仮面ライダーマックス
ブレイクハート・魂の闘い
第4章
行く手を阻むマウスビースターたちを迎え撃つユウキ、セイラ、タツヤ。3人の力に、マウスビースターたちは太刀打ちできずにいた。
「いい加減に引き下がったほうがいい・・お前たちでは私たちには敵わない・・!」
タツヤがマウスビースターたちに忠告を投げかける。
そのとき、カズトとリクがユウキたちの前に出てきた。
「カズトくん、リクくん!?」
ユウキがカズトたちに気付いて驚きを覚える。マウスビースターたちも2人を見て笑みをこぼす。
「危ない!」
ユウキがカズトとリクを助けようと飛び出す。セイラとタツヤも続けて動き出して、マウスビースターたちの前に立ちはだかる。
「カズトくん、リクくん、ここは危ないよ!」
ユウキがカズトたちに駆け寄って呼びかける。ビースターの姿であるユウキに一瞬恐怖を覚えたが、カズトとリクが落ち着きを取り戻していく。
「その声・・もしかしてユウキさん・・・!?」
カズトがユウキを見て戸惑いを見せる。
「驚かせてしまったね・・これがオレたちの、もう1つの姿なんだ・・・」
「これが、ユウキさんの・・・!?」
ユウキが自分たちのことを打ち明けて、リクが動揺を浮かべる。
「詳しい話は後でしよう・・ここは危険だ。2人は早く逃げるんだ・・!」
ユウキがカズトとリクに呼びかけて、マウスビースターたちに目を向ける。セイラとタツヤ、2人が相手でもマウスビースターは攻めあぐねていた。
そのとき、ユウキたちに向かって羽根が飛んできた。
「危ない!」
ユウキがカズトたちを抱えて動いて、羽根をかわす。空を見上げたユウキが、戻ってきたカリナを目にした。
「さっきは逃げるしかなかったけど、チャンスが巡ってきたみたいだね!」
「お前・・カズトくんたちは関係ないだろう!」
高らかに笑い声を上げるカリナに、ユウキがいら立ちを感じて怒鳴る。
「あたしの獲物は世界の愚か者みんなだよ!みんなに自分のバカさ加減を思い知らせてやるよ!」
カリナが目を見開いて、再び翼をはばたかせて羽根を飛ばす。ユウキはカズトたちを抱えたまま、近くの建物に隠れた。
「さっさと出てきなよ!さっきの仕返しをたっぷりとしてやるよ!」
カリナがユウキたちを狙って、さらに羽根を飛ばしていく。
「卑怯なヤツが・・このままにはしておかない・・・!」
ユウキが言いかけて、今度こそカリナを倒そうとした。
「カズトくんとリクくんはここにいて!危険だから、絶対に外に出たらダメだよ!」
カズトたちに呼びかけて、ユウキが建物の外に出ようとした。
「ぐっ!」
そのとき、ユウキが背中に激痛を覚えてうめく。彼の背中を鋭いものが切りつけたのである。
「な、何だ・・!?」
思わぬことにユウキが驚きを感じる。彼がゆっくりと振り向くと、1人のビースターがいた。
「ビースターが、こんなところにも・・・!?」
新たなビースターの出現に、ユウキが息をのむ。
「カズトくん、リクくん早く逃げて・・・!」
「ユウキさん・・ゴメン・・・こうするしかなかったんだ・・・」
呼びかけるユウキに対して、リクが弱々しく言いかける。改めて後ろにいる鳩の姿のピジョンビースターを見て、ユウキが驚く。
「まさか・・リクくんなのか・・・!?」
ピジョンビースターがリクだということに、ユウキは目を疑う。そばにいるカズトは、リクとユウキを見て怯えて震えていた。
「リクくん・・どういうことなんだ・・!?」
「敵は倒せと言われているんだ・・ゴウという人に・・・!」
疑問を投げかけるユウキに、リクが振り絞るように言いかける。彼はゴウたちのために行動していたのだった。
リクは怯んでいるユウキを突き飛ばして、建物の外へ追い出した。
「ユウキくん!?」
タツヤがユウキの異変に声を上げる。カリナも勇気が出てきたのを見て笑みをこぼした。
