仮面ライダーマックス

第15話「マキシマム発動!」

 

 

 シュンの戦闘能力に苦戦を強いられるソウマ。彼は1枚のアニマルカードを取り出して、この窮地を乗り切ろうとしていた。

「今まで使えたことはないけど・・今度こそ使ってみせる・・!」

“マキシマム!”

 ソウマがビースドライバーにあるフォックスカードとアニマルカード「マキシマムカード」を入れ替えた。彼はビースドライバーの左上のボタンを押した。

 だがビースドライバーから何の反応もなく、ソウマの変身しているフォックスに変化もない。

「使えない!?どうしてだよ!?こんな大事なときに!」

 ソウマが感情をあらわにして、ボタンをさらに押す。しかし何度ボタンを押しても、何の変化も起きない。

「使えないアニマルカード・・!?

 ノゾムもマキシマムカードに対して驚きを覚える。

「何を企んだのかは知らないが、まだムダな時間だったようだ。」

 シュンがため息をついてから、ソウマに飛び込んで体にキックを叩き込んだ。

「がっ!」

 ソウマが突き飛ばされて、強く壁に叩きつけられる。

“スリービースト。”

 倒れた彼からフォックスの変身が解けた。

「ソウマ!」

 ダメージの増して起き上がれないでいるソウマに、ノゾムが声を上げる。そこへガンが突っ込んで、ノゾムが地面を転がる。

「君もベルトを渡さないとああなっちゃうよ・・」

 ガンが笑みを浮かべてノゾムに迫る。

「ここでやられるわけにいかない・・!」

“タイガー!”

 ノゾムがいら立ちを見せながら、ビースドライバーにタイガーカードをセットして、左上のボタンを押した。

“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”

 彼が呼び出したタイガーランナーが駆けつけてきた。

「逃げる気かー?そうはさせないぞー・・」

 ガンがノゾムを捕まえようとするが、彼に足先をキックされてバランスを崩す。

「うわっ!」

 また仰向けに倒れて、ガンは起き上がれなくなる。その間にノゾムはタイガーランナーに乗って、ソウマのそばに駆けつける。

「乗れ、ソウマ!」

「ノゾム・・・!」

 ノゾムが呼びかけて、ソウマがうめきながら彼の後ろに乗る。タイガーランナーが走り出して、この場を後にした。

「マックスめ。小賢しいことを・・」

 シュンが毒づいて、人の姿に戻る。

「何度も助けたりしないぞ。いい加減に自力で立て。」

 ガンも注意して、シュンはこの場を立ち去る。

「そ、そんな〜・・待ってくださいよ〜・・!」

 悲鳴を上げるガンが人の姿に戻って、ようやく起き上がる。

「浜松さん、置いていかないでください〜・・!」

 ガンが慌ててシュンを追いかけていった。

 

 ノゾムに支えられて戻ってきたソウマを目の当たりにして、ツバキ、タイチ、ワタル、ワオンが駆けつけた。

「ノゾム、ソウマくん、大丈夫!?

「オレは大丈夫だ・・だけど、ソウマが・・!」

 心配するツバキに答えて、ノゾムがソウマに目を向ける。

「ソウマお兄ちゃん、どうしたの!?どこかケガしたの!?

「そうじゃない・・このカードが使えなかったんだ・・・!」

 ワタルも心配すると、ソウマがマキシマムカードを手にして見せた。

「これはアニマルカード・・でも、動物が描かれていない・・!」

「マキシマムのカードだ・・他のアニマルカードとは違うカードで、強い力をもたらすみたいだ・・でも何度やっても使えない・・」

 マキシマムカードを見つめるツバキに、ソウマが語りかける。

「マキシマムカード・・ノゾムお兄ちゃんも使えないの!?

「オレとノゾムのベルトは同じものだ・・ノゾムのでやっても結果は同じだ・・!」

 ワタルが投げかけた疑問を、ソウマがいら立ちを噛みしめて突っぱねる。

「やりもしないで勝手に決めるのは納得いかないな・・オレに使わせろ・・!」

 ノゾムが不満げに言って、マキシマムカードを手にした。

“マキシマム!”

