仮面ライダーマックス
第11話「キツネの電光石火!」
再び激しい攻防を始めたノゾムとユウキ。マックスに変身しているノゾムと、ドラゴンビースターとなっているユウキが、力を込めて激しくぶつかり合う。
「オレにはやらないといけないことがある!お前に邪魔されるわけにはいかない!」
「ビースターは勝手なヤツばっかだ・・お前らのような連中は、野放しにしたらいけないんだよ!」
ユウキとノゾムが怒りの声を上げる。
“エレファント!”
ノゾムがエレファントカードを取り出して、ビースドライバーにセットした。
“チャージ・エレファーント!ハイフット・ハイレッグ・ハイハイエレファーント!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはエレファントフォルムに変身した。
「今度はパワーで押し込んでやる!」
ノゾムがユウキに向かってゆっくりと前進する。ユウキがキックを当てるが、ノゾムはものともしない。
ノゾムが力を込めた右手のパンチを、ユウキはジャンプしてかわす。
「力はあるがスピードが弱くなっているのか・・・!」
ユウキがエレファントフォルムの特徴を分析する。
「ならば当たらなければ!」
ユウキが向かってきたノゾムを迎え撃つ。ノゾムが繰り出すパンチを、ユウキが軽やかにかわす。
「コイツ、ゾウの弱点を・・!」
ユウキに攻撃が当たらず、ノゾムがいら立つ。
「こうなったら一気にぶっ潰してやる・・!」
“エレファントチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーの左上のボタンを2回押して、両足にエネルギーを集める。ユウキが剣を具現化して構えを取る。
ノゾムがジャンプして、ユウキに向かって両足のキックを繰り出す。ユウキは後ろに下がりながらキックを回避した。
その隙を狙って、ユウキが剣を投げつける。
「ぐっ!」
左肩に剣の切っ先を当てられて、ノゾムが突き飛ばされる。その瞬間、彼のキックが地面に当たった衝撃に襲われて、ユウキも吹き飛ばされた。
ユウキの剣を受けて突き飛ばされたノゾム。立ち上がる彼だが、ユウキの姿を見失う。
「アイツ・・攻撃をよけて攻撃までしてきた・・・!」
ユウキにいいように振る舞われたと思って、ノゾムがいら立ちを浮かべる。
「だけど今度は必ずブッ倒してやる、あのドラゴンヤロー・・・!」
ドラゴンビースターを倒そうとする決意をさらに強めるノゾム。
“スリービースト。”
彼はマックスへの変身を解いて、この場を後にした。
ユウキのキックの衝撃で吹き飛ばされたユウキ。彼もノゾムの行方を見失っていた。
「思っていた以上のパワーだった・・よけきれずに押された・・・!」
エレファントフォルムの想像以上のパワーに息をのむユウキ。彼がドラゴンビースターから人の姿に戻る。
「今度こそは油断しないで、アイツを倒すしかない・・アイツも、ビースターを倒そうとして、オレたちまで倒そうとしているのだから・・・!」
マックスを倒すことを自分に言い聞かせるユウキ。彼は再戦を考えながら、セイラのことを気にしてこの場を立ち去った。
動物公園の近くで待っていたツバキとタイチ。戻ってきたノゾムを2人が見つけて迎えに行った。
「ノゾム、大丈夫!?・・あのビースターは・・!?」
「あのサソリヤローはブッ倒した・・だけど、この前のドラゴンのビースターがまた出てきた・・・!」
ツバキの問いかけに答えて、ノゾムがドラゴンビースターに対するいら立ちを浮かべる。
「あのバケモノ連中が勝手なマネをするから、ワタルもみんなもイヤな思いをしてるんだよ・・・!」
両親を殺されたワタルのことを思い出して、ノゾムはさらに怒りをふくらませていく。
「ゴメン、ノゾム・・私にもっと力があったら、私が何とかできたのに・・ノゾムばかりに負担をかけなくて済むのに・・・」
自分の無力さを感じて、ツバキがノゾムに謝る。
「アイツらがオレや他のみんなにイヤな思いをさせてくるから、そうさせないためにブッ倒しているだけだ。別に気にすることじゃない・・」
