仮面ライダーマックス

ブレイクハート・魂の闘い

第6章

 

 

 カイトはカズトとリクの父親だった。彼もチェーンに協力していたことに、カズトたちは驚きを隠せなかった。

「お父さん・・お父さんだよね!?

「あれは、カズト!?・・ということはまさか、あれはリク・・!?

 カズトが呼びかけて、カイトが彼とリクを見て息をのむ。

「リクたちも、チェーンに協力しているというのか・・!?

 カイトは動揺をふくらませて、ゴウに目を向ける。

「2人はお前に会いたがっていた。それを叶える条件で力を貸してもらった。これで約束が果たされたことになったな。」

「そんな!?・・2人もチェーンの作戦に参加させるなんて・・!?

 呟きかけるゴウに、カイトが声を荒げる。

「結果的にお前たちはこうして再会することができた。それに、オレたちはお前とリクたちに頼まれて、その頼みを聞き入れて協力関係を作った。そこに偽りはないはずだ。」

 ゴウは口調を変えることなく語りかけて、カイトが言葉を詰まらせる。

「ふざけたマネを・・自分の目的のために利用して・・!」

 ノゾムが怒りをふくらませて、ゴウを睨みつける。

「お互いに目的がある。そのために協力しているだけのこと。利用していることにはならない・・」

「どこまでも勝手なことを!」

 考えと口調を変えないゴウに、ノゾムがさらに怒号を放つ。

「お前たちはここで滅びる・・オレに敵対した時点で・・」

 ゴウが言いかけると、ベアースターボがノゾムたちに向かって走り込んできた。ノゾムとユウキが左右にジャンプしてかわして、ツバキたちも走って離れる。

「カイト、お前も戦え・・ベルトとカードを使ってマックスとなり、息子たちを助けるためにヤツらを倒せ・・」

 ゴウが呼びかけて、カイトが持っているビースドライバーを見つめる。

「これから家族で暮らしていくために、それを壊す敵を倒さなくてはな・・」

「家族で暮らす・・そうだ・・それが私たちの、幸せなのだから・・・!」

 ゴウに言われて、カイトがビースドライバーを身に着けた。

“マックス!”

 カイトがビースドライバーにマックスカードをセットして、左上のボタンを押した。

「変身・・・!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 彼がマックスに変身して、ノゾムたちを見下ろす。

「まずはそこのビースター2人を倒せ。オレはお前の息子たちを連れ戻して、他のヤツを始末する・・」

「分かった・・リクとカズトは傷つかないようにしてほしい・・・!」

 呼びかけるゴウに、カイトが頼みをする。

「2人はオレの協力者だ・・同胞を無下にするつもりはない・・」

 ゴウは言いかけて、ベアースターボがツバキたちに向かっていく。

「ツバキさん!」

 ユウキがツバキたちのところへ向かおうとするが、降りてきたカイトに行く手を阻まれる。

「どいてくれ!このままじゃみんなが・・!」

「こうしなければ、私たちは平穏に暮らせない!もう少しで元に戻れるんだ!」

 呼びかけるユウキに、カイトも感情をあらわにする。

「そうまでしてオレたちをムチャクチャにしたいのか、お前たちは!?

 ノゾムが怒りの声を上げて、カイトに向かって飛びかかる。2人が組み付いて、大きく地面を転がる。

「ノゾム!・・ツバキさん!」

 ユウキが声を上げて、ツバキたちを助けに向かう。しかしベアースターボに追いつくことができない。

 そこへソウマとシゲルが駆けつけて、ベアースターボの頭部にキックを当てた。続けてイグアカートも突っ込んで、ベアースターボを押し返した。

「ソウマくん!シゲルさん!」

 着地したソウマたちに、ツバキが声を上げる。

「こっちは片付いた!間に合ってよかったぞ・・!」

「ここはとんでもないことになっているみたいだけど・・!」

 ソウマとシゲルがツバキたちに振り向いて笑みをこぼす。

「ありがとう、2人とも〜・・危ないとこだったよ〜・・」

 タイチが安心して、ワタルと喜び合う。

「コウスケとカリナがやられたか。ビーストライダーには歯が立たなかったか・・」

 ゴウがソウマたちを見下ろして呟く。セイラとタツヤも遅れてたどり着いて、ソウマたちと合流した。

「ライダーたちはオレが相手をする。リク、お前たちは他のヤツを始末しろ・・・!」

「ゴウさん・・・!」

 呼びかけるゴウに、リクが動揺を覚える。

「お前たちが家族そろって暮らすためだ。そのために今、体を張らなければな・・」

 ゴウにさらに言われて、リクが心を揺さぶられていく。

「ここで全て台無しにするするつもりか・・・!?

