仮面ライダーマックス
第14話「ホントの正義!」
セイラを守ろうとするノゾムと、その彼の言動に不満を覚えるソウマ。ソウマがノゾムにも攻撃を仕掛けてきた。
ソウマが繰り出すパンチを防ぐノゾム。パンチの力に押されるも、ノゾムはその力を利用してセイラに近寄る。
「立てるか?・・早く逃げろ・・・!」
「あ、あなたは・・・!?」
呼びかけるノゾムにセイラが戸惑いを覚える。彼女は声と口調からマックスの正体に気付き始める。
「さっさと行け!やられちまうぞ!」
「は・・はい!」
ノゾムに怒鳴られて、セイラが慌ててこの場を離れた。
「逃がすか!」
ソウマが追いかけようとするが、ノゾムに行く手を阻まれる。
「どけ!ビースターに逃げられる!」
ソウマが怒鳴ってノゾムに攻撃を仕掛ける。ソウマの速い攻撃に、ノゾムはかわしきれずに防御を余儀なくされた。
街の騒ぎを聞きつけて、ツバキとタイチも街中を駆けていた。2人はノゾムとソウマが戦っているのを目撃した。
「えっ!?ノゾム、ソウマくん!?」
「どうして2人が戦っているの!?ビースターは!?」
タイチとツバキがノゾムとソウマに驚きを隠せなくなる。
ソウマが繰り出したキックを体に受けて、ノゾムが突き飛ばされる。彼は転がりながらもすぐに起き上がって、体勢を立て直す。
「今はお前の相手をしている場合じゃない!」
ソウマがノゾムを振り切って、セイラを追おうとした。
「行かせない!」
ノゾムが振り返って、ソウマを追いかけて、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムが右足にエネルギーを集めて、大きくジャンプする。
「しつこすぎると嫌われるぞ!」
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ソウマもビースドライバーの左上のボタンを2回押して、スピードに乗せて前にジャンプしてキックを繰り出した。
「ぐっ!」
ソウマの速さのあるキックが体に当たって、ノゾムがうめく。
「うっ!」
ソウマもノゾムのキックのエネルギーの余波を受けて、彼と同時に吹き飛ばされる。
“スリービースト。”
2人からベルトが外れて変身が解ける。
「ノゾム!」
「ソウマくん!」
タイチとツバキがノゾムとソウマに駆け寄る。
「ソウマくん、大丈夫!?」
「ノゾム、いったいどうしたんだ!?何でソウマくんと!?」
ツバキが心配の声をかけて、タイチが疑問を投げかける。
「分からない・・いきなりビースターをかばって、オレの邪魔をしてきたんだ・・・!」
ソウマが説明して、ノゾムに鋭い視線を向ける。
「ビースターを憎んでいたんじゃないのか!?そのお前が、ビースターの味方をするなんて!」
「アイツは・・オレと同じ考えの持ち主だったんだ・・他のビースターとは違う・・・!」
不満の声を上げるソウマに、ノゾムが自分の考えを口にする。
「何を言っているんだ!?ビースターは自分勝手なバケモノ!見逃したら何の関係のない人たちが犠牲になるんだぞ!」
「自分勝手なヤツは、ビースターだけじゃない!」
互いに声を荒げて、鋭く睨みつけるソウマとノゾム。
「2人とも落ち着いてって!」
ツバキが悲痛の叫びを上げて、ノゾムとソウマが言葉を詰まらせる。
「今は気持ちを落ち着けて・・話をまとめるのはそれからでもいいじゃない・・・!」
「ツバキちゃん・・・」
呼びかけるツバキにソウマが戸惑いを見せる。ノゾムはいら立ちを浮かべるも、かける言葉もなく体を震わせていた。
シュンの命令を受けて、施設にいた黒ずくめの男たちが、倒れていたユウキを取り囲んでいた。
「この男だな。最近は厄介者が出回っているようだ・・」
「早く始末を付けようぜ。目を覚まして抵抗でもしてきたら大変だ。」
男たちが声をかけ合って、ユウキにとどめを刺そうとする。彼らがそれぞれ銃を取り出して構える。
そのとき、ユウキが閉ざしていた目を見開いて、男たちのうちの2人を蹴り飛ばした。
「コ、コイツ!?」
「意識が戻っていたのか!?」
他の男たちがとっさに後ろに下がって、立ち上がったユウキに向かって発砲する。ユウキはドラゴンビースターになって、弾丸に耐えた。
「オレは、ここで倒れるわけにはいかない・・お前たちのようなヤツを、オレは許しはしない!」
ユウキが言い放って、男たちに向かって握った右手を振りかざす。
「ぐふっ!」
ユウキの重みのある打撃を受けて、男たちが倒れて動かなくなる。施設の建物に目を向けたユウキだが、セイラのことを気にした。
「今はセイラを助けるほうが先だ・・またここに来ればいい・・・!」
エックスビースへの攻撃を中断して、ユウキは引き返してセイラを捜しに向かった。
ユウキに助けられて、セイラは人気のない道を歩いていた。彼女は人の姿に戻って、ユウキと合流しようとしていた。
(私を守ろうとしたの・・もしかして、ノゾムさん・・・!?)