しかしノゾムはツバキを責めることはせず、自分の考えを貫くだけだった。
「そういえばビースターって、何者なんだろう?・・人間の皮を被った悪魔ってことなのかな?」
タイチがビースターのことを考えて呟く。
「そうなんじゃないのか?もしもビースターが、元々人間でバケモノになっちまったとしても、勝手なマネをして他のヤツを苦しめていい気になってる連中に変わりない・・」
ノゾムは疑問には思わず、ビースターを滅ぼす決意を変えなかった。
「そうだよね・・お父さんや施設のみんなを襲った罪は変わらないんだから・・・」
ツバキも迷いを振り切ろうとして、ビースターへの怒りを感じていく。
「1番叩きつぶさないといけないのは、エックスビースというわけだ・・」
「ちょっとでも手がかりを見つけられたらいいんだけど・・・」
ノゾムが言いかけて、ツバキが小さく頷いた。
エックスコーポレーションの社長室。ジンキのいるこの部屋をシュンが訪れた。
「ドライバーとカードが持ち出されたそうですね。私もすぐに捜索に向かいます。」
シュンがジンキに報告してから、社長室を出ようとした。
「捜索の人員と合流して指揮しろ。手頃なビースターも導入してもいい。」
ジンキがシュンに向けて指示を送る。
「分かりました。指揮は私が執らせていただきます。」
シュンがジンキに一礼してから、改めて社長室を後にした。
(また退屈しない時間が過ごせそうだ。ま、全てオレの踏み台になるのだがな。)
何が起ころうと自分の思い通りに事が運ぶと確信して、ジンキは笑みを浮かべていた。
エックスビースで開発されていたベルトとカードの捜索を、黒ずくめの男たちが捜索を行っていた。その一団にシュンが合流した。
「ドライバーとカードは見つかったか?」
「いえ、犯人の行方もまだ特定できていません・・・」
シュンの問いかけに答えて、男が頭を下げる。
「もしもマックスと合流し、手を組むことになってしまったら厄介だ。1人ビースターを派遣しよう。」
シュンが言いかけて視線を移して、男もその先に目を向ける。彼らの前に逆立った髪の男が現れた。
「千田コウジ。性格には問題があるが、力と成績は目を見張るものがある。」
男、コウジを紹介するシュン。
「性格悪いとは言ってくれるな。別に指示通り動いてんだからいいじゃんかよ。」
コウジが愚痴をシュンたちに背を向ける。
「ま、オレは仕事をこなして金がもらえればそれでいいけどな・・今度の仕事は何だ?」
「我々の今の任務は、奪われたベルトとカードの奪還。犯人が変身して対抗するだけでなく、マックスが介入してくる可能性もある。」
気さくに振る舞うコウジに、シュンが任務の内容を伝える。
「マックス・・あのビーストライダーで、ビースターをやっつけてるヤツのことか。どれだけのもんか試したいのが本音だが、まずはベルトとカードを奪い返すことにするさ。」
「それと、裏切り者のビースターも出てくるかもしれない。注意しろ。」
「裏切り者までいるのか。面白くなっているじゃないか。」
「軽口が過ぎるぞ。裏切り者とはいえ、レベルの高いビースターだ。油断するな。」
自信を見せるコウジにシュンが注意を呼びかける。
「オレは強い。どんなヤツだろうと、邪魔するヤツもみんな始末してやるぜ。」
コウジは笑みを見せてから、シュンたちの前から去っていった。
「あんな態度の人、私たちエックスビースに置いてよろしいのですか・・?」
男がコウジへの疑念を口にする。
「言ったはずだ。性格に問題があるが、実力と実績は本物だと・・お前たちも捜索を続けろ。見つけ次第、私か千田に報告しろ。戦闘になる場合は深追いはするな。」
「分かりました。捜索を再開します。」
シュンの命令を受けて、男も行動を起こした。
(一刻を争う事態だ。どのような手を使ってでも任務を果たさなければ・・)
ベルトとカードの奪還を考えて、シュンは感覚を研ぎ澄ませていた。
スコーピオンビースターによって負傷したセイラだが、休息を経て歩いても違和感がないほどにまで回復していた。
