仮面ライダーマックス
不滅のライダーカード
第4章
ツバキとタイチを追いかけて、ノゾムとソウマも廃工場にたどり着いた。2人はツバキたちの悲鳴を耳にしていた。
「ツバキたちはこの辺りにいるのか・・・!?」
「分からない・・ここが怪しいっていうのは分かるけど・・・!」
ノゾムが声を上げて、ソウマが周りを見回す。2人は慎重に工場の中を歩いていく。
「あっ!・・ツバキ、タイチ!」
「何っ!?」
そのとき、ノゾムが声を上げて、ソウマが振り返る。2人が倒れているツバキとタイチを見つけた。
「ツバキ、しっかりして!ツバキ!」
「タイチ!おい、タイチ!」
ソウマとノゾムがツバキとタイチを支えて呼びかける。ツバキたちが意識を取り戻して目を開いた。
「・・ソ、ソウマくん・・ノゾム・・・」
「ぼ、僕たち、気絶しちゃったのか・・!?」
ツバキが声を上げて、タイチが周りを見回す。
「そ、そうだ!ミラちゃんは!?ミラちゃんはどこに!?」
タイチがミラを心配して立ち上がる。
「アイツなら見かけてないが・・見つけたのか・・!?」
ノゾムが答えて警戒を強める。
「それなんだけど・・」
タイチが答えようとしたときだった。工場の中に足音が響いてきた。
「みんな、気を付けろ・・また悪いライダーが来たのかもしれないぞ・・!」
ソウマが呼びかけて、ノゾムたちも周囲に注意を向ける。足音はさらに響くと、彼らの前に黒い装甲の戦士が現れた。
「アイツも悪いライダーってことでいいのか・・!?」
ソウマが言いかけて、ノゾムがその戦士、オーガに向かっていく。
“マックス!”
ノゾムがマックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ノゾムがマックスに変身して、オーガに攻撃を仕掛ける。しかし彼のパンチをオーガが手で防いでいく。
「ツバキとタイチは早くミラを見つけてくれ・・!」
「ソウマくん、待って!」
呼びかけて飛び出すソウマを、ツバキが呼び止める。
“フォックス!”
ソウマは立ち止まることなく、フォックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
彼はフォックスに変身して、ノゾムに加勢する。
ソウマがスピードを上げてキックを繰り出すが、オーガに難なく防がれる。
「オレは戦う・・愚かな人間たちを滅ぼすために・・・」
オーガが呟いて、ノゾムとソウマに迫る。
「人間を滅ぼすだと!?・・そんなマネさせるか!」
ソウマが怒りを見せて、オーガに攻撃を仕掛ける。しかしオーガはキックを防いで、ソウマの左腕をつかんだ。
「何っ!?おわっ!」
ソウマがオーガに投げ飛ばされて、資材の山に叩きつけられる。
「ソウマ!・・アイツ・・!」
ノゾムが声を上げて、オーガに向かっていく。だがオーガの繰り出した右のパンチを体に受けて、ノゾムが突き飛ばされて壁に叩きつけられる。
「ちくしょう・・なんてパワーだ・・!」
起き上がったソウマがオーガの強さを痛感する。
「人間は愚かな生き物だ・・自分の都合しか考えず、他人を平気で傷つける・・そのようなヤツらにいいようにはさせない・・」
「オレもそういうヤツは気にくわないな・・!」
オーガが口にした言葉に、ノゾムが言い返す。
「だけどな、人間みんなを始末するっていうのは賛成できないな・・身勝手なヤツだけじゃなく、いいヤツもたくさんいる・・それは人間もそうじゃないヤツも関係ない・・!」
「ノゾム・・・」
自分の考えを口にするノゾムに、ソウマが戸惑いを見せる。
「人間だからってだけで、いいヤツまで叩き潰そうとするなら、オレはお前を許さない!」
ノゾムがオーガに向かって言い放つ。
そのとき、ノゾムの目の前に光の玉が飛んできて、彼が手を伸ばしてつかむ。光の玉は1枚のカードに変わった。
「このカードは・・RX・・!」
ノゾムがカードを見て戸惑いを覚える。仮面ライダーBLACK RXが描かれたライダーカード「RXカード」である。
「使わせてもらうぞ、アンタの力・・!」
“RX!”
ノゾムが言いかけてから、ビースドライバーにあるマックスカードとRXカードを入れ替えた。
“チャージ・アールエーックス!リボルパワー・エックスパワー!サンシャインライダー・アールエーックス!”