 ゴウに問い詰められて、リクが息をのむ。リクはカズトを引き寄せると、ツバキたちを狙って前進する。

「やめるんだ、リクくん!」

 タツヤがセイラとともに、リクの前に立ちふさがった。

「そんなことをしても、この後に家族みんなで暮らせても、絶対に幸せにはなれないよ!」

「カイトさんもやめて!カイトさんも、あなたやリクくんがこんな戦いをすることを望んでいないはずでしょう!?

 タツヤとセイラがリクとカイトに呼びかける。リクとカイトが迷いを覚えるが、それを振り切ろうとする。

「そうするしか・・私たちに道はない!」

 カイトが声を振り絞って、ユウキに飛びかかる。

「ベルトを外すしかないか・・!」

 ユウキはカイトからベルトを外すことを考える。ユウキがスピードを上げて、カイトに詰め寄る。

「アニマルカードを使え!マックスの使うカードは強力だ!」

 ゴウが投げかけた言葉を聞いて、カイトがとっさにユウキの突撃をかわす。彼が手にしたのはエックスカードだった。

“エックス!”

 カイトがビースドライバーにエックスカードをセットした。

「ダメよ、カイトさん!エックスカードは負担が大きい!無闇に使ったら体が危険になるかもしれない!」

 ツバキが慌ててカイトを呼び止める。

「しかしここで負けるよりは・・!」

 いきり立ったカイトが、ビースドライバーの左上のボタンを押した。

“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”

 カイトがエックスフォルムに変身して、ユウキの前に立ちはだかる。

「うっ!」

 そのとき、カイトが体に痛みを覚えてふらつく。エックスフォルムの負担が彼を襲った。

「エックスのカードの力が、カイトさんに・・!」

「お父さん!」

 タイチが不安の声を上げて、カズトが叫ぶ。

「カイトさん、ベルトを外して!このままじゃあなたは・・!」

「まだだ・・私はまだ、退くわけには・・・!」

 ツバキが呼びかけるが、カイトはビースドライバーを外そうとしない。

 ノゾムが怒りをふくらませて、カイトに一気に詰め寄る。彼はカイトに組み付いて、ビースドライバーをつかんだ。

「返すか、ベルトの力でくたばるか、どっちだ!?

 ノゾムに鋭く言われて、カイトが気圧される。ノゾムがカイトからビースドライバーを外して取り戻した。

「父さん!」

 マックスへの変身が解けたカイトに、リクが駆け寄る。

「お父さん、大丈夫!?しっかりして!」

「リク・・・!」

 リクが呼びかけて、カイトが声を振り絞る。

「お父さん・・・僕・・僕・・・!」

「お兄ちゃん!お父さん!」

 リクが体を震わせると、カズトも2人に駆け寄ってきた。

「お父さん、お兄ちゃん、もうやめよう・・ノゾムさんたちと戦わなくたって、僕たちは一緒に暮らせるんだよ・・・!」

「カズト・・リク・・・すまなかった・・本当に、ゴメン・・・!」

 カズトが笑顔を見せて、カイトが心を揺さぶられていく。

「カイトさん・・うん・・もういいんだ・・もうこんな戦いをしなくても・・・」

 ユウキも歩み寄って、カイトたちに微笑みかける。ノゾムがひと息ついてから、ビーストビースターから人の姿に戻った。

「お前たちは下がっていろ・・ここからはオレがやる・・・!」

 ノゾムがカズトたちに言いかけて、ゴウを見上げる。

「何をやっている?・・ヤツらを倒す気がないのか・・・!?