 彼は自分のビースドライバーにマキシマムカードをセットして、左上のボタンを押した。しかし何度ボタンを押しても、何も起こらない。

「オレでも使えないっていうのか・・・!?

 ノゾムが驚きを感じながら、ビースドライバーからマキシマムカードを取り出す。

「どういうカードなのかな?・・ベルトにセットしても使えないカードなんて・・・」

 ツバキがマキシマムカードを手にして、戸惑いを覚える。

「他にも何かが必要ってこと?ベルトじゃなくて違うものに使うとか・・」

「でもベルト以外にカードを入れるものなんて・・」

 ワタルとタイチがいい方法を考えようとして、疑問符を浮かべる。

「バイクにもカードを入れる所はなかったし・・何か他にカードを入れられるものがあるのか・・?」

「そんな話は聞いたことないよ・・オレが忍び込んだ施設の部屋に、他にベルトやカードの役に立ちそうなものはなかったし・・」

 ノゾムが疑問を投げかけて、ソウマが記憶を確かめながら答える。

「謎が謎を呼ぶって感じで・・どうしたらいいのか、分かんなくなるよ〜・・」

 タイチが頭を抱えて悲鳴を上げる。

「謎なのは他にもある・・ノゾムがビースターに肩入れしたことだ・・」

 ソウマが言いかけて、ノゾムに目を向ける。2人が互いに鋭い視線を向け合う。

「ノゾムお兄ちゃんは、ビースターそのものじゃなくて、身勝手な人を倒そうとしてきたんだよ・・パパとママの仇のビースターも、そういうヤツだったから・・」

「そうか・・ノゾムはそういう考えの持ち主だ・・」

 ワタルの話を聞いて、タイチが納得する。

「だったら迷うことないだろうが!ビースターはみんなそういうヤツらだ!」

 ソウマが感情を込めて言い放つ。彼はビースターへの憎悪をむき出しにしていた。

「ちょっと前だったらそう思っていたところだが・・やっぱり何も考えずにビースターをぶっ潰していくのは気が引ける・・もちろん、オレの前に現れたビースターが身勝手なヤツだったら、オレは容赦しないけどな・・」

「ノゾム・・あなた・・・」

 自分の正直な考えを口にするノゾムに、ツバキが戸惑いを見せる。

「ビースターに容赦する必要はない・・ちょっとでも気を許せば、ビースターはそこを付け込んでくる・・・!」

 ソウマがいら立ちを見せて声を振り絞る。

「そういうヤツだけを、オレは倒していく・・オレはこのやり方を貫く・・・」

 ノゾムはそう言うと、ツバキたちの前から立ち去っていった。

「ノゾムお兄ちゃん・・・」

「今はそっとしておこう。気分が落ち着いたら戻ってくるよ、ノゾムは・・」

 心配をふくらませていくワタルの肩に優しく手を乗せて、タイチが言いかける。彼はノゾムの心境を理解して、あえて見送ることにした。

 

 別荘にて、ユウキとともに休息を取っていたセイラ。彼女はノゾムのことを気にして、窓越しに外を見つめていた。

(セイラ、まだ深く考え込んでいるみたいだ・・まだマックスのことを・・・?)

 セイラの考えていることを気に掛けて、ユウキが不安を感じていく。

「あまり思いつめないほうがいい・・体が休めても気が休まらないよ・・」

 ユウキが心配の声をかけると、セイラが彼に振り向く。

「ありがとう、ユウキ・・そうね。迷ってばかりなのもよくないよね・・」

 セイラは苦笑いを浮かべて、窓から離れてドアへ向かう。

「ノゾムさんが近くにいるみたい・・私、行ってくる・・」

 セイラはノゾムに気付いて、外へ飛び出した。

「セイラ・・ノゾムくん・・・」

 ノゾムのことも気にして、ユウキはさらに苦悩を深めた。

 