マックスのスーツが黒と深緑に変わった。黒くなったマスクにもRXの顔を思わせる模様が入った。
「おいおい・・RXになっちゃったよ・・!」
ソウマがノゾムの姿を見て驚きを覚える。
「オレの居場所はオレが守る!」
ノゾムが言い放ってオーガに飛びかかる。ノゾムが繰り出すパンチを体に受けて、オーガが押されていく。
さらにノゾムがジャンプして、両足のキックを繰り出した。オーガがキックを受けて、廃工場から外へ飛び出した。
「倒れるわけにはいかない・・オレは人間の支配を変える・・・!」
オーガが声を振り絞って、武器「オーガストランザー」を手にした。飛びかかってきたノゾムへオーガがオーガストランザーを振りかざして、マックスのスーツを切りつける。
「ぐっ!」
さらにオーガストランザーを突き立てられて、ノゾムが突き飛ばされて壁に叩きつけられる。
「ノゾム!」
工場から出てきたソウマがノゾムに叫ぶ。
「アイツ!」
ソウマがオーガに向かっていって、連続でキックを叩き込む。しかしオーガには通じず、オーガストランザーに切りつけられる。
「ぐっ!」
地面を転がるソウマがうめく。立ち上がる彼の前にオーガが立ちはだかる。
「終わりだ。お前も人間も・・」
「終わりじゃない・・負けるわけにはいかないんだ・・!」
オーガストランザーの切っ先を向けるオーガに、ソウマが声を振り絞る。
「オレが倒されたら、誰がツバキたちを守るんだ・・人間を守るために、オレはお前を倒す!」
決意と怒りを叫ぶソウマ。そのとき、彼の目の前にも光が現れた。
「オレにも来た・・!」
ソウマが頷いて、光から現れたカードを手にした。RXの前身、仮面ライダーBLACKが描かれた「BLACKカード」である。
「オレも行くぞ!」
“BLACK!”
ソウマがビースドライバーにBLACKカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・ブラーック!ブラックサン・バトルサン!キングストーンライダー・ブラーック!”
フォックスのスーツが黒に変わる。マスクにBLACKの顔の形の模様が入った。ソウマはBLACKの力を身に宿した。
「オレは戦う!ツバキたちを、みんなを守るために!」
ソウマが言い放ってオーガに立ち向かう。オーガが振りかざすオーガストランザーを、ソウマはかわしてパンチを繰り出す。
オーガがソウマの重みのあるパンチを受けて怯む。ソウマがオーガの腕をつかんで投げ飛ばす。
「これで決めてやる・・!」
“BLACKチャージ!ライダースマーッシュ!”
ソウマがエネルギーを集めた右手を握りしめて、オーガに向かっていく。
「ライダーパンチ!」
ソウマの繰り出したパンチが爆発のような衝撃をもたらして、オーガを突き飛ばした。踏みとどまるオーガだが、大きなダメージを負った。
「まだだ・・オレは負けるわけにはいかない・・・!」
オーガが声を振り絞って、オーガストランザーを構える。
そのとき、傷つき倒れていたノゾムに太陽の光が注がれた。太陽エネルギーを取り込んだ彼が、回復を果たして立ち上がった。
「光がある限り立ち上がる・・それがRXの力だ・・!」
「ノゾム、復活したっていうのか・・!?」
オーガに向かって言いかけるノゾムに、ソウマが驚きを見せる。
「ここは同時攻撃をやってみるか・・!」
「分かった。やってやるか!」
ノゾムとソウマが声をかけ合って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“RXチャージ!ライダースマーッシュ!”
“BLACKチャージ!ライダースマーッシュ!”
2人が大きくジャンプして、オーガに向かっていく。
“Exceed charge.”
オーガがオーガストランザーにエネルギーを集めて、巨大な刃を発して振りかざす。
「ライダーキック!」
「RXキック!」
ソウマが右足の、ノゾムが両足のキックを繰り出した。エネルギーを集中させた2人のキックが、オーガのエネルギーの刃とぶつかり合う。
ノゾムたちのキックがエネルギーの刃を打ち砕いて、オーガの体に直撃した。オーガが突き飛ばされて地面に倒れる。
「オレは何度でも立ち上がるが、お前が何度立ち上がってきても、オレはお前を倒す!」
ノゾムがオーガに言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを押した。
“RXチャージ!ライダースマーッシュ!”
