仮面ライダーマックス
第5話「ドラゴンとネコの遭遇!」
不良の女性たちに襲われたセイラ。彼女たちの前に、ドラゴンビースターとなったユウキが現れた。
「な、何だ、コイツは!?」
「バケモノ!?」
不良たちがユウキたちを目の当たりにして、恐怖して後ずさりする。
「お前たちは絶対に正しくない・・自分で絶対正しいと言い張る時点で、自ら絶対正しくないことを証明しているのだから・・」
ユウキが不良たちに向けて鋭く言いかける。
「よくも・・よくもあたしらのダチを!」
不良の1人がいら立ちをあらわにして、ユウキに飛びかかる。
「よ、よせ!」
他の不良が呼び止めるのも間に合わず、ユウキが右手を振りかざす。彼の爪が不良の1人を切りつけた。
「ひいっ!ホントのバケモノ!」
不良たちが悲鳴を上げて、ユウキたちから逃げ出す。
(あの人・・私と同じ・・!?)
セイラはユウキを見て戸惑いを覚える。彼女は激情をふくらませて、体を震わせる。
「あなたたちも許されない・・自分が正しいことにして、他を悪者に仕立てるのは・・・!」
低く鋭い声を上げるセイラから、黒い霧があふれ出す。
「何だ、コイツ!?どうしたってんだ、この小娘!?」
「まさか、コイツも・・!?」
不良たちがセイラの変化を見て驚く。セイラもネコの怪人、キャットビースターに変身した。
「バ、バケモノが2人!?」
「コイツも!?・・ヤベェ!マジでヤベェよ、おい!」
2人のビースターに挟まれて、不良たちの緊迫と恐怖は頂点に達していた。
「早く逃げろ!殺されちまう!」
不良たちが慌てて逃げ出すが、ユウキとセイラにすぐに回り込まれてしまう。
「自分たちだけ逃げて助かろうとしても、そうはさせない・・・!」
「あなたたちのような存在を、絶対に許しはしない・・・!」
ユウキとセイラが怒りを口にする。2人に憎悪を向けられて、不良たちが絶望する。
「た、助けて!助けてくれ!」
「見逃してください!もう2度と悪いことはしません!だから命だけは!」
不良たちが涙ながらに命乞いする。しかしユウキたちの怒りを逆撫でするだけだった。
「そうやって助かろうとするなら、最初からふざけた前をするな・・・!」
ユウキが鋭く言って、剣を具現化して振りかざす。彼の剣が不良たちを切りつける。
「何だよ・・何なんだよ、こんなムチャクチャ!?」
絶望のあまりに叫ぶ不良。彼女の眼前にセイラが迫る。
「私はあなたたちの思っている以上のムチャクチャを経験しているのよ・・・!」
セイラは低く言うと、不良の横を素早くすり抜けた。次の瞬間、不良が倒れて動かなくなった。
「こんなのがいるから、世の中はおかしいのよ・・・」
理不尽への不満を噛みしめて、セイラが両手を強く握りしめる。彼女の人間への不信感は強まる一方だった。
「君も、人間を憎んでいるのか・・・?」
ユウキがセイラに目を向けて声をかけてきた。
「あなたは、誰?・・私と同じ存在なの・・・?」
セイラが恐る恐るユウキに問いかける。
「オレも詳しいことは分からない・・多分、オレと君は同じなのかもしれない・・人の姿を持っているけど、人とは違う存在・・・」
答えるユウキがドラゴンビースターから人の姿に戻る。
「あなたも、人の姿に・・・」
セイラが戸惑いを覚えて、人の姿に戻る。
「君も人の姿に・・」
彼女を見てユウキも戸惑いを感じていた。
ノゾムとタイガーランナーの戦いで、パンサービースターは倒れた。しかしワタルは両親を失って、悲しみをふくらませていた。
「ワタルくん・・・」
涙を流しているワタルに、タイチも悲しみを覚える。ツバキも不安を隠せなくなっていた。
「すまない・・オレが早くアイツをやっつけられてたら・・・」
ノゾムがワタルに謝罪の言葉を口にした。
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃんは悪くないよ・・お兄ちゃんがいなかったら、敵討ちもできなかったんだから・・・」
ワタルが首を横に振って、ノゾムに感謝する。
(オレがいなかったら・・オレしかやれなかったんだよな・・・)