 1人歩くノゾムの前にセイラが駆けつけてきた。

「セイラ・・・」

「ノゾムくんが近くに来たのが分かったから・・」

 足を止めたノゾムに、セイラが言いかける。

「ビースターの力で、オレが来たことに気付いたのか・・・?」

 ノゾムが投げかけた問いに対して、セイラが思いつめた顔を浮かべて口ごもる。

「アンタのことを知らなかったら、オレは一方的にビースターを敵だと決めつけてたと思う・・オレが憎んでいたのはビースターそのものじゃなく、身勝手なヤツのほうだったんだ・・」

「ノゾムさん・・・」

 自分の正直な考えを告げるノゾムに、セイラが戸惑いを見せる。

「ビースターだからアンタを憎む、なんてことはしない・・まずは面と向かって、そのビースターのやることや考えていることが納得いかなかったときに、オレはそいつを憎む・・」

「私と同じ思いを持っているんですね、あなたは・・そして、あの人も・・」

 ノゾムの言葉を聞いて、セイラが物悲しい笑みを浮かべた。彼女の口にした言葉に、ノゾムが一瞬疑問を覚えた。

「ここにいたか、金子セイラ。」

 そこへシュンとガンが現れて、ノゾムとセイラが緊張を覚える。

(あのビースター・・見つかった・・!)

 シュンに見つかって、セイラがたまらず後ずさりする。

「今回は逃がしはしない。まずはお前を始末する。」

 シュンがセイラを狙って歩を進める。

(ヤツらの狙いはコイツか・・オレがヤツらをブッ倒して・・!)

「ノゾムさんは逃げて!」

 シュンたちと戦おうとしたノゾムに、セイラが呼びかけてきた。

「私が食い止めるから、あなたはその間に!」

「ふざけんな!それじゃお前が!」

 キャットビースターになったセイラに、ノゾムが怒鳴りかかる。

「あなたに何かあったら、みなさんが悲しむ!だからあなたは逃げて!」

 セイラがさらに叫んで、シュンに向かって飛びかかる。シュンは正確に動いて、セイラの攻撃をかわす。

「セイラ・・・くそっ!」

 ノゾムは納得いかないまま、セイラの言う通りにして走り出した。

「逃がさないよ〜!」

 ガンが追いかけようとするが、ノゾムよりも遅く距離を離されることになった。

 

 セイラたちから少し離れて、ノゾムは足を止めた。彼女の目の届かないところで、ノゾムはマックスカードを手にした。

「逃げるつもりはない・・だけど、ビースターであるセイラを刺激するのは気が進まないな・・ばれててもオレは別に構わないが・・」

“マックス!”

 ノゾムが自分の思いを口にして、マックスカードをビースドライバー二セットした。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 彼はビースドライバーの左上のボタンを押して、マックスに変身した。

「今度こそカメヤローとライオンヤローをブッ倒さないとな・・!」

 ノゾムがシュンたちへの怒りを噛みしめて、セイラのところへ戻った。

 