「よくやってくれたよ・・このままあたしがそいつを仕留めてやるよ!」
カリナが翼をはばたかせて、ユウキを狙って羽根を飛ばす。
「うぐっ!」
ユウキが体に羽根を突き立てられて、痛みを感じてうめく。
「ユウキ!」
セイラが叫んでから、タツヤと目を合わせて頷き合う。タツヤが自分の両手を足場にして、セイラがそこに足を付けて大きくジャンプする。
「ユウキに手は出させない!」
カリナの眼前まで飛び上がったセイラ。彼女が足を振りかざして、カリナを地上に叩き落とす。
「空には上がらせない!」
タツヤがマウスビースターたちを振り切って、カリナに組み付いて空に逃がさないようにする。着地したセイラがユウキに駆け寄ろうとした。
次の瞬間、建物から羽根の矢が飛んできて、セイラがとっさにかわした。ビジョンビースターであるリクが建物から出てきた。
「まだ仲間がいたなんて・・!」
「待て、セイラ・・・!」
身構えるセイラを、体を起こしたユウキが呼び止める。
「そのビースターは、リクくんなんだ・・!」
「えっ!?」
ユウキが口にした言葉に、セイラも驚きを隠せなくなる。
「リクくん、なの!?・・カズトくん・・!?」
セイラが問い詰めると、カズトも建物から出て悲しい顔を見せてきた。
「ゴメンなさい・・お兄ちゃん、お姉ちゃん・・・でも、僕のお兄ちゃんは・・・!」
「カズトくん・・・まさか、君たちは・・・!?」
カズトが泣きながら謝って、タツヤが疑惑を投げかける。
「ユウキさん、僕はあなたたちと同じビースターなんだ・・そしてゴウさんの味方でもあるんだ・・・!」
「そんな!?・・リクくんたちも、チェーンの・・!?」
リクが打ち明けたことに、セイラが動揺を隠せなくなる。
「よくやったね、リク・・これで邪魔者を一気に仕留められる・・!」
カリナが呼びかけてきて、リクが小さく頷いた。
「僕はあなたたちが、ビーストライダーとその仲間だと知って近づいたんです・・チェーンの人たちと一芝居打って・・」
「それじゃ、オレたちを騙していたのか・・・!?」
自分たちのことを告げるリクに、ユウキが疑念を抱く。
「その通りだよ・・アンタたちお人よしが、見事に引っかかったってわけ!」
タツヤに抑えられたままのカリナが、高らかにあざ笑う。
「ゴウの復讐の障害は、ビーストライダーと、あたしたちに敵対してくるビースター・・真正面からやり合って無傷ってわけにはいかないからね・・せめてやる気をそいでやれば、付け入る隙はあるんじゃないかってね・・!」
「そのために、リクくんたちを送り込んだというの・・!?」
「そうだよ・・騙してるのも知らないでのこのこと助けちゃって気に掛けちゃってさ・・全くお笑いだったね!」
「そんな・・そんな卑劣なこと・・!」
カリナの投げかける言葉を聞いて、セイラが絶望を感じていく。
「これで邪魔者の数を減らすことができる・・思い切り狩りを楽しめるってもんだよ!」
カリナが笑い声を上げるが、タツヤに押さえられて起き上がれない。
「お前たちを野放しにするわけにはいかない!ここで倒させてもらう!」
タツヤはカリナを逃がさないようにして、すぐに倒そうとして右手を振り上げた。
そのとき、タツヤが突然前のめりに突き飛ばされた。彼の手から離れたカリナが立ち上がる。
「まさか駆けつけてくれるとはね・・!」
カリナが言いかけると、姿を消していたコウスケが現れた。
「お前もチェーンの1人・・!」
顔を上げたタツヤが、コウスケを見て身構える。コウスケは姿を消したまま、タツヤを蹴り飛ばしたのである。
「これでお前らの敗北は決まりだ・・」
「まずはアンタからよ、ヘビのビースター・・あたしを押さえ込んでくれたことを後悔させてやるよ・・!」
コウスケが笑みをこぼして、カリナがタツヤに狙いを向けて飛び上がる。
(ダメだ・・このままでは3人ともやられてしまう・・・!)
