仮面ライダーマックス

第12話「オレの強さは疾風迅雷!」

 

 

 ノゾムとツバキ、コウジの前に現れた戦士。その姿はマックスに似ていた。

「その姿・・そのベルト・・もしかして、エックスビースから盗み出したヤツか!」

 コウジが戦士を見て、ベルトとカードを盗んだ犯人であることに気付く。

「誰なんだ、お前は!?・・何か言えって!」

 ノゾムが戦士に向かって問いかける。すると戦士が彼に振り向く。

「そう怒鳴るなよ。これからさっさとビースターをやっつけてやるから。」

 戦士がノゾムに気さくに答える。彼の言葉と態度に、ツバキが一瞬あ然となる。

「オレをやっつける?オレに不意打ちを食らわせただけでいい気になってるな・・!」

 コウジが戦士に対していら立ちを覚える。

「本来の目的だ!てめぇの相手を先にさせてもらうぜ!」

「ヘッ。オレの相手になるかどうか、試してやるよ。」

 言い放つコウジに戦士が強気に振る舞う。

「この声・・もしかしてソウマくん!?

 ツバキが声から戦士の正体に気付く。

「気付いてくれたか、ツバキ。そう、オレはソウマ。渋谷(しぶや)ソウマさ。」

 戦士、ソウマがツバキに気さくに答える。

「よそ見をしているとすぐにあの世行きだぜ!」

 コウジが飛びかかって爪を振りかざす。ソウマが左腕を振りかざして、コウジの爪をはねのけた。

「なっ!?

「そのセリフ、そっくり返すよ・・・!」

 驚きの声を上げるコウジに、ソウマが低い声音で言いかける。

 コウジが一気にスピードを上げて、ソウマの周りを駆け回る。

「いけない!このスピードじゃ反撃できない!」

 ツバキがソウマのピンチを感じて、たまらず叫ぶ。

「速さが自慢らしいけど、オレには遠く及ばないな。」

 ソウマが言いかけると、コウジを追って走り出す。そのスピードもまた目にも留まらぬものとなった。

「なっ!?

「ソウマくん!?

 高速を見せたソウマに、ノゾムもツバキも驚きを覚える。

 風を切るような音と衝撃だけが次々に巻き起こる。

「ぐおっ!」

 次の瞬間、コウジが地面に叩きつけられてうつ伏せに倒れた。ソウマが足を止めてひと息つく。

「オレの動きは電光石火。オレの強さは疾風迅雷。お前の自慢の速さのその先を、オレは行っているんだよ。」

 ソウマがコウジを見下ろして、強気に言いかける。

「逃げようとしてもオレからは逃げ切れない。諦めるんだな。」

「オレよりすばしっこいからって、いい気になるなよ!」

 警告を送るソウマに言い返して、コウジが再び素早く動く。

「だから、逃げようとしても・・」

 ソウマがため息をついたときだった。近くのビルのてっぺんが崩れて、彼らのほうへ落下してきた。

「アイツ、なめたマネしてくれるな・・!」

 ソウマがいら立ちを覚えながら、瓦礫に向かってジャンプする。彼が右のパンチを振りかざして、瓦礫を人のいない場所に落とした。

 土煙が舞い上がる中、ソウマがコウジの行方を追う。しかしコウジは既にこの場から消えていた。

「逃げられたか・・今度はこんなマネもさせないからな・・・!」

 ソウマがコウジに対するいら立ちをふくらませる。彼は落ち着きを取り戻してから、ノゾムとツバキに振り返る。

「久しぶりだね、ツバキ。まさかここで会えるとは思わなかったよ。」

“スリービースト。”

 ソウマが気さくに声をかけて、変身を解いて素顔を明かした。

「ソウマくん、まさかビーストライダーになっていたなんて・・!」

 ツバキがソウマに駆け寄って、戸惑いを見せる。

「いやぁ、このベルトとカードはすごい強さを持っているな。エックスビースに忍び込んで盗んできた甲斐があったってもんだ。」

「えっ!?ソウマくん、エックスビースの本部に行ったの!?