 シュンとガンを食い止めようとするセイラだが、シュンの力の前に歯が立たない。

「お前を始末し、その後すぐに霧生ユウキに処罰を下す。」

「そんなことはさせない・・ユウキにもノゾムさんにも、あなたたちに手出しはさせない!」

 言いかけるシュンにセイラが反論する。だがシュンが振り上げた足に蹴られて、セイラが突き飛ばされる。

「もう逃がしはしない。すぐにとどめを刺す。」

「そんなマネはさせないぞ、お前たち・・・!」

 セイラに迫るシュンに向かって声がかかった。マックスに変身したノゾムが、彼らの前に戻ってきた。

「マックス・・!」

「マックスも出てきたか。だがまずはこの者の処罰が先だ。」

 セイラが声を上げて、シュンはノゾムに呟いてから、彼女に視線を戻す。

「よそ見をしている余裕はないぞ!」

 ノゾムが飛び込んで、シュンに向かって足を出してキックを繰り出す。しかしシュンは後ろに下がって、ノゾムのキックをかわす。

「確かに余裕はない。ムダな時間を費やしているからな。」

 言いかけるシュンがライオンビースターに変身して、ノゾムを迎撃する。ノゾムがシュンにつかまれて、投げ飛ばされてセイラから引き離される。

「ガン、お前がマックスのベルトを奪うのだ。」

「分かりました〜・・」

 シュンの指示を受けて、ガンがノゾムに向かっていく。

「お前もこれ以上野放しにするわけにいかないな、カメヤロー・・!」

「ひどいこと言うね、君は・・そういう態度は、僕の甲羅を破ってから取ってよね〜・・」

 鋭く言いかけるノゾムに、ガンが不満の声を上げる。

「この前のようにはいかない・・確実にお前をブッ倒す・・!」

 ノゾムが言い放って、素早く足払いを繰り出して、ガンを転ばした。

「うわ〜!・・何度も卑怯なことしちゃって〜・・!」

「お前もだけど、あのライオンヤローに一泡ふかさないと気が治まらないんでな・・!」

 悲鳴を上げるガンに言いかけてから、ノゾムがシュンに向かっていく。

「何度も起き上がれないなんてことにはならないよ〜・・!」

 ガンは言い放つと、頭と手足を引っ込めた。甲羅が回転して浮遊して、ノゾムに向かって飛んできた。

「何っ!?ぐっ!」

 驚くノゾムがガンの突撃を受けて押し倒される。ガンがさらに空中回転して、ノゾムに向かっていく。

「手足引っ込めてこんなマネをしてくるのかよ!」

 ノゾムが毒づきながら、ガンの突撃を回避していく。

「このままお前の相手ばかりしていられるか!」

“タイガー!”

 ノゾムはいら立ちを噛みしめて、ビースドライバーにタイガーカードをセットして、左上のボタンを押す。

“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”

 ノゾムに呼ばれてタイガーランナーが駆けつけた。彼はタイガーランナーに乗って、ガンを迎え撃つ。

 タイガーランナーにはじき飛ばされるガンだが、甲羅に守られているためダメージはない。

「くっ!やっぱりライオンヤローを先にブッ倒したほうがいいか・・!」

 ノゾムがセイラを狙うシュンに目を向けて、タイガーランナーを走らせる。

「行かせないって〜・・!」

 ガンが追いかけて、ノゾムを横から突撃した。

「ぐっ!」

 うめくノゾムがタイガーランナーから落とされて、地面を転がる。空中で頭を手足を出して、ガンが着地した。

「君の相手は僕だってこと、忘れないでよね〜・・!」

 ガンが笑みをこぼして、ノゾムに迫る。

「このままじゃやられる・・こんなことでやられているわけにいかない・・!」

 ノゾムが怒りをふくらませて立ち上がる。しかしガンの硬い甲羅による突進とシュンの強さに打ち勝つ術を見つけることができない。

「さぁ〜・・ベルトを渡してもらうよ〜・・」

 ビースドライバーを奪い取ろうと、ガンがノゾムに向かって歩を進めた。

 

 街外れのほうで騒ぎが起こっていることに気付いて、ソウマはビースターがいるのではないかと判断した。

「出てきたな、ビースター・・今度こそやってやる・・オレがこのカードを・・・!」

 ビースターへの怒りを噛みしめて、ソウマがフォックスカードと一緒にマキシマムカードを手にした。

「やってやる・・ビースターを倒すために、オレは戦う・・!」

“フォックス!”

 戦う意思を口にして、ソウマがビースドライバーにフォックスカードをセットして、マキシマムカードをカードホルダーにしまった。

「変身!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

 ビースドライバーのボタンを2回押して、ソウマはフォックスに変身した。スピードを上げて駆け抜けていく彼が、ノゾムとシュンたちを目撃した。

「やっぱりビースターか・・みんなオレが倒してやる!」

 ソウマがシュンに向かって飛びかかる。スピードに乗せて打撃を繰り出すソウマだが、シュンに軽々とかわされる。

「物分かりが悪いな。何度やっても私に敵わないことを、理解しようともしないとは。」

「お前たちの言うことに耳は貸さない・・ビースターを滅ぼすオレの考えは、死んでも変わることはない!」

 冷たく言いかけるシュンに、ソウマが怒りを込めて言い返す。

「ならば死ぬがいい。己の身の程をわきまえて。」

 シュンが足を突き出して、ソウマを蹴り飛ばす。ソウマは転がりながら、体勢を整えて立ち上がる。

「オレは死なない・・死ぬのはお前たちだ!」

 ソウマが怒鳴って、マキシマムカードを手にした。

「今度こそ力を貸してもらうぞ・・ビースターを倒すために!」

“マキシマム!”

