仮面ライダーマックス

第18話「サイとワニの突貫!」

 

 

 ノゾムたちの前に現れて、ローズビースターとなったララ。彼女は狂気をあらわにして、ノゾムに迫った。

「バラのビースターか・・アイツも問答無用か!」

 ノゾムが思い立ってララを迎え撃つ。しかしララの速い蹴りをかわせず、押し込まれていく。

「あのビースター、マックスを追い詰めている・・!」

 ユウキがララの強さを目の当たりにして、緊張を覚える。

「彼女は私の同僚だ。任務を遂行するために、私が協力を要請したのだ。」

 ユウキの後ろにシュンが現れた。無表情の彼にユウキが振り返る。

「エックスビースの・・オレたちを狙って・・!」

「マックスはララに任せよう。私はお前の処分を行う。」

 身構えるユウキの前で、シュンがライオンビースターに変わる。彼がスピードを上げて右手を振りかざして、ユウキが両手で攻撃を受け止める。

「エックスビースは永久不変。お前たちが我々に従うしかない。」

「そうやってオレたちを思い通りにしようとするお前たちを、オレは許さない!」

 支配を強いるシュンに、ユウキが怒りをあらわにする。シュンの手を押し返すユウキだが、シュンに素早く後ろに回り込まれた。

「お前たちの許しなど気に留める価値もない。我々にそぐわない因子は排除するのみ。」

 シュンが冷たく言って、ユウキに向かって右手を振り上げる。ユウキが体を切りつけられて、宙に跳ね上げられる。

「何だかとんでもないことになっちゃったよ〜・・!」

 混迷する戦況にタイチが慌てふためく。

「どいつもこいつも、無闇やたらに突っかかりやがって・・!」

 怒りをあらわにしたノゾムが、飛びかかってきたララを、足を出して蹴り飛ばした。着地したララの前で、ノゾムがマキシマムカードを取り出した。

「コイツで一気にかたを付けてやる!」

“マキシマム!”

 ノゾムが言い放って、マキシマムカードをビースドライバーにセットした。

“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマキシマムフォルムに変身した。

「マックスのパワーアップした姿・・!」

「マックスの姿が変わった・・!」

 シュンとユウキがノゾムを見て声を上げる。

「オレの怒りは限界突破!ここからがオレの反撃だ!」

 ノゾムが言い放って、ララに向かっていく。

「それが新しいマックスね・・でもそうなっても関係ない・・私があなたからベルトを奪い取るだけ!」

 ララが笑みをこぼして、マックスを迎え撃つ。

 ララが速度を上げて足を振り上げる。ノゾムも素早くキックをかわして、彼女の体にキックを当てる。

「うっ!」

 押されて痛みを覚えて、ララがうめく。彼女がジャンプして足を振りかざすが、ノゾムが振り上げた足とぶつかり合って押し返される。

「私の力が通じないなんて・・そんなのイヤだよ!」

 いら立ちを見せたララが意識を集中する。彼女を中心に赤いバラの花びらが舞っていく。

「私の花吹雪でズタズタにしてやる・・下手によけないでよね・・ベルトまで傷つけちゃうから!」

 ララが言い放って、ノゾムに向かってバラの花吹雪を放つ。

「ベルトの心配するなら、さっさと諦めて帰れよな!」

 ノゾムが怒鳴って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ノゾムがジャンプして、エネルギーを集めた両足を突き出す。彼のキックが飛んでくる花吹雪をなぎ払って、ララの体に命中した。

「うあっ!」

 突き飛ばされたララがダメージを感じてふらつく。

「このままではララがやられてしまう・・!」

 シュンが危機感を覚えて、ユウキを突き飛ばしてからララに駆け寄る。

「まだだよ・・まだ、私は・・・!」

「こんなところでお前を失うわけにはいかない・・引き上げるぞ・・!」

 感情を高ぶらせているララを抱えて、シュンがこの場を後にした。

「アイツら・・このまま野放しにするつもりはない・・!」

 バッファロービースターは逃げた暴走族を追って走り出した。

「おい、待て!」

 ノゾムがバッファロービースターを追いかけようとするが、ユウキが行く手を阻んできた。

「ビースターを無闇に手出しはさせないぞ!」

「コイツ・・まだオレの邪魔を・・!」

 言い放つユウキに、ノゾムが怒りをあらわにする。

 ユウキが飛びかかって攻撃を仕掛ける。しかし彼のパンチとキックはノゾムに軽々と防がれていく。

「攻撃が通じないだと・・!?

