仮面ライダーマックス
ブレイクハート・魂の闘い
第5章
カズトと離れ離れになってしまって、リクは落ち込んでいた。彼は父親だけでなく、カズトにも心配を感じていた。
「いつまでも情けない顔してるんじゃないよ・・」
そんなリクにカリナが不満げに声をかけてきた。
「だって心配なんだ・・カズトのことが・・・!」
「そんなことでウジウジしてるなんて・・あたしらは世界を敵に回したんだよ。シャキッとしてくれないと・・」
自分の本音を口にするリクに、カリナがため息をつく。
「ま、言うことを聞かなかったら不利になるのはお前だけどな。」
コウスケもやってきて、リクをあざ笑ってくる。
「裏切るようなことになれば、親父にも弟にも会えなくなっちまうぞ・・クフフ・・」
コウスケはあざ笑ってから、リクの前から去っていった。
「アンタらは逃げられはしないよ。あたしらに付いてくる以外に、アンタの望みは叶わないんだから・・」
カリナからも脅されて、リクは頷くしかなかった。父親を見つけてカズトと再会して、家族でまた幸せに暮らす。リクの心はその思いでいっぱいだった。
ビースターになって体力を消耗したノゾム。ベッドに横たわっていた彼が落ち着きを取り戻して、体を起こした。
「ノゾム、体は大丈夫なのか・・・!?」
「あぁ・・もう何ともない・・・だけど、早くベルトとカードを取り戻さないと・・・!」
心配するタイチに答えて、ノゾムが立ち上がる。
「みんな外で待ってるよ。カズトくんも・・」
「カズト・・・アイツ・・・!」
タイチが言いかけると、ノゾムが怒りを覚えて目つきを鋭くする。
「カズトくんもリクくんも、仕方なくチェーンに従ってたんだ・・悪いのはチェーンだよ・・!」
「そうだとしても、アイツらをブッ倒すために、カズトに話を聞かなくちゃならない・・・!」
なだめようとするタイチに対して、ノゾムが自分の意思を貫く。
「いきなり手荒なことしないでね、ノゾム・・」
タイチは不安を込めて呼びかけて、ノゾムとともに外へ出た。外にはツバキたちとカズトが待っていた。
「ノゾム・・・」
ツバキがノゾムを見つめて深刻さを覚える。ノゾムは目つきを鋭くしたまま、カズトに近づいた。
「ノゾムさん・・僕は・・・」
「親父のために、お前とリクはオレたちを騙したのか・・・!?」
体を震わせるカズトに、ノゾムは低い声で問いかける。カズトは目に涙を浮かべるだけで、何も答えない。
「オレは身勝手なヤツらには死んでも従わない・・従った時点で、オレはオレでなくなる・・・」
「それでも、父さんやお兄ちゃんがいなくなるよりは・・・!」
自分の考えを口にするノゾムだが、カズトは今の自分のしていることを続けようとする。
「それでオレの敵に回っても、お前とアニキはそうするつもりなのか・・・!?」
「それは・・・」
ノゾムが鋭く問いかけて、カズトが口ごもる。
「お父さんとお兄ちゃんと、またみんなで暮らしたい・・それが叶うなら、僕は・・・」
「だったら、オレたちと戦う必要はないってことだろ・・・!?」
自分の正直な気持ちを口にするカズトを、ノゾムがさらに問い詰める。
「オレがヤツらをブッ倒して、カズトたちが親父に会えるようにする・・このままにしておくと、それができないからな・・・」
「でも、どうしたらお父さんとお兄ちゃんに・・・」
ノゾムが告げた言葉を聞いて、カズトが不安をふくらませていく。
「まずはノゾムのベルトを取り戻すのが先だな。」
ソウマが言いかけて、ノゾムの肩に軽く手を乗せた。
「ビースターとなって戦うよりも、マックスとして戦う。お前はそう選んだんだろう、ノゾム?」
シゲルも続けてノゾムに声をかけた。
「人間もビースターも関係ない・・オレはオレ・・身勝手な敵をブッ倒すだけだ・・・!」
自分の揺るがない意思を告げて、ノゾムが歩き出す。
「とにかく、ベルトを取り戻すのが最初だな。どうするにしても・・」
「もちろんだ・・今度は逃がしなしないぞ・・・!」
ソウマが言いかけて、ノゾムが答えた。
「ツバキたちはカズトと残っていろ・・行ってもアイツらに追われることになる・・・!」
「ううん・・僕も行く・・お兄ちゃんとお父さんをほっとけないよ・・・!」
ツバキに呼びかけるノゾムに、カズトがついていこうとする。
「ダメだ・・死んでもいいっていうのか・・・!?」
ノゾムが鋭く言って、カズトを呼び止める。
「お父さんだけじゃなく、お兄ちゃんまでいなくなるなんてイヤ・・何もしないでじっとしてるなんて・・・!」
それでもカズトはノゾムたちについていこうとする。
「そこまでいうなら、どうなってもオレは知らないぞ・・・!」
ノゾムは不満げに言ってから歩き出した。
「ノゾム・・ノゾムはいつもあんな感じだけど、困っている人をほっとけないところもあるよ。」
「あんな態度見せてるけど、カズトくんたちのこと、大事に考えているはずだよ。」
ツバキとタイチがカズトにノゾムのことを語る。
「ノゾムお兄ちゃんを信じて、カズトくん・・ノゾムお兄ちゃんは、どんなことがあっても絶対に諦めたりしないよ・・・!」
タイチもカズトにノゾムへの信頼を口にする。
「ワタルくん・・・うん・・・」
ワタルたちに励まされて、カズトが小さく頷いた。
「よーし!みんなでノゾムたちと一緒に行こう!リクくんと、カズトくんのお父さんを見つけに!」
タイチが呼びかけてツバキたち、カズトとともに走り出した。
チェーンの宣戦布告に世間は騒然となっていた。日本政府でもチェーンへの対策について、議論が重ねられていた。
「ヤツらは破壊と殺戮を求める戦闘集団だ!あのような連中を野放しにすれば、我が国は壊滅的な打撃を受けることになる!」
「殲滅するにしても、我々には戦力が足りん・・自衛隊でもヤツらに太刀打ちできるとは・・!」
「ここは諸外国に協力を要請するしか・・!」
議員たちがチェーン打倒に向けて思考を巡らせる。
「いずれにしても、国民に被害が出ることに・・・!」
「このままでは国民が傷つくことになるのは明らかだ!チェーンへの攻撃に踏み切るのだ!」
「直ちにヤツらのいる地点から人々を避難させるのだ!国民への被害を最小限にとどめる!」
議員たちは決断した。人々を遠ざけてチェーンを殲滅することを。
都内全域に都外への避難勧告が流れた。人々は慌ただしく避難を始めていた。
その最中、ノゾムたちはゴウたちを追って、人混みをかき分けていた。
「チェーンはどこにいるんだろう・・もう議事堂の近くにはいないみたいだけど・・・!」
「移動をしていなければ、隠れ家にいると思う・・そこで準備を続けていたから・・・」
タイチが呟くと、カズトがチェーンのことを告げる。
「そっちに行ったほうがいいのかな?・・無闇に右往左往してても・・」
ツバキがノゾムたちに呼びかけて、ゴウたちのいるアジトへ向かおうとする。
「気配がする・・ビースターがこっちに近づいてくる・・・!」
そのとき、セイラが気配を感じて息をのむ。
「チェーンのビースター・・この前のワシが近くに・・・!」
ユウキが声を上げて空を見上げる。彼らの上空にイーグルビースターになったカリナが飛んできた。
「あのビースターが出てきたってことは・・・!」
タツヤが呟いて周囲に対して感覚を研ぎ澄ませる。彼がスネイクビースターへと変化する。
「そこか・・!」
タツヤが手にした鞭を振りかざす。姿を消していたコウスケが鞭をかわした。
「チッ!勘のいいヤツだ・・!」
姿を現したコウスケがタツヤに毒づく。
「お前の能力とやり口は分かっている・・何度も不意打ちは受けないぞ・・・!」
「フン。それでいい気になってもらっちゃ困るぜ・・!」
言いかけるタツヤに、コウスケがいら立ちを見せる。
「今度は逃がさないぞ・・オレがお前たちを、速攻で倒してやるぞ・・!」
“フォックス!”
ソウマがコウスケの前に出て、手にしたフォックスカードをビースドライバーにセットした。
「オレも参加すればパワーでも負けないぜ・・!」
“オックス。”
シゲルも言いかけて、オックスカードをビースブレスにセットした。
「変身!」
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
“スタートアップ・オックス。”
ソウマとシゲルがフォックス、オックスに変身した。
「ノゾムは先に行って、ベルトとカードを取り戻すんだ!」
「・・そうするしかないみたいだな・・・!」
ソウマの呼びかけにノゾムは聞き入れることにした。
「ユウキも行って、ノゾムさんたちを援護して・・!」
セイラが呼びかけて、ユウキが戸惑いを覚える。
「ユウキお兄ちゃん、リクお兄ちゃんのいるところ、分かる・・・!?」
「あぁ・・この前までは気配を消していて気付けなかったけど、今は分かる・・もしかして、オレたちに居場所を知らせている・・・!?」
ワタルが問いかけて、ユウキがリクの気配を感じていく。
「そこに行けば、お兄ちゃんが・・・!?」
彼の言葉を聞いて、カズトが心を揺さぶられる。
「そこへ連れてって・・僕もお兄ちゃんに会いに行く・・!」
「私も一緒に行くよ・・私が、カズトくんを守って、リクくんを助け出す・・!」
カズトとツバキが呼びかけて、ユウキが頷いた。
「セイラ、タツヤさん、ここはお願い・・!」
「オレたちは先に行って、アイツらをブッ倒してくるからな・・!」
ユウキとノゾムがソウマとシゲル、セイラとタツヤに呼びかける。ノゾムたちはリクを追い求めて走り出した。
「アンタら全員、あたしが仕留めてやるよ!」
カリナがノゾムたちに襲いかかろうとした。するとキャットビースターになったセイラが、タツヤの手を借りて大きくジャンプして、カリナの眼前まで来た。
「ユウキたちとカズトくんの邪魔はさせない!」
セイラが言い放って足を振りかざす。しかしカリナは体をひねって、セイラのキックをかわした。
「何度もやられないのは、こっちのセリフだよ!」
カリナがあざ笑って、翼をはばたかせてセイラを吹き飛ばす。
「くっ・・!」
セイラが空中で体勢を整えて着地する。
「一筋縄ではいかなくなっているみたいだ・・!」
「だとしてもオレはアイツらを倒す・・好き勝手に暴れるビースターはな!」
タツヤが毒づいて、ソウマがカリナたちへの敵意を見せる。
「オレの強さは疾風迅雷!足が速いだけでなく、飛び上がる強さもまた高い!」
ソウマが言い放って、ジャッカルカードを手にした。
“ジャッカル!”
彼がビースドライバーにジャッカルカードをセットした。
“チャージ・ジャッカール!ジャックスピード・ジャックソウル・ジャックジャックジャッカル!”
ジャッカルフォルムになったソウマが、上空にいるカリナに視線を戻す。
「いくらスピード自慢だからって、届かなくちゃ意味ないんだよ!」
カリナが翼をはばたかせて、羽根の矢を放つ。セイラたちが羽根の矢をかわして、ソウマがスピードを上げてかいくぐる。
そしてソウマが足に力を入れて大きくジャンプする。彼もカリナの眼前まで飛び上がってみせた。
「ウソ!?アンタもあたしに届いた!?」
驚きをあらわにするカリナに、ソウマが手を伸ばす。彼は彼女の翼をつかんで引っ張る。
「今度は逃がさない!空にも飛ばさないぞ!」
「このっ!放せ!あたしに触るんじゃないよ!」
翼をしっかりとつかむソウマに、カリナが怒号を放つ。2人が落下する先に、セイラが待ち構えていた。
「ま、待て!やめろ!」
声を荒げるカリナに向かって、セイラが爪を構える。
「くっ!」
ソウマが毒づいて、とっさにカリナから離れる。セイラが振りかざした爪が、カリナを切りつけた。
「うぐっ!」
カリナが横転して、痛みを覚えてうめく。
「アイツら!」
コウスケがいら立って、ソウマたちに迫る。だがシゲルとタツヤに行く手を阻まれる。
「お前の相手はオレたちだぜ、カメレオンヤロー!」
「そういう言い方されるのはなぁ・・!」
シゲルが言い放って、コウスケが毒づく。コウスケは感覚を研ぎ澄ませて、シゲルたちの前から姿を消す。
「何度姿を消しても、気配を読み取ることができれば・・!」
タツヤが感覚を最大限に研ぎ澄ませて、周囲の様子をうかがう。彼はコウスケが音を立てずに移動しようとしたり不意を狙ったりしてくると予測していた。
そしてタツヤはとっさに身をかがめて身構えた。彼はコウスケが後ろから攻撃を仕掛けてきたことに気付いた。
さらにタツヤは持っていた鞭を振りかざした。
「うぐっ!」
鞭が巻きついて、姿が見えなくなっていたコウスケを捕らえた。うめく彼が姿を見せた。
「このまま動けなくなっているうちに・・!」
シゲルが言いかけて、リードライバーの中心部を回転させた。
“オックス・ロードスマッシュ。”
シゲルがジャンプして両足のキックを繰り出す。
「放せ!こんなところでやられてたまるか!」
コウスケがもがくが、タツヤの鞭から抜け出すことができない。シゲルのキックが彼の体に直撃した。
「がはぁっ!」
突き飛ばされて絶叫を上げるコウスケ。決定打を受けた彼は、起き上がることもできなくなる。
「オレは死にたくない・・まだまだ暴れたりないんだよー!」
絶叫を上げるコウスケが倒れて、爆発して消滅した。
「アイツ、やられちゃって・・・!」
カリナが毒づいて、ゆっくりと立ち上がる。
「お前を倒すのはオレだぞ、ワシ女!」
ソウマが言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“ジャッカルチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ソウマが高速で動いて、カリナの周りを駆けまわる。逃げ道を失った彼女が、ソウマのキックの連続を当てられる。
「こんなところで・・こんなところでぇー!」
絶叫するカリナが、空中に跳ね上げられて爆発を起こした。
「やったな。チェーンのビースターを倒したぞ。」
シゲルが笑みをこぼして、着地したソウマに駆け寄った。
「あぁ。だけど休んでいる場合じゃない。早くノゾムたちに追いつかないと・・」
ソウマが言いかけて、シゲルとセイラ、タツヤが頷いた。
“スタートアップ・イグアナ。”
シゲルがビースブレスにイグアナカードをセットして、イグアカートを呼び出す。彼らはイグアカートに乗って、ノゾムたちを追いかけた。
リクの気配を感じ取って、ユウキはノゾムたち、カズトとともに進んでいた。
「この先・・チェーンの隠れ家に、お兄ちゃんが・・・!」
カズトがリクの居場所を予測して、戸惑いを感じていく。
「そこにはゴウと、チェーンの人たちが・・・!」
「丁度いい・・まとめてかたを付けてやる・・・!」
カズトの言葉を聞いて、ノゾムが怒りを感じていく。
「この先だ・・ツバキさんたちは来ないほうがいいと、オレは思うのだけど・・・」
「ゴメンなさい、ユウキさん・・でもカズトくんのこと、放っておくなんてできない・・・!」
心配の声をかけるユウキに謝って、ツバキがカズトに目を向ける。
「分かった・・みんなで行こう・・!」
ユウキは頷いてから、ツバキたちと一緒に歩き出す。ノゾムも目つきを鋭くしたまま、彼らに続いた。
そしてノゾムたちは地下へ続く階段の入り口の前にたどり着いた。
「ここがチェーンの隠れ家だよ・・ここにゴウたちがいる・・お兄ちゃんがいるかもしれない・・・」
「よし・・早速乗り込んで、ベルトを取り戻す・・・!」
カズトが言いかけると、ノゾムが最初に階段を下りていった。
「僕たちも行って、リクくんとベルトを見つけよう・・!」
タイチが呼びかけて、ツバキたちとともに急ぐ。彼らは薄暗い廊下を進んでいく。
「待って、ノゾム・・すぐ近くにいる・・・」
ユウキが足を止めて呼びかける。ノゾムたちも立ち止まって、前を注視する。
「カズト・・・」
ノゾムたちの前にリクが現れた。
「お兄ちゃん・・・!」
「カズト・・・カズト!」
戸惑いを感じているカズトに、リクが感情をあらわにして駆け寄ろうとした。
「すぐにベルトを返せ!」
そこへノゾムが怒鳴ってきて、リクが足を止めた。
「お前が盗んだベルトを返せ・・そうしないと、オレはお前を許さないぞ・・!」
「ノゾム・・・!」
ノゾムがリクを鋭く睨みつけて、ツバキが戸惑いを覚える。
「ベルトは今は・・ゴウのそばにあるよ・・復讐のための力にするって・・」
「そうか・・だったらオレが取り返しに行く・・・!」
不安を浮かべるリクの答えを聞いて、ノゾムが再び歩き出す。彼はリクに手を出すことなく、ゴウのところへ進もうとした。
「お前の探しているのはこのベルトだろう?」
そのとき、ノゾムたちの前にゴウが現れた。自分のビースドライバーを装着している彼の手には、ノゾムのビースドライバーがあった。
「あれは、マックスのベルト!」
「ベルトを返せ!オレたちが使っているものだぞ!」
タイチが声を上げて、ノゾムがゴウに怒鳴る。
「これはオレの復讐のために必要となる。返すわけにはいかない・・」
「お前の都合で、他のヤツが持っているものを奪っていいことにされてたまるか!」
呟くように言いかけるゴウに、ノゾムが怒りの声を上げる。
「ならば力ずくで奪い返すか?お前はビースターにもなれるが、コントロールはできていない。ベルトの力を借りずに成功するのは、極めて厳しい・・」
「勝手に決めるな!オレはお前からベルトを取り戻す!」
あざ笑ってくるゴウに怒号を放って、ノゾムが飛び出す。
「変身・・・!」
“チャージ・アーックス!アクセ・エグゼ・ゼクスフォース!ゴッドライダー・アーックス!”
ゴウはアックスに変身して、向かってきたノゾムを左腕で払いのけた。
「ノゾム!」
倒れたノゾムにタイチが叫ぶ。
「リク、今のうちだ・・カズトを取り戻してこい・・」
ゴウが呼びかけて、リクが小さく頷く。彼はカズトとツバキたちに近付いていく。
「お兄ちゃん、もうやめよう!こんなことをしても、お父さんが帰ってくるわけじゃないよ!」
カズトが声を振り絞って、リクに呼びかけてきた。
「カズト、何を言ってるんだ!?・・お父さんを捜すために、僕たちは・・!」
「そうだけど・・このままチェーンにいても、お父さんは見つかんないよ・・!」
動揺するリクに、カズトが必死に言い返す。
「だったらどうやって父さんを捜すんだ!?僕たちだけじゃ見つけられてないのに!」
「もう僕たちは僕たちだけじゃない!みんなが僕たちを助けてくれるよ!」
怒鳴りかかるリクに、カズトが必死に呼びかけた。カズトがノゾムとユウキたちに目を向けた。
「フン。自分たちのことしか考えていない連中に頼ったところで、何も変わらない。オレがこの世界を変えてみせる・・お前たちの父親も捜しだしてやるぞ・・」
カズトとリクに呼びかけて、ゴウが手招きをする。リクが彼とカズトの言葉に心を揺さぶられる。
「そうやって他のヤツを踏みにじって平気でいる気なのか・・!?」
立ち上がったノゾムが、ゴウに鋭い視線を向ける。
「それはこの世界でのうのうとしている愚か者たちのほうだ。世界が愚かでなければ、オレたちは平穏に過ごせたはずだった・・」
「悪いのはお前の人生を狂わせた敵だろうが・・関係ないヤツに手を出すことはないだろうが!」
復讐心をたぎらせるゴウに、ノゾムが怒りの声を上げる。
「関係ないことはない。この事実を知らない。それだけでも罪というほどに、事態は悪化しているのだ・・」
「お前!」
世界全体を敵視しているゴウに、ノゾムが怒りを爆発させる。彼がビーストビースターになって、ゴウに飛びかかる。
「またも見境なしに攻めてくるか・・」
ゴウがため息まじりに言って、ノゾムにパンチを叩き込む。
「うぐっ!」
ノゾムが痛みを覚えてふらついて、床に膝をつく。
「ノゾム!」
ユウキがドラゴンビースターになって、ゴウに向かって飛びかかる。
「ビースターが何人束になろうと、オレの復讐の邪魔はさせないぞ・・・!」
ゴウが鋭く言って、ユウキを迎え撃つ。ユウキが繰り出すパンチを手でさばいて、ゴウが彼にパンチを叩き込んでいく。
「リクくん、君はこのまま言いなりになっていていいのか!?ゴウに、チェーンに従っていても、お父さんは君たちのことを喜ばない!」
ユウキがゴウと戦いながら、リクに呼びかける。
「こうしないとお父さんを見つけられない・・たとえお父さんに嫌われることになっても、お父さんを見つけられるなら・・!」
「それで悪いことをするなんて悲しいよ!」
必死に自分の考えを口にするリクに、タイチも呼びかける。
「リクくん、あなたとカズトくんがお父さんを思う気持ちは分かるよ!でもお父さんの気持ちをきちんと考えて!」
ツバキもリクに向かって必死に言葉を投げかける。
「君たちのお父さんは、君たちがこんなひどいことをすることを望んでいない・・!」
「でも、どうやってお父さんを!?・・・ゴウさんは、お父さんを見つけてくれるって・・・!」
ツバキの言葉に心を揺さぶられながら、リクがゴウに振り向く。ゴウが1つ小さく頷く。
「だから僕は、そこにすがるしかないんだ・・!」
「そうやって諦めて、オレたちの敵になるっていうのか・・・!?」
自分に言い聞かせるように言葉を発するリクに、ノゾムが鋭く問い詰める。
「このままアイツの言いなりになるなら、お前はオレたちの敵になるってことだ・・そうなりたいっていうなら、オレは容赦しないぞ!」
怒号を放つノゾムに、リクが息をのむ。
「リクくん、オレもノゾムも、自分の意思をとことん貫こうとする。お父さんのために今の自分の気持ちを貫こうとするのは、オレも分かる気がする・・」
ユウキも自分たちの考えをリクに告げる。
「このまま意思を貫こうとするなら、オレたちは戦うことになる・・オレやノゾムたちにその覚悟はあるけど、リクくんにはあるのか・・・!?」
「それは・・・」
ユウキの問い詰められて、リクが言葉を詰まらせる。
「できることなら、オレは君と戦うなんてしたくない・・オレもツバキさんたちも、君たちのお父さんを捜したいと思っているんだ・・!」
「ユウキさん・・みんな・・・カズト・・・!」
ユウキの言葉を受けて、リクが戸惑いをふくらませて、カズトに目を向ける。カズトもリクに心配の眼差しを向けている。
「戻ってきて、お兄ちゃん・・僕、ワタルくんたちと一緒がいいよ・・・!」
「カズト・・・僕・・僕は・・・!」
カズトの言葉に突き動かされて、リクが彼に向かっていく。
「敵に回るか、お前たち兄弟は・・」
そこへゴウが言いかけて、リクが足を止めた。
「ならばここで、まとめてオレが葬るだけのことだ・・!」
ゴウが振り返って、リクを狙って拳を振りかざしてきた。
「うあっ!」
とっさにピジョンビースターとなるリクだが、ゴウのパンチを受けて吹き飛ばされる。
「お兄ちゃん!うわっ!」
叫ぶカズトがリクとぶつかって押される。
「コイツ、どこまでもふざけたマネしやがって・・!」
ノゾムが怒りを叫んで、ゴウに向かって飛びかかる。彼が繰り出すパンチを、ゴウは難なく腕で防いでいく。
「そろそろ終わりにするぞ・・お前たちの愚かさを・・」
ゴウが言いかけて、ノゾムの腕をつかんで投げ飛ばした。
「うぐっ!」
ノゾムが壁に叩きつけられてうめく。
「くそっ・・早く、ベルトを取り戻さないと・・・!」
ノゾムが立ち上がって、ゴウに鋭い視線を向ける。
「あっ・・もう1人、こっちに来る・・!」
ユウキがもう1つのビースターの気配を感じて、緊張をふくらませる。廊下にもう1つ、足音が響いてくる。
「もう1枚のカード、手に入れてきたぞ・・・!」
男がゴウに声をかけて、1枚のカードを差し出した。
「よくやった、カイト。これでオレは、このアックスの力を完全に引き出すことができる・・」
ゴウが男、カイトからカードを受け取って笑みをこぼす。
「代わりにコイツを使え。お前なら使えるはずだ。」
ゴウが手に持っていたビースドライバーをカイトに差し出す。
「わ、私が、ビーストライダーに・・!?」
カイトがイースドライバーを手にして戸惑いを覚える。
「ノゾムのベルトをそいつに使わせるつもりか!?」
ユウキが言いかけて、カイトからベルトを取り戻そうとする。
“ベア!”
するとゴウが自分のビースドライバーにベアカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・ベアー!ターボナックル・ターボタックル・バーストベアースターボ!”
ゴウに呼ばれたベアースターボが壁を破って飛び出してきた。
「危ない!みんな、外へ出るんだ!」
「くっ・・!」
ユウキが呼びかけて、ノゾムが毒づく。彼らが階段を駆け上がって外へ出る。
ゴウとカイトの乗ったベアースターボも飛び出して、ノゾムたちの前に着地した。
「あ、あそこにいるのは・・・!?」
「お・・お父さん!」
リクとカズトがカイトを見て声を上げる。
「えっ!?あれが、カズトくんとリクくんのお父さん!?」
ツバキがカイトを見て驚く。カイトはリク、カズトの父親だった。