マックスの正体がノゾムではないかと思って、セイラは戸惑いを感じていた。
「セイラ!」
そこへ人の姿に戻ったユウキが駆けつけて、セイラと合流した。
「ユウキ!」
セイラが声を上げて、ユウキに支えられる。
「大丈夫か、セイラ!?」
「はい・・ユウキも無事でよかった・・!」
互いに再会を喜ぶユウキとセイラ。
「危ないところを助けられたんです・・この前攻撃してきた人に・・確か、マックスという名前・・・」
「アイツが!?・・アイツは、オレたちを倒そうとしてくるヤツだ・・もしかしたら、エックスビースの味方かもしれないんだぞ・・!」
セイラが告げた話に、ユウキが感情をあらわにする。
「でも、マックスにそっくりな人から私を守ってくれた・・何か企んでいる可能性も否定できないけど・・・」
「アイツは厄介な敵だよ・・今日現れたあのビースターと同じくらいに・・・!」
マックスに対して心を揺さぶられるセイラと、マックスへの敵意を抱えるユウキ。2人の心に対照的な動揺が生じていた。
「今日は戻ろう・・オレたちは体力をかなり消耗してしまったから・・・」
「う・・うん・・・」
ユウキが投げかけた言葉にセイラが頷く。2人は気分を落ち着けて、別荘へ戻ることにした。
ノゾムがビースターを助けた。そのことにソウマは不信感を抱いて、ツバキとタイチは動揺を感じていた。
「ノゾム、どうしちゃったっていうのかな・・ビースターをすごく憎んでいたのに・・・」
「全く腹が立っちゃうな・・これじゃ一緒に戦うことができない・・・!」
ツバキが不安を口にして、ソウマが不満を見せる。
「みんなー!」
そこへワタルがワオンを連れてやってきた。
「ワタルくん、ワオンちゃん、おかえり。」
タイチがワタルたちを迎えて笑みを見せた。
「ただいま・・あれ?どうしたの、みんな?」
挨拶するワタルがツバキたちの様子を気にする。
「あぁ・・ノゾムの様子がちょっとおかしいみたいだ・・」
「ソウマくん・・!」
事情を話すソウマを、ツバキが口止めしようとする。
「ノゾムお兄ちゃんに、何かあったの・・・?」
ワタルが心配して、ツバキたちに問いかける。
「ノゾムがビースターを守ったんだ・・自分と同じ考えをしてるとかって・・・!」
「えっ!?ビースターを!?」
ソウマの話にワタルが耳を疑う。自分の両親を殺したビースターをノゾムが守ろうとしたのが、ワタルには信じられなかった。
「ウソだ・・ノゾムお兄ちゃんは、ビースターの味方になんてならない!」
「でも実際、ビースターを倒そうとしたオレの邪魔をしたんだ・・!」
首を横に振るワタルに、ソウマが言いかけてさらにいら立ちを見せる。
「僕、ノゾムお兄ちゃんに確かめに行ってくる・・納得いかないよ、こんなの!」
ワタルがノゾムのところへ走り出す。ワオンも彼を追いかける。
「ワタルくん!」
タイチが呼び止めるが、ワタルたちは立ち去っていった。
「ワタルくん・・ノゾム・・・」
ワタルとノゾムのことを気に掛けて、ツバキは深刻な顔を浮かべていた。
別荘に戻ってきたユウキとセイラ。セイラはノゾムのことを気にして、落ち着かない様子を見せていた。
「あまり体を動かしていたら休まらないよ・・」
「うん・・でもこうでもしないと、気持ちが落ち着かなくて・・・」
ユウキが声をかけるが、セイラは不安を抱えるばかりである。
「私、外に出てくる・・深呼吸をすれば落ち着けるかもしれない・・・」
「でも今は、エックスビースがオレたちを捜してうろついているかもしれない・・もし見つかったら・・!」
外へ出ようとするセイラを、ユウキが呼び止める。
「大丈夫・・危なくなったら戦わないですぐに逃げるから・・・」
セイラはユウキに微笑んでから、別荘から外へ出た。
「セイラ・・・」
彼女のことを心配するも、ユウキは追いかけることができなかった。
ノゾムのことを気にしていたセイラは、1人道を歩いていた。その途中、彼女はノゾムとバッタリ会った。
「アンタは・・・」
ノゾムがセイラを見て戸惑いを見せる。
「あ、あの・・もしかして、ノゾムさんは・・・」
ノゾムに問いかけようとしたセイラだが、言葉に詰まる。
「無事に逃げ切れたみたいだな・・アンタのような人に何かあったら辛くなるな・・」
ノゾムが口にした言葉を聞いて、セイラが心を揺さぶられる。
