仮面ライダーマックス
第16話「ビースターの仕業!?」
この日は日食の起こる日。太陽が月に隠れて、昼間の空が一瞬暗くなる。
ツバキ、タイチ、ワタルは日食を見に動物公園の外に出ていた。ノゾムは乗り気でなく、ツバキたちについていかなかった。
「ノゾムお兄ちゃんも来ればよかったのに・・」
「ノゾムは騒がしいのが好きじゃないからね。見るとしてもこういう、みんなの集まるところには来ないよ。」
肩を落とすワタルに、タイチが苦笑いを見せる。
「見て!太陽が欠け始めたよ!」
ツバキが声をかけて、タイチたちが空を見上げた。日食が始まって空が暗くなり始めた。
日食の瞬間を、ノゾムも動物公園で見ることになった。
「日食って、ただ昼間なのに暗くなるだけじゃないか。それだけでわざわざ騒ぐなんて・・」
ため息まじりに呟きながら、ノゾムは仕事を続ける。しかし暗くなっていって、仕事がままならなくなる。
「ダメだな。こりゃちょっと休憩入れないとな・・」
ノゾムは肩を落として、日の明かりが戻るまで小休止することにした。彼は近くの壁に寄りかかって、空を見上げた。
そのとき、ノゾムは日食で陰った太陽の前を、1つの光が飛んで横切るのを目にした。
「何だ、あの光は・・?」
ノゾムがその光に対して疑問を覚える。何かあるのではないかと彼は勘繰っていた。
暗闇が晴れて、日の光が戻って日食が終わりを迎えた。ツバキたちがこの光景に安らぎと幸せを感じていた。
「いやぁ、すごかったね〜♪実際にあんなすごいのを見たなんてね。」
「ホントに昼間なのに真っ暗になっちゃうんだね。ビックリしちゃったよ〜♪」
タイチとワタルが驚きと感動を分かち合う。
「ノゾムお兄ちゃんもどこかで見てたかな?ソウマお兄ちゃんも・・」
「うん・・前の戦いから、すっかり落ち込んで・・」
ワタルがソウマのことを気にして、ツバキが心配する。
シュンに歯が立たず、ノゾムが変身したマキシマムフォルムを目の当たりにしたソウマ。やるせない気分を感じた彼は、ノゾムにマキシマムカードを預けたまま去っていった。
「ところであのマキシマムのカード、どうやって使えるようになったの?」
「詳しくは分からない。ノゾムは感情を込めたら使えるようになったと言っていたけど・・」
疑問を投げかけるワタルに、タイチがノゾムの言っていたことを思い出して伝える。
「感情を込めたら使えた・・感情をキャッチするものなのかな、あのカードは・・?」
マキシマムカードへの疑問をふくらませていくツバキ。マキシマムカード、さらにアニマルカードは謎の部分が多く残されていた。
「じっくり1つずつ解決していけばいいんじゃないかな。ハッキリしてくるよ、みんな。」
「そうね・・そのうち分かるようになってくるよね・・」
タイチに励まされて、ツバキが微笑んで頷いた。
そのとき、近くから違う様子の騒ぎが聞こえてきて、ツバキたちが振り向いた。人々が突然逃げ惑い、1人の男が追い回していた。
「な、何!?何があったの!?」
ワタルがこの事態に動揺を見せる。男は狂気をあらわにして、右手に持った剣を振り回していた。
「ちょっと!あれってまずくないかな!?」
「危ないから早く逃げよう!」
タイチとツバキが声を上げて、ワタル、ワオンとともに男から慌てて逃げ出す。男が剣を振り回して、彼らのほうへ走ってきた。
「何でこっちに来るのー!?」
タイチが男を後ろ目で見て悲鳴を上げる。その男が、駆けつけた警官たちに囲まれて足を止めた。
「今のうちに急いで逃げよう!」
ツバキが呼びかけて、タイチたちと足を速めた。
日食が終わって、ノゾムは仕事を再開していた。彼は気分を落ち着けていって、笑みをこぼした。
「ノゾムー!」
そのとき、ツバキたちが慌てて駆けつけて、ノゾムの前で立ち止まった。
「どうしたんだ、お前たち?そんなに慌てて・・」
ノゾムが疑問を感じて、ツバキたちに声をかける。
「お、男が剣を持って暴れ回って・・何とか逃げ切ってきたんだ・・!」
「は?男が剣を持ってって・・ビースターじゃないんだろう?・・エックスビースか・・?」
タイチが慌てて説明して、ノゾムがさらに疑問を感じていく。
そこへ剣を持った男がやってきた。彼は警官たちを撃退して、ツバキたちに追いついた。
「ええっ!?警官、捕まえられなかったの〜!?」
ワタルが男を見て驚きの声を上げる。
「コイツのことか・・オレたちにそんなもの振り回そうとするなら、オレはお前を許さないぞ・・!」
ノゾムが目つきを鋭くして言いかける。しかし男は狂気をあらわにして剣を構える。
「言うことを聞かない・・獣にでもなったっていうのかよ・・・!?」
“マックス!”