 ソウマの口にした言葉にツバキがさらに驚く。

「きっとあそこは本部じゃないと思うな。本部とは別の施設って感じで、研究とかするところじゃないかな。」

「そこにそのベルトとカードがあったってわけか?」

 語りかけるソウマに、ノゾムが口を挟んできた。

「アンタがマックスか。バランスは取れているけど、この“フォックス”のスピードには敵わないみたいだな。」

「悪かったな、情けないヤツで・・・」

 声をかけるソウマに、ノゾムが突っ張った態度を見せる。

「別にそんなふうに思ってないって。今までビースターをやっつけてくれたし。ただフォックスのスピードがずば抜けてるってだけの話さ。」

 ソウマは話を続けて、身に着けているビースドライバーに目を向けた。彼は手にしていたキツネのアニマルカード「フォックスカード」をノゾムたちに見せた。

「キツネの能力・・それがあのスピードか・・」

「そういうこと。スピードだけならマックスのタカやトラより上だ。」

 小さく頷くノゾムに、ソウマが気さくに答える。

「ま、さっきのチーターだけじゃなく、他のヤツもフォックスのスピードにはついてこれないからね。たとえオレよりパワーがあっても、当てられないから意味がないってことで。」

 ソウマが自信を見せて、フォックスカードをビースドライバーのカードホルダーにしまった。

「だからマックスになって、わざわざビースターと戦う必要はないよ。ま、自分が戦いたいと思っているなら、オレに止める権利はないけどね。」

「おしゃべりなヤツだな。オレは騒々しいのは好きじゃない・・お前に戦うなと言われても、オレはビースターと戦う・・」

 助言を送るソウマだが、ノゾムは自分の考えを変えない。

「身勝手なマネをするビースターを、オレは許すことはできない・・2度とオレたちの周りをウロウロできないよう、徹底的に叩きのめしてやる・・・!」

「ノゾム・・・」

 ビースターへの怒りを口にするノゾムに、ツバキが戸惑いを見せる。

「ビースターが許せない、か・・オレたち、気が合うかもしれないな〜!」

 ソウマが頷いて、ノゾムに対して目を輝かせる。

「おっと、騒がしいのはイヤだったんだよな・・オレはソウマ。渋谷ソウマだ。」

「オレは、神奈ノゾムだ・・」

 苦笑いを見せるソウマと態度を崩さないノゾムが、互いに自己紹介をする。

「そうだ。ソウマくんにもみんなのこと紹介しないとね。」

 ツバキが話を切り出して、ソウマを動物公園に案内することにした。ノゾムも2人についていくように歩き出した。

 

 ビーストライダー「フォックス」の介入で、撤退を余儀なくされたコウジ。ソウマにスピードで負けたことに、コウジはいら立ちを感じていた。

「あなたが失敗するとは珍しいですね。」

 コウジの前にシュンがやってきて、彼を見下ろす。

「まさかあそこまですばしっこいヤツが出てくるとは思わなかった・・・!」

「あれがキツネのカードの力。盗まれたベルトとカードを使って介入してくるとは・・」

 ソウマのことを考えるコウジとシュン。

「だが厄介なのはスピードだけだ。パワーはオレのほうが上。捕まえちまえば十分料理できるぜ。」

「その言葉に期待させてもらいますよ。」

 笑みを浮かべるコウジに告げてから、シュンは立ち去っていった。

「やってやるぜ・・この仕事をやり遂げれば、きっと報酬はたんまりだからな・・!」

 コウジが喜びを感じて、ビースドライバーを奪おうと躍起になった。

 

 ツバキに連れられて、ソウマは動物公園を訪れた。ソウマが公園にいる動物たちを見回していく。

「へぇ。ここで働いているなんて、大変だね、ツバキは。」

「最初は大変で全然うまくいかなかったけど、慣れていって何とかやれるようになっていったよ・・」

 頷くソウマに、ツバキが苦笑いを浮かべて答える。

「私、この公園を管理している人に保護してもらっているの。本当に親切な方で・・」

 ツバキが話を続けて、さらに苦笑いを浮かべる。3人はゴロウの家の前にたどり着いた。

「ノゾム、ツバキちゃん、おかえり。」

 タイチがやってきて、ノゾムたちに声をかけてきた。

「あれ?ツバキちゃん、この人は?」

 タイチがソウマを目にして、ツバキに聞く。

「オレは渋谷ソウマ。ツバキとは学生時代の同級生さ。」

 ソウマが気さくな態度で、タイチに自己紹介をする。

「はじめまして。僕は代々木タイチ。この動物公園の責任者をやっているんだ。」

「せ、責任者!?こんなに若いのに!?

 挨拶するタイチに、ソウマが驚きを見せる。

「ソウマくんはツバキちゃんの知り合いなの?も、もしかして・・!?