 ゴウがカイトたちを見下ろして、鋭い視線を送る。彼に睨まれてカイトとリクが緊張を感じて、カズトが怯える。

「お前の相手はオレだ・・お前はオレがブッ倒してやる!」

 ノゾムが言い放って、ビースドライバーを身に着けた。

「変身!」

“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”

 ノゾムがマックス・エックスフォルムに変身して、ゴウとベアースターボに向かっていく。ノゾムが大きくジャンプして、ゴウと組み付いてベアースターボから振り落とした。

「ノゾム!」

 ユウキが声を上げるが、彼とカズトたちの前にベアースターボが立ちはだかった。そこへイグアカートが突っ込んで、ベアースターボをユウキたちから引き離していく。

「このデカブツはオレに任せてくれ!ユウキはリクたちを守ってやってくれ!」

 シゲルが呼びかけて、ユウキが頷いた。

「カイトさん、こっちへ・・カズトくんとリクくんも・・!」

「あ、あぁ・・リク、カズト・・」

「うん・・」

 ユウキが呼びかけて、カイト、リクとカズトが頷く。彼らはノゾムたちとゴウから離れて、ツバキたちと合流した。

「カズトくん・・リクさん・・!」

「ワタルくん・・・!」

 ワタルがカズトと手を取り合って、彼らの再会を喜ぶ。

「カズトくん・・よかった・・・」

 ツバキもカズトたちを見て、タイチとともに安らぎを感じていた。

「みんな、1度ここから離れよう・・!」

 セイラが呼びかけて、ツバキたちとともにこの場から離れた。

「さぁて、オレもお前の相手をさせてもらおうか・・!」

 ソウマが言いかけて、ゴウに向かっていく。

「他のライダーが何人集まろうと、オレの復讐は止まることはない・・復讐を果たさなければ、オレはオレでなくなる・・・」

「オレがオレでなくなる・・そういう考えはオレと同じみたいだな・・」

 ゴウが口にした言葉を聞いて、ノゾムが呟く。

「だけど、たとえそうでも、お前のやり口でオレたちの生活がムチャクチャにされたんじゃたまんないんだよ!」

 ノゾムが怒りの声を上げて、ゴウに立ち向かう。ノゾムのパンチとキックを、ゴウが両手で受け止めていく。

「エックスでは勝てないことは分かっているはずだ・・!」

 ゴウは低く告げると、ノゾムの体にキックを叩き込んだ。

「ぐふっ!」

 ノゾムが蹴り飛ばされて、地面を転がる。

「往生際が悪いのはやはり見苦しい・・オレの復讐の邪魔をするお前を、ここで始末する・・!」

 ゴウがノゾムに迫って、とどめを刺そうとする。

「オレがいることを忘れるな!」

 ソウマが駆けつけて、ゴウを横に突き飛ばした。押されずに踏みとどまったゴウだが、その一瞬にノゾムは立ち上がった。

「往生際じゃなく、諦めが悪いんだよ、オレは・・!」

 ノゾムは言い放つと、2枚のアニマルカード「エクシードカード」を取り出した。

「ノゾム、エクシードを使っても大丈夫なのか・・!?

 ソウマがノゾムに振り向いて、不安の声を上げる。

「もうビースターの力には振り回されない・・オレはアイツを倒すために、この力を使う・・!」

 自分の意思を貫いて、ノゾムがエックスブレスにエクシードカードをセットした。

“エクシード!インフィニットマックス!”

 彼が全身に力を入れて意識を集中する。

“チャージ・エクシード!インフィニット・エックス!インフィニット・マックス!ビース・エクシードライダー!”

 ノゾムをまとうマックスのスーツからまばゆい光があふれ出した。エックスフォルムの白から銀色になっていて、前と後ろに金のラインがX字になるように描かれていた。

 ノゾムはマックスの更なる進化の姿「エクシードフォルム」となった。

「神奈ノゾム・・まだこのような変身を残していたか・・!」

 ゴウがノゾムを見て毒づく。ノゾムがゴウに目を向けて、ゆっくりと前進する。

「何度も言わせるな・・たとえ何をしてこようと、オレの復讐の邪魔はさせないぞ・・・!」

 ゴウがノゾムに詰め寄って、パンチを繰り出した。しかしノゾムに右手だけでパンチを受け止められた。

「何っ!?