危機感をふくらませたタツヤが、セイラと目を合わせて頷き合う。2人は同時に走り出して、ユウキと合流する。
「逃げよう、ユウキ!」
「逃がすものか!まとめて仕留めてやるよ!」
セイラがユウキを抱えて加速して、カリナが3人を追って羽根を飛ばす。タツヤが鞭を振りかざして、羽根をはじき飛ばす。
「リク、お前もやれ!逃がすんじゃねぇぞ!」
コウスケが呼びかけて、リクがユウキたちを追撃しようとした。
「もうやめて、お兄ちゃん!」
そこへカズトが飛び出してきて、リクを止めてきた。
「な、何をするんだ、カズト!?こうしないと・・!」
「だって、助けてくれたお兄ちゃんたちに、こんなひどいことをするなんて・・!」
声を上げるリクに、カズトが泣きながら呼びかける。
(カズトくん・・・!)
カズトの気持ちを感じ取って、セイラは辛さを噛みしめる。彼女はカズトを気にしながら、ユウキ、タツヤとともにこの場を離れた。
ユウキたちに逃げられて、リクが愕然となる。
「くっ・・もう少しのところだったのに・・・!」
コウスケが毒づいて、カズトとリクに詰め寄る。
「お前が邪魔さえしなければ・・!」
コウスケがいら立ちを見せて、カズトに向かって足を振り上げる。リクがカズトを庇って、背中をコウスケに蹴られた。
「ぐっ!」
「お兄ちゃん!」
うめくリクにカズトが叫ぶ。
「お前、邪魔するつもりか・・!?」
「弟は傷つけさせない・・弟が、家族がいなくなったら、僕は・・・!」
いら立ちを膨らませるコウスケに、リクが声を振り絞る。彼はカズトを守ることに必死だった。
「ケッ!気分がそがれちまった・・!」
コウスケは不満を抱えたまま、きびすを返してリクたちから離れていく。
「さっさと戻るわよ・・ゴウもそろそろ終わらせてる頃だからさ・・」
カリナも告げて、リクたちから離れていった。
「お兄ちゃん・・・」
「カズト、行こう・・僕たちは、この道を行くしかないんだ・・・」
悲しみと不安を見せるカズトに、リクが呼びかける。2人もコウスケたちの後をついていった。
ゴウの駆るベアースターボのパワーに、ノゾムたちは悪戦苦闘を強いられていた。
「マキシマム以上のパワーを出してくるとはな・・!」
ソウマがベアースターボのパワーに毒づく。
「これではオレを止めることは到底できないぞ。」
ゴウがノゾムたちを見下ろして言いかける。
「まだだ・・オレは必ず、お前たちをブッ倒す・・!」
ノゾムが怒りの声を上げて、新たなアニマルカード「エックスカード」を手にした。
「ノゾム、エックスも使う気なのか・・!?」
シゲルが言いかけるが、ノゾムは答えることなく、エックスカードをビースドライバーにセットした。
“エックス!”
