仮面ライダーマックス

第9話「トキメキは突然!」

 

 

 動物公園での仕事を続けていたノゾム。ユウキとセイラも手伝いがしたいと、ゴロウにお願いをしてきた。

「住むところを提供していただいて、お世話になりっぱなしなのはよくないと思うので・・」

「私たちにできることでしたら、何でもやりますので・・」

 自分たちの思いを口にして、ユウキとセイラが頭を下げる。

「分かった。助かるよ、ユウキくん、セイラちゃん。」

 ゴロウが笑顔を見せて、ユウキたちに感謝する。

「それじゃまずは動物の小屋の手入れだね。動物はみんなデリケートだから慎重にね。」

 ゴロウが仕事の内容を説明して、ユウキたちが頷く。2人は真剣にゴロウの話を聞いていた。

「デリケートで純粋・・そういうのが好きかな、私は・・」

 セイラが自分の気持ちを確かめて微笑む。

(動物は人間とは違う・・自分勝手に他の生き物を弄んだりすることはない・・)

 動物のことを考えて、さらに身勝手な人間のことも思い出して、ユウキは安らぎを感じていた。

「分からないことがあったら僕かタイチに聞いて。難しいことばかりで、慣れるしかないことが多いから・・」

「はい。よろしくお願いします。」

 ゴロウの言葉を聞いて、ユウキが答えて微笑んだ。

「僕たちの仕事もにぎやかになってきたね。楽しくなってきた。」

「オレは騒がしいのは好きじゃないんだけどな・・」

 笑みをこぼすタイチと、不満げな素振りを見せた。

 

 ユウキとセイラはゴロウから動物の世話について教わっていた。2人は動物に優しく接して、彼ら自身も安らぎを感じていた。

(やっぱり動物は本当に純粋だ・・自分たちが安心して暮らすために行動している・・)

 自分たちが敵だと認識している人間とは違う。動物の生きる姿に触れて、ユウキは戸惑いを感じていた。

「どの動物も優しいですね。オレまで幸せになってきます。」

 ユウキが安らぎを感じて、ゴロウに微笑みかける。

「そう思ってもらえて、動物たちも喜んでいると思うよ。」

 ゴロウも笑顔を見せて、周りに視線を移す。

「僕やタイチは心から動物が好きだし、それを見に来るお客様も大好きさ。でもノゾムくんはちょっと違う・・」

「えっ・・?」

 表情を曇らせるゴロウの話に、ユウキも戸惑いを浮かべる。

「ノゾムくんは他人を素直に信じられなくなっている。自分の納得できないことにはとことん反発する。もう傷つきたくないと考えて、他人とは深く関わろうとしない・・」

 ノゾムについて語りかけて、ゴロウが深刻な顔を見せていた。

(同じだ・・ノゾムくんも、僕やセイラと同じような考えを・・・)

 ユウキはノゾムも自分と似ていると感じて、戸惑いをふくらませていく。

(でもだからって、ビースターというわけじゃない。下手に正体を明かしても、オレたちの居場所を失くすことになるかもしれない・・)

 ユウキは自分がビースターであることをノゾムやゴロウたちに打ち明けようとはしなかった。

(・・もしかして、オレはまだ、誰かを信じようとしているんだろうか・・・)

 気持ちの整理をしていくうちに、ユウキは自分の中にある願いに気付いて、心を揺さぶられる。

(まだ、結論を急ぐことはない・・オレは、敵だとハッキリしている相手を倒せばいいんだ・・・!)

 彼は自分に言い聞かせて、落ち着きを取り戻していった。

「だから、あんまり無理強いしないであげてほしんだ。といっても、ユウキくんもセイラちゃんならそういうことしないと思うけどね・・」

「は、はい・・分かりました・・・」

 ゴロウの頼みに、ユウキが戸惑いを見せながら答えた。

(辛いことを詮索されたくないのは、オレたちもみんなも同じなのか・・)

 ノゾムの心境を察して、ユウキは彼との共感を強めていた。

 

