仮面ライダーマックス

第7話「タカの速さで大追跡!」

 

 

 マックスに変身したノゾムと、ドラゴンビースターとなったユウキ。2人がパンチとキックを繰り出してぶつけ合って、激しい攻防を繰り広げる。

「何だ、コイツは!?・・ビースターとは違う・・・!?

「今までのビースターとは違う・・とんでもない強さだぞ・・・!」

 ユウキとノゾムが互いの強さに毒づく。

「こうなったら、コイツでブッ倒してやる・・!」

 いら立ったノゾムが、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。

“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ノゾムの右足にエネルギーが集まる。彼はユウキに向かって大きくジャンプする。

 ユウキが右手を強く握りしめる。彼の右手に力が集まって、光が集まる。

 ノゾムがキックを、ユウキがパンチを同時に繰り出す。光を宿した2人の攻撃がぶつかって、激しい衝撃が巻き起こる。

「ぐっ!」

「うあっ!」

 ノゾムとユウキが大きく吹き飛ばされて、路地と茂みの中に入って姿を消した。

 セイラは緊迫を覚えて、ユウキを追いかける。

「ノゾム・・タイチくん、起きて!大変なの!」

 ツバキが呼びかけて、タイチが意識を取り戻した。

「ぼ・・僕・・・」

「タイチくん、よかった・・気が付いたんだね・・・!」

 声を振り絞るタイチに、ツバキが笑みをこぼす。

「タイチくん、ノゾムが大変なの!すぐに追いかけないと!」

「ノゾムが!?

 ツバキが事情を話して、タイチが驚いて飛び起きる。

「こっちだよ!急がなくちゃ!」

「う、うんっ!」

 ツバキが呼びかけて、タイチが頷く。2人もノゾムを追いかけて走り出した。

 

 ノゾムとの激突で吹き飛ばされたユウキ。茂みからはい出たところで、彼は人の姿に戻る。

「アイツ・・とんでもない強さだ・・ビースター以上の力だ・・・!」

 マックスのことを思い出して、ユウキが憤りを覚える。

「ユウキさん!」

 同じく人の姿に戻ったセイラが、ユウキに駆け寄った。彼女がふらついたユウキを支える。

「大丈夫ですか、ユウキさん!?

「うん・・オレは平気・・それよりもセイラさんは・・・!?

 セイラとユウキが互いを心配する。

「私は大丈夫です・・あのトシヤという人は追い払いましたけど、その後にあの仮面の人が現れて・・」

「そうだったのか・・でも君が無事でよかった・・・」

 セイラが事情を話して、ユウキが彼女の無事に安心を感じた。

「あなたも無事でよかった・・ユウキさん・・・ユウキ・・・」

「うん・・ありがとう、セイラ・・・」

 2人は微笑み合って、絆を深めた。

「タイチさん・・タイチさんがトシヤに襲われて・・・」

 セイラがタイチのことを思い出して歩き出す。

「親切にしてくれただけじゃなく、私をトシヤから守ろうとしてくれた・・だから無事なのを確かめないと・・・」

「セイラ・・・分かった。オレも行くよ。」

 セイラの言葉を聞いて、ユウキが頷く。2人がタイチたちのところに戻ろうとした。

 

 ユウキとの戦いで路地まで飛ばされたノゾム。倒れたはずみでビースドライバーが外れて、彼はマックスへの変身が解けていた。

「ノゾム!」

 ツバキとタイチがノゾムを見つけて駆けつけてきた。

「ノゾム、しっかりして!大丈夫!?

 ツバキが支えてタイチが呼びかける。ノゾムが意識を取り戻して、2人の顔を目にする。

「オレ・・どうなったんだ・・・!?

「ノゾム、気が付いたんだね・・・!」

 周りに視線を移すノゾムに、タイチが安心の笑みを浮かべる。

「ノゾムもあのビースターも吹き飛ばされて・・」

「それじゃ、アイツがどうなったのかは分かんないか・・」

 ツバキの話を聞いて、ノゾムが歯がゆさを覚える。彼はドラゴンビースターを思い出して、いら立ちを感じていた。

「あの龍のビースター、すごかった・・今まで見たビースターの中でも強かった・・・」

 ツバキもドラゴンビースターのことを考えて、深刻さを感じていく。

「タイチさん・・タイチさん・・・」

 そのとき、タイチが声を聞いて振り向いた。セイラが彼を捜して呼びかけていた。

「セイラさん・・セイラさんが僕を捜している・・!」

 タイチがセイラのほうへ駆け出していく。

「タイチくん、どうしたの・・?」

「さぁ・・アイツは能天気だから、時々何考えてるのか分かんないことがある・・」

 ツバキが疑問符を浮かべて、ノゾムが肩を落とす。2人もタイチを追いかけるように歩き出した。

 