「オレは戦う・・お前のように、他のヤツをムチャクチャにしていい気になっている敵を倒すために!」
ノゾムは言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを押す。
“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”
ノゾムがまとっているマックスのスーツに変化が起こる。白くなったスーツの真ん中に縦のラインが入り、マスクも「X」の形のラインが入った。
マックスの強化形態「エックスフォルム」である。
「さらにパワーアップを果たしたか。オレにどこまで迫れたか、確かめさせてもらう・・」
ゴウが言いかけて、ベアースターボがノゾムに向かって突っ込む。ノゾムはジャンプして、ベアースターボの突撃をかわす。
着地したノゾムが、再び向かってきたベアースターボを目指して走り出す。彼がジャンプしながら繰り出したキックが、ベアースターボの頭部に命中した。
ベアースターボが押し返されて止まる。ゴウが操縦して、ベアースターボが両腕を前に出す。
ノゾムはジャンプして両手をかわすと、マックスカードとマキシマムカードを取り出した。彼の両腕には腕輪「エックスブレス」が装備されていた。
“エックスマーックス!ジェネラリーアクション!”
ノゾムが右のエックスブレスに、マックスカードをセットした。するとマックスの右半分が白から赤に変わった。
エックスブレスはセットしたアニマルカードの力を、エックスフォルムになったまま引き出すことができる。
ノゾムはさらに左腕のエックスブレスに、マキシマムカードをセットした。
“エックスマキシマーム!アンリミテッドパワー!”
マックスのスーツの左側が赤に変わり、黒のラインが入った。ノゾムはマックスフォルムとマキシマムフォルム、2つの力を身にまとった。
ベアースターボがノゾムに向かって手を伸ばす、ノゾムは両手でベアースターボの手を受け止めた。
「くっ!・・一気にパワーを上げてきたか・・!」
ゴウがノゾムの高まっているパワーを感じ取って毒づく。
「お前たちまとめて、ここでブッ倒す・・!」
ノゾムが怒りの声を上げて、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“エックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーとエックスブレスから光があふれ出す。光はノゾムの足に集まっていく。
“ベアチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ゴウも再びビースドライバーのボタンを押して、ベアースターボがノゾムに向かって突っ込む。ノゾムがジャンプして、突っ込んできたベアースターボにキックを叩き込んだ。
ノゾムは続けてキックを当てていく。
「ぐっ!」
倒れたベアースターボから振り落とされるゴウ。体を起こす彼を、着地したノゾムが鋭く見下ろす。
「これで終わりだ・・他のヤツもすぐにブッ倒してやる・・・!」
ノゾムが両手を握りしめて、ゴウにとどめを刺そうとした。
「ノゾムさん!」
そこへリクが現れて、ノゾムに向かって走り込んできた。
「リク!?」
「危ない、リク!来るんじゃない!戻れ!」
リクの登場にシゲルが驚いて、ソウマが呼び止める。リクが止まることなく、ノゾムに近づいた。
「おい、邪魔になる・・こっちに来るんじゃな・・!」
ノゾムがリクに呼びかけたときだった。リクがノゾムの着けていたビースドライバーを外して奪い取った。
「なっ!?」
突然のリクの行動に、ノゾムが驚く。彼からマックスへの変身が解かれた。
「おい、何をするんだ!?そいつを返せ!」
ノゾムが怒鳴り声を上げて、リクに迫った。次の瞬間、リクがピジョンビースターになって、空に飛び上がってノゾムから離れた。