 別の動物の小屋の掃除をしていたセイラ。タイチが彼女のサポートをしていた。

「みんな、セイラさんのことを信じているみたいだね。すぐに心を開いている。」

「そうですか・・私のことを、信じているのですか・・・?」

 笑顔で言いかけるタイチの言葉を聞いて、セイラが小屋の中のウサギたちを見て戸惑いを浮かべる。

「動物はどんな相手でも、大丈夫だと思ったら心を開く。みんなが信じているから、セイラさんに掃除させてくれたんだよ。」

「私を、信じてくれている・・・」

 タイチの話を聞いて、セイラが心を揺さぶられる。

(やっぱり、動物は人間とは違う・・悪いことは考えず、真っ直ぐに思いに応えてくれる・・・)

 動物の純粋さを理解して、同時に身勝手な人間とは違うことも認識して、セイラは複雑な気分を感じていた。

(人間も動物たちのように、純粋で心優しかったなら・・・)

「セイラさん、どうかしたの?」

 タイチに声をかけられて、セイラが我に返る。

「あ、ごめんなさい、タイチさん・・」

 セイラがタイチを見て苦笑いを見せる。

「あ、あんまりムリしなくていいからね。何かあったら僕がやるから・・」

「は、はい・・ありがとうございます、タイチさん・・」

 励ましの言葉を投げかけるタイチに、セイラが感謝する。彼女の微笑みを目の当たりにして、タイチが動揺を覚える。

「あの・・タイチさん・・・?」

「えっ?・・アハハ、ゴメン、ゴメン!」

 セイラに声をかけられて、タイチも我に返る。

(僕、セイラさんから信頼されているかもしれない・・・!)

 心の中で感動の声を上げるタイチ。彼はセイラに心をひかれて、すっかり舞い上がっていた。

「セ、セイラさん・・あの・・その・・・!」

 タイチが思いを伝えようと、セイラに話を切り出そうとした。

「こ・・ここ・・ここここ・・・!」

「こ・・・?」

「こ・・子犬とか子猫とかも好きですか!?

 思い切って告白することができず、タイチが突拍子のないことを口走った。

「え・・あ、はい・・大好きです・・」

 セイラは緊張を和らげて、微笑んで答えた。彼女はタイチが緊張をほぐそうとしてくれたのではないかと思った。

 一方でタイチは緊張がふくらんで、セイラに動揺を見せないようにするのに必死になっていた。

 

 授業を終えて下校した女子高生たちが、街に寄り道して買い物に来ていた。

「ここのお店、新作ケーキが今日出るみたいだよ♪ちょっと行ってみよう♪」

「今あたし、お財布がピンチなんだよねぇ〜・・今日はちょっと勘弁してほしいよ〜・・」

 女子たちが予定について会話をはずませていた。

「行くならおごってよ〜♪ねぇねぇ〜♪」

「おごらない、おごらない。後でお金返してよね。」

 屈託のない会話を繰り広げていく女子たち。彼女たちは街の人混みの中を歩いていた。

 そのとき、女子の1人が後ろ首に痛みを覚えて、歩くスピードを緩めた。

「ん?どうしたの?」

 もう1人の女子が彼女を気にして声をかける。

「うん・・首のところがチクッて・・」

 女子が痛みを感じた後ろ首に手を伸ばした。次の瞬間、彼女が突然ふらついて倒れた。

「ちょっと!どうしたの、ねぇ!?

 呼びかける女子だが、倒れた女子は全く動かない。彼女たちに街にいた人たちが集まってきた。

 次の瞬間、周囲の人たちも体の一点に痛みを覚えて、次々に倒れていく。

「う、うわあっ!」

 周りの人たちが悲鳴を上げて、その場から逃げ出していく。突然倒れた人たちがそこに取り残されることになった。

 