「ノゾムさん・・あなたは人間を、ビースターをどう思いますか・・・?」
セイラがノゾムに1つの問いかけを投げかけた。
「この前までは、オレはビースターを憎んでいた・・オレの知り合いの家族を殺したヤツだから・・でもそのビースターは、自分のことしか考えない身勝手なヤツだったんだ・・・」
これまでのビースターとの戦いを思い返していくノゾム。
「身勝手な人間もいれば、人間よりも優しいビースターもいるってことなんだよな・・アンタみたいな・・・」
「私は・・どうなのかな・・・ただ、あなたのいう身勝手な人が許せないだけ・・それが優しさなのか、私には分からない・・・」
「オレも、よくは分かんない・・だけど正しいのは身勝手な連中じゃなく、アンタのほうだってことは分かる・・」
「私も、私のしていることがいいことだって、いつか胸を張って言えるときが来たらって・・」
互いに自分の正直な気持ちを口にするノゾムとセイラ。2人は理不尽へ抗おうとする意思を、心の中に秘めていた。
「ノゾムお兄ちゃん!」
そこへワタルがワオンと一緒にやってきた。ノゾムはセイラに1度視線を向けてから、ワタルたちのところへ行った。
「お兄ちゃん・・セイラお姉ちゃん・・・」
セイラがそばにいたのを見て、ワタルはノゾム、ワオンと一緒にこの場を離れた。
「話は聞いたよ、お兄ちゃん・・ビースターを助けて、ソウマお兄ちゃんと戦ったって、ウソだよね・・・!?」
ワタルがノゾムに真意を問いただす。ノゾムは思いつめた顔を浮かべたまま、ワタルに答える。
「オレは自分のために関係ない他のヤツを傷付けて平気でいる連中が我慢ならないだけ。ビースターはそういう連中ばかりだと思ってたけど、そういうわけじゃなかったみたいだ・・」
「えっ・・・!?」
ノゾムの話を聞いて、ワタルが動揺を見せる。
「ビースター全員が、ブッ倒すべき敵じゃなかったって分かったんだ・・」
「それじゃそのビースターは、僕たちの味方になるってこと・・・!?」
「さぁな・・オレと敵が同じなのは確かだけどな・・・」
動揺をふくらませるワタルに、ノゾムが自分の考えを口にする。
「それで、ノゾムお兄ちゃんは・・このままビースターとの戦いを続けるの・・・?」
「もちろんだ・・でも一方的に倒すんじゃなくて、悪いかどうかを見極めることになる。」
ワタルが投げかけた問いかけに、ノゾムが今の気持ちを口にする。
「オレは身勝手なヤツらとは違う・・自分たちのために一方的に考えを押し付けたりするマネはしない・・・」
「それがお兄ちゃんの、変わらない思いなんだね・・・」
ノゾムの揺るがない決意を聞いて、ワタルが納得して頷いた。
「それじゃ僕も、お兄ちゃんの戦いを見守っていくよ。お兄ちゃんが、お兄ちゃんと僕にとっての悪者と戦うところを・・」
「オレを信じるっていうのか・・・?」
「だってお兄ちゃんは悪者じゃない・・僕のために戦ってくれたのは確かだもん・・」
問いを投げかけるノゾムに、ワタルが信頼を寄せる。彼の思いを受け止めて、ノゾムが戸惑いを覚える。
(オレ、全く間違っているわけじゃないってことか・・こんなオレでも、信じてくれるヤツがいる・・・)
自分が認めてもらっていることに、ノゾムは安らぎを感じていた。
「君だねぇ。マックスのベルトを持ってるのは〜?」
そこへ声がかかって、ノゾムたちが振り返る。彼らの前に現れたのはガンだった。
「誰だ、アンタは?もしかしてビースターか?」
「まぁね。そのベルトを取り返してくるように言われたんでねぇ・・」
問いかけるノゾムに、ガンがのん気な態度で答える。
「渡してくれると嬉しいんだけど〜・・」
「コイツは渡せないな。コイツはオレが敵をブッ倒すために必要なんだ。」
手を差し伸べるガンだが、ノゾムが拒否する。
「も〜、早く渡してくれたらすんなり話が済んだのに〜・・」
不満を浮かべたガンの姿が変化した。彼は大きな体格の亀の怪物、タートルビースターに変わった。
「この人、やっぱりビースター!?」
ワタルがガンを見て緊張を見せる。
「言うことを聞かなければ力ずくか・・そういうふざけたマネを考えるヤツが、オレは気に入らないんだよ!」
怒りをあらわにしたノゾムが、ビースドライバーのカードホルダーからマックスカードを取り出した。
“マックス!”