 ソウマが呼びかけてから、マキシマムカードをビースドライバーにセットして、左上のボタンを押した。しかし何の変化も起こらない。

「何でだよ・・何で何も起こらないんだよ!?

 ソウマが怒りの声を上げて、ビースドライバーのボタンを連打する。しかし何度押しても何も起きない。

「お前の時間に付き合うつもりはない。ムダな時間を使わせる・・」

 シュンはため息をついて、ソウマに迫って右手を振りかざす。

「ぐっ!」

 切りつけられたフォックスのスーツから火花が散って、ソウマが突き飛ばされる。

「ソウマ!」

 ノゾムはガンを振り切って、ソウマに駆け寄る。2人の前にシュンが立ちはだかる。

「ベルト、2つともここで返してもらう。」

 シュンがビースドライバーを奪おうとして、ノゾムが身構える。そこへセイラが飛び込んで、シュンを2人から引き離した。

「これ以上、あなたたちの思い通りにはさせない!」

「あなたも往生際が悪いな。手間を取らせないでもらおうか・・」

 言い放つセイラにため息をついて、シュンが手を振りかざす。彼の爪がセイラの体を捉えていく。

「冗談じゃない・・ビースターに助けられるなんて、まっぴらごめんだ・・・!」

 ソウマがいら立ちをふくらませて立ち上がる。

「どうして・・これだけビースターを倒そうとしているのに・・どうして使えないんだよ・・・!」

 怒りで体を震わせながら、ソウマがマキシマムカードを見つめる。何度使おうとしてもマキシマムカードはその力が発揮されない。

「オレに貸してみろ・・オレが使ってみる・・!」

“マキシマム!”

 ノゾムがソウマからマキシマムカードを取って、自分のビースドライバーにセットした。

「オレでも使えるかどうか・・やってやる・・・!」

 ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押す。しかしノゾムが使ってもマキシマムカードは反応しない。

「オレにも使えないのか・・他にも何かいるのか・・!?

 ノゾムがマキシマムカードを取り出して、いら立ちを覚える。どうしたら使えるようになるのかが分からず、ノゾムもソウマも苦悩を深めていた。

 

 セイラの心配をして外に出たユウキ。彼はセイラとノゾムたち、シュンたちを目撃した。

「マックス・・それにビースター・・セイラが危ない!」

 ユウキがいきり立って、ドラゴンビースターになってシュンたちのところへ向かう。

「あれは!」

 ノゾムがユウキを見て感情を強める。ユウキがシュンを横から突き飛ばして、セイラから引き離す。

「大丈夫か!?立てるか!?

「う、うん・・」

 駆け寄ったユウキに呼びかけられて、セイラが頷く。

「このままじゃオレたちが不利だ・・ここは引き下がろう・・!」

「でも、マックスは・・・!」

「マックスたちも敵だ・・オレたちに容赦なく攻撃してくる・・!」

 動揺を感じているセイラを引っ張って、ユウキがこの場を離れる。

「アイツら・・・」

 ユウキとともに去っていくセイラのことを考えて、ノゾムが心を揺さぶられる。

「オレは・・・オレは・・・!」

“誰が見ても間違っていることが、正しいことにされる・・そんなことが許されている世界を、私は絶対に認めない・・・!”

 ノゾムの脳裏にセイラの思いがよぎる。彼女の言葉がノゾムを奮い立たせた。

「オレは戦う・・オレの許せない敵を倒すために・・オレみたいに、ムチャクチャなことにイヤな思いをしてるヤツらのために・・・!」

 戦う意思を示すノゾム。彼はこの意思を込めるように、マキシマムカードを見つめた。

“マキシマム!”

 彼は改めてマキシマムカードをビースドライバーにセットした。

「これが最後だ・・これで力を使わせないなら、オレはお前を2度と頼りにしないからな!」

 激情を込めて言い放って、ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押した。

“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”

 ビースドライバーから音声が発せられた。ノゾムのまとうマックスのスーツの模様とマスクの形状が、マックスフォルムよりも刺々しいものとなった。

「使えた!?マキシマムのカードを!?