 タイチがさらに聞いてきて、ソウマが着けていたビースドライバーを見て動揺を見せる。

「あら?もしかしてマックスのことを知っているの?もしかしてここの関係者みんな・・」

「ううん、全員じゃないわ。ここにいる3人とワタルくんっていう男の子だけ。他の人には秘密にしてあるわ。」

 苦笑いを浮かべるソウマに、ツバキが説明をする。

「そうか。そのほうがビースターに知られにくいし、関係ない人を巻き込まないようにってことだね。」

「うん。ビースターは人の姿になっていつもは動いているし・・」

 納得するソウマにツバキが小さく頷く。

「ま、考え方や考えてることは違うけど、ビースターが許せないってことは同じだ。ビーストライダー同士、これからよろしくな。」

「別に馴れ合うつもりはない。ビースターをブッ倒す。それでいいじゃないか・・」

 手を差し伸べるソウマだが、ノゾムは彼の手を取らずに背を向ける。

「あら・・・ホントに一匹狼って感じだな、ノゾムって・・・」

 ソウマはあ然となってから、ツバキに近寄って小声で言いかける。

「うん・・でも自分さえよければいいってわけじゃない。むしろそういう人を嫌っているくらい・・」

「なるほど・・ビースターを憎んでいるのは、ヤツらがそういう考えの持ち主ばかりだからか・・」

 ツバキの答えを聞いて、ソウマがノゾムを見て納得する。

「ま、ビースターをやっつけるには、マックスであるノゾムの力も必要不可欠だ。」

「あんまり頼りにしてくれるな・・オレはオレでやるから・・・」

 気さくに振る舞うソウマに、ノゾムが態度を変えずに行ってから立ち去っていった。

「タイチ、ツバキちゃん、ここにいたのかい。」

 そこへゴロウがやってきて、タイチたちに声をかけてきた。

「お父さん、こちら、渋谷ソウマくん。ツバキちゃんの友達なんだ。」

「おぉ、ツバキちゃんの。タイチの父のゴロウです。よろしく、ソウマくん。」

 タイチがソウマを紹介して、ゴロウが挨拶して手を差し伸べる。

「あ、はじめまして。よろしくお願いしますね。」

 ソウマが笑みをこぼして、ゴロウの手を取って握手を交わした。

「私とノゾム、ワタルくんの他にもう2人、ゴロウさんのお世話になっている人がいるの。ユウキくんとセイラさんだよ。」

「ゴロウさん、すごいッスねぇ。そんなに保護を引き受けちゃうなんて・・」

 ツバキがさらに話をして、ソウマが感心するばかりだった。

 

 ツバキたちから離れたノゾムは、公園前の通りで足を止めた。彼はそこを行き交う人々を見つめている。

(この中にビースターは潜んでいるのかもしれない・・オレたちを狙ってきてるヤツもいるかもしれない・・それでもオレはビースターをブッ倒す・・オレたちを狙ってこないように・・・)

 決意とビースターへの怒りを噛みしめるノゾム。彼は目つきを鋭くして、ビースターが出てくるのを望んだ。

「こんなところにいたか、マックス。」

 そんなノゾムが声をかけられて振り返る。彼の前にコウジが現れた。

「誰だ、アンタは?・・まさかビースターか・・!?

 ノゾムがコウジに鋭い視線を向ける。

「人の姿を見せたのは初めてだったな。けどこの姿は初めてじゃないよな。」

 笑みを浮かべたコウジが変化を果たす。彼はチータービースターの姿を見せた。

「お前、あのときのチーターヤローか!?

「そういうことだ。さっきの借りを返させてもらうぜ。もちろんもう1人のビーストライダーにも後で返してもらうがな。」

 構えを取るノゾムにコウジが笑みをこぼす。

“マックス!”

 ノゾムがマックスカードを手にして、ビースドライバーにセットした。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムがマックスに変身した。

「オレの怒りは限界突破だ!」

 ノゾムが言い放って、コウジに向かって走り出す。

「オレの速さにお前じゃついてこれないのは、さっき分かっているはずだよな!?

 コウジが強気に言ってから、一気にスピードを上げてノゾムの視界から姿を消した。コウジは高速で周りを動いて、ノゾムを翻弄しようとしていた。

「こんなことで、何度も振り回されてたまるか!」

 ノゾムが対抗しようと、真上に向かって大きくジャンプする。

「空に逃げてもムダだっていうのを忘れたのか!」

 コウジがあざ笑って、空中を蹴ってノゾムに向かっていく。

「そう来ても、オレに向かってくることは同じだよな!」

“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを2回押す。彼が突き出した右足にエネルギーが集まる。

 だがノゾムのキックはコウジに軽々とかわされた。

「だからってかわせないわけじゃねぇんだよ・・・!」

 コウジは鋭く言うと、ノゾムに向けて回し蹴りを繰り出す。

「ぐっ!」

 ノゾムが蹴りを受けて地上に叩き落とされる。すぐに起き上がる彼の前に、コウジが降り立って笑みをこぼした。

「ベルトとカードをよこしな。そうすりゃ見逃してやるよ。」

「それで言う通りにするオレだと思っているのか・・・!?