「何っ!?」
「リク、お前、ビースターだったのか!?」
ノゾムがさらに驚いて、ソウマが声を上げる。立ち上がったゴウのそばに、リクが着地した。
「いいぞ・・ビースドライバーを1つ手に入れたか・・!」
ゴウが笑みを浮かべて、リクが差し出したビースドライバーをつかんだ。
「リク、まさかお前も、ゴウの仲間だったのか・・!?」
シゲルが問い詰めると、リクが深刻さを浮かべた。
「お前・・オレの敵に回るっていうのか・・・!?」
ノゾムがリクに鋭い視線を向ける。ノゾムに睨まれて、リクがたまらず後ずさりする。
「オレたちはオレたちを捨て駒にした世界への復讐を果たす・・そのために邪魔者や障害は取り除く・・・!」
ゴウがノゾムに向かって鋭く言いかける。
「返せ・・ベルトを返せ!」
ノゾムが怒りをふくらませて、ゴウに向かっていく。
「形勢逆転だ・・お前はもうオレたちに太刀打ちできない・・!」
ゴウが告げると、ベアースターボが起き上がって両腕を振り下ろしてきた。
「ノゾム!」
シゲルが飛び出してノゾムを抱えて、ベアースターボの腕をかわす。
「アイツら・・!」
ソウマがゴウとリクに対して怒りを覚える。
「自分のことしか考えず、他のヤツを手にかけて平気でいるビースター・・お前もその1人だったのか、ソウマ!?」
「違う・・僕は・・僕は・・・!」
怒鳴りかかるソウマに対して、リクは声を振り絞る。
「お兄ちゃん!」
そこへカズトが駆けつけて、リクを呼び止めてきた。
「カズト・・・!」
リクがカズトを見て動揺をふくらませていく。
「カズト・・お前、カズトがビースターだってこと、知ってたのか・・・!?」
ソウマが問い詰めると、リクも悲しい顔を見せる。
「お兄ちゃん、もうやめて・・ノゾムさんたちも困ってるじゃない・・!」
「でも、こうしないと僕たちは、幸せになれない・・・!」
カズトが呼びかけるが、リクは素直に聞き入れようとしない。
「そうだ・・この2人も、世界への復讐を果たす道を選んだ同士・・お前たちがオレたちの敵に回るなら、2人もお前たちの敵ということになる・・」
ゴウがノゾムたちに言いかけて笑みをこぼす。
「ホントにカズトたちも、お前たちの仲間だっていうことなのか・・・!?」
ソウマがリクとカズトにも怒りの矛先を向ける。ソウマがリクに向かって走り出して、攻撃を仕掛けようとした。
「ダメ!やめて!」
するとカズトがソウマに飛びついて止めに入った。
「カズト、邪魔するのか!?」
「お兄ちゃんは悪くない!お兄ちゃんと僕は・・!」
怒鳴りかかるソウマにカズトが呼びかける。
「危ない、ソウマ!」
シゲルが呼びかけて、ソウマが上を見上げる。ベアースターボが彼らを狙って両手を振り上げてきた。
「うわっ!」
ソウマがとっさにカズトを抱えて、慌ててジャンプしてベアースターボの両手をかわした。
「ノゾム、ベルトはオレたちが取り戻す。お前はコイツを見張っててくれないか!?」
着地したソウマが、ノゾムにカズトを預ける。
「ふざけるな・・オレがベルトを取り戻す!」
「変身できないお前じゃ、アイツらにとても太刀打ちできないだろうが!・・それに、お前だって・・・!」
不満の声を上げるノゾムに、ソウマが呼びかける。そこへベアースターボが加速して突っ込んできた。
「とにかく、任せたからな!絶対に逃がすなよ!」
ソウマはノゾムにカズトを押し付けてから、ベアースターボに向かって走り出す。彼はスピードを上げて横を動いて、ベアースターボの注意を引く。
「カズト!・・カズトを返して!カズトを傷付けないで!」
リクがノゾムに近づいて、カズトを連れ戻そうとする。
「ベルトを盗んでおいて、勝手なことを言うな・・!」
ノゾムがリクに鋭い視線を向ける。
「だって、そうしないと・・僕たちは幸せに暮らせないんだ!家族みんなで!」
リクが感情を込めて言い放つ。しかしノゾムは怒りをふくらませるばかりである。