この戦い、やれたのは自分だけ。ノゾムは心の中でそう自分に言い聞かせて、やるせない気持ちを抑えようとする。
「ノゾムが自分を責めて謝るなんて・・・」
ツバキがノゾムの態度に戸惑いを覚える。
「ノゾムは疑心暗鬼が強いけど、責任感も強いんだ。自分のしたことからどんな影響が出るのか、心のどこかで考えてしまうんだよ・・」
タイチがノゾムのことを語っていく。彼の話を聞いて、ツバキはさらに戸惑いを感じていく。
(周りからイヤな思いをされたくない。その分、自分が誰かにイヤな思いをさせないようにっていう気持ちも強い・・自分が嫌っている人に自分がなりたくなくて・・・)
ノゾムの心境を知って、ツバキは自分の胸に手を当てる。
(だから、押し付けられることに反発したり、何かに深く関わろうとしなかったりした・・それなのに私、自分のことばかり・・・)
自分を中心に考えていたことを、ツバキは後悔する。
「ワタルくん、ちょっといいかな・・?」
タイチが切り出した話に、ワタルが耳を傾けた。
その後、警察がワタルの家にやってきて、両親の殺害の捜査が始まった。
しかしワタルやツバキたちは犯人は見ていないと言った。ビースターのことを話しても信じてもらえないし、余計な騒ぎになるかもしれないとも思ったからである。
そしてワタルはタイチたちに連れられて、ゴロウの別荘に来た。タイチはゴロウにも警察に話したのと同じことを話した。
「そんなことがあったとは・・大変だったね、ワタルくん・・」
ゴロウが言いかけて、ワタルの肩にそっと手を添える。
「それで父さん、お願いがあるんだけど・・」
「分かっている。ワタルくんも僕が引き取ることにするよ。この辺りに僕の別荘はたくさんあるしね。」
頼みごとを切り出そうとしたタイチに、ゴロウが頷く。
「ありがとう、父さん!・・でもワタルくんは、家の僕の隣の部屋でいいんじゃないかな・・」
感謝するタイチが、ワタルと顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
「ありがとう、ゴロウさん・・僕のために・・・」
「困ったときはお互い様さ。遠慮しないで甘えていいからね。」
戸惑いを見せるワタルに、ゴロウが笑顔を見せた。
「よかった・・ワタルくんがさみしくならなくて・・・」
ツバキがワタルを見て安心の笑みをこぼす。
「ワタルがおじさんに引き取られたことはな・・」
ノゾムが突っ張った素振りを見せて言いかける。
「オレがさっさとアイツをブッ倒せてたら、ワタルがこんな目に合わずに済んだのに・・」
「自分を責めすぎだよ、ノゾム・・ノゾムが戦ってくれなかったら、ワタルくんも私たちも・・・」
悔やむノゾムをツバキが励ます。それでもノゾムは納得しない。
「あのヒョウヤローみたいな怪物はみんな、オレがこの手でブッ倒す・・アイツらの身勝手でイヤな思いをしないために・・」
ノゾムは決意を固めた。自分の目的のために他を平気で犠牲にするビースターを倒す決意を。
「ノゾム・・・」
自らの意思で戦いに身を投じていくノゾムに、ツバキの心は揺れていた。
ビースターへと変貌したユウキとセイラ。2人は自分たちの身に起きたことを語り合った。
「君も、ムチャクチャなことに心を引き裂かれて・・・」
「あなたも、裏切られて、許せなくなっていたんですね・・・」
互いの話を聞いて共感していくユウキとセイラ。悪いことを押し付けられるのが耐えられなくなって、2人はビースターになったのを機に、悪いことをする人を仕留めることを心に決めていた。
「それであなたは、これからどうするんですか・・?」
セイラが不安を感じながら、ユウキに問いかける。
「分からない・・でもオレはこの力を、世の中を正すために使いたいと思っている・・」
「私も・・そんな感じになりそう・・今の私には、それしかないから・・・」
ユウキとセイラがそれぞれの思いを口にする。
「君とオレは、同じ道を辿ることになるかもしれない・・」
「だったら、これから一緒に行動しませんか・・?」
ユウキが口にした言葉を聞いて、セイラが提案を持ちかける。
