仮面ライダーマックス
第17話「バラの跳躍!」
マックスが新たに変身したマキシマムフォルム。その強さをシュンは警戒していた。
(マックスのあの姿・・上位のビースターに迫る戦闘力を備えている・・)
マキシマムフォルム打倒の策を考えていくシュン。
(社長には遠く及ばないが、野放しにしておいていい敵でもなさそうだ。)
だんだんと警戒心を強めていくシュン。そのとき、彼は近づいてくる気配を感じて目つきを鋭くする。
「今日もフラフラと気の抜けた行動・・相変わらずだな、ララ。」
シュンが振り向かずに声をかける。すると彼の後ろに現れた少女が驚いて、動揺して体を震わせる。
「べ、別にビックリさせようとか、こっそりこようとかしてないですもん・・!」
少女、馬場ララがシュンに言いかける。
「くだらないことは聞く気はない。ララ、力を貸してもらうぞ。」
「社長に言われてこっちに来たんだけど・・うん、いいよ・・」
呼びかけるシュンにララが小さく頷く。
「ベルト2つとアニマルカードの奪還が、我々の任務。ただ、ビーストライダーの1人、マックスが驚くべき強化を果たした。私1人では迅速に任務を遂行するのは難しい。」
「だから協力が必要なんだね・・」
「心構えや精神面で不安要素はあるものの、お前も上位のビースターであるのは確かだ。頼りにさせてもらうぞ、ララ。」
「うん・・やってみる・・・」
シュンからの指示を受けて、ララが小さく頷く。
「ララ、君はやればできるのだから、自信を持て。いいな。」
「うん・・私、やってみる・・・」
シュンの言葉にさらに頷いて、ララは自信を持とうとした。
いつものように動物公園で1人で動物の世話をしているノゾム。彼のその様子をツバキ、タイチ、ワタル、ワオンが見ていた。
「ノゾム、相変わらず1人でがんばっているみたいだね。」
「でもいつもは1人でいるってだけで、頼んでも聞かないってわけじゃない。できたいとかやりたくないとかはあるけど、大抵のことは断らずに聞いてくれるよ。」
ツバキとタイチがノゾムのことを話していく。
「あんまりお話しないけどおいしいラーメンを作るおじさん、みたいな感じかな・・?」
「その例え、ちょっと違うかも・・・」
ワタルが口にした言葉に、タイチが苦笑いを見せた。
「そういえばソウマお兄ちゃん、最近見かけないね・・まだショックなのかな・・?」
ワタルがソウマのことを気にして周りを見回す。
「ソウマくんは強い人よ。今は難しく考えているけど、すぐに立ち直れるようになる。」
「ツバキお姉ちゃん・・・そうだよね。ソウマお兄ちゃんなら大丈夫だよね。」
ソウマへの信頼を口にするツバキに、ワタルも笑みを浮かべて頷いた。
「またこっちに来るよ。そのときはあたたかく迎えてあげよう。」
「僕たちもできることがあればやってあげようね。」
ツバキとタイチがソウマを気遣い、ワタルも頷いてワオンもひと吠えした。
「お前たち、そこで何やってるんだ?」
ノゾムがツバキたちに気付いて声をかけてきた。
「ノゾム・・ソウマくんのことを考えてて・・でも大丈夫だって、信じることにしたよ・・」
「ソウマか・・オレもアイツならアイツで何とかするだろって思っている・・あんまり気にしても仕方がないな・・」
話を切り出すツバキに、ノゾムもソウマへの考えを口にする。
「何かあれば、向こうから連絡が来るだろ。無闇にこっちから声をかけて、向こうの機嫌悪くすることもないし・・」
「ノゾム・・」
ソウマのことを深く気にしていない素振りを見せるノゾムに、ツバキは複雑な思いを感じていた。
夜の大通りを駆け抜けていく暴走族。彼らはバイクと車で蛇行しながら、騒音を響かせていた。
「ブッ飛ばせ、ブッ飛ばせー!」
「オレらを止められるヤツは1人もいねぇぜ!たとえ警察でもなー!」