 タイチを捜して通りを歩いていくセイラ。彼女を気に掛けながら、ユウキも一緒に通りを歩く。

「タイチさん、どこに行ってしまったの・・・?」

 タイチを心配して、セイラが周りを見回す。

「セイラさん!」

 タイチが姿を見せて、セイラに声をかけた。

「タイチさん、無事だったんですね・・!」

 セイラがタイチを見て、安心の笑みをこぼす。ノゾムとツバキもユウキたちの前にやってきた。

「あなたはさっきの・・タイチくんを助けてくれて、ありがとうございました。」

 ツバキがユウキを見て戸惑いを感じて、お礼を言う。

「いえ、タイチさんが私を助けてくれたんです・・ありがとうございました。」

 セイラがタイチへの感謝を口にする。

「ではオレたちは行きます。本当にいろいろありがとうございました。」

 ユウキがノゾムたちに頭を下げて、セイラと一緒に歩き出す。

「ユウキ、これからどうするつもりなの・・・?」

 セイラがユウキにこれからのことを聞く。

「どこへ行くかは決めていない・・どこへ行ったらいいのか分からない・・・」

 ユウキが深刻な顔を浮かべて答えて、セイラが不安を浮かべる。2人の顔を見て、ノゾムが1つの引っ掛かりを覚えた。

「お前ら、何かワケありなのか?」

 ユウキがふと声をかけてきて、ユウキたちが振り向く。

「何かやろうとしてるけど、どうしたらいいのか分かんないってとこか・・?」

「ちょっとノゾム、聞いちゃまずいって・・・!」

 問いかけるノゾムをタイチが慌てて呼び止める。

「す、すみません、失礼なこと言って・・!」

 タイチが顔を赤くして、ユウキとセイラに謝る。

 そのとき、おなかの鳴る音が突然出た。ユウキが思わず自分のおなかに手を当てた。

 動揺のあまり、ユウキは言葉が出なくなる。

「お、お食事だけでもしていきませんですか・・・?」

 タイチが言葉を切り出して、苦笑いを見せてユウキとセイラを誘った。

「やれやれ・・やっぱオレのことを言えないなタイチは・・」

 ノゾムがタイチを見て肩を落とす。ツバキはただただ苦笑いを見せるばかりだった。

 

 ゴロウの別荘にユウキとセイラを連れてきたタイチたち。そこでタイチはゴロウにユウキたちのことを話した。

「そうか・・2人とも地元でイヤな思いを・・」

 ゴロウがユウキとセイラに視線を向けて、戸惑いを感じていく。

「2人とも、住むところとかはあるのかい・・・?」

 ゴロウが問いかけるが、ユウキもセイラも言葉を詰まらせる。

「よかったら僕の別荘を使ってみたら?」

「えっ・・?」

 ゴロウからの提案に、ユウキとセイラがあ然となる。

「また始まったよ、お父さんの癖が・・」

「誰彼かまわず保護しようとするんだから・・・」

 タイチとノゾムがゴロウの親切に呆れて、ツバキが苦笑いを見せた。

「でも、オレたちのためにわざわざ・・」

「気にしなくていいって。困ったときはお互い様なんだから・・」

 戸惑いを見せるユウキに、ゴロウが笑顔を見せる。

「あ、でも僕やタイチたちとはちょっと離れたところになっちゃうけど、それでいいなら・・・」

 ゴロウの話を受けて、ユウキとセイラが顔を見合わせる。このままゴロウの世話になっていいのか、2人は即答できなかった。

「でも、あなたたちに迷惑をかけちゃうんじゃ・・・」

「迷惑になんてならないよ。自分の家だと思ってくれていいから。ノゾムくんもツバキちゃんも僕たちのところで暮らしているしね。」

 ユウキが不安を口にすると、ゴロウが照れ笑いで答えてノゾムたちに目を向ける。

「それじゃ、お言葉に甘えることにしますね・・・」

 セイラが微笑んで答えて、ユウキも小さく頷いた。

「ゴロウさーん、お兄ちゃーん!」

 そこへ学校から帰ってきたワタルが、ゴロウたちの前に来た。

「おかえり、ワタルくん。こちら、ユウキくんとセイラさんだ。」

 ゴロウが声をかけて、ワタルにユウキたちを紹介する。

「はじめまして・・ゴロウさんの息子さんですか・・?」

「えっ?・・いや、この子も僕が引き取ったんだよ。」

 ユウキが挨拶して、ゴロウが苦笑いを見せて答える。

「みんなのことを家族だと思って、気軽にすごしていいから。」

 笑顔を見せるゴロウに、ユウキとセイラは笑みをこぼす。

「ったく、騒がしくなってきたもんだ・・」

 ノゾムが呆れ果てて、1人この場を後にした。

 

