた。
「逃がしたか・・このまま川に流されてしまったか・・・」
シュンが川を見渡して毒づく。
「ごめんなさい・・私が調子に乗ったから・・・」
ララが自分を責めてシュンに謝る。
「過ぎたことを悔やむ暇があるなら、お前も神奈ノゾムを捜せ。」
「う・・うん・・・」
シュンに呼びかけられて、ララが小さく頷く。2人はその後もノゾムを捜し続けたが、彼を見つけることはできなかった。
ノゾムの呼吸を耳にして、セイラはツバキと一緒に彼のところへ急いだ。2人はユウキに支えられているノゾムを見つけた。
「ノゾムさん!ユウキ!」
セイラが呼びかけて、ノゾムとユウキが彼女とツバキに目を向けた。
「セイラ・・ツバキさん・・・」
ユウキもツバキたちを見て声を上げる。ツバキとセイラが駆け寄ってきて、ノゾムとユウキの無事に安心を見せる。
「ノゾム、無事だったんだね・・・!」
「あぁ・・川に落ちたのが不幸中の幸いだったってところか・・・」
言いかけるツバキに、ノゾムが小さく頷く。
「ところで、あのネズミヤローはどうした!?お前たちのところへ向かったはずだけど・・!」
ノゾムがタダオのことを聞いてきた。
「うん・・追いかけてきたけど、うまく隠れて逃げ切ることができたよ。」
「はい。危ないところでした・・」
ツバキが答えて、セイラも話を合わせた。ユウキがそばにいたためにセイラのことは言えないと思って、ツバキは嘘をついた。
「今は戻って、ノゾムくんを休ませよう。オレが来たときには意識を失いかけていた・・」
ユウキが声をかけて、ツバキとセイラが頷いた。ノゾムはユウキたちに支えられて、別荘に向かっていった。
「ノゾムくん!?みんな、どうしたんだ!?」
別荘に戻ってきたノゾムたちに、タイチが驚きを見せる。
「少し休ませてあげてください。川に落ちただけですが・・」
「大変だ!僕も手伝うよ!」
セイラが事情を話して、タイチが慌ててノゾムを支える。
「みんな、そろいもそろって世話焼きなんだから・・・」
ツバキたちに対してため息をつくノゾム。彼は優しくされていることに、ツバキたちに見えないように一瞬笑みを浮かべた。
自分の部屋に戻ったノゾムは、ベッドに腰を下ろして休息を取っていた。その間も彼はシュンやララ、タダオへの敵意を感じていた。
ノゾムだけがいた部屋のドアがノックされた。ツバキがドアを開けて、中をのぞいてから部屋に入った。
「ツバキか・・今、1人か・・?」
ノゾムが聞いて、ツバキが小さく頷く。
「ノゾム、セイラさんのことなんだけど・・・」
「まさかお前も気付いたのか・・アイツが、ビースターだってこと・・・」
話を打ち明けたツバキに、ノゾムが言いかける。
「気付いてたんだね・・私があのとき、ウソをついていたこと・・・」
「セイラのことを気遣ってたなって感じはしてた・・ばらしてもいいことは何もなさそうだと思ったし・・」
物悲しい笑みを浮かべるツバキに、ノゾムが呟くように答える。
「アイツはビースターだけど、オレと同じように、身勝手なヤツを憎んでいる。だから、オレがアイツを悪く思う理由がない・・」
「私も、セイラさんをビースターだからってだけで憎むことはできない・・だって、ビースターであっても、セイラさんは人の心を失っていない・・ううん、それどころか、普通の人間よりも人間らしいっていうか・・」
セイラに対する考えを口にするノゾムとツバキ。
「でも、怒りのままに人殺しをしてほしくないとも思っている・・いくら相手が身勝手でも、セイラさんには人の心を失ってほしくないから・・」
「ツバキ・・・そうだな・・・」
ツバキの正直な思いを聞いて、ノゾムが小さく頷いた。
「あのネズミヤロー、セイラを狙ってまた現れるだろうな・・そのときは逃がさずに、今度こそブッ倒してやる・・・!」