彼がビースドライバーにマックスカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。
「ワタル、お前は逃げろ・・コイツはオレがブッ倒す・・!」
「う、うん・・お兄ちゃん、気を付けてね・・・!」
ノゾムが呼びかけて、ワタルがワオンと一緒にこの場を離れた。
「オレの怒りは限界突破!お前のような勝手なヤツを、オレは許さない!」
ノゾムが言い放って、ガンに向かって飛びかかる。
ノゾムがガンの体にパンチとキックを当てる。だがガンは平然としている。
「くっ・・硬い体をしてる・・!」
ノゾムが毒づきながら、さらにガンに攻撃を繰り出す。しかしガンの体と甲羅には通じない。
「そんなの、痛くもかゆくもないよ・・そろそろこっちの攻撃の番だよ。」
ガンが笑みをこぼして、ノゾムに向かって握った手を振りかざす。
「くっ!」
ガンの打撃を体に受けて、ノゾムが押される。
「パワーも自慢か・・だったらコイツで・・!」
“エレファント!”
ノゾムがマックスカードとエレファントカードを入れ替えて、ビースドライバーの左上のボタンを押した。
“チャージ・エレファーント!ハイフット・ハイレッグ・ハイハイエレファーント!”
彼はエレファントフォルムになって、一気にパワーを上げた。
「姿を変えても僕の考えは変わんないよ・・」
ガンが言いかけて、ノゾムを迎え撃つ。ノゾムが重みのあるパンチをガンに叩き込む。
「うっ!・・力が上がっているみたい・・だけど・・・!」
ノゾムの高いパワーを痛感して、ガンが体に力を入れる。
「少し効くようになったか・・だったらこのまま押し切る・・!」
ノゾムがガンに対して追撃を仕掛ける。しかし彼が繰り出したパンチを、ガンは甲羅に当てることで威力を無効化した。
「僕の甲羅までは届かないみたいだね・・」
笑みをこぼすガンに、ノゾムがいら立ちを覚える。彼がキックを繰り出すが、これもガンの甲羅には通じない。
「だったらこれならどうだ・・!」
いら立ちをふくらませるノゾムが、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“エレファントチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがガンに向かってジャンプして、エネルギーを集めた両足のキックを繰り出す。ガンが甲羅を出して、ノゾムのキックを受ける。
だがエネルギーを集めたノゾムのキックでも、ガンの甲羅にダメージを与えられない。
「何だとっ!?」
驚きの声を上げるノゾムが、ガンの甲羅に押し返される。
「ちょっと効いた気がしたけど、僕の甲羅はそれでもビクともしないよ・・」
ガンがノゾムに目を向けて笑みをこぼす。
「それじゃそろそろベルトをもらっちゃおうかなぁ・・」
ガンがノゾムのビースドライバーを狙って歩を進める。打開の糸口を探って、ノゾムが思考を巡らせていた。
先にガンから逃げてきたワタルとワオン。動物公園に戻った彼らは、ソウマを見つけて駆け寄った。
「ソウマお兄ちゃん、大変だよー!」
「どうしたんだ、ソウマくん?・・まさか、ビースターが・・!?」
声をかけてくるワタルに、ソウマが緊張を見せる。彼の声にワタルが頷く。
「分かった。オレが行く・・ワタルとワオンはここにいるんだ・・!」
ワタルたちに呼びかけてから、ソウマはノゾムのところへ向かった。
(ソウマお兄ちゃん・・・ノゾムお兄ちゃん・・・)
ノゾムの心配と、彼をソウマが助けてくれる願いを、ワタルは心の中でふくらませていた。
ガンの頑丈な甲羅に攻め手を見失い、ノゾムは焦りを感じていた。
「往生際が悪いよ・・いい加減に諦めたほうがいいって・・・」
ガンが警告を送るが、ノゾムは聞き入れずに戦おうとする。