 1人自分の住んでいる別荘に戻ったノゾム。彼を追いかけてツバキも走ってきた。

「ノゾム、1人で帰ったりして・・あの2人のことで何かあるの?」

「2人のことは気にしちゃいない・・気にしているのは、あのドラゴンのビースターだ・・」

 ツバキが声をかけてきて、ノゾムがドラゴンビースターのことを思い出す。

「アイツをこのままにはしておかない・・もちろん他のビースターもだ・・」

「でもあのドラゴンのビースターは強力だよ。マックスでも勝てるかどうか・・」

「勝つんだよ!・・自分のために他のヤツを傷付けていい気になっている連中の思い通りには、オレは絶対にならない・・!」

 ビースターへの敵意をむき出しにするノゾムに、ツバキが戸惑いを浮かべる。

「でも、マックスじゃ勝ちきれないし、ゾウじゃパワーはあってもスピードが足りなくなるし・・」

「だったら他の手を使えばいいだけのことだ。他にもカードがあっただろ。」

 不安を口にするツバキに言い返して、ノゾムがカードホルダーにあるアニマルカードを確かめる。

「トラのような、変身じゃなくてサポートのためのカードもあるし・・」

 ツバキもカードに目を通して、考えを巡らせる。

「パワーもスピードもちょっとはマシになるヤツはどれか・・・」

 カードを見ていくノゾムが、1枚のアニマルカードに目を向けた。

「タカか・・これならマシになりそうか・・・」

 タカのアニマルカードを目にして、ノゾムがそのカードを頭に入れた。

 

 セイラに追い払われて、トシヤはいら立ちをふくらませていた。

「まさかなり立てにオレが手を焼かされるとは・・・!」

 ビースターになったばかりの人に負けるわけがないと思って、トシヤが声を振り絞る。

「確実に・・確実にヤツらの息の根を止めてくれる・・どんな手を使っても・・!」

 セイラとユウキの抹殺に躍起になるトシヤ。彼はユウキたちの動きを見定めようと、暗躍を再開した。

 

 ゴロウの親切を受けて、彼の別荘で暮らすことになったユウキとセイラ。2人はゴロウに対して複雑な気分を感じていた。

「あの人、信じていいのかな?・・オレたちを信じさせて、何か利用している可能性も・・・」

 ユウキがゴロウに対する疑問を口にする。信じていたのに裏切られたという過去が、彼を疑心暗鬼にさせていた。

「たとえ何か企んでいて、私たちを騙そうとしていたのなら、それが分かるまでは行動を起こすのはやめよう・・」

 セイラが正直な思いを口にして、ユウキに制止を呼びかける。

「もし何か企んでいると分かったら、そのときに手を打てばいいだけだし・・・」

「だけど・・・」

「私たちは、私たちを傷付けた人みたいな身勝手な人じゃないし、人殺しをしたいわけでもない・・悪い人が許せないだけ・・・」

 セイラの言葉を受けて、ユウキは納得して頷く。

「オレたちは、信じられるものが何もないわけじゃない・・何も信じられなくなったら、オレたちは戦おうとする気持ちも湧かなくなる・・・」

「何も気に病むことなく、心から信じることができる・・そんな世の中になってくれたらって思う・・・」

 自分たちの戦う理由と本当の願いを確かめ合ったユウキとセイラ。2人はこの新しい家で、自分たちの戦いを続けることにした。

 