「でもノゾム、危ないと思ったら突っ走りすぎないで、引き返すことも考えて・・さっきは無事に戻れたけど、今度はうまくいかないかもしれない・・」
タダオへの怒りをふくらませるノゾムに、ツバキが心配の声をかける。
「オレは倒れない・・オレの許せないヤツが世の中でのうのうとしているのに、オレがくたばるわけにはいかないんだよ・・・!」
敵への怒りを噛みしめるノゾム。彼の戦い生きる理由に、ツバキは複雑な気分を感じていた。
セイラの心配をしたタイチは、彼女とユウキを送ることにした。
「私たちは大丈夫です、タイチさん・・タイチさんが危険に・・・」
「危険だったらセイラさんたちだけにするわけにいかないよ・・」
互いに気を遣うセイラとタイチ。彼の親切にセイラだけでなく、ユウキも複雑な気分を感じていた。
「ごめんなさい・・私のために、タイチさんまで・・・」
「困ったときはお互い様ってね。たとえ危険でも、困っている人を放っておくことは、僕にはできないよ。」
謝るセイラにタイチが気さくに答える。
(ありがとうございます、タイチさん・・でも、私たちに関わりすぎたら、あなたは間違いなく危険に巻き込まれる・・)
心の中で感謝しながらも、セイラはタイチの心配をせずにいられなかった。
「やっと見つけたぞ、金子・・!」
そのとき、セイラが呼び声を耳にして緊張を覚える。タイチ、ユウキとともに振り返った彼女の前に、タダオが現れた。
「根津くん!」
「この人が、セイラさんを狙っている・・・!?」
セイラが声を上げて、タイチがタダオを見て緊張を覚える。
「もう逃がしはしない・・今度こそお前に自分の間違いを思い知らせる・・!」
セイラへの憎悪をむき出しにするタダオが、マウスビースターに変身した。
「セイラさん、ユウキくん、逃げるんだ!」
タイチはユウキたちと一緒にタダオから逃げて、スマートフォンを取り出した。
「ノゾム、ビースターが!セイラさんを狙ってる!」
「ちょっと待って、タイチくん!ノゾムくんはムチャできる状態じゃ・・!」
ノゾムに連絡するタイチを、ユウキが呼び止める。
「ノゾムに知らせれば、ツバキちゃんにも伝わる・・!」
タイチが焦りを抑えようとしながら、ユウキたちに答える。
(ノゾムなら、マックスなら何とかしてくれる・・・!)
ノゾムに頼るしかないと、タイチは思っていた。
そのとき、タダオがタイチたちの前に回り込んできた。
「逃がさないと言っているだろ・・おとなしくオレの怒りを受けな!」
タダオが言い放って、セイラを狙って歩を進める。
「ユウキくんはセイラさんを連れて逃げて!僕が時間を稼ぐから!」
タイチがユウキたちに呼びかけてから、タダオの前に立ちはだかる。
「ダメだ、タイチくん!危険だよ!」
ユウキが呼び止めるが、タダオに突き飛ばされて倒される。
「タイチさん!」
セイラが呼びかけてタイチに駆け寄る。タイチは意識を失っただけで、ケガはしていなかった。
「タイチさん・・・これはもう、私の罪を償わせるんじゃない・・自分のために関係ない人を巻き込んで平気な顔をする、自分勝手よ!」
タダオへの怒りをあらわにしたセイラが、キャットビースターとなった。
「自分のやったことを棚に上げて、都合のいいことをぬかして・・!」
「棚に上げているのはお前のほうだ・・!」
セイラをあざ笑うタダオに言い返したのは、ユウキだった。
「自分たちが正しいと言い張って考えを押し付ける・・お前も、オレの敵だ!」
怒号を放つユウキもドラゴンビースターとなった。
「コイツもビースターだったか・・誰だろうと金子の味方をするなら容赦しないぞ!」
タダオがいきり立ってセイラに飛びかかる。彼の前にユウキが飛び込んで、握りしめた右手を振りかざす。