「一緒に・・オレたちで力を合わせるのがいいのかもしれない・・・」
「ありがとう・・私、どうしたらいいのか分からなかったんです・・・」
ユウキが聞き入れて、セイラが微笑んで感謝する。
「先のことは分からない・・でも、世の中のため、オレたち自身のために何とかしなくちゃとは思っている・・」
「じっとしていても何も変わらない・・行動を起こさないと・・・」
思いを通じ合わせて、ユウキとセイラは歩き出した。ゆがんでいる世界を正すために、2人は戦いに身を投じた。
運命の出会いを果たしたユウキとセイラ。歩き出す2人を見つめる影があった。
「2人をうまく引き込むことができれば、面白くなりそうだ・・・」
影は笑みを浮かべて、闇の中に消えていった。
タイチたちの家の部屋で過ごすことになった。しかし悲しみが拭えず、彼は寝付くことができなかった。
そして次の日。学校から帰ってきたワタルは、タイチと一緒に買い物に出かけた。これはワタルを気遣ったゴロウの提案だった。
「今日の夜ご飯は、ワタルくんのリクエストに応えちゃうよ。遠慮しないで言ってね。」
タイチがワタルに気さくに言いかける。ワタルはまだ悲しい顔を浮かべている。
「しっかりとご飯を食べて、元気にならなくちゃ。僕たちまで元気がなくなっちゃうよ・・」
「タイチお兄ちゃん・・でもやっぱり、パパとママのこと・・・」
タイチが励ましの言葉を送っても、ワタルは笑顔を見せない。両親を殺された彼の悲しみは浅くはなかった。
「僕たちがこれからのワタルくんの家族さ。君のホントの家族と比べたら役不足だけどね・・」
「お兄ちゃん・・お兄ちゃんたちが、これからの家族・・・」
タイチの投げかける言葉を聞いて、ワタルが戸惑いを覚える。
「ノゾムも居候だし、ツバキちゃんも新しく別荘で暮らしているし。だからワタルくんも甘えていいから・・」
「お兄ちゃん・・僕のためにここまでしてくれて、ありがとう・・・!」
タイチの優しさを受けて、ワタルはようやく笑顔を取り戻した。
「さ、早く買い物を済ませて、みんなと楽しい夜ご飯だ。」
「うんっ♪」
タイチに明るく声をかけられて、ワタルも笑顔で頷いた。
そのとき、ワオンが突然そばの路地に向かって吠えだした。
「どうしたんだ、ワオン?」
ワタルが声をかけるが、ワオンは路地のほうに吠え続ける。
「もしかして、何かあるのかな・・・?」
タイチもワオンの様子を気にして、路地に目を向ける。
「ワオン、お兄ちゃんたちと初めて会ったときも、いつもと様子が違ってた・・ただの偶然かもしれないけど・・・」
ワタルは記憶を呼び起こして、ワオンのことを思い返していく。
「行ってみよう・・何かあるのかもしれない・・・!」
ワタルがワオンと一緒に路地の中に入っていく。
「あっ!ワタルくん!」
慌てて追いかけるタイチ。彼らは路地の先の小さな空き地に出た。
「ワタルくん、出ちゃいけない・・!」
タイチが小声で呼びかけて、ワタルを引き戻す。空き地にはアリの姿をした怪物がいた。
アリの怪人、アントビースターは空き地で男数人を手にかけていた。
「やはり力があるのはすばらしいな。たとえ警察に出くわしても捕まりはしないからな。」
アントビースターが自分の力に自信を持って笑みを浮かべる。
「しかも人間はありんこ以上にウジャウジャいるからな・・たとえば・・」
アントビースターは呟いて視線を移す。
「そこに隠れているヤツらとか・・」
彼が口にした言葉を聞いて、タイチとワタルが緊迫を覚えた。
「ま、まずい・・ここは逃げよう・・!」
タイチがワタルとワオンを連れて逃げ出す。彼はスマートフォンを取り出して連絡を試みた。
公園の動物の世話をしてから、ノゾムは公園の中を歩き回っていた。彼はビースターのことを考えて、いら立ちを感じていた。
(ビースターとかいうヤツら・・コソコソやってないで出てこい・・オレがブッ倒してやる・・・!)
ビースターへの怒りと憎しみを噛みしめるノゾム。
そのとき、ノゾムがスマートフォンが着信したことに気付いて取り出した。
「タイチ、どうした?買い物じゃないのか?」
“ノゾム、大変だ!ビースターに追われてる!”