「この前のオレと同じだと思わないことだな!」

 驚きを覚えるユウキに、ノゾムが力を込めて右手を繰り出す。

「ぐっ!」

 彼のパンチを受けて、ノゾムが大きく突き飛ばされて草むらの先まで飛ばされた。

「くそっ・・あのビースターにも逃げられた・・!」

 バッファロービースターにも逃げられて、ノゾムがいら立ちを噛みしめる。

「ノゾム、大丈夫!?

 ツバキがタイチと一緒に出てきて、ノゾムに駆け寄ってきた。

“スリービースト。”

 ノゾムがマックスへの変身を解いて、ツバキたちに振り返る。

「追い詰めはしたけど、ビースターみんな逃げられた・・!」

「ノゾム・・あのバッファローのビースター、とても辛くなっていた・・妹の仇を討ちたくて・・」

 悔しがるノゾムに、ツバキがバッファロービースターの心境を口にする。

「だからって、関係ないヤツを巻き込んで、それを正しいことにするなんて・・・!」

「もしかして、強い怒りと憎しみに囚われているんじゃないかな・・ビースターとしての強い力にも・・」

「それで見境をなくしているっていうのかよ・・・!?

「ノゾムだって、身勝手な人を許せないと思っているでしょ・・その気持ちがいきすぎたら、もしかしたら・・」

「オレはアイツとは違う!オレは身勝手なヤツとは違う!」

 ツバキの言葉に反発するノゾム。彼は許せないものへの怒りを貫こうとしていた。

「ノゾム・・・とりあえず、1回帰ろう・・それから出直そうよ・・」

「タイチ・・・」

 タイチが呼びかけて、ノゾムが渋々頷いた。3人は1度別荘に踊ることにした。

 

 ノゾムの攻撃を受けて突き飛ばされたユウキ。ダメージを痛感した彼は、ドラゴンビースターから人の姿に戻った。

「マックス・・前より強くなっている・・・!」

 マキシマムフォルムの強さを思い知らされて、ユウキがいら立ちをふくらませていく。

「このままやられてたまるか・・オレは、アイツに負けるわけにはいかない・・・!」

 マックスへの憎悪をさらにふくらませるユウキ。彼は体に力を入れて、強さを高めようとしていた。

 

 シュンに連れ出されて引き上げることとあったララ。シュンに押さえられて、ララは我に返っていく。

「ララ、しっかりしろ。今は冷静を取り戻せ。」

「あ、あれ?・・私、また興奮して・・・!」

 シュンに呼びかけられて、ララが動揺をあらわにする。

「ゴメンなさい、シュン・・暴力を振るうなんて・・・!」

「いや、それでいい。我々の目的に戦闘は不可欠だから。」

 赤面して謝るララに、シュンが表情を変えずに言いかける。

「ここは体勢を立て直して、もう1度出直す。次こそは連携して、マックスのベルトとカードを奪還する。」

「うん・・今度こそやってみる・・・!」

 任務について告げるシュンに、ララが頷いて決心を固めようとする。

(ララの身体能力は私に勝るとも劣らない。不安要素は情緒不安定なところだ。そこをクリアできれば完璧なのだが・・)

 ララのことを考えて、シュンは苦悩を感じていた。

 

 別荘に戻ってきたノゾム、ツバキ、タイチ。バッファロービースターの見境のない復讐に怒りを感じていたノゾムに対して、ツバキはバッファロービースターの気持ちを察していた。