「もう大丈夫みたい・・ゴメンなさい、ユウキ。すっかりお世話になっちゃったね・・」
「ううん、いいよ。セイラが無事で何よりだよ。」
謝るセイラにユウキが励ましの言葉を送る。
「私がこうして生きているのは、普通の人間じゃない、ビースターだから・・」
自分が背負った宿命と自分が選んだ道のことを考えて、セイラが悲しい顔を浮かべる。
「それでもオレたちには必要なんだ。この力が・・・」
「世の中を正しくするために戦う・・私たちは、その道を選んだんだから・・・」
自分たちの気持ちを確かめて、ユウキとセイラは頷き合う。自分たちが選んだ道と運命に後悔しないよう、2人とも自分に言い聞かせていた。
「誰か来るみたい・・・」
そのとき、セイラが別荘に近づいてくる足音を耳にした。少しして別荘のドアのノックの音がした。
「ワタルです。こんにちはー。」
声がかかってユウキがドアを開ける。ワタルが2人のいる別荘を訪れた。
「ワタルくん、こんにちは。」
「こんにちは、ユウキさん、セイラさん。セイラさんはケガは大丈夫なんですか?」
ユウキが挨拶して、ワタルがセイラに目を向ける。
「もう大丈夫・・タイチさんたちが助けてくれたおかげです・・もちろんワタルくん、あなたにも助けられたわ・・」
「いいや、そんな・・僕なんて大したことしてないよ〜・・」
セイラに感謝されて、ワタルが照れ笑いを見せる。
「後でタイチくんたちにもお礼を言わないとね。」
ユウキが微笑んで、ワタルも笑顔で頷いた。
(人間が信じられなくなっていたオレたちが、人間を信じようとしている・・不思議な感じだ・・・)
ユウキが心の中で自分の気持ちに揺らぎが起こっていることを気にする。
(ワタルくんやタイチくんたちが特別なんだ・・ビースターの中にも、身勝手なヤツがいたし・・・)
スコーピオンビースターのことを思い出して、ユウキが歯がゆさを覚える。心優しい人間もいれば、身勝手な人間もビースターもいる。この事実が彼らの心に揺さぶりをかけていた。
「ユウキさん、どうかしたの・・・?」
ワタルに声をかけられて、ユウキが我に返る。
「あ、いや、何でもないよ・・アハハ・・・」
彼がワタルに答えて、苦笑いを見せた。
「僕はそろそろ行くね。この後も手伝いやるからね。」
「ありがとう、ワタルくん。でもオレたちのためにワタルくんの時間を使うわけにはいかない。オレたちのことは気にせずに、ワタルくんはワタルくんの時間を大事にして。」
挨拶するワタルに、ユウキが励ましの言葉を送る。ワタルが頷いて笑顔を見せた。
ワタルがユウキたちと別れて別荘を後にした。ワタルを見送って、ユウキとセイラは顔を見合わせた。
「ワタルくんにも本当に感謝ね・・私のために一所懸命に・・」
「彼のような心の持ち主が身勝手な人に傷つけられないために、オレたちが何とかしないと・・・」
ワタルに感謝して微笑むセイラと、彼を思って決意を固める。
「人間でもビースターでも、オレたちは戦う・・そしてアイツも必ず・・・!」
戦意をふくらませていくユウキ。彼はマックスに対しても敵意を向けていた。
セイラが元気になったのを確かめて、ワタルも幸せを感じていた。彼はゴロウの家に向かって、軽い足取りで歩いていた。
「僕の時間かぁ・・僕のこれから、どうなっていくのかな・・・」
ユウキに言われたことから、自分はどうしていけばいいのか、ワタルは考えるようになっていた。
ゴロウの家に向かっていく途中、ワタルは足を止めた。彼の視線の先に2人の黒ずくめの男がいた。
「見つかったか?」
「いや・・足取りもまだつかめない・・・!」
男たちが会話をするのを、ワタルは物陰に隠れて聞き耳を立てる。
「早くベルトとカードを見つけ出さなければ・・我々の脅威に・・・!」
男たちの会話を聞いてワタルが息をのむ。
(ベルトとカードって、もしかしてビースターってヤツじゃ・・!?)
ワタルが男たちがビースターでないかと直感した。
(は、早くノゾムお兄ちゃんに知らせないと・・!)