ノゾムがいら立ちをふくらませて、マックスカードをビースドライバーにセットした。
「待って、ノゾム!相手はビースターじゃないよ!」
ツバキが慌ててノゾムを呼び止める。
「ビースターだろうと人間だろうと、襲ってきたなら相手をしてやるだけだ!わざわざ斬られてやるつもりはない!」
ノゾムは聞かずに男に視線を戻す。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。彼が男が振り下ろした剣を左腕で受け止めた。
「ぐっ!」
ノゾムが痛みを覚えて、とっさに男から離れた。
「ノゾムお兄ちゃん!?」
後ずさりするノゾムに、ワタルが声を上げる。
「あの剣、ただの剣じゃないみたいだぞ・・・!」
痛みを感じている左腕を気にしながら、ノゾムが呟きかける。男が不気味な笑い声を上げて、ノゾムに向かって突っ込んできた。
「あの剣を何とかしないといけないみたいだな・・!」
ノゾムが男の持つ剣に目を向けた。ノゾムが足を振り上げて、男の手に当てて剣をはじき飛ばした。
すると男がおとなしくなって、脱力してその場に膝をついた。
「あれ?・・オレ、何でこんなところに・・・?」
「ん?・・覚えてないのか・・?」
周りを見回す男に、ノゾムが疑問符を浮かべる。男は剣を手放す前とは別人のような様子に変わっていた。
「アンタ、その剣を持ってオレたちを襲ってきたんだぞ・・」
「えっ!?オレがあなたたちに!?」
ノゾムから話を聞いて、男が驚いて動揺する。
「何も覚えてないみたいだよ・・」
「まさか、あの剣に操られていたなんてこと、ないよね・・・?」
タイチがあ然となって、ワタルが剣を指さす。
「ちょっと調べてみたほうがいいかな・・」
ツバキが恐る恐る剣を拾おうと近づく。そのとき、落ちていた剣から光が出て、突然宙に浮いた。
「えっ!?」
「な、何っ!?」
ツバキとタイチが驚きの声を上げる。剣は彼らの前から飛び去った。
「よく分かんないが、このまま逃がすか!」
“スリービースト。”
ノゾムがマックスへの変身を解除してから、剣を追いかけた。
「ノゾム、待って!」
ツバキがノゾムを追って走り出した。
飛んでいく剣を追って、森の中に入ったノゾム。ツバキとタイチも彼についていった。
「あの剣、どこへ行ったんだ・・・!?」
ノゾムが剣を捜して周りを見回す。
「ここ、ちょっと怖い・・墓がいっぱいあって・・・」
ツバキも周りを見回して、不安を覚える。3人のいる森の中には、いくつもの十字架が置かれていた。
「危ない!」
そのとき、ノゾムがとっさに動いて、ツバキとタイチに飛びついた。直後、光の剣が飛び込んで、彼らがいた先の十字架に当たって爆発させた。
「な、何だ、今度は!?」
タイチが爆発のしたほうを見て慌てる。舞い上がる煙の中から、1人の男が現れた。鎧のような鱗の体と白い顔をしていて、マントをなびかせていた。
「誰だ、アンタは!?おかしな格好をして・・!」
ノゾムが男に向かって問いかける。
「我が名は剣聖ビルゲニア。貴様がビーストライダー、マックスだな?」
男、ビルゲニアが名乗って、ノゾムに問い返す。彼は腰に下げていた鞘から剣を引き抜いて、ノゾムに切っ先を向けた。
「その剣・・お前の剣だったのか・・!」
ノゾムが剣を見て警戒を見せる。
「まずは貴様を葬り、他のライダーを倒す足がかりとしてくれる。」
「何だかよく分かんないが、オレたちにおかしなマネをするのには納得いかないな・・さっさと帰らないと容赦しないぞ・・・!」
敵意を見せるビルゲニアに、ノゾムが鋭い視線を向ける。
「今のうちに大口を済ませておくのだな。オレの力を思い知り、2度とそのような口は叩けなくなるのだからな。」
ノゾムをあざ笑って、ビルゲニアが剣「ビルセイバー」を構える。
「お前たちは離れてろ!」
ツバキたちに呼びかけて、ノゾムが迎え撃つ。ビルゲニアが振り下ろすビルセイバーを、ノゾムとツバキたちがよける。
「はっ!」
ビルゲニアがさらにビルセイバーを振りかざして、ノゾムがかわす。ビルセイバーが十字架をななめに切り裂いた。
「すごい切れ味だな・・!」
“マックス!”