「あのビースター、きちんと人の心を取り戻すことができたなら・・・」

「だとしたらオレもなってほしいとは思うな・・けど今は、アイツの強引さにオレは腹を我慢がならない・・!」

 言いかけるツバキに、ノゾムがバッファロービースターへの怒りを噛みしめる。

「アイツの目が覚めるというなら、オレが目を覚まさせる・・それが叶わないなら、今度こそオレがアイツを・・・!」

 自分の考えを口にして、ノゾムが両手を握りしめる。

(ノゾム・・ノゾムもあのビースターのことで悩んでいるんだね・・)

 揺れ動いているノゾムの心境に、ツバキも戸惑いを感じていた。

 

 連絡を受けてとあるビルに来たソウマ。彼はその地下の1室に足を踏み入れた。

「おい、ここにいるのか?」

 ソウマが声をかけるが返事はない。彼は壁に手を当てて、スイッチを入れて明かりを付けた。

 部屋には誰もいない。ソウマは目にした机の引き出しがかすかに開いていたことに気付いた。

 ソウマはその引き出しを開けた。中には2枚のカードが入っていた。

「これは、アニマルカード・・・!」

 ソウマが驚きを覚えて、アニマルカードを手にした。それぞれサイとワニが描かれていた。

「アイツ、これをオレに私ために・・」

 ソウマは戸惑いを感じながら、再び周りを見回す。しかし部屋には彼以外誰もいない。

 ソウマは引き出しの中に1枚の紙も入っていた。手にしたその手紙に彼は目を通した。

「アイツからの・・オレに渡そうとしたが、オレが来る前に何かあって、ここにいられなかったのか・・」

 感謝とやるせない気持ちを感じて、ソウマは手紙をズボンのポケットにしまった。

「ありがとう、力を貸してくれて・・オレ、戦い続ける・・ビースターは、オレが倒す・・・!」

 感謝の言葉を口にして、ソウマは部屋を飛び出した。

 

 暴走族を追って走り続けるバッファロービースター。彼は暴走族への憎悪に駆り立てられていた。

「オレがやらなければ、ヤツらはいつまでも暴走を続ける・・滅ぼさないと、妹が浮かばれなくなる・・・!」

 憎悪をむき出しにして、暴走族を探すバッファロービースター。ビースターとしての鋭い聴覚が、暴走族のバイクのエンジン音を捉えた。

「逃がしはしない・・絶対にヤツらを根絶やしにする・・!」

 暴走族を追って、バッファロービースターが走り出した。

 

 大通りを縦横無尽に走り回る暴走族。周りの人々の迷惑を気にも留めずに、彼らは走り続けた。

「さっきはおかしなバケモノが出てきたけど、もう気にしねぇぞ!」

「おかしなもんに惑わされるオレたちじゃねぇ!」

「このままどんどん突っ走れー!」

 暴走族が叫びながら、大通りを突っ走っていく。

「おい、何だ、ありゃ?」

 暴走族が前を見て目を凝らす。彼らが走る道路の先に、バッファロービースターがいた。

「あ、あれはこの前の!」

「バケモノ!?また出てきたのかよ!?