 忠告を投げかけてくるコウジに、ノゾムがいら立ちを込めて言い返す。

「じゃ言い方を変えてやる。さっさとよこせ。さもねぇと命はねぇぞ。」

「そう言っても答えは同じだ・・オレは言う通りにはしないんだよ、絶対に!」

 さらに忠告するコウジだが、それでもノゾムは考えを変えない。

「だったらこのままくたばれ・・・!」

 コウジが再び高速で動いて、ノゾムが突き飛ばされて壁に叩きつけられる。彼の体に次々と目に見えない打撃が叩き込まれていく。

「冗談じゃない・・ここでやられてたまるか・・!」

“タイガー!”

 ノゾムが対抗しようと、ビースドライバーにタイガーカードをセットして、左上のボタンを押した。

“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”

 タイガーランナーが駆けつけて、ノゾムのところへ向かっていく。

「邪魔なヤツが!」

 コウジが素早く動いて、タイガーランナーの突撃をかわして、さらに胴体にキックを当てた。タイガーランナーがふらついて、ノゾムの前で倒れる。

「ムダだ!てめぇじゃオレには勝てねぇんだよ!」

 いったん足を止めたコウジが、ノゾムに向かって高らかに言い放つ。彼に対して、ノゾムがいら立ちをふくらませていく。

「マックスに勝てても、オレには勝てないぞ。」

 そのとき、コウジの後ろにソウマが姿を現した。

「ソウマ・・・!」

「選手交代だ、ノゾム。ここからはオレがコイツの相手をする。」

 声を振り絞るノゾムにソウマが呼びかける。

「フォックスか。お前にも借りを返してやろうと思ってたんだよ・・!」

 コウジがソウマに振り返って、喜びの笑みを浮かべる。

「ノゾムと同じことを言うけど、2度と周りをウロウロできないように叩きのめさないとな・・!」

 ソウマが顔から笑みを消して、キツネのアニマルカード「フォックスカード」を手にした。

“フォックス!”

 ソウマがビースドライバーにフォックスカードをセットした。

「変身!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押したソウマ。彼は黄色と茶色のスーツとキツネの形のマスクを身に着けた。

「オレの強さは疾風迅雷!誰もオレに追いつけないよ!」

 ソウマが強気に言い放って、コウジに向かっていく。

「今度はてめぇが地面にはいつくばる番だ!」

 コウジも駆け出して、2人が同時にスピードを上げた。ノゾムの前から2人は姿を消して、ぶつかり合う音と衝撃が湧き起こるばかりとなった。

「ちっ・・オレの前ですばしっこく走り回って・・・!」

 自分だけが置いてけぼりにされていると思って、さらにいら立つ。

 高速で激しい攻防を繰り広げるソウマとコウジ。だがソウマがコウジの動きを1枚上回っていた。

「ぐふっ!」

 ソウマのキックを受けて、コウジが地面に叩きつけられる。

「これで十分分かっただろ?オレのほうが速いって。」

 着地したソウマがコウジを見下ろして笑みをこぼす。

「足の速さのほうは認めてやる・・だがな・・!」

 コウジも笑みをこぼして、腕を地面に叩きつけて土煙を巻き上げる。

「勝負のほうはオレの勝ちだ!」

 コウジが土煙の中から飛び出して、ソウマの体にキックを叩き込んだ。

「くっ!」

 不意を突かれたために回避が間に合わず、ソウマが突き飛ばされる。

「勝負はオレの勝ちなんだよ!」

 コウジがソウマに目を向けてあざ笑う。

「そのベルトをいただいてから、オレの屈辱を味わってもらうぞ・・!」

 コウジがソウマに近づいて、ビースドライバーを奪い取ろうとした。そこへノゾムが足を突き出して、コウジを横から蹴り飛ばした。

「そういう勝負なら、1対1とか正々堂々とかはいらないよな・・・!?