ノゾムが毒づきながら、ビースドライバーにマックスカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、マックスに変身した。
「ビースターじゃないみたいだが、お前のようなヤツは許せない・・関係ないヤツを使って、オレを襲わせるお前はな!」
「貴様らライダーをおびき寄せるためにやったまでだ。貴様はそれに引っかかったのだ。」
怒りの声を上げるノゾムを、ビルゲニアがあざ笑う。
ビルゲニアが振りかざすビルセイバーをノゾムが回避する。だが速く動くビルセイバーに、ノゾムのまとうマックスのスーツが切られて火花を散らす。
「やってくれるな・・お前が剣なら、こっちも・・!」
“シャーク!”
ノゾムがビースドライバーにあるマックスカードとシャークカードを入れ替えて、左上のボタンを押す。
“チャージ・シャーク!シャーシャーシャーシャー・シャークソード!”
彼はシャークソードを手にして、ビルゲニアに向かっていく。2人が振りかざす剣が強くぶつかり合う。
ノゾムがいら立ちを噛みしめて、シャークソードを振りかざす。この一撃を、ビルゲニアが盾「ビルテクター」で防いだ。
「何っ!?ぐっ!」
驚くノゾムがビルテクターに押されて突き飛ばされる。しりもちをついた彼を見下ろして、ビルゲニアが笑みを浮かべる。
「ビルセイバー・ダークストーム!」
ビルゲニアがビルセイバーを振りかざして、嵐のような突風を放つ。ノゾムが突風にあおられて吹き飛ばされて、大木の幹に叩きつけられる。
「ノゾム!うわっ!」
叫ぶタイチがツバキと一緒に突風に押されて、地面を転がる。
「なんて風を起こすんだ・・それで参るオレじゃないぞ!」
ノゾムが言い放って、ジャンプして突風をかわす。
“シャークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、シャークソードにエネルギーを集めるノゾム。彼はビルゲニアへ飛び込んで、シャークソードを振りかざす。
ビルゲニアはビルテクターでシャークソードを受け止める。だがシャークソードの威力で、ビルテクターがビルゲニアの手からはじき飛ばされる。
「おのれ、マックス・・こしゃくなマネを・・!」
ビルゲニアがいら立ちを浮かべて、空に左手を掲げた。
「オレの下へ来い、サタンサーベルよ!」
ビルゲニアが空に向かって呼びかける。その空から赤い光が飛んできて、彼の左手に引き寄せられた。
「またおかしな剣が出てきたか・・!」
ビルゲニアが手にした赤い刀身の剣「サタンサーベル」を見て、ノゾムが毒づく。
「光栄に思うがいい・・このサタンサーベルに斬られてあの世に行けるのだからな!」
ビルゲニアが笑みを浮かべて、サタンサーベルとビルセイバーを交差させた。
「サタンクロス!」
言い放つビルゲニアが掲げたサタンサーベルとビルセイバーから、稲妻のようなビームが放たれる。
「うあっ!」
ビームが当たった地面から爆発が起こって、ノゾムが跳ね上げられる。
「キャッ!」
ツバキも爆発の衝撃に悲鳴を上げて、タイチもさらに地面を転がる。
「さっきよりも強力な攻撃だ・・とんでもないヤツだ・・!」
ノゾムが立ち上がって、危機感を覚える。ビルゲニアが2本の魔剣を構えて、彼に迫ってきた。
ビルゲニアが振りかざす剣2本を、ノゾムが回避したりシャークソードで受け止めたりした。しかし回避が間に合わず、マックスのスーツが切りつけられる。
「ちくしょうが・・いい気になるな!」
“ガンガン・シャークガーン!”