 ユウキとセイラがゴロウの別荘に住むことになってから一夜が明けた。

 ノゾムはいつものように、公園の動物の世話に向かった。タイチも彼と一緒に来ていた。

「おじさんのお節介にはマジで気が滅入る・・みんな助けようとして・・オレには理解できないぞ・・」

 ノゾムがゴロウのことを考えてため息をつく。

「まぁ、父さんは行き過ぎだと僕も思うけど、誰かを信じたり助けようって思ったりすることは悪いこととはいえないんじゃないかな・・」

「そんなこと、今の世の中に期待したところで・・・」

 前向きな気分で言いかけるタイチだが、ノゾムは誰か人を信じようとする気持ちがまだ持てないでいた。

「こういうのは理屈じゃないか・・心のどこかで納得しなくちゃ、誰から何を言われても受け入れられない・・ノゾムの性格はそうだもんね・・」

 ノゾムのことを考えて、タイチが肩を落とす。彼はノゾムの心の傷が浅くないことを改めて痛感していた。

 そのとき、ノゾムは視線の先の人物を気にして、目つきを鋭くする。

「どうしたの、ノゾム?」

 タイチが声をかけるが、ノゾムは答えずに、去っていく人物を注視する。彼はその人物のほうに向かって歩き出す。

「ノゾム!?

 タイチが動揺を見せながら、ノゾムを追いかけていった。

 

 ユウキとセイラの行方を追うトシヤ。彼は2人の行動を辿って、公園の近くを歩いていた。

(この近くにヤツらは潜んでいるのか?見つけ次第、逃げる間も与えずに仕留める。)

 ユウキたちの息の根を止める機会を見逃さないように、トシヤは感覚を研ぎ澄ませていた。

「こんなところで何やってるんだ、アンタ?」

 道を歩いていたところで、トシヤが声をかけられた。ノゾムがやってきて、彼に声をかけてきた。

「とてもここに来て動物を見て楽しむ格好じゃないな。何か違う用事をするヤツの格好だ。」

「どのような姿で来ようと、オレの自由ではないのか?」

 ノゾムに指摘されて、トシヤが笑みをこぼす。

「それにその先に動物はいないぞ。動物目当てじゃないってことじゃないのか?」

 ノゾムがさらにトシヤに指摘する。

「何か違う目的でここに来たってことだろ?違うなら何をするか話してくれないか?」

 ノゾムに問い詰められて、トシヤがさらに笑みをこぼす。タイチがノゾムに追いついて、トシヤに目を向ける。

「ヘンに首を突っ込まなければ、痛い目にあわずに済んだものを・・」

 トシヤがため息をついてから、目つきを鋭くする。彼の姿が変化して、バードビースターとなった。

「ビースター!?

 タイチがトシヤを見て、驚きのあまりにしりもちをつく。

「ほう?ビースターのことまで知っていたか。ならばなおさら野放しにしてはおけないな。」

 トシヤが言いかけて、ノゾムたちに迫る。

「野放しにしておかないのはこっちのセリフだ。自分の目的のために他のヤツを平気で傷つけるビースターは、オレがブッ倒す・・!」

 ノゾムが怒りの声を口にして、ビースドライバーのカードホルダーからマックスカードを取り出した。

“マックス!”

 彼はビースドライバーにマックスカードをセットした。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押したノゾムが、マックスへ変身した。

「オレの怒りは限界突破!」

 言い放ったノゾムがトシヤに向かっていく。トシヤは軽やかな動きで、ノゾムが繰り出すパンチをかわしていく。

「お前があのマックスだったとはな。だがその程度のスピードではオレには追いつけないぞ!」

 トシヤがノゾムをあざ笑って、足を振り上げて蹴り飛ばす。

「ぐっ!」

 押されてうめくノゾムがふらつく。トシヤが飛びかかって、ノゾムに連続にキックを当てていく。

「このヤロー・・いい気になるな!」

 ノゾムがいきり立って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。

“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 彼は大きくジャンプして、足にエネルギーを集めたキックを繰り出した。トシヤが翼をはばたかせて、飛び上がってキックをかわした。

「えっ!?飛んだ!?

 空へ上がったトシヤを見上げて、タイチが驚きの声を上げる。

「本当の地獄はここからだ!」

 トシヤがスピードを上げて、ノゾム目がけて降下してきた。ノゾムがパンチで迎え撃つが、トシヤの突撃を受けて地面に叩きつけられる。

「ノゾム!」

 タイチが叫ぶ前で、ノゾムが力を振り絞って立ち上がる。

「降りてこい!卑怯だぞ、お前!」

「これはオレの力!オレの戦い方だ!獲物を仕留めるためならば正々堂々になる必要はない!」

 怒鳴りかかるノゾムをトシヤがあざ笑う。

「あう〜!マックスにも空を飛ぶ力があったなら〜!」

 打開の策を考えて、タイチが頭を抱える。

「空を飛ぶ・・鳥・・もしかしたら・・・!?