ワタルが急いでノゾムに連絡しようと、この場を離れようとした。だがそのとき、彼はそばにあった小石を蹴飛ばしてしまう。
「あっ・・!」
「こ、子供!?」
「まさか、今の話を聞かれたのでは!?」
緊張を覚えるワタルに気付いて、男たちが振り返る。
「や、やばい!逃げろ!」
「おのれ!逃がすな!」
逃げ出すワタルと、追いかける男たち。ワタルはノゾムたちを捜して必死に走った。
動物公園でのこの日の仕事を終えて、ノゾムとツバキは公園の周りを歩いていた。
「この辺りも平和そうに見えるけど・・どこかでビースターが何か企んでいるのね・・・」
「コソコソ隠れてふざけたマネしてるヤツは、あぶり出して叩きつぶす・・2度とそんなマネができないように・・・」
悲しい現実を痛感するツバキと、ビースターへの怒りを噛みしめるノゾム。2人は心から安心できる世の中を願っていた。
「ノゾムお兄ちゃーん!」
そこへワタルの声がして、ノゾムたちが振り返る。ワタルが慌ただしく2人に駆け込んできた。
「ワタルくん、どうしたの・・!?」
「ビースターだよ!ビースターに見つかって・・!」
ツバキが声をかけて、ワタルが息を乱しながら答える。ノゾムが目つきを鋭くして、視線を移す。
ワタルを狙って2人の男が駆け込んできた。
「アイツらのことか・・ビースターだっていうなら、容赦しないぞ・・・!」
ノゾムが鋭く言って、マックスカードを手にした。
「それは!?」
「お前、マックス!」
男たちがマックスカードを見て、緊張をふくらませる。
「さっさと消え失せろ・・さもないと容赦しないぞ・・・!」
“マックス!”
男たちに言いかけて、ノゾムはマックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムがマックスに変身した。
「き、緊急事態です!マックスと遭遇!退避が間に合いません!至急応援を・・!」
男の1人が手首に付けている通信機に呼びかける。ノゾムが前進して、男たちが慌てて逃げ出す。
「さっさと逃げろと言ってるのに、仲間呼んでどうすんだよ・・・!」
ノゾムがいら立ちを浮かべて、男たちへの攻撃に踏み切る。
「お、おわあっ!」
男たちが追い詰められて、動揺を隠せなくなる。
そのとき、ノゾムが突然衝撃に襲われて、マックスのスーツから火花が散る。
「くっ・・何だ・・!?」
ノゾムがうめいて、周りを見回して襲撃してきた敵を捜す。しかし男たちのツバキ、ワタルの姿しか目撃できない。
“援軍が着いた。お前たちは撤退しろ。”
男たちに向けて、シュンからの通信が届く。
「わ、分かりました・・・!」
男たちがノゾムの動きを見計らいながら、この場を離れていく。
「アイツらは後回しだ・・オレを狙ってる他のヤツを・・・!」
ノゾムは襲撃者への迎撃を優先して、周囲に注意を向ける。直後、ノゾムは背中に衝撃を感じて、スーツから再び火花が散った。
「誰か、チョロチョロしてるな・・すばしっこくオレを攻撃してきてる・・・!」
ノゾムは敵の正体を模索していく。敵は高速で動いてノゾムを攻撃していた。
「だったら近づけさせないよ・・!」
“エレファント!”
ノゾムが思い立って、ビースドライバーのマックスカードとエレファントカードを入れ替えた。
“チャージ・エレファーント!ハイフット・ハイレッグ・ハイハイエレファーント!”
マックスのスーツの色が灰色に変わる。ノゾムはエレファントフォルムに変身した。
パワー重視のエレファントフォルムでは高速の相手に直接攻撃を当てられないことは、ノゾムは分かっていた。彼は直接攻撃しようとは思っていなかった。
「離れてろ、ツバキ!」
「う、うん・・!」
ノゾムが呼びかけて、ツバキが頷いて離れる。彼女の姿が遠ざかったのを確かめてから、ノゾムが右足を振り上げた。
「そりゃ!」
ノゾムが地面を強く踏みつける。彼を中心に衝撃と土煙が巻き起こる。
ノゾムの前にチーターの怪人が姿を現した。彼は目にも留まらぬ速さで動いて、ノゾムを爪で切りつけていた。
「オレの動きをそんな大ざっぱなマネで止めるとはな・・」
怪人、チータービースターがノゾムを見て笑みをこぼす。
「まずはお前の姿を拝まないことにはな・・オレを襲ってくるヤツの姿をな・・・!」
ノゾムが言いかけて、手を強く握りしめる。
「オレは千田コウジ。お前がマックスだな?」
「だったら何だ?」
名乗るチータービースター、コウジにノゾムが言葉を返す。
「そのベルトとカードをよこしな。そうすりゃ見逃してやってもいいぞ?」
コウジがノゾムに要求して、右手を伸ばして手招きする。するとノゾムがため息をついてきた。
「そういう脅しをされるとな、オレはムカムカしてくるんだよ・・・!」
ノゾムがいら立ちを口にして、ホークカードを手にした。
“ホーク!”
彼はホークカードをビースドライバーにセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・ホーク!ソウルショック・ソウルハート・スカイハイホーク!”