 攻撃を軽々と止められたことに、ゴウが驚きを覚える。

「何度も言わせるな・・それはオレのセリフだ・・・!」

 ノゾムが鋭く言って、ゴウの腕を押し返した。ゴウが腕に痛みを感じながら後ずさりする。

「オレは身勝手や思い上がりには絶対に屈しない・・死んでもお前のようなヤツの思い通りになるか!」

 ノゾムが言い放って、ゴウに一気に詰め寄ってきた。その速さは目にも留まらぬほどに飛躍していた。

 ノゾムが高速のまま、ゴウの連続でパンチを叩き込んでいく。ゴウが押されて、突き飛ばされて地面を大きく転がる。

「オレが、アックスが押されるなど・・!」

 ゴウが追い詰められていることに毒づいて、ノゾムに視線を戻す。

 ゴウが再びノゾムに向かっていって、両手を伸ばす。彼がノゾムの両腕をつかんで投げ飛ばすが、ノゾムは空中で体勢を整えて着地する。

 ノゾムが振り向き様に詰め寄って、ゴウに左足を突き出した。

「ぐふっ!」

 ゴウがキックを受けて押されて、ダメージを負って怯む。

「ここまで形勢を逆転されるなど・・さすがに認めるわけにはいかんぞ・・!」

 ゴウは声を振り絞ると、斧「アクスレイダー」を手にして構えた。

「武器でもオレは負けるつもりはない・・!」

 ノゾムが言いかけて、ビースドライバーの左上のボタンを3回押した。

“エクシードスマッシャー!”

 ノゾムの手元に剣の形をした武器が現れた。柄と刀身の間に1つの画面があった。

 エクシードフォルムの武器「エクシードスマッシャー」である。

 ゴウとノゾムがアクスレイダーとエクシードスマッシャーを振りかざして、激しくぶつけ合う。ゴウがノゾムの力に押され気味になる。

 ノゾムはエクシードスマッシャーの画面をスライドする。彼は画面にゾウのアイコンを出してから、そばのボタンを押した。

“エレファントスマーッシュ!”

 ノゾムの体に力が入る。彼は今、ゾウの力を身にまとったのである。

 ノゾムとゴウが再びエクシードスマッシャーとアクスレイダーを振りかざした。ぶつかり合った瞬間、ゴウがノゾムの高まったパワーに押された。

「さらにパワーが上がっている・・こんなことが・・・!」

 ノゾムの強さを痛感して、ゴウは焦りを覚える。彼はビースドライバーにセットされているアックスカードを取り出して、アクスレイダーの刃と柄の間のスロットにセットした。

“レイダーチャージ!”

 アクスレイダーの刀身にエネルギーが集まる。

 ノゾムがエクシードスマッシャーの画面にをスライドして、「X」を表示させた。

“エクシードチャージ!エクシードスマーッシュ!”

 ノゾムの全身から光が放出される。飛び上がった彼がエネルギーを右足に集めて、ゴウに向かって急降下する。

 ゴウが振りかざしたアクスレイダーが、ノゾムのキックとぶつかり合う。閃光のような衝撃と爆発が轟いた。

 ゴウが大きく吹き飛ばされて、手からアクスレイダーを離した。倒れた彼の前で、ノゾムが着地した。

「やった・・・!」

 ソウマがゴウを見て声を上げる。

「それじゃ、そろそろこっちも終わらせなくちゃな・・!」

 シゲルが笑みをこぼして、イグアカートでベアースターボを攻め立てる。ベアースターボが両手を伸ばすが、イグアカートは怯まずに押し込んでいく。

 シゲルがリードライバーの中心部を回転させる。

“イグアナ・ロードスマッシュ。”

 イグアカートがエネルギーを集中させて、ベアースターボに突っ込む。ベアースターボは踏みとどまって、イグアカートの突進に耐える。

「ソウマ!」

 シゲルが呼びかけて、頷いたソウマがビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ソウマがスピードを上げてジャンプして、ベアースターボの頭部にキックを叩き込んだ。ベアースターボが爆発を起こして、横になって倒れた。

「よし!こっちも終わったぞ!」

 イグアカートから降りたシゲルが、着地したソウマに笑みをこぼした。

「カズトくん、リクくん、もう大丈夫だよ・・」

 ユウキがカズトたちを見て笑みをこぼす。

「お兄ちゃん、僕たち、これでもうこんな戦いをしなくていいんだよね?・・僕たち、もう安心して家族で暮らせるんだよね・・・?」

 カズトがリクを見つめて声をかける。

「うん・・そうだね・・お父さん・・・?」

「うん・・これからは、私たちはずっと一緒だ・・・!」

 リクが頷いて、カイトが彼とカズトを抱きしめる。父親からの抱擁に、カズトたちは戸惑いを感じていた。

「まだ終わってはいないぞ、お前たち・・・!」

 ゴウが立ち上がって、ノゾムたちに対して声を振り絞る。

「お前・・まだやろうっていうのか・・・!?