「ぐっ!」
ユウキのパンチをかわし切れず、タダオが体に痛みを覚えて顔を歪める。彼は地面に倒れるも、すぐに起き上がって素早く動く。
「コイツ、力がとんでもないぞ・・・!」
ユウキの力を痛感して、タダオが焦りを覚える。
「お前のようなヤツがいるから、オレたちみたいに悲しみと苦しみを押し付けられる人が増えてくるんだ・・・!」
「あなたたちのような敵を滅ぼすために、私たちは戦う・・・!」
自分たちの決意を口にするユウキとセイラ。
「人殺しのくせに、自分たちが被害者みたいなことをぬかしてんじゃねぇぞ!」
怒号を放ったタダオがユウキたちに飛びかかる。今度はセイラがジャンプして、タダオを蹴り飛ばす。
「ちくしょう・・パワーとスピードを、お互いがカバーしてるとでもいうのか・・・!?」
タダオがユウキとセイラの強さと連携にいら立つ。
「オレがやらなきゃ誰がやる!?アイツらをやらなきゃ、アイツらがみんなを殺したことをいいことになってしまう!」
タダオがセイラたちへの憎悪を強めて、感情のままに飛びかかる。
「悪いのはお前たちなんだよ!」
「自分たちの間違いを、どうして認めようとしないの!?」
互いに怒りの叫びを上げるタダオとセイラ。タダオが繰り出した右手はセイラから外れて、セイラが振りかざした右手の爪がタダオの体に傷を付けた。
「ぐうっ!」
タダオが痛みを覚えて、ふらついて後ずさりする。彼はセイラとユウキを鋭くにらみつけていた。
ノゾムからの連絡を聞いて、ツバキがソウマに連絡した。ソウマがウルフルスロットルに乗って駆けつけて、ビースターとなっているユウキたちを目撃した。
「いたぞ・・ビースターが3人・・!」
ソウマが目つきを鋭くして、フォックスカードをビースドライバーにセットした。
“フォックス!”
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
ソウマはビースドライバーの左上のボタンを押して、フォックスに変身した。彼はウルフルスロットルを加速して、ユウキたちの間に割って入った。
「これは、フォックス!こんなときに・・!」
ソウマの登場にユウキが毒づく。ソウマが止めたウルフルスロットルから降りて、ユウキたちを見渡す。
「オレの強さは疾風迅雷!みんなまとめて始末してやる!」
ソウマが言い放って、セイラに向かって飛びかかる。ユウキがセイラを助けようとするが、ウルフルスロットルに行く手を阻まれた。
「邪魔するな!そいつはオレが倒すんだ!」
タダオが叫んで、セイラを狙って飛びかかる。だがソウマの迎撃を受けて突き飛ばされる。
「ビースターの都合に合わせるつもりはない・・そんなに倒されたいなら、お前から倒してやるよ!」
ソウマがタダオに狙いを変えて飛びかかる。タダオが加速してソウマを翻弄する。
「このオレにスピードで対抗しようってか?だったらオレはパワーだ!」
“ライノス!”
ソウマが言い放って、ライノスカードを手にしてビースドライバーにセットした。
“チャージ・ライノース!サイパワー!サイスピード!ハイスピード・ライノース!”
彼はライノスフォルムとなって、タダオを迎え撃つ。ソウマの上がったパワーがタダオの突撃を押し返す。
「コ、コイツもパワーが強い!」
ソウマの強さを痛感して、タダオが緊張を隠せなくなった。
ノゾムも疲れの残る体を突き動かして、タイガーランナーを駆って、ソウマたちのところへ向かっていた。
(セイラはオレと同じ、身勝手なヤツを許せないだけだ・・それが間違っていると言い張ることこそが、明らかに間違っていることだ・・!)
ノゾムがセイラのことを考えて、彼女の意思と共感する。
(だからオレは、アイツのことは見捨てない!)
“マックス!”