暴走族が高らかに言い放つ。彼らは何度も警察に追われたが、ことごとく振り切ってきた。
「今夜もかっ飛ばしていくぜー!」
暴走族が高らかに叫んで、さらにスピードを上げていく。
その暴走族の前に1つの影が現れた。
「ん?何だ?」
暴走族の1人が目を凝らして、影をじっと見る。その正体は大きな体をした怪物。
「おい!何だよ、ありゃ!?」
「バケモン!?バケモノだと!?」
暴走族が驚きの声を上げて、恐怖を覚える。
「構うこたぁねぇ!このまま突っ込め!」
暴走族がスピードを緩めずに、怪物、バッファロービースターに向かっていく。バッファロービースターが足をならして、暴走族に突っ込んでいく。
「ごあぁっ!」
バイクや車を突き飛ばされて、暴走族の男たちが絶叫を上げる。男たちのほとんどは倒れて動かなくなり、残りは苦痛を覚えて身動きが取れなくなる。
「な、何だ、このバケモノは・・!?」
暴走族のリーダーがうめき声を上げながら視線を移す。彼の前にバッファロービースターが迫ってきた。
「お前たちの・・お前たちのようなのがいるから・・!」
バッファロービースターがリーダーを見下ろして、鋭い視線を向ける。
「来るな!来るな、バケモノ!」
リーダーが悲鳴を上げて、必死に逃げようとする。しかしバッファロービースターにすぐに追いつかれる。
「本当のバケモノは、お前たちのほうだ!」
バッファロービースターが怒鳴って足をならす。リーダーがさらに悲鳴を上げて、バッファロービースターから逃げ出す。
バッファロービースターが突っ込んで、リーダーを大きく突き飛ばした。彼は叩きつけられた地面を転がって動かなくなった。
「コイツらがいなかったら、妹は・・・!」
暴走族や不良への憎悪を噛みしめるバッファロービースター。彼は妹を暴走族に殺された過去があり、その後ビースターに覚醒したのである。
「また暴走族を相手に暴れていたのか。」
そんなバッファロービースターの前にシュンが現れた。
「エックスコーポの者か。オレはお前たちの味方になるつもりはない。」
バッファロービースターがシュンに振り向いて、不満の声を上げる。
「お前の行為はビースターの行動を狭めることになる。あまり派手にやりすぎると、我々だけでは収集が追いつかなくなる。」
シュンがバッファロービースターに注意を呼びかける。
「オレはお前たちのために行動しているのではない。オレは不良や暴走族を滅ぼしたいだけだ・・」
自分の考えを曲げないバッファロービースター。彼は暴走族を標的とするだけである。
「これ以上の暴挙は我々への反逆行為と見なして、お前を始末しなければならなくなる。」
「オレの邪魔をするなら、誰だろうと容赦しないぞ・・・!」
互いに警告を送るシュンとバッファロービースター。2人とも互いの警告を聞き入れようとしない。
「後悔することになるぞ。」
去っていくバッファロービースターに、シュンは呆れてため息をついた。
「追いかけなくていいの・・・?」
ララもやってきて、シュンに心配の声をかける。
「次にまた騒ぎを起こせばすぐに気付く。そのときに制裁を下す。」
「私もそのときに戦うんだね・・」
判断を告げるシュンにララが頷く。2人は戦闘に備えてこの場を後にした。
マキシマムフォルムとなったノゾムのことを気にしていたソウマ。彼は自分自身も強くなる方法を探し求めて、ウルフルスロットルに乗って駆け抜けていた。
(このまま負け犬になるつもりはない・・オレも何とかして強くならないと・・!)
マキシマムフォルムに負けない強さを探すソウマ。しかし焦れば焦るほど苦悩は深まるばかりだった。
走っていた道の途中の端で止まって、ソウマがスマートフォンを手にした。そこで彼は着信があったことに気付く。
(アイツから・・何かあったのか・・・!?)