「ちくしょう!あんなヤツ突き飛ばしちまえ!」

 暴走族が驚きと緊張を感じながらも、バッファロービースターに向かって加速する。バッファロービースターが足を鳴らして、暴走族に向かっていく。

 バッファロービースターの突進が、暴走族をバイクごと突き飛ばした。倒れて損傷したバイクのうちの1台が爆発、炎上する。

「イタタタ・・なんて馬鹿力なんだ、あのバケモン・・・!」

 倒れた暴走族のリーダーが痛がりながら起き上がる。彼の前にバッファロービースターが立ちはだかった。

「何なんだよ・・何でオレらがこんな目に合わねぇといけねぇんだよ!」

「自分たちのしたことが、どれだけの人を傷付けて、どれだけの人に悲しみと怒りを植え付けたか・・分からないとでもいうつもりか!」

 声を張り上げるリーダーに、バッファロービースターが激高する。彼が手を伸ばして、リーダーの首をつかんで持ち上げる。

「オレらは、オレらのやりてぇようにやってるだけだ・・他のヤツにとやかく言われる筋合いは・・・!」

 自分は悪くないと言い張るリーダーに、バッファロービースターの怒りは頂点に達した。彼はつかんでいるリーダーの首をへし折った。

「自分が犯した罪も自覚しない・・だから滅びないといけないんだよ・・!」

 暴走族への怒りをさらに強めていくバッファロービースター。暴走族を滅ぼさない限り、誰かが自分たちと同じ悲しみを味わうことになる。彼はそう思っていた。

「人殺し!」

 そこへ1人の少女がやってきて、バッファロービースターに怒鳴ってきた。少女は涙を浮かべている目から、鋭い視線を送っていた。

「バケモノ!アンタはあたしのアニキを殺したバケモノだよ!」

「バケモノ・・!?

 少女の叫ぶ言葉に、バッファロービースターが疑問を覚える。

「アニキは凄腕の走り屋だった・・アニキにバイクで勝てるヤツは1人もいないってくらいに・・そのアニキを、アンタは!」

「そのアニキ、暴走族だったのか・・・!?

 語りかける少女にバッファロービースターが問い詰める。

「そうだよ!何にも縛られないアニキは、あたしやみんなの憧れだったんだよ!それを・・!」

「そいつらのせいで、オレとオレの妹は傷ついて悲しんだんだぞ!お前のアニキたちのやったことが間違っていると、お前も分からなかったのか!?

 怒りの声を上げる少女に、バッファロービースターが激高する。彼は少女に迫って、首をつかんで持ち上げる。

「ふざけんな!アニキを殺しておいて、自分が被害者みたいなこと言うのか!?この人殺し!アニキを返してよ!」

「被害者面をしているのはお前たちのほうだろうが!」

 憎悪を向ける少女の言動に怒りを高まらせて、バッファロービースターが彼女の首もへし折った。

「自分たちの間違いを棚に上げて、オレを悪者に仕立て上げる・・やはり許してはならない、ヤツらは・・・!」

 暴走族への憎悪をさらに強めて、バッファロービースターが手を強く握りしめた。

 そのとき、バッファロービースターは自分の妹の姿を目撃した。彼はその妹がすぐに幻だと気付いた。

 幻の妹は悲しい眼差しをバッファロービースターに送っていた。その視線が、バッファロービースターの心を揺さぶった。

(違う・・これは、お前の悲しみを終わらせるための戦いだ・・お前が理不尽に殺されたことが正しいことにされて、たまるものか・・!)

 自分の思いが間違いでないと言い聞かせて、バッファロービースターが迷いを振り切ろうとする。

 そのとき、バッファロービースターが近づいてくる足音を耳にした。彼の前に現れたのはノゾムだった。

「そのベルト・・お前、あのときの・・・!」

 バッファロービースターがノゾムがマックスであることに気付いて、警戒を見せる。

「自分が許せないヤツに怒りを思い知らせる。それはオレも納得できる・・だけど、関係ないヤツまで巻き込んで、アンタは平気なのか・・・!?

 ノゾムがバッファロービースターに向かって呼びかける。

「オレは関係ないヤツには手出ししていない・・オレは暴走族を滅ぼすだけだ・・・!」

「それでアンタが暴れたために、誰か関係ないヤツが傷ついているかもしれない・・・!」

「黙れ!そうやってオレを迷わせようとしても、そうはいかないぞ!」

 ノゾムの言葉をはねのけて、バッファロービースターが敵意を向ける。

「言っても分かんないのかよ・・・!?

“マックス!”