彼が改めて決意を固めて、マックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ノゾムがマックスに変身して、タイガーランナーを加速させる。彼がユウキとセイラの前で止まって、タイガーランナーから降りた。
「お前には借りがあったからな・・今度こそケリをつけてやる・・・!」
「マックス・・2度と現れないように、オレがここで倒す・・!」
ノゾムとソウマが互いに強い敵意を向け合う。
「待って!マックスは私たちと同じ・・!」
セイラが呼び止めようとするが、ユウキはノゾムに向かって飛びかかる。ノゾムとユウキが打撃をぶつけ合い、2人とも退かない。
「やっぱりこれじゃらちが明かないか・・だったら!」
ノゾムが毒づいて、マキシマムカードを取り出した。
“マキシマム!”
彼がビースドライバーにあるマックスカードとマキシマムカードを入れ替えて、左上のボタンを押した。
“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”
マキシマムフォルムに変身したノゾムが、ユウキに視線を戻して構えを取る。
「オレの怒りは限界突破!このマキシマムの力で、お前を倒す!」
ノゾムが手を握りしめて、ユウキに向かっていく。
「オレが相手をするから、ここから早く離れるんだ!」
ユウキがセイラに呼びかけて逃げるように促す。
「戦わないで!その人は・・!」
「早く行って!」
セイラが呼び止めるが、ユウキはさらに呼びかけて、ノゾムに向かっていく。ユウキが繰り出すパンチが当たるも、ノゾムは平然としていた。
「もう負けはしない・・お前に押されることにはもうならない!」
ノゾムが言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがジャンプして、エネルギーを集めた両足のキックを繰り出す。ユウキが具現化した剣を振りかざす。
2人の攻撃がぶつかり合って、すさまじい衝撃を巻き起こす。
「ぐあっ!」
ユウキが剣をはじき飛ばされて、大きく吹き飛ばされた。
「あっ!」
セイラが慌ててユウキを追いかけた。ノゾムは2人を追いかけようとせず、交戦しているソウマとタダオに振り返った。
ソウマの強い突進力に、タダオは劣勢を強いられていた。
「ちくしょう・・どいつもこいつもオレの邪魔を・・!」
「言ったはずだ。ビースターの都合に合わせるつもりはないってな・・!」
いら立ちをふくらませるタダオの言葉を、ソウマがはねつける。
「そろそろお前を吹っ飛ばしてやるぞ。覚悟を決めな!」
ソウマが言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“ライノスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ソウマの体から光があふれ出す。彼が構えを取ってから、タダオに向かって突っ込んだ。
「ぐあぁっ!」
タダオがソウマに突き飛ばされて、空中で爆発を起こした。
「オレだってやれるんだ・・マキシマムの力に負けちゃいないんだ・・!」
ソウマが勝ち誇って、ノゾムに振り返る。
「オレはビースターを滅ぼす・・ヤツらが何を考えているかなんて、オレには関係ない・・!」
「そこまでビースターを憎んでいるのか・・少し前のオレ、いや、それ以上かもな・・・」
鋭く言いかけるソウマに、ノゾムが昔の自分を思い出しながら答える。
「何かあったのか・・?」
「これは、他のヤツに言うことじゃない・・・!」
ノゾムからの問いかけに答えることなく、ソウマはウルフルスロットルに乗って走り去った。
ビースターを強く憎むソウマに、ノゾムは疑問を感じていた。
ノゾムに手傷を負わされて吹き飛ばされたユウキ。体に痛みを覚える彼に、セイラが追いついた。
「ユウキ、大丈夫!?しっかりして!」
「セイラ・・何とか耐えられる痛みだ・・・!」
呼びかけるセイラに答えて、ユウキが立ち上がる。2人がビースターから人の姿に戻った。
「負けられない・・負けるわけにはいかない・・ビースターを根絶やしにするマックスとフォックスは・・・!」
「違う・・マックスは私たちのように、許せない敵と戦っているだけ・・・!」
「オレたちも、許せない敵だと認識しているということか・・・!」
「だから、そうじゃないって・・・!」
マックスへの憎悪を絶やさないユウキに、セイラが必死に呼びかける。しかし彼女の説得は彼には届かない。
「ただ攻撃するばかりじゃ、仲間になれる人とも分かり合えなくなる・・・」
ユウキが怒りと憎しみに囚われて孤独に向かっていると思って、セイラは悲しみを感じていた。