ノゾムが聞いてきて、タイチが慌ただしく呼びかける。
「ビースター!?・・どこだ!?どこにいる!?」
“商店街の近くの小道!他の人を巻き込まないように、商店街から離れてる!”
「すぐ行く!絶対に逃げ切れよ!」
タイチとの連絡を終えて、ノゾムはスマートフォンをしまって駆け出した。
「商店街なら近いな・・!」
呟くノゾムがビースドライバーを身に着けて、カードホルダーからマックスのカードを取り出した。
“マックス!”
彼はマックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。彼はジャンプして、家の屋根やビルの屋上を跳び渡っていく。
アニマルパワーを宿しているビーストライダー。マックスに変身したノゾムは、変身する前よりも身体能力が上がっていた。
「どこだ・・タイチたちはどこだ・・・!?」
ノゾムが感覚を研ぎ澄ませて、タイチたちの行方を探る。マックスとなったことで、彼の五感も鋭くなっていた。
そしてノゾムが小道を駆けていくタイチ、ワタル、ワオンを発見した。
「いた!」
ノゾムがビルの上から飛び降りて、タイチたちとアントビースターの間に急降下した。
「タイチ!」
「ここからはオレがアイツの相手をする・・お前らはさっさと逃げろ・・!」
足を止めて声を上げるタイチに、ノゾムがアントビースターに目を向けたまま呼びかける。
「お兄ちゃん・・そいつも悪い怪物だよ・・僕のパパとママを殺したのと同じ・・・!」
ワタルが声を振り絞って、ノゾムに呼びかける。
「ワタル、分かってる・・コイツもオレがブッ倒してやる・・・!」
ノゾムが低い声で言いかけて、ワタルが小さく頷いた。
「早く行け!」
「ノゾム・・うんっ!」
ノゾムの呼びかけに頷いて、タイチはワタルとワオンを連れて逃げ出した。
「せっかくの獲物を逃がすオレじゃないぞ・・」
アントビースターがタイチたちを追いかけようとする。だがノゾムが繰り出したパンチを体に受けて、アントビースターが引き倒される。
「逃がさないのはこっちのセリフだ・・・!」
ノゾムがアントビースターを見下ろして言いかける。
「邪魔してくるか・・まぁ、お前を仕留めるほうが面白いか・・」
立ち上がったアントビースターがノゾムを見て笑みをこぼす。
「他のヤツを苦しめたり傷つけたりして楽しんでる・・そんなヤツを見ると、イライラして我慢がならない・・!」
ノゾムが怒りをあらわにして、アントビースターに飛びかかる。アントビースターはジャンプして、ノゾムのパンチをかいくぐる。
「あのヤロー・・アリのくせにすばしっこいヤツだ・・!」
ノゾムがアントビースターへのいら立ちをふくらませる。
「ヘッヘッヘ。お前もズタズタにしてやるぜ・・」
アントビースターが笑い声を上げて、口から白いガスを吐く。ノゾムはとっさに横に転がって、ガスをかわす。
「ちっ・・ギ酸ってヤツか・・!」
ノゾムが毒づいて、アントビースターに対して構えを取る。
「だんだんと追い込んで、息の根を止めてやるよ・・」
アントビースターが再び口からギ酸を吹き出した。ノゾムはジャンプでギ酸をかわして、アントビースターの後ろに回り込んで足を突き出した。
「ぐっ!」
後ろから蹴り飛ばされて、アントビースターが前のめりに倒れる。
「コイツ、けっこう強いじゃないか・・・!」
アントビースターがノゾムの力に毒づく。
「お前のようなのはさすがに勘弁したいところだな・・!」
アントビースターは肩を落としてため息をついたところで、ノゾムの前から逃げ出した。
「おい!逃げるな!」
ノゾムが怒鳴るが、彼よりもアントビースターのほうが速い。
「くそっ!だったら・・!」
ノゾムがカードホルダーからタイガーカードを取り出した。
“タイガー!”