 ノゾムがゴウに鋭い視線を向ける。

「終わるのは、お前たちのほう・・これで、お前たちを葬り去る・・・!」

 ゴウが1枚のアニマルカードを取り出した。カイトから事前に受け取っていたカード「アクシスカード」である。

「これで、お前たちに万のひとつの勝機もない・・!」

“アクシス!”

 ゴウがビースドライバーにアクシスカードをセットして、左上のボタンを押した。

「アックスを超えるこの力で、地獄の底へ叩き落としてやる!」

“チャージ・アクシース!アクスロード・アクスゴッド・アースアクシスライダー!”

 アックスのスーツに変化が起こり、刺々しい鎧のような形状になった。

「その姿・・そのライダーの新しい姿か・・・!」

 シゲルがアックスの新たな姿「アクシスフォルム」を見て、緊張を浮かべる。

「すごい・・すごいぞ・・アックスからというよりも、オレ自身の奥から力が湧き上がってくるようだ・・・!」

 ゴウが今の自分を確かめて、笑みをこぼして両手を握りしめる。

「この力ならば、オレに敗北する要素などない・・!」

「まだ勝手に決めつけて・・そんなにブッ倒されないと分からないのかよ!」

 笑い声を上げるゴウに、ノゾムが怒号を放つ。彼がゴウに詰め寄って、高速のパンチを繰り出す。

 ノゾムのパンチはゴウの体に命中した。しかしゴウは少し押されただけで、ダメージを受けていない。

「先ほどのような勢い、まるで感じられんぞ・・・!」

 ゴウが低く告げると、パンチを出したノゾムの腕をつかんだ。

「なっ!?

 驚くノゾムがゴウに投げ飛ばされる。ノゾムは着地と同時に地面に手を付けて、体勢を保つ。

「ノゾム!」

「パワーもスピードも先ほどよりも格段に上がっている・・エクシードを脅かすまでとは・・!」

 ツバキが叫んで、タツヤがゴウの強さを痛感する。アクシスフォルムとなったゴウの力もまた、格段に上がっていた。

「反撃をさせてもらうぞ、神奈ノゾム・・まずはお前を葬り去る・・!」

 ゴウがノゾムに迫って飛びかかる。ノゾムも高速で動いて、ゴウを迎え撃つ。

「2人とも、すばしっこく動いているぞ・・!」

「だけど、1番速いのはオレだからな・・!」

 シゲルがため息まじりに言うと、ソウマがいきり立って飛び出す。

「おい、無闇に突っ込むなって・・!」

 シゲルが呼び止めるのも聞かずに、ノゾムとゴウの戦いい割って入るソウマ。しかしゴウが振りかざした足に蹴られて押し返される。

「何っ!?

 ゴウの動きを捉えられずに返り討ちにされたことに、ソウマが驚く。

「オ、オレが割り込めないだと・・!?

「迂闊に飛び込んでもつまはじきにされるだけみたいだな・・」

 声を荒げるソウマに、シゲルがため息まじりに言いかける。

 ゴウが繰り出した両手のパンチが、ノゾムの体に叩き込まれた。

「ぐっ!」

 突き飛ばされるノゾムがうめき声を上げる。地面を転がってから彼は立ち上がって、ゴウに鋭い視線を向ける。

「これがオレの力・・最高に高まったアックスの力だ!」

 ゴウが今のアックスの力を実感して、歓喜の声を上げる。

「これで・・これでオレたちを思い通りにできると思うな・・!」

 ノゾムが怒りの声を上げて、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“エクシードチャージ!エクシードスマーッシュ!”

 ノゾムが全身から光を発して、エネルギーを右足に集める。ジャンプした彼がゴウに向かって右足のキックを繰り出す。

 ゴウもビースドライバーの左上のボタンを2回押した。

“アクシスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ゴウが両手を握りしめて、ノゾムに向かって繰り出す。エネルギーのパンチがノゾムに襲い掛かる。