「マックス・・出しゃばってくれるぜ・・!」

 言い放つノゾムに、立ち上がったコウジがいら立ちを見せる。

「オレとノゾムの目的はビースターをブッ倒すこと・・お前もこのまま野放しにしてやるつもりはないんだよ・・!」

 ソウマが頷いて、コウジに視線を戻す。

「2人同時にっていうのはいい気がしねぇな・・・くそっ!」

 危機感を覚えたコウジが、ノゾムたちから逃げ出した。

「逃げるな!・・アイツは必ずブッ倒す!」

 ノゾムが怒鳴って、タイガーランナーに乗ってコウジを追いかけた。

「オレもバイクに乗って突っ走るか・・!」

 ソウマが笑みをこぼしてから、新たなアニマルカードを取り出した。オオカミが描かれた「ウルフカード」である。

“ウルフ!”

 ソウマはビースドライバーにあるフォックスカードをウルフカードと入れ替えて、左上のボタンを押した。

“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”

 するとソウマの前に灰色のボディと狼のような頭部をしたバイクが走り込んできた。

「さぁて、オレも急いで追いかけて・・」

 ソウマがオオカミのバイク「ウルフルスロットル」に乗ろうとした。だがウルフルスロットルはスピードを緩めずに、ソウマに向かってきた。

「ちょ・・!?

 ソウマが慌ててジャンプして、ウルフルスロットルの突進をよける。

「おいおい、呼び出したオレの言うことを聞かないってか!?

 ソウマが苦笑いして、ウルフルスロットルの突撃に備える。

「だったら無理やり乗って、オレのほうが上だってことを教えてやらないとな・・!」

 向かってきたウルフルスロットルに対して、ソウマが再びジャンプする。彼はウルフルスロットルに乗って、ハンドルを握って振り落とされまいとする。

「あのビースターを追いかけるには、お前の速さが必要なんだよ!お前ならアイツが姑息なマネをしてきても、間違いなく追いつける!」

 ソウマがウルフルスロットルに呼びかける。すると彼を振り落とそうとしていたウルフルスロットルがおとなしくなる。

「よーし、いい子だ・・あのチーターのビースターを追いかけるぞ!」

 ソウマが笑みをこぼして、ウルフルスロットルを走らせる。ウルフルスロットルは一気にスピードを上げて、コウジを追って道を駆け抜けていった。

 

 タイガーランナーに乗ってコウジを追いかけるノゾム。しかしコウジにだんだんと離されていく。

「ちくしょう・・トラのバイクでも追いつけないっていうのかよ・・!?

 コウジのほうが速いことにいら立つノゾム。追いつかれないことを実感して、コウジが喜びを覚える。

 そのとき、横を何かがすり抜けてきたのを感じて、コウジが驚きを覚える。彼の前に回り込んだのは、ソウマとウルフルスロットルである。

「な、何っ!?

 ソウマに追い抜かれたことに動揺して、足を止めるコウジ。ノゾムもとっさにタイガーランナーを止めた。

「このオオカミのスピードには驚かされたぜ。他のヤツはもちろん、オレのスピードも大きく超えちまったよ。」

 ソウマもウルフルスロットルのスピードに驚いていた。ウルフルスロットルは最高時速1300キロにも到達する。

「これで鬼ごっこもオレの勝ちだな。諦めて倒されるんだな・・!」

「ちくしょう・・このままぶっ倒れてたまるかよ!」

 ウルフルスロットルのエンジンを鳴らすソウマにいら立って、コウジが飛びかかる。ウルフルスロットルが一気に加速して、コウジに突撃した。

「ぐはっ!」

 ウルフルスロットルの高速による突進の威力で、コウジが突き飛ばされて激しく地面に叩きつけられて、絶叫を上げる。

「とどめはオレがこのままもらうことにするよ!」

 ソウマがノゾムに呼びかけてから、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“ウルフチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ウルフルスロットルから光があふれ出していく。ソウマはウルフルスロットルを走らせて、コウジに向かっていく。

 迎え撃つコウジに向かうウルフルスロットルからあふれた光が、オオカミのような姿かたちになる。

「な、何だ・・!?

 オオカミの光を目の当たりにして驚くコウジ。光のオオカミが爪で彼を連続で切り刻んだ。

「がはぁっ!」

 光のオオカミの爪と牙を受けて、コウジが絶叫を上げる。駆け抜けたソウマとウルフルスロットルの後ろで、コウジが倒れて爆発を起こした。

「ふぅ・・ちょっと危なかったか・・・」

 ソウマがひと息ついてから、ノゾムに目を向ける。

「さっきはありがとうな。助けてくれなかったら危なかった・・」

「オレはオレであのチーターヤローをブッ倒そうとしただけだ・・」

 感謝するソウマに突っ張った態度を見せて、ノゾムはタイガーランナーを走らせてこの場を去った。

「ま、それでも感謝してるってことで・・・」

 ソウマも苦笑いしてから、ウルフルスロットルで去っていった。

 

 

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