ホークフォルムへの変身を果たしたノゾム。彼はコウジにスピードで対抗しようとした。
「タカか。面白い。それでオレを捕まえられるか!」
コウジが笑みをこぼして、再び高速で動き出した。ノゾムも上に飛び上がって、コウジの攻撃に備える。
「いくらすばしっこくても、チーターじゃ空は飛べないよな!」
空中なら対処できると考えるノゾム。彼はコウジの居場所を探ろうとした。
「ぐっ!」
だが次の瞬間、ノゾムが左腕に衝撃を覚えてうめく。ふらつく彼だが、すぐに空中で体勢を整える。
「どういうことだ!?アイツが攻撃してきたのか!?」
ノゾムがコウジの行方を追う。ノゾムはコウジに攻撃されたことに気付いたが、彼がなぜ上空まで飛んでこれたのか分からなかった。
ノゾムは翼をはばたかせて空を移動して、建物のない場所へ出た。相手から姿が丸見えだが、空を飛んでこない限り攻撃されにくいと考えた。
「これなら、攻撃されても向こうの動きは直線的だ・・動きが見えなくても、捕まえることぐらいは・・・!」
ノゾムは身構えて、コウジの突撃に備える。ノゾムの耳に高速で動くかすかな音が入ってくる。
重い静寂の中、またマックスのスーツから火花が散った。その瞬間、ノゾムが手を伸ばしてつかんだ。
ノゾムに右腕をつかまれて、コウジが一瞬驚きを覚える。
「お前の攻撃か・・どうやってここまで・・!?」
「知りたいか?・・こういうことだ!」
疑問を投げかけるノゾムに答えて、コウジが腕を振りかざして彼を放り投げる。
「くっ!」
空中で踏みとどまるノゾム。彼が空中を蹴って動いているコウジを目の当たりにした。
「まさか、空を壁みたいに蹴って動いてるのか!?」
コウジの動きに驚くノゾム。コウジが地面に着地して、ノゾムを見上げて笑い声を上げた。
「空にも空気がある。オレは空気も地面や壁みたいに足を付けることができるんだよ。」
コウジが話をすると、また上空に向かって大きくジャンプした。彼は空中を蹴ってさらにジャンプすると、加速してノゾムを狙う。
「これじゃ空にいても変わらないじゃない!」
追い詰められていくノゾムに、ツバキが焦りの声を上げる。
「だったら1発で仕留めてやるだけだ・・!」
ノゾムがいきり立って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“ホークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムが全身から光を発して、コウジが仕掛けるのを待つ。コウジが高速で飛び込んで、ノゾムに爪を振りかざす。
ノゾムが光を強めて突撃を仕掛ける。だがコウジに紙一重でかわされる。
「何っ!?」
驚くノゾムに向かってコウジが突っ込んだ。体に突撃されて、ノゾムが体勢を崩して落下する。
「ノゾム!」
地上に落ちたノゾムにツバキが叫ぶ。痛みを感じながらも、ノゾムが力を振り絞って立ち上がる。
「しぶといな。これからもっと痛めつけてやるぞ!」
コウジが笑みをこぼして、ノゾムに向かって飛びかかる。彼の目にも留まらぬ速さで繰り出される爪が、マックスのスーツを切りつけていく。
「ぐあっ!」
ビースドライバーが外れて、ノゾムが突き飛ばされる。彼のマックスへの変身が解かれた。
「ノゾム!」
ツバキがノゾムに叫んで駆け寄ろうとする。しかし起き上がるノゾムが手を伸ばして彼女を止める。
追い詰められたノゾムの前にコウジが着地した。
「遊びは終わりだ。そのベルトとカードをもらうとするか。」
コウジが笑みをこぼして、ビースドライバーを奪おうとする。させまいとするノゾムだが、体に痛みが走って思うように動けない。
そのとき、コウジが突然突き飛ばされて、地面を転がる。直後、落ちていたビースドライバーもノゾムのそばまで滑るように転がってきた。
「な、何だ・・!?」
突然のことに驚くコウジ。ノゾムが力を振り絞って、ビースドライバーを拾う。
そのとき、1人の戦士がこの場に立っていた。黄色と茶色のスーツとキツネを思わせる形のマスクをした戦士である。
「何だ、コイツは!?・・マックスに、似てる・・・!?」
ノゾムもその戦士を見て驚く。戦士の腰にはノゾムが使っているものとは別の、ビースドライバーがあった。