ノゾムが怒りの声を上げて、シャークソードをガンモードにして、ビルゲニアに向けて発砲した。だがビルゲニアのサタンサーベルとビルセイバーに射撃をはじかれる。
「見事だ、マックス。オレをここまでさせたのだからな・・だが、これで終わりだ!」
ビルゲニアが笑い声を上げて、ノゾムに迫る。
「いつまでもいい気になれると思うな・・お前はオレがブッ倒す!」
ノゾムが怒鳴って、シャークソードを置いて、ビースドライバーにあるシャークカードとマックスカードを入れ替えた。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムがビルゲニアに向かってジャンプする。ビルゲニアがサタンサーベルとビルセイバーを交差させて、ノゾムのキックを受け止めた。
「このキックも効かないだと!?」
「サタンクロス!」
驚くノゾムを、ビルゲニアがビームを放って吹き飛ばす。
「ぐあっ!」
ノゾムがうめいて地面に叩きつけられる。
「ノゾム!」
倒れたノゾムにツバキが叫ぶ。体を駆け抜ける痛みに耐えながら、ノゾムが立ち上がる。
「貴様たちが何をしようとムダなあがきにしかならん。おとなしくするなら楽に死なせてやるぞ。」
ビルゲニアが勝利を確信して、2本の剣を構える。
「オレのことを勝手に決めるな・・オレのすることはオレが決めるんだよ!」
ノゾムが言い返して、マキシマムカードを手にした。
「頼むぞ、マキシマム・・オレに力を貸してくれ・・・!」
“マキシマム!”
彼がビースドライバーにマキシマムカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”
マキシマムカードが起動して、マックスのスーツの模様とマスクの形状がマックスフォルムよりも刺々しいものとなった。
「オレの怒りは限界突破!今度こそお前をブッ倒す!」
ビルゲニアに向かって言い放つノゾム。彼はマキシマムフォルムへと変身した。
「姿が変わったところで、オレに勝てると思うなよ!」
ビルゲニアがあざ笑って、ノゾムに向かっていく。彼が振りかざすサタンサーベルとビルセイバーを、ノゾムは素早くかわしていく。
ノゾムが繰り出したパンチがビルゲニアの体に命中した。痛みに顔をゆがめたビルゲニアが、後ろに押される。
「おのれ!」
形勢を逆転されて、ビルゲニアがいら立ちを見せる。
「サタンクロス!」
ビルゲニアがサタンサーベルとビルセイバーからビームを放つ。ノゾムはジャンプしてビームと爆発をかいくぐった。
ノゾムが一気に詰め寄って、ビルゲニアに連続でパンチを叩き込んでいく。
「ごっ!」
ノゾムの連続攻撃で、ビルゲニアが強く突き飛ばされる。ダメージが増した彼が立ち上がって、ノゾムを鋭く睨みつける。
「オレこそが世界を支配するにふさわしい・・ライダーなどに負けてたまるか・・・!」
声と力を振り絞って、ノゾムに憎悪を向けるビルゲニア。彼の言葉と考えに、ノゾムも怒りを覚える。
「自分が正しいと思い上がる連中・・人間でもそうじゃなくても、そいつはオレが倒すべき敵だ!」
ノゾムが怒りの声を叫んで、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがジャンプして、エネルギーを集めた両足を前に出す。
「サタンクロス!」
ビルゲニアがサタンサーベルとビルセイバーからビームを放って迎え撃つ。ノゾムのキックはビームをはじいて、ビルゲニアの体に叩き込まれた。
「ぐあっ!」
ビルゲニアが大きく蹴り飛ばされて、ノゾムから引き離される。
「マックス、これで勝ったと思うな!次こそは必ず貴様を倒してやるぞ!」