彼はタイガーカードをビースドライバーにセットして左上のボタンを押した。
“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”
ビースドライバーから音声が流れる。路地から出たノゾムの前にタイガーランナーが駆けつけた。
「今回も頼むぞ・・あのアリヤローをブッ倒す・・!」
ノゾムは呼びかけて、タイガーランナーに乗る。タイガーランナーはノゾムを拒むことなく、アントビースターを追って走り出した。
街外れへと逃げて走っていくアントビースター。ノゾムがタイガーランナーを走らせて、アントビースターを追う。
そしてタイガーランナーが追いついて、アントビースターを後ろから突き飛ばした。
「ぐっ!」
仰向けに倒れたアントビースターの前で、タイガーランナーが停車した。ノゾムはビースドライバーにあるタイガーカードとマックスカードを入れ替えて、左上のボタンを2回押す。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムの右足にエネルギーが集まる。彼は大きくジャンプして、アントビースターにキックを繰り出した。
「ぐおっ!」
アントビースターが突き飛ばされて、地面を大きく転がった。
「こんなところでやられるなんて・・オレはまだ、獲物を仕留めるのを楽しみたいのに・・・!」
1度立ち上がったアントビースターが再び倒れて、爆発を起こして消滅した。
「お前みたいなのがいるから、オレは安心して生活できないんだよ・・・!」
怒りやいら立ちを噛みしめて、ノゾムが両手を握りしめる。タイガーランナーに目を向けて、彼は落ち着きを取り戻して力を抜く。
「ありがとうな。お前のおかげで助かった・・」
ノゾムがタイガーランナーの頭を撫でて感謝する。タイガーランナーが反応して、ノゾムに喜ぶ素振りを浮かべた。
ノゾムに助けられて、タイチ、ワタル、ワオンは動物公園の近くまで来ていた。そこで彼らはノゾムが戻ってくるのを待っていた。
「ノゾムお兄ちゃん・・大丈夫かな・・・!?」
ノゾムのことを心配してそわそわするワタル。タイチが彼の肩に優しく手を乗せてきた。
「大丈夫だよ、ワタルくん。ノゾムはイヤなことは絶対に受け入れようとしないからね。簡単にはやられないよ。」
「タイチお兄ちゃん・・・うん・・」
タイチから励まされて、ワタルが涙を拭って頷いた。
そのとき、タイチたちの前に、マックスへの変身を解いたノゾムが戻ってきた。
「ノゾム・・・!」
「お兄ちゃん!・・あの怪物は・・・!?」
タイチが声を上げて、ワタルがノゾムに駆け寄る。
「ブッ倒した・・トラと一緒に追いかけてな・・」
ノゾムが答えて、後ろに振り返って拳を握りしめる。
「自分勝手なバケモノは、見つけ次第オレが叩く・・イヤな思いをしないように・・・」
「お兄ちゃん・・僕、お兄ちゃんみたいに力があるわけじゃない・・でも、僕だってパパとママの仇を討ちたい・・・」
ビースターへの怒りを噛みしめるノゾムに、ワタルが感情をあらわにする。
「僕も僕のやれることをやるけど・・お兄ちゃん、力を貸して・・わがままとか甘えてることとかになっちゃうけど・・・!」
「ワタル・・わがままじゃない・・自分で何とかしようって気持ちがあるからな・・」
自分自身の決心を告げるワタル。ノゾムが彼の頭を優しく撫でる。
「どうしてもってときは、お前も当てにするからな・・」
「ノゾムお兄ちゃん・・うんっ!ありがとう!」
微笑みかけるノゾムに、ワタルが笑顔で頷いた。2人のやり取りを見て、タイチは戸惑いを感じていた。
同じビースター、同じく世の中への怒りを抱えている者同士。
ユウキとセイラは志を同じくして、行動を起こそうとしていた。
「この近くに、不良がたむろしているそうです・・」
「もしも自分たちのことしか考えない連中なら、オレたちが思い知らせないといけない・・」
セイラが告げた情報を聞いて、ユウキが憤りを湧き上がらせる。
「誰かの身勝手なヤツらで一方的に振り回されるのは、オレたちで最後にしないと・・もう悲劇を起こさせない・・オレたちが何とかするんだ・・」
ユウキが口にした言葉に、セイラが小さく頷く。
「お前たち、ビースターだな?」
そのとき、ユウキとセイラに向かって声がかかった。足を止めた2人の前に、1人の男が現れた。
「ビースター?オレたちのことを言っているのですか・・?」
ユウキが男が口にした言葉に疑問を覚える。
「あなたは誰ですか?私たちに何の用ですか?」
セイラが警戒心を抱きながら、男に問いかける。
「オレの名は大坂トシヤ。お前たちと同じビースターだ。」
男、トシヤがユウキたちに自己紹介をした。彼に対してユウキとセイラは動揺を隠せなくなっていた。