緊張を覚えたソウマが、再びウルフルスロットルを走らせた。彼は一気にスピードを上げて疾走した。
ゴロウの別荘で朝食を取るノゾムたち。彼らが見ているTVのニュースで、暴走族が殺害される事件が報道されていた。
「また物騒な事件が起こっているね。ここの近所でも起きたみたい・・」
ゴロウがこのニュースを聞いて不安を覚える。
「もしかして、ビースターの仕業かな・・・?」
タイチが小声でノゾムたちに聞いてきた。
「そうとは限らないだろ?暴走族は悪い運転して、中にはひき逃げとかもやってるヤツもいるんだろ?そんな連中に恨みを持ってる人間もいるんじゃないのか?」
ノゾムが肩を落として言いかける。
「もしも犯人がビースターなら、そのうちオレたちの前に出てくるんじゃないか?わざわざ捜して引っ張り出すこともないし・・」
「ノゾム・・ノゾムらしいね、そういう考えは・・」
他人事のように振る舞うノゾムに、タイチは苦笑いを見せた。
「ごちそうさん・・ゴロウさん、オレ、掃除に行ってくる。」
「うん。気を付けて、ノゾムくん。」
別荘から外に出るノゾムに、ゴロウが挨拶した。
「ノゾムお兄ちゃん、大丈夫かな・・・?」
「暴走族や事件の犯人と出くわしたら、何か騒動起こしそうだ・・」
ワタルとタイチがノゾムの心配をする。
「私とタイチくんで様子を見てみようかな・・」
ノゾムの様子を見に行こうとするノゾム。
「僕も行くよ!お兄ちゃんが心配だ!」
「ワタルくんは学校があるんだから、行かなくちゃダメ。」
ワタルも行こうとするが、ツバキに止められる。
「そ、そんな〜・・」
ワタルは肩を落とすも、言うことを聞くことにした。
「それじゃ行こう、ツバキちゃん。」
「うん。」
タイチとツバキが声をかけ合って、ノゾムを追いかけていった。
シュンたちの襲撃から辛くも逃れたユウキとセイラ。セイラが回復したことに、ユウキは安心していた。
「ゴメンね、ユウキ・・心配かけてしまって・・・」
「ううん。セイラが無事で何よりだよ。元気になってよかった・・」
謝るセイラにユウキが微笑んで答える。
(セイラはまだ、マックスのことを気にしているんだろうか?・・マックスもフォックスも、見境なしにビースターを倒そうとしているのに・・・)
マックスたちへの敵意を絶やさないユウキは、セイラがマックスに心を許そうとしているのが納得できなかった。
「あの、ユウキ・・?」
そこへセイラが声をかけて、ユウキが我に返る。
「ゴメン、セイラ・・オレ、ちょっと出てくる・・」
ユウキはセイラにそう告げて、1人外へ出た。
「ユウキ・・・」
(私がマックスに気を許していることを、ユウキは快く思っていない・・マックスが私たちのことまで傷つけると思っているから・・)
戸惑いを覚えるセイラが、ユウキとマックスのことを考えていく。
(違うの、ユウキ・・マックスはビースターだけを狙っているんじゃない・・私たちと同じように、身勝手な人を憎んでいるだけ・・)
マックスと分かり合えると信じていたセイラ。しかしユウキのマックスに対する疑念は、彼の心に強く宿っていた。
今日も動物の世話に意識を傾けるノゾム。純粋に伸び伸びと過ごす動物たちを見て、ノゾムは安らぎを感じていた。
そのとき、動物公園にエンジン音が轟いた。動物たちが騒音を耳にして警戒を見せて、ノゾムが振り返って目つきを鋭くする。
「いやっほー!いけいけー!」
「ここも思い切って突っ走れー!」
動物公園の前に道を、バイクに乗った暴走族が走り込んできた。暴走族は周りにいた人々を気に留めることなく、スピードを上げて駆け抜けていた。
「アイツら・・!」
ノゾムが暴走族への怒りを覚えて走り出す。彼の様子を見に来たツバキとタイチが、彼を追いかける。
広場で走り回って、暴走族が興奮を見せて笑い声を上げる。
「お前たち、ふざけたマネしてんじゃないぞ!」
ノゾムが駆けつけて、暴走族たちに怒鳴りかかった。
「何だ、コイツは!?生意気なヤツが出てきたぜ!」