ノゾムに言い放つと、ビルゲニアが屈辱を抱えたまま姿を消した。
「逃げられたか・・何だったんだ、アイツは・・!?」
ノゾムがビルゲニアに対して怒りをふくらませる。次に会ったときに必ず倒すことを、ノゾムは心に誓った。
「ノゾム!」
ツバキがタイチと一緒にノゾムの前に駆け込んできた。
「大丈夫か、ノゾム!?」
「あぁ・・体は何ともない・・」
タイチが心配の声をかけて、ノゾムが頷く。
「今度会ったら、逃がさずにブッ倒してやるからな・・・!」
ビルゲニア打倒を心の中で決めて、ノゾムは怒りを燃やしていた。
ノゾムに返り討ちにされたビルゲニア。彼はノゾムへの憎しみを感じていた。
「おのれ、マックス・・このままでは済まさん・・このビルセイバーと、サタンサーベルで切り裂いてくれる!」
ビルゲニアが怒りの声を上げて、サタンサーベルに目を向けた。
そのとき、サタンサーベルが突然赤く光り出した。
「何っ!?うおっ!」
驚くビルゲニアの手からサタンサーベルが離れた。
「ま、待て!」
サタンサーベルを追いかけるビルゲニア。その先には1人の男が立っていた。
銀の鎧のような体をした男は、ビルゲニアから離れたサタンサーベルを手にしていた。
「き、貴様は・・!?」
ビルゲニアが男を目の当たりにして身構える。
「サタンサーベルを勝手に持ちだすとは・・だが貴様では到底使いこなすことはできん。」
「ふざけるな!サタンサーベルはオレのものだ!世界の支配者になる男もな!」
言いかける男にいら立って、ビルゲニアがビルセイバーとビルテクターを手にして、サタンサーベルを奪い返そうとする。
「貴様がそれだけの器だというならば、この剣を見事取ってみるか?」
「おのれ・・ビルセイバー・ダークストーム!」
挑発する男へのいら立ちをふくらませて、ビルゲニアがビルセイバーを振りかざして突風を放つ。しかし男は押されることなく微動だにしない。
「それで終わりか?その程度では私からサタンサーベルは奪えないぞ。」
「おのれ・・オレこそが、サタンサーベルを持つにふさわしい!」
さらに挑発する男に怒りをあらわにして、ビルゲニアが飛びかかる。彼が振り下ろしたビルセイバーを、男がサタンサーベルで受け止める。
「私に従え。そうすれば今回の独断専行とこの反抗、許してやってもいいぞ?」
「黙れ!貴様に従うくらいなら、死んだほうがマシだ!」
男が投げかける言葉をはねつけて、ビルゲニアが光になって周囲を飛び交う。さらに光の剣になって、彼は男に向かっていく。
「ならば地獄に戻るがいい。」
男がサタンサーベルを振り下ろす。彼の一閃はビルセイバーをはじき飛ばして、さらにビルテクターを両断してビルゲニアの体を切り裂いた。
光の剣から元の姿に戻ったビルゲニアが、致命傷を手で押さえて男に振り返る。
「全てを支配するのはこのオレだ・・決して、貴様などではない・・シャドームーン!」
男、シャドームーンへの憎悪の叫びを上げて、ビルゲニアが倒れて爆発を起こした。消滅した彼にシャドームーンは背を向けた。
「所詮貴様は、地球を支配する器ではない。地球の支配者となるのはこのシャドームーンだ。」
シャドームーンが呟いて歩き出す。重みのある彼の足音がこの場に響き渡る。
「我々の最大の障害となる仮面ライダーは、この手で全て葬り去る。マックスも、ヤツも必ず・・」
野心を口にして左手を握りしめるシャドームーン。彼の暗躍と戦いの幕が今、上がろうとしていた。
ビースター以外の異形の存在の出現と暗躍。
新たなる脅威との戦いに、ノゾムたちも巻き込まれようとしている。
そしてノゾムたち以外のライダーの存在。
黒き戦士の新たなる伝説が始まろうとしていた。