 ノゾムがパンチに押されて吹き飛ばされた。高く空中に跳ね上げられてから、彼は地面に強く叩きつけられた。

「ノゾム!」

 ツバキが悲鳴を上げて、タイチたちも愕然となる。

「この結果が全てだ。オレが勝利し、お前は敗北した・・」

 ゴウがノゾムを見下ろして、低い声で言いかける。

「お前たちも葬ってやる・・逃げ出すならば今のうちだぞ・・・!」

 振り返ったゴウに睨まれて、ツバキたちが緊張をふくらませていく。

「みんなは早く逃げろ!オレが時間を稼ぐ!」

 ユウキがツバキたちに呼びかけて、1人ゴウに向かっていく。

「ユウキ!」

 セイラが叫ぶ先で、ユウキがゴウに攻撃を仕掛ける。しかしユウキのパンチとキックを受けても、ゴウは平然としている。

「強力なビースターでも、オレの相手にならないということか・・」

 ゴウは呟くと、ユウキの体にパンチを叩き込んだ。

「ぐあっ!」

 重みのある一撃を受けて、ユウキがあえぎ声を上げて怯む。

「ユウキ!」

「来るな!・・みんなを、早く・・・!」

 セイラが叫んで、ユウキが声を振り絞って呼び止める。彼は彼女たちを逃がすために、ゴウの前に立ちふさがる。

「往生際が悪いと、苦しみが長くなるだけだぞ・・」

 ゴウはため息まじりに告げて、右手を握りしめる。エネルギーを伴った彼のパンチが、ユウキに直撃した。

「ぐあっ!」

「ユウキくん!」

 大きく跳ね上げられたユウキに、タツヤが叫ぶ。地面に倒れた彼が、ビースターから人の姿に戻る。

「ヤバいぞ!このままじゃ全滅してしまう!」

「オレたちも加勢しないとな!」

 ソウマとシゲルが声をかけ合って、ゴウに向かっていく。2人に気付いたゴウが、地面に拳を叩きつけた。

「うあっ!」

 強い衝撃に押されて、ソウマとシゲルが吹き飛ばされる。

「ちくしょう・・こうなったらフルパワーで・・!」

「オレのハイスピードを思い知らせる!」

 シゲルとソウマが声を張り上げて、ゴウに鋭い視線を向ける。

“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

“オックス・ロードスマッシュ。”

 2人が同時にジャンプして、ゴウにキックを繰り出す。

「ムダだ・・・!」

 ゴウが腕を振りかざすと、エネルギーが風のように放たれる。

「がはぁっ!」

 ソウマとシゲルが吹き飛ばされて、地面と壁に叩きつけられる。ダメージが大きくなって、2人の変身が解けた。

「ソウマくん!シゲルさん!」

「ツバキちゃん、早く離れよう!」

 悲鳴を上げるツバキを、タイチが連れていく。セイラたちもカズトたちもこの場を離れた。

「逃げたか・・そのほうがまだ賢明といえる・・お前よりは・・・」

 ゴウが呟いてから、立ち上がったノゾムに振り向く。

「オレは倒れない・・お前のようなヤツを、絶対に野放しにはしない・・・!」

「地獄に落ちれば、そのような悪あがきもできなくなるぞ・・・」

 怒りを口にするノゾムに、ゴウが冷たく言い返す。彼は再びビースドライバーの左上のボタンを押した。

“アクシスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 全身からエネルギーを集めたゴウが飛び上がって、ノゾムに向かってキックを繰り出した。彼のキックが大きな爆発をもたらした。

 ノゾムが吹き飛ばされて、地面を大きく転がる。マックスへの変身が解けた彼は、気絶して動かなくなった。

「今度こそ終わりだ・・オレは愚かな世界をこの手で正す・・」

 ゴウはノゾムたちにとどめを刺すことなく、きびすを返して歩き出した。ダメージの大きいノゾムたちは、立ち上がることもできなくなっていた。

 

「チェーンの戦士がこちらに近づいてくるぞ!」

 国会議事堂にいた議員たちが、ゴウの接近を聞いて焦りを覚える。

「自衛隊は何をしている!?ヤツらにこれ以上の進行を許すな!」

「その間に我々は議事堂を脱出!体勢を整えて、国民の避難を急ぎつつ対策を練る!」

 議員たちが改めて自衛隊に命令を下して、ボディガードを伴って議事堂から脱出していった。

(頼むぞ・・せめて、我らが体勢を整えるまでの時間を稼いでくれ・・・!)

(あのような無法者に、この国を、世界をいいようにさせるわけにはいかんのだ・・!)

 自衛隊がゴウたちを食い止めることを心の中で呼びかけて、議員たちは議事堂から離れていった。

 

 

 

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