ビースドライバーから光の刃を発した武器が出た。RXの剣状の武器「リボルケイン」である。
ノゾムのリボルケインとオーガのオーガストランザーが激しくぶつかり合う。だがダメージが深かったオーガは次第にノゾムに押されていって、リボルケインでオーガストランザーをはじき飛ばされた。
ノゾムが突き出したリボルケインが、オーガの体を貫いた。
「お前は、自分や他の誰かを信じることができるか・・・?」
オーガが投げかけた問いかけに、ノゾムが疑問を覚える。
「オレは他人を信じ切れなかった・・オレの、できなかったことを・・・」
「オレはオレだ・・オレが誰を信じ、何を信じるかはオレが決める・・・!」
オーガに対して、ノゾムは自分の意思を貫こうとする。
「オレ自身のため、オレが大事にしている人のため、オレの居場所のために戦う・・今までも、これからも・・!」
「そうか・・・」
ノゾムの意思を聞いて、オーガは納得した素振りを見せる。彼が倒れながら消滅していった。
「コイツ・・全く悪いヤツじゃなかったみたいだ・・・」
オーガの心境を察して、ノゾムは戸惑いを感じていた。
「悪いライダーの中にも、わけありのヤツもいるみたいだ・・」
ソウマもオーガのことを気に掛けて、吐息を1つついた。
「ライダーの力を、ここまで使いこなせるようになったのね・・」
そこへ声をかけられて、元のマックス、フォックスの姿に戻ったノゾムとソウマが振り返る。2人の前にミラが現れた。
「ミラ!アンタ、どこに行っていたんだ!?」
ノゾムがミラに怒鳴りかかって問い詰める。しかしミラの様子がおかしいことに気付いて足を止める。
「ミラ・・どうしたんだ・・・!?」
「もう時間がない・・あなたたちなら私を・・・」
ノゾムが声をかけると、ミラが弱々しい声で呼びかける。
「ノゾム、ソウマくん、ミラさんは・・!」
そこへツバキがタイチと一緒に戻ってきて、ノゾムたちに呼びかけてきた。
「ツバキ、どういうことなんだ・・!?」
ソウマが振り向いてツバキに問いかける。するとツバキとタイチが表情を曇らせる。
「今まで悪いライダーを呼び出していたのは、ミラさんなんだ・・」
タイチが口にした言葉に、ノゾムとソウマが緊張を浮かべる。
「彼女が黒い煙のようなものを出して、ライダーを呼び出していたの・・私たち、ミラさんがそうしているのを見たの・・!」
「でも僕たち、見つかって、さっきのライダーに気絶させられたみたいで・・・!」
ツバキとタイチがミラのことを話す。ミラが黒い光を出しているのを目撃した2人だが、オーガに襲われることとなった。
「そうだったのか、ミラ!?・・お前は、オレたちをどうにかするために・・!?」
ノゾムがミラに視線を戻して、敵意を向ける。
「私には今、2つの人格があるのです・・・」
ミラが打ち明けたことに、ノゾムとソウマが疑問を覚える。
「私の中にもう1つの人格が生まれたの・・破壊の限りを尽くすことを望む悪い人格が・・!」
「2重人格ってヤツか・・それでその悪い人格が、元々の人格を支配しようとしているのか・・!?」
ミラの話を聞いて、ソウマが聞き返す。
「これ以上、もう1つの人格を抑えることができない・・だから私を止めて・・私を倒して・・・!」
「ミラさん・・・!」
声を振り絞るミラに、タイチが動揺する。ミラの体から出てくる黒い煙のようなオーラが、さらに濃く大きくなっていく。
やがて苦しむ様子を見せなくなったミラ。ノゾムとソウマが警戒すると、ミラが突然笑みを浮かべた。
「やっと表の顔がおとなしくなったわね・・」
ミラが呟いて、ノゾムたちを見て微笑みかける。
「裏の顔が表に出てきたってわけか・・!」
「お前が悪いライダーを呼び出して、オレたちにけしかけてきたんだな・・!?」
ノゾムが毒づいて、ソウマがミラに問い詰める。
「その通り・・仮面ライダーを使って、仮面ライダーも人間たちも追い詰める・・清々しい混乱じゃないの・・」
ミラが自信を込めて言いかける。彼女のもう1つの人格は、人々を追い詰めて破壊や混乱を楽しんでいた。
「さて、そろそろ遊びは終わりにするわね・・あなたたちを倒して、人間全滅の足がかりにさせてもらうわよ!」
ミラが野心を口にして高らかに笑う。敵意をむき出しにする彼女に、ノゾムとソウマは怒りを感じていた。