 そのとき、ノゾムが1つのひらめきを覚えた。彼がビースドライバーのカードホルダーから取り出したのは、タカのカードだった。

「コイツを使わせてもらうぞ・・・!」

“ホーク!”

 「ホークカード」をビースドライバーにセットするノゾム。

“チャージ・ホーク!ソウルショック・ソウルハート・スカイハイホーク!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押した彼が、さらなる変身を遂げる。マックスのスーツのメインカラーが黄色となって、マスクもタカを思わせる形に変わった。さらに腕から翼が生えていた。

 マックスの別形態「ホークフォルム」である。

「マックスの姿が変わった!?タカだと!?

 トシヤがノゾムの新たな姿を見て驚く。

「タカみたいな姿になった・・これなら飛べるはず・・・!」

 自分の姿を確かめて、ノゾムが意識を集中する。彼が鳥のように翼をはばたかせる。

 するとノゾムの体が宙に上がって、そのまま舞い上がった。

「飛んだ!ノゾムも飛んだよ!」

 タイチがノゾムを見て喜ぶ。ノゾムも鳥のように、タカのように空を飛んだ。

「だが飛べるようになったところで、スピードまでは!」

 トシヤがいきり立って、加速してノゾムを狙って突っ込む。ノゾムもスピードを上げて、トシヤとの距離を縮めていく。

 ノゾムへの突撃を狙うトシヤ。しかし突進をかわされて、ノゾムが繰り出したパンチを体に受けて、体勢を崩す。

「バカな!?オレのスピードを超えるなど!?

 トシヤがノゾムのスピードを目の当たりにして、さらに驚く。

「オレは力を手に入れた・・あのようなわけの分からないヤツに負けてなるか!」

 トシヤがいら立ちをふくらませて、腕を振りかざす。彼の翼から羽根が矢のように放たれる。

 ノゾムは羽根の矢を素早くかわして、さらに手足を振りかざしてはじき飛ばす。

「く、くそっ!」

 トシヤがノゾムに向かって突っ込む。

「オレはお前らビースターを倒す・・1匹たりとも見逃しはしない!」

 ビースターへの怒りを噛みしめて、ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを2回押す。

“ホークチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ノゾムの体を光が包み込む。彼も加速して、トシヤとぶつかり合う。

 ノゾムが前に出した両手のパンチが、トシヤの体に叩き込まれた。

「がはぁっ!」

 トシヤが絶叫を上げて突き飛ばされて、地上に急降下した。ビル地帯に落ちた彼を、ノゾムは見失う。

「くっ・・逃がしちまったか・・・!」

 ノゾムがいら立ちを感じながら、タイチの前に降り立った。

「すごい!すごいよ、ノゾム!マックスの新しい力だね!」

 タイチがノゾムに駆け寄って、感動の眼差しを送る。

「すごいっていうなら、このタカのカードだろうな・・」

 ノゾムが言いかけて、ビースドライバーからホークカードを取り出した。

“スリービースト。”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、彼はマックスへの変身を解いた。

「これでまたマシになったってことか。マックスもオレも・・」

 ホークカードを見つめながら呟くノゾム。彼はビースター打倒という決意をさらに強めていた。

 

 ノゾムの攻撃を受けて致命傷を負ったトシヤ。人の姿に戻った彼は、残った力を振り絞って歩き続けた。

 そしてトシヤは、別荘から外に出てきたユウキとセイラの前に来た。

「お前は、トシヤ・・!」

 ユウキがトシヤを見て身構える。セイラもトシヤに対して緊張を覚える。

「お前たちは逃れることはできない・・オレでなくても他のビースターが・・エックスビースが逃しはしない・・」

「エックスビース・・・!?

 声を振り絞るトシヤの言葉に、ユウキが息をのむ。

「お前たちは・・エックスビースに従うしかない・・さもなければ、命はない・・・」

 ユウキたちに忠告を送るトシヤ。彼が力尽きて、その場にうつ伏せに倒れる。

 トシヤの体がユウキたちの前で崩壊を起こした。煙のように消滅した彼を目の当たりにして、ユウキもセイラも動揺を隠せなくなる。

「消えた!?・・もしかしてこれが、ビースターの最期・・・!?

「私たちも死んだら・・何も残らない・・・!?

 死を迎えたビースターを目の当たりにして、ユウキとセイラが恐怖と緊迫を感じていく。ビースターへと変貌した宿命を、2人も痛感していた

 

 

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