 一気に混乱が広がった街中。人々が逃げ惑う様子を、1つの影が見つめていた。

「狙いも正確。獲物もたくさん仕留めた。逃げる人間の姿もたまらん。」

 影が喜びと手ごたえを感じて笑みを浮かべる。

「人間なんてオレの獲物だ。逃げ切れないのに逃げ惑うところを見るのは実に愉快だ。」

 自分の野心を呟いて、影がさらに笑う。

「派手に立ち回りすぎです。後処理をする我々の身にも、少しはなってください。」

 そこへ1人の男がやってきて声をかけてきた。黒いスーツを着た男である。

「そんなこと気にしてたら楽しめなくなるもんだ。だから誰だろうが口出しはしてくるな。」

「そうはいきません。あなたの今の行動は、私たちの事業に支障をきたすことになっているのです。」

「お前たちの都合など知ったことか。オレは狩りを楽しみたいだけだ。」

「これ以上の勝手な行動は、裏切り者として処罰されることになります。」

 自分の考えで行動しようとする影に、男が警告を送る。すると影がため息をついた。

「オレに勝手なマネをすれば、お前たちが獲物と見なされることになるぞ・・」

 男に忠告を返すと、影は彼の前から姿を消した。

「仕方のないことだ・・半端に力を持って自惚れるビースターも、少なくないですが・・」

 男が呆れて肩を落とす。

「しかし社長は違います。あの人の力は絶対的ですから。」

 1つの確信を胸に秘めて、男もこの場から立ち去った。

 

 この日の夕食時、ノゾムたちはゴロウの家で、一緒に食事をとっていた。ユウキとセイラはそこにはおらず、別荘で2人だけ食事をしていた。

 ゴロウの家とユウキたちのいる別荘の間に距離があるのが理由である。

 ユウキとセイラはさらに迷惑をかけてはいけないと思い、ゴロウも2人の気持ちを汲み取って、気を遣って聞き入れた。

「ユウキさんとセイラさん、2人だけで大丈夫かな・・・?」

 ツバキがユウキたちのことを心配して、窓越しに外を見つめる。

「スマホも持っているし、ここと向こうの直通電話もあるから、何かあってもすぐに何とかできるよ。」

 ゴロウがユウキたちを信じて微笑みかける。

「相変わらずゴロウさんはお人よしなんだから・・」

「困っている人をほっとけないのが、ゴロウさんの性格なんだから。」

 呆れて肩を落とすノゾムと、苦笑いを見せるツバキ。

「僕もゴロウさんに感謝ですよ。ゴロウさんやノゾムお兄ちゃんたちがいなかったら僕・・」

 ワタルがゴロウたちへの思いを口にする。

「ワタルくんやみんなが幸せになってくれるなら、それは僕にとっても幸せだよ。これからもここを自分の家だと思っていいから。」

「ゴロウさん・・ありがとう、ゴロウさん・・・」

 笑顔を見せるゴロウにお礼を言って、ワタルが目から涙を浮かべた。

「飯時に泣くなって・・しょっぱくなるぞ・・」

「だって・・だって・・・」

 呆れた素振りを見せるノゾムに、ワタルが声を振り絞る。

「ま、まぁ、焦んなくていいからね、ワタルくん・・ゆっくり食べてね。」

「おかわりも遠慮なくしていいから。」

 タイチとゴロウがワタルに励ましの言葉を送る。ワタルが小さく頷いた。彼は落ち着きを取り戻してから、ご飯を頬張った。

「みんな、単純なんだからな・・・」

 ノゾムが肩を落としてから、食事を続ける。

(そう・・こんな単純なほうが、オレは楽だな・・・)

 ノゾムは心の中で安らぎを感じていた。のんびりゆったりと過ごせる日常に、彼は安心していた。

 

 ノゾムたちとは別に食事をしていたユウキとセイラ。ゴロウたちのことを気にしながらも、2人は彼らと距離を置いたほうがいいとも思っていた。

「結果的に、これでよかったのかもしれない・・あんまり関わりすぎると、逆にゴロウさんたちを危険に巻き込むことになってしまう・・」

「うん・・みんなは、私たちを弄んだ敵とは違う・・笑顔を見せて、手を差し伸べてくれた・・・」

 納得していくユウキとセイラ。彼らはゴロウの優しさを真っ直ぐに受け止めていた。

「本当にみんな親切で・・ゴロウさんも、タイチさんも・・」

 記憶を巡らせていたところで、セイラがタイチの様子がおかしかったことを思い出して、疑問を感じていく。

「どうしたの、セイラ?」

「え、あ・・タイチくんの様子がちょっと落ち着きがなかった気がして・・・」

 ユウキが声をかけて、セイラが照れながら答える。

「タイチくんも、オレたちと話すことに緊張しているのかな・・・?」

「そうかもしれない・・私たちも、初めて会ってから打ち解けるまで時間がかかるし・・」

 ゴロウたちとの生活への戸惑いを感じていくユウキとセイラ。

「ねぇ・・私たち、本当は何のために戦っているのかな・・・?」

 セイラが唐突に1つの疑問を投げかけた。

「私たちは自分勝手な人間を滅ぼそうとしている・・でも人間全員を滅ぼそうとしているわけじゃない・・現に私たちは、ゴロウさんたちに心を許している・・・」

「こういうのは、矛盾していることかもしれない・・それでも、オレたちの気持ちにウソは付けない・・・」

 自分の正直な気持ちを確かめ合うセイラとユウキ。

(このままゴロウさんたちのお世話になればいいの?・・それとも私たちは、あの人たちも・・・)