「他にヤツに見せてやろうぜ!オレらに逆らうとどうなるかをな!」
暴走族があざ笑って、ノゾムに襲い掛かる。その中の1人がバイクで向かってきて、前輪を上げて突っ込んできた。
ノゾムがとっさに横に動いてバイクをよけた。彼は反射的に足を振り上げて、バイクに乗っていた暴走族を横から蹴った。
「ぐおっ!」
暴走族がバイクとともに倒れる。痛がりながらも立ち上がって、暴走族がノゾムを睨みつけてくる。
「こ、このヤロー!ふざけたマネしやがって!」
「ふざけたマネをしているのはお前らだろうが!お前らのようなヤツがいると、動物たちが迷惑するんだよ!」
怒鳴る暴走族にノゾムが怒鳴り返す。
「調子に乗りやがって!ブッ飛ばしてやるぜ!」
他の暴走族もノゾムを狙って、バイクのエンジンをふかす。それでもノゾムは引き下がろうとせず、怒りをあらわにする。
そのとき、草むらから1つの影が飛び出してきた。暴走族を追うバッファロービースターが現れた。
「な、何だ、アイツは!?」
「バケモノだと!?」
暴走族がバッファロービースターを見て驚く。
「お前たちは1人も逃がしはしない・・この手で叩き潰してやる!」
バッファロービースターが憎悪をむき出しにして、暴走族を狙って足をならす。
「あれは、ビースター!?」
「暴走族を襲ってる犯人って、やっぱり・・!」
ツバキとタイチがバッファロービースターを見て動揺する。
「まさか、次々に襲ってるバケモンってコイツじゃ・・!?」
「やべぇじゃんか!早く逃げるぞ!」
暴走族が慌ててこの場から走り出そうとした。
「逃げるな!」
バッファロービースターが暴走族に向かって走り出す。バッファロービースターの突進が、暴走族を突き飛ばした。
「ビースター・・このままほっとくわけにはいかないか・・!」
ノゾムが歯がゆさを感じながら、マックスカードを手にした。
“マックス!”
彼はビースドライバーにマックスカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。
「やめろ!」
ノゾムが飛び出して、バッファロービースターを横から突き飛ばした。
「くっ!邪魔をするのか!?」
バッファロービースターがノゾムに目を向けて、怒りをふくらませる。
「アンタ、あんな連中ばっか狙ってるみたいだな・・何かあったのか・・!?」
ノゾムがバッファロービースターに向かって問いかける。だがバッファロービースターは逃げていく暴走族に目を向けて追いかける。
「待てよ!」
ノゾムがとっさにバッファロービースターを追いかける。
「アイツ、バッファローっていうだけあって足が速い・・だったら!」
“ホーク!”
思い立ったノゾムがホークカードを手にして、ビースドライバーのマックスカードと入れ替えた。
“チャージ・ホーク!ソウルショック・ソウルハート・スカイハイホーク!”
彼はホークフォルムとなって、飛行して一気にスピードを上げた。
「助けて!助けてくれー!」
必死に逃げる暴走族との距離を詰めていくバッファロービースター。彼の前にノゾムが回り込んだ。
「待てって!ちょっとは話を聞けよ!」
「どけ!邪魔をするとお前も叩きつぶすぞ!」
呼び止めるノゾムにバッファロービースターが怒鳴る。彼が突っ込んで、ノゾムにぶつかって押し込んでいく。
「人の話を聞かないのかよ・・いい加減にしないと、こっちも我慢ができなくなるぞ!」
ノゾムも怒りをあらわにして、バッファロービースターを持ち上げようとする。しかし力負けして、逆にバッファロービースターに持ち上げられて投げ飛ばされる。
「ノゾム!」
ツバキとタイチが叫ぶ先で、ノゾムが空中で体勢を整えて着地する。
「タカはスピードはあるけどパワーが足りなくなる・・だったら!」
“エレファント!”
ノゾムがビースドライバーにエレファントカードをセットして、左上のボタンをセットした。
“チャージ・エレファーント!ハイフット・ハイレッグ・ハイハイエレファーント!”