 ソウマがこの瞬間に驚きを隠せなくなる。

「どうやって使えるようになったんだ!?・・オレは全然使えず、ノゾムもさっきまで使えなかったのに・・!?

 マキシマムカードに対する疑問を感じていくソウマ。彼のそばで、新たなる姿「マキシマムフォルム」となったノゾムがシュンとガンに振り返る。

「マックスが別の姿に変身した?何だ、あの姿は?」

 シュンがノゾムを見て疑問を覚える。

「だが何であろうと、私のすべきことに変わりはない。ベルトを渡してもらうぞ。」

 シュンがノゾムに近づいて手を伸ばす。するとノゾムが左手でシュンの右手を払う。

「何っ!?

 手を払われたことに一瞬驚くシュン。彼は手を出して攻撃を仕掛けるが、ノゾムは回避してみせた。

「私の攻撃が当たらない、だと!?

 シュンがいら立ちを浮かべて、さらに爪を振りかざす。ノゾムが彼の右腕を左手でつかんだ。

「これ以上、お前たちにいい気にはさせないぞ!」

 ノゾムが言い放って、シュンに右腕を振りかざす。

「ぐっ!」

 シュンがパンチを受けて跳ね上げられる。彼は空中で体勢を立て直して着地する。

「私が攻撃された!?しかも、これほどのダメージを!?

 ふらつくシュンが驚きを覚える。マキシマムフォルムとなったノゾムは、パワーもスピードも上がっていた。

「も〜!おかしなことになっちゃって〜!」

 ガンが不満の声をあげて、ノゾムに向かっていく。彼が振りかざした右手を体に受けるも、ノゾムは少し押されただけでダメージを受けていない。

 ノゾムが握りしめた右手を振りかざす。ガンがとっさに背中を向けて、甲羅で攻撃をしのごうとした。

 だがノゾムのパンチはガンの硬い甲羅にめり込んだ。

「ぐっ!」

 強い衝撃で体を揺さぶられて、ガンがうめく。

「痛い、痛い、いたい〜!何で〜!?僕の甲羅は硬いのに〜!」

 苦痛を感じて地面を転げまわるガン。うずくまる彼にノゾムが近づく。

「オレはお前たちを倒す・・ビースターとか人間とか関係ない・・関係ない誰かを傷付けて平気でいる、お前たちのような身勝手な連中を、オレは許さない!」

 自分の揺るぎない意思を言い放つノゾム。自分の許せない敵と戦う決意を、彼は改めて心に刻んだ。

「関係なくないよ〜!僕はこれが仕事なんだ〜!こうしないと生きていけないんだよ〜!」

 ガンが不満の声を上げて、頭と手足を引っ込めて、回転しながら突っ込んできた。

「それで身勝手が許されるということじゃないだろうが・・!」

“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 怒りをふくらませるノゾムが、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。ジャンプした彼の両足にエネルギーが集まる。

 突撃するガンの甲羅に、ノゾムが両足のキックを叩き込んだ。

「ギャアッ!」

 絶叫を上げたガンが硬い甲羅を打ち砕かれた。直後、彼の体も爆発を起こして消滅した。

「あのガンの甲羅を砕いたのか・・!?

 シュンがノゾムの力に緊張を覚える。

「ここは体勢を立て直したほうがよさそうだ・・」

 シュンが危機感を覚えて、ノゾムたちの前から去った。

「すごい・・他のどの姿よりも強い・・!」

 ソウマがマキシマムフォルムの強さを見て、驚きを隠せなくなる。

「これがマックスの、新しい力か・・・!」

 自ら振るった新たな力に、ノゾムも戸惑いを感じていた。

 

 シュンたちの襲撃からかいくぐり、ユウキとセイラは別荘に戻った。

「オレたちは戦う・・オレたちを思い通りにしようとするビースターと・・マックスとも・・・!」

 戦意と敵意をふくらませていくユウキ。

(マックス・・・ノゾムさん・・・)

 セイラは心の中で、マックスとノゾムのことを考えていた。

 

 

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