 人間は守るべきなのか滅ぼすべきなのか。セイラは戦うことへの迷いから、苦悩と不安を感じていた。

 

 次の日の朝、ノゾムたちは朝食を取りながら、TVのニュースを耳にしていた。

“次々と多発する死亡事件は、都内だけで20人が死亡しています。いずれも針のようなもので刺されており、強い麻痺を引き起こす毒素が検出されています。”

「う〜ん・・またおっかないことが起こっているね・・」

 ゴロウが事件について不安を感じていく。

「ノゾム、これってもしかして・・」

 ツバキが小声でノゾムに言いかける。

「そうかもな・・オレが見つけて、ブッ倒してやる・・・」

 事件の犯人がビースターであると思って、ノゾムがビースター打倒の決意を固める。

「ユウキくんとセイラちゃん、今日は街のほうに出かけるって言ってたよ。」

「えっ!?

 ゴロウが口にした言葉に、ノゾムとツバキが声を上げる。

「私、ちょっと出かけてきます!」

 ツバキが慌てて外へ飛び出して、ノゾムも彼女に続く。

「ツバキちゃん、ノゾムくん!・・どうしたんだろう、2人とも・・?」

 ノゾムたちのことを気にして、ゴロウが首をかしげた。

 

 エックスビースのことを調べようと、ユウキとセイラは行動を再開した。2人は人の行き交う街に来ていた。

「たくさんの人がいるけど、そのみんなが、ゴロウさんたちみたいに優しいわけじゃない・・」

「私たちを傷付ける、自分さえよければそれでいいと思っている人もいる・・そんな人がいなければ、私たちもみんなも・・・」

 自分勝手な人間への怒りを噛みしめるユウキとセイラ。2人は戦う理由を見出そうとしていた。

「それに、ビースターの中にも、オレたちが許せないと思っている敵がいる・・」

 ユウキが言いかけて、セイラが小さく頷く。2人の敵全員が人間というわけではない。

 そのとき、ユウキが異様な気配を感じて緊張を覚える。

「どうしたの、ユウキ・・?」

 セイラがユウキの様子を気にして声をかける。彼女はユウキの感じている気配に気付いていない。

「狙っている・・誰かがオレたちを・・・でも、どこからなのか・・・」

 言いかけて周りに視線を移していくユウキだが、気配の正確な位置を特定するには至らない。

 次の瞬間、セイラは何かが飛ぶ音を耳にした。かすかで一瞬だったが、彼女には聞こえた。

「ユウキ!」

 セイラがとっさに飛びついて、ユウキを引き離す。2人が直前までいた場所に、小さな針が飛んできて地面に刺さった。

「あ・・ありがとう、セイラ・・・!」

「ううん・・危ないところだったけど、気付けてよかった・・・」

 お礼を言うユウキに、セイラが安心する。2人が振り向いた先にあった針が、霧のように消えた。

「空気に触れてすぐに消えた・・これで証拠が残らないのか・・・!」

 消えた針を見てユウキが呟く。彼とセイラはビースターが攻撃してきたことを直感した。

「これをよけるとは、ただ者じゃないな。お前らもビースターだな?」

 ユウキたちの前に1人の男が現れた。逆立った髪の男で、ユウキたちを見て笑みを浮かべていた。

「お前もビースター・・もしかして、エックスビースの!?