 ノゾムが歯がゆさを覚えて、マックスカードをビースドライバーにセットした。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。

「復讐がしたいなら、周りに迷惑のかからないようにしろ・・オレも気に入らないヤツをブッ倒すときは、そのことを気にしている・・!」

「そうやって惑わせようとしても、オレは止まらない!ヤツらはオレが滅ぼす!」

 ノゾムがさらに呼びかけるが、バッファロービースターはそれでも聞き入れない。

「アンタが力で自分を貫こうとするしかないなら、オレも力でぶつかるしかないよな!」

 ノゾムも感情をあらわにして、バッファロービースターを迎え撃つ。バッファロービースターが仕掛けた突進を、ノゾムがジャンプでかわす。

「無闇やたらに暴れられたら厄介だな・・ここは一気に・・!」

 ノゾムが必殺技ですぐに決着を着けようと考えた。

「マックス、今度こそベルトとカードを返してもらうぞ。」

 そこへシュンがララと一緒に現れて、ノゾムに声をかけてきた。

「くっ・・こうなったら、マキシマムでみんなまとめてブッ飛ばしてやる・・!」

 いら立ちを覚えるノゾムがマキシマムカードを手にした。シュンとララがライオンビースターとローズビースターになった。

“マキシマム!”

 ノゾムがビースドライバーにあるマックスカードとマキシマムカードを入れ替えた。

“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”

 彼はビースドライバーの左上のボタンを押して、マキシマムフォルムに変身した。

「オレの怒りは限界突破!オレがお前たち全員ブッ飛ばしてやる!」

「それはダメだよ・・私があなたのベルトを取り返すからね・・!」

 言い放つノゾムに対して、ララが笑みをこぼす。彼女は闘争本能を呼び起こされていた。

「1人で突っ走るな、ララ。2人でマックスを押さえる。」

 シュンがララに注意を投げかけて、ノゾムを彼女と挟み撃ちにする。

「いいぜ・・まずはお前たち2人からだ!」

 ノゾムがいきり立って、シュンとララを迎え撃つ。シュンたちがスピードを上げて、ノゾムに向けて打撃を連続で繰り出す。

 ノゾムは攻撃をはねのけながら、シュンたちに反撃を仕掛ける。しかし1人を攻めてももう1人からの襲撃に見舞われて、ノゾムは攻め立てることができないでいた。

「オレは暴走族を滅ぼす・・オレがやらなければならない・・・!」

 バッファロービースターがノゾムたちを無視して、暴走族を追いかけようとした。

「1人だけどっかに行くつもりか?」

 だが声をかけられて、バッファロービースターが足を止めた。振り向いた彼の視線の先に、ソウマが現れた。

「ビースターは1人も逃がしはしない・・オレが全員倒してやる!」

 ソウマがバッファロービースターに言い放ってから、フォックスカードを取り出した。

“フォックス!”

 彼がフォックスカードをビースドライバーにセットした。

「変身!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ソウマがフォックスに変身した。

「お前もあの仮面のヤツの仲間か・・邪魔をするならお前も容赦しないぞ!」

「容赦はしないのはこっちのセリフだ・・ビースターは誰だろうと逃がしはしないぞ!」

 バッファロービースターとソウマが言い放って、同時に駆け出す。ソウマが素早くジャンプして、バッファロービースターの突進をかわす。

「速さはあるけど直線的だ。オレがかわすのは簡単だな。」

 着地したソウマがバッファロービースターに目を向けて笑みをこぼす。

「オレは妹の仇を討つ・・それを邪魔するなら、オレはそいつも倒す!」

 バッファロービースターが憎悪をむき出しにして、再びソウマに向かって突っ込む。

「仇を討つ?・・ビースターがそんなきれいごとを!」

 ソウマも怒りをふくらませて、バッファロービースターの突進をかわそうとジャンプする。だがバッファロービースターが手を伸ばして、ソウマの足をつかんだ。

「何っ!?

 驚くソウマがバッファロービースターに引っ張られて、投げ飛ばされて地面に落下する。立ち上がろう彼に向かって、バッファロービースターが突っ込んできた。

「ぐあっ!」

 ソウマが突き飛ばされて、大きく地面を転がる。ダメージを大きくしながらも、ソウマは再び立ち上がる。

「倒れるものか・・オレは、1人じゃないからな・・・!」

 ソウマが力を振り絞って、サイのアニマルカード「ライノスカード」を手にした。

「速さだけじゃなく、力も負けはしない!」

“ライノス!”