「そうやって自分たちさえよければそれでいいというのか、お前たちは!?」
「違う!僕たちはそんなふうに思ってない!でもそれしか選べない!そうじゃないと家族みんなで過ごせなくなってしまう!」
怒鳴りかかるノゾムに、リクが悲痛の叫びを上げる。
「選べない、できないことをいいわけにするな!敵に屈する時点で、自分も敵になってしまうんだぞ!」
「だからってそれだけの力は僕にはない!逆らっても無意味に死ぬだけなら、従ってでも生きるしかないんだ!」
怒りを叫ぶノゾムに、リクが感情を込めて言い返す。抗おうとしない彼に対して、ノゾムは怒りを爆発させた。
「そうやって諦めて、ヤツらの味方をするっていうなら、オレたちの敵になるってことだ!・・敵になるって言い張るなら、もう容赦しないぞ!」
怒号を放つノゾムがカズトを横に突き飛ばしてから、リクに向かっていく。
「マックスになっていなければ普通の人間と同じ・・ビースターの僕より上なんてことは・・」
リクは変身していないノゾムに負けることはないと思っていた。
そのとき、ノゾムの体に変化が起こった。ビースドライバーやアニマルカードによるものではなかった。
ノゾムの姿が異形のものとなった。獣の姿を持ったビースターに、彼は変化した。
「えっ!?・・まさか、ノゾムさんも・・!?」
「ビースターだったの・・!?」
リクとカズトがビーストビースターになったノゾムを目の当たりにして、驚きを隠せなくなる。
「うっ!」
ノゾムに突進されて、リクが倒されてうめく。1度足を止めたノゾムが、ビースドライバーを持っているゴウに振り向いた。
「ベルトを返せ・・お前なんかにいいようにされてたまるか・・!」
「これはオレの復讐のために使う・・お前たちが力を貸さないなら、そうするしかない・・」
鋭く言いかけるノゾムだが、ゴウは彼のビースドライバーを手放そうとしない。
「返せって言っているのが分かんないのか!」
怒号を放つノゾムがゴウに向かって飛びかかる。ゴウは後ろに動いてノゾムとの距離を取る。
「逃げるな!」
ノゾムが怒りのままに突っ込んで、ゴウに迫る。その間にベアースターボが割り込んできた。
「邪魔だ!」
ベアースターボが出してきた両手をよけて、ノゾムがパンチを繰り出す。顔面にパンチを叩き込まれて、ベアースターボが大きく突き飛ばされた。
「くっ・・とんでもない強さを出すビースターになったか・・!」
ノゾムのビースターとしての強さを目の当たりにして、ゴウが毒づく。ノゾムが再びゴウに鋭い視線を向ける。
「ノゾムのビースターの力はすごい・・だけど・・!」
「もう確実に、ビースターになって暴走しないって保障は・・・!」
ソウマとシゲルがノゾムの暴走を懸念していた。
ビースターに転化したノゾムは、その力に振り回されて暴走して見境を失くしたことがある。自力でビースターの力を抑えられるようになった彼だが、いつまた暴走しないとも限らない。
「早く返せ・・ベルトを返せって言ってるんだよ!」
ノゾムが怒鳴り声を上げて、ゴウに向かっていく。
「ぐっ!」
そのとき、ノゾムが体に激痛を覚えて、ふらついて地面に膝をつく。
「ノゾム!?」
ノゾムの異変にソウマとシゲルが声を上げる。
「1度引き上げるしかないか・・出直すぞ!」
ゴウが呼びかけて、黒ずくめの男たちがこの場を離れていく。
「お前もついてこい!」
「で、でも・・!」
ゴウに呼ばれるが、リクはカズトを心配して動けなくなっている。
「このまま失態をさらせば、家族との生活が失われることになるぞ・・」
ゴウに忠告を送られて、リクが息をのんだ。
「カズト・・・必ず・・助けに行くから・・・!」
リクはカズトのことを心配しながら、ゴウに続いて離れた。
「お兄ちゃん!」
カズトが悲痛の叫びを上げる。彼の視界からリクの姿が消えた。
「ノゾム、大丈夫か!?オレたちが分かるか!?」