「そんなことは知ったことじゃない。獲物を仕留められれば、オレはそれでいい。」

 問いかけるユウキに言い返す男の姿が変化する。サソリを思わせる姿の怪人、スコーピオンビースターに変わった。

「人間だろうとビースターだろうとな!」

 スコーピオンビースターが言い放つと、サソリの尻尾のような形の触手を背中から伸ばした。その先端からユウキを狙って針を飛ばす。

 ユウキがドラゴンビースターになって、針をかわす。セイラもキャットビースターになって、スコーピオンビースターを迎え撃つ。

「オレに近づけると思うなよ!」

 スコーピオンビースターが背中からさらに数本の触手を出してきた。セイラがとっさに地面を強く踏んで、スコーピオンビースターの頭上を飛び越える。

 スコーピオンビースターが触手から針を飛ばす。セイラは素早い動きで針をかわす。

「逃げろ、逃げろ!逃げ惑う獲物を仕留めるほうが、より楽しめるというもんだ!」

 スコーピオンビースターがあざ笑って、セイラに迫る。距離を詰めてきたことをチャンスと思って、セイラが反撃に転ずる。

「かかったな!」

 スコーピオンビースターが目を見開いて、セイラへ針を飛ばす。

「うっ!」

 右足に針1本刺されて、セイラが苦痛を覚えて顔をゆがめる。

「セイラ!」

 ユウキが怒りを覚えて、剣を具現化してスコーピオンビースターに飛びかかる。

「オレの思うように獲物が動いてくれると、心が躍るな・・!」

 スコーピオンビースターが笑みをこぼして、ユウキに向かって針を飛ばす。ユウキが剣を振りかざして、針をなぎ払う。

 スコーピオンビースターが毒づきながら、ユウキから1度距離を取る。その間にユウキがセイラに駆け寄って支える。

「大丈夫、セイラ!?しっかりするんだ!」

「ユウキ・・刺された足がしびれて、動かせない・・・!」

 呼びかけるユウキに答えるも、セイラは足を思うように動かせなくなる。

(アイツの針の毒が・・ビースターだから、麻痺ぐらいで済んだというべきなのか・・・!)

 セイラの状態を確かめて、ユウキは彼女と一緒にこの場を離れる。

「逃がしはしないぞ・・!」

 スコーピオンビースターがユウキたちを追っていった。

 

 ユウキとセイラのことを気にして、ノゾムとツバキも街に出ていた。しかしノゾムたちのそばには、多くの人が行き交っていた。

「これじゃどこにいるのか分かんないぞ・・・!」

「電話にも出ない・・連絡が付けばすぐに行けるのに・・!」

 ノゾムがいら立ちを浮かべて、ツバキが不安を口にする。人混みのため、2人はユウキとセイラを見つけることができない。

「ちょっと離れてからまた連絡入れるか・・・!」

 ノゾムのこの言葉にツバキが頷く。2人は人混みから離れて、改めてユウキたちへの連絡を試みる。

 そのとき、ノゾムが人の姿のユウキとセイラが駆けていくのを目撃した。

「あれは・・!」

 ノゾムが声を上げて、ツバキも振り返る。ユウキたちをスコーピオンビースターが追いかけていく。

「ビースターに追われているのか・・!」

 ノゾムが目つきを鋭くして、マックスカードを手にした。

“マックス!”

 彼がマックスカードをビースドライバーにセットして、走り出す。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムがマックスに変身する。彼はユウキとセイラを追うスコーピオンビースターに飛びかかる。

「ぐっ!」

 不意を突かれたスコーピオンビースターが、そのままノゾムに投げられる形で距離を取る。その一瞬に彼はユウキたちを見失う。

「その姿・・お前があのマックスか・・・!」

 スコーピオンビースターがノゾムを見て笑みをこぼす。

「ビースターは1人残らずブッ倒す・・オレの怒りは限界突破だ!」

 ノゾムが叫んで、スコーピオンビースターに飛びかかる。

「マックスを仕留めるほうが、狩りの面白みがあるか!」

 スコーピオンビースターがノゾムを迎え撃つ。ノゾムが繰り出すパンチが、スコーピオンビースターに叩き込まれる。

「至近距離じゃ不利か・・だったら狩りの本場だ!」

 スコーピオンビースターがノゾムから離れて、物陰に隠れた。

「ちっ!アイツ、コソコソと何かする気か!?

 ノゾムが周りを見回して、スコーピオンビースターの行方を探る。

「仕留めてやるぞ・・オレの針で・・・!」

 スコーピオンビースターが小声で呟いて、ノゾムを狙って触手から針を飛ばした。

 

 

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