エレファントフォルムとなって、ノゾムがバッファロービースターを迎え撃つ。
「邪魔をするなと言っている!」
バッファロービースターが憎悪をむき出しにして、ノゾムに突っ込む。ノゾムはバッファロービースターの突進を受け止めて、押されずにいた。
「今のオレはパワーが上がっているぞ!」
ノゾムがバッファロービースターを持ち上げて跳ね上げた。
「ぐおっ!」
地面に叩きつけられて、バッファロービースターがうめく。彼が顔を上げて、立ち上がりながら鋭く睨みつける。
「アンタ、暴走族を片っ端から攻撃しているんだろう!?・・何でそんなことしてるんだよ・・!?」
ノゾムがバッファロービースターに問い詰める。するとバッファロービースターが体を震わせる。
「殺されたんだよ・・妹を、暴走族に・・・!」
「妹を・・・!?」
自分のことを打ち明けたバッファロービースターに、ノゾムが動揺を覚える。
「自分の暴走で誰かが傷ついたり命を落としたりしている・・それを分かろうともせずに暴走を続けている・・だからオレが滅ぼすんだ!暴走族を、世の中のゴミを!」
暴走族への憎悪をむき出しにするバッファロービースター。
「邪魔をするヤツも、容赦なく叩きつぶす・・!」
「そんなことをしても、悲しいだけだよ!」
そこへツバキが出てきて、バッファロービースターに呼びかけてきた。
「そうやって犠牲を出して、あなたは満足なの!?妹さんは喜ぶと思っているの!?」
「満足か、だと!?満足になるに決まっている!妹もきっと喜ぶ!自分を殺した暴走族が地獄に落ちるのだから!」
問い詰めるツバキにバッファロービースターが言い放つ。彼は自分の感情を貫こうとする。
「あなたが手にかけた人にも家族がいるでしょ!その家族があなたのようになって、あなたを憎むことになるかもしれない!あなたがやろうとしているのは、あなたが憎む悪い人と同じ・・!」
「違う!オレはアイツらとは違う!自分たちをしたことを棚に上げてオレを恨むなど、筋違いというもの!」
呼びかけるツバキだが、バッファロービースターは怒りをふくらませるばかりである。
「そうやって、アンタも自分が正しいと言い張るつもりか・・・!?」
彼の言動にノゾムが怒りを覚える。
「どういうつもりであっても、そういう思い上がりを、オレは許さない!」
「オレの邪魔をするなら、お前も倒す!」
ノゾムとバッファロービースターが怒鳴って、同時に飛び出す。2人がぶつかり合って互いに押し込もうとする。
「さっきよりも力が上がっている・・!?」
バッファロービースターの高まる力に、ノゾムが危機感を覚える。
セイラのことを気に病んで、ユウキは苦悩を深めていた。彼は近くで騒動が起こっていることに気付いた。
「何かあったのか?・・ビースターと、マックス・・!」
ユウキがバッファロービースターと、マックスになっているノゾムを見て感情を高ぶらせる。
「マックス・・またビースターを・・!」
マックスへの怒りを覚えたユウキが、ドラゴンビースターとなって駆け出した。彼がノゾムとバッファロービースターの間に割って入った。
「お前は!」
「今度こそお前を倒す、マックス!」
声を上げるノゾムにユウキが飛びかかる。組み付いたユウキを、ノゾムが持ち上げて投げ飛ばす。
「ま、またビースターが出てきたよ!」
タイチが慌てて、ツバキが緊張をふくらませる。
ユウキが加速してノゾムの注意を乱そうとする。ノゾムがユウキの速い打撃を受けてふらつく。
「これじゃやられる・・やられてたまるかよ!」
ノゾムが負けん気を見せて、反撃に転じようとした。
「いた・・マックスと裏切り者のビースター・・・」
そこへ声がかかって、ノゾムたちが振り向く。彼らの前に現れたのはララだった。
「ベルトとカードを取り戻して、裏切り者を倒すのが、私のやること・・・」
「コイツ、まさか・・ビースターか・・!?」
呟きかけるララを見て、ノゾムが警戒する。
「まずはベルトとカードを返してもらうよ・・・」
ララがノゾムに向かって歩き出す。
「おわっ!」
彼女が伸ばした手から放たれた衝撃波で、ノゾムが吹き飛ばされて地面に倒される。
「ノゾム!」
立ち上がるノゾムにツバキが叫ぶ。ララがノゾムに駆け寄って、足を振りかざしてキックを当てる。
「くっ・・すばしっこいヤツだ・・!」
ララの速く鋭い攻撃にノゾムが毒づく。彼の前でララが微笑みかけてきた。
「興奮してきたよ・・本気になってきたよ・・・!」
笑みをこぼすララの体に変化が起こる。彼女が赤いバラを思わせる人型の姿の怪人となった。
「マックスのベルト、いただくからね・・!」
怪人、ローズビースターになったララがノゾムに迫る。気弱だった彼女は、狂気のあふれた様子を見せていた。