「仕方ないね・・それじゃやっつけてからベルトをもらうことにするよ・・・」
ガンはため息をついてから、ビースドライバーを奪い取ろうとノゾムに迫る。そこへソウマが駆けつけて、ノゾムとガンに目を向けた。
「ビースター・・やっぱり出てきていたか・・・!」
ソウマが目つきを鋭くして、フォックスカードを手にした。
“フォックス”
彼がビースドライバーにフォックスカードをセットする。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ソウマがフォックスに変身した。駆け込んだ彼がガンに足払いを繰り出す。
「おわっ!」
バランスを崩したガンが倒れる。丸く重みのある甲羅が仇となって、ガンが起き上がれなくなる。
「しまった〜・・起きれない〜・・!」
ガンがもがくがそれでも起き上がれない。彼にソウマが近づいて見下ろす。
「オレはビースターの考えることなど知ったことじゃない・・ビースターは1人残らずこの手で倒す!」
ビースターへの怒りをあらわにして、ソウマがガンに追撃を加えようとした。
そこへライオンビースターとなったシュンが現れて、ソウマとガンの間に割って入ってきた。
「お前は、この前のライオンヤロー・・!」
ノゾムがシュンを見て身構える。
「マックス、そしてフォックス、お前たちのベルトを返してもらう。」
「お前たちの言うことは絶対に聞かないぞ、ビースター・・お前もここで倒す!」
手招きをするシュンに、ソウマが怒りの声を上げる。シュンがため息をついてから、ガンを持ち上げて起こす。
「あなたも私たちメンバーの一員なのだから、しっかりしてくれなければ困るな・・」
「はい・・面目ないです〜・・」
注意をしてくるシュンに、ガンが肩を落として謝る。
「フォックスの相手はあなたには荷が重すぎるようだ。私がフォックスの相手をする。」
「分かりました・・それじゃ僕はマックスのほうを・・」
シュンの指示にガンが頷く。2人がソウマとノゾムに目を向ける。
「オレの強さは疾風迅雷!相手が誰だろうとオレには追いつけないぞ!」
「その大口が現実にならないことを、今ここで教えてやる。」
言い放つソウマに、シュンが落ち着きを崩さずに言いかける。
ソウマが飛び出して、シュンへ回し蹴りを繰り出す。シュンは身をかがめてソウマのキックをかわす。
ソウマがさらにパンチとキックを繰り出すが、シュンに軽々と回避と防御をされる。
「オレの攻撃が当たらない!?」
「自惚れに溺れているキツネ、上には上があることを理解していなかったようだな・・」
驚きをあらわにするソウマに、シュンが肩を落としながら言いかける。彼が繰り出した右のパンチが、ソウマの体に当たった。
「ぐっ!」
ソウマが回避することができず、大きく突き飛ばされる。
「ムダな時間は使いたくない。すぐに終わらせることにする。」
「それはこっちのセリフだ・・!」
シュンの言葉に言い返して、ソウマがビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ソウマがスピードを上げて、シュンに向かってエネルギーを集めたキックを繰り出す。だがこれもシュンにジャンプでかわされた。
「がはっ!」
シュンが振り下ろした手の爪を体に叩き込まれて、ソウマが苦痛を覚えて声を上げる。地面に叩きつけられて、彼はさらにソウマに蹴られて転がる。
「ソウマ!」
「君の相手は僕だよ〜・・」
声を上げるノゾムだが、ガンが立ちふさがる。
「お前は私より劣る。パワーもスピードも。」
シュンがソウマを見下ろして、ビースドライバーを奪おうと迫る。
「このままやられるくらいなら、コイツに賭けるしかない・・・!」
ソウマが打開の糸口として、1枚のアニマルカードを取り出した。動物の絵柄のないカードである。
ソウマはこのカードに勝利を託そうとしていた。