 彼がビースドライバーにライノスカードをセットして、左上のボタンを押した。

“チャージ・ライノース!サイパワー!サイスピード!ハイスピード・ライノース!”

 ソウマのまとうフォックスのスーツが灰色になって、マスクもサイを思わせる模様となって、額の部分に角が生えた。

 サイのスピードとパワーを持った姿「ライノスフォルム」である。

「オレの強さは疾風迅雷!パワーが合わさった今のスピードは、誰にも止められない!」

 ソウマが言い放って、バッファロービースターに向かって走り出す。

「何をしてきても、オレのやることが変わることはない!」

 バッファロービースターがいきり立って、ソウマを迎え撃つ。彼とぶつかり合っても、ソウマは押されない。

「サイの力を、オレの仲間の思いを押し返せるものか!」

 ソウマが力を込めて、バッファロービースターを押し返す。

「おあっ!」

 バッファロービースターが突き飛ばされて、倒れて地面を転がる。

「くっ・・オレは倒れない・・こんなところで、倒れるわけにはいかないんだ・・・!」

 声と力を振り絞って立ち上がるバッファロービースター。彼は力を込めて、ソウマに向かって突撃する。

「オレはビースターを倒す・・オレたちの全てを狂わせたビースターは、誰1人野放しにはしない!」

 ソウマも怒りの声を上げて、バッファロービースターの突進をかわす。ソウマはバッファロービースターの横に回って、突進を仕掛けて突き飛ばした。

「次はコイツを使う・・一気に畳み掛ける!」

 ソウマがとどめを刺そうと、ワニのアニマルカード「クロコダイルカード」を手にした。

“クロコダイル!”

 彼はビースドライバーにクロコダイルカードをセットして、左上のボタンをセットした。

“チャージ・クロコダーイル!クロコブレイク!クロコドライブ!スラッシュ・クロコファング!”

 ソウマの手元に1本の剣が現れた。ワニの歯を思わせる形状の刀身をしている。

 ワニの剣「クロコファング」である。

「コイツで素早く切り裂く!」

 ソウマがクロコファングを構えて、バッファロービースターに飛びかかる。振りかざされるクロコファングの刃が、バッファロービースターを斬りつけていく。

「オレが倒れたら、暴走族どもがのさばることになる・・負けられないんだよ!」

 バッファロービースターが声と力を振り絞って、ソウマに向かって飛びかかる。

「ビースターなのに正義の味方気取り・・ふざけるのも大概にしろ!」

 ソウマが怒りをあらわにして、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“クロコダイルチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ソウマの構えるクロコファングの刀身にエネルギーが集まっていく。彼が振り下ろしたクロコファングが、バッファロービースターを切り裂いた。

「がはぁっ!・・まだだ・・まだオレには、やるべきことが・・・!」

 バッファロービースターがうめきながら、倒れまいとする。ソウマが彼にさらにクロコファングを振りかざした。

 声にならない叫びを上げるバッファロービースター。強い決意と裏腹に倒れて、彼は爆発を起こして消滅した。

「ソウマ・・あのビースターを倒したのか・・!?

 ノゾムがソウマを見て声を上げる。シュンもソウマに目を向けて、状況を見計らって判断を下す。

「引き上げるぞ、ララ・・2対2では優位には立てない・・!」

「シュン・・思い切り相手をするのは、また今度ね・・・!」

 シュンの呼びかけを聞き入れて、ララも引き上げる。2人をあえて追いかけず、ノゾムがソウマに振り返る。

「あのビースターはワケありだったんだぞ・・ツバキも、アイツのことを気にしていた・・・!」

「ビースターの考えていることなど聞く耳を持たない・・ビースターは1人残らず、オレが倒す・・・!」

 バッファロービースターのことを言いかけるノゾムに、ソウマはビースターへの怒りを口にする。

「オレたちの全てを壊したビースターを、オレは絶対に許さない・・・!」

 ソウマは声を振り絞って、ノゾムの前から立ち去っていった。

「ソウマ・・・」

 かつての自分よりもビースターを強く憎んでいるソウマに、ノゾムはやるせない気分を感じていた。

 

 

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