シゲルに呼びかけられて、ノゾムが自分を取り戻す。彼はビースターから人の姿に戻る。
「ベルトを取り戻せなかった・・アイツら・・・!」
いら立ちをふくらませるノゾムが、怯えているカズトに振り向く。ノゾムはカズトにも憎しみの矛先を向けた。
「どういうつもりだ・・お前たちは、オレたちを騙していたのか!?」
「ゴ・・・ゴメン・・ゴメンなさい!」
怒鳴りかかるノゾムに、カズトが泣きながら謝る。
「とりあえず戻ったほうがいいな・・お前、そしたらしっかりと話をしてもらうぞ。」
シゲルがカズトに歩み寄って呼びかける。カズトは涙を拭いながら頷いた。
ノゾムたちの心配をしながら、ツバキたちは別荘の前で待っていた。そこへノゾムたちがユウキたちと合流して戻ってきた。
「戻ってきたよ!・・カズトくん・・!?」
ワタルが声を上げて、カズトもいたことに気付いて動揺を覚える。
「ノゾム、みんな、大丈夫・・・!?」
ツバキが駆け寄ってきて、ノゾムを支える。
「オレたちは大丈夫だ・・だけどノゾムが、ベルトを取られた・・・!」
「えっ!?」
ソウマが事情を話して、ツバキが驚きを見せる。
「ノゾムはビースターになって取り戻そうとしたけど、体に痛みが出て・・!」
「暴走は抑えられるようにはなったみたいだけど、ビースターの力をコントロールできているとは言えないみたい・・」
シゲルが説明を続けて、セイラが不安を口にする。
「とにかくノゾム君を休ませよう。タイチくん、手伝って・・」
「あ、はい・・!」
タツヤが呼びかけて、タイチとともにノゾムを支えて、別荘に連れていく。ノゾムはベッドに横になって、呼吸を整えていく。
「カズトくん・・何があったんだ・・・?」
ワタルが声をかけるが、カズトは悲しみを感じて涙を流していた。
「お兄ちゃんは?・・リクさんは・・?」
「ワタルくん・・・!」
さらに声をかけるワタルに、カズトがすがりついてきた。
「リクくんもビースターだったんだ・・しかもチェーンの一員だった・・」
「そんな・・リクお兄ちゃんが・・・!?」
ユウキからの説明を聞いて、ワタルが動揺を強める。
「お兄ちゃんは悪くない・・お兄ちゃんは、お父さんのために、チェーンに協力してるんだよ・・!」
「お父さんのために・・・」
自分たちのことを打ち明けたカズトに、ワタルが戸惑いを感じていく。
「もしかして、お父さんを人質にされて言うことを聞いているんじゃ・・!?」
「そうじゃない・・お父さんを見つけてくれるって、約束してくれたんだ・・お父さん、どこかに行ったきり、帰ってこなくて・・・」
ツバキが投げかけた言葉に首を横に振って、カズトがさらに話を続ける。
「そんな約束、あんな連中が素直に聞いてくれると思ったのか・・!?」
ソウマが感情をあらわにして、カズトに鋭く言いかける。
「だって・・そうでもしないとお父さんは見つかんないし、僕もお兄ちゃんも無事でいられなかったから!」
カズトが必死に答えて、呼吸を乱す。彼の気持ちを察して、ソウマが言葉を詰まらせる。
「お父さん・・・お父さんは必ずどこかにいるんだね・・・?」
ツバキが問いかけると、カズトが小さく頷いた。
「それじゃ私たちで、カズトくんたちのお父さんを見つけ出そう。」
「ツバキお姉ちゃん・・・」
ツバキからの呼びかけに、カズトが戸惑いを覚える。
「ツバキ、そんな約束していいのか!?・・ビースターとの約束なんて・・!」
「だって、カズトくんもリクくんもお父さんのことを大事に思っているんだよ・・その気持ちを無視するなんて、私にはできない・・・!」
ソウマが不満の声を上げるが、ツバキはカズトたちの絆を信じようと思っていた。
「そうするにしても、まずはノゾムが体を休めてからだ・・」
シゲルが真剣な顔でツバキたちに言いかける。
「はい・・・」
シゲルの言葉を聞いて、ツバキは小さく頷いた。彼女はカズトとソウマたちと一緒